(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0041】
[スイッチング電源装置の構成]
図1は絶縁コンバータとして機能するスイッチング電源装置の実施形態を示した回路ブロック図である。
【0042】
(パワー回路)
図1に示すように、本実施形態のスイッチング電源装置は、1次側のパワー回路として同期整流昇圧チョッパー回路10を設けている。同期整流昇圧チョッパー回路10は、1次側回路として、入力電源12と並列にチョークコイル18とMOS−FETを使用した主スイッチング素子14の直列回路を接続し、主スイッチング素子14と並列にMOS−FETを使用した転流素子16とバッファコンデンサ20の直列回路を接続する。
【0043】
スイッチング電源装置の2次側のパワー回路として、チョークコイル18に2次巻線22を設け、2次巻線22にダイオードを用いた整流素子26と出力コンデンサ24の直列回路を接続し、出力コンデンサ24の両端から負荷28への出力電力を得る回路構成としている。
【0044】
チョークコイル18は、インダクターとして動作する期間とトランスとして動作する期間を持つ。トランスとして動作する場合、チョークコイル18はトランスの1次巻線となるが、以下の説明ではトランスとして動作する場合、チョークコイル18をチョークコイル(1次巻線)18と表記する。
【0045】
また、主スイッチング素子14及び転流素子16は、MOS−FETの半導体素子構造に起因して、それぞれのソース・ドレイン間と並列に、寄生ダイオード60,64と寄生容量62,66を発生している。
【0046】
なお、本実施形態では、主スイッチング素子14はローサイド側に配置されているが、ハイサイド側に配置しても良い。また、整流素子26と出力コンデンサ24は、直列であれば、入れ替わって配置しても良い。
【0047】
1次側の同期整流昇圧チョッパー回路10は、主スイッチング素子14がオンしているときに、チョークコイル18に励磁エネルギーを蓄える。そして、転流素子16がオン(主スイッチング素子14がオフ)しているときに、チョークコイル18の励磁エネルギーとバッファコンデンサ20の電荷エネルギーが、チョークコイル18の2次巻線22から負荷28側へ伝送される。このときチョークコイル18の励磁エネルギーの一部は、バッファコンデンサ20に伝送される。
【0048】
転流素子16がオンしているとき、チョークコイル18は、フライバックトランスとして動作することで主スイッチング素子14がオンのときに蓄えた励磁エネルギーを放出すると同時に、バッファコンデンサ20のエネルギーを2次側に伝送するフォワードトランスとして動作する。
【0049】
即ち、スイッチング電源装置は、主スイッチング素子14がオンし、転流素子16がオフしている期間にチョークコイル18にエネルギーを蓄え、転流素子16がオンし、主スイッチング素子14がオフしている期間にチョークコイル18とバッファコンデンサ20に蓄えられたエネルギーを出力コンデンサ24に伝送する動作を行っている。
【0050】
トランスとして動作しているチョークコイル18は、チョークコイル18による1次巻線と2次巻線22が結合された状態であるので、バッファコンデンサ20と出力コンデンサ24が結合された状態となる。従って、バッファコンデンサ20の電圧VCbから入力電圧Vinを引いた電圧(チョークコイル(1次巻線)18に印加される電圧)と出力コンデンサ24の電圧VCoは、トランスとして動作しているチョークコイル(1次巻線)18の巻き数N1と2次巻線22の巻き数N2の巻数比(N2/N1)で比例した関係となる。
【0051】
スイッチング電源装置の1次側のパワー回路は、バッファコンデンサ20に対する同期整流昇圧チョッパー回路10を構成しているので、バッファコンデンサ20の電圧VCbは、同期整流昇圧チョッパー回路の出力電圧を求めるための一般的な計算式を用いて求めることが可能であり、入力電圧Vinと主スイッチング素子14のオンデューティdutyで決定され、式(1)のように表される。
【0053】
VCb:バッファコンデンサ20の電圧
Vin:入力電圧
duty:主スイッチング素子14のオンデューティ
【0054】
バッファコンデンサ20の電圧VCbから入力電圧Vinを引いた電圧(チョークコイル(1次巻線)18に印加される電圧)である(VCb−Vin)と出力コンデンサ24の電圧VCoは、トランスとして動作しているチョークコイル(1次巻線)18の巻き数N1と2次巻線22の巻き数N2の巻数比(N2/N1)で比例する値となるので、スイッチング電源装置の出力電圧Voは式(2)で決定される。
【0056】
Vo:スイッチング電源装置の出力電圧
VCo:出力コンデンサ24の電圧
N1:チョークコイル(1次巻線)18の巻き数
N2:2次巻線22の巻き数
【0057】
(スイッチング制御回路)
スイッチング制御回路30は、スイッチング周波数発生回路32、三角波発生回路34、PWM回路(パルス幅変調回路)36、第1デッドタイム発生回路38、第2デッドタイム発生回路40、転流制御用インバータ42で構成している。
【0058】
スイッチング周波数発生回路32は発振回路31を備え、所定のスイッチング周波数fswのクロック信号E1を出力する。
【0059】
三角角波発生回路34は、MOS−FETを用いたスイッチング素子44、抵抗46とコンデンサ48を直列接続した充放電回路を備え、発振回路31のパルス信号E1のLレベルへの立下りでスイッチング素子44をオフし、抵抗46を介してコンデンサ48を充電して直線的に増加する信号電圧を生成し、続いて発振回路31のパルス信号E1のHレベルへの立上りでスイッチング素子44をオンしてコンデンサ48を放電リセットし、これにより発振回路31の発振周期で繰り返す三角波信号E2を生成する。
【0060】
PWM回路36は出力電圧と所定の基準電圧との差電圧となるデューティ制御信号E3と三角波発生回路34からの三角波信号E2を入力し、デューティ制御信号E3の信号レベルに応じたオンデューティをもつPWM信号E4を出力し、主スイッチング素子14のオン、オフを制御する。
【0061】
PWM回路36からのPWM信号E4は第1デッドタイム発生回路38を介して転流制御用インバータ42に入力され、転流制御用インバータ42で反転された転流制御信号E7により、主スイッチング素子14のオン、オフ制御に対し相補的に転流素子16をオン、オフ制御する。
【0062】
第1デッドタイム発生回路38は、抵抗54とコンデンサ56を直列接続した遅延回路であり、PWM信号E4を一定時間遅延させた遅延信号E6を転流制御用インバータ42に出力し、遅延信号E6が転流制御用インバータ42のスレッショルドレベル以下となった遅延後にHレベルとなる転流制御信号E7を出力することで、主スイッチング素子14のオフと転流素子16のオンの間に所定の第1デッドタイムを設ける。
【0063】
第2デッドタイム発生回路40は、発振回路50とダイオード52を備え、発振回路31と発振回路50の周波数を同期させており、発振回路31のパルス信号E1が発生する直前に発振回路50からパルス信号E5を出力することで所定の第2デッドタイムを発生し、転流素子16のオフと主スイッチング素子14のオンの間に第2デッドタイムを設ける。
【0064】
(チョークコイルのインダクタンス)
本実施形態のスイッチング電源装置は、出力電流によらず、スイッチングの1周期内において、チョークコイル18を流れる電流がゼロを跨いで正方向と負方向の双方に流れ、主スイッチング素子14がオンするタイミングでは、チョークコイル18の電流が入力電源12に向かって流れているようにチョークコイル(1次巻線)18のインダクタンスLpを式(3)のように設定する。この詳細は後の説明で明らかにする。
【0066】
Lp:チョークコイル(1次巻線)18のインダクタンス
fsw:スイッチング周波数
IoMAX:スイッチング電源装置の最大出力電流(定格値)
【0067】
このインダクタンスLpの設定と、主スイッチング素子14と転流素子16に第1デッドタイム及び第2デッドタイムを設けて駆動することで、主スイッチング素子14および転流素子16をソフトスイッチング動作させることができ、高効率で低ノイズのスイッチング電源装置を実現できる。また、固定周波数でスイッチング動作可能であり、更に出力電圧は主スイッチング素子14のオンデューティで制御可能であるため、スイッチング制御回路30も安価且つ容易に実現可能とする。
【0068】
[スイッチング電源装置の動作]
(出力電流がゼロの場合の動作)
図2は
図1について出力電流がゼロとなる場合の動作波形を示した説明図、
図3は出力電流がゼロの場合のスイッチング1周期の回路動作を期間A〜Fに分けて示した説明図である。
【0069】
ここで、
図2は、その(a)〜(l)に、発振回路31のパルス信号E1、発振回路50のパルス信号E5、PWM回路36に入力する三角波信号E2とデューティ制御信号E3、PWM回路36から出力するPWM信号E4、第1デッドタイム発生回路38の遅延信号E6、主スイッチング素子14のゲート・ソース間電圧VGS1、転流素子16のゲート・ソース間電圧VGS2、主スイッチング素子14のドレイン・ソース間電圧VDS1、転流素子16のドレイン・ソース間電圧VDS2、整流素子26の両端電圧VKA、整流素子26の電流Ir及びチョークコイル18のチョークコイル電流ILを示している。また、
図3は
図2についてスイッチングの時刻t1〜t2となる1周期の回路動作をA〜Fの6期間に分けて示している。
【0070】
本実施形態スイッチング電源装置は、無負荷となることで出力電流を流さない場合は、2次巻線22に電流が流れないことになるので、1次側のパワー回路は、バッファコンデンサ20の両端を出力と見なした同期整流昇圧チョッパー回路10と考えることができる。
【0071】
本実施形態のスイッチング電源装置は、スイッチング周波数発生回路32により、他励式で制御されている。スイッチング周波数fswが固定された同期整流昇圧チョッパー回路10におけるバッファコンデンサ20の電圧VCbは、入力電圧Vinと主スイッチング素子14のオンデューティdutyで決定され、前記(1)式と同じで次式(4)となる。
【0073】
また、出力電流Ioがゼロの場合、チョークコイル18を流れる電流ILの平均値がゼロになる。
【0074】
スイッチング電源装置は、無負荷で動作しているとき、チョークコイル18の電流がプラス方向を向いている状態で、期間Aの最後に示すように、主スイッチング素子14がオフする。主スイッチング素子14がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第1デッドタイムとなる期間Bを持つことで、転流素子16の寄生容量66に蓄えられた電荷が回収される。
【0075】
期間Cの最初の転流素子16がオンするタイミングでは、寄生容量66の電荷が引き抜かれているため、転流素子16はソフトスイッチング動作を行うことができる。
【0076】
期間Dの最後の転流素子16がオフするタイミングでは、チョークコイル18の電流がマイナス方向を向いている。
【0077】
転流素子16がオフした後、主スイッチング素子14及び転流素子16の両方がオフする第2デッドタイムとなる期間Eを持つことで、主スイッチング素子14の寄生容量62に蓄えられた電荷が回収される。期間Fの最初の主スイッチング素子14がオンするタイミングでは、寄生容量62の電荷が引き抜かれているため、主スイッチング素子14はソフトスイッチング動作を行うことができる。
【0078】
この期間A〜Fの動作を更に詳細に説明すると次のようになる。
【0079】
(期間Aの動作)
出力電流Ioがゼロの場合、
図2の期間Aに示すように、
図2(f)のVGS1がHレベルにあることで主スイッチング素子14がオンしており、また
図2(g)のVGS2がLレベルにあることで転流素子16がオフしており、
図2(l)のチョークコイル電流ILがプラス方向を向いて増加している。
【0080】
このとき
図3(期間A)に矢印で示すように、入力電源12のプラス側からチョークコイル18、主スイッチング素子14、及び入力電源12のマイナス側となる経路で電流が流れ、チョークコイル18にエネルギーが蓄積される。
【0081】
期間Aの間に
図2(c)に示す三角波信号E2がデューティ制御信号E3のレベルに交差すると、
図2(d)のPMW信号E4がHレベルからLレベルに立下り、
図2(f)のVGS1がHレベルからLレベルとなり、期間Aの最後に示すように、主スイッチング素子14がオフする。
【0082】
(期間Bの動作)
主スイッチング素子14がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第1デッドタイムとなる期間Bを持つ。このときチョークコイル18はチョークコイル電流ILを流し続けようと動作するため、チョークコイル18のドットで示す側がプラス極性となり、反対側がマイナス極性となる。従って、
図3(期間B)に矢印で示すように、チョークコイル18のドットで示すプラス側から転流素子16の寄生容量66、バッファコンデンサ20、入力電源12、及びチョークコイル18のドットで示すマイナス側となる経路で電流が流れる。このため、第1デッドタイムの期間Bで転流素子16の寄生容量66に蓄えられた電荷が引き抜かれる。
【0083】
(期間Cの動作)
期間Bの第1デッドタイムが過ぎて
図2(g)のVGS2がLレベルからHレベルに立ち上がって転流素子16がオンするタイミングでは、転流素子16の寄生容量66の電荷が期間Bで引き抜かれているため、期間Cの最初で転流素子16はソフトスイッチング動作によりオンすることができる。
【0084】
即ち、寄生容量66は放電状態にあることから、転流素子16のドレイン・ソース間電圧VDS2はゼロボルトとなっており、この状態で転流素子16がオンするソフトスイッチング動作を行うことができる。
【0085】
転流素子16がオンすると、
図3(期間C)に示すように、チョークコイル18のドットで示すプラス側から転流素子16、バッファコンデンサ20、入力電源12及びチョークコイル18のマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出によるチョークコイル電流ILが流れ、チョークコイル電流ILは直線的に減少する。
【0086】
このときチョークコイル(1次巻線)18と2次巻線22はフライバックトランスと同時にフォワードトランスとして動作し、
図2(j)(k)に示すように、2次巻線に誘起された電圧により整流素子26がオンして両端電圧VKAが略ゼロとなるが、無負荷状態にあるため負荷電流は流れず、整流素子26の電流Irはゼロとなっている。
【0087】
(期間Dの動作)
期間Cにおいて、主スイッチング素子14がオフし、転流素子16がオンしている状態で、チョークコイル18の電流が低下してゼロを過ぎると、電流方向がマイナス方向となる期間Dに入る。
【0088】
このとき、
図3(期間D)に示すように、バッファコンデンサ20のプラス側から転流素子16、チョークコイル18、入力電源12及びバッファコンデンサ20のマイナス側となる経路でチョークコイル18にエネルギーを蓄えるように電流が流れ、
図2(l)に示すように、チョークコイル電流ILはマイナス方向に直線的に増加するが、2次側に負荷電流は流れない。
【0089】
期間Dの最後に近づくと、
図2(b)に示す発振回路50のパルス信号E5により
図2(g)のVGS2がHレベルからLレベルとなり、期間Dの最後に示すように、転流素子16がオフする。
【0090】
(期間Eの動作)
転流素子16がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第2デッドタイムとなる期間Eを持つ。このときチョークコイル18はチョークコイル電流ILを流し続けようと動作するため、チョークコイル18のドットの無い側がプラス極性となり、ドットで示す側がマイナス極性となる。
【0091】
従って、
図3(期間E)に矢印で示すように、チョークコイル18のドットの無いプラス側から入力電源12、主スイッチング素子14の寄生容量62及びチョークコイル18のドットで示したマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出による電流が流れる。このため、第2デッドタイムの期間Eで主スイッチング素子14の寄生容量62に蓄えられた電荷が回収される。
【0092】
(期間Fの動作)
期間Eの第2デッドタイムが過ぎて
図2(f)のVGS1がLレベルからHレベルに立ち上がって主スイッチング素子14がオンするタイミングでは、主スイッチング素子14の寄生容量62の電荷が期間Eで回収されているため、期間Fの最初で主スイッチング素子14はソフトスイッチング動作によりオンすることができる。
【0093】
即ち、寄生容量62は放電状態にあることから、主スイッチング素子14のドレイン・ソース間電圧VDS1はゼロボルトとなっており、この状態で主スイッチング素子14をオンするソフトスイッチング動作を行うことができる。
【0094】
主スイッチング素子14がオンすると、
図3(期間F)に示すように、チョークコイル18のドットの無いプラス側から入力電源12、主スイッチング素子14、及びチョークコイル18のドットで示したマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出による電流が流れ、
図2(l)の期間Fに示すように、チョークコイル電流ILはマイナス方向からゼロに向かって直線的に変化する。
【0095】
(出力電流が大きいの場合の動作)
図4は
図1について出力電流が大きい場合の動作波形を示した説明図であり、
図2(a)〜(l)と同様に
図4(a)〜(l)に分けて示している。
図5は出力電流が大きい場合のスイッチング1周期の回路動作を期間A〜Fに分けて示した説明図である。
【0096】
スイッチング電源装置の出力電流が大きい場合、期間Cおよび期間Dにおいて2次側に出力電流が流れることが、出力電流がゼロの場合と異なる。
【0097】
期間Cおよび期間Dにおいて、1次側は、チョークコイル(1次巻線)18を流れる電流に、2次側に流れる電流が重畳した電流が流れる。出力電流がゼロの時には、1次側の電流の平均値はゼロとなっていたが、出力電流が大きい場合は、電流が大きくなるにしたがって、1次側の電流の平均値がプラス側に移動する。
【0098】
この出力電流が大きい場合の期間Cと期間Dの動作を詳細に説明すると次のようになる。
【0099】
(期間Cの動作)
期間Bの第1デッドタイムが過ぎて
図4(g)のVGS2がLレベルからHレベルに立ち上がって転流素子16がオンするタイミングでは、転流素子16の寄生容量66の電荷が期間Bで引き抜かれているため、期間Cの最初で転流素子16はソフトスイッチング動作によりオンすることができる。
【0100】
即ち、寄生容量66は放電状態にあることから、転流素子16のドレイン・ソース間電圧VDS2はゼロボルトとなっており、この状態で転流素子16がオンするソフトスイッチング動作を行うことができる。
【0101】
転流素子16がオンすると、
図5(期間C)に示すように、チョークコイル18のドットで示すプラス側から、転流素子16、バッファコンデンサ20、入力電源12及びチョークコイル18のドットの無いマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出によるチョークコイル電流ILが流れる。
【0102】
このときチョークコイル(1次巻線)18と2次巻線22はフライバックトランスとして動作し、チョークコイル18の励磁エネルギーがチョークコイル18の2次巻線22から負荷28側へ伝送される。このときチョークコイル(1次巻線)18と2次巻線22は同時にフォワードトランスとしても動作しており、バッファコンデンサ20の電荷エネルギーがチョークコイル18の2次巻線22から負荷28側へ伝送される。
【0103】
整流素子26及び出力コンデンサ24はチョークコイル(1次巻線)18と2次巻線22のフライバック動作とフォワード動作とで伝送された電力を整流・平滑することで出力電力を生成し、負荷28に負荷電流が流れる。期間Cでは、フライバック動作と同時にフォワード動作で負荷28側へエネルギーが伝送されるが、後述の期間Dとは逆に、フライバック動作の寄与率がフォワード動作の寄与率よりも大きい。
【0104】
また、チョークコイル18に流れる電流ILは、
図4(k)(l)に示すように、チョークコイル(1次巻線)18を流れる電流に、2次側の整流素子26に流れる電流Irを重畳した電流となり、チョークコイル電流ILはステップ的に低下した後に直線的に減少する。
【0105】
(期間Dの動作)
期間Cにおいて、主スイッチング素子14がオフし、転流素子16がオンしている状態で、チョークコイル18の電流が低下してゼロを過ぎると、電流方向がマイナス方向となる期間Dに入る。
【0106】
このとき、
図5(期間D)に示すように、バッファコンデンサ20のプラス側から転流素子16、チョークコイル18、入力電源12及びバッファコンデンサ20のマイナス側となる経路でチョークコイル18にエネルギーを蓄えるように電流(1次側チョークコイル電流に2次側電流を重畳した電流)が流れ、
図4(l)に示すように、チョークコイル電流ILはマイナス方向に直線的に増加する。
【0107】
またチョークコイル(1次巻線)18と2次巻線22はフライバックトランスと同時にフォワードトランスとしての動作が継続し、チョークコイル18の励磁エネルギーとバッファコンデンサ20の電荷エネルギーがチョークコイル18の2次巻線22から負荷28側へ伝送され、整流素子26及び出力コンデンサ24はチョークコイル(1次巻線)18と2次巻線22のフライバック動作とフォワード動作で伝送された電力を整流・平滑することで出力電力を生成し、負荷28に負荷電流が流れる。期間Dでも、フライバック動作と同時にフォワード動作で負荷28側へエネルギーが伝送されるが、負荷28側へ伝送されるエネルギーは、前述の期間Cとは逆に、フォワード動作の寄与率がフライバック動作の寄与率よりも大きい。
【0108】
期間Dの最後に近づくと、
図4(b)に示す発振回路50のパルス信号E5により
図4(g)のVGS2がHレベルからLレベルとなり、期間Dの最後に示すように、転流素子16がオフする。
【0109】
本実施形態のスイッチング電源装置は、出力電流が大きい場合でも、出力電流がゼロの場合と同様に、チョークコイル(1次巻線)18の電流がプラス方向を向いているときに主スイッチング素子14をオフさせ、その後、転流素子16のオンに対して期間Bの第1デッドタイムを設けることで、転流素子16の寄生容量66に蓄えられた電荷を引き抜く。
【0110】
また、チョークコイル(1次巻線)18の電流がマイナス方向を向いているときに転流素子16をオフし、その後、主スイッチング素子14のオンに対して期間Eの第2デッドタイムを設けることで、主スイッチング素子14の寄生容量62に蓄えられた電荷を引き抜く。
【0111】
このため負荷電流が大きいときでも、第1デッドタイムと第2デッドタイムを持つ動作を設け、また、チョークコイル(1次巻線)のインダクタンスLpを後述のように設定することで、
図2及び
図3に示した出力電流がゼロの場合と同様に、主スイッチング素子14および転流素子16をソフトスイッチングさせることができる。
【0112】
(チョークコイルのインダクタンスLp)
本実施形態のスイッチング電源装置は、主スイッチング素子14がオン(転流素子16がオフ)しているときにチョークコイル18に励磁エネルギーを蓄える。そして、転流素子16がオン(主スイッチング素子14がオフ)しているときに、チョークコイル18の励磁エネルギーとバッファコンデンサ20の電荷エネルギーをチョークコイル18の2次巻線22から負荷側の出力コンデンサ24へ伝送する。
【0113】
転流素子16がオンしているとき、チョークコイル18は、主スイッチング素子14がオンの時に蓄えた励磁エネルギーを放出するフライバックトランスとして動作すると同時に、バッファコンデンサ20のエネルギーを2次側に伝送するフォワードトランスとして動作する。
【0114】
このとき、2次側に伝送されるチョークコイル18の励磁エネルギーは、一旦、バッファコンデンサ20に全てのエネルギーを蓄えた後、これを、2次側の出力コンデンサ24に伝送したものと等価と考えることができる。
【0115】
従って、スイッチング電源装置としての負荷電流は、1次側の同期整流昇圧チョッパー回路10が、バッファコンデンサ20に対して出力するエネルギーと等しくなる。そこで、バッファコンデンサ20の両端を出力と見なした同期整流昇圧チョッパー回路10と考えてチョークコイル18の電流を決定することで、本スイッチング電源装置が2次側に出力する電流を決めることができる。
【0116】
バッファコンデンサ20の両端を出力と見なした同期整流昇圧チョッパー回路10の仮想的な最大出力電流(所定の定格値)をICbMAXとする。また、同期整流昇圧チョッパー回路10として動作しているとしたときのチョークコイル18の電流振幅(電流変化量)をΔILとする。
【0117】
ソフトスイッチングの条件として、主スイッチング素子14がオンするときに、チョークコイル18の電流ILは、必ずマイナス方向を向いていなければならない。これよりチョークコイル18の電流振幅ΔILは必ず、ゼロを跨ぐ設定としなければならない。
【0118】
ここで、同期整流昇圧チョッパー回路10の仮想的な出力電流ICbは、主スイッチング素子14がオフしている時にチョークコイル18を流れる電流の平均値であるので、この値が同期整流昇圧チョッパー回路10の仮想的な最大出力電流ICbMAXよりも大きくなるようにチョークコイル18の電流振幅ΔILを設定することで、同期整流昇圧チョッパー回路10の仮想的な出力電流が仮想的な最大出力電流ICbMAX以下である場合において、チョークコイル18の電流振幅ΔILが必ず、ゼロを跨ぐ動作となる。ここから、式(5)のようにチョークコイルの電流変化量(電流振幅)ΔILの最小値が求まる。
【0120】
チョークコイル18の電流振幅ΔILは、チョークコイル18に印加される電圧VL、印加時間Ton、インダクタンスLpで決定され、次式となる。
【0122】
チョークコイル18に印加される電圧VLは、入力電圧Vinとなる。
【0124】
チョークコイル18に電圧VLが印加されている時間Tonは、主スイッチング素子14のオン時間であり、スイッチング周波数fswとデューティdutyから求められ、次式で与えられる。
【0126】
主スイッチング素子14のデューティdutyは、同期整流昇圧チョッパー回路10のデューティを求めればよいので、入力電圧Vinとバッファコンデンサ電圧VCbから求め、次式となる。
【0128】
次に、スイッチング電源装置としての2次側へ出力される出力電流Ioと1次側回路のチョークコイル18の電流との関係を考える。
【0129】
本実施形態のスイッチング電源装置は、バッファコンデンサ20に蓄えたエネルギーを、転流素子16がオンしている期間に出力コンデンサ24に伝送する。従って、負荷に出力されるエネルギーPoutは、バッファコンデンサ20に供給されるエネルギーPCbと同じになる。
【0130】
エネルギーは電圧と電流の積であるので、出力電流Ioが最大出力電流IoMAXの場合を考えると、バッファコンデンサ20に供給されるエネルギーは、バッファコンデンサ20の電圧VCbから入力電圧Vinを引いた電圧(チョークコイル(1次巻線)18に印加される電圧)である(VCb−Vin)とチョークコイル(1次巻線)18を流れる電流の最大値ICbMAXとの積となる。また、スイッチング電源装置が出力するエネルギーは、出力電圧Voと最大出力電流IoMAXの積となり、式(10)の関係が得られる。
【0132】
バッファコンデンサ20の電圧VCbと出力電圧Voは、チョークコイル(1次巻線)18の巻き数N1と2次巻線22の巻き数N2の巻数比の関係を持つことから式(11)の関係が得られる。
【0134】
そのため式(10)と式(11)から次の式(12)が得られる。
【0136】
そこで、式(12)を整理すると、スイッチング電源装置の最大出力電流IoMAXと1次側の同期整流昇圧チョッパー回路10の仮想的な最大出力電流ICbMAXとの関係が次の式(13)のように得られる。
【0138】
以上の関係式からチョークコイル18のインダクタンスLpを求めることで、再度掲載する前記(3)式が得られる。
【0140】
Lp:チョークコイル(1次巻線)18のインダクタンス
Vin:入力電圧
VCb:バッファコンデンサ20の電圧
(同期整流昇圧チョッパー回路10として考えた場合の出力電圧)
ICbMAX: 同期整流昇圧チョッパー回路10として考えた場合の最大出力電流
fsw:スイッチング周波数
【0141】
その結果、チョークコイル(1次巻線)18のインダクタンスLpを式(3)のように設定することで、スイッチング電源装置の出力電流Ioがゼロから定格電流の範囲で主スイッチング素子14および転流素子16をソフトスイッチング動作させることができる。
【0142】
(
図1のスイッチング電源装置の有用性)
図1に示したスイッチング電源装置は、簡単な構成で、主
スイッチング素子14及び転流素子16として設けたMOS−FETなどの半導体素子のソフトスイッチング動作を実現可能であり、入力電圧、出力電圧、出力電流等が変化しても、固定周波数で動作させることができる。
【0143】
また、
図17に示した従来のシングルエンディッドフォワードコンバータの問題点だったサージ電圧が発生しないため、耐圧の低い半導体素子(オン抵抗の小さい半導体素子)が使用可能となるため、高効率化に寄与でき、更に、スイッチングノイズも低減できる。
【0144】
また、
図18に示したLLC共振コンバータで必要としている周波数変調制御が不要であるため、スイッチング制御回路30を低コストで構成することが可能となり、固定周波数で動作しているため、計測機器等に用いても、計測誤差等の悪影響を及ぼすことがない。
【0145】
更には、式(3)を満たすようにチョークコイル(1次巻線)18のインダクタンスLpを設定すれば、入力電圧、出力電圧、負荷電流等が変化しても、LLC共振コンバータのように、スイッチング素子に過大なストレスが印加されるといったこともない。
【0146】
[過大出力電流に対しサージ電圧を防止する実施形態]
(スイッチング電源装置の構成)
図6は過大出力電流に対するサージ電圧防止機能を備えたスイッチング電源装置の実施形態を示した回路ブロック図である。
図6のスイッチング電源装置は、
図1のスイッチング電源装置の特徴に加えて、最大出力電流IoMAX以上の電流が流れる場合でもサージ電圧を発生させないことを特徴とする。
【0147】
図6に示すように、本実施形態のスイッチング電源装置は、1次側のパワー回路として設けた同期整流昇圧チョッパー回路10は、入力電源12と並列にチョークコイル18とMOS−FETを使用した主スイッチング素子14の直列回路を接続し、主スイッチング素子14と並列にMOS−FETを使用した転流素子16とバッファコンデンサ20との直列回路を接続する。
【0148】
また、2次側のパワー回路として、1次巻線に相当するチョークコイル18に2次巻線22を設け、2次巻線22にダイオードを用いた整流素子26と出力コンデンサ24の直列回路を接続し、出力コンデンサ24の両端から負荷28の出力電力を得る回路構成としている。なお、主スイッチング素子14及び転流素子16のソース・ドレイン間と並列に発生する寄生ダイオードと寄生容量は省略している。
【0149】
スイッチング制御回路30は、スイッチング周波数発生回路32、三角波発生回路34、PWM回路36、第1デッドタイム発生回路38、第2デッドタイム発生回路40及び転流制御用インバータ42で構成されている。
【0150】
これらの構成は
図1の実施形態と同じであるが、本実施形態にあっては、極性検出回路70と主スイッチング素子オン保留制御回路74を付加している。
【0151】
極性検出回路70は、チョークコイル18に結合した極性検出コイル72を備え、チョークコイル18に発生している電圧の極性を検出して極性検出信号E8を出力する。即ち、極性検出回路70は、チョークコイル18のドットで示す側にプラスの電圧が発生している場合にLレベルとなる極性検出信号E8を出力し、また、チョークコイル18のドットで示す側の反対側にプラスの電圧が発生している場合にHレベルとなる極性検出信号E8を出力する。
【0152】
主スイッチング素子オン保留制御回路74は、極性検出回路70によりチョークコイル18にドットで示す側にプラスの電圧が発生してLレベルとなる極性検出信号E8を出力しているときに、スイッチング制御回路30が出力するHレベルとなるPWM信号E4をLレベルに固定し、主スイッチング素子14のオンを保留してオフを継続するように制御する。
【0153】
(サージ電圧防止機能が無い場合の動作)
図6の実施形態のように極性検出回路70と主スイッチング素子オン保留制御回路74を設けていない
図1の実施形態について、出力電流Ioが最大出力電流IoMAX以上に流れた場合の動作について、
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0154】
図7は過大出力電流に対するサージ電圧防止機能がない場合の動作波形を示した説明図であり、各部の信号を、
図7(a)〜(j)に分けて示している。
図8は
図1の出力電流が定格電流を超えた期間G及び期間Hの回路動作を示した説明図である。
【0155】
(期間Aの動作)
図7(c)に示すように、負荷28が大電流を要求して出力電流Ioが最大出力電流IoMAX以上に流れたことに対しデューティ制御信号E3の信号電圧が上昇し、三角波信号E2がデューティ制御信号E3に交差するまでの期間が長くなるため、
図7(d)のPMW信号がHレベルからLレベルに立下るまでの期間が長くなる。
【0156】
このように負荷28に大電流が流れると、主スイッチング素子14のオンデューティが増加し、
図7(j)の期間Aに示すように、チョークコイル電流ILが上昇する。
【0157】
(期間Bの動作)
主スイッチング素子14がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第1デッドタイムとなる期間Bを持つことで、転流素子16の寄生容量66に蓄えられた電荷が引き抜かれる。
【0158】
(期間Cの動作)
期間Bの第1デッドタイムが過ぎて
図7(g)のVGS2がLレベルからHレベルに立ち上がって転流素子16がオンするタイミングでは、転流素子16の寄生容量66の電荷が期間Bで引き抜かれているため、転流素子16はソフトスイッチング動作によりオンすることができる。転流素子16がオンしている期間Cでは、チョークコイル18がエネルギーを放出し、チョークコイル電流ILが低下する。
【0159】
この場合、主スイッチング素子14がオフし、転流素子16がオンしている状態で、チョークコイル電流ILが低下してくるが、出力電流Ioが最大出力電流IoMAXよりも大きくなっている状態であるので、チョークコイル電流ILはゼロ以下まで低下してこない。
【0160】
この状態で期間Cの最後に近づくと、
図7(b)に示す発振回路50のパルス信号E5により
図7(g)のVGS2がHレベルからLレベルとなり、期間Cの最後に示すように、転流素子16がオフする。
【0161】
(期間Gの動作)
転流素子16がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第2デッドタイムとなる期間Gを持つ。このとき出力電流Ioが最大出力電流IoMAXよりも大きくなっている状態であるので、チョークコイル電流ILはゼロ以下まで低下しない。
【0162】
このため
図8(期間G)に矢印で示すように、チョークコイル18のドットで示すプラス側から転流素子16の寄生ダイオード64、バッファコンデンサ20、入力電源12及びチョークコイル18のドッド無いマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出による電流が流れることになる。
【0163】
(期間Hの動作)
期間Gの第2デッドタイムが過ぎて
図7(f)のVGS1がLレベルからHレベルに立ち上がって主スイッチング素子14がオンする。しかし、主スイッチング素子14がオンした直後、転流素子16の寄生ダイオード64のリカバリー動作により、
図8(期間H)に矢印で示すように、バッファコンデンサ20のプラス側、転流素子16の寄生ダイオード64、主スイッチング素子14及びバッファコンデンサ20のマイナス側となる経路で大きなリカバリー電流が流れ、配線による寄生インダクタンスにエネルギーが蓄えられ、この寄生インダクタンスに蓄えられたエネルギーが転流素子16に
図7(i)のVSD2に示すようにサージ電圧Vsを発生させる。
【0164】
このため、
図6のように極性検出回路70と主スイッチング素子オン保留制御回路74を付加していない
図1の実施形態の場合には、負荷が大電流を要求した場合、チョークコイル18の電流が零に戻らない状態が発生し、転流素子16にサージ電圧が発生してしまうことになる。
【0165】
(サージ電圧防止機能がある場合の動作)
図6の実施形態のように、極性検出回路70と主スイッチング素子オン保留制御回路74を付加した場合に、出力電流Ioが最大出力電流IoMAX以上に流れた場合の動作について、
図9に基づいて説明する。
【0166】
図9は過大出力電流に対するサージ電圧防止機能を設けた場合の動作波形を示した説明図であり、各部の信号を
図9(a)〜(k)に分けて示しており、
図6に対し、
図9(f)の極性検出信号E8が追加されている。
図10は
図9の主スイッチング素子のオンを保留する期間Iの回路動作を示した説明図である。
【0167】
(期間Aの動作)
図9(c)に示すように、負荷28が大電流を要求して出力電流Ioが最大出力電流IoMAX以上に流れたことに対しデューティ制御信号E3の信号電圧が上昇し、三角波信号E2がフィードバック制御信号E3に交差するまでの期間が長くなるため、
図9(d)のPMW信号E4がHレベルからLレベルに立下るまでの期間が長くなる。
【0168】
このように負荷28に大電流が流れると、主スイッチング素子14のオンデューティが増加し、
図9(k)の期間Aに示すように、チョークコイル電流ILが上昇する。
【0169】
このとき、極性検出回路70から出力される極性検出信号E8はHレベルであるので、主スイッチング素子オン保留回路74は、主スイッチング素子14のオンを保留することは無く、PWM回路36からのPWM信号E4に同期して、主スイッチング素子14をオフさせる。
【0170】
(期間Bの動作)
主スイッチング素子14がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第1デッドタイムとなる期間Bを持つことで、転流素子16の寄生容量66に蓄えられた電荷が引き抜かれる。
【0171】
(期間Cの動作)
期間Bの第1デッドタイムが過ぎて
図9(h)のVGS2がLレベルからHレベルに立ち上がって転流素子16がオンするタイミングでは、転流素子16の寄生容量の電荷が期間Bで引き抜かれているため、転流素子16はソフトスイッチング動作によりオンすることができる。転流素子16がオンしている期間Cでは、チョークコイル18がエネルギーを放出し、チョークコイル電流ILが低下する。
【0172】
この状態で、
図9(b)に示す発振回路50のパルス信号E5により
図9(h)のVGS2がHレベルからLレベルとなり、期間Cの最後に示すように、転流素子16がオフする。
【0173】
(期間Gの動作)
転流素子16がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第2デッドタイムとなる期間Gを持つ。期間Gでは、
図8の期間Gと同様に、チョークコイル18のドットで示すプラス側から転流素子16の寄生ダイオード64、バッファコンデンサ20、入力電源12及びチョークコイル18のドットの無いマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出による電流が流れ、チョークコイル電流ILは低下し続け、同時にチョークコイル18の2次巻線22から負荷28側へ伝送されて負荷電流が流れる。
【0174】
(期間Iの動作)
期間Iでは、
図9(d)のPWM信号E4がHレベルとなって主スイッチング素子14をオンさせようとするが、このときは、チョークコイル18はエネルギーを放出している状態であるため、極性検出回路70からの極性検出信号E8はLレベルの状態を維持している。
【0175】
このように極性検出信号E8がLレベルの状態であるとき、PWM信号E4が主スイッチング素子14をオンするためにHレベルとなっても、主スイッチング素子オン保留制御回路74のアンド回路76がLレベルの極性検出信号E8により禁止状態となってLレベル出力に固定しており、主スイッチング素子オン保留制御回路74は主スイッチング素子14のオンを保留してオフを継続させる。
【0176】
従って、期間Gと同様、
図10の期間Iに示すように、転流素子16の寄生ダイオード64に電流が流れることで、チョークコイル18がバッファコンデンサ20及び負荷28に向かってエネルギーを放出し続け、チョークコイル電流ILが低下し続ける。
【0177】
チョークコイル18がエネルギー放出を終えると、極性検出回路70からの極性検出信号がHレベルとなり、主スイッチング素子保留制御回路74に設けたアンド回路76の禁止状態が解除され、このときPWM信号E4はHレベルにあることから、主スイッチング素子14がオンする。
【0178】
また、期間Iの最後では、チョークコイル電流ILがゼロになった後に主スイッチング素子14がオンする。従って、転流素子16の寄生ダイオード64に流れる電流がゼロになった後に主スイッチング素子14がオンすることになる。この場合、転流素子16の寄生容量66の電荷を引き抜く状態ではないため、ソフトスイッチング動作にはならないが、寄生ダイオード64に流れる電流がゼロになった後に主スイッチング素子14がオンすることから、転流素子16の寄生ダイオード64にはリカバリー動作が発生せず、
図8の期間Hに示したような貫通電流が流れず、転流素子16にサージ電圧が発生することがない。
【0179】
(
図6のスイッチング電源装置の有用性)
図6に示したスイッチング電源装置は、極性検出回路70と主スイッチング素子オン保留制御回路74の機能により、最大出力電流IoMAX以上の出力電流Ioを流そうとした場合でも、転流素子16の寄生ダイオードに電流が流れている最中に主スイッチング素子14がオンすることがなくなるため、転流素子16にサージ電圧を発生させることがなく、転流素子16として使用するMOS−FET等の半導体素子に低耐圧で導通抵抗の低い素子を用いることができ、低ノイズで高効率のスイッチング電源装置を実現することができる。
【0180】
[過電流保護機能を備えたスイッチング電源装置]
図11は過大出力電流に対するサージ電圧防止機能及び過電流保護機能を備えたスイッチング電源装置の実施形態を示した回路ブロック図である。
【0181】
図11に示すように、本実施形態のスイッチング電源装置は、
図6に示したスイッチング電源装置に、出力電流制限回路として機能する最大デューティ制限回路78を付加している。
【0182】
最大デューティ制限回路78は、インバータ80とアンド回路82を備え、インバータ80により発振回路31からのパルス信号E1を反転してアンド回路82の一方に入力し、アンド回路82の他方にはPWM回路36からのPWM信号E4を入力し、スイッチングの1周期内に、主スイッチング素子14が必ずオフする期間を設けるように制御する。
【0183】
即ち、最大デューティ制限回路78は、発振回路31からのパルス信号E1がLレベルからHレベルに立ち上がったときに、主スイッチング素子14をオフするように制御し、これにより過大な出力電流が流れることを抑制する。これによって主スイッチング素子14のオン期間はスイッチングの1周期以上にはならない。
【0184】
更に具体的に説明すると、
図9の動作波形にあっては、デューティ制御信号E3が三角波信号E2と交差している状態について説明したが、出力電流Ioの増加に伴いデューティ制御信号E3が更に上昇すると、三角波信号E2と交差できない状態になり、主スイッチング素子14がオフできなくなってしまい、チョークコイル電流ILの上昇が継続して過大な電流が流れる状態となってしまう。
【0185】
そこで、
図11に示すように、最大デューティ制限回路78を設けることで、主スイッチング素子14のオン期間の上限を決定することが可能となり、また、出力電流の電流上昇が主スイッチング素子14の最大デューティで制限されることになるため、スイッチング電源装置に過大な電流が流れることを抑制することができる。
【0186】
[回生機能を備えたスイッチング電源装置]
図1に示したスイッチング電源装置は、ダイオードを用いた整流素子26を、双方向整流機能をもつMOS−FET等に変更することで、出力側から入力側に電力を回生する機能を実現することができる。
【0187】
回生動作は、スイッチング電源装置が出力している電圧(出力電圧設定値)よりも高い電圧をスイッチング電源装置の出力側に印加されている場合や、出力側に大容量のコンデンサ取り付けた状態で、出力電圧設定値を急に下げる場合等に発生する。また、回生機能を備えたスイッチング電源装置は、回生現象を積極的に利用して、双方向スイッチング電源装置を作ることが可能である。
【0188】
回生機能を備えたスイッチング電源装置では、回生動作中においても、回生電流が所定の最大回生電流IoMAX以下であれば、主スイッチング素子14および転流素子16の寄生ダイオードにリカバリー電流が流れることが無いため、サージ電圧が発生しない。また、寄生容量の引き抜きが行われるため、ソフトスイッチング動作が実現できる。これにより高効率、低ノイズの双方向スイッチング電源装置を作ることができる。
【0189】
(スイッチング電源装置の回生動作)
図1のダイオードを用いた整流素子26をMOS−FETに変更することで回生機能を備えたスイッチング電源装置のソフトスイッチング動作について
図12及び
図13に基づいて説明する。
【0190】
図12は回生電流が最大回生電流IoMAX以下の場合と最大回生電流IoMAXを超えた場合の動作波形を示した説明図であり、各部の信号を
図12(a)〜(j)に分けて示している。
図13は
図12の回生電流が定格電流を超えた期間J,K,L,Mの回路動作を示した説明図である。
【0191】
(回生電流が最大回生電流IoMAX以下の場合の動作)
回生機能を備えたスイッチング電源装置の出力に外部電圧が印加されると、回生電流が流れる。スイッチング電源装置は、出力電圧Voが自身の設定値になるように電流を回生する。即ち、スイッチング電源装置の出力端子に印加される電圧は、回生電流が流れることで電圧降下が発生し、スイッチング電源装置の出力端子に印加される電圧Voが設定値となる。回生電流が流れている状態では、チョークコイル18のチョークコイル電流ILの平均値がマイナスになる。
【0192】
また、他励式(固定周波数方式)で制御されているため、主スイッチング素子14のオンタイミングが発振回路31を備えたスイッチング周波数発生回路32で生成される。
【0193】
回生電流が最大回生電流IoMAX以下の場合の動作を
図12及び
図13の期間A,B,J,K,Eについて説明する。
【0194】
(期間Aの動作)
PWM信号E4がHレベルにあることで主スイッチング素子14がオンし、一方、転流素子16がオフしており、回生電流の大小によらず、チョークコイル18の電流がプラス方向を向いている。この状態で、
図12(c)に示す三角波信号E2がデューティ制御信号E3に交差すると、
図12(d)のPMW信号がHレベルからLレベルに立下り、
図12(f)のVGS1がHレベルからLレベルとなることで、期間Aの最後に示すように、主スイッチング素子14がオフする。
【0195】
(期間Bの動作)
主スイッチング素子14がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第1デッドタイムとなる期間Bを持つことで、転流素子16の寄生容量66に蓄えられた電荷を回収する。
【0196】
(期間Jの動作)
期間Bの第1デッドタイムが過ぎて
図12(g)のVGS2がLレベルからHレベルに立ち上がって転流素子16がオンするタイミングでは、転流素子16の寄生容量の電荷が期間Bで回収されているため、転流素子16はソフトスイッチング動作によりオンすることができる。この場合、
図13の期間Jに示すように、2次側および1次側に回生電流が流れ、チョークコイル18及びバッファコンデンサ20に回生エネルギーが蓄積される。
【0197】
(期間Kの動作)
期間Jにおいて、主スイッチング素子14がオフし、転流素子16がオンしている状態で、チョークコイル18のチョークコイル電流ILが低下してゼロを過ぎると、電流方向がマイナス方向となる期間Kに入る。この場合、
図13の期間Kに示すように、2次側および1次側に回生電流が流れ、チョークコイル18に対する回生エネルギーの蓄積が継続される。この期間Kでは、バッファコンデンサ20は期間Jにおいて蓄積した回生エネルギーをチョークコイル18に向けて放出する。
【0198】
期間Kの最後に近づくと、
図12(b)に示す発振回路50のパルス信号E5により
図12(g)のVGS2がHレベルからLレベルとなり、期間Kの最後に示すように、転流素子16がオフする。
【0199】
(期間Eの動作)
転流素子16がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第2デッドタイムとなる期間Eを持つ。このときチョークコイル18はチョークコイル電流ILを流し続けようと動作するため、チョークコイル18のドットの無い側がプラス極性となり、ドットで示す側がマイナス極性となる。
【0200】
従って、チョークコイル18のドットの無いプラス側から入力電源12、主スイッチング素子14の寄生容量62及びチョークコイル18のドットで示したマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出による電流が流れる。このため、第2デッドタイムの期間Eで主スイッチング素子14の寄生容量62に蓄えられた電荷が回収される。
【0201】
期間Eの第2デッドタイムが過ぎて
図12(f)のVGS1がLレベルからHレベルに立ち上がって主スイッチング素子14がオンするタイミングでは、主スイッチング素子14の寄生容量62の電荷が期間Eで回収されているため、主スイッチング素子14はソフトスイッチング動作によりオンすることができる。
【0202】
(回生動作の有用性)
このように本実施形態の回生機能を備えたスイッチング電源装置では、回生動作中においても、回生電流が最大回生電流IoMAX以下であれば、即ちチョークコイル18のチョークコイル電流ILがゼロを跨いで変化すれば、主スイッチング素子14および転流素子16の寄生ダイオードにリカバリー電流が流れることが無いため、サージ電圧が発生しない。
【0203】
また、デッドタイムの設定により主スイッチング素子14および転流素子16の寄生容量の引き抜きが行われるため、ソフトスイッチング動作が実現できる。これにより、高効率、低ノイズ、低コストの回生機能を備えたスイッチング電源装置及び双方向スイッチング電源装置を実現することができる。
【0204】
[過大回生電流に対するサージ電圧防止機能を備えたスイッチング電源装置]
(サージ電圧防止機能がない場合の動作)
回生機能を備えたスイッチング電源装置は、回生動作により最大回生電流IoMAX以上の回生電流を流そうとした場合にサージ電圧が発生する。この場合の動作を
図12及び
図13の期間L,Mについて説明する。
【0205】
(期間Fの動作)
回生機能を備えたスイッチング電源装置の負荷側に外部電圧を印加し、回生電流を流している状態で、回生電流を増やす方向に印加電圧を上昇させたとすると、
図12(c)に示すように、デューティ制御信号E3の信号電圧が低下し、三角波信号E2がデューティ制御信号E3に交差するまでの期間が短くなるため、これによりPWM信号E4がHレベルからLレベルになるまでの期間が短くなる。このように負荷側に外部電圧を印加すると主スイッチング素子14のオンデューティを狭くするようにスイッチング制御回路30が動作する。
【0206】
(期間Lの動作)
主スイッチング素子14がオフした後、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第1デッドタイムとなる期間Lを持つ。このときチョークコイル18はチョークコイル電流ILを流し続けようと動作するため、チョークコイル18のドットの無い側がプラス極性となり、ドットで示す側がマイナス極性となる。
【0207】
従って、
図13の期間Lに矢印で示すように、チョークコイル18のドットの無いプラス側から入力電源12、主スイッチング素子14の寄生ダイオード60及びチョークコイル18のドットで示したマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出による電流が流れる。
【0208】
(期間Mの動作)
期間Lの第1デッドタイムが過ぎて
図12(g)のVGS2がLレベルからHレベルに立ち上がって転流素子16がオンする。しかし、転流素子16がオンした直後、主スイッチング素子14の寄生ダイオード60のリカバリー動作により、
図13の期間Mに矢印で示すように、バッファコンデンサ20のプラス側、転流素子16、主スイッチング素子14の寄生ダイオード60、バッファコンデンサ20のマイナス側となる経路で、大きなリカバリー電流が流れ、配線による寄生インダクタンスにエネルギーが蓄えられ、この寄生インダクタンスに蓄えられたエネルギーが
主スイッチング素子14に
図12(h)の
VDS1に示すようにサージ電圧Vsを発生させる。
【0209】
そこで回生電流が最大回生電流IoMAX以上となってもサージ電圧の発生がなく、また、過大な回生電流が流れることを抑制する機能を備えたスイッチング電源装置の実施形態を
図14に示す。
【0210】
(スイッチング電源装置の構成)
図14は過大回生電流に対するサージ電圧防止機能と回生過電流保護機能を備えたスイッチング電源装置の実施形態を示した回路ブロック図である。
【0211】
図14に示すように、1次側のパワー回路として設けた同期整流昇圧チョッパー回路10は、チョークコイル18、MOS−FETを使用した主スイッチング素子14、MOS−FETを使用した転流素子16、バッファコンデンサ20を備え、2次側のパワー回路は、チョークコイル18に設けた2次巻線22、整流素子26a、出力コンデンサ24を備え、スイッチング制御回路30は、スイッチング周波数発生回路32、三角波発生回路34、PWM回路36、第1デッドタイム発生回路38、第2デッドタイム発生回路40及び転流制御用インバータ42を備える。
【0212】
これらの構成は
図1の実施形態と同じであるが、本実施形態にあっては、回生機能を実現するため2次側のパワー回路に設けた整流素子26aを双方向整流が可能となるMOS−FETとし、また極性検出回路84と転流素子オン保留制御回路88を付加している。
【0213】
極性検出回路84は、チョークコイル18に結合した極性検出コイル86を備え、チョークコイル18に発生している電圧の極性を検出して極性検出信号E9を出力する。即ち、極性検出回路84は、チョークコイル18にドットがある方向にプラスの電圧が発生している場合にHレベルとなる極性検出信号E9を出力し、また、ドットが無い方向にプラスの電圧が発生している場合にLレベルとなる極性検出信号E9を出力する。これは
図6の極性検出回路70の場合と逆になる。
【0214】
転流素子オン保留制御回路88は、極性検出回路84によりチョークコイル18にドットの無い方向にプラスの電圧が発生してLレベルとなる極性検出信号E9を出力しているときに、スイッチング制御回路30が出力する同期整流制御信号E7がHレベルになっても、転流素子16のオンを保留するように制御する。
【0215】
図15は過大回生電流に対するサージ電圧防止機能を設けた場合の動作波形を示した説明図であり、各部の信号を
図15(a)〜(k)に分けて示しており、
図12に対し、
図15(f)の極性検出信号E9が追加されている。
【0216】
期間A、B,J,K,Eの動作は、
図12と同じになることから省略し、それ以降の期間F,L,Nの動作を説明する。
【0217】
(期間Fの動作)
図14のスイッチング電源装置の負荷側に外部電圧を印加し、回生電流を流している状態で、回生電流を増やす方向に印加電圧を上昇させたとすると、
図15(c)に示すように、デューティ制御信号E3の信号電圧が低下し、三角波信号E2がデューティ制御信号E3に交差するまでの期間が短くなるため、これによりPWM信号E4がHレベルからLレベルになるまでの期間が短くなる。このように負荷側に外部電圧を印加すると主スイッチング素子14のオンデューティを狭くするようにスイッチング制御回路30が動作する。
【0218】
(期間Lの動作)
期間Lは、主スイッチング素子14および転流素子16の両方がオフする第1デッドタイムであり、チョークコイル18はチョークコイル電流ILを流し続けようと動作するため、チョークコイル18のドットの無い側がプラス極性となり、ドットで示す側がマイナス極性となる。
【0219】
従って、
図13に示した期間Lと同様に、チョークコイル18のドットの無いプラス側から入力電源12、主スイッチング素子14の寄生ダイオード60及びチョークコイル18のドットで示したマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出による電流が流れ、チョークコイル電流ILが上昇し続ける。
【0220】
(期間Nの動作)
期間Nでは、スイッチング制御回路30の第1デッドタイム発生回路38からの遅延信号E6を転流制御用インバータ42に出力することでHレベルとなる転流制御信号E7が出力されるが、このとき、チョークコイル18がエネルギーを放出している状態であるため、極性検出回路84の極性検出信号E9はLレベルの状態を維持している。
【0221】
このためスイッチング制御回路30がHレベルとなる転流制御信号E7を出力しても、極性検出回路84からのLレベルとなる極性検出信号E9により転流素子オン保留制御回路88のアンド回路90は禁止状態にあり、その出力はLレベルを維持しており、転流素子16のオンを保留する。
【0222】
従って、期間Nは期間Lと同様に、
図16の期間Nに示すように、ドットの無いチョークコイル18のプラス側から入力電源12、主スイッチング素子14の寄生ダイオード60及びチョークコイル18のドットで示したマイナス側となる経路で、チョークコイル18のエネルギー放出による電流が流れ、チョークコイル電流ILがゼロに向かって変化し続ける。
【0223】
この状態で、チョークコイル18がエネルギー放出を終えると、極性検出回路84の極性検出信号E9がHレベルとなり、転流素子オン保留制御回路88のアンド回路90の禁止状態が解除され、このときHレベルにあるスイッチング制御回路30からの転流制御信号E7が転流素子16に出力され、転流素子16がオンする。
【0224】
このため期間Nの最後では、チョークコイル18のチョークコイル電流ILが零になった後に、即ち主スイッチング素子14の寄生ダイオード60に流れる電流がゼロになった後に転流素子16がオンすることになる。これにより主スイッチング素子14の寄生ダイオード60のリカバリー動作が発生せず、
図13(期間M)に示したような大きなリカバリー電流が流れず、主スイッチング素子14にサージ電圧が発生することがない。
【0225】
(回生電流の過電流保護機能)
図14のスイッチング電源装置は、極性検出回路84と転流素子オン保留制御回路88による
図16(期間N)における転流素子16のオン保留制御で、これに続く期間J,Kのように、転流素子16のオン期間が長くなっても、第2デッドタイム発生回路40に設けた発振回路50からのパルス信号E5により転流素子16がオフとなるように制御され、このためスイッチング電源装置に過大な回生電流が流れることを抑制する過電流防止機能を実現できる。
【0226】
即ち、スイッチング電源装置は、回生動作を行うスイッチングの1周期内に転流素子16のオフ期間を設けるように制御することで、過大な回生電流が流れることを抑制する過電流防止機能を実現できる。
【0227】
(
図14のスイッチング電源装置の有用性)
図14の回生機能を備えたスイッチング電源装置は、極性検出回路84と転流素子オン保留制御回路88を付加したことにより、大きな回生電流が流れた場合でも、主スイッチング素子14の寄生ダイオードに電流が流れている最中に転流素子16がオンすることがなくなるため、主スイッチング素子14にサージ電圧を発生させることがなく、主スイッチング素子14に用いるMOS−FET等の半導体素子に低耐圧で導通抵抗の低い素子を用いることができ、低ノイズで高効率の回生機能を持ったスイッチング電源装置を実現することができる。
【0228】
また、回生電流のピーク値は、転流素子16のオン時間で制限されてスイッチングの1周期以上にはならないため、過大な回生電流が流れることを抑制する機能である回生過電流保護機能を併せ持つことになる。
【0229】
[本発明の変形例]
本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含む。例えば、主スイッチング素子オン保留回路74と転流素子オン保留回路88を同時に備えたスイッチング電源装置としても良いし、極性検出コイル72と極性検出コイル86を1つのコイルで共用した極性検出回路を構成し、1つの極性検出回路で主スイッチング素子オン保留回路74と転流素子オン保留回路88を制御する構成としても良い。また、極性検出コイルを極性検出回路に用いると同時に、補助電源回路を構成し、制御回路の駆動電力を生成しても良い。更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。