特許第6284218号(P6284218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284218
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】バイアルアダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20180215BHJP
   A61M 39/04 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   A61J1/20 314B
   A61M39/04 100
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-200050(P2013-200050)
(22)【出願日】2013年9月26日
(65)【公開番号】特開2015-65985(P2015-65985A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 晃史
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−290012(JP,A)
【文献】 特表2005−516696(JP,A)
【文献】 特開2010−246713(JP,A)
【文献】 米国特許第04624393(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0215106(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/139813(WO,A1)
【文献】 特表2015−526235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20− 1/22
A61M 39/02−39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具と接続する接続部と、第1のバイアルの頭部に嵌合可能な第1の嵌合周壁とを有するアダプタ本体と、
前記第1のバイアルの頭部よりも小さい径寸法を有する第2のバイアルの頭部に嵌合可能な第2の嵌合周壁とを備え、
前記第2の嵌合周壁は、前記第1の嵌合周壁の径方向内側で、前記アダプタ本体に、前記第1の嵌合周壁の軸線方向に沿ってスライド可能に装着され
前記アダプタ本体は、前記接続部に連設された柱状体と、該柱状体の下端を前記第1の嵌合周壁の上端に連結するフランジとをさらに有し、
前記第2の嵌合周壁は、前記フランジに形成された開口を通じて、前記第1の嵌合周壁の軸線方向に沿ってスライド可能であることを特徴とするバイアルアダプタ。
【請求項2】
記第2の嵌合周壁は、周方向に互いに間隔を空けて配置された複数の周壁と、該複数の周壁の下端にそれぞれ設けられた爪部とを有る、請求項1に記載のバイアルアダプタ。
【請求項3】
前記柱状体は円柱状をなし、
前記第2の嵌合周壁は、前記柱状体の外周面上をスライドする環状壁をさらに有し、該環状壁の下端には、該第2の嵌合周壁の複数の周壁の上端が連設されている、請求項2に記載のバイアルアダプタ。
【請求項4】
前記第2の嵌合周壁は、前記環状壁と前記複数の周壁の上端との接続領域にそれぞれ、該第2の嵌合周壁を周方向に回動させることで前記フランジが挿入される切り欠きを有する、請求項3に記載のバイアルアダプタ。
【請求項5】
前記第2の嵌合周壁の環状壁は、該環状壁の径方向外側に突出する操作片を有する、請求項4に記載のバイアルアダプタ。
【請求項6】
前記第2の嵌合周壁と前記柱状体との間に、該第2の嵌合周壁と該柱状体とを互いに嵌合させるアンダーカットをさらに備える、請求項〜5のいずれか一項に記載のバイアルアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアルに装着されるバイアルアダプタに関し、特に、バイアルとの間に別体の部材を介在させなくても複数の寸法のバイアルに適合させられるようにすると同時に、バイアルへの装着作業を容易化させようとするものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、バイアルから薬液を採取する際は、剥き出しの金属注射針をバイアルの頭部に設けられたゴム栓(栓体)に直接穿刺して吸引している。しかしながら、剥き出しの金属注射針を栓体に直接穿刺する場合には、注射針による針刺し事故などが生じることがある。そこで、剥き出しの注射針を用いることなく、バイアルの内部空間へのアクセスを可能にするものとして、従来、例えば特許文献1に記載されるようなバイアルアダプタが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されるバイアルアダプタは、バイアルを起立させ、上方から当該バイアルの頭部にバイアルアダプタを押し付けると、当該バイアルアダプタのアダプタ本体に周設された嵌合周壁がバイアルの頭部に嵌合するとともに、嵌合周壁に囲まれアダプタ本体から下方に突設された中空の針状体がバイアル頭部の栓体を貫通する。このようにバイアルアダプタがバイアルに装着された状態で、シリンジなどの医療器具を、アダプタ本体に設けられた接続部に接続すると、医療器具内がバイアルの内部空間と連通し、バイアルの内部空間から薬液を医療器具内に採取することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4740146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したようなバイアルアダプタは、特定の寸法のバイアルに適合したものが用いられるが、バイアルには様々な寸法のものが存在する。そこで、特許文献1に記載のバイアルアダプタでは、当該バイアルアダプタの嵌合周壁に適合するバイアルよりも小さい他のバイアルに装着する場合には、バイアルアダプタとは別体のキャップ状部材を用いるようにしている。そして、当該キャップ状部材に形成された他の嵌合周壁を、当該他のバイアルの頭部に嵌合させ、このキャップ状部材に、バイアルアダプタの嵌合周壁を嵌合させることで、バイアルアダプタを他のバイアルに装着可能としている。
【0006】
しかしながら、このように、複数の寸法のバイアルに適合させる従来のバイアルアダプタでは、小さいバイアルに装着する場合に、バイアルアダプタとは別に、キャップ状部材をバイアルに嵌合させる必要があり、バイアルに装着させる作業が手間であった。また、キャップ状部材が別体であることから紛失のおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するため開発されたもので、バイアルとの間に別体の部材を介在させなくても複数の寸法のバイアルに適合させることができ、しかも、複数の寸法のバイアルに簡単に装着することができるバイアルアダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のバイアルアダプタは、医療器具と接続する接続部と、第1のバイアルの頭部に嵌合可能な第1の嵌合周壁とを有するアダプタ本体と、前記第1のバイアルの頭部よりも小さい径寸法を有する第2のバイアルの頭部に嵌合可能な第2の嵌合周壁とを備え、前記第2の嵌合周壁は、前記第1の嵌合周壁の径方向内側で、前記アダプタ本体に、前記第1の嵌合周壁の軸線方向に沿ってスライド可能に装着され、前記アダプタ本体は、前記接続部に連設された柱状体と、該柱状体の下端を前記第1の嵌合周壁の上端に連結するフランジとをさらに有し、前記第2の嵌合周壁は、前記フランジに形成された開口を通じて、前記第1の嵌合周壁の軸線方向に沿ってスライド可能であることを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明のバイアルアダプタは、記第2の嵌合周壁は、周方向に互いに間隔を空けて配置された複数の周壁と、該複数の周壁の下端にそれぞれ設けられた爪部とを有ることが好ましい。
【0010】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において「上下」方向とは、バイアルを起立させた状態で当該バイアルにバイアルアダプタを装着した状態を基準とし、当該状態での上下方向を意味するものとする。
【0011】
また、本発明のバイアルアダプタは、前記柱状体は円柱状をなし、前記第2の嵌合周壁は、前記柱状体の外周面上をスライドする環状壁をさらに有し、該環状壁の下端には、該第2の嵌合周壁の複数の周壁の上端が連設されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のバイアルアダプタは、前記第2の嵌合周壁は、前記環状壁と前記複数の周壁の上端との接続領域にそれぞれ、該第2の嵌合周壁を周方向に回動させることで前記フランジが挿入される切り欠きを有することが好ましい。
【0013】
また、本発明のバイアルアダプタは、前記第2の嵌合周壁の環状壁は、該環状壁の径方向外側に突出する操作片を有することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明のバイアルアダプタは、前記第2の嵌合周壁と前記柱状体との間に、該第2の嵌合周壁と該柱状体とを互いに嵌合させるアンダーカットをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第2の嵌合周壁を第1の嵌合周壁の軸線方向に沿って上方にスライドさせることで、第1の嵌合周壁を第1のバイアルの頭部に嵌合させることができ、このようにバイアルアダプタを第1のバイアルに装着した状態で、アダプタ本体の接続部に医療器具を接続すれば、医療器具内を第1のバイアルの内部空間と連通させることができる。また、本発明によれば、第2の嵌合周壁を第1の嵌合周壁の軸線方向に沿って下方にスライドさせることで、第2の嵌合周壁を、第1のバイアルの頭部よりも小さい径寸法を有する第2のバイアルの頭部に嵌合させることができ、このようにバイアルアダプタを第2のバイアルに装着した状態で、アダプタ本体の接続部に医療器具を接続すれば、医療器具内を第2のバイアルの内部空間と連通させることができる。
【0016】
したがって、本発明によれば、バイアルとの間に別体の部材を介在させなくても複数の寸法のバイアルに適合させることができ、しかも、複数の寸法のバイアルに簡単に装着することができるバイアルアダプタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るバイアルアダプタを、スライド部材を上方にスライドさせた状態で示す斜視図である。
図2図1のバイアルアダプタの縦断面図である。
図3図1のバイアルアダプタのアダプタ本体の斜視図である。
図4図1のバイアルアダプタのスライド部材の斜視図である。
図5図1のバイアルアダプタを第1のバイアルに装着した状態を示す縦断面図である。
図6図1のバイアルアダプタを、スライド部材を下方にスライドさせた状態で示す斜視図である。
図7図1のバイアルアダプタを、図6に示した状態からさらに周方向に回動させた状態で示す斜視図である。
図8図1のバイアルアダプタを第2のバイアルに装着した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るバイアルアダプタについて詳細に例示説明する。
図1図2に示すように、本実施形態に係るバイアルアダプタ1は、アダプタ本体20と、アダプタ本体20に対して上下方向にスライド可能なスライド部材(第2の嵌合周壁)30とからなる。
【0019】
アダプタ本体20は、図3に示すように、接続部21と、第1の嵌合周壁22とを有する。また、アダプタ本体20は、接続部21に連設された柱状体23と、当該柱状体23の下端を第1の嵌合周壁22の上端22aに連結するフランジ24とを有する。さらに、アダプタ本体20は、図2に示したように、柱状体23の底面23aに連設された針状体25を有する。
【0020】
接続部21は、シリンジなどの医療器具に設けられたルアーコネクタなど(図示省略)を接続するためのもので、後掲図5に示すようにバイアルアダプタ1を第1のバイアル40に装着した場合には、当該医療器具を接続部21に接続することで、医療器具内を第1のバイアル40の内部空間Mに、バイアルアダプタ1を介して連通させることができる。また、後掲図8に示すようにバイアルアダプタ1を第2のバイアル50に装着した場合には、当該医療器具を接続部21に接続することで、医療器具内を第2のバイアル50の内部空間Mに、バイアルアダプタ1を介して連通させることができる。なお、本例では、第1のバイアル40として頭部直径が20mmのものを用い、第2のバイアル50として頭部直径が13mmのものを用いる。
【0021】
接続部21は、図2及び図3に示したように、キャップ60、ハウジング70及び弾性弁体80からなる。キャップ60は、第1の嵌合周壁22の軸線Oの回りに周設され、外周面の上端に医療器具(図示省略)との接続用の二条ねじ61が形成された上側筒状壁62を有する。上側筒状壁62の下端には、当該上側筒状壁62よりも拡径された下側筒状壁63が連設されている。
【0022】
下側筒状壁63は、上側筒状壁62の内周面62aの下端に繋がり、当該内周面62aから拡径した第1の内周面63aと、当該内周面63aの下端に繋がり、当該内周面63aから拡径した第2の内周面63bとを有する。
【0023】
キャップ60の下側筒状壁63には、ハウジング70の筒状体71の上端が嵌め込まれ、当該筒状体71の上端と下側筒状壁63とは互いに、例えば接着剤などで接合されている。筒状体71の内周面71aは、キャップ60の第1の内周面63aと略同一の内径になっている。筒状体71の下端は、円板状の底壁72の上面に連設されている。底壁72の上面には、筒状体71の内周側の領域に、軸線Oを中心とする環状凹部72aが周設されている。環状凹部72aの内周側には、軸線Oを中心とする断面円形の、底壁72を貫通するハウジング貫通孔73が形成されている。
【0024】
ハウジング70の環状凹部72aには、弾性弁体80の蛇腹状壁81の下端部81aが嵌め込まれている。本例では、蛇腹状壁81の下端部81aと環状凹部72aとの間は、例えば接着剤などで接合されている。蛇腹状壁81の上端には、筒状壁82が連設され、筒状壁82の上端は、スリット83が形成された天壁84で閉鎖されている。筒状壁82の外周面82aは、前述したキャップ60の上側筒状壁62の内周面62aに当接し、天壁84の上面は、キャップ60の上側筒状壁62の上端面と面一になっている。
【0025】
ハウジング70の底壁72は、底壁72の外周面及び底面と相補形状を有する、柱状体23の上面に形成された円形凹部23b内に嵌め込まれている。底壁72と円形凹部23bとの間は、例えば、接着剤又は熱溶着などによって接合されている。あるいは、ハウジング70と柱状体23とは、例えば、合成樹脂の射出成形などによって一体的に形成することもできる。
【0026】
柱状体23は、軸線Oを中心とする円柱状をなしている。柱状体23の外周面23cの上部領域には、環状の上側嵌合溝23d(アンダーカット)が周設されている。また、柱状体23の外周面23cの下部領域には、前記した上側嵌合溝23dと同一形状の下側嵌合溝23e(アンダーカット)が周設されている。下側嵌合溝23eの下方には、柱状体23の外周面23cを縮径させた複数、本例では2つの段差部23fが、軸線Oの周りに対称な位置に形成され、これら段差部23fの下端と柱状体23の底面23aとの接続領域にはそれぞれ、外周側に突出する突起23gが周設されている。
【0027】
柱状体23の底面23aに連設された、前述した針状体25は、軸線Oを中心とする円柱体25aと、該円柱体25aの下端に繋がる下向きの円錐体25bからなっている。円柱体25aの上側部分の内部には、軸線Oを中心とし、軸線Oに沿って延びる断面円形の中央延設路26の下部が位置している。中央延設路26は柱状体23を貫通しており、中央延設路26の上端は、前述したハウジング貫通孔73の下端に連通している。中央延設路26の下端には、円柱体25aの外周面に開口する連通孔25cが連設されている。
【0028】
柱状体23の下端を第1の嵌合周壁22の上端22aに連結するフランジ24は、柱状体23の下端から第1の嵌合周壁22の上端22aまで外周側に延在している。フランジ24には、軸線Oの周りに対称な位置に、複数、本例では2つの開口24aが形成されている。これら開口24aの内周側は、前述した段差部23fに繋がっている。また、これら開口24aの外周側の縁部24bは、円弧状になっている。
【0029】
フランジ24の外周側領域には、本例では、軸線Oの周りに等間隔に配置された8本の縦スリット27の上端部が位置している。これら縦スリット27はそれぞれ、上下方向に延び、第1の嵌合周壁22を軸線Oの周りに等間隔に分割している。このように分割された第1の嵌合周壁22はそれぞれ、フランジ24の外周縁に繋がる外周壁部22bと、これら外周壁部22bの下端に繋がり下方に向って拡径する拡径壁部22cとを有する。また、各外周壁部22aの下端には、内周側に向けて突出し、後掲図5に示す第1のバイアル40の頭部41に嵌合可能な嵌合爪部22dが形成されている。
【0030】
図4及び前掲図2に示すように、スライド部材30は、第1の嵌合周壁22の径方向内側で、アダプタ本体20に、第1の嵌合周壁22の軸線O方向に沿ってスライド可能に装着されている。スライド部材30は、環状壁31を有し、環状壁31の外周面31aの上端には、軸線Oの周りに対称に複数、本例では2つの操作片32が、環状壁31の径方向外側に突設されている。これら操作片32はそれぞれ、平面視半円形状をなし、上面にはスライド部材30の回動方向を示す矢印形状の標識32aが設けられている。
【0031】
環状壁31の下端には、前述したフランジ24の開口24aを通じて、第1の嵌合周壁22の軸線O方向に沿ってスライド可能であり、且つ、周方向に互いに間隔を空けて配置された複数、本例では2つの周壁33の上端が連設されている。これら周壁33の下端にはそれぞれ、後掲図5に示す第1のバイアル40の頭部41よりも小さい径寸法を有する、後掲図8に示す第2のバイアル50の頭部51に嵌合可能な爪部34が、内周側に向けて突設されている。
【0032】
環状壁31と複数の周壁33の上端との接続領域にはそれぞれ、スライド部材30を周方向、すなわち、本例では標識32aの矢印形状が示す方向に回動させることでフランジ24が挿入される切り欠き35が形成されている。また、環状壁31の内周面の上端縁には、前述した柱状体23の上側嵌合溝23d(アンダーカット)及び下側嵌合溝23e(アンダーカット)の双方に選択的に嵌合可能な嵌合突起36(アンダーカット)が周設されている。
【0033】
なお、前述したバイアルアダプタ1を構成する各部材の素材としては、特に限定されるものではないが、キャップ60、ハウジング70、柱状体23、フランジ24、針状体25、第1の嵌合周壁22及びスライド部材30については、合成樹脂材料を用いることが好ましい。また、弾性弁体80については、ゴム材料や熱可塑性エラストマなどを用いることが好ましい。
【0034】
かかる構成によれば、図2に示したように、スライド部材30を軸線Oに沿って上方にスライドさせ、嵌合突起36を、柱状体23の上側嵌合溝23dに嵌合させると、複数の周壁33の下端を柱状体23の底面23aよりも上方に位置させることができる。したがって、図5に示すように、バイアルアダプタ1の第1の嵌合周壁22に形成された嵌合爪部22dを、第1のバイアル40の頭部41に嵌合させるとともに、柱状体23の底面23aに突設された針状体25を、第1のバイアル40の頭部41に設けられた栓体42に押し付け、貫通させることにより、バイアルアダプタ1を第1のバイアル40に装着することができる。
【0035】
この状態で、シリンジなどの医療器具に設けられたルアーコネクタなど(図示省略)を接続部21に接続すると、医療器具によって弾性弁体80の天壁84が下方に押圧され、蛇腹状壁81の上下方向の圧縮変形により、弾性弁体80の筒状壁82が下方に移動する。その際、キャップ60の上側筒状壁62の内周面62aに当接していた弾性弁体80の筒状壁82は、当該内周面62aよりも拡径された下側筒状壁63の第1の内周面63a内へと移動するため、当該筒状壁82が拡径変形し、弾性弁体80の天壁84に設けられたスリット83が開口する。その結果、医療器具内が、バイアルアダプタ1内の、弾性弁体80の内部空間、ハウジング貫通孔73、中央延設路26及び連通孔25cで構成される流路を介して、第1のバイアル40の内部空間Mと連通する。
【0036】
したがって、スライド部材30を第1の嵌合周壁22の軸線O方向に沿って上方にスライドさせることで、第1の嵌合周壁22を第1のバイアル40の頭部41に嵌合させることができ、このように、バイアルアダプタ1を第1のバイアル40に装着した状態で、当該医療器具を接続部21に接続すれば、医療器具内を第1のバイアル40の内部空間Mに連通させることができる。
【0037】
また、第1のバイアル40の頭部41よりも小さい径寸法を有する、後掲図8に示す第2のバイアル50にバイアルアダプタ1を装着する場合には、まず、図6に示すように、スライド部材30を、スライド部材30の嵌合突起36(後掲図8参照)が柱状体23の下側嵌合溝23eに嵌合するまで下方に押下げる。この押下げ操作によって、スライド部材30の複数の周壁33を柱状体23の底面23aよりも下方に位置させることができる。そして、図7に示すように、スライド部材30をアダプタ本体20に対して周方向に回動させ、スライド部材30の切り欠き35にフランジ24を挿入させる。この回動操作によって、前述した複数の周壁33を柱状体23の底面23aよりも下方に位置させた状態を、確実に保持することが可能となる。
【0038】
そして、バイアルアダプタ1を図7に示した状態とすることで、図8に示すように、バイアルアダプタ1を、第2のバイアル50に装着することができる。すなわち、第1のバイアル40に装着する場合と同様に、バイアルアダプタ1のスライド部材30の複数の周壁33に形成された爪部34を、第2のバイアル50の頭部51に嵌合させるとともに、柱状体23の底面23aに突設された針状体25を、第2のバイアル50の頭部51に設けられた栓体52に押し付け、貫通させることにより、バイアルアダプタ1を第2のバイアル50に装着することができる。そして、第1のバイアル40への装着時と同様に、医療器具(図示省略)を接続部21に接続すると、医療器具内を第2のバイアル50の内部空間Mに連通させることができる。
【0039】
このように、スライド部材30を第1の嵌合周壁22の軸線O方向に沿って下方にスライドさせることで、スライド部材30を、第1のバイアル40の頭部41よりも小さい径寸法を有する第2のバイアル50の頭部51に嵌合させることができ、この状態で、アダプタ本体20の接続部21に医療器具を接続すれば、医療器具内を第2のバイアル50の内部空間Mと連通させることができる。
【0040】
したがって、本実施形態によれば、バイアルアダプタ1を、従来技術として説明したキャップ状部材のような別体の部材を第2のバイアル50との間に介在させなくても、複数の寸法のバイアル40,50に適合させることができ、しかも、複数の寸法のバイアル40,50に簡単に装着することができる。
【0041】
また、図6及び図7を用いて前述したスライド部材30の押下げ及び回動操作に際しては、スライド部材30の操作片32を用いることで操作が容易となり、また、操作片32には、回動方向を示す標識32aが付されているため、回動方向を誤ることもなく使い勝手を向上することができる。
【0042】
また、スライド部材30の複数の周壁33をいずれも環状壁31に連設したことにより、複数の周壁33のいずれもをワンタッチでスライド移動させることができ、操作性をより向上することができる。
【0043】
さらに、スライド部材30と柱状体23との間に、スライド部材30と柱状体23とを互いに嵌合させるアンダーカット、本例では上側嵌合溝23d、下側嵌合溝23e(図8参照)及び嵌合突起36を設けたことにより、スライド部材30をスライド操作するに際し、そのスライド範囲の上端と下端を、当該アンダーカットの嵌合時に付与される節度感により認識することができるため、操作性をさらに向上することができる。
【0044】
上述したところは、本発明の一実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、本実施形態に係るバイアルアダプタ1は第1のバイアル40と第2のバイアル50の2つの寸法のバイアルに装着可能なものとして説明したが、必ずしもこのような構成に限られず、例えば、従来技術として説明した、バイアルアダプタとは別体のキャップ状部材を用いることにより、3つ以上の寸法のバイアルに装着するようにしてもよい。また、接続部21の構成も、本実施形態で示した構成に限られず、例えば、弾性弁体80をスリットを有するディスク状の弁体として構成し、キャップ60に当該弁体の支持構造を設けることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 バイアルアダプタ
20 アダプタ本体
21 接続部
22 第1の嵌合周壁
22a 第1の嵌合周壁の上端
22b 外周壁部
22c 拡径壁部
22d 嵌合爪部
23 柱状体
23a 柱状体の底面
23b 円形凹部
23c 柱状体の外周面
23d 上側嵌合溝(アンダーカット)
23e 下側嵌合溝(アンダーカット)
23f 段差部
23g 突起
24 フランジ
24a フランジの開口
24b フランジの開口の外周側の縁部
25 針状体
25a 円柱体
25b 円錐体
25c 連通孔
26 中央延設路
27 縦スリット
30 スライド部材(第2の嵌合周壁)
31 環状壁
31a 環状壁の外周面
32 操作片
32a 標識
33 周壁
34 爪部
35 切り欠き
36 嵌合突起(アンダーカット)
40 第1のバイアル
41 第1のバイアルの頭部
42 栓体
50 第2のバイアル
51 第2のバイアルの頭部
52 栓体
60 キャップ
61 二条ねじ
62 上側筒状壁
62a 上側筒状壁の内周面
63 下側筒状壁
63a 下側筒状壁の第1の内周面
63b 下側筒状壁の第2の内周面
70 ハウジング
71 筒状体
71a 筒状体の内周面
72 底壁
72a 環状凹部
73 ハウジング貫通孔
80 弾性弁体
81 蛇腹状壁
81a 蛇腹状壁の下端部
82 筒状壁
82a 筒状壁の外周面
83 スリット
84 天壁
第1のバイアルの内部空間
第2のバイアルの内部空間
O 第1の嵌合周壁の軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8