特許第6284239号(P6284239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284239繊維−樹脂複合シート及びそれを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284239
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】繊維−樹脂複合シート及びそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/12 20060101AFI20180215BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20180215BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20180215BHJP
   B32B 3/12 20060101ALI20180215BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B32B27/12
   B32B27/32 Z
   B32B27/34
   B32B3/12 Z
   C08J5/04
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-558878(P2014-558878)
(86)(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公表番号】特表2015-511194(P2015-511194A)
(43)【公表日】2015年4月16日
(86)【国際出願番号】US2013027375
(87)【国際公開番号】WO2013126739
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2015年12月21日
(31)【優先権主張番号】61/602,199
(32)【優先日】2012年2月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ロザン オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ボー ルイス
(72)【発明者】
【氏名】マニャン オリヴィエ
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−500576(JP,A)
【文献】 特開2008−230235(JP,A)
【文献】 特表2009−539659(JP,A)
【文献】 特開2007−112877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
B29B11/16
15/08−15/14
C08J5/04−5/10
5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化用繊維性基材と、前記基材の表面を覆うまたはその中に入り込む樹脂とを含む繊維−樹脂複合シートであって、前記樹脂が、第一の熱可塑性ポリマーおよび第二の熱可塑性ポリマーからなり
(i)前記第一および第二ポリマーが二相ブレンドを形成し、
(ii)前記第一ポリマーが、熱可塑性であり、75〜400℃の融点を有し、かつ前記第二ポリマーと連続または共連続相を形成し、
(iii)前記第二ポリマーが、前記第一ポリマーの前記連続または共連続相中に分散し、0.01〜15μmの有効直径を有し、かつ25〜350℃の融点を有し、
(iv)前記第一ポリマーが、前記ブレンド物中の第一および第二ポリマーを合わせた重量の45〜85重量%を構成し、
(v)前記第二ポリマーが、前記第一ポリマーの前記融点よりも少なくとも5℃低い融点を有し、かつ
(vi)前記基材の前記強化用繊維が、3〜60g/dtexの引張強度および5〜200μmのフィラメント径を有する、
複合シートであって、
前記基材の前記強化用繊維がアラミド繊維であり、第一ポリマーがポリアミドであり、かつ第二ポリマーがアイオノマーであることを特徴とする複合シート。
【請求項2】
請求項1に記載の前記複合シートを含む複合物品。
【請求項3】
前記物品が、ハニカム構造体、折り畳みコア構造体、耐衝撃性物品、または複合積層板である、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
少なくとも1枚の表面シートが前記コアの両外面に取り付けられている請求項3に記載のハニカムまたは折り畳みコアを含む構造用サンドイッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維性基材から作られる高強度コア構造体に関する。このコア構造体は、ハニカムまたは折り畳みコアの形態であることができる。
【背景技術】
【0002】
高強度の繊維性の紙または布基材から作られ、大部分がハニカムの形態であるサンドイッチパネル用のコア構造体は様々な用途に使用されるが、主に強度対重量比または剛性対重量比が高い値を有する航空宇宙および大量輸送の業界で使用される。例えばLin他の米国特許第5,137,768号明細書は、50重量%以上のp−アラミド繊維を含み、その組成物の残りがバインダーおよび他の添加剤である高密度湿式不織布繊維性基材から作られるハニカムコアについて述べている。このようなハニカムコアの例は、Kevlar(登録商標)コアである。類似のコアはまた、p−アラミド繊維の代わりにm−アラミド繊維を用いて作製することができる。この型のハニカムコアの例は、Nomex(登録商標)コアである。
【0003】
Darfler他の米国特許第5,527,584号明細書は、セル壁が織布を含むハニカムコアについて述べている。その特定の組織柄、フィラメントサイズ、およびトウサイズは、そのハニカム構造体に必要な構造強度および重量に応じて広範囲に変えることができる。平織は、一つの好適な織り様式である。
【0004】
Wang他の米国特許第6,245,407号明細書は、ハニカム構造体を被覆するための浸漬用樹脂として使用されるフェノール系ポリマーとポリアミドポリマーの組合せである樹脂について述べている。
【0005】
熱可塑性ハニカムは、熱または超音波成形などの手法によって作製することができる。そのような方法は、米国特許第5,039,567号明細書、第5,421,935号明細書、および第5,217,556号明細書中に記載されている。この種の工程は、紙または布基材からハニカムを組み立てるために使用されるエキスパンションまたはコルゲーション工程よりも効率的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
構造体の機械的性質に悪影響を与えることなく紙または布基材から作製されるコア構造体の製造効率を向上させる継続的な必要性が存在する。これは、航空機、列車、およびボートに使用される構造体について特に当てはまる。コア構造体のレーザー溶接は、製造効率を高める一つの取組みである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、強化用繊維性基材と、その基材の表面を覆うまたはその中に入り込む樹脂とを含む繊維−樹脂複合シートに関し、その樹脂は第一の熱可塑性ポリマーおよび第二の熱可塑性ポリマーを含み、
(i)第一および第二ポリマーが二相ブレンドを形成し、
(ii)第一ポリマーが、熱可塑性であり、75〜400℃の融点を有し、かつ第二ポリマーと連続または共連続相を形成し、
(iii)第二ポリマーが、この第一ポリマーの連続または共連続相中に分散し、0.01〜15μmの有効直径を有し、かつ25〜350℃の融点を有し、
(iv)第一ポリマーが、ブレンド物中の第一および第二ポリマーを合わせた重量の35〜99重量%を構成し、
(v)第二ポリマーが、第一ポリマーの融点よりも少なくとも5℃低い融点を有し、かつ
(vi)基材の強化用繊維が、3〜60g/dtexの引張強度(tenacity)および5〜200μmのフィラメント径を有する。
【0008】
本発明はさらに、繊維−樹脂複合シートを含む複合物品を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】六角形の形をしたハニカムを表した図である。
図1B】六角形の形をしたハニカムを表した図である。
図2】六角形セルの形をしたハニカムの別の図である。
図3】表面シートを備えたハニカムの図である。
図4】折り畳みコア構造体の図である。
図5】複数枚の基材とエネルギー吸収層とを含む物品の断面図である。
図6】成形用工具の内側のL字形構成要素の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
複合シート
本発明は、強化用繊維性基材と、その基材の表面を覆うまたはその中に入り込む樹脂とを含む繊維−樹脂複合シートを対象とする。この基材は、紙または布の形態であることができる。
【0011】
基材
好ましくは基材の強化用繊維は、3〜60g/dtexのフィラメント引張強度および5〜200μmのフィラメント径を有する。幾つかの実施形態では7〜32μmのフィラメント径を有する繊維が好ましい。他の実施形態ではフィラメント引張強度が8〜60g/dtexである。幾つかの実施形態では基材は紙である。
【0012】
好ましい紙は、高強度繊維およびバインダーの両方を含有する。一実施形態では紙は、10〜100重量%の繊維および対応する0〜90重量%のバインダーを含む。別の実施形態では紙は、10〜85重量%の繊維および15〜90重量%のバインダーを含む。さらに別の実施形態では紙は、50〜100重量%の繊維および0〜50重量%のバインダーを含む。
【0013】
紙の高強度繊維は、少なくとも180g/dtex(200g/デニール)の初期ヤング率と、11g/dtex(10g/デニール)〜56g/dtex(50g/デニール)の引張強度とを有する。一実施形態では紙中の繊維の長さは、0.5〜26mmである。別の実施形態では繊維の長さは1〜8mmであり、またさらに別の実施形態では繊維の長さは1.5〜6mmである。
【0014】
強化用基材はまた、より高弾性率の繊維とブレンドされた、より低強度かつ低弾性率の繊維を含むことができる。そのブレンド物中のより低強度の繊維の量は、コア構造体の所望の強度に応じてその都度変えることができる。低強度の繊維の量が高いほど、コア構造体の強度は低くなることになる。好ましい実施形態では、より低強度の繊維の量は30%を超えるべきでない。このようなより低強度の繊維の例は、ポリ(エチレンテレフタルアミド)繊維またはセルロースである。
【0015】
強化用基材は、少量の無機粒子を含有することができ、代表的な粒子には雲母、蛭石などが挙げられ、これらの性能増強添加剤の添加は基材に、したがって最終のコア構造体に改良された耐火性、熱伝導率、寸法安定性などの特性を付与することになる。
【0016】
幾つかの実施形態では紙の厚さは、12〜1270μm(0.5〜50ミル)であり、また紙の坪量は、10〜900g/m2(0.29〜230オンス/平方ヤード)である。紙は、ただ一枚のシートであることも、また重ね合せた複数枚のシートであってもよい。
【0017】
紙を構成する繊維は、単独または組み合わせて使用されるカット繊維(フロック)またはパルプの形態であることができる。
【0018】
フロックは、一般には連続紡糸されたフィラメントを特定長さの断片に切断することによって作られる。フロック長が0.5mm未満の場合、それは紙に十分な強度を与えるには一般に短すぎる。フロック長が26mmを超える場合、均質な湿式基材を形成することがきわめて困難である。5μm未満、特に3μm未満の直径を有するフロックは、十分な断面均一性および再現性を伴って生産することが困難である。フロックの直径が20μmを超える場合、軽から中等の坪量の均一な紙を形成するのがきわめて困難である。
【0019】
本明細書中で使用される用語「パルプ」とは、茎およびそれから一様に伸びている根毛を有する繊維性材料の粒子を意味する。茎は、一般に円柱状で、直径が10〜50μmであり、また根毛は、直径が1μmの何分の幾つかまたは数μmの何分の幾つしかなく、長さが約10〜100μmである一般に茎に付着している繊細な毛髪状構成部材である。アラミドパルプを製造するための一つの可能性のある方法の例が、米国特許第5,084,136号明細書に開示されている。
【0020】
好ましいバインダーはフィブリッド(fibrid)である。本明細書中で使用される用語「フィブリッド」とは、およそ100〜1000μmの長さおよび幅と、およそ0.1〜1μmの厚さとを有する小さなフィルム状の本質的に二次元粒子のきわめて微粉化されたポリマー生成物を意味する。フィブリッドは、一般にはポリマー溶液を、その溶液の溶媒と不混和性の液体の凝固浴中に流すことによって製造される。ポリマー溶液の流れは、ポリマーが凝固するときに激しいせん断応力および乱流に曝される。フィブリッドの調製については米国特許第3,756,908号明細書中で教示され、それら方法の全般的考察は米国特許第2,999,788号明細書中に見出すことができる。フィブリッドは、最終の紙の永続的な高密度化および飽和性を可能にするのに役立つ範囲内でのみ米国特許第3,756,908号明細書の教示に従って精練されるべきである。本発明におけるフィブリッド用の好ましいポリマーには、アラミド(ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)およびポリ(p−フェニレンテレフタルアミド))が挙げられる。他のバインダーには、ポリスルホンアミド(PSA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、およびポリイミドが挙げられる。他のバインダー材料は樹脂の一般形態であり、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ尿素、ポリウレタン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、アルキド樹脂などであることができる。好ましい樹脂は、水分散性で熱硬化性である。最も好ましい樹脂バインダーは、水分散性エポキシ樹脂を含む。バインダーはまた、生物源由来であってもよい。このようなポリマーの例は、1,3−プロパンジオールに基づくものであり、そのジオール成分はコーンシュガーから発酵工程により製造される。ダイズは、生物バインダー材料の別の供給源である。
【0021】
これら繊維およびフィブリッドの両方の組成は変えることができる。好ましい種類の繊維には、芳香族ポリアミド、液晶ポリエステル、ポリベンザゾール、ポリピリダゾール、ポリスルホンアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリオレフィン、炭素、ガラス、セラミック、玄武岩、および他の無機繊維、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
フィブリッドの好ましい種類には、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、ポリスルホンアミド(PSA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド、およびこれらのブレンド物が挙げられる。
【0023】
好適な芳香族ポリアミドは、メタ−アラミドおよびパラ−アラミドである。好適なメタ−アラミドポリマーは、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)であり、また好適なパラ−アラミドポリマーは、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。
【0024】
フィブリッドおよび短繊維を使用して作られる紙については、Grossの米国特許第3,756,908号明細書およびLinの米国特許第5,137,768号明細書に記載されている。
【0025】
コア構造体の生産用の市販のp−アラミド高弾性率高強度繊維で強化された紙基材は、E.I.DuPont de Nemours and Company,Wilmington,DE.によって販売されているKEVLAR(登録商標)N636紙である。コア構造体はまた、これもまたDuPontから商品名NOMEX(登録商標)で入手できるm−アラミド繊維不織布基材から作ることができる。
【0026】
紙基材はまた、クラフト紙によって例示されるようにセルロースを含むことができる。セルロースはまた、p−アラミドおよび/またはm−アラミド繊維とセルロース繊維のブレンド物を含む紙中に存在することができる。紙はまた、ポリエステル繊維またはガラス繊維を、単独または他の繊維との組合せのいずれかで含むことができる。
【0027】
いったん紙が形成されたら、それをカレンダ仕上げして所望の密度にするか、またはその目標最終密度によってはカレンダ仕上げせずにそのままにする。
【0028】
幾つかの実施形態ではその繊維強化基材は、連続フィラメント糸を含む布材料である。布とは、一方向性の織布であってもよく、多軸、三次元の布、または不織のランダム配向した不連続繊維マットであってもよい構造体を意味する。これらの布の型は当業界でよく知られている。平織、綾織、朱子織、千鳥朱子、平織変化組織、もじり織、および模紗織を含めた多数の様々な布組織柄を使用することができる。平織柄が好ましい。炭素、セラミック、玄武岩、またはガラス繊維は、これら布にとって好ましい繊維である。幾つかの実施形態では布のフィラメントは、芳香族ポリアミドまたは芳香族コポリアミドのものである。これら糸は絡み合わせかつ/または加撚することができる。本明細書における目的では用語「フィラメント」は、長さと、その長さに直角なその断面積を横切る幅との高い比を有する比較的可撓性の肉眼的に均質な物体と定義される。そのフィラメントの断面は任意の形状であることができるが、一般には円形または豆形である。本明細書においては用語「繊維」は、用語「フィラメント」と区別なく使用される。「糸」は、複数本のフィラメントである。フィラメントは、任意の長さであることができる。パッケージの状態でボビン上に紡糸されたマルチフィラメントは、複数本の連続フィラメントを含有する。このマルチフィラメント糸を切断してステープルファイバーにし、本発明で使用するのに適した紡績スフ糸にすることができる。ステープルファイバーは、約1.5〜約5インチ(約3.8cm〜約12.7cm)の長さを有することができる。ステープルファイバーは、真っ直ぐ(すなわち非捲縮)であってもよく、また捲縮させてその長さに沿って1インチ当たり約3.5〜約18個の縮れ(1cm当たり約1.4〜約7.1個の縮れ)の捲縮(または繰り返し湾曲部)頻度を有する鋸歯の形をした縮れを有することもできる。
【0029】
これら布の幾つかにとっての他の適切な繊維形態には、牽切加工糸または混繊糸が挙げられる。
【0030】
他の実施形態では布は、ランダム配向した不連続フィラメントを含む不織マットであり、それらフィラメント同士が接着または絡み合わされている。不織布マットの例には、フェルトと、スパンレースまたはスパンボンデッドシートとが挙げられる。
【0031】
高分子樹脂塗料
高分子樹脂は、強化用基材の表面を覆うまたはその中に入り込む。幾つかの実施形態では樹脂は部分的に基材に染み込むに過ぎない。塗料樹脂は、第一の熱可塑性ポリマーおよび第二の熱可塑性ポリマーを含む。その第一および第二ポリマーは、二相ブレンドを形成する。第一ポリマーは、その第一および第二ポリマーのブレンド物の35〜99重量%を構成する。幾つかの実施形態では第一ポリマーは、その第一および第二ポリマーのブレンド物の45〜85重量%、また45〜70重量%さえ構成する。複合シートは、第三ポリマーを含んでいてもよい。
【0032】
さらに第一および第二ポリマーは、着色剤、希釈剤、加工剤(procssing agents)、紫外線添加剤(UV additives)、難燃剤、無機質充填剤、有機質充填剤、結合剤、界面活性剤、パルプ、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、および粘着付与剤などの反応性または非反応性添加剤を単独または組合せのいずれかで含んでいてもよい。好適なパルプはアラミドパルプである。これらの添加剤をポリマー中に取り込むための方法はよく知られている。
【0033】
好適な難燃剤には、臭素化難燃剤、赤リン、石綿、三酸化アンチモン、ホウ酸塩、金属水和物、金属水酸化物、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩、フルオロカーボン、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0034】
少なくとも1種類の可塑剤がポリマーに、好ましくは第二ポリマーに任意選択により加えられていてもよい。適切な例には、フタル酸系可塑剤、トリメリト酸系可塑剤、アジピン酸系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、マレイン酸系可塑剤、有機リン酸系可塑剤、スルホンアミド系可塑剤、安息香酸系可塑剤、エポキシ化植物油、ポリ(エチレンオキシド)、またはこれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態では、その少なくとも1種類の可塑剤は、エポキシ化植物油などの反応性基を有する可塑剤である。エポキシ化植物油の例は、エポキシ化ダイズ油(ESO)、エポキシ化亜麻仁油(ELO)、エポキシ化タラート、またはこれらの組合せである。
【0035】
本明細書中で述べる高分子樹脂塗料は、レーザー溶接技術による加工に適した被覆基材を提供する。
【0036】
第一ポリマー
第一および第二の両ポリマーは、良好な機械的性質および良好な耐薬品性を有するポリマーのグループに属する。このような樹脂は、業界においてはしばしば高性能ポリマー(High Performance Polymers)または工業用熱可塑性樹脂(Engineered Thermoplastics)と呼ばれる。幾種類かのゴムおよびエラストマーもまた、この材料のカテゴリーに適合する。
【0037】
第一ポリマーは、75〜400℃の融点を有する熱可塑性ポリマーである。幾つかの実施形態では第一ポリマーは、110℃〜300℃の融点、または140℃〜230℃の融点さえ有する。第一ポリマーは、第二ポリマーと連続または共連続相を形成する。国際純正および応用化学連合(IUPAC)によって定義された連続相とは、第二相がその中に粒子の形態で分散しているマトリックスを指す。IUPACの解説による共連続相は、セミ相互貫入高分子網目(SIPN)または相互貫入高分子網目(IPN)のどちらであるマトリックスである。セミ相互貫入高分子網目は、直鎖または分岐鎖の少なくとも幾つかによる少なくとも1個の網目の分子規模での侵入によって特徴づけられる、1個または複数個の高分子網目と1種類または複数種類の線状または分岐ポリマーとを含むポリマーである。相互貫入高分子網目は、分子規模で少なくとも部分的に交絡しているが互いに共有結合しておらず、かつ化学結合が切断しない限り分離することができない2個以上の網目を含むポリマーである。第二ポリマーは、第一ポリマー内で分散物を形成するか、または第一ポリマー内で共連続網目を形成する。第一ポリマーは、複合体の熱的および機械的性能に対して主要な貢献をする。好ましくは第一ポリマーは、その複合シートを含む物品のピーク動作温度よりも高い融点を有するべきである。ピーク動作温度は、その物品が使用時に曝される最高温度と定義される。ピーク動作温度は、そのポリマーが使用されるその特定用途に応じて変わるはずである。ピーク動作温度に影響を及ぼす他の要因は、熱源に近いことだけではなく、遭遇する気候状況、地理帯、および/または気候変動である。幾つかの実施形態では第一ポリマーは、ピーク動作温度よりも少なくとも5℃高い融点を有するべきである。他の実施形態では第一ポリマーは、ピーク動作温度よりも少なくとも10℃高い融点を有するべきである。
【0038】
好ましくは第一ポリマーは、ポリオレフィン、重縮合物、または弾性ブロックコポリマーである。
【0039】
弾性ブロックコポリマーの例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリイソプロペン−ポリエチレン−ブチレン−ポリスチレン、またはポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエーテル−エステルブロックコポリマー、またはこれらの組合せである。
【0040】
他の好適なポリマーには、ポリアミド、ポリアミドコポリマー、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタンコポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、シリコーンコポリマーが挙げられる。
【0041】
幾つかの実施形態では、第一ポリマーがポリアミド、ポリエステル、ポリエステルコポリマー、またはこれらの組合せであることが好ましい。好ましいポリオレフィンは、ポリプロピレンである。
【0042】
幾つかの他の実施形態では、第一ポリマーが、脂肪族ポリアミドまたは半芳香族ポリアミドなどのポリアミドであることが好ましい。好ましいポリアミドは、アミン末端含量が少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも70%であるポリアミドである。好ましくは、好適な脂肪族ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612、ナイロン13、ナイロン1010、またはこれらの組合せである。より好ましくは、好適な脂肪族ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612、ナイロン13、ナイロン1010、またはこれらの組合せである。
【0043】
好ましい半芳香族ポリアミドは、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン3T、ナイロン6/3T、ナイロン66/6T、ナイロン10/6T、ナイロン12/6T、ナイロン10/3T、ナイロン12/3T、および/またはこれらの組合せである。
【0044】
非晶質ポリアミドは、好ましくはポリアミドの総重量を基準にして最高10重量%までの範囲内で使用される。結晶性ポリアミド、半結晶性ポリアミド、またはこれらの組合せの使用が好ましい。
【0045】
第二ポリマー
第二ポリマーは、第一ポリマーの連続相または共連続相中に分散され、0.01〜15μmの有効直径を有する。
【0046】
この分散される第二の熱可塑性ポリマーが球形粒子として存在する場合、その有効直径はその粒子の直径である。この分散される第二の熱可塑性ポリマーが、非球形粒子、例えば細長い回転楕円体の形状、楕円体、または分岐したフィラメント状の構造体の網目として存在する場合、その有効直径は、その粒子の最小断面積の平面の周囲に描くことができる直径である。
【0047】
第二ポリマーは、25〜350℃の融点を有する。幾つかの実施形態では、第二ポリマーの融点は50〜200℃である。好ましくは第二ポリマーは、第一ポリマーの融点よりも少なくとも5℃低い融点を有する。幾つかの実施形態では第二ポリマーは、第一ポリマーの融点よりも少なくとも10℃、20℃、さらには30、50、75、100、または120℃さえも低い融点を有する。第二ポリマーは、その複合シートを複合物品の形にする際の、例えばコア構造体のレーザー溶接の間の加工し易さおよび加工速度の手助けをする。第二ポリマーはまた、一連の繊維性基材間の接着強度を高める。
【0048】
幾つかの実施形態ではこの粒子の主要寸法は、その強化用基材を構成するフィラメントの最小寸法と同じ程度の大きさである。
【0049】
他の実施形態では粒子の主要寸法は、その強化用基材を構成するフィラメントの最小寸法未満の寸法である。第二ポリマーの粒子の有効直径は、0.01〜15μmである。幾つかの実施形態ではその直径は0.01〜5μm、または0.01〜1μmでさえある。有効直径とは、粒子の断面の周囲を囲むことができる最小円の直径を意味する。
【0050】
好ましくは第二ポリマーは、ポリオレフィン、重縮合物、または弾性ブロックコポリマーである。
【0051】
ポリオレフィンポリマーの例は、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレン、ポリプロピレンコポリマー、ポリブチレン、およびポリブチレンコポリマーである。
【0052】
好適なポリエチレンポリマーには、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、およびポリエチレンコポリマー、例えばエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーおよび金属塩で部分中和したエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーが挙げられる。
【0053】
第二ポリマーがエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーである場合、そのα,β−不飽和C3〜C8カルボン酸は、アクリル酸またはメタクリル酸から選択することができる。
【0054】
エチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーは、好ましくはエチレンと、α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸と、α,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸とのターポリマーである。
【0055】
α,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸は、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸のC1〜C4アルキル半エステル、フマル酸、イタコン酸、および無水イタコン酸であることができる。好ましくはα,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸は、無水マレイン酸、マレイン酸水素エチル、およびマレイン酸水素メチルである。より好ましくはα,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸は、無水マレイン酸、マレイン酸水素メチル、またはこれらの組合せである。
【0056】
エチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸/α,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸ポリマーは、最高で40重量%までのアクリル酸C1〜C8アルキル柔軟性コモノマーをさらに含むことができ、それは、好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、または(メタ)アクリル酸n−ブチルから選択され、より好ましくはアクリル酸n−ブチルまたは(メタ)アクリル酸エチルから選択される。
【0057】
柔軟性コモノマーという用語は当業者によく知られており、アクリル酸C1〜C8アルキルなどのコモノマーを指す。(メタ)アクリル酸という用語は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を包含する。
【0058】
エチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸/α,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸ポリマーにおいて、α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸とα,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸が4〜26重量%存在するという条件で、またアクリル酸C1〜C8アルキル柔軟性コモノマーを含めた総コモノマー含量が50重量%を超えないというさらなる条件で、α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸は2〜25重量%の範囲内で存在することができ、またα,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸は0.1〜15重量%の範囲内で存在することができる。
【0059】
他の実施形態ではその第二ポリマーは、一般に「アイオノマー」と呼ばれる金属イオンで部分中和したエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーである。中和の合計パーセントは、アイオノマーの5〜90%、好ましくは10〜70%、より好ましくは25から60%の間である。
【0060】
第二の熱可塑性ポリマーが、金属イオンで部分中和したエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーである場合、そのα,β−不飽和C3〜C8カルボン酸はアクリル酸またはメタクリル酸であることができる。金属イオンで部分中和したエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーは、好ましくは金属イオンで部分中和したエチレンとα,β−不飽和C3〜C8カルボン酸とα,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸のターポリマーである。そのα,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸は、上記と同じ成分から選択することができる。
【0061】
この金属イオンで部分中和したエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸/α,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸ポリマーは、最高で40重量%までのアクリル酸C1〜C8アルキル柔軟性コモノマーをさらに含むことができ、それは好ましくは上記ですでに述べたものと同じ成分の中から選択される。
【0062】
金属イオンで部分中和したエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸/α,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸ポリマーにおいて、そのポリマー中のα,β−不飽和C3〜C8カルボン酸単位の総数の5〜90%は、金属イオンで中和され、かつα,β−不飽和C3〜C8カルボン酸およびα,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸に関して上記で述べたと同じ条件で、またアクリル酸C1〜C8アルキル柔軟性コモノマーを含めた総コモノマー含量に関して上記で述べたものと同じさらなる条件で、α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸およびα,β−不飽和C3〜C8ジカルボン酸は、上記と同じ量で存在することができる。
【0063】
エチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーは、周期表のI族またはII族の任意の金属イオンであることができる金属イオンで部分中和される。好ましい金属イオンは、ナトリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム、カルシウム、またはこれらのいずれかの混合物である。より好ましくはイオンは、ナトリウム、亜鉛、リチウム、またはマグネシウムである。最も好ましくはイオンは、亜鉛、リチウム、またはこれらの組合せである。
【0064】
部分中和したエチレン/α,β−不飽和C3〜C8カルボン酸コポリマーは、米国特許第3,264,272号明細書中に開示されているような標準的な中和技術によって調製することができる。その得られるアイオノマーは、ASTM D−1238の条件E(190℃、2160gの重り)を使用して測定される0.01〜100g/10分、またはより好ましくは0.1〜30g/10分のメルトインデックス(MI)を有する。
【0065】
上記アイオノマーは、米国特許第4,351,931号明細書、第5,028,674号明細書、第5,057,593号明細書、および第5,859,137号明細書に記載されているように連続的に動作させる高圧を使用した遊離基共重合法によって調製することができる。アイオノマー材料の具体例には、DuPontから商品名SURLYNで入手できる製品、Exxonから商品名IOTEKで入手できる製品、およびDowから商品名AMPLFY IOで入手できる製品が挙げられる。
【0066】
弾性ブロックコポリマーの例は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリイソプロペン−ポリエチレン−ブチレン−ポリスチレン、またはポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマー、ポリエーテル−エステルブロックコポリマー、またはこれらの組合せである。
【0067】
他の好適なポリマーは、ポリアミド、ポリアミドコポリマー、ポリイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタンコポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、シリコーンコポリマーである。
【0068】
幾つかの実施形態では第二ポリマーはポリイソプロペン−ポリエチレン−ブチレン−ポリスチレンまたはポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマーなどの熱可塑性の弾性ブロックコポリマーであることが好ましい。
【0069】
第一および第二ポリマーはブレンドすることができ、またペレット、繊維、シート、フィルム、布、ホットメルト、粉末、液体、またはこれらの組合せなどの様々な形態で生産することができる。例として、そのブレンディングは、80℃から420℃の間の温度で、ニーダー、一軸または二軸スクリュー押出機、または加熱型メルトミキサーを使用することによって行うことができる。第一ポリマーは、第二ポリマーの添加時に第二ポリマーと連続または共連続相を形成する。
【0070】
第三ポリマー
幾つかの実施形態では第三ポリマーは、第一、第二、および第三ポリマーの総重量を基準にして0〜99.7重量%の量で存在することができる。第三ポリマーはまた、第一および第二ポリマーのバイモーダル成分であってもよい。第三ポリマーは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、ポリイミド(PI)、およびポリフェニレンオキシド(PPO)であることができる。第三ポリマーは、基材上に別の層として存在することもでき、また第一ポリマーに取って代わることもできる。別の実施形態では第三ポリマーは第一ポリマーとブレンドされる。このようなブレンド物の例は、ポリアミド第一ポリマーとポリイミド第三ポリマーである。
【0071】
複合物品
上記樹脂被覆基材を組み込んで、構造コア、耐衝撃性物品、または積層板などの複合物品にすることができる。
【0072】
上記の第一および第二樹脂の使用は、複合物品に複数の利点を与えることが分かった。
【0073】
せん断試験またはバットジョイント試験にかけた場合、積層板は凝集破壊を示す。ナイロン6またはナイロン12などの脂肪族ポリアミド樹脂を含む積層板に対する同様の試験は接着破壊を示す。この結果は、第一および第二樹脂のブレンド物が、(a)コアの組込みを含むサンドイッチ構造体の曲げ性能の向上、および(b)ハニカムコアの製造の間のエクスパンドの容易さを与えることを示している。
【0074】
第一および第二樹脂で被覆された基材は、ナイロン系樹脂で被覆された類似の基材と比較して保形性の向上を示す。これは、被覆基材の試料を2枚の直角形状のアルミニウム板の間に置き、その板アッセンブリを50〜325℃の温度範囲のオーブン中に1分間置き、板アッセンブリをオーブンから取り出し、10分間冷却し、次いで板アッセンブリから被覆基材を取り出すことによって実証することができる。これら板は、基材を板間に位置決めする前に必要な温度まで予熱されるべきである。周囲条件で24時間保管した後、基材の2つの側面によって形成される角度を測定する。これは保持角(retained angle)として知られる。保持角が90oに近いほど保形性は優れている。周囲条件とは23±1℃の温度および50±10%の湿度を意味する。
【0075】
この第一および第二樹脂は、ナイロン樹脂の場合の約185〜275℃の範囲と比べた場合、約175〜300℃のより広い動作温度範囲を可能にする。
【0076】
第一および第二樹脂は、熱圧プレス、オーブン、またはオートクレーブ中での通常の接合のみならず、積層板を形成するための基材のレーザー溶接にも耐えられる。このような多能性は、すべての樹脂系で可能なわけではない。
【0077】
コア構造体は、ハニカムまたは折り畳みコアの形態であることができる。
【0078】
図1Aは、被覆基材を含む1個のハニカム1の平面図であり、セル壁3によって形成されたセル2を示す。図1Bは、図1A中で示したハニカムの立面図であり、2つの外面、すなわちセル壁の両端で形成された面4を示す。コアはまた、縁部5を有する。図2は、ハニカムの三次元図である。六角形のセル2およびセル壁3を有するハニカム1を示す。このハニカムの厚さを図2の10で示す。六角形のセルを示すが、他の幾何学的配置も可能であり、最も普通のあり得る配置には正方形のオーバーエクスパンドされたフレックスコアセルがある。このようなセルのタイプは当業界でよく知られており、また可能性のある幾何学的セル型に関する追加の情報についてはT.BitzerによるHoneycomb Technology(14〜20頁)(Chapman & Hall,publishers,1997)を参照することができる。
【0079】
図3は、表面シート7および8がコアの二つの外面に取り付けられているハニカムコア6から組み立てられた構造用サンドイッチパネル5を示す。好ましい表面シート材料はプレプレッグ、すなわち熱硬化性または熱可塑性樹脂を含浸させた繊維シートであるが、他の材料の表面シートもまた利用することができる。他の種類の表面シートの例には、金属、木材、セラミック、および繊維強化プラスチックが挙げられる。ある環境では、表面シートとコアの接合を高めるために接着フィルム9もまた使用される。一般にコアの両側面には少なくとも2枚のプレプレッグ膜が存在する。
【0080】
図4は、比較的薄い平面シート材料から折り畳まれた折り畳み幾何学模様の三次元構造体である折り畳みコア構造体を示す。このような折り畳みまたはモザイク状シート構造体は、米国特許第6,935,997B2号明細書および第6,800,351B1号明細書中で考察されている。山形は、三次元折り畳みモザイク状コア構造体の一般的な模様である。このような構造体はハニカム構造体とは異なる。好ましいモザイク状折り畳み構造体は、米国特許第6,913,570B2号明細書および米国特許出願公開第20100048078号明細書に記載されている型のものである。波形シートは、折り畳みコア構造体の別の形である。
【0081】
コア構造体は、第四の高分子樹脂で任意選択により被覆されていてもよい。そのような樹脂は、コアに追加の難燃性および機械的強度を与えることができる。好適な第四の樹脂には、フェノール系樹脂、難燃性(FR)エポキシ樹脂、FRポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリイミド樹脂が挙げられる。フェノール系樹脂は、一般にUnited States Military Specification MIL−R−9299Cを満たす。好ましくはこの樹脂は、フェノールホルムアルデヒド樹脂であり、またレゾールまたはノボラック樹脂であってもよい。他のアルデヒド、例えばフルフルアルデヒドを使用することができ、また他のフェノール、例えばヒドロキノンおよびp−クレゾールもまた使用することができる。p−クレゾールの調製およびこのような樹脂の特性は、「Phenolic Resins」(A.KnopおよびL.A.Pilato共著、Springer−Verlag,Berlin,1985)に記載されている。レゾール樹脂が熱を加えることによって容易に硬化されるのに対し、ノボラック樹脂は、その硬化のためにホルムアルデヒド発生物質、例えばヘキサミンとしても知られるヘキサメチレンテトラミンの追加の存在を必要とする。レゾール型の樹脂が好ましい。好適なフェノール系樹脂は、Hexion Specialty Chemicals,Columbus,OH、またはDurez Corporation,Detroit,MIなどの会社から入手できる。第四の樹脂による基材の被覆をコア成形の前に行う場合、樹脂を部分硬化することが好ましい。B−ステージングとして知られるこのような部分硬化工程は、複合材料業界においてよく知られている。B段階とは樹脂が熱で軟化し、可塑性かつ易融性だが、完全には溶解または融解しない重合反応の中間段階を本発明者等は意味する。B段階の強化用基材はまだ、さらに加工して所望のコア形状にすることができる。
【0082】
樹脂含浸がコアの形成後に行われる場合、それは、一般には浸漬とその後に続く溶媒除去および樹脂の硬化の一連の繰返しステップで行われる。好ましい最終コア密度(不織シートプラス樹脂)は、5〜500kg/m3の範囲にある。幾つかの実施形態ではこの範囲は10〜300kg/m3であるが、他の実施形態ではそれは15〜200kg/m3である。樹脂含浸工程の間に樹脂は強化用基材中に吸収されるか、その上に塗布される。塗料樹脂は、既知のブロック浸漬または基材塗工手順に従ってコアに塗布される。
【0083】
樹脂は、溶媒または分散媒体、例えば水、アセトン、プロパン−2−オール、ブタノン、酢酸エチル、エタノール、およびトルエンに溶かした溶液または分散液として使用することができる。これらの溶媒の混合物を使用して、コアからの溶媒の許容できる蒸発速度を達成することもできる。使用される溶媒の量は、使用されるコア材料の種類を含めた複数の要因に応じて広範囲にわたって変わることになる。一般には溶媒は、既知の方法に従って容易に塗布できる樹脂溶液が得られるように通常の量が加えられるべきである。
【0084】
塗布される樹脂塗料の量は、複数の要因によって変わることになる。例えば、比較的多孔質の不織布材料は、ハニカム壁の十分な濡れが得られるようにより多量の樹脂を必要とすることになる。比較的非多孔質のコア材料の場合、およそ0.0025〜0.125mm(0.1〜5ミル)の塗膜厚さを得るのに十分な量の樹脂を材料に塗布することが好ましい。
【0085】
強化用基材をハニカムコア構造体に加工する場合、2つの主要な製造方法、エキスパンションおよびコルゲーションがある。エキスパンション法は一般には紙基材に対して使用され、コルゲーション法は布基材に対して使用される。両方の方法は当業界でよく知られており、Engineered Materials Handbook、Volume 1−Composites,ASM International,1988の721頁にさらに詳述されている。
【0086】
幾つかの実施形態ではハニカムエキスパンションまたはコルゲーション工程の前に基材は第四の塗料樹脂の第一の量で被覆され、ハニカム形成後に残りが第二の量として塗布される。
【0087】
強化用基材を折り畳みコア構造体に加工する場合、別の生産手法が必要である。基材を折り畳みコア構造体に変換するための方法は、米国特許第6,913,570B2号明細書および第7,115,089B2号明細書、ならびに米国特許出願第2007/0141376号明細書に記載されている。幾つかの実施形態では第四の塗料樹脂の全部を折り畳みコア形成後に塗布するが、他の実施形態ではコアの形成の前に基材は第四の塗料樹脂の第一の量で被覆され、コア形成後に残りが第二の量として塗布される。
【0088】
基材をコア形成の前および後に被覆するための方法は当業界でよく知られている。
【0089】
強化用基材の厚さは、そのハニカムコアの最終用途または所望の特性によって決まり、幾つかの実施形態では一般に厚さ75〜500μm(3〜20ミル)である。幾つかの実施形態では基材の坪量は15〜200g/m2(0.5〜6オンス/平方ヤード)である。
【0090】
上記発明のコア構造体を使用して、コア構造体の少なくとも一方の外面に表面シートが接合された複合パネルを製造することができる。表面シート材料は、プラスチックシートまたは板、繊維強化プラスチック(プレプレッグ)、あるいは金属であることができる。表面シートは、圧力下で、また通常は熱を伴って接着フィルムによって、またはプレプレッグ中の樹脂によってコア構造体に取り付けられる。硬化はプレス、オーブン、またはオートクレーブ中で行われる。そのような手法は当業者によりよく理解されている。
【0091】
上記の樹脂被覆基材はまた、耐低速および高速衝撃性を与えるために耐衝撃性物品に組み込むことができる。適切な物品には、カバー、バンパー、および他の耐衝突性構造体が挙げられる。
【0092】
上記の樹脂被覆基材を複合積層板に組み込むことができる。そのような一つの積層板は、この樹脂被覆基材の層で接合された数枚の薄い金属層を含む繊維−金属積層板である。この繊維−金属積層板はまた、他の強化用繊維を含むこともできる。他の複合積層板は金属層なしで構築することもできる。
【0093】
上記物品の構築の間に、その物品の構成要素として少なくとも1枚のエネルギー吸収層を含めるのが有利なこともある。エネルギー吸収層の選択的位置決めにより、レーザービームなどの高エネルギー源にさらした場合に層内の的を絞った特定領域の接合が可能になるはずである。例として、そのような方法を使用してハニカムブロック中の被覆基材の一連の層間のノード線(node line)溶接部を形成することができる。好適なエネルギー吸収層は、カーボンブラックを含むポリマー層である。この外見を図5に示し、多層スタック50は、第一の複数枚の樹脂被覆基材51と、エネルギー吸収層52によって隔てられた第二の複数枚の樹脂被覆基材53とを含む。レーザーなどの高エネルギービーム54が、第一の複数枚の樹脂被覆基材の外面に向かうように示されている。ビームは、基材のポリマー塗膜をレーザービーム経路の真下の領域において溶融し、こうしてレーザービーム経路の領域において隣接層55を融着させる。エネルギー吸収層より下方の基材層53は一緒には融着しない。レーザービームを移動させ、直線、不連続線、ジグザグ、円形、楕円形、四角形、十字形、星形、または渦巻形などの任意の所望の経路を描くことができる。隣接層間の接合ゾーンが対応する類似のパターンに接合されることになる。
【0094】
試験方法
ハニカムコアの密度は、ASTM C271−61に従って求めた。
【0095】
コアの圧縮強度は、ASTM C365−57に従って求めた。
【0096】
コアの比圧縮強度は、圧縮強度値をコアの密度で除算することにより計算された。
【0097】
接着接合バットジョイント部の引張強度は、ISO 6922:1987−EN 26922:1993に従って求めた。
【0098】
引張荷重によるせん断における接着接合硬質プラスチックのラップシヤー接合部の強度は、ASTM D3163−01(2008年再承認)に従って測定した。
【0099】
見掛けのオーバーラップスプライス部のせん断強度特性は、ASTM D7616−11に従って求めた。
【実施例】
【0100】
下記実施例において布Fは、E.I.DuPont de Nemours and Company,Wilmington,DE.から商品名Kevlar(登録商標)49で市販されているp−アラミドの糸を含む平織布であった。この糸は、1580dtexの線密度を有した。この布は、経糸が6.7本/cmであり、緯糸(横糸)が6.7本/cmであった。布重量は220gsmであった。
【0101】
下記実施例において樹脂R1は、BASFから商品名Ultramid(登録商標)B27Eで市販されているナイロン6だけから成った。この樹脂を、50μmの厚さを有するシートに押し出した。
【0102】
下記実施例において樹脂R2は、60重量%のナイロン6(Ultramid(登録商標)B27E)と40重量%の亜鉛アイオノマー樹脂のブレンドであった。このアイオノマー樹脂は、83重量%のエチレン、11重量%のメタクリル酸、および6重量%のマレイン酸無水物を含んだ。このアイオノマー樹脂は、60%まで中和された。この樹脂を、50μmの厚さを有するシートに押し出した。
【0103】
下記実施例において布Sは、E.I.DuPont de Nemours and Company,Wilmington,DE.から商品名Kevlar 970 merge 1F894で市販されている1.7デニール/フィラメント(dpf)のp−アラミドの繊維を含むスパンレース布であった。布重量は64gsmであった。この繊維は、38mmの公称切断長さを有した。
【0104】
下記実施例において紙Pは、E.I.DuPont de Nemours and Company,Wilmington,DE.から商品名Kevlar(登録商標)アラミド紙で市販されているパラ−アラミドシートであった。この紙シートは、61gsmの坪量および0.07mm(2.8ミル)の厚さを有した。
【0105】
下記実施例において樹脂R3は、Arkema Inc.,King of Prussia,PAから商品名Rilsan(登録商標)AESNOで市販されているナイロン12の70重量%と、Rilsan(登録商標)AMNOのナイロン12の30重量%とのブレンドであった。この樹脂を、50μmの厚さを有するシートに押し出した。
【0106】
下記実施例において樹脂R4は、55重量%の樹脂R1と、45重量%の亜鉛アイオノマー樹脂とのブレンドであった。このアイオノマー樹脂は、83重量%のエチレン、11重量%のメタクリル酸、および6重量%のマレイン酸無水物を含んだ。このアイオノマー樹脂は、60%まで中和された。樹脂R4を、50μmの厚さを有するシートに押し出した。
【0107】
比較例A
1層の布Fを含み、その布Fの両面に1層の押出樹脂シートR1を有する複合体アッセンブリを作製した。
【0108】
次いで、その得られた複合体アッセンブリを、20バールの圧力下において平行平板型自動プレス中で5℃/分の速度で100℃から250℃まで加熱する間に圧縮成形した。この圧力および温度条件を15分間維持し、次いで依然圧力下のままでアッセンブリを5℃/分の速度で50℃まで冷却した。
【0109】
この硬化複合体からオーバーラップスプライス試片を調製し、ASTM試験法D3163−01(2008)に従って引張荷重によって試験した。これら試験結果を、ASTM D4896−01−2008中に示されている助言に従って比較した。このラップシヤー試片は、長さ105mm、幅25mm、および重なり15mmを有した。これら試片は、重なりの領域でCytec Engineered Materials,Tempe,AZから商品名FM 300Uで市販されているエポキシフィルム接着剤により接合された。接着剤の重量は、150gsmであった。試片の接合は、20バールの圧力を使用して平行平板型自動プレス中で5℃/分の速度で100℃から175℃まで加熱する間に行われた。この圧力および温度条件を60分間維持し、次いで依然圧力下のままでプレスを5℃/分の速度で50℃まで冷却した。
【0110】
実施例1
1層の布Fを含み、その布Fの両面に1層の押出樹脂シートR2を有する複合体アッセンブリを作製した。次いで、その得られた複合体アッセンブリを、平行平板型自動プレス中で比較例Aと同様に圧縮成形した。次いで、その得られた積層板を、25℃において50%RHで24時間コンディショニングしてからラップシヤー試験用に切断した。フィルム接着剤を用いて重なり領域を接合する代わりに、ラップシヤー試片を20バールの圧力を使用して平行平板型自動プレス中で5℃/分の速度で100℃から250℃まで加熱し、その温度および圧力条件を15分間維持しながら圧縮溶接することによって融着させたことを除いて、オーバーラップスプライス試片を実施例Aと同様に調製した。次いで、金型および内容物を5℃/分の速度で50℃まで冷却してから圧力を解放した。
【0111】
試験後、試料を視覚的に検査して破壊モードを調べた。試料は、オーバーラップ接合領域の外側で故障した。すなわち、接合されたオーバーラップ部は複合積層板よりも強固であった。
【0112】
比較例B
この実施例は、押出樹脂シートR2の代わりにR1を使用したことを除いて実施例1と同一のやり方で調製し試験された。試験された試料の検査は接着破壊を示した。すなわち試験用試片(test coupon)は、融着(溶接)継ぎ部の領域で故障した。これは、実施例1で使用した樹脂シートR2が、比較例Bで使用した樹脂シートR1よりも強固な複合体を実現するという結論につながる。
【0113】
比較例C
1層の紙Pを含み、その紙シートの両面に1層の押出樹脂シートR3を有する複合体アッセンブリを作製した。次いで、その得られた複合体アッセンブリを、20バールの圧力下において平行平板型自動プレス中で5℃/分の速度で100℃から220℃まで加熱する間に圧縮成形した。この圧力および温度条件を15分間維持し、次いで依然圧力下のままでアッセンブリを5℃/分の速度で50℃まで冷却した。
【0114】
実施例2
1層の紙Pを含み、その紙シートの両面に1層の押出樹脂シートR4を有する複合体アッセンブリを作製した。比較例Cの製造の場合と同じ加工条件が使用された。
【0115】
比較例D
1層の布Sを含み、その布の両面に1層の押出樹脂シートR3を有する複合体アッセンブリを作製した。比較例Cの製造の場合と同じ加工条件が使用された。
【0116】
実施例3
1層の布Sを含み、その布の両面に1層の押出樹脂シートR4を有する複合体アッセンブリを作製した。比較例Cの製造の場合と同じ加工条件が使用された。
【0117】
比較例E
1層の布Fを含み、その布Fの両面に1層の押出樹脂シートR1を有する複合体アッセンブリを作製した。比較例Cの製造の場合と同じ加工条件が使用された。
【0118】
実施例4
1層の布Fを含み、その布の両面に1層の押出樹脂シートR4を有する複合体アッセンブリを作製した。比較例Cの製造の場合と同じ加工条件が使用された。
【0119】
実施例5
1層の布Fを含み、その布の両面に1層の押出樹脂シートR2を有する複合体アッセンブリを作製した。比較例Aの製造の場合と同じ加工条件が使用された。
【0120】
比較例F
この比較例では、比較例Aの2枚の積層板を、Cytec Engineered Materials,Tempe,AZから商品名FM 300Uで市販されている重さが150gsmである構造接着用エポキシフィルム接着剤によって接合した。接合は、10バールの圧力を使用して平行平板型自動プレス中で5℃/分の速度で100℃から175℃まで加熱する間に行われた。この圧力および温度条件を60分間維持し、次いで依然圧力下のままでプレスを15℃/分の速度で50℃まで冷却した。
【0121】
熱成形評価
比較例A、Dおよび実施例2、3のそれぞれから製造された個々の複合体を貼り合せた強化層を熱成形試験にかけた。試験試料の寸法は、75mm×25mmであった。これら試料を成形工具中に置いた。この成形工具は2枚のアルミニウム板を備え、各板は150mm×200mmであり、幅方向に折り曲げられて2つの側面間で90°の角度を有するL字形を形成した。工具の2枚の板を成形温度まで加熱した。成形温度は、50℃、100℃、150℃、175℃、185℃、200℃、225℃、250℃、275℃、300℃、および325℃であった。周囲温度(室温)に保った試験用試片を2枚の加熱した板の間に置き、オーブン内に1分間閉じ込めてからオーブンから取り出し、室温まで冷却した。この造形された積層板を包含する成形用工具を周囲温度に24時間保持してから外側の板を除去した。各温度条件について少なくとも3枚の複合積層板を試験した。測定の目的は、積層板が成形用工具の外側の構成要素の除去後にいかに完全にその形状を失わずにいるかを観察することであった。図6は、成形用工具の内側のL字形構成要素を61に示す。積層板を62に示す。第一角A1を、工具の構成要素61の頂点から5mm離れたところで測定する。第二角A2を、工具の構成要素61の頂点から35mm離れたところで測定する。もし成形された積層板が、金型から取り出した時にその「成形したままの」形状を100%保持するならば、角度A1およびA2は同一であるはずである。造形された積層板がその元の平坦な予成形の形状に戻る傾向があれば、角度A2がA1よりも大きいという結果を生じさせるはずである。A2とA1の差が最も少ない複合積層板構築物は、最も良好な成形後保形性および熱成形性を有することになる。結果を、樹脂R3およびR4の融点温度に近いが、それを下回る150℃の成形温度について表1に要約する。
【0122】
表1
【0123】
表1は、比較例A、Dおよび実施例2、3の熱成形性能を示す。表から分かるとおり、本発明の熱可塑性組成物を含む積層板は、比較例の組成物と比較した場合、より良好な熱成形挙動および保形性を示す。これらの熱成形性の向上は顕著であると考えられる。熱可塑性ポリマーの融点よりも高い温度では、加工領域(processing window)はより広く、保形性はより良好であり、また工程のロバスト性が顕著に改善される。
【0124】
T−剥離試験
比較例A、Eおよび実施例4、5に従って製造された個々の複合体を貼り合せた強化層を、ASTM D1876−08に従ってT−剥離試験により試験した。試験片は、追加の接着剤なしに熱で融着させた各実施例の2枚の積層板から成った。試験片の寸法は150mm×25mmであり、接合長さは100mmであった。試片の融着は、それぞれ樹脂系R3またはR4で作られた熱可塑性積層板についてそれぞれ平行平板型自動プレス中で10バールの圧力を使用して220℃または250℃で行った。その温度を10バールで5分間保ち、次いで依然圧力下のままで50℃/分の速度で50℃まで冷却した。
【0125】
剥離試験は、接合(融着)工程の7日後に行った。各試片の端部を、1kNロードセルおよび0.1Nの分解能を有するZwick(登録商標)引張試験機モデル1445の試験用掴み具中に固定した。このような設備は、Zwick GmbH & Co.,KG,Ulm,Germanyから入手できる。
【0126】
50mm/分の一定ヘッド速度で荷重を加えた。各接合および融着条件につき少なくとも5個の試料を試験した。すべての試験用試片が、融着(溶接)継ぎ部の領域で凝集破壊した。結果を表2に要約する。
【0127】
表2
【0128】
表2は、比較例A、E、Fおよび実施例4、5についての融着または接着剤接合の強度を示す。熱融着した試片の強度は、接着剤で接合した積層板とほとんど同じか、それよりも良好である。後者は、当業界で一般に使用されているものの例である。
【0129】
上記データは、本明細書中で述べた繊維−樹脂複合体が、エキスパンション、コルゲーション、または他の折り畳み方法などの生産方法による適切な材料ハニカムおよび他のコア構造体であるための十分な接合強度および熱成形能力を有することを裏付けている。繊維強化複合体の他の分野における応用もまた、構想することができる。
【0130】
樹脂R2またはR4で被覆された紙または布を含むハニカムコア構造体は、ナイロン塗料樹脂のみを含む類似のコア構造体と比較して高いせん断強度を示すことになる。樹脂R2およびR4を使用する場合、引張強度の低下は予想されない。熱硬化性樹脂で被覆した紙または布を含むコア構造体と比較した場合、樹脂R2またはR4を含むコアは、高い靱性特性、良好な疲労性(good fatigue)、高い成形性、および生産効率の増大を本質的に有するはずである。
次に、本発明の態様を示す。
1. 強化用繊維性基材と、前記基材の表面を覆うまたはその中に入り込む樹脂とを含む繊維−樹脂複合シートであって、前記樹脂が、第一の熱可塑性ポリマーおよび第二の熱可塑性ポリマーを含み、
(i)前記第一および第二ポリマーが二相ブレンドを形成し、
(ii)前記第一ポリマーが、熱可塑性であり、75〜400℃の融点を有し、かつ前記第二ポリマーと連続または共連続相を形成し、
(iii)前記第二ポリマーが、前記第一ポリマーの前記連続または共連続相中に分散し、0.01〜15μmの有効直径を有し、かつ25〜350℃の融点を有し、
(iv)前記第一ポリマーが、前記ブレンド物中の第一および第二ポリマーを合わせた重量の35〜99重量%を構成し、
(v)前記第二ポリマーが、前記第一ポリマーの前記融点よりも少なくとも5℃低い融点を有し、かつ
(vi)前記基材の前記強化用繊維が、3〜60g/dtexの引張強度および5〜200μmのフィラメント径を有する、
複合シート。
2. 前記第一および第二ポリマーが、ポリオレフィン、重縮合物、または弾性ブロックコポリマーである、上記1に記載の複合シート。
3. 前記繊維性基材が紙または布である、上記1に記載の複合シート。
4. 前記ポリオレフィンがポリプロピレンである、上記2に記載の複合シート。
5. 前記紙が、10〜100重量%のアラミド繊維および0〜90重量%のアラミドバインダーを含む、上記3に記載の複合シート。
6. 前記紙が、p−アラミド、m−アラミド、セルロース、ポリエステル、ガラス繊維、セラミック、炭素、玄武岩、またはこれらの混合物の繊維を含む、上記3に記載の複合シート。
7. 前記布が、一方向性、多軸、三次元の織布か、または不織布であり、かつ8〜60g/dtexの引張強度および7〜32μmのフィラメント径を有するフィラメントを含む、上記3に記載の複合シート。
8. 前記布が、芳香族ポリアミド、芳香族コポリアミド、ガラス、セラミック、炭素、玄武岩、またはこれらの混合物のフィラメントを含む、上記7に記載の複合シート。
9. 前記不織布が、フェルト、スパンレースシート、またはスパンボンデッドシートである、上記7に記載の複合シート。
10. 上記1に記載の前記複合シートを含む複合物品。
11. 前記物品が、ハニカム構造体、折り畳みコア構造体、耐衝撃性物品、または複合積層板である、上記10に記載の物品。
12. 第四の樹脂を含む上記11に記載のハニカムまたは折り畳みコア構造体。
13. 少なくとも1枚の表面シートが前記コアの両外面に取り付けられている上記11に記載のハニカムまたは折り畳みコアを含む構造用サンドイッチパネル。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6