特許第6284229号(P6284229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284229
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】缶詰の蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 17/32 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   B65D17/32
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-92291(P2014-92291)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-209231(P2015-209231A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】593016330
【氏名又は名称】株式会社村春製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】特許業務法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村 上 雅 治
(72)【発明者】
【氏名】村 上 慎
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−103720(JP,A)
【文献】 特開2004−161360(JP,A)
【文献】 特開2006−315704(JP,A)
【文献】 実開昭62−182221(JP,U)
【文献】 実開昭58−065231(JP,U)
【文献】 米国特許第03195764(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 17/00 − 17/52
B65D 47/36
B65D 5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋本体(11)にリベット(30)で接続されたプルタブ(20)を有し、該プルタブ(20)を引き上げることにより蓋本体(11)の外周(11o)が缶本体(100)から分離する缶詰の蓋において、前記蓋本体(11)の直径方向について前記プルタブ(20)を設けた側とは反対側の前記外周(11o)の領域(11A)に前記外周(11o)の曲率半径よりも曲率半径が小さい曲線により形成された第1の突起(12)を設け第1の突起(12)の円周方向両側に隣接して配置されて前記外周(11o)の曲率半径以下の曲線と前記外周(11o)の曲率半径と等しい曲線で構成された第2の突起(13)を有し、前記第1の突起(12)と第2の突起(13)とは、窪んだ湾曲部(123)で接続されており、前記領域(11A)の近傍には蓋本体(11)と分離しようとするときに変形を防止するための補強用リブ(17)が形成されていることを特徴とする缶詰の蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶詰容器に関し、特に缶詰の蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、缶詰容器から蓋を取り外すのに、蓋に設けたプルタブを引き上げるタイプの缶詰容器が多い(特許文献1参照)。
しかし、この様なプルタブを設けて蓋を缶本体から取り外すタイプの缶詰では、蓋の直径方向におけるプルタブの反対側の領域が、缶本体から外れ難いという問題を有している。
【0003】
また、蓋を取り外す際に、プルタブの反対側の部分が蓋本体から分離し難いため、蓋を缶本体から取り外す最終段階でプルタブを強く引っ張らなくてはならず、プルタブを引っ張る力により蓋が大きく弾性変形してする。そのため、蓋が缶本体から外れた瞬間に、弾性変形した蓋が復元しようとする弾性反撥力が作用して、蓋が大きく動く。その際に、図12で示すように、蓋10Jの裏側に付着していた缶内容物Mが飛び跳ねてしまい(図12の符号「Mx」)、缶を開けた者の衣服等に掛かってしまう(いわゆる「スプリングバック」:SB)、という問題が生じる。
係る問題(スプリングバック)を効果的に防止することが出来る缶詰容器は、現時点では存在しない。
なお図12において、符号20Jはプルタブを示し、符号100は缶本体を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−180817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、プルタブを有するタイプの缶詰の蓋であって、缶を缶本体から容易に分離して、蓋の裏側に付着していた缶内容物が飛び跳ねてしまうこと(スプリングバック)を防止することが出来る缶詰の蓋の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、蓋本体(11)にリベット(30)で接続されたプルタブ(20)を有し、該プルタブ(20)を引き上げることにより蓋本体(11)の外周(11o)が缶本体(100)から分離する缶詰の蓋において、前記蓋本体(11)の直径方向について前記プルタブ(20)を設けた側とは反対側の前記外周(11o)の領域(11A)に前記外周(11o)の曲率半径よりも曲率半径が小さい曲線により形成された第1の突起(12)を設け第1の突起(12)の円周方向両側に隣接して配置されて前記外周(11o)の曲率半径以下の曲線と前記外周(11o)の曲率半径と等しい曲線で構成された第2の突起(13)を有し、前記第1の突起(12)と第2の突起(13)とは、窪んだ湾曲部(123)で接続されており、前記領域(11A)の近傍には蓋本体(11)と分離しようとするときに変形を防止するための補強用リブ(17)が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
上述の構成を具備する本発明によれば、缶詰の蓋(10)を開ける際に、蓋本体(11)においてプルタブ(20)を設けた側(図1では上方)とは反対側(直径方向の反対側)の領域(11A)が、最後に缶本体(100)から外れる。そして当該領域(11A)においても、前記第1の突起(12)と第2の突起(13)において蓋(10)が缶本体(100)から分離する。
さらに、蓋本体(11)の第2の突起(13)近傍領域が缶本体(100)から分離した後、第1の突起(12)の部分が缶本体から分離する。
そして、最終的には、第1の突起(12)と第2の突起(13)との接続箇所(123)のみで蓋と缶本体は接続されることになる。
【0009】
第1の突起(12)と第2の突起(13)との接続箇所(123)のみで蓋(10)と缶本体(100)が接続された状態で、蓋(10)が缶本体(100)に対して90°まで移動すれば(図7参照)、当該接続箇所(123)には、蓋(10)が移動する方向(図7の矢印D方向)に捻る力が作用するので、さらに力を加えなくても、接続箇所(123)において蓋(10)が缶本体(100)から破断する。
そのため本発明によれば、蓋(10)が缶本体(100)から外れる際に、さらに力を加える必要がなく、蓋本体(11)が弾性変形することもない。そして蓋本体(11)が弾性変形することなく缶本体(100)から容易に外れるため、蓋(10)のプルタブ(20)の反対側の部分が弾性反撥力で大きく変動してしまうこともなく、蓋が勢い良く動いてしまうことがなくなる。
すなわち本発明によれば、蓋が勢い良く動かないため、蓋本体(11)の裏側(プルタブ20の反対側)に付着していた缶内容物(M)が飛び跳ねてしまうこと(スプリングバック)が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る缶詰の蓋のプルタブが設けられていない側の面を示す裏面図である。
図2図1におけるX−X断面矢視図である。
図3図1の蓋のプルタブ側を示す平面図である。
図4図3におけるY−Y断面矢視図である。
図5図1の蓋の裏面におけるプルタブ近傍を示す裏面図である。
図6】蓋のプルタブとは反対側領域の詳細を示す部分拡大図である。
図7】蓋が缶本体から外れる際における蓋と缶本体との位置を示す側面図である。
図8】蓋のプルタブとは反対側領域が缶本体から分離する状態の説明図である。
図9】第1の突起と第2の突起との接続箇所(くびれ部)が不適当に配置されている場合の問題を示す説明図である。
図10】第1の突起と第2の突起との接続箇所(くびれ部)が適切な場合を示す説明図である。
図11】第1の突起と第2の突起との接続箇所(くびれ部)の位置が半径方向内方に食い込みすぎている場合における問題を示す説明図である。
図12】従来の缶詰におけるスプリグバックを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1において、本発明の実施形態に係る缶詰の蓋は全体が符号10で示されている。ここで、図1では、蓋本体11の裏側(プルタブ20が設けられていない側)が示されている。プルタブ20(図1では点線で示す)は、図1の紙面の裏側に位置している。
なお蓋本体11は、例えば、薄板板金をプレス打ち抜きで加工して成形される。
【0012】
図1図4において、蓋10は、蓋本体11と、プルタブ20と、リベット30によって構成されており、リベット30は蓋本体11とプルタブ20とを接続している。
蓋本体11は、図1において上下方向に延在する中心線LVに対して対称形である。
蓋本体11には、図示の実施形態では逆「ハ」字状に配置された1対の補強リブ14が形成されている。1対の補強リブ14間は、中心線LV側が凸になるように湾曲している。
【0013】
一対の補強リブ14の間の領域には、1対の補強リブ15が形成されている。補強リブ15も、図示の実施形態では逆「ハ」字状に配置されている。
補強リブ14、リブ15は、蓋10を開ける場合、蓋本体11の湾曲を抑制して、蓋本体11が平板状態を保持して缶本体100(図7参照)から分離し易くするために設けられている。そのため、缶本体100から蓋10を取り外す際に、図1における蓋本体11の領域Bの湾曲し難くなり、蓋本体11は概略平坦な状態を保持する。
蓋本体11が平坦に近い状態であれば、梃子(てこ)の原理により、プルタブ20を引っ張る力が小さくても、蓋本体11の領域B(図1)は、位置Ba(図1)を起点として容易に缶本体100から外れる(蓋本体11の領域Bが開く)。
【0014】
図示はされていないが、補強リブ14、15は逆「ハ」字状の配置されているタイプには限定されない。例えば、図1の上下方向に延在する複数の平行リブであってもよい。
図2で示すように、図示の実施形態では、蓋本体11の補強リブ14は蓋本体11の裏側に形成され、補強リブ15は蓋本体11の表側に形成されている。
図2で示す補強リブ14、15の断面形状は、概略半円弧状である。ただし補強リブ14、15の断面形状は半円弧状に限定されるものではない。例えば、図示はされていないが、補強リブ14、15の断面形状を三角形とすることが可能であり、或いは、断面形状を「コ」字状にすることも可能である。
【0015】
図1で示す蓋10の表面側(プルタブ20側)が、図3で示されている。
図3において、蓋本体11の表面側にはプルタブ20が設けられており、プルタブ20はリベット30により蓋本体11に取り付けられている。
蓋本体11の表面側(プルタブ側)の領域B(上下方向における領域:図1の領域Bと同じ)の上方には、複数の長円形の凹部16が直列に形成されている。
【0016】
凹部16は、図3の左右方向の変形(湾曲)を抑制すると共に、凹部16の長手方向(中心軸Lh)に沿って蓋本体11が折り曲げられるのを促進する効果がある。凹部16を形成することにより、プルタブ20を引っ張って蓋10を缶本体100から外す際に、蓋本体11は凹部16における長手方向中心軸Lh(長円形の長径)に沿って、図3の左右方向について対称的に、均等に折り曲げられる。
蓋本体11が凹部16の長手方向中心軸Lhに沿って、左右対称に且つ均等に折り曲げられることにより、蓋10を缶本体100から取り外し易くなる。
【0017】
図3及び図4において、プルタブ20のリベット30よりも上方の部分の先端21は、楔形に尖っている。一方、蓋本体11の上端18も、図5で示すように楔形に尖っている。そして、上記楔形の上端18は、円弧19を介して蓋本体11の外周円11oと連続している。
図3において、プルタブ20を紙面の看者側(手前側)に引き起こすと、プルタブ先端21が、缶本体100における蓋本体11の前記先端18が、缶本体100(図7)の図示しない切れ込み部に当接し、その先端18にプルタブ20を引き起こした力が作用して、先端18が当接している缶本体100の切り込みに応力集中が発生する。その結果、缶本体100の切り込みにおいて、先端18が当接している箇所が破断する。
【0018】
図1において、蓋本体11の縁部(の下端部)における領域11Aは、蓋本体11のプルタブ20を設けた側(図1では上方)とは反対側(直径方向の反対側:図1では下方)の縁部である。
領域11Aにおいて、蓋本体11には、図1における蓋本体11の下端中央に配置された(中心線LV上に位置している)第1の突起12と、第1の突起12の左右に配置された第2の突起13とが設けられている。第1の突起12と第2の突起13は、双方の突起12、13とは逆方向に窪んだ湾曲部123(接続箇所)によって接続している。
【0019】
第2の突起13の中心軸LV側(第1の突起12側)の曲線における曲率半径は小さいが、中心軸LVから離隔する側(第1の突起12から離隔する側)の曲線における曲率半径は大きい。
第2の突起13の曲率半径が小さい曲線と、曲率半径が大きい曲線(蓋本体11の周縁部と等しい曲率半径を有する曲線)の境界部分は、第2の突起13の頂部13tを形成している。
【0020】
図示の実施形態では、第2の突起13の中心軸LVから離隔する側(第1の突起12から離隔する側)の曲線における曲率半径は、蓋本体11の周縁部の曲率半径に等しい。
また図示の実施形態では、第2の突起13の中心軸LV側(第1の突起12側)の曲線における曲率半径は、第1の突起12の曲率半径と同等か、それ以下である。そして、前記湾曲部123の曲率半径は、第2の突起13の中心軸LV側(第1の突起12側)の曲線における曲率半径以下である。
【0021】
プルタブ20を引っ張って缶詰の蓋10を開ける際に、領域11Aは、缶本体100から最後に外れる。
蓋本体11が缶本体100(図7)から外れるに際してしては、プルタブ30に近い領域から、蓋本体11の缶本体100との接続箇所(図示しない切り込み)の破断(蓋本体11の分離)が進行する。
係る破断(分離)が、第2の突起13の頂部13tまで到達すると、第1の突起12の領域の破断が始まる。
【0022】
領域11Aが缶本体100から分離する(外れる)態様について、図6図8を参照して、詳細に説明する。
図6は蓋本体11Aのプルタブ20とは反対側(裏面)を示しており、プルタブ20は図6では示されていないが、図6の矢印U方向に位置している。
図6では図示しないプルタブ20を引張ると、缶本体100と蓋10との分離は矢印Rで示すように進行する(缶の蓋は矢印Rで示すように開く)。
【0023】
プルタブ20を引っ張り続けると、缶本体100と蓋本体11との分離がさらに進行して、第2の突起13の頂点13tに到達すると、領域11Cにおいて、蓋本体11の缶本体100からの分離が進行する。
領域11Cの分離については、図8を参照して説明する。
なお図6において、符号11oは蓋本体11の外周を示す。
【0024】
図8において、符号11Cで示す領域には概略半球状の突起17(いわゆる「シボ」:凸部:蓋裏面から見ると凹部)が存在する。
突起17は補強用突起として作用するため、蓋本体11を缶本体100から分離しようとする力(図7において矢印Dで示す力)が突起17に作用すると、当該力は領域11Cに作用する。その結果、領域11Cの缶本体100からの分離が開始される。ここで、本体11を缶本体100から分離しようとする力(矢印D)が突起17に作用する際に、突起17の近傍領域は補強用突起17の作用により変形しない。
【0025】
再び図6において、領域11Cが分離した後、最終的には、2箇所の湾曲部123(接続箇所)のみで、缶本体100と蓋本体11とが接続された状態になる。
ここで、湾曲部123は第1の突起12と第2の突起13との接続箇所であり、蓋本体11の半径方向内方に引っ込んだ位置である。
図6図8を参照して述べた通り、プルタブ20を引っ張って缶本体100と蓋本体11とを分離すると、蓋本体11の缶本体100からの分離は、円周部11oから第2の突起13の頂点13t、領域11Cの順に進行して、最終的には、缶本体100と蓋本体11とは湾曲部123(2箇所)のみで接続される。
【0026】
2箇所の湾曲部123のみで蓋本体11が缶本体100に接続している状態において、図7で示すように蓋本体11が缶本体100に対して90°まで移動したならば、プルタブ20に対してさらに力を作用しなくても、蓋本体11が缶本体100から容易に外れる。
2箇所の湾曲部123のみで蓋本体11が缶本体100に接続している状態において、蓋本体11を缶本体100に対して引き上げると、蓋本体11における2箇所の湾曲部123には、矢印D方向(蓋が移動する方向)に捻る力が作用する。この捻る力により2箇所の湾曲部123が破断する。そのため、2箇所の湾曲部123のみで蓋本体11が缶本体100に接続している状態において、さらに力を加える必要はない。
【0027】
図12で示すように、従来の缶詰において、蓋本体11Jが缶本体100から外れる際にスプリングバックSBが発生する。
それに対して、図示の実施形態では、2箇所の湾曲部123のみで蓋本体11が缶本体100に接続しているから、さらに力を加える必要がなく、蓋本体11が缶本体100から容易に外れる。そのため、蓋本体11が缶本体100から分離する際に、プルタブ20の反対側の部分(領域11A近傍の部分)が弾性変形して、大きく反ってしまうこともなく、スプリングバックSB(図12)は発生しない。
したがって蓋本体11の裏側(プルタブの反対側)に付着していた缶内容物Mが飛び跳ねてしまう(Mx)こともなく、缶内容物Mが飛び跳ねて(缶を開けた者の)衣服等に掛かってしまうこともない。
【0028】
図9で示すように、湾曲部123の配置バランスや、形状、寸法が不適切だと、蓋本体11の缶本体100からの分離は、左右均等に進行しない。
例えば図9では、第2の突起13の頂点13tが第1の突起12に比較して半径方向内方に位置しており(第2の突起13の頂点13tが第1の突起12に対して低く)、湾曲部123が半径方向内方に凹んでいる量(窪み量)も小さい。
そのような状態であると、例えば図9の左側における蓋本体11と缶本体100の分離(矢印R1)の進行が、右側の分離R2の進行よりも速いと、蓋本体11と缶本体100の分離R1が湾曲部123、領域11Cを越えて進行してしまう。そのため、蓋本体11と缶本体100は、最終的に、領域11Fのみで接続される状態となってしまう。そして、領域11Fは、2箇所の湾曲部123に比較して大きい。
【0029】
ここで、図6図8で説明したように、2箇所の湾曲部123のみで蓋本体11が缶本体100に接続している状態に比較して、蓋本体11が缶本体100に領域11Fで接続している状態では、蓋本体11は缶本体100からは容易に外れないので、領域11Fで缶本体100に接続している蓋本体11を分離するためには、さらに大きな力を作用させる必要がある。
そして、大きな力を作用させた場合には、領域11Fで缶本体100に接続している蓋本体11が弾性変形をしてしまい(反り返ってしまい)、蓋本体11が缶本体100から外れた際に、蓋本体11の弾性反撥力により、スプリングバックSB(図12)が生じてしまう。
【0030】
それに対して、図10で示すように、湾曲部123の配置のバランス、形状、寸法が適切であれば、左右いずれか一方において蓋本体11と缶本体100の分離の進行が早くても、湾曲部123近傍の領域11Gで、蓋本体11と缶本体100の分離の進行が止まる。そして、分離の進行が遅い側における分離が領域11Gに到達したならば、図6図8を参照して説明したように、領域11Cにおいて分離が進行する。
その結果、最終的に蓋本体11は2箇所の湾曲部123で缶本体100に接続した状態となり、プルタブ20を引き起こすことにより、2箇所の湾曲部123が容易に破断する。2箇所の湾曲部123が容易に破断するので、大きな力を作用させなくても蓋本体11は缶本体100から外れ、図12で示すスプリングバックSBは発生しない。
【0031】
湾曲部123が蓋本体11の半径方向内方に切れ込み過ぎている場合(湾曲部123の半径方向内方への切れ込み量が大き過ぎる場合)について、図11を参照して説明する。
図11で示すように、湾曲部123の半径方向内方への切れ込み量が大き過ぎると、領域11Hにシボを形成したのと同様な状態になり、領域11Hにシボが存在しなくても、領域11Gが変形し難くなる。そのため、蓋本体11の缶本体100からの分離は、領域11Gを包含する領域11Iで進行しなくなる。
【0032】
蓋本体11が領域11I、11Iで缶本体100に接続されている状態では、2箇所の湾曲部123のみで蓋本体11が缶本体100に接続している状態に比較して、接続箇所が大きいので蓋本体11は缶本体100からは外れ難く、蓋本体11を分離するためには大きな力を作用させる必要がある。
そのため、領域11I、11Iで缶本体100に接続している蓋本体11が弾性変形をして、蓋本体11が缶本体100から外れた際に、スプリングバックSB(図12)が生じてしまう。
湾曲部123の半径方向内方への切れ込み量が適正であれば、蓋本体11は最終的に2箇所の湾曲部123のみで缶本体100と接続することになり、缶本体100から容易に分離し、スプリングバッグは生じない。
【0033】
一方、湾曲部123の半径方向内方への切れ込み量が小さ過ぎる場合には、図9を参照して説明したのと同様に、蓋本体11と缶本体100との分離が左右均等に進行していないと、分離の進行が速い側における分離が湾曲部123、領域11Cを越えて、分離の進行が遅い側まで進行してしまう。
そのため、蓋本体11と缶本体100の接続箇所が大きくなってしまい、蓋本体11が缶本体100から容易に外れなくなってしまう。
【0034】
図示の実施形態によれば、プルタブ20を引張って蓋10を缶本体100から外すに際して、最終的に、第1の突起12と第2の突起13との接続箇所123(2箇所)のみで蓋本体11と缶本体100が接続された状態になる。
その様な状態で、プルタブ20を僅かに引き上げれば、接続箇所123をねじる力が作用して、容易に蓋本体11が缶本体100から分離する。
そのため蓋10が缶本体100から外れる際に、蓋本体11が弾性変形することがなく、弾性反撥力により蓋本体11が勢い良く動くこともないので、蓋本体11の裏側に付着していた缶内容物Mが飛び跳ねてしまうことが防止される。
【0035】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0036】
10・・・蓋
11・・・蓋本体
12・・・第1の突起
13・・・第3の突起
14・・・補強リブ
15・・・補強リブ
16・・・凹部
17・・・半球状の突起/シボ
18・・・蓋本体の上端
20・・・プルタブ
30・・・リベット
100・・・缶本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12