特許第6284219号(P6284219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284219
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】バイアルアダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   A61J1/20 316A
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-201603(P2013-201603)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-66067(P2015-66067A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】柿木 俊彦
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−095834(JP,A)
【文献】 特表2002−537949(JP,A)
【文献】 特開2013−066748(JP,A)
【文献】 特開平07−171192(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/002492(WO,A1)
【文献】 特表2001−511056(JP,A)
【文献】 特表平09−502116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20− 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアルのゴム栓に外方から接触して、当該ゴム栓と接触領域を形成可能な弁体と、
中空部を区画する針状部を有し、当該針状部の先端が前記ゴム栓及び前記弁体を共に貫通して前記バイアル内に挿入される刺通部材と、
前記弁体を保持し、前記バイアルを係止する係止部を有するハウジングと、を備え、
前記接触領域は、前記弁体が前記ゴム栓を押圧することにより圧縮されて弾性変形した状態、かつ、前記係止部により前記バイアルが係止されている状態において、形成され、
前記針状部の前記先端は、前記ゴム栓と前記弁体とが前記接触領域を形成した状態のまま、前記接触領域内を通って前記ゴム栓及び前記弁体から抜去されることを特徴とするバイアルアダプタ。
【請求項2】
記刺通部材は、前記針状部の延在方向において移動可能に前記ハウジングに保持されていることを特徴とする請求項1に記載のバイアルアダプタ。
【請求項3】
前記弁体は、前記針状部の延在方向における一端に位置し、前記バイアルの前記ゴム栓と前記接触領域を形成するゴム板部と、前記接触領域が形成されている状態で前記延在方向に弾性変形し、前記ゴム板部を前記ゴム栓側に押圧する押圧部と、備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイアルアダプタ。
【請求項4】
前記押圧部は、前記ゴム板部の一方の平面と連続し、前記延在方向に凹凸を繰り返す蛇腹状の外壁を有するゴム筒部であり、
前記針状部の前記先端は、前記ゴム栓及び前記弁体から抜去されている状態において、前記ゴム板部と前記ゴム筒部とにより覆われていることを特徴とする請求項3に記載のバイアルアダプタ。
【請求項5】
前記弁体の前記ゴム筒部及び前記ハウジングは、前記針状部の前記先端が、前記ゴム栓及び前記弁体から抜去されている状態において、前記針状部の前記延在方向に直交する方向の周囲を取り囲んでいることを特徴とする請求項4に記載のバイアルアダプタ。
【請求項6】
前記係止部は、前記バイアルの外壁に設けられた括れ部と接触して前記バイアルを挟み込んで係止する複数の爪部を備え、
前記ハウジングの外壁には、前記爪部を前記バイアルの前記括れ部から離れる方向に移動させる把持部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバイアルアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアルに取り付けられるバイアルアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バイアルから薬液を採取する際は、剥き出しの金属注射針をバイアルのゴム栓に直接穿刺して吸引している。しかしながら、剥き出しの金属注射針をゴム栓に直接穿刺する構成であると、注射針による針刺し事故などが生じることがある。そこで、ゴム栓に穿刺する部材として剥き出しの注射針を使用せずに、簡便に薬剤調製することを可能とするバイアルアダプタが提案されている。
【0003】
特許文献1には、本体部分、貫通部分及びインタフェース部分を備えるバイアルアダプタであって、本体部分が中央部分及びタブを有し、バイアルに対して取り外し可能に固定されるバイアルアダプタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−512205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のバイアルアダプタの場合には、このバイアルアダプタがバイアルから取り外される際に、例えば、カニューレの先端から薬液が滴下することにより、又は薬液がカニューレの外壁を伝わることにより、バイアルの天面に薬液が付着してしまうおそれがある。
【0006】
このような場合には、操作者が、バイアルの天面に付着した、例えば抗癌剤などの薬液に直接触れてしまうおそれがあるため好ましくない。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、バイアルアダプタをバイアルから取り外す際に、バイアルの天面に薬液が付着することを抑制可能なバイアルアダプタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様としてのバイアルアダプタは、バイアルのゴム栓に外方から接触して、当該ゴム栓と接触領域を形成可能な弁体と、中空部を区画する針状部を有し、当該針状部の先端が前記ゴム栓及び前記弁体を共に貫通して前記バイアル内に挿入される刺通部材と、前記弁体を保持し、前記バイアルを係止する係止部を有するハウジングと、を備え、前記接触領域は、前記弁体が前記ゴム栓を押圧することにより圧縮されて弾性変形した状態、かつ、前記係止部により前記バイアルが係止されている状態において、形成され、前記針状部の前記先端は、前記ゴム栓と前記弁体とが前記接触領域を形成した状態のまま、前記接触領域内を通って前記ゴム栓及び前記弁体から抜去されることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の一実施形態として、前記刺通部材は、前記針状部の延在方向において移動可能に前記ハウジングに保持されていることが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態として、前記弁体は、前記針状部の延在方向における一端に位置し、前記バイアルの前記ゴム栓と前記接触領域を形成するゴム板部と、前記接触領域が形成されている状態で前記延在方向に弾性変形し、前記ゴム板部を前記ゴム栓側に押圧する押圧部と、備えることが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態として、前記押圧部は、前記ゴム板部の一方の平面と連続し、前記延在方向に凹凸を繰り返す蛇腹状の外壁を有するゴム筒部であり、前記針状部の前記先端は、前記ゴム栓及び前記弁体から抜去されている状態において、前記ゴム板部と前記ゴム筒部とにより覆われていることが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態として、前記弁体の前記ゴム筒部及び前記ハウジングは、前記針状部の前記先端が、前記ゴム栓及び前記弁体から抜去されている状態において、前記針状部の前記延在方向に直交する方向の周囲を取り囲んでいることが好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態として、前記係止部は、前記バイアルの外壁に設けられた括れ部と接触して前記バイアルを挟み込んで係止する複数の爪部を備え、前記ハウジングの外壁には、前記爪部を前記バイアルの前記括れ部から離れる方向に移動させる把持部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、バイアルアダプタをバイアルから取り外す際に、バイアルの天面に薬液が付着することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態としてのバイアルアダプタ1の断面斜視図である。
図2】バイアルアダプタ1の斜視図である。
図3】バイアルアダプタ1における弁体2の単体を示す斜視図である。
図4図3とは異なる視点から弁体2単体を見た場合の斜視図である。
図5】バイアルアダプタ1がバイアル100に接続されている状態であって、バイアルアダプタ1の針状部材11の先端7がバイアル100内に挿入されていない状態を示す断面斜視図である。
図6】バイアルアダプタ1がバイアル100に接続されている状態であって、バイアルアダプタ1の針状部材11の先端7がバイアル100内に挿入されている状態を示す断面斜視図である。
図7図5で示すバイアルアダプタ1の断面斜視図のうち弁体2付近の拡大断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態としてのバイアルアダプタ60がバイアル100に接続されている状態を示す斜視図である。
図9図8と同じ状態にあるバイアルアダプタ60及びバイアル100の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
以下、本発明の1つの実施形態としてのバイアルアダプタ1について、図1図7を参照して説明する。なお、各図において共通する部材には、同一の符号を付している。
【0018】
図1は、バイアルアダプタ1の断面斜視図である。図2は、バイアルアダプタ1を図1と同じ視点から見た場合の外観を示す斜視図である。
【0019】
図1図2に示すように、バイアルアダプタ1は、弁体2と、刺通部材3と、ハウジング4と、を備えている。
【0020】
弁体2は、バイアル100のゴム栓101(図5図6参照)に外方から接触して、このゴム栓101と接触領域Sを形成することが可能である。接触領域Sについての詳細は後述する(図5図7参照)。
【0021】
刺通部材3は、略円柱状の中空部5を区画する針状部6を有し、この針状部6の先端7が弁体2及びゴム栓101を共に貫通してバイアル100内に挿入される。更に針状部6の先端7は、ゴム栓101と弁体2とが接触領域S(図5図7参照)を形成した状態のまま、接触領域S内を通ってゴム栓101及び弁体2から抜去される。なお、図1、2に示すバイアルアダプタ1は、刺通部材3の針状部6の先端7が、弁体2に刺さっていない状態を示している。
【0022】
ハウジング4は、弁体2及び刺通部材3を保持している。ここで刺通部材3は、針状部6の延在方向Aにおいて移動可能にハウジング4に保持されている。従って、刺通部材3は、ハウジング4に対して延在方向Aに移動することにより、針状部6の先端7が上述の弁体2を貫通する位置と貫通しない位置とに位置を変えることができる。
【0023】
ここで刺通部材3は、外方から例えばオスコネクタなどの挿入部材が挿入される接続口8を区画する接続部9と、この接続部9に支持され、バイアル100内に先端7が挿入される上述の針状部6と、を備える。図1に示すように、本実施形態における接続部9は接続部材10により構成され、針状部6は針状部材11により構成されている。すなわち、本実施形態における刺通部材3は、接続部材10と針状部材11とを備えている。また、本実施形態における刺通部材3は、接続部材10と針状部材11との間に、接続部材10と針状部材11とを保持し、両者を連結する連結部材12を更に備えている。従って、本実施形態では、針状部材11は、連結部材12を介して接続部材10に支持されている。
【0024】
本実施形態では、接続部材10と針状部材11とが連結部材12を介して連結されているが、連結部材12を使用せずに接続部材10と針状部材11とを直接連結するようにしてもよい。例えば、本実施形態における針状部材11と連結部材12とを一体成型したものを針状部材としてもよい。また、連結部材12を使用しない構成についても、これに限られるものではなく、接続部材10及び針状部材11の両方がお互いに接続可能な連結機構を備える構成であればよい。更には、接続部材10と針状部材11とを一体の部材として刺通部材3を単一の部材により構成するようにしてもよい。
【0025】
以下、バイアルアダプタ1の各部材、及びバイアルアダプタ1の特徴部の詳細を説明する。
【0026】
[接続部材10]
上述したように、本実施形態における接続部材10は、刺通部材3の接続部9を構成する部材である。図1に示すように、接続部材10は、外方から挿入される挿入部材の接続口8を区画している。また接続部材10は、連結部材12を介して針状部材11を支持している。
【0027】
具体的に、接続部材10は、外方から挿入される挿入部材の接続口8を区画する筒状の筐体13と、スリット14を有し、接続口8内に位置して筐体13に保持される弾性弁体15と、を備える。
【0028】
筐体13は、略円筒状の筐体本体16と、この筐体本体16の一端側に取り付けられるキャップ17とを備える。接続口8は、筐体本体16及びキャップ17により区画されている中空部であり、挿入部材は外方からこの接続口8内に挿入される。また、筐体本体16の他端側は、連結部材12と接続されており、これにより筐体13が、連結部材12を介して針状部材11を間接的に支持している。
【0029】
接続口8は、略円柱状の第1中空部18と、この第1中空部18の入口側と連通し、第1中空部18よりも断面の外径が小さい略円柱状の第2中空部19と、を有している。なお、本実施形態における第2中空部19は、図1に示すようにキャップ17の内壁20により区画されている。
【0030】
弾性弁体15は、接続口8内に位置する略円筒状の部材であって、略円柱状の中空部21を区画している。具体的に、弾性弁体15は、筐体13が区画する第1中空部18に位置する略円筒状の蛇腹部22と、この蛇腹部22の一端側に連続すると共に、筐体13が区画する第2中空部19に位置する略円筒状の円筒部23と、を備える。
【0031】
蛇腹部22は、挿入部材の挿入によりバイアルアダプタ1の内方に押し込まれた弾性弁体15が、挿入部材の挿入方向B(本実施形態では延在方向Aと同じ方向)において容易に弾性変形できるように挿入方向Bに沿って凹凸を繰り返す蛇腹状の壁面を有している。なお、蛇腹部22の他端部(図1蛇腹部22の下方側の端部)は筐体本体16の内壁により支持されている。具体的に、蛇腹部22の他端部には、筐体本体16の内壁に設けられた円筒状の突部70が入り込み、弾性弁体15の中空部21と、この突部70により区画され、連結部材12の連結中空部27と連通する略円柱状の中空部71とが繋がった状態で、蛇腹部22の他端部が筐体本体16により支持されている。
【0032】
円筒部23は、挿入部材が接続口8に挿入されていない状態では、第2中空部19を区画する筐体13の内壁(本実施形態ではキャップ17の内壁20)により圧縮された状態で、第2中空部19内に位置している。この円筒部23は、蛇腹部22と連続する一端部とは反対側の他端部に天面部24を備えており、この天面部24にスリット14が形成されている。
【0033】
筐体13と弾性弁体15とが上述のような構成を備えることにより、挿入部材が外方から接続口8内に挿入されて、弾性弁体15がバイアルアダプタ1の内方に押し込まれる際には、弾性弁体15の蛇腹部22の蛇腹が折り畳まれるように弾性変形すると共に、円筒部23が第2中空部19を通過して第1中空部18の位置まで到達すると、円筒部23は拡径し、天面部24のスリット14が開き、挿入部材がスリット14を通じて弾性弁体15が区画する中空部21内に進入可能となる。
【0034】
筐体13を構成する筐体本体16及びキャップ17の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリスチレン;ポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリ−(4−メチルペンテン−1);アイオノマー;アクリル樹脂;ポリメチルメタクリレート;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂);ブタジエン−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル;ポリエーテル;ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルイミド;ポリアセタール(POM);ポリフェニレンオキシド;変性ポリフェニレンオキシド;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアリレート;芳香族ポリエステル(液晶ポリマー);ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂;などの各種樹脂材料が挙げられる。また、これらのうちの1種以上を含むブレンド体やポリマーアロイなどでもよい。その他に、各種ガラス材、セラミックス材料、金属材料であってもよい。
【0035】
また、弾性弁体15は、金型成形され、弾性変形可能に形成される。この弾性弁体15の材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合したものであってもよい。
【0036】
なお、本実施形態における筐体13は、筐体本体16とキャップ17とにより構成されているが、この構成に限られるものではなく、例えば、筐体本体16とキャップ17とを一体で成形し、単一の部材により構成してもよい。
【0037】
また、本実施形態における弾性弁体15は、蛇腹部22を有する略円筒状の弾性弁体を用いているが、これに限られるものではなく、例えば、略円盤形状の弾性弁体を用いてもよい。
【0038】
更に、中空針を用いた挿入部材が用いられる場合には、例えば、接続口を区画する筐体と、この筐体に保持されると共に接続口の一端を閉塞するゴム栓と、を備える接続部材としてもよい。かかる場合には、中空針がゴム栓を貫通し、中空針の中空部と接続口とが連通する。
【0039】
[針状部材11]
上述したように、本実施形態における針状部材11は、刺通部材3の針状部6を構成する部材である。図1に示すように、針状部材11は、バイアル100(図5図6参照)の栓体としてのゴム栓101に先端7が挿入される、中空部5を区画する円筒状の中空針である。針状部材11の先端部25がゴム栓101を通じてバイアル100内に進入すると、中空部5の先端部25側の一端が、バイアル内で薬剤を収容する収容空間104と連通する。
【0040】
本実施形態における針状部材11は、バイアル100内に挿入される、かつ、バイアル100から抜去される先端7を含む先端部25と、この先端部25とは反対側に位置する基端部26とを有する。針状部材11は、この基端部26が連結部材12の連結中空部27に入り込み、基端部26の外周面が連結中空部27を区画する連結部材12の内壁により係止されて、位置が固定されている。なお、本実施形態における針状部材11の基端部26は、連結中空部27に圧入されることにより、連結中空部27を区画する内壁に係止されて、位置が固定される構成であるが、例えば、連結中空部27を区画する内壁と、針状部材11の基端部26の外壁とを、超音波融着や接着剤等により接着することによって、針状部材11の基端部26の、連結部材12に対する位置を固定するようにしてもよい。
【0041】
針状部材11の材料としては、例えば、上述の接続部材10の筐体13と同様の材料を用いることが可能である。
【0042】
[連結部材12]
上述したように、連結部材12は、刺通部材3の針状部6と接続部9とを連結する部材である。具体的に本実施形態では、連結部材12は、刺通部材3の針状部6を構成する針状部材11と、刺通部材3の接続部9を構成する接続部材10とを連結する部材である。
【0043】
本実施形態における連結部材12は、略円柱状の外形を有し、この底面(図1において下側の面)から天面(図1において上側の面)を貫通する連結中空部27を区画している。上述したように、この連結中空部27には、連結部材12の底面側から針状部材11の基端部26が嵌め込まれている。
【0044】
連結部材12の天面側には、接続部材10の円筒状の筐体本体16の端部が嵌り込む環状溝67が形成されている。筐体本体16のうちキャップ17が取り付けられている一端部とは反対側の他端部が、この環状溝67に嵌り込むことにより、接続部材10が連結部材12に接続される。なお、接続部材10は、例えば、超音波による融着や接着剤による接着により、連結部材12に対して固定されている。これにより、針状部材11が、連結部材12を介して接続部材10に間接的に支持される。
【0045】
ここで、接続部材10及び針状部材11が連結部材12に対して固定されている状態で、連結部材12が区画する連結中空部27は、接続部材10における弾性弁体15の中空部21(又は筐体13の接続口8)、及び針状部材11の中空部5を繋いでいる。これにより、同状態におけるバイアルアダプタ1は、弾性弁体15の中空部21(又は接続口8)と、針状部材11の中空部5とが繋がって一体となった薬液流路を区画している。
【0046】
連結部材12の材料としては、例えば、上述の接続部材10の筐体13と同様の材料を用いることが可能である。
【0047】
[弁体2]
弁体2は、バイアル100のゴム栓101と接触し、ゴム栓101と接触領域S(図5図7参照)を形成する部材である。なお、図1はバイアルアダプタ1単体を示しており、バイアル100は描かれていない。ここでは、弁体2単体の構成について説明し、弁体2とバイアル100のゴム栓101とで形成される接触領域Sについての詳細は後述する。
【0048】
図3図4は、弁体2の単体を示す斜視図である。図1図3図4に示すように、弁体2は、ゴム板部29と、ゴム板部29の一方の平面と連続し、この平面に対して直交する方向Cに延在する略円筒のゴム筒部30と、を備える。
【0049】
ゴム板部29は、円形扁平状のゴム部材であって、後述するように、針状部材11の先端7は、ゴム板部29を貫通してバイアル100内に挿入される。逆に、針状部材11の先端7は、バイアル100内から抜去される際に、ゴム板部29を通じて抜去される(図5、6参照)。なお、弁体2及び刺通部材3がハウジング4に取り付けられた状態では、ゴム板部29は、延在方向Aにおける弁体2の一端に位置する。
【0050】
ゴム筒部30は、ゴム板部29の一方の平面に対して直交する方向Cに凹凸を繰り返す蛇腹状の外壁を有している。これにより、ゴム筒部30は、同方向Cにおいて蛇腹状の凹凸を折り畳むように同方向Cに弾性変形することができる。
【0051】
なお、図1に示すように、針状部材11(針状部6)の先端7がゴム板部29に刺さっていない状態においては、針状部材11の先端7は、ゴム板部29とゴム筒部30とにより取り囲まれ、ゴム板部29及びゴム筒部30により区画される中空部32に収容されている。この点の詳細は後述する(図5図7参照)。
【0052】
また弁体2は、金型成形され、弾性変形可能に形成される。この弁体2の材料としては、上述の接続部材10の弾性弁体15と同様のものを使用することが可能である。また、弁体2の硬度は、20〜60°(A硬度)であることが好ましい。
【0053】
[ハウジング4]
ハウジング4は、弁体2と、刺通部材3(接続部材10、針状部材11、及び連結部材12)とを保持する。特に、刺通部材3は、ハウジング4に対して、針状部材11(針状部6)の延在方向Aに移動可能なように保持される。
【0054】
図1に示すように、ハウジング4は、刺通部材3を延在方向Aに移動可能に保持する第1保持部33と、弁体2を保持する第2保持部34と、バイアル100を係止する係止部35と、を備える。
【0055】
第1保持部33は、内部に刺通部材3を収容可能な略円筒状の収容部36と、この収容部36の一端側に設けられ、収容部36の延在方向(本実施形態ではハウジング4に保持された刺通部材3における針状部材11の延在方向Aと同じ方向)における刺通部材3の移動範囲の一端を画定する移動規制部37と、収容部36の他端側に設けられ、収容部36の延在方向と直交する方向(本実施形態では延在方向Aと直交する方向Dと同じ方向)に延在する略円盤状の底板部38と、を備える。
【0056】
収容部36は、略円柱状の外形を有する連結部材12の最大外径との差が3mm以下となるような内径を有している。これにより刺通部材3は、収容部36の内壁に規制されることによって、収容部36の延在方向と直交する方向への移動が制限される一方で、収容部36の延在方向、すなわち針状部材11の延在方向Aに移動することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、収容部36の内径と連結部材12の最大外径との関係により、刺通部材3の移動方向をガイドしているが、このような構成に限られるものではなく、例えば、刺通部材3の移動方向を所定方向に規制するガイドを設ける構成としてもよい。ガイドとしては、例えば、ハウジング4の収容部36の内壁に、刺通部材3の移動方向をガイドする凸型スライドレールを設けると共に、刺通部材3にこの凸型スライドレールに嵌合する凹型スライドレールを設ける構成が挙げられるが、このガイドの構成に限られるものではなく、移動距離や刺通部材3を収容する空間の大きさなどに応じて適宜変更することが可能である。
【0058】
移動規制部37は、収容部36の一端側に設けられており、収容部36の延在方向において移動する刺通部材3が、収容部36の内部空間から抜け出ないように規制している。本実施形態における移動規制部37は、略円筒状の収容部36の内径よりも小さい内径を有し、収容部36の一端に取り付けられる環状のエンドキャップ37aである。
【0059】
底板部38には、刺通部材3の針状部材11が収容部36の延在方向(針状部材11の延在方向Aと同じ方向)に移動可能な孔39が設けられている。つまり、刺通部材3の針状部材11は、この孔39を通って移動することができる。
【0060】
第2保持部34は、針状部材11がハウジング4に取り付けられた状態において、針状部材11の延在方向Aにおいて、上述の第1保持部33と隣接して配置されている。具体的に、第2保持部34は、第1保持部33の底板部38を挟んで収容部36と反対側に位置している。
【0061】
第2保持部34は、収容部36の延在方向において、底板部38から収容部36とは反対側に突出する略円筒状の収容部40及び円筒部41を備える。弁体2は、収容部40の内部に取り付けられる。
【0062】
具体的に、底板部38の第2保持部34側の面には、孔39を区画する円筒部41が、収容部40の内部に設けられている。すなわち、略円筒状の収容部40内部に、更に収容部40よりも小径の円筒部41が位置している。この円筒部41が、弁体2のゴム筒部30のうちゴム板部29とは反対側の一端部において、ゴム筒部30内に嵌り込み、弁体2を支持している。
【0063】
更に、弁体2のゴム筒部30の外周面と、収容部40の内周面との間には、ゴム筒部30が蛇腹状の外壁が折り畳まれながら収容部36の延在方向に弾性変形することをガイドする環状のガイドキャップ42が設けられている。
【0064】
具体的に本実施形態におけるガイドキャップ42は、弁体2のゴム筒部30の周面を取り囲む筒部43と、この筒部43の一端において筒部43の内壁から内方に突出する環状突部44と、筒部43の外壁から外方に突出する突部45と、を備えている。
【0065】
環状突部44は、弁体2が、ハウジング4の第2保持部34から抜け落ちないように弁体2の周面を挟み込んで係止する。突部45は、円筒状の収容部40に設けられたガイドスロット46(図2図7参照)に入り込み、弁体2のゴム筒部30が蛇腹状の凹凸を折り畳むように弾性変形する場合に、この弾性変形に追従してガイドスロット46内を移動する。
【0066】
このように、本実施形態における弁体2は、ハウジング4の第2保持部34において、収容部40、円筒部41、及びガイドキャップ42によって、弾性変形可能に保持される。
【0067】
係止部35は、バイアル100の外壁に設けられた括れ部103(図5図7参照)と接触してバイアル100を挟み込んで係止する爪部47と、この爪部47と連続し収容部36の延在方向(本実施形態では針状部材11の延在方向Aと同じ方向)に延びる環状の延在部48と、この延在部48と連続し、延在方向Aと直交する方向Dに延在する略円盤状の連結部49と、を備える。この係止部35により、バイアルアダプタ1は、バイアル100の蓋部105(図5図7参照)に接続可能である。なお、環状の延在部48は、バイアル100の略円形の天面102の周面に沿うように湾曲している。また、本実施形態における連結部49は、図1図2に示すように、上述した第2保持部34の略円筒状の収容部40と連続している。
【0068】
ハウジング4の材料としては、例えば、上述の接続部材10の筐体13と同様の材料を用いることが可能である。
【0069】
[ハウジング4に保持されている状態での弁体2及び刺通部材3の関係]
ここまでは主に、バイアルアダプタ1の各部材について説明してきた。以下、バイアルアダプタ1における1つの特徴部として、ハウジング4に保持されている状態での弁体2及び刺通部材3の関係について説明する。
【0070】
図5は、バイアルアダプタ1が、バイアル100の蓋部105に接続されている状態であって、刺通部材3の針状部材11(針状部6)の先端7が、バイアル100内に挿入されていない状態を示す断面斜視図である。図6は、バイアルアダプタ1がバイアル100の蓋部105に接続されている状態であって、刺通部材3の針状部材11の先端7が、バイアル100内に挿入されている状態を示す断面斜視図である。なお、説明の便宜上、図5図6では、バイアル100の薬液を収容する収容空間104の一部(図5図6に図示されるバイアル100の一部よりも下部)が省略されている。
【0071】
上述したように、刺通部材3は、ハウジング4に保持された状態において、刺通部材3の針状部材11の延在方向Aに移動可能である。具体的に、刺通部材3の接続部材10及び連結部材12は、ハウジング4の第1保持部33における収容部36内を移動することができる。刺通部材3の針状部材11は、その基端部26側の部分は、接続部材10及び連結部材12と同様、収容部36内を移動するが、先端部25側の部分は、底板部38に形成された孔39を通じて、第2保持部34内を移動する(図1参照)。
【0072】
従って、図5に示す刺通部材3の位置から、刺通部材3を延在方向Aに移動させることにより、刺通部材3における針状部材11の先端7を弁体2のゴム板部29に挿入、更には貫通させる。これによって刺通部材3を図6に示す位置に移動させることができる。なお、針状部材11の先端7を、バイアル100内、及び弁体2のゴム板部29から抜去する場合には、刺通部材3を、針状部材11の先端7の挿入方向とは逆方向に移動させる。
【0073】
[バイアル100のゴム栓101と弁体2とで形成される接触領域S]
次に、図5図6を参照して、バイアル100のゴム栓101と弁体2とで形成される接触領域Sについて説明する。
【0074】
図5図6に示すように、弁体2のゴム板部29の底面は、バイアル100のゴム栓101の天面102における所定領域と接触している。この所定領域の外縁により画定される面領域が接触領域Sである。
【0075】
バイアルアダプタ1がバイアル100の蓋部105に接続されている状態、すなわち、ハウジング4の係止部35によりバイアル100が係止されている状態では、バイアルアダプタ1の弁体2と、バイアル100のゴム栓101とが接触領域Sを形成し、刺通部材3の針状部材11の先端7は、この接触領域Sが形成されている状態で、この接触領域Sを通って、弁体2のゴム板部29及びゴム栓101を貫通することにより、バイアル100内に進入する。逆に、針状部材11の先端7は、接触領域Sが形成されている状態で、この接触領域Sを通って、弁体2のゴム板部29及びゴム栓101から抜去される。
【0076】
本実施形態では、針状部材11の先端7が、接触領域Sを通って弁体2及びゴム栓101から抜去されるので、抜去される際に、針状部材11の周囲ではゴム栓101の天面が露出していないため、薬液がゴム栓101の天面102に付着しにくい。
【0077】
ここで、本実施形態のバイアルアダプタ1がバイアル100に接続される際に、接触領域Sが形成される原理について説明する。図7は、図5の断面斜視図のうち弁体2の付近の拡大断面図である。バイアルアダプタ1がバイアル100の蓋部105に接続される際には、弁体2のゴム板部29の底面がバイアル100のゴム栓101の天面102と接触して接触領域Sを形成すると共に、ゴム板部29の底面はゴム栓101の天面によって延在方向Aに押圧される。この押圧力により、弁体2のゴム筒部30は、ゴム栓101と底板部38とに挟まれて延在方向Aに圧縮されて弾性変形する。ガイドキャップ42も、突部45がガイドスロット46にガイドされることにより、ゴム筒部30の弾性変形に追従して延在方向Aに移動する。そして、図7に示すように、バイアルアダプタ1がバイアル100の蓋部105に完全に接続される、すなわち、ハウジング4の係止部35の爪部47が括れ部103に引っかかると、接触領域Sは、ゴム筒部30の弾性変形によって密着した状態で維持される。なお、本実施形態のゴム筒部30は、ゴム栓101と底板部38とに挟まれて延在方向Aに弾性変形するが、ゴム筒部30の内壁と円筒部41の外壁との間の摩擦力等により、ゴム筒部30が、ゴム栓101と円筒部41とに挟まれて延在方向Aに弾性変形するように構成してもよい。また、ゴム筒部30が底板部38及び円筒部41の両方に挟まれて延在方向Aに弾性変形する構成としてもよい。
【0078】
このように、本実施形態の弁体2は、接触領域Sが形成されている状態で延在方向Aに圧縮されて弾性変形し、ゴム板部29をゴム栓101側に押圧する押圧部50として、ゴム板部29の一方の平面と連続し、延在方向Aに凹凸を繰り返す蛇腹状の外壁を有するゴム筒部30を備えるため、接触領域Sにおいて弁体2とゴム栓101とが密着し、接触領域Sにおける両者間の微細な隙間を低減することができる。これにより、針状部材11の先端7が抜去される際に、薬液がゴム栓101の天面102に一層付着しにくくなる。
【0079】
更に、本実施形態の弁体2は、図5図7に示すように、針状部材11(針状部6)の先端7は、ゴム栓101及び弁体2から抜去されている状態において、中空部32内に収容され、ゴム板部29とゴム筒部30とにより覆われている。そのため、針状部材11の先端7が抜去された後に、例えば、先端7から滴下等した薬液が弁体2の外壁を伝うなどしてゴム栓101の天面102に付着することをも抑制することができる。
【0080】
また更に、本実施形態では、弁体2のゴム筒部30及びハウジング4は、針状部材11(針状部6)の先端7が、ゴム栓101及び弁体2から抜去されている状態において、針状部材11の延在方向Aに直交する方向Dの周囲を取り囲んでいる。そのため、図5図6に示すような、延在方向Aと鉛直方向とが略一致するようにバイアルアダプタ1の姿勢が保たれている場合の他に、例えば、延在方向Aと水平方向とが略一致するようにバイアルアダプタ1の姿勢が変化させられた場合であっても、針状部材11の外壁から滴下等する薬液は、弁体2のゴム筒部30やハウジング4により受けられ、バイアルアダプタ1の外部に漏出することを一層抑制することができるため有益である。また使用者は、バイアルアダプタ1を取扱う際に、複数の姿勢に変えて使用することができるため、使用者による操作性も向上する。
【0081】
なお、実施形態では、図7に示すように、針状部材11の外壁と孔39を区画するハウジング4の内壁との間に、シール部材31としてのオーリングが設けられている。更に、針状部材11(針状部6)の中空部5と弁体2の中空部32とは、針状部材11の先端7がゴム栓101及び弁体2から抜去されている状態において、シール部材31よりも延在方向Aの先端7側で連通している。このような構成とすることにより、針状部材11の先端7がゴム栓101及び弁体2から抜去されている状態であっても、針状部材11の中空部5から流出する薬液を中空部32内に閉じ込めることができる。更に本実施形態では、連結部材12の底面(図5図6における下側の面)が、針状部材11の基端部26側に位置している。従って、針状部材11のうちシール部材31よりも基端部26側の部分は、針状部材11(針状部6)の先端7がゴム栓101及び弁体2から抜去されている状態において、ハウジング4、シール部材31、及び連結部材12により区画された、密閉空間内に位置している。また、本実施形態における針状部材11のうちシール部材31よりも先端7側の部分は、弁体2、ハウジング4、及びシール部材31により密閉された中空部32内に位置している。すなわち、本実施形態における針状部材11は、針状部材11の先端7がゴム栓101及び弁体2から抜去されている状態において、弁体2、ハウジング4、シール部材31、及び連結部材12により周囲全域が囲まれている。そのため、針状部材11の中空部5から流出する薬液のみならず、針状部材11の外壁に付いてしまった薬液であっても、バイアルアダプタ1の外部に漏出することを抑制することができる。従って、使用者が薬液に触れる危険性を一層低減することができる。
【0082】
ここで、既存のバイアルアダプタは、使用者の安全性を考慮して、1つのバイアルに対して1つ使用される、所謂使い捨てタイプのものが一般的であるが、本実施形態としてのバイアルアダプタ1は、針状部材11(針状部6)の先端7の挿入及び抜去の際にゴム栓101の天面102に薬液を付着させにくくすることに加えて、針状部材11の先端7が弁体2及びゴム栓101から抜去された後に、針状部材11がバイアルアダプタ1内に収容されるため、使用者は、バイアルアダプタ1をバイアル100から取り外し、同じバイアルアダプタ1を別のバイアルに付け替える作業をより安全に行うことができる。すなわち、本実施形態1におけるバイアルアダプタ1は、繰り返し使用ができる点でも有益である。
【0083】
<実施形態2>
次に、本発明の別の実施形態としてのバイアルアダプタ60について説明する。本実施形態におけるバイアルアダプタ60は、実施形態1におけるバイアルアダプタ1と比較して、ハウジングの一部の構成が相違しており、他の構成については共通している。従って、ここでは、バイアルアダプタ60におけるハウジング61のうち、実施形態1のハウジング4と異なる点について詳しく説明し、その他の共通する構成については説明を省略する。なお、実施形態1のバイアルアダプタ1と共通するものについては、実施形態1と同一の符号を付している。
【0084】
図8は、バイアルアダプタ60がバイアル100に接続されている状態を示す斜視図であり、図9は、同状態の側面図である。なお、説明の便宜上、図8図9では、バイアル100の薬液を収容する収容空間104の一部(図8図9に図示されるバイアル100の一部よりも下部)が省略されている。
【0085】
図8図9に示すように、本実施形態におけるハウジング61の係止部62は、収容部36の延在方向(本実施形態では針状部材11の延在方向Aと同じ方向(図1参照))に延びる2つの延在部63a、63bと、各延在部63の一端と連続し、バイアル100の外壁に設けられた括れ部103と接触してバイアル100を挟み込んで係止する2つの爪部64a、64bと、各延在部63の他端と連続し、2つの延在部63a、63bを連結する板状の連結部65と、を備える。なお、各延在部63及び各爪部64は、バイアル100の略円形の天面の周面に沿うように湾曲した形状を有している。
【0086】
更に、図8図9に示すように、ハウジング61の外壁のうち、各延在部63と連結部65とが連続する部分には、ハウジング61の外壁から外方に突出する板状の把持部66が設けられている。本実施形態の把持部66は、第1把持片66a及び第2把持片66bにより構成されている。
【0087】
本実施形態におけるハウジング61は、上述の係止部62と把持部66とを備えることにより、バイアル100に対してのバイアルアダプタ60の着脱を容易にすることができる。そのため、例えばバイアルアダプタ60を繰り返し使用する場合に、バイアル100から別のバイアルへと付け替える作業が容易となる。
【0088】
具体的に、把持部66の第1把持片66a及び第2把持片66bを、両者が近づく方向に変形するように外方から摘むと(図9の矢印参照)、板状の連結部65が撓むことにより弾性変形する。つまり、本実施形態では、連結部65を弾性変形させることにより、対向する2つの延在部63a、63bを互いに離れる方向、すなわち収容部36の延在方向と直交する方向(本実施形態では針状部材11の延在方向Aと直交する方向Dと同じ方向(図1参照))におけるハウジング61の外方側に移動させることができる。各延在部63と連続する各爪部64は、各延在部63の上述の移動に追従して移動するため、方向Dにおいてハウジング61の外方側へと移動する。これにより、爪部64がバイアル100を係止するための係合力(引っ掛かり具合や押圧力等)を弱め、又は爪部64によるバイアル100の係止を完全に解除することができるため、使用者は、バイアル100からバイアルアダプタ60を容易に取り外すことができる。
【0089】
なお、バイアルアダプタ1をバイアル100から取り外す場合の他に、バイアルアダプタ60をバイアル100又は別のバイアルに対して取り付ける場合であっても、把持部66により連結部65を上述のように弾性変形させれば、装着が容易となるため有益である。
【0090】
ここで、本実施形態では、2つの延在部63a、63b及び2つの爪部64a、64bを用いているが、これに限られるものではなく、例えば3つ以上の延在部63及び3つ以上の爪部64としてもよい。更に、本実施形態では把持部66を2つの把持片(第1把持片66a、第2把持片66b)により構成しているが、この把持片の数もこれに限られるものではなく、爪部の数や大きさ等によって適宜変更することが可能である。
【0091】
また、針状部材11の先端7(図1参照)が、バイアル100内に位置する状態(図6と同じ状態)で、使用者が把持部66を操作することにより、バイアルアダプタ60がバイアル100から取り外されてしまうことがないように、針状部材11の先端7がバイアル100内に位置する状態では把持部66の摘み操作をできないようにする把持部規制部材を更に設ける構成としてもよい。把持部規制部材を設けることにより、針状部材11の先端7が、外部に露出した状態でバイアル100から取り外されることが抑制される。なお、把持部規制部材としては、例えば、刺通部材3(図1参照)の外壁から延在方向Aと直交する方向Dに突出し、刺通部材3の移動と追従して延在方向Aに移動する突起が挙げられる。この突起は、ハウジング61の収容部36(図1参照)に設けられた、延在方向Aに延びるスロットを貫通しており、突起の先端が、方向Dにおいて収容部36の外壁よりも外方に位置する。従って、刺通部材3が延在方向Aに移動すると、突起もスロット内を延在方向Aに移動するため、この突起は、針状部材11の先端7がバイアル100内に位置する状態においては、第1把持片66aと第2把持片66bの間に位置する。このようにすれば、針状部材11の先端7がバイアル100内に位置する状態で、使用者が把持部66を操作したとしても、突起によって把持部66の変形が規制されるため、誤った操作によりバイアルアダプタ60がバイアル100から取り外されることを抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、バイアルに取り付けられるバイアルアダプタに関する。
【符号の説明】
【0093】
1、60:バイアルアダプタ
2:弁体
3:刺通部材
4、61:ハウジング
5:中空部
6:針状部
7:先端
8:接続口
9:接続部
10:接続部材
11:針状部材
12:連結部材
13:筐体
14:スリット
15:弾性弁体
16:筐体本体
17:キャップ
18:第1中空部
19:第2中空部
20:内壁
21:中空部
22:蛇腹部
23:円筒部
24:天面部
25:先端部
26:基端部
27:連結中空部
29:ゴム板部
30:ゴム筒部
31:シール部材
32:中空部
33:第1保持部
34:第2保持部
35、62:係止部
36:収容部
37:移動規制部
37a:エンドキャップ
38:底板部
39:孔
40:収容部
41:円筒部
42:ガイドキャップ
43:筒部
44:環状突部
45:突部
46:ガイドスロット
47、64、64a、64b:爪部
48、63、63a、63b:延在部
49、65:連結部
50:押圧部
66:把持部
66a:第1把持片
66b:第2把持片
67:環状溝
70:突部
71:中空部
100:バイアル
101:ゴム栓
102:天面
103:括れ部
104:収容空間
105:蓋部
A:針状部の延在方向
B:挿入部材の挿入方向
C:ゴム板部の平面と直交する方向
D:針状部の延在方向と直交する方向
S:接触領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9