(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。また、本明細書において、乗物とは、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物、地上以外を移動する航空機や船舶など、シートを装着できる移動用のものをいうものとする。また通常の着座荷重とは、着座するときに生じる着座衝撃、乗物の急発進によって生じる加速時の荷重などを含むものである。さらに、後面衝突時の衝撃エネルギーとは、後面衝突時に生じる大きな荷重によるエネルギーであって、後方側からの乗物による大きな追突、後退走行時における大きな衝突等に伴うものであり、通常の着座時に生じる荷重と同様な荷重領域の荷重によるエネルギーは含まないものである。また、側面衝突時の衝撃エネルギーとは、側面衝突時に生じる大きな荷重によるエネルギーであって、側方側からの乗物による大きな追突等に伴うものであり、通常の着座時に生じる荷重と同様な荷重領域の荷重によるエネルギーは含まないものである。
また、左右方向とは、車両前方を向いた状態での左右方向を意味し、後述するシートバックフレーム1の幅方向(シート幅方向)と一致する方向である。また、前後方向とは、乗員が着座した状態での前後方向を意味するものである。
【0024】
図1乃至
図9は本発明の実施形態に係るもので、
図1は車両用シートの概略斜視図、
図2はシートフレームの概略斜視図、
図3はシートフレームの背面図、
図4はフレーム基礎部の概略斜視図、
図5は
図4のA−A線による断面図、
図6はフレーム基礎部の後面衝突後の状態を示す説明図、
図7はシートフレームのサイドフレームの説明図、
図8はフレームの後面衝突前の状態を示す説明図、
図9はフレームの後面衝突後の状態を示す説明図である。また、
図10は本発明の他の実施形態に係るものであり、サイドフレーム周辺の斜視図である。
【0025】
<<車両用シートSの基礎構成>>
図1乃至
図9を参照して、本実施形態に係る車両用シートSについて説明する。
車両用シートSは、
図1で示すように、シートバックS1(背部)、着座部S2、ヘッドレストS3より構成されており、シートバックS1(背部)及び着座部S2はシートフレームFにクッションパッド1a,2aを載置して、表皮材1b,2bで被覆されている。なお、ヘッドレストS3は、頭部の芯材(不図示)にパッド材3aを配して、表皮材3bで被覆して形成される。また符号19は、ヘッドレストS3を支持するヘッドレストピラーである。
【0026】
車両用シートSのシートフレームFは、
図2で示すように、シートバックS1を構成するシートバックフレーム1、着座部S2を構成する着座フレーム2から構成されている。
着座フレーム2は、上述のようにクッションパッド2aを載置して、クッションパッド2aの上から表皮材2bによって覆われており、乗員を下部から支持する構成となっている。着座フレーム2は脚部(不図示)で支持されており、この脚部には、図示しないインナレールが取り付けられ、車体フロアに設置されるアウタレールとの間で、前後に位置調整可能なスライド式に組み立てられている。
また着座フレーム2の後端部は、リクライニング機構11を介してシートバックフレーム1と連結されている。
【0027】
リクライニング機構11は、フレーム側部としての着座側サイドフレーム60に取り付けられている。そして、リクライニング機構11は、少なくともリクライニング機構11の回動軸に沿ったリクライニングシャフト11aを備えており、リクライニングシャフト11aは、シートバックフレーム1の下方に配設された一対のフレーム基礎部17(メンバーサイド)に設けられたシャフト挿通孔17c(
図4参照)からシートフレームFの側部に突出するように嵌通して配設されている。
【0028】
シートバックS1は、シートバックフレーム1に、上述のようにクッションパッド1aを載置して、クッションパッド1aの上から表皮材1bにより覆われており、乗員の背中を後方から支持するものである。本実施の形態において、シートバックフレーム1は、
図2で示すように、略矩形状の枠体となっており、サイドフレーム本体部15と上部フレーム16と、フレーム基礎部17と、下部フレーム架設部18とを備えている。なお、以下で説明するサイドフレーム本体部15の側板15aと、上部フレーム16の側方部16aと、フレーム基礎部17の側方板17aと、着座フレーム2の着座側サイドフレーム60が、本発明の「フレーム側部」に相当する。また、シートバックフレーム1において、サイドフレーム本体部15と、フレーム基礎部17によって、サイドフレーム70が構成されている。
【0029】
2本(一対)のサイドフレーム本体部15は、シートバック幅を構成するため、左右方向に離間して配設され、上下方向に延在するように配設されている。そして、一対のサイドフレーム本体部15の上端部側を連結する上部フレーム16が、サイドフレーム本体部15から上方に延出している。なお、上部フレーム16は、一方のサイドフレーム本体部15から上方に延設された後、屈曲し、他方のサイドフレーム本体部15まで延設されている。すなわち、上部フレーム16は、側方部16aと、上方部16bとを備えている。
【0030】
閉断面形状(たとえば、断面が円形、矩形等)の部材からなる上部フレーム16は、
図2で示すように、略U字状に屈曲されている。そして、上部フレーム16の側方部16aは、サイドフレーム本体部15の側板15aに対して上下方向に沿って一部が重なるように配設され、この重なり部分においてサイドフレーム本体部15に固着接合される。なお、本実施形態では上部フレーム16は断面円形の管状部材によって形成されているが、断面が矩形の管状部材としても良い。
【0031】
また、上部フレーム16の上方部16bには、ヘッドレストS3が配設されている。ヘッドレストS3は、前述のように芯材(不図示)の外周部にパッド材3aを設け、パッド材3aの外周に表皮材3bを被覆して構成している。上部フレーム16には、ピラー支持部19aが配設されている。このピラー支持部19aには、ヘッドレストS3を支持するヘッドレストピラー19(
図1参照)がガイドロック(不図示)を介して取り付けられて、ヘッドレストS3が取り付けられるようになっている。なお、本実施形態ではシートバックS1とヘッドレストS3が別体となって形成されている例を示したが、シートバックS1とヘッドレストS3が一体となって形成されたバケットタイプとしても良い。
【0032】
シートバックフレーム1の一部を構成するサイドフレーム本体部15は、
図2で示すように、シートバックフレーム1の側面を構成する延伸部材であり、平板状の側板15aと、この側板15aの前端部(乗物前方側に位置する端部)からU字型に内側へ屈曲し、折り返した前縁部15bと、後端部からL字型に内側へ屈曲した後縁部15cとを有している。なお、側板15aの後端部と後縁部15cとは、板材を屈曲して形成された構成とするだけでなく、連結部15xにおいて二枚の板片を接合した構成としてもよい。
【0033】
また、サイドフレーム本体部15の側板15aには、サイドエアバッグが収納されたサイドエアバッグユニット50が取着されている。サイドエアバッグユニット50は、側方から大きな衝撃荷重が加わった際に作動するサイドエアバッグが収納された本体部51と、この本体部51をサイドフレーム本体部15に取着するための取着部52とを備えている。そして、サイドフレーム本体部15の側板15a上に、取着部52が、締結手段53によって固定される。
【0034】
さらに、本実施形態の前縁部15bには、後縁部15c側へ張り出した突起部15dが形成されており、この突起部15dには、付勢手段としての引張りコイルばね35を係止するための係止部としての係止孔が形成されている。
そして、本実施形態のサイドフレーム本体部15には、後述の移動部材30が係止されている。なお、移動部材30の構成、作用は以下で詳述する。
【0035】
<<受圧部材20の構成>>
シートバックフレーム1内(両側のサイドフレーム本体部15の間)でシートバックフレーム1の内側領域には、クッションパッド1aを後方から支える受圧部材としての受圧部材20が配設されている。
【0036】
本実施形態の受圧部材20は、樹脂を板状の略矩形状に形成した部材であり、クッションパッド1aと接する側の表面には滑らかな凹凸が形成されている。受圧部材20の裏側の上部側と下部側には、
図2で示されるように、上方に配設される連結部材としてのワイヤ21及び下方に配設される連結部材としてのワイヤ22を係止するための爪部が形成されている。
【0037】
本実施形態の受圧部材20は、連結部材に支持されている。すなわち、連結部材としての2本のワイヤ21,22が両側のサイドフレーム本体部15間に架設され、受圧部材20の裏側の上部側と下部側で、所定位置に形成された爪部によって受圧部材20と係合し、受圧部材20をクッションパッド1aの背面で、支持している。ワイヤ21,22は、ばね性を有するスチール線材から形成され、連結部である凹凸部が形成されている。
【0038】
特に本実施形態の受圧部材20に係止された2本のワイヤ21,22のうち、上方に位置するワイヤ21は、下方に位置するワイヤ22よりも細いワイヤで構成されている。これにより、受圧部材20は下方と比較して上方が後方へより移動しやすくなっている。
【0039】
また、ワイヤ22は太い線材で構成されるため、剛性が高く、通常の着座時は変形しにくい。したがって、通常の着座時、細い線材からなるワイヤ21によって支持される受圧部材20の上方は後方へ移動しやすく、太い線材からなるワイヤ22によって支持される受圧部材20の下方は大きく後方へ移動しない。その結果、通常の着座時においては受圧部材20の上方は適度に後方へ沈み込み、下方は乗員の身体を支持するため、着座感が損なわれることがない。
【0040】
さらに、ワイヤ21,22は凹凸部が形成されていることによって、所定以上の荷重(後述する衝撃低減部材の可動又は回動の荷重より大きな荷重)によって大きく変形し、受圧部材20が、より多くの移動量をもって後方へ動くように構成されている。
【0041】
図2で示すように、本実施形態の受圧部材20に係止された2本のワイヤ21,22のうち、上部側に係止されたワイヤ21の両端部は、両側のサイドフレーム本体部15に設けられた軸支部21aに掛着されている。一方、下部側に係止されたワイヤ22の両端部は、左右のサイドフレーム本体部15に装着された移動部材30に掛着されている。
【0042】
ワイヤ21よりも太い線材で構成されたワイヤ22は、上述のように変形しにくく、通常の着座時、受圧部材20の下方部分は後方へ移動しにくい。したがって、後面衝突時には十分な沈み込み量を確保するため、ワイヤ22の端部に移動部材30が取り付けられる。
【0043】
<<移動部材30の構成>>
衝撃低減部材としての移動部材30は、後面衝突等により所定以上の衝撃荷重が受圧部材20に加わったときに、連結部材(ワイヤ22)を介して伝わる衝撃荷重により乗物後方に移動すると共に受圧部材20を後方へ移動させ、乗員を後方へ移動するものである。なお、「移動」とは、水平移動、回動等の動きを指す。本実施形態では、軸部32を回動軸として回動する移動部材30について説明する。この移動部材30の乗物後方への移動により受圧部材20を乗物後方へ大きく移動させることができ、その結果、乗員を後方へ移動させるため、乗員にかかる荷重を効率的に低減することができる。
【0044】
本実施形態の移動部材30は、
図2で示すように、両側のサイドフレーム本体部15の側板15aの内側に、回動軸としての軸部32を介して回動自在に軸支され、連結部材としての下方位置のワイヤ22を係止すると共に、ワイヤ22を付勢する付勢手段としてのばね(引張りコイルばね35)と連結されるものである。つまり、移動部材30は、付勢手段35と連結しており、連結部材としてのワイヤ22を介して受圧部材20をシートバックフレーム1の前方側に付勢するように構成されている。
そして、本実施形態の移動部材30は、回動可能な軸部32によって、サイドフレーム本体部15の内側、より詳細には側板15aの一部がシート内側に膨出して形成された凸部15eに軸支されている。
【0045】
上述した移動部材30は、両側のサイドフレーム本体部15に取り付けられており、両側にそれぞれ配設された移動部材30に、ワイヤ22の両端部が掛着されており、各々の移動部材30が個別に作動するように構成されている。
本実施形態では、移動部材30が、両側のサイドフレーム本体部15に取り付けられており、これら両側に取り付けられた移動部材30は、互いに独立して移動(回動)するように構成されている。このため、荷重が左右方向に偏って生じた場合において、荷重に合わせて両側のサイドフレーム本体部15に取り付けられた移動部材30が、各々独立して移動(回動)することになり、衝撃荷重の大きさに応じて、乗員の身体を後方へ沈み込ませることができる。
【0046】
<<受圧部材20と移動部材30の作用効果>>
以下、受圧部材20と移動部材30の構成及び作用を説明する。
乗員が着座した通常の着座時において、シートバックS1内のクッションパッド1a、受圧部材20、ワイヤ22を介して、移動部材30を後方移動(回動)させる張力が生じる。一方、引張りコイルばね35は、移動部材30をシートバックフレーム1の前方側へ移動(回動)させるように付勢している。ここで、移動部材30に連結されている引張りコイルばね35は、通常の着座時において生じる荷重領域では撓まない荷重特性を有しているため、移動部材30は常に初期位置に制止されている。つまり、移動部材30を移動(回動)させる力に抗して初期状態に復帰させる力が、通常の着座時に最も大きくなるように構成されている。
【0047】
そして、移動部材30に備えられた移動阻止部39は、移動部材30の移動(回動)後にサイドフレーム本体部15の後縁部15cと当接して移動(回動)を阻止する当接部である。
移動部材30の移動阻止部39は移動部材30を外周方向に延出させて一体に形成されており、その当接面が移動(回動)後においてサイドフレーム本体部15(より詳細には、後縁部15c)と当接するので、後面衝突等により所定以上の衝撃荷重が受圧部材20に加わったときであっても、移動部材30の移動(回動)を安定して停止させることができる。
この移動阻止部39は、付勢手段(引張りコイルばね35)や連結部材(ワイヤ22)と干渉しない位置に形成される。
【0048】
なお、本実施形態においては、移動部材30の移動阻止部39がサイドフレーム本体部15に直接当接して移動(回動)を阻止するように構成されているが、移動阻止部39とサイドフレーム本体部15との間に、当接時に発生する異音を消すために、移動部材30の移動(回動)停止の安定を阻害しない程度の厚さを有するラバーなどの消音部材を取り付けることもでき、このように構成すると、安定した移動(回動)阻止ができるとともに、消音効果が期待できる。
【0049】
常時において移動部材30は、サイドフレーム本体部15(より詳細には、凸部15eの一部を切り欠いた部分)に当接し、引張りコイルばね35による上方向に加わる力を押し止め、移動部材30が前方に移動(回動)しすぎることがないように移動(回動)範囲を制限している。
【0050】
そして、後面衝突時においては、慣性で乗員が後方に移動しようとすると、この荷重が受圧部材20と、受圧部材20に係止されたワイヤ22を介して、移動部材30を後方に移動(回動)させる方向に張力がかかる。このときの張力は、移動部材30を初期位置に留めている引張りコイルばね35を伸長させ、移動部材30を後方に移動(回動)させるのに十分な荷重となる。
【0051】
移動部材30が移動(回動)を始める力の閾値は、通常の着座荷重よりも大きな値に設定されている。
ここで、移動部材30が移動(回動)を始める力の閾値について、通常着座している状態(ここでは、着座衝撃や乗物の急発進によって生じる小さな衝撃は除いている)でシートバックS1にかかる荷重は150N程度であるので、閾値は150Nより大きい値が好ましい。
【0052】
また、通常の着座時に生じる着座衝撃や、乗物の急発進等によって生じる加速時の荷重を考慮して、250Nより大きな値に設定することが好ましく、このようにすると、後面衝突以外では移動部材30が作動せず、安定した状態を維持することができる。
【0053】
上述のように、移動部材30を後方に移動(回動)させることで、移動部材30に掛着されているワイヤ22が後方に移動し、それと共にワイヤ22に係止されている受圧部材20と、受圧部材20に支持されているクッションパッド1aが後方に移動し、乗員をシートバックS1内に沈み込ませることができる。
【0054】
移動部材30は、ワイヤ22を介して生じる張力に対し、上述したような移動(回動)特性を有しているために、後面衝突が生じた場合は確実に、且つ効率よく乗員をシートバックS1のクッションパッドに沈み込ませることができる。
このとき、乗員の背部がシートバックS1に沈み込むことで後方に移動しているが、ヘッドレストS3の位置はシートバックS1に対して相対的に変わらないため、ヘッドレストS3と乗員の頭部の隙間が縮まり、ヘッドレストS3で頭部を支持することができるため、頸部へ加わる衝撃を効果的に軽減することができる。
さらに、上記のように、移動部材30に係止されたワイヤ22によって、サイドフレーム本体部15へ衝撃エネルギーを効率よく伝達することが可能となる。
【0055】
上記実施形態では、移動部材30を左右両側のサイドフレーム本体部15に設けた例を示しているが、一方のサイドフレーム本体部15のみに設ける構成としてもよい。この場合には、移動部材30が設けられていない側のサイドフレーム本体部15には、ワイヤ21,22を直接係止するように構成することができる。
【0056】
<<フレーム基礎部17、下部フレーム架設部18の基礎構成>>
シートバックフレーム1において、フレーム基礎部17に接合される下部フレーム架設部18(メンバーセンター)は、連結フレームに相当し、左右方向に離間して配設された一対のフレーム基礎部17を連結するように形成され、フレーム基礎部17に対して当接して配設されている。このとき、下部フレーム架設部18は、側方板17a及び中間板17bの両方に接合されていると取付剛性が向上するため好ましい。さらに、下部フレーム架設部18の側方端部が側方板17aに対して当接するように形成されていると、側方荷重に対して剛性が向上する。なお、本実施形態において、下部フレーム架設部18は中間板17bの前方に配設されているが、中間板17bの後方に配設されていても良い。
【0057】
なお、本実施形態のシートバックフレーム1は、サイドフレーム本体部15とフレーム基礎部17とが別部材で形成されているが、一体の板状フレーム等で形成してもよい。また、フレーム基礎部17と下部フレーム架設部18はそれぞれ別部材として形成された例を示すが、一体に形成された構成としても良い。
【0058】
本発明の車両用シートS(より詳細には、フレーム基礎部17)は、衝撃荷重が加わったときに変形する脆弱部(以下で説明する孔部17k、内方脆弱部17e、側方脆弱部17m)と、脆弱部の一部を挟み込む位置に配設されて脆弱部の変形量を規制する規制部40(以下で説明する第1の規制部41、第2の規制部42)と、を備えている。なお、本明細書中において、「脆弱部」とは、後面衝突時等の所定以上の大きさの衝撃荷重が加わった際に変形する脆弱性を備えた部分を示すものであり、穴部、凹部等により形成されたものである。
【0059】
<<フレーム基礎部17の構成>>
フレーム基礎部17は、上下方向(前後方向)に延びる側方板17aと、側方板17aから左右方向の内側に向かって延出する中間板17bとを備えている。
図4に示すように、側方板17aと中間板17bとは、互いに連結部17xにおいて連結されている。そして、フレーム基礎部17は、脆弱部として、側方板17aの後端部(側方板17aと中間板17bとを連結する連結部17x)上に形成される第1の脆弱部としての孔部17kと、孔部17kと連結され、側方板17a上に形成される第2の脆弱部としての側方脆弱部17mとを有している。
さらに、フレーム基礎部17においては、孔部17kと連結され、中間板17b上に形成される第3の脆弱部としての内方脆弱部17eが形成されている。
【0060】
フレーム基礎部17は、サイドフレーム本体部15の側板15aに接合される側方板17aと、側方板17aの後端部から略垂直に、サイドフレーム本体部15の内側に向かって折曲して形成された中間板17bとにより形成されている。側方板17aの下方には、リクライニングシャフト11aが挿通されるシャフト挿通孔17cが形成されており、側方板17aの下方には着座フレーム2がリクライニング機構11を介して配設されている。
【0061】
また、側方板17aにおいて、シャフト挿通孔17cの上方には、フレーム基礎部17をサイドフレーム本体部15に取り付けるための取付け孔17dが複数形成されている。サイドフレーム本体部15の下方には、側方板17aが重ねられた際に、取付け孔17dと整合する位置において孔が設けられており、このサイドフレーム本体部15に形成された孔とフレーム基礎部17の取付け孔17dとを貫通するようにボルト等の接合手段が貫通され、サイドフレーム本体部15とフレーム基礎部17とが接合される。なお、複数形成された取付け孔17dはすべてサイドフレーム本体部15に対して固定されている必要はなく、また、サイドフレーム本体部15以外の部材が取り付けられる構成としても良い。
【0062】
中間板17bには、後面衝突時の衝撃エネルギーを効率良く吸収するため、所定以上の衝撃荷重に対して可撓性を備えた内方脆弱部17eが形成されている。内方脆弱部17eは、断面略半円弧状で、前方へ凹んだ凹部により形成されており、一対のサイドフレーム本体部15の内側に向かって延在するように形成されている。換言すると、内方脆弱部17eは、左右方向、すなわちシート幅方向に沿って、サイドフレーム本体部15の内側に向かって凹むように形成された凹部である。
【0063】
後面衝突時等、乗員が急激に後方へ移動する際、その衝撃荷重を受けることにより、内方脆弱部17eが上下方向に押しつぶされ、フレーム基礎部17が折曲するように変形し、この変形に伴い、シートバックフレーム1が後傾する。したがって、内方脆弱部17eは、下部フレームを構成する部材の中でも、特にサイドフレーム本体部15の下方に備えられるフレーム基礎部17に形成されていると好適である。なお、後面衝突時の衝撃エネルギーを吸収するため、フレーム基礎部17を十分に折曲させることができれば、内方脆弱部17eは、後方に凹むように凹設された構成としても良い。さらに、通常の着座荷重に耐えられる強度を備えていれば、内方脆弱部17eを変形しやすくするため、内方脆弱部17eを構成する部分の板厚のみを薄く形成しても良い。
【0064】
フレーム基礎部17の中間板17bに形成された内方脆弱部17eは、下部フレーム(より詳細には、下部フレーム架設部18)の長手方向(シート幅方向)に沿って延在する水平な部分(水平部17f)と、水平部17fの長手方向の一端側に形成された屈曲部17gと、屈曲部17gから斜め上方に傾斜して延在する傾斜部17hとを備えている。
【0065】
そして、内方脆弱部17eを構成する水平部17fは、その長手方向において屈曲部17gと対向する側の端部において、内方脆弱部17e(より詳細には、水平部17f)の一部が切り欠かれている。この切り欠かれた部分が孔部17kであり、孔部17kと内方脆弱部17eとは、連結されるように形成されている。このように、内方脆弱部17eと孔部17kとが連結するように形成されているため、後面衝突時等の衝撃荷重がフレーム基礎部17に加わった際、以下において説明するように、孔部17kを起点としてフレーム基礎部17の内方脆弱部17eが変形することにより、衝撃エネルギーを吸収する。なお、本実施形態の第1の脆弱部として、孔部17kを示したが、第1の脆弱部は必ずしも穴によって形成されていなくても良い。第1の脆弱部は、第2の脆弱部である側方脆弱部17m、第3の脆弱部である内方脆弱部17eよりも小さい衝撃荷重により変形するように形成されていれば良く、例えば、側方脆弱部17m、内方脆弱部17eよりも板厚が薄く形成された構成や、深く凹んだ凹部によって形成された構成としても良い。
【0066】
衝撃荷重に対して、孔部17kを脆弱部(内方脆弱部17e及び側方脆弱部17m)よりも変形しやすくするために、例えば、孔部17kの幅(高さ方向の大きさ)は、少なくとも水平部17fまたは側方脆弱部17mの短手方向(上下方向)の幅と同等、或いはそれよりも若干大きく形成するとよい。孔部17kの高さ方向の大きさを水平部17の上下方向の幅と同等、或いはそれよりも大きく形成することにより、後面衝突時等の衝撃荷重がかかった際、水平部17fよりも先に孔部17kが変形しやすくなるため、孔部17kを起点として、内方脆弱部17eを変形させることができる。
【0067】
内方脆弱部17eに備えられた水平部17fは、後面衝突等、シートバックフレーム1に対して所定の衝撃荷重(通常の着座時以上の大きな衝撃荷重)が加わった際に、撓むことができ、上下方向に潰れるように変形する(
図6参照)。その結果、後傾荷重を安定して効率よく吸収することができる。また、水平部17fはシート幅方向、すなわち下部フレーム架設部18の長手方向に沿って延設されているため、左右方向の荷重が加わった場合であっても、その稜線部分で荷重を受け止めることが可能であり、フレーム基礎部17のシート幅方向の荷重に対する剛性が極めて向上する。
【0068】
図4に示すように、水平部17fは、中間板17bと側方板17aの境界部分、すなわち孔部17kが形成された部分まで延設されている。換言すると、中間板17bと側方板17aの境界部分、すなわち連結部17xにおいて孔部17kが形成されている。この孔部17kは、脆弱部(内方脆弱部17e及び後述の側方脆弱部17m)よりも小さい衝撃荷重により変形するように形成されている。
【0069】
フレーム基礎部17は、側方板17aの後端部からシート方向内側に向かって中間板17bが折り曲げられて形成されており、この折曲部(連結部17x)によって上下方向の荷重に対する剛性を備えている。したがって、衝撃荷重の大きさに依存して、フレーム基礎部17が上下方向において変形しにくくなり、衝撃エネルギーを効率よく吸収することが難しい場合がある。しかし、孔部17kが中間板17bと側方板17aとの境界部分(連結部17x)に形成されており、後面衝突時等の衝撃荷重が加わった際、孔部17kが脆弱部(内方脆弱部17e及び後述の側方脆弱部17m)と比較して変形しやすく形成されているため、初めに孔部17kが上下方向に潰れるように変形することができる。その結果、フレーム基礎部17の上方が後傾するように変形するため、効率よく後傾荷重のエネルギーを吸収することが可能である。
【0070】
内方脆弱部17eは、上記のように、水平部17fから屈曲部17gを介して延設された傾斜部17hを備えており、傾斜部17hは、中間板17bの側方板17a,17a(一対のフレーム基礎部17,17に備えられた側方板17a,17a)に挟まれた部分の上下方向端部まで延設されている。換言すると、傾斜部17hは、左右方向においてシート内側に備えられる中間板17bの上端部または下端部まで延設されている。
本実施形態では、傾斜部17hがシート内側に向かうに従って上方に傾斜するように屈曲され、中間板17bの傾斜した上端部まで延設された構成を示している。
【0071】
このように、内方脆弱部17eを水平部17fのみからなる水平な直線状に延設した構成とするのではなく、屈曲部17gを備え、略水平方向以外の方向、すなわち斜め方向に延設された部分(傾斜部17h)を備えた構成とすることにより、屈曲部17g及び傾斜部17h周辺において、フレーム基礎部17の剛性が向上する。したがって、後面衝突等によりシートバックフレーム1が後傾して変形する荷重が加わった場合、水平部17fが特に変形しやすくなり、効率よく衝撃エネルギーを吸収させることができる。
また、傾斜部17hを中間板17bの上端まで延設することにより、内方脆弱部17eを全体として屈曲させやすくなる。
【0072】
また、傾斜部17hは、水平部17fに対して略垂直に形成されていてもよいが、水平部17fに対して傾斜して形成されていると好ましい。すなわち、水平部17fに対して、傾斜部17hは、鋭角又は鈍角を成す構成であると好ましい。水平部17fに対して、傾斜部17hを略垂直に形成すると、シートバックフレーム1に対して後傾する荷重が加わった際に、傾斜部17hによって中間板17bの後傾荷重に対する剛性が向上し、水平部17fは後傾荷重により変形しにくくなる。一方、水平部17fに対して傾斜部17hが鋭角又は鈍角を成す構成とすると、適度に中間板17bが変形し、水平部17fを屈曲させることができる。
【0073】
水平部17fは、屈曲部17g及び傾斜部17hが形成された側の端部とは対向する側の端部において、孔部17kが形成されている。したがって、水平部17fの中でも屈曲部17g及び傾斜部17hから最も遠い位置(すなわち、剛性が比較的高くなく、撓み変形しやすい位置)に孔部17kが形成されるため、衝撃荷重が加わった際に孔部17kが変形しやすくなり、それに伴って水平部17fを変形させて衝撃エネルギーを吸収させることができる。
【0074】
また、屈曲部17gの屈曲方向の反対側(
図3及び
図4において下方)には、膨出した部品取付部としてのハーネス取付部17iが形成されている。このとき、ハーネス取付部17iは、内方脆弱部17eの膨出方向と反対側に膨出するように形成されている。すなわち、屈曲部17gの下方には、後方に膨出するように、ハーネス取付部17iが形成されている。このように、中間板17bにおいて、内方脆弱部17eの屈曲部17gが屈曲する方向と反対側(すなわち、水平部17fと傾斜部17hによって形成される鈍角側)にハーネス取付部17iを形成することにより、中間板17b上に凹凸形状が複数形成され、荷重に対するフレーム基礎部17の剛性(特に、屈曲部17g近傍の剛性)が向上する。その結果、後面衝突時等の衝撃荷重が加わった際、内方脆弱部17e以外の箇所を屈曲させることなく、内方脆弱部17eの水平部17f、屈曲部17g、傾斜部17hが屈曲して衝撃エネルギーを吸収することができる。
なお、後面衝突時の衝撃荷重によりサイドフレーム本体部15を特に後傾させやすくするため、中間板17bの上方よりも下方において剛性を向上させる目的から、ハーネス取付部17iは、屈曲部17gの上方ではなく、下方に設けると好適である。
【0075】
さらに中間板17bには、取付け孔17jが複数形成されている。取付け孔17jは、その他の部材(アクチュエーター等)をシートフレームFに対して取り付ける際にボルト等の接合手段が挿通される。
【0076】
このように、ハーネス取付部17iや取付け孔17jを中間板17bに設けることにより、他部材の取付けに関し、省スペース化することができ、さらに部品点数を削減することができるという効果も奏する。
【0077】
側方脆弱部17mは、中間板17b上に形成された内方脆弱部17eと同じ高さ位置で形成されており、側方板17aと中間板17bとの境界部分に形成された孔部17kから前方側へ水平方向に延設されている。そして、側方板17a上において、孔部17kから延設された側方脆弱部17mは、側方板17aの前後方向において中央部まで延設されている。
【0078】
側方脆弱部17mは、断面略半円弧状で、側方板17aの左右方向(シート幅方向)外側に向かって内側から凹むように凹設されている。そして、側方脆弱部17mは、後方から前方に向かって直線状に延在するように形成されている。すなわち、側方脆弱部17mは、前後方向に沿って延在し、サイドフレーム本体部15の下方に形成された凹部である。
【0079】
また、側方脆弱部17mの幅(高さ方向の長さ)は、少なくとも内方脆弱部17eを構成する水平部17fの短手方向(上下方向)の幅よりも小さく形成するとよい。側方脆弱部17mの高さ方向の長さを水平部17fの短手方向(上下方向)の幅よりも小さく形成することにより、後面衝突時等の衝撃荷重がかかった際、水平部17fよりも先に側方脆弱部17mが変形しやすくなるため、孔部17kが衝撃荷重によって変形するのに伴い、側方脆弱部17mが上下方向に潰れるように変形する。このように、衝撃荷重が加わった際、フレーム基礎部17の側方板17aが、上下方向に撓み変形する結果、内方脆弱部17eがさらに変形しやすくなるため、衝撃エネルギーを確実に安定して吸収させることができる。また、本実施形態において、側方脆弱部17mは、直線状に形成された例を示したが、内方脆弱部17eのように、屈曲した形状としても良い。
【0080】
上記の内方脆弱部17e及び側方脆弱部17mは、フレーム基礎部17に対してプレス加工等を行うことにより形成される。また、孔部17kは、フレーム基礎部17上に内方脆弱部17e及び側方脆弱部17mを形成した後に切削して形成しても良いし、予め孔部17kを形成した後、内方脆弱部17e及び側方脆弱部17mを形成しても良い。
【0081】
本発明において、脆弱部(すなわち、孔部17k、内方脆弱部17e、側方脆弱部17m)は、リクライニング機構11とサイドフレーム本体部15との間(より詳細には、シャフト挿通孔17cと取付け孔17dとの間)に形成されている。すなわち、各脆弱部は、リクライニング機構11よりも上方に形成されている。このような構成とすることにより、シートバックフレーム1の下方がリクライニング機構11によって固定されるため、脆弱部よりも上方のシートバックフレーム1を後傾させやすくなる。
さらに、各脆弱部が着座フレーム2とサイドフレーム本体部15との間に形成されているため、衝撃荷重が加わった際、各脆弱部の変形が着座フレーム2やサイドフレーム本体部15により妨げられることがなく、効率よく衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0082】
そして、孔部17kと、内方脆弱部17eと、側方脆弱部17mとは、全て同一高さに形成されている。このように、三つの脆弱部(孔部17k、内方脆弱部17e、側方脆弱部17m)が同じ高さに形成されることにより、シートバックフレーム1を特に安定して後傾(変形)させることができ、効率よく衝撃エネルギーを吸収させることができる。
【0083】
また、脆弱部(孔部17k、内方脆弱部17e、側方脆弱部17m)のうち、フレーム側部としての側方板17aに形成された脆弱部(孔部17k、側方脆弱部17m)は、フレーム基礎部17の側方板17aのうち、左右方向側方から見た際にサイドエアバッグユニット50が重なる部分を外れた部分に形成されている。本実施形態では、
図7に示すように、脆弱部(孔部17k及び側方脆弱部17m)がサイドエアバッグユニット50よりも下方に形成されている。
【0084】
そしてより詳細には、サイドエアバッグユニット50の一部である取着部52は、サイドフレーム本体部15、フレーム基礎部17を左右方向において側方から見た際に脆弱部(孔部17k及び側方脆弱部17m)と重ならない位置に配設される。すなわち、脆弱部は、サイドエアバッグユニット50の取着部52よりも下方に形成されている。なお、
図7では、取着部52は二か所に配設された構成を図示したが、この数に限定されるものではなく、脆弱部は、複数設けられた取着部52のうち、最も下方に配設された取着部52よりも下方に形成されていると好ましい。
【0085】
このように、サイドエアバッグユニット50(より詳細には、取着部52)よりも下方に脆弱部を備えることにより、後面衝突時、脆弱部よりも上方において、サイドフレーム本体部15とサイドエアバッグユニット50とが一体で後傾しやすくなる。その結果、衝撃エネルギーを効率よく吸収することができる。さらに、脆弱部は、サイドエアバッグユニット50(より詳細には、取着部52)と重ならない位置に配設されているため、サイドエアバッグユニット50が側板15aに強固に固定可能であり、サイドエアバッグユニット50の取り付け剛性が低下するのを抑制することができる。その結果、サイドエアバッグが動作する際、脆弱部の影響を受けにくくなり、衝撃荷重に対して、サイドエアバッグを有効に機能させることができる。
【0086】
上記のように、サイドエアバッグユニット50は、サイドフレーム本体部15に取着される取着部52と、サイドエアバッグが収納された本体部51と、を備えている。
また、フレーム基礎部17の側方板17aに形成される脆弱部は、側方板17aの後端部に形成される第1の脆弱部としての孔部17kと、側方板17aに形成されて孔部17kから延設される第2の脆弱部としての側方脆弱部17mとを有しているが、サイドエアバッグユニット50の取着部52は、側方脆弱部17mよりも上方、且つ前方に配設されている。
【0087】
そして、側方板17a上に形成される脆弱部(孔部17k、側方脆弱部17m)は、フレーム基礎部17の側方板17aの前後方向の中心(
図7の線A)よりも後方に形成されている。また、サイドエアバッグユニット50の取着部52は、本体部51の前後方向の中心を通り上下方向に延びる中心線(
図7の線B)よりも前方に形成されている。なお、本体部51は、側面視で略矩形状に形成されており、
図7の線Bは、本体部51の短手方向の中心を通り、本体部51の長手方向に沿って延びる線である。また、
図7の線Aは、サイドフレーム本体部15の側板15aにおいて、最も前後方向の幅が大きい部分における前後方向の中心を通り、鉛直方向に延びる線である。
【0088】
脆弱部とサイドエアバッグユニット50との相対位置を上記構成とすることにより、サイドエアバッグユニット50の取着部52と、脆弱部とが互いに近接して配設されることがなく、その結果、サイドエアバッグユニット50をサイドフレーム本体部15の側板15aに対して、安定して取着することができる。
【0089】
また、側方板17a上に形成される脆弱部(孔部17k、側方脆弱部17m)は、
図3に示すように、衝撃低減部材30よりも下方に形成されている。このように、サイドフレーム本体部15を左右方向において側方から見た際、脆弱部が、衝撃低減部材30と重ならない位置に形成されることにより、衝撃低減部材30を安定してサイドフレーム本体部15に係止することができる。その結果、衝撃低減部材30が動作するとき、その挙動を安定させることができ、効率よく衝撃エネルギーを吸収させることができる。
【0090】
上記構成の脆弱部が形成されたフレーム基礎部17において、内方脆弱部17eが設けられた中間板17bの後面には、さらに、内方脆弱部17eを介して対向する規制部40(第1の規制部41、第2の規制部42)が備えられている。規制部40(第1の規制部41、第2の規制部42)は内方脆弱部17eを挟むように対向して中間板17b上に溶接等の手段を用いて取り付けられており、内方脆弱部17eの上下においてそれぞれ設けられる。
【0091】
後面衝突時等の衝撃荷重がシートバックフレーム1に加わった際、内方脆弱部17eが上下方向に潰れるようにして中間板17bが後方へ屈曲するが、規制部40は、
図6に示すように、内方脆弱部17eの潰れる量(すなわち、中間板17bやシートバックフレーム1の後傾角度)が一定値以上に大きくならないように規制するために備えられる。
【0092】
すなわち、内方脆弱部17eを介して対向して備えられる一対の規制部40は、中間板17bに設けられた内方脆弱部17eの屈曲が大きくなると、規制部40同士(第1の規制部41、第2の規制部42)が接触し、下方に備えられた第2の規制部42が上方に備えられた第1の規制部41を押し止めるように配設される。
【0093】
規制部40は、内方脆弱部17eを挟む位置において対向して配設される規制面41a,42aをそれぞれ有する第1の規制部41及び第2の規制部42を備えている。つまり、第1の規制部41、第2の規制部42には、それぞれ対向して配設される規制部40(第1の規制部41または第2の規制部42)に当接し、内方脆弱部17eが屈曲する際、一定量以上屈曲しないように規制する規制面41a,42aがそれぞれ備えられている。したがって、例えば、
図5に示すように、第1の規制部41、第2の規制部42は、断面が略台形状の部材とするとよい。規制面41a,42aは、その面積が大きいほど、内方脆弱部17eの屈曲時、規制部40同士(第1の規制部41、第2の規制部42)が接触しやすくなるため、シートバックフレーム1の変形量(後傾量)を規制することができる。
【0094】
このように、上下方向に対向して配設される第1の規制部41、第2の規制部42からなる規制部40は、内方脆弱部17eを挟み込む位置に形成される二つの対向部としての規制面41a,42aをそれぞれ備えている。そして、これら二つの規制面41a,42a間の距離は、内方脆弱部17eの高さ方向の幅(すなわち、第1の規制部41、第2の規制部42によって挟まれる方向の幅)よりも小さく形成されている。
【0095】
具体的には、上方に備えられる第1の規制部41の下端部(すなわち、規制面41a)は、内方脆弱部17e(より詳細には、水平部17f)の上端部よりも下方に配設される。一方、下方に備えられる第2の規制部42の上端部(すなわち、規制面42a)は、内方脆弱部17e(より詳細には、水平部17f)の下端部よりも上方または略同じ高さに配設される。なお、
図5において、下方に備えられる第2の規制部42の規制面42aは、内方脆弱部17eの下端部と略同じ高さに配設された状態を図示している。
【0096】
すなわち、対向する一対の規制部40(第1の規制部41、第2の規制部42)間の距離は、内方脆弱部17eの一対の規制部40が並設される方向の幅よりも小さく形成されている。さらに換言すると、
図5において、対向する規制面41a,42a間の距離αと、内方脆弱部17eの上下方向の幅βは、α<βとなるように形成されている。
【0097】
このような構成とすることにより、内方脆弱部17eが上下方向に屈曲した場合、
図6のように、内方脆弱部17eの上下方向に配設された規制部40同士(第1の規制部41、第2の規制部42)が接触しやすくなり、一定の位置で内方脆弱部17eの変形を押し止めるようにすることができる。
【0098】
本実施形態においては、第1の規制部41、第2の規制部42のいずれにおいても平面状の規制面41a,42aが形成された例を図示しているが、少なくとも一方において、規制面41a(または規制面42a)が平面状に形成されているとよい。
すなわち、第1の規制部41及び第2の規制部42のうち少なくとも一方に備えられた規制面41a(または規制面42a)は、平面状に形成されている。
【0099】
このように、第1の規制部41または第2の規制部42のうち、少なくとも一方の規制面41a(または規制面42a)を平面状とすることにより、内方脆弱部17eが屈曲した際、規制部40同士(第1の規制部41、第2の規制部42)が接触しやすくなる。その結果、内方脆弱部17eの屈曲量が制限され、シートバックフレーム1の変形量が規定値よりも大きくなることがない。
【0100】
図6に示すように、平面状に形成された規制面41a,42aを備えた規制部40は、衝撃荷重が加わることにより内方脆弱部17eが変形し、第1の規制部41が第2の規制部42に当接する際、第1の規制部41が平面状に形成された規制面42aに当接するように形成されている。すなわち、内方脆弱部17eの変形時、第1の規制部41が当接する第2の規制部42の規制面42aは、少なくとも第1の規制部41の後方側(すなわち、内方脆弱部17eが形成された側とは反対側)の縁端よりもさらに後方(内方脆弱部17eとは反対側)まで延設されている。このような構成とすることにより、第1の規制部41が平面状に形成された規制面42aに対して強固に当接するため、第1の規制部41が第2の規制部42に対して滑ってずれてしまうことが抑制され、より安定して内方脆弱部17eの変形を押し止めることができる。
【0101】
上記構成とするためには、例えば、衝撃エネルギーが加わる前の状態(通常状態)において、第2の規制部42の規制面42aの後方側(内方脆弱部17eとは反対側)縁端部を、第1の規制部41の規制面41aの後方側(内方脆弱部17eとは反対側)縁端部よりも後方(内方脆弱部17eとは反対側)となるように形成されているとよい。
【0102】
なお、
図5及び
図6に示すように、規制部40は中空に形成された構成とすると、車両用シートSを軽量化することができるため好ましいが、規制部40の強度を十分に確保するため、中実であっても良い。また、軽量化のため、各規制面41a,42aには、
図4に示すように、孔が設けられていてもよい。
また、規制部40は、内方脆弱部17eの近傍のみに備えられた例を示したが、他の脆弱部(孔部17k、側方脆弱部17m)の近傍に備えられていても良い。このとき、孔部17k、内方脆弱部17e、側方脆弱部17mのうち、少なくとも一つが規制部40に挟まれる位置に配設されていればよい。
【0103】
<<脆弱部(孔部17k、側方脆弱部17m、内方脆弱部17e)及び規制部40の作用効果>>
後面衝突時の衝撃荷重が加わった際にフレーム基礎部17が変形する様子について、
図8、
図9を参照して、以下説明する。
図8は、通常状態における下部フレーム基礎部17周辺の様子を示しており、
図9は、後面衝突時の衝撃荷重が下部フレーム基礎部17にかかった後の様子である。このとき、シートバックフレーム1に対して、主として後傾する方向の荷重が加わるが、サイドフレーム15の下方、すなわち下部フレーム基礎部17に最も大きな荷重が加わる。
【0104】
そして、フレーム基礎部17に荷重が伝達されると、孔部17kを起点として、側方板17aに形成された側方脆弱部17mが上下方向に押しつぶされた形状に変形し、側方板17aがシート幅方向外側に広がるように変形する。このように、孔部17kを備え、さらに側方脆弱部17mを側方板17aに設けることにより、孔部17kを備えていない場合と比較して、側方板17aをシート幅方向外側に広がりやすくすることができる。
【0105】
上記のように、側方板17aがシート幅方向外側に広がるように変形した後、中間板17bに形成された内方脆弱部17e(より詳細には、水平部17f)が上下方向に押しつぶされるように変形し(
図5、
図6参照)、その結果、フレーム基礎部17の上方に備えられたサイドフレーム本体部15が後傾し、シートバックフレーム1が変形する。
【0106】
このように、フレーム基礎部17において、内方脆弱部17e及び孔部17kだけでなく、側方脆弱部17mをさらに備えることにより、孔部17kを起点としてフレーム基礎部17を段階的に変形し易くし、効率よく衝撃エネルギーを吸収させることができる。後面衝突時等は、シートバックフレーム1に対し複雑な入力荷重が加わるが、上記構成を備えることにより、特定の箇所(詳細には、内方脆弱部17eの水平部17f)を安定して変形させることができる。その結果、後面衝突時の衝撃エネルギーをフレーム基礎部17において効率よく吸収することが可能である。
【0107】
そして、上記のように内方脆弱部17eが屈曲する際、中間板17bに備えられた規制部40により、内方脆弱部17eの屈曲量が大きくなりすぎることがないように規制される。つまり、後面衝突時の衝撃荷重が加わった際、内方脆弱部17eが上下方向に押しつぶされるように屈曲してサイドフレーム本体部15(さらには、シートバックフレーム1)が後傾するが、内方脆弱部17eが一定の範囲まで屈曲すると、一対の規制部40同士が互いに接触し、内方脆弱部17eの屈曲量を規制する。したがって、規制部40を備えることにより、シートバックフレーム1の後傾量が大きくなりすぎることなく、後傾量を適当な大きさに設定することができる。
【0108】
さらに、移動部材30に連結された受圧部材20を備えることにより、車両用シートSは、後面衝突時等において、乗員を十分にシートバックS1に沈み込ませることができる。そして、下部フレーム(より詳細には、フレーム基礎部17)の内方脆弱部17eにおいて屈曲部17g及び傾斜部17hが形成されているため、中間板17bは適度な剛性を有している。したがって、受圧部材20をサイドフレーム本体部15、上部フレーム16に対して乗員の身体を相対的に沈み込ませ易くなるため、後面衝突等による衝撃エネルギーを効率よくシートバックフレーム1へ伝達し、吸収させることが可能である。
その結果、フレーム基礎部17に形成された内方脆弱部17eや側方脆弱部17mを変形させ、さらに効率よく衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0109】
<<他の実施形態>>
上記実施形態では、フレーム基礎部17に脆弱部(孔部17k、側方脆弱部17m、内方脆弱部17e)及び規制部40が形成された構成を説明したが、脆弱部の位置は、これに限定されるものではない。例えば、以下で説明するように、サイドフレーム170を構成するサイドフレーム本体部115において脆弱部及び規制部が形成されていてもよい。
【0110】
本実施形態のサイドフレーム本体部115(より詳細には、側板115a)は、
図10に示すように、フレーム側部としての側板115aの後端部(より詳細には、側板115aと後縁部115cとを連結する連結部115x上)に形成される第1の脆弱部としての孔部115fと、孔部115fと連結され、側板115a上に形成される第2の脆弱部としての側方脆弱部115gとを有している。
【0111】
孔部115fは、サイドフレーム本体部115の連結部115x上に形成された穴であり、後面衝突時の衝撃エネルギーを効率良く吸収することができる。このように、側板115aの後端部に孔部115fを形成することにより、特に後面衝突時の衝撃荷重が加わった際、サイドフレーム本体部115を後方へ屈曲させ、シートバックフレーム1を後傾させることができ、衝撃エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0112】
孔部115f、側方脆弱部115gの構成は、上記実施形態で説明した孔部17k、側方脆弱部17mと同様であるため、その説明を省略する。また、本実施形態において、内方脆弱部115hは、後縁部115c上において直線状に形成された例を示したが、上記実施形態の内方脆弱部15hと同様に、屈曲した形状としても良い。
さらに、側方脆弱部115gもまた、側板115a上において屈曲した形状としても良い。
【0113】
上記の側方脆弱部115g及び内方脆弱部115hは、それぞれ、孔部115fから略水平に延設されている。
そして少なくとも、孔部115f及び側方脆弱部115gは、
図10に示すように、サイドフレーム本体部115の側板115aのうち、フレーム基礎部117(より詳細には、側方板117a及び中間板117b)と重なる部分を外れた部分に形成されている。
より詳細には、シートフレームFを左右方向において側方から見たときに、側板115a上であって、且つフレーム基礎部117と重ならない位置に脆弱部(孔部115f及び側方脆弱部115g)が形成されている。すなわち、脆弱部(孔部115f及び側方脆弱部115g)は、フレーム基礎部117の上端よりも上方に形成されている。
【0114】
サイドフレーム本体部115の側板115aと、フレーム基礎部117とが重なる部分は特に剛性が高く、当該部分に脆弱部を形成した場合、衝撃荷重が加わっても脆弱部が十分に変形することが難しいことがある。これに対し、上記のように、脆弱部(孔部115f及び側方脆弱部115g)が側板115a上であって、フレーム基礎部117と重ならない位置に形成されることにより、衝撃荷重が加わった際、脆弱部が変形しやすくなる。その結果、サイドフレーム本体部115をより変形させやすくなり、衝撃エネルギーを効果的に吸収させることができる。
【0115】
サイドフレーム本体部115の側板115aのうち、左右方向側方から見た際にサイドエアバッグユニット150が重なる部分を外れた部分に形成されている。本実施形態では、脆弱部(孔部115f及び側方脆弱部115g)がサイドエアバッグユニット150よりも下方に形成されている。
【0116】
後面衝突時等、乗員が急激に後方へ移動する際、その衝撃荷重を受けることにより、内方脆弱部115hが上下方向に押しつぶされることにより、サイドフレーム本体部115が折曲するように変形し、この変形に伴い、シートバックフレーム1が後傾する。なお、後面衝突時の衝撃エネルギーを吸収するため、フレーム基礎部117を十分に折曲させることができれば、内方脆弱部115hは、後方に凹むように凹設された構成としても良い。さらに、通常の着座荷重に耐えられる強度を備えていれば、内方脆弱部115hを変形しやすくするため、内方脆弱部115hを構成する部分の板厚のみを薄く形成しても良い。
【0117】
なお、本実施形態の第1の脆弱部として、孔部115fが形成され、第2の脆弱部として凹部からなる側方脆弱部115gを示したが、第1の脆弱部が他の脆弱部と比較して小さい衝撃荷重により変形可能とすることができれば、第1の脆弱部は必ずしも穴によって形成されていなくても良い。第1の脆弱部は、第2の脆弱部である側方脆弱部115g、第3の脆弱部である内方脆弱部115hよりも小さい衝撃荷重により変形するように形成されていれば良く、例えば、側方脆弱部115g、内方脆弱部115hよりも板厚が薄く形成された構成や、深く凹んだ凹部によって形成された構成としても良い。
【0118】
サイドフレーム本体部115は、上記構成の脆弱部(より詳細には、内方脆弱部115h)の一部を挟み込む位置に配設され、脆弱部が変形した際に当接し合うことにより脆弱部の変形量を規制する規制部140を備えている。
【0119】
上記のように内方脆弱部115hが設けられた後縁部115cの後面には、内方脆弱部15hを介して対向する規制部140(第1の規制部141、第2の規制部142)が備えられている。規制部140(第1の規制部141、第2の規制部142)は内方脆弱部115hを挟むように対向して後縁部115c上に溶接等の手段を用いて取り付けられており、内方脆弱部115hの上下においてそれぞれ設けられる。より詳細には、第1の規制部141の規制面141aと、第2の規制部142の規制面142aとは、内方脆弱部115hを挟み込む位置に備えられる。
なお、第1の規制部141、第2の規制部142の構成は、上記実施形態の第1の規制部41、第2の規制部42の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0120】
後面衝突時等の衝撃荷重がシートバックフレーム1に加わった際、内方脆弱部115hは、上下方向に潰れるようにしてサイドフレーム本体部115が後方へ屈曲するが、規制部140は、内方脆弱部15hの潰れる量(すなわち、サイドフレーム本体部115やシートバックフレーム1の後傾角度)が一定値以上に大きくならないように規制するために備えられる。
【0121】
なお、上記各実施形態では、脆弱部及び規制部の具体例として、後面衝突時の挙動について説明したが、本発明の構成は後面衝突時に限定されるもではなく、例えば、側面衝突時の衝撃エネルギーを吸収するための構成としても適用可能である。また、自動車のフロントシートのシートバックS1について説明したが、これに限らず、後部座席のシートバックについても、同様の構成を適用可能であることは勿論である。