【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0035】
[実施例1]
1又は複数のFLAGペプチドをコードする領域を有する原核細胞用環状RNAを合成し、これらを鋳型として無細胞系においてタンパク質を合成した。
<環状RNAの合成>
(1)オリゴヌクレオチドの調製
具体的には、まず、環状RNA又は直鎖状RNAのフラグメントである4種類のRNAオリゴヌクレオチド(F35、F49、F42、F42’)、及び酵素T4 DNAリガーゼを用いた連結反応に鋳型として用いる5種類のDNAオリゴヌクレオチド(G1、G2、G3、G3’、G4)をそれぞれ化学合成した。なお、F42’は、F42の3’末端にUAAUAAを付加した48塩基長である。各オリゴヌクレオチドの配列を表1、及び配列表の配列番号1〜9に示す。表1中、囲み部分はリボソーム結合配列を表し、太字の塩基(AUG)は開始コドンを表し、下線部位はFLAGコード配列を表し、二重下線部は終止コドンを表す。pは5’末端がリン酸化されていることを示す。
【0036】
【表1】
【0037】
9種全てのオリゴヌクレオチドは、それぞれ、β−シアノエチルホスホロアミダイト試薬(Glen Research社製)を用い、H−8−SE DNA合成機(ジーンワールド社製)により合成した。RNAアミダイト試薬は2’−O−TOM保護体を使用した。その際、RNAオリゴヌクレオチド(F35、F49、F42、F42’)は、全て化学リン酸化試薬(Glen Research社製)を用いて5’末端をモノリン酸化した。合成したRNAは全て定法に従い脱保護し、変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により精製した。一方、DNAオリゴヌクレオチド(G1、G2、G3、G3’、G4)は合成後、定法に従い脱保護し、Micropure IIカートリッジ(Biosearch Technologies社製)により精製した。
【0038】
(2)合成スキーム
2分子のFLAGペプチドをコードする領域を有する84塩基の環状RNA(C84)及び4分子のFLAGペプチドをコードする領域を有する168塩基の環状RNA(C168)は、F35及びF49を、G1及びG4を鋳型として連結することにより合成した。3分子のFLAGペプチドをコードする領域を有する126塩基の環状RNA(C126)及び6分子のFLAGペプチドをコードする領域を有する252塩基の環状RNA(C252)は、F35、F49、及びF42を、G1、G2、及びG3を鋳型として連結することにより合成した。各合成スキームを模式的に
図1に示す。
また、3分子のFLAGペプチドをコードする領域を有する126塩基の直鎖状RNA(L126)は、F35、F49、及びF42を、G1及びG2を鋳型として連結することにより合成した。3分子のFLAGペプチドをコードする領域及び終止コドンを有する132塩基の直鎖状RNA(L126+stop)は、F35、F49、及びF42’を、G1及びG2を鋳型として連結することにより合成し、3分子のFLAGペプチドをコードする領域及び終止コドンを有する132塩基の環状RNA(C126+stop)は、F35、F49、及びF42’を、G1、G2、及びG3’を鋳型として連結することにより合成した。
C84、C126、C168、C252、C126+stopの配列を表2、及び配列表の配列番号10〜14に示す。表2中、囲み部分はリボソーム結合配列を表し、太字の塩基(AUG)は開始コドンを表し、下線部位はFLAGコード配列を表し、二重下線部は終止コドンを表す。また、いずれも、5’末端及び3’末端の両末端で連結された環状構造を形成する。なお、L126及びL126+stopは、それぞれC126及びC126+stopと同じ塩基配列を有しているが、環状構造を有しない直鎖状RNAである。
【0039】
【表2】
【0040】
(3)L126の合成
L126は、F35、F49、及びF42を、G1及びG2を鋳型としてリガーゼにより連結することによって合成した。リガーゼ反応は、5μMのF35、5μMのF49、15μMのF42、10μMのG1、20μMのG2、35units/μLのT4 DNAリガーゼ(タカラバイオ社製)、66mMのTris−HCl(pH7.6)、6.6mMのMgCl
2、10mMのDTT、0.1mMのATP、10%(w/v)のPEG6000を含む反応液(反応液量:1.7mL)で行った。
具体的には、PEG6000及びT4 DNAリガーゼ以外を全て添加した反応液を90℃で3分間加熱した後、室温まで徐冷した。その後、当該反応液にPEG6000及びT4 DNAリガーゼを加え、37℃で約5時間インキュベートした。当該反応液に等量のクロロホルムを加えてPEG6000を抽出・除去した後、3Mの酢酸ナトリウム水溶液(pH5.2)及びイソプロピルアルコールを加えて冷却し、RNAを沈殿させて回収した。回収されたRNAの一部を変性PAGE分析(8% ポリアクリルアミド、7.5M 尿素、25% ホルムアミド、1×TBE)し、ゲルをSYBR Green II(タカラバイオ社製)により染色して可視化し、リガーゼ反応の進行を確認した後、同じく変性PAGEを用いて、残りのRNAから連結生成物(L126)を単離した。UV shadowing法により、目的物を含むバンドを可視化して切り出して細かく粉砕した後、溶出液[10mM EDTA(pH 8.0)]1mLで2回RNAを抽出した。得られた抽出液を遠心エバポレーターにより濃縮し、さらにマイクロコンYM−3(ミリポア社製)を用いて濃縮した。濃縮後の前記抽出液からRNAを、アルコール沈殿により脱塩・回収した。得られたRNA(L126) は超純水に溶解し、適宜希釈後UV吸収スペクトルを測定し、収量を算出した(収量:2.17nmol、収率:26%)。
図2に、SYBR Green II(タカラバイオ社製)により変性PAGEゲル中の核酸を染色した結果に得られた染色像を示す。レーン1はssRNAマーカーを、レーン2は酵素反応前の反応液を、レーン3は酵素反応後の反応液を、それぞれアプライした。
図2に示すように、酵素反応後には、F35、F49、及びF42からL126が合成された。
【0041】
(4)C126の合成
L126をリガーゼ反応により環状にすることによって、C126を合成した。リガーゼ反応は、1μMのL126、1μMのG3、17.5units/μLのT4 DNAリガーゼ(タカラバイオ社製)、6mMのTris−HCl(pH7.6)、6.6mMのMgCl
2、10mMのDTT、0.1mMのATP、10%(w/v)のPEG6000を含む反応液(反応液量:2mL)で行った。
具体的には、PEG6000及びT4 DNAリガーゼ以外を全て添加した反応液を90℃で3分間加熱した後、室温まで徐冷した。その後、当該反応液にPEG6000及びT4 DNAリガーゼを加え、37℃で7時間インキュベートした。当該反応液に等量のクロロホルムを加えてPEG6000を抽出・除去した後、3Mの酢酸ナトリウム水溶液(pH5.2)及びイソプロピルアルコールを加えて冷却し、RNAを沈殿させて回収した。回収されたRNAの一部を変性PAGE分析(6% ポリアクリルアミド、7.5M 尿素、25% ホルムアミド、1×TBE)し、ゲルをSYBR Green II(タカラバイオ社製)により染色して可視化し、リガーゼ反応の進行を確認した後、同じく変性PAGEを用いて、残りのRNAから連結生成物(C126)を単離した。UV shadowing法により、目的物を含むバンドを可視化して切り出して細かく粉砕した後、溶出液[10mM EDTA(pH 8.0) ]0.5mLで2回RNAを抽出した。得られた抽出液を遠心エバポレーターにより濃縮し、さらにマイクロコンYM−3(ミリポア社製)を用いて濃縮した。濃縮後の前記抽出液からRNAを、アルコール沈殿により脱塩・回収した。得られたRNA(L126) は超純水に溶解し、適宜希釈後UV吸収スペクトルを測定し、収量を算出した(収量:0.40nmol、収率:20%)。
図3に、SYBR Green II(タカラバイオ社製)により変性PAGEゲルを染色した結果に得られた染色像を示す。レーン1はssRNAマーカーを、レーン2は酵素反応前の反応液を、レーン3は酵素反応後の反応液を、それぞれアプライした。
図3に示すように、酵素反応後には、L126からC126が合成された。
【0042】
(5)L126+stop、C126+stopの合成
F42に代えてF42’を、G3に代えてG3’を、それぞれ用いた以外は、上記(2)及び(3)と同様にして、L126+stop及びC126+stopを合成した。
【0043】
(6)C84、C168、C252の合成
図1及び上記(2)で示すように、各フラグメントを適宜用いた以外は、上記(3)L126の合成及び(4)C126の合成と同様にして、C84、C168、C252を合成した。
図4に、L84(2分子のFLAGペプチドをコードする領域を有する84塩基の直鎖状RNA)を合成するためのリガーゼ反応の反応物を8%変性PAGE分析した結果に得られた染色像を示す。レーン1は酵素反応前の反応液を、レーン2は酵素反応後の反応液を、レーンMはssRNAマーカーを、それぞれアプライした。
図4に示すように、酵素反応後には、F35及びF49からL84が合成された。
図5に、環状RNA合成反応の反応物を8%変性PAGE分析した結果に得られた染色像を示す。レーン1はL84を鋳型としたリガーゼ反応の反応前の反応液を、レーン2はL84を鋳型としたリガーゼ反応の反応後の反応液を、レーンMはssRNAマーカーを、レーン3はL126を鋳型としたリガーゼ反応の反応前の反応液を、レーン4はL126を鋳型としたリガーゼ反応の反応後の反応液を、それぞれ示す。
図5に示すように、酵素反応後には、L84からC84及びC168が、L126からC126及びC252が、それぞれ合成された。
【0044】
<環状RNAを鋳型としたタンパク質の合成>
(7)L126、L126+stop、C126、C126+stopを鋳型とした無細胞翻訳反応
L126、L126+stop、C126、又はC126+stopを1μMとなるように無細胞翻訳液(PURExpress、New England Biolabs社製) に加え、37℃で3時間インキュベートした(反応液量:25μL)。対照として、RNA無添加の反応液も同様にインキュベートした。反応液から1μLサンプリングし、5μLの2×サンプル緩衝液[0.125M Tris−HCl(pH8.0)、2% SDS、30% グリセロール、0.02% ブロモフェノールブルー、5% 2−メルカプトエタノール]及び4μLの超純水と混合した。これを95℃で5分間加熱後、10−20% 勾配ポリアクリルアミドゲル(ATTO社製)を用いて電気泳動した(泳動用緩衝液: 25mM Tris−HCl、0.1% SDS、192mM グリシン)。ゲル中に展開されたタンパク質をPVDF膜(ミリポア社製)に転写後、マウス産生抗FLAG抗体、抗マウスIgG抗体ペルオキシダーゼ(HRP)複合体(いずれもSigma−Aldrich社製)と反応させ、HRP基質(SuperSignal West Femto Maximun Sensitivity Substrate、Thermo社製)を用いて、FLAG配列特異的にバンドを可視化(Light−Capture、ATTO社製)した。
図6に、FLAGを含むタンパク質のバンドを可視化した結果を示す。レーン1はL126を添加した反応液、レーン2はL126+stopを添加した反応液、レーン3はC126+stopを添加した反応液、レーン4はC126を添加した反応液、レーン5はRNA無添加の反応液を、それぞれアプライした。
図6に示すように、C126を添加した反応液では、C126+stopやL126を添加した反応液で合成された15〜20kDaのタンパク質よりもはるかに長鎖のタンパク質が多く発現していた。特に、250kDa以上のタンパク質が発現しており、C126では、リボソームが10回以上回転して連続的に翻訳反応が進行し、タンパク質リピートが合成されていることが示唆された。
【0045】
(8)C84、C126、C168、及びC252を鋳型とした無細胞翻訳反応
鋳型として、C84、C126、C168、又はC252を用いた以外は、上記(7)と同様にして、無細胞翻訳反応を行い、その後反応液を10−20% 勾配ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、ゲル中に展開されたタンパク質をPVDF膜に転写後、FLAG配列特異的にバンドを可視化した。
図7に、FLAGを含むタンパク質のバンドを可視化した結果を示す。レーン1及び3はRNA無添加の反応液、レーン2はC84を添加した反応液、レーン4はC126を添加した反応液、レーン5はC168を添加した反応液、レーン6はC252を添加した反応液を、それぞれアプライした。
図7に示すように、C84を鋳型とした場合には、連続的翻訳反応の反応産物である長鎖ペプチドは生成しなかった。一方、C126、C168、及びC252を鋳型とした場合には、連続的翻訳反応の反応産物である長鎖ペプチド(タンパク質リピート)の生成が観察された。特に、C126及びC168を鋳型とした場合には、C252を鋳型とした場合よりも、翻訳効率が高く、より大量のタンパク質リピートが合成されていた。
【0046】
[実施例2]
複数のFLAGペプチドをコードする領域を有する真核細胞用環状RNAを合成し、これらを鋳型としてウサギ由来の無細胞系においてタンパク質を合成した。
<環状RNAの合成>
真核細胞用環状RNAは、ポリメラーゼによる転写反応を利用して合成した。まず、DNAオリゴヌクレオチドをDNA合成機で合成し(表3のFragment1〜Fragment3;これらの配列を、配列番号15〜17に示した)、T4 DNAリガーゼで連結させた後、アニーリング又はPCR法によって155、284、290、413塩基対の二本鎖DNAオリゴヌクレオチド(鋳型DNA)を合成した(表4及び5)。次いで、当該二本鎖DNAオリゴヌクレオチドを鋳型としてT7 RNAポリメラーゼによるin vitro転写を行い、129、258、264、387塩基の直鎖状の一本鎖RNAを合成し(表6及び7)、T4 RNAリガーゼを用いて5’末端と3’末端を連結して環状RNAを合成した。詳細を以下に示す。
【0047】
(1)オリゴヌクレオチドの調製
ポリメラーゼ反応の鋳型とした各種オリゴヌクレオチドの配列を表3に示す。表3中、pは5’末端がリン酸化されていることを示す。
表3中、DNAオリゴヌクレオチドはβ−シアノエチルホスホロアミダイト試薬(Glen Research社製)を用い、H−8−SE DNA合成機(ジーンワールド社製)により合成した。Fragment1及びFragment2は、化学リン酸化試薬(Glen Research社製)を用いて5’末端をモノリン酸化した。各オリゴヌクレオチドは、定法に従い脱保護し、Micropure IIカートリッジ(Biosearch Technologies社製)により精製した。Fragment1、Fragment2、Fragment3、及びFragment1 DNA senseは、さらに変性PAGEにより精製した。
【0048】
【表3】
【0049】
(2)in vitro転写反応の鋳型DNAの合成
表3、及び配列表の配列番号18〜35に記載の各種オリゴヌクレオチドを用いて、表4及び5に記載のin vitro転写反応の鋳型DNAを合成した。表4及び5中、下線部位はT7プロモーター配列を表す。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
4×FLAG DNA(配列番号36)は、5.22μMのFragment1(配列番号15)及びFragment2(配列番号16)の混合DNA(混合モル比=1:1)、40mM Tris−HCl(pH8.0)、8mM MgCl
2、2mM スペルミジンを含む反応液を、90℃、3分間加熱後、室温まで徐冷することによって得た。
8×FLAG DNA(配列番号37)は、Adaptor1(配列番号18)を鋳型として、Fragment1(配列番号15)及びFragment2(配列番号16)をT4 DNAリガーゼを用いて連結させ、得られた連結物を変性PAGEにより精製することによってアンチセンス鎖を合成し、当該アンチセンス鎖とForward primer1(配列番号21)をPrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCR法により二本鎖DNAを合成し、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製することによって得た。
12×FLAG DNA(配列番号38)は、Adaptor2(配列番号19)及びAdaptor3(配列番号20)を鋳型として、Fragment1(配列番号15)、Fragment2(配列番号16)、及びFragment3(配列番号17)をT4 DNAリガーゼを用いて連結させ、得られた連結物を変性PAGEにより精製することによってアンチセンス鎖を合成し、当該アンチセンス鎖とForward primer1(配列番号21)をPrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCR法により二本鎖DNAを合成し、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製することによって得た。
8×FLAG(2) DNA(配列番号39)及び8×FLAG(stop) DNA(配列番号40)は、12×FLAG DNA(配列番号38)を鋳型として、それぞれForward primer1(配列番号21)及びReverse primer3(配列番号24)、又はForward primer1(配列番号21)及びReverse primer4(配列番号28)をプライマーとして、PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCR法により二本鎖DNAを合成し、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製することによって得た。
8×FLAG(3) DNA(配列番号41)は、8×FLAG(2) DNA(配列番号39)を鋳型として、Forward primer2(配列番号35)及びReverse primer5(配列番号31)をプライマーとして、PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCR法により二本鎖DNAを合成し、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製することによって得た。
8×FLAG(3 stop) DNA(配列番号42)は、8×FLAG(stop) DNA(配列番号40)を鋳型として、Forward primer2(配列番号35)及びReverse primer6(配列番号32)をプライマーとして、PrimeSTAR(登録商標)HS DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いてPCR法により二本鎖DNAを合成し、QIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN社製)で精製することによって得た。
【0053】
(3)in vitro転写反応による直鎖状の転写RNAの合成
表4に記載の鋳型DNAを用いて、表6及び7に記載の直鎖状の転写RNAを合成した。表6及び7中、囲み部分はKozak配列を表し、太字の塩基(AUG)は開始コドンを表し、下線部位はFLAGコード配列を表し、二重下線部は終止コドン(UGA、UAG、UAA)を表す。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
4×FLAG RNA(配列番号43)、8×FLAG RNA(配列番号44)、及び12×FLAG RNA(配列番号45)は、それぞれ4×FLAG DNA(配列番号36)、8×FLAG DNA(配列番号37)、及び12×FLAG DNA(配列番号38)を鋳型として合成した。具体的には、T7 RNA Polymerase(タカラバイオ社製)を使用して行った。40mM Tris−HCl(pH8.0)、8mM MgCl
2、2mM スペルミジン、5mM DTT、各2mM rNTP(東洋紡社製)、20mM GMP(和光純薬工業社製)、1unit/μL Rnase Inhibitor(東洋紡社製)、2.5units/μL T7 RNA Polymerase、10ng/μL 鋳型DNAからなる反応液(反応液量:1mL)を各2本ずつ用意し、これらを42℃で2時間インキュベートし、転写反応を行った。8×FLAG DNA及び12×FLAG DNAを鋳型とした反応液に対しては、続けてDNase(プロメガ社製)を0.025units/μLとなるように添加し、37℃、15分間インキュベートし、反応液中の鋳型DNAの分解反応を行った。その後、各反応液に等量のTE飽和フェノール−クロロホルム混合液(5:1)を加えて核酸を抽出した後、3Mの酢酸ナトリウム水溶液(pH5.2)及びイソプロピルアルコールを加えてアルコール沈殿法によりRNAを回収し、変性PAGEを用いて転写産物である直鎖状RNAを単離した(5% ポリアクリルアミド、7.5M 尿素、25% ホルムアミド、1×TBE、1mm厚)。UV shadowing法により、目的物を含むバンドを可視化して切り出して細かく粉砕した後、溶出液[10mM EDTA(pH 8.0))で抽出した。抽出液をSep−Pak C18カートリッジ(ウォーターズ社製)で脱塩した後、50% アセトニトリルで溶出し、遠心エバポレーターにより濃縮した後に凍結乾燥した。RNAは、当該凍結乾燥物からアルコール沈殿により脱塩・回収した。得られたRNAは超純水に溶解し、適宜希釈後UV吸収スペクトルを測定し、収量を算出した(4×FLAG RNAの収量:3.56nmol、8×FLAG RNAの収量:10.06nmol、12×FLAG RNAの収量:5.75nmol)。
【0057】
8×FLAG(2) RNA(配列番号46)、8×FLAG(stop) RNA(配列番号47)、8×FLAG(3) RNA(配列番号48)、及び8×FLAG(3 stop) RNA(配列番号49)は、それぞれ8×FLAG(2) DNA、8×FLAG(stop) DNA、8×FLAG(3) DNA、及び8×FLAG(3 stop) DNAを鋳型としてMEGAscript(登録商標)T7 Kit(アンビオン社製)を使用して合成した。具体的には、製品マニュアル通りの反応液に、75mM GMP、5ng/μL 鋳型DNAを加えて反応液量400μL(但し、8×FLAG(stop) RNAは反応液量を600μLとした。)とし、各反応液を37℃、約16時間(但し、8×FLAG(3) RNA及び8×FLAG(3 stop) RNAは6時間)インキュベートし、転写反応を行った。その後、当該Kit付属のTURBO DNaseを反応液に添加し、製品マニュアル通り鋳型DNAの分解反応を行った。その後、各反応液に等量のTE飽和フェノール−クロロホルム混合液(5:1)を加えて核酸を抽出した後、3Mの酢酸ナトリウム水溶液(pH5.2)及びイソプロピルアルコールを加えてアルコール沈殿法によりRNAを回収し、変性PAGEを用いて転写産物である直鎖状RNAを単離した(5% ポリアクリルアミド、7.5M 尿素、25% ホルムアミド、1×TBE、1mm厚)。UV shadowing法により、目的物を含むバンドを可視化して切り出して細かく粉砕した後、溶出液[10mM EDTA(pH 8.0))で抽出した。抽出液全量(但し、8×FLAG(3) RNA及び8×FLAG(3 stop) RNAは抽出液全量の1/4量)をアミコンウルトラ−0.5mL(分画分子量:3K)(ミリポア社製)又はアミコンウルトラ−4(分画分子量:3K)(ミリポア社製)で脱塩した後、回収した。8×FLAG(3) RNA及び8×FLAG(3 stop) RNAの残った抽出液(抽出液全量の3/4量)は、Sep−Pak C18カートリッジ(ウォーターズ社製)で脱塩した後、50% アセトニトリルで溶出し、遠心エバポレーターにより濃縮した後に凍結乾燥し、RNAを当該凍結乾燥物からアルコール沈殿により脱塩・回収した。得られたRNAは超純水に溶解し、適宜希釈後UV吸収スペクトルを測定し、収量を算出した(8×FLAG(2) RNAの収量:0.975nmol、8×FLAG(stop) RNAの収量:2.01nmol、8×FLAG(3) RNAの収量:1.56nmol、8×FLAG(3 stop) RNAの収量:2.34nmol)。
【0058】
(4)転写RNAの環状化反応による環化体(環状RNA)の合成
Adaptor1(配列番号18)を用いて4×FLAG RNA(配列番号43)から4×FLAG RNA環化体(4×FLAG RNAの環状RNA)を、Adaptor2(配列番号19)を用いて8×FLAG RNA(配列番号44)から8×FLAG RNA環化体を、Adaptor3(配列番号20)を用いて12×FLAG RNA(配列番号45)から12×FLAG RNA環化体を、Adaptor4(配列番号29)を用いて8×FLAG(2) RNA(配列番号46)から8×FLAG(2) RNA環化体を、Adaptor5(配列番号30)を用いて8×FLAG(stop) RNA(配列番号47)から8×FLAG(stop) RNA環化体を、Adaptor6(配列番号33)を用いて8×FLAG(3) RNA(配列番号48)から8×FLAG(3) RNA環化体を、Adaptor7(配列番号34)を用いて8×FLAG(3 stop) RNA(配列番号49)から8×FLAG(3 stop) RNA環化体を、それぞれリガーゼ反応により合成した。リガーゼ反応は、1μMの転写RNA、5μMのDNAオリゴヌクレオチド(Adaptor1〜7)、0.0125units/μLのT4 RNA リガーゼ2(ニュー・イングランド・バイオラボ社製)、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、2mM MgCl
2、1mM DTT、 0.4mM ATPを含む反応液(反応液量:800μL(但し、4×FLAG RNAの反応液は3000μL、8×FLAG RNA及び12×FLAG RNAの反応液は5000μL、8×FLAG(3) RNAの反応液は600μL、8×FLAG(3 stop) RNAの反応液は1000μLとした)で行った。
【0059】
具体的には、T4 RNA リガーゼ2以外を全て添加した反応液を90℃で3分間加熱した後、室温まで徐冷した。その後、当該反応液にT4 DNAリガーゼ2を加え、37℃で3時間(但し、8×FLAG(2) RNA及び8×FLAG(2 stop) RNAの反応液は約16時間とした)インキュベートした。当該反応液に酢酸ナトリウム水溶液、グリコーゲン水溶液、及びイソプロピルアルコールを加えて冷却し、RNAを沈殿させて回収し、変性PAGEを用いて環化体(環状RNA)を単離した(5% ポリアクリルアミド、7.5M 尿素、25% ホルムアミド、1×TBE、1mm厚)。環化反応後の反応液を変性PAGEした後、SYBR Green II(タカラバイオ社製)により染色した結果、いずれの環状化反応液においても、環化体が形成されていることが確認された。
【0060】
UV shadowing法により、目的物を含むバンドを可視化して切り出して細かく粉砕した後、溶出液[10mM EDTA(pH 8.0)]で抽出した。抽出液をアミコンウルトラ−0.5mL(分画分子量:3K)(ミリポア社製)又はアミコンウルトラ−4(分画分子量:3K)(ミリポア社製)で脱塩し濃縮した後、RNAをアルコール沈殿により脱塩・回収した。4×FLAG RNA、8×FLAG RNA、及び12×FLAG RNAの反応液は、アミコンウルトラ−0.5mL等を用いて脱塩し濃縮した後、さらにマイクロコンウルトラセルYM−10(分画分子量:10K)で脱塩し濃縮した後、アルコール沈殿によりRNAを回収した。得られたRNAは超純水に溶解し、適宜希釈後UV吸収スペクトルを測定し、収量を算出した(4×FLAG RNA環化体の収量:375pmol(収率:12.5%)、8×FLAG RNA環化体の収量:396pmol(収率:7.93%)、12×FLAG RNA環化体の収量:253pmol(収率:5.05%)、8×FLAG(2) RNA環化体の収量:69.99pmol(収率:8.75%)、8×FLAG(stop) RNA環化体の収量:56.71pmol(収率:7.09%)、8×FLAG(3) RNA環化体の収量:35.56pmol(収率:5.93%)、8×FLAG(3 stop) RNA環化体の収量:84.82pmol(収率:8.48%))。精製後の各環化体を、変性PAGEにより電気泳動し、SYBR Green II(タカラバイオ社製)により染色した結果に得られた染色像を
図8〜10に示す。
図8のレーン1は4×FLAG RNAを、レーン2は4×FLAG RNA環化体を、レーン3は8×FLAG RNAを、レーン4は8×FLAG RNA環化体を、レーン5は12×FLAG RNAを、レーン6は12×FLAG RNA環化体を、それぞれアプライした。
図9のレーン1は8×FLAG(2) DNAを、レーン2は8×FLAG(2) RNAを、レーン3は8×FLAG(2) RNA環化体を、レーン4は8×FLAG(stop) DNAを、レーン5は8×FLAG(stop) RNAを、レーン6は8×FLAG(stop) RNA環化体を、それぞれアプライした。
図10のレーン1は8×FLAG(3) DNAを、レーン2は8×FLAG(3) RNAを、レーン3は8×FLAG(3) RNA環化体を、レーン4は8×FLAG(3 stop) DNAを、レーン5は8×FLAG(3 stop) RNAを、レーン6は8×FLAG(3 stop) RNA環化体を、それぞれアプライした。
【0061】
<RNA環化体(環状RNA)を鋳型としたタンパク質の合成>
(5)ウサギ網状赤血球抽出液を用いた翻訳反応
1.843μMのRNA環化体又は1.843μMの環化前の直鎖状の転写RNAを65℃、3分間加熱後、氷水で急冷した後、ウサギ網状赤血球抽出液に添加し、翻訳反応を行った。具体的には、479.2nMの急冷後のRNA、70% Rabbit Reticulocyte Lysate(プロメガ社製)、10μM Amino Acid Mixture Minus Methionine、10μM Amino Acid Mixture Minus Leucine(いずれも、Rabbit Reticulocyte Lysate System(プロメガ社製)に付属)、0.8units/μL RNase Inhibitor(東洋紡社製)からなる反応液(反応液量:25μL)とし、各反応液を30℃で1.5〜19時間インキュベートし、翻訳反応を行った。その後、各反応液から2.5μLをサンプリングし、2×SDSサンプル緩衝液[0.125M Tris−HCl(pH 8.0)、2% SDS、 30% グリセロール、0.02% ブロモフェノールブルー、5% 2−メルカプトエタノール]5μLと混合し、70℃で15分間加熱後、5%ポリアクリルアミドゲル又は10−20%勾配ポリアクリルアミドゲル(ATTO社製)を用いて電気泳動した(泳動用緩衝液: 25mM Tris−HCl、0.1% SDS、192mM グリシン)。ゲル中に展開されたタンパク質をPVDF膜(ミリポア社製)に転写後、マウス産生抗FLAG抗体、抗マウスIgG抗体ペルオキシダーゼ(HRP)複合体(いずれもSigma−Aldrich社製)と反応させ、HRP基質(SuperSignal West Femto Maximun Sensitivity Substrate、Thermo社製)を用いて、FLAG配列特異的にバンドを可視化(Light−Capture、ATTO社製)した。
図11〜14に、FLAGを含むタンパク質のバンドを可視化した結果を示す。
図11〜14の各レーンには、それぞれ、表8〜11に記載の反応液をアプライした。
【0062】
【表8】
【0063】
【表9】
【0064】
【表10】
【0065】
【表11】
【0066】
この結果、
図11に示す通り、4×FLAG RNA環化体を鋳型とした場合(レーン3)及び8×FLAG RNA環化体を鋳型とした場合(レーン5)において、高分子量の翻訳産物(タンパク質リピート)が検出された。中でも、8×FLAG RNA環化体を鋳型とした場合に最も多くのタンパク質リピートが合成されていた。また、
図12に示す通り、翻訳反応の時間が長くなるほど、高分子量の翻訳産物(タンパク質リピート)が多く検出された。また、
図13及び14に示す通り、終止コドンを有する8×FLAG(stop) RNA環化体や8×FLAG(3 stop) RNA環化体でも、少量ではあるが、高分子量の翻訳産物が検出された。
【0067】
[実施例3]
実施例2で合成されたRNA環化体及び環化前の直鎖状の転写RNAを鋳型として、ヒト由来の無細胞系においてタンパク質を合成した。
鋳型RNAを終濃度1.2μMとなるように、AvidExpress(登録商標)Cell−Free Translation System(ヒトHeLaS3細胞由来、Avidity社製)を用いて製品マニュアルどおりに翻訳反応を行った。反応終了後、各反応液から2.5μLをサンプリングし、実施例2と同様にして10−20%勾配ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、ゲル中に展開されたタンパク質をPVDF膜に転写後、抗FLAG抗体、抗マウスIgG抗体HRP複合体を反応させ、HRP基質と反応させることでFLAG配列特異的なタンパク質のバンドを可視化した。
【0068】
図15に、FLAGを含むタンパク質のバンドを可視化した結果を示す。
図15の1レーンにはRNA無添加の反応液を、レーン2は4×FLAG RNAを添加した反応液を、レーン3は4×FLAG RNA環化体を添加した反応液を、レーン4は8×FLAG RNAを添加した反応液を、レーン5は8×FLAG RNA環化体を添加した反応液を、レーン6は12×FLAG RNAを添加した反応液を、レーン7は12×FLAG RNA環化体を添加した反応液を、それぞれアプライした。
図15に示す通り、8×FLAG RNA環化体を鋳型とした場合(レーン5)及び12×FLAG RNA環化体を鋳型とした場合(レーン7)において、高分子量の翻訳産物(タンパク質リピート)が検出された。中でも、8×FLAG RNA環化体を鋳型とした場合に最も多くのタンパク質リピートが合成されていた。
【0069】
[実施例4]
実施例2で合成されたRNA環化体及び環化前の直鎖状の転写RNAを鋳型として、ヒト細胞内の翻訳系を用いてタンパク質を合成した。
まず、細胞培養用12ウェルプレート(日本ベクトン・ディッキンソン社製)に、1ウェルあたりOpti−MEM I Reduced−Serum Medium(インビトロジェン社製)145μL及び2.4μMの鋳型RNA溶液5μLを混合し、Lipofectamine RNAiMAX(インビトロジェン社製)2μLを添加して混合し、15分間静置した。その後、10%ウシ胎児血清(インビトロジェン社製)を含有させたDulbecco’s Modified Eagle Medium(和光純薬工業社製)を用いて1mLあたり100,000個に希釈したHeLa細胞(ヒト子宮頸部癌由来の培養細胞株、理化学研究所バイオリソースセンターより提供)を850μL添加して37℃、5% CO
2環境下で24時間培養した(RNA終濃度:12nM)。1ウェルあたり細胞溶解バッファー(CSTジャパン社製)200μLを添加して細胞を溶解させた後、遠心分離処理を行った。得られた上清7.5μLをサンプリングし、実施例2と同様にして10−20%勾配ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、ゲル中に展開されたタンパク質をPVDF膜に転写した。その後、抗FLAG抗体又は抗アクチン抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗マウスIgG抗体HRP複合体を反応させ、HRP基質と反応させることによって、FLAG配列特異的なタンパク質のバンド又はアクチンタンパク質のバンドを可視化した。
【0070】
図16に、FLAGを含むタンパク質及びアクチンタンパク質のバンドを可視化した結果を示す。
図16の1レーンにはRNA無添加の反応液を、レーン2は8×FLAG(2) RNAを添加した反応液を、レーン3は8×FLAG(2) RNA環化体を添加した反応液を、レーン4は8×FLAG(stop) RNAを添加した反応液を、レーン5は8×FLAG(stop) RNA環化体を添加した反応液を、それぞれアプライした。
図16に示す通り、8×FLAG(2) RNA環化体を鋳型とした場合(レーン3)において、高分子量の翻訳産物(タンパク質リピート)が検出された。また、アクチンタンパク質のバンドが全てのレーンにおいてほぼ同程度の濃さであったことから、各反応液に添加した細胞溶解液中のタンパク質量が同程度であることが示された。
本実施例により、本発明の真核細胞用環状RNAを哺乳細胞内へ導入することにより、回転式タンパク質翻訳を行うことが可能であることが示された。
【0071】
[実施例5]
実施例2で合成されたRNA環化体及び環化前の直鎖状の転写RNAを鋳型として、ヒト細胞内の翻訳系を用いてタンパク質を合成した。
まず、細胞培養用24ウェルプレート(日本ベクトン・ディッキンソン社製)に、1ウェルあたりOpti−MEM I Reduced−Serum Medium(インビトロジェン社製)45μL及び2μMの鋳型RNA溶液4μLを混合し、Lipofectamine RNAiMAX(インビトロジェン社製)1μLを添加して混合し、15分間静置した。その後、10%ウシ胎児血清を含有したDulbecco’s Modified Eagle Medium(和光純薬工業社製)を用いて1mLあたり143,000個に希釈したHeLa細胞を350μL添加して37℃、5% CO
2環境下で24時間培養した(RNA終濃度:20nM)。1ウェルあたり細胞溶解バッファー(CSTジャパン社製)30μLを添加して細胞を溶解させた後、遠心分離処理を行った。得られた上清のタンパク量をCoomassie Plus(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて測定し、細胞溶解バッファーを用いてタンパク濃度を1.5 mg/mLに調製した。タンパク質濃度調整後に、7.5μLをサンプリングし、実施例2と同様にして10−20%勾配ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動し、ゲル中に展開されたタンパク質をPVDF膜に転写した。その後、抗FLAG抗体又は抗アクチン抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗マウスIgG抗体HRP複合体を反応させ、HRP基質と反応させることによって、FLAG配列特異的なタンパク質のバンド又はアクチンタンパク質のバンドを可視化(ChemiDoc XRS Plus、バイオ・ラッド ラボラトリーズ社製)した。
【0072】
図17に、FLAGを含むタンパク質及びアクチンタンパク質のバンドを可視化した結果を示す。
図17の1レーンにはRNA無添加の反応液を、レーン2は8×FLAG(3) RNAを添加した反応液を、レーン3は8×FLAG(3) RNA環化体を添加した反応液を、レーン4は8×FLAG(3 stop) RNAを添加した反応液を、レーン5は8×FLAG(3 stop) RNA環化体を添加した反応液を、それぞれアプライした。
図17に示す通り、8×FLAG(3) RNA環化体を鋳型とした場合(レーン3)において、高分子量の翻訳産物(タンパク質リピート)が検出された。また、アクチンタンパク質のバンドが全てのレーンにおいてほぼ同程度の濃さであったことから、各反応液に添加した細胞溶解液中のタンパク質量が同程度であることが示された。
【0073】
[実施例6]
実施例2の(4)で合成された8×FLAG RNAの環状RNAをHeLa細胞にトランスフェクションし、蛍光標識した抗-FALG抗体を用いた細胞染色により、細胞内に導入したRNAの翻訳産物の検出を行った。
まず、カバーガラスを各ウェルに入れた細胞培養用24ウェルプレート(日本ベクトン・ディッキンソン社製)に、10%ウシ胎児血清を含有したDulbecco’s Modified Eagle Medium(和光純薬工業社製)を用いて、1mLあたり100,000個に希釈したHeLa細胞を1ウェル当たり500μl添加して、37℃、5% CO
2環境下で一晩培養した。その後、各ウェルから培地を除き、Opti−MEM I Reduced−Serum Medium(インビトロジェン社製)を200μL添加した。Opti−MEM I Reduced−Serum Medium(インビトロジェン社製)32.5μL及び2μg/mLの鋳型RNA溶液2.5μLを混合し、この溶液にOpti−MEM I Reduced−Serum Medium(インビトロジェン社製)12μL及びOligofectamine(インビトロジェン社製)3μLを混合した溶液を添加し、15分間静置した後、各ウェルに加え、37℃、5% CO
2環境下で6時間培養した。
トランスフェクション6時間後、培地を取り除き、10%ウシ胎児血清を含有したDulbecco’s Modified Eagle Medium(和光純薬工業社製)を1ウェル当たり500μL加え、更に37℃、5%CO
2環境下で24時間培養した。その後、培地を取り除き、洗浄後、4%PFA/PBSで細胞を固定化した。0.3%Triton X−100/PBSで細胞を処理し、次いで1%BSA/PBSでブロッキングを行った後、1%BSA/PBSで調製したマウス抗-FLAG抗体(シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を添加して、1時間インキュベートした。洗浄後、1%BSA/PBSで調製したAlexa Flour 488標識抗-マウスIgG抗体(ライフテクノロジーズ・ジャパン株式会社製)を添加して、1時間インキュベートした。洗浄後、顕微鏡観察を行った。結果を
図18、19に示す。
【0074】
図18及び
図19の結果より、環状化体のRNAについては、蛍光が細胞内で広く分布し、直鎖状RNAについては、蛍光は小さな点として検出されることがわかった。また、RNAなしの対照では、発光は見られなかった。