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特許6284248電気化学セル及び電気化学セルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6284248
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】電気化学セル及び電気化学セルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20180215BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20180215BHJP
   H01M 2/06 20060101ALI20180215BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01M2/02 C
   H01M2/04 C
   H01M2/06 K
   H01M2/06 C
   H01M2/30 B
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-227168(P2016-227168)
(22)【出願日】2016年11月22日
【審査請求日】2017年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 俊二
(72)【発明者】
【氏名】田中 和美
(72)【発明者】
【氏名】菅野 佳実
(72)【発明者】
【氏名】玉地 恒昭
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−117904(JP,A)
【文献】 特開2002−319375(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/141772(WO,A1)
【文献】 特開2005−044583(JP,A)
【文献】 特開2011−204590(JP,A)
【文献】 特開2008−016368(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0005302(US,A1)
【文献】 特開2003−223874(JP,A)
【文献】 特開平01−163960(JP,A)
【文献】 特開2005−340046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
H01M 2/04
H01M 2/06
H01M 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極および負極電極を含む電極体と、
第1部材および第2部材を重ね合わせて形成される外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体が収容される収容部と、
前記収容部の外周において、前記第1部材および前記第2部材が融着された状態で前記収容部の外周に沿って折り曲げられた封止部と、を有し、
前記第1部材および前記第2部材の一方がラミネート部材であり、
他方が金属である、
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
正極電極および負極電極を含む電極体と、
第1部材および第2部材を重ね合わせて形成される外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体が収容される収容部と、
前記収容部の外周において、前記第1部材および前記第2部材が融着された状態で前記収容部の外周に沿って、前記外周の全周にわたって折り曲げられた封止部と、
を有する、ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項3】
正極電極および負極電極を含む電極体と、
第1部材および第2部材を重ね合わせて形成される外装体と、を備え、
前記外装体は、
前記電極体が収容される収容部と、
前記収容部の外周において、前記第1部材および前記第2部材が融着されてなる封止部と、
を有し、
前記収容部の外周は円筒状であり、
前記封止部は、少なくとも一部が前記収容部の外周に沿って折り曲げられることにより円弧状の曲部を備えている、
ことを特徴とする電気化学セル。
【請求項4】
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方がラミネート部材であり、
前記ラミネート部材に、前記ラミネート部材を貫通する貫通電極が設けられた、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記封止部は、少なくとも一部が前記収容部の外周に沿って湾曲に形成された、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気化学セル。
【請求項6】
前記封止部に端子部が支持され、
前記端子部が前記封止部とともに折り曲げられた、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項7】
前記封止部は、前記第1部材および前記第2部材の他の部位に比べて薄肉に形成されている、
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電気化学セル。
【請求項8】
電極体が収容される収容部の外周の封止部を封止する封止工程と、
封止された封止部の一部を固定する固定工程と、
前記封止部の一部を固定した状態で、前記封止部の他の部位を絞り成形により折り曲げる成形工程と、
絞り成形された前記封止部の他の部位から前記封止部の一部を切断する切断工程と、
を含むことを特徴とする電気化学セルの製造方法。
【請求項9】
前記成形工程の後工程において、前記封止部の一部を切断する、
ことを特徴とする請求項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項10】
前記封止部の一部は、
前記成形工程において、前記封止部の他の部位を折り曲げる成形型で切断される、
ことを特徴とする請求項に記載の電気化学セルの製造方法。
【請求項11】
前記封止部の一部は、
前記成形工程において、前記封止部の他の部位を折り曲げる成形型とは別の切断装置で切断される、
ことを特徴とする請求項に記載の電気化学セルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル及び電気化学セルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池、電気二重層キャパシタなどの電気化学セルとして、ボタン形(以下、コイン形およびシリンダ形も含む)に形成されたものがある。ボタン形の電気化学セルは、各種デバイスの電源などに利用されている。ボタン形の電気化学セルの1つの形態として、例えば下記特許文献1のような電池が提案されている。
【0003】
特許文献1には、負極端子を兼ねる金属製の負極ケースと、正極端子を兼ねる金属製の正極ケースと、が絶縁ガスケットを介して嵌合された外装体が開示されている。具体的には、特許文献1において、正極ケースがカシメ加工によって絶縁ガスケットを介して負極ケースに嵌合される。カシメ加工された部位で外装体の封止部が形成される。
このように、正極ケース及び負極ケースで外装体が画成され、外装体の収容部には、電極体が非水電解質とともに内包されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−298803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、外装体の封止部をカシメ加工した場合、電池が小さくなるほど封止部を収容部に対して小さく抑えることが難しい。このため、電池の体積当たりの容量を上げることが難しく、この観点から改良の余地が残されている。
【0006】
そこで本発明は、封止部を小さく抑えることができる電気化学セルおよび電気化学セルの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気化学セルは、正極電極および負極電極を含む電極体と、第1部材および第2部材を重ね合わせて形成される外装体と、を備え、前記外装体は、前記電極体が収容される収容部と、前記収容部の外周において、前記第1部材および前記第2部材が融着された状態で前記収容部の外周に沿って折り曲げられた封止部と、を有し、前記第1部材および前記第2部材の一方がラミネート部材であり、他方が金属である、ことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、封止部を融着させた状態において、収容部の外周に沿って折り曲げた。よって、封止部を収容部の外周に近づけることができる。これにより、収容部の中心軸に対して直交する方向への張出を小さく抑えることができる。したがって、特に、小形の電気化学セルにおいて、電気化学セルの体積当たりの容量を高めることができる。
また、本発明によれば、第1部材および第2部材の一方をラミネート部材とし、他方を金属とした。これにより、他方の金属を端子部として使用できる。
本発明の電気化学セルは、正極電極および負極電極を含む電極体と、第1部材および第2部材を重ね合わせて形成される外装体と、を備え、前記外装体は、前記電極体が収容される収容部と、前記収容部の外周において、前記第1部材および前記第2部材が融着された状態で前記収容部の外周に沿って、前記外周の全周にわたって折り曲げられた封止部と、を有する、ことを特徴とする。
本発明の電気化学セルは、正極電極および負極電極を含む電極体と、第1部材および第2部材を重ね合わせて形成される外装体と、を備え、前記外装体は、前記電極体が収容される収容部と、前記収容部の外周において、前記第1部材および前記第2部材が融着されてなる封止部と、を有し、前記収容部の外周は円筒状であり、前記封止部は、少なくとも一部が前記収容部の外周に沿って折り曲げられることにより円弧状の曲部を備えている、ことを特徴とする電気化学セル。
本発明によれば、曲部83を収容部の外周に沿って折り曲げることにより、曲部83を収容部の外周に近づけることができる。これにより、収容部の中心軸に対して直交する方向への曲部の張出を小さく抑えることができる。
上記の電気化学セルにおいて、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方がラミネート部材であり、前記ラミネート部材に、前記ラミネート部材を貫通する貫通電極が設けられた、としてもよい。
本発明によれば、第1部材および第2部材の少なくとも一方をラミネート部材とし、ラミネート部材を貫通する貫通電極を設けた。貫通電極を設けることにより、封止部から外部に端子部を突出させる必要がない。よって、電気化学セルを一層小形にできる。
【0009】
上記の電気化学セルにおいて、前記封止部は、少なくとも一部が前記収容部の外周に沿って湾曲に形成された、としてもよい。
【0010】
本発明によれば、封止部には、少なくとも一部が湾曲に形成された曲部を有する。このように、曲部を収容部の外周に沿って折り曲げることにより、曲部を収容部の外周に近づけることができる。これにより、収容部の中心軸に対して直交する方向への曲部の張出を小さく抑えることができる。
【0011】
上記の電気化学セルにおいて、前記封止部に端子部が支持され、前記端子部が前記封止部とともに折り曲げられた、としてもよい。
【0012】
本発明によれば、端子部を封止部とともに折り曲げるようにした。よって、端子部を収容部側に寄せることができる。これにより、収容部の中心軸に対して直交する方向への端子部の張出を小さく抑えることができる。
【0013】
上記の電気化学セルにおいて、前記封止部は、前記第1部材および前記第2部材の他の部位に比べて薄肉に形成されている、としてもよい。
【0014】
本発明によれば、封止部は、他の部位に比べて薄肉に形成されている。封止部を薄肉に形成することにより、封止部の張出を一層小さくできる。
また、金属シートを含んだラミネート部材を第1部材および第2部材とした場合、ラミネート部材を薄肉に形成することにより、第1部材および第2部材の金属シート間の隙間を小さく抑えることができる。これにより、封止部から外装体の内部に水が浸入することを一層良好に抑えることができる。
【0018】
本発明の電気化学セルの製造方法は、電極体が収容される収容部の外周の封止部を封止する封止工程と、封止された封止部の一部を固定する固定工程と、前記封止部の一部を固定した状態で、前記封止部の他の部位を絞り成形により折り曲げる成形工程と、絞り成形された前記封止部の他の部位から前記封止部の一部を切断する切断工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、封止部を融着した後、封止部の一部を固定する。さらに、封止部の一部を固定した状態で、封止部の他の部位を絞り成形により折り曲げる。
よって、封止部を収容部の外周に近づけることができる。これにより、収容部の中心軸に対して直交する方向への張出を小さく抑えることができる。したがって、特に、小形の電気化学セルにおいて、電気化学セルの体積当たりの容量を高めることができる。
【0020】
本発明によれば、封止部の一部を切断することにより、収容部の中心軸に対して直交する方向への張出を一層小さく抑えることができる。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記封止部の一部は、前記成形工程において、前記封止部の他の部位を折り曲げる成形型で切断される、としてもよい。
【0021】
本発明によれば、封止部の他の部位を成形型で折り曲げた後、成形型で封止部の一部を切断するようにした。これにより、封止部の他の部位を折り曲げた後、封止部の一部を迅速に切断でき、電気化学セルの生産性を高めることができる。
上記の電気化学セルの製造方法において、前記封止部の一部は、前記成形工程において、前記封止部の他の部位を折り曲げる成形型とは別の切断装置で切断される、としてもよい。
【0022】
本発明によれば、封止部の他の部位を成形型で折り曲げた後、成形型とは別の切断装置で封止部の一部を切断するようにした。これにより、封止部の一部に適した切断装置を選択でき、選択した切断装置で封止部の一部を一層好適に切断できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、封止部を融着させた状態において、収容部の外周に沿って折り曲げた。よって、収容部の中心軸に対して直交する方向への張出を小さく抑えることができる。これにより、特に、小形の電気化学セルにおいて、電気化学セルの体積当たりの容量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る電池の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電池の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る電池を成形する前の状態を示す斜視図である。
図4】(a)は本発明の第1実施形態に係る成形前の電池を成形型に配置した状態を示す断面図、(b)は本発明の第1実施形態に係る成形前の電池を成形型で固定した状態を示す断面図である。
図5】(a)は本発明の第1実施形態に係る成形前の電池へパンチを移動する状態を示す断面図、(b)は本発明の第1実施形態に係る成形前の電池を成形する状態を示す断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る電池を成形型から取り出した状態を示す断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る電池の斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る電池の斜視図である。
図9】本発明の第4実施形態に係る電池の斜視図である。
図10】本発明の第5実施形態に係る電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、円柱状に形成されたボタン形、コイン形またはシリンダ形の電気化学セルとして、非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池(以下、単に「電池」という。)を例に挙げて説明する。
【0026】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係る電池の斜視図である。図2は第1実施形態に係る電池の断面図である。
図1図2に示すように、電池1は、いわゆるボタン形の電池である。電池1は、電極体2と、電極体2に含浸される電解質溶液(図示せず)と、電極体2が収容された外装体10とを備えている。
【0027】
電極体2は、負極電極3および正極電極4を備えている。負極電極3は、つづら折り形状に折り畳まれている。正極電極4は、負極電極3と互い違いに積層するように負極電極3と交差する方向につづら折り形状に折り畳まれたている。すなわち、電極体2は、負極電極3と正極電極4とが互い違いに積層するように折り畳まれた積層タイプの電極体である。
【0028】
外装体10は、電極体2が収容される収容部12と、収容部12の外周12aに沿って折り曲げられた封止部15とを有する。封止部15は、絞り成形によって収容部12の外周12aに沿って折り曲げられている。
また、外装体10は、有底筒状の第1容器17と、有底筒状の第2容器18とを備えている。第1容器17および第2容器18は、それぞれの中心軸が同軸となるように配置されている。以下、第1容器17および第2容器18の中心軸を中心軸Oとし、中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、中心軸Oに直交する方向を径方向という。なお、中心軸Oは収容部12の中心軸となる。
【0029】
第1容器17は、ラミネート部材により形成された第1部材である。ラミネート部材は、金属シートと、第1容器17における内側面を構成する樹脂製の融着層と、外側面を構成する樹脂製の保護層とが積層されている。融着層は、例えば、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成される。ポリオレフィンとして以下の材質を適宜選択できる。ポリオレフィンとしては、高圧法低密度ポリエチレンや低圧法高密度ポリエチレン、インフレーションポリプロピレンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、直鎖状短鎖分岐ポリエチレンなどの材質を使用できる。保護層は、上述のポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどを用いて形成される。融着層および保護層は、それぞれ金属シートとの間に接合層を介して、熱融着または接着剤により接合される。
【0030】
第1容器17は、第1底壁部21および第1周壁部22を備えている。第1底壁部21には、第1貫通孔23が形成されている。第1貫通孔23は、中心軸Oと同軸に形成されている。
第1底壁部21の内面には、第1シーラントリング24を介して銅プレート25が熱融着されている。第1シーラントリング24は、ポリオレフィンのポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成された、シーラントフィルムをリング状にしたものである。
銅プレート25の内面は、電極体2の負極電極3に接続されている。銅プレート25の外面は、中央にニッケルプレート26が溶接されている。ニッケルプレート26は、第1貫通孔23を貫通して外部に露出され、電池1の負極端子26として機能する。電池1の負極端子26は貫通電極である。また、銅プレート25をニッケル製とすれば、ニッケルプレート26はなくともよい。
【0031】
第2容器18は、第1容器17と同様に、ラミネート部材により形成された第2部材である。ラミネート部材は、金属シートと、第2容器18における内側面を構成する樹脂製の融着層と、外側面を構成する樹脂製の保護層と、が積層されている。融着層は、第1容器17の融着層と同じ熱可塑性樹脂を用いて形成される。保護層は、第1容器17の保護層と同じ熱可塑性樹脂を用いて形成される。
【0032】
第2容器18は、第2底壁部31、第2周壁部32、および折曲部33を備えている。第2周壁部32は、収容部12の外周12aを形成する。
第2底壁部31には、第2貫通孔35が形成されている。第2貫通孔35は、中心軸Oと同軸に形成されている。
第2底壁部31の内面には、第2シーラントリング37を介してアルミニウムプレート38が熱融着されている。第2シーラントリング37は、第1シーラントリング24と同様に、熱可塑性樹脂により形成されている。
【0033】
アルミニウムプレート38の内面は、電極体2の正極電極4に接続されている。アルミニウムプレート38の外面は、中央にニッケルプレート39が溶接されている。ニッケルプレート39は、第2貫通孔35を貫通して外部に露出され、電池1の正極端子39として機能する。電池1の正極端子39は貫通電極である。
このように、第1容器17および第2容器18をラミネート部材とし、第1容器17および第2容器18に貫通電極26,39を設けた。貫通電極26,39を設けることにより、封止部15から外部に端子部を突出させる必要がない。よって、電池1を小形にできる。
【0034】
第2周壁部32は、第2底壁部31の外周31aから第1容器17の第1底壁部21に向けて筒状に折り曲げられている。折曲部33は、第2周壁部32のうち、第1底壁部21側の端部32aから第2周壁部32に沿って第2底壁部31側へ円筒状に折り曲げられている。折曲部33は、第2周壁部32に対して径方向外側に間隔をおいて配置されている。折曲部33および第2周壁部32は、断面U字状に形成されている。
第2周壁部32は、第1周壁部22の内側で、かつ、折曲部33の内側に配置されている。また、折曲部33は、第1周壁部22の内側に配置されている。折曲部33の融着層と第1周壁部22の融着層とが熱融着されている。
【0035】
折曲部33の融着層と第1周壁部22の融着層とが熱融着されることにより、封止部15が形成される。よって、収容部12の外周が封止部15で封止される。これにより、第1容器17および第2容器18が重ね合わされて外装体10が形成される。
折曲部33の融着層と第1周壁部22の融着層とを熱融着する手段として、例えばヒータやレーザなどの熱源を用いる熱融着が挙げられる。また、折曲部33の融着層と第1周壁部22の融着層とは、熱融着の他に、例えば超音波溶接を用いる融着などが可能である。
封止部15は、収容部12の外側に円筒状に形成され、かつ、収容部12の外周12aに沿って折り曲げられている。収容部12の外周12aは、第2周壁部32で形成される。封止部15は、平面視において、円形に形成され、湾曲の曲部を有する。
【0036】
封止部15を収容部12の外周12aに沿って折り曲げることにより、封止部15を収容部12の外周12aに近づけることができる。よって、封止部15は、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への張出が小さく抑えられる。これにより、特に、小形の電池1において、電池1の体積当たりの容量を高めることができる。
【0037】
また、封止部15は、絞り成形によって収容部12の外周12aに沿って折り曲げられている。よって、封止部15は、第1容器17および第2容器18の他の部位に比べて薄肉に形成されている。封止部15を薄肉に形成することにより、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への封止部15の張出が一層小さく抑えられる。
また、第1容器17および第2容器18の融着層が薄肉に形成されることにより、第1容器17および第2容器18の金属シート間の隙間が小さく抑えられる。これにより、封止部15から外装体10の内部に水が浸入することを一層良好に抑えることができる。
【0038】
収容部12は、第1容器17と第2容器18とが重ね合されることにより密封空間が形成される。具体的には、収容部12は、第1底壁部21、第2底壁部31、および第2周壁部32により画成されている。
【0039】
つぎに、電池1の製造方法を図3図6に基づいて説明する。なお、成形前の第1容器17を第1容器素材17A、成形前の第2容器18を第2容器素材18Aとして説明する。
図3は第1実施形態に係る電池1を成形する前の状態を示す斜視図である。
図3の封止工程において、第1容器素材17Aの内面に第1シーラントリング24、銅プレート25(図2参照)を介してニッケルプレート26を溶接する。ニッケルプレート26で負極端子26が形成される。第2容器素材18Aの内面に第2シーラントリング37、アルミニウムプレート38(図2参照)を介してニッケルプレート39を溶接する。ニッケルプレート39で正極端子39が形成される。
第2容器素材18Aの突部42に内側から電極体2(図2参照)を収容し、第2容器素材18Aに第1容器素材17Aを重ね合わせる。第1容器素材17Aの第1フランジ44と第2容器素材18Aの第2フランジ45とを熱融着して封止する。封止された熱融着部46が環状に形成される。
【0040】
図4(a)は第1実施形態に係る成形前の電池を成形型に配置した状態を示す断面図である。図4(b)は第1実施形態に係る成形前の電池を成形型で固定した状態を示す断面図である。
図4(a)の固定工程において、第1容器素材17Aおよび第2容器素材18Aを成形型50に配置する。具体的には、熱融着部46の外周縁46aを成形型50の下型51の載置部51aに載置する。成形型50の上型52に第1容器素材17Aが向けられる。熱融着部46は下型51の下貫通穴53と同軸上に配置される。
【0041】
図4(b)の固定工程において、下型51の載置部51aおよび上型52の押圧部52aで熱融着部46の外周縁46aを挟み込んで固定する。熱融着部46は、下型51の下貫通穴53、および上型52の上貫通穴54に対して同軸上に配置される。下貫通穴53および上貫通穴54は、内径寸法が同一に形成されている。
【0042】
図5(a)は第1実施形態に係る成形前の電池へパンチを移動する状態を示す断面図である。図5(b)は第1実施形態に係る成形前の電池を成形する状態を示す断面図である。
図5(a)の成形工程において、パンチ56を矢印の如く上昇する。パンチ56は、下貫通穴53に嵌合可能に形成されたベース57と、ベース57の上部に形成された環状の成形部58とを有する。成形部58の外径寸法は、下貫通穴53および上貫通穴54の内径寸法より小さく形成されている。下貫通穴53と成形部58との間に間隔が形成される。同様に、上貫通穴54と成形部58との間に間隔(図5(b)参照)が形成される。
パンチ56を上昇させて下貫通穴53に嵌合させ、成形部58を熱融着部46の外周縁46aの近傍46bに当接する。
【0043】
図5(b)の成形工程において、パンチ56を継続して矢印の如く上昇させて、成形部58で外周縁46aの近傍46bを持ち上げる。上貫通穴54の内面と成形部58の外面とで、熱融着部46の他の部位46cを円筒状に絞り成形する。熱融着部46の他の部位46cが収容部12の外周12aに沿って折り曲げられ、封止部15が形成される。
熱融着部46の他の部位46cは、熱融着部46の外周縁46aを含まない部位である。
【0044】
切断工程において、熱融着部46を絞り成形した後、パンチ56を継続して矢印の如く上昇させる。ベース57の上端57aが上貫通穴54に到達する。ベース57の上端57aおよび上貫通穴54の下縁54aで、絞り成形した封止部15から外周縁46aを切断する。よって、収容部12が封止部15で封止される。外装体10の封止部15が収容部12の外周12aに沿って成形され、電池1が製造される。
【0045】
図6は第1実施形態に係る電池を成形型から取り出した状態を示す断面図である。
図6において、製造された電池1を上貫通穴54から取り出す。電池1は、封止部15が収容部12の外周12aに沿って折り曲げられている。よって、封止部15を収容部12の外周12aに近づけることができる。封止部15は、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への張出が小さく抑えられる。これにより、特に、小形の電池1において、電池1の体積当たりの容量を高めることができる。
【0046】
また、電池1によれば、熱融着部46の外周縁46aを切断することにより、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への張出を一層小さく抑えることができる。
さらに、封止部15を成形型50で絞り成形した後、切断工程において、成形型50を使用して封止部15から外周縁46aを切断するようにした。これにより、封止部15を絞り成形した後、切断工程において、封止部15から外周縁46aを迅速に切断でき、電池1の生産性を高めることができる。
【0047】
なお、図3図6においては、成形型50を使用して封止部15から外周縁46aを切断する例について説明したが、これに限定するものではない。その他の例として、封止部15を絞り成形した後、成形した電池1を成形型50から取り出し、成形型50とは別の切断装置で封止部15から外周縁46aを切断することも可能である。
これにより、外周縁46aの切断に適した切断装置を選択でき、選択した切断装置で封止部15から外周縁46a一層好適に切断できる。切断装置として、例えば回転可能なカッタ、レーザなどが挙げられる。
【0048】
(変形例)
前記実施形態では、第1容器17および第2容器18の両方にラミネート部材を使用し、ラミネート部材に正極端子 、負極端子 として貫通電極として設けた例について説明したが、これに限定するものではない。その他の例として、例えば、第1容器17および第2容器18の一方をラミネート部材とし、第1容器17および第2容器18の一方に貫通電極を設けることも可能である。
また、第1容器17および第2容器18の他方を金属とすることも可能である。他方を金属とすることにより、他方の金属を端子部として使用できる。
【0049】
また、第1容器17および第2容器18の両方を金属とすることも可能である。この場合、折曲部33と第1周壁部22との間にプライマーを塗布した状態で、折曲部33および第1周壁部22を熱融着する。第1容器17および第2容器18の両方を金属とすることにより、第1容器17および第2容器18を端子部として使用できる。
【0050】
次に、第2実施形態〜第5実施形態を図7図10に基づいて説明する。なお、第2実施形態〜第5実施形態において第1実施形態と同一、類似の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の電池80を図7に基づいて説明する。
図7は、第2実施形態に係る電池の斜視図である。
図7に示すように、電池80は、封止部82が第1実施形態の封止部15と異なるだけで、その他の構成は第1実施形態の電池1と同様である。
封止部82は、曲部83、一対の直線部84,85、および平坦部86を有する。曲部83は、第2周壁部32のうち、一方側の半部32bに沿って半円弧の湾曲状に形成されている。
一対の直線部84,85の一方の直線部84が曲部83の一端83aから直線に延びている。一対の直線部84,85の他方の直線部84が曲部83の他端83bから直線に延びている。一対の直線部84,85間に平坦部86が配置され、一対の直線部84,85が平坦部86で連結されている。
【0052】
第2実施形態の電池80によれば、曲部83を第2周壁部32の一方側の半部32bに沿って折り曲げることにより、曲部83を第2周壁部32の一方側の半部32bに近づけることができる。これにより、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への曲部83の張出を小さく抑えることができる。
【0053】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の電池90を図8に基づいて説明する。
図8は、第3実施形態に係る電池の斜視図である。
図8に示すように、電池90は、矩形体に形成された点で第1実施形態の電池1と異なるだけで、その他の構成は第1実施形態の電池1と同様である。
電池90は、矩形体に形成された収容部92と、矩形枠状に形成された封止部95とを有する。収容部92は、第2周壁部93が直線に延びる4つの壁部93a〜93dと、隣接する壁部93a〜93dを連結する4つの角部94a〜94dとを有する。第2周壁部93で、収容部92の外周92aが形成される。
【0054】
封止部95は、4つの壁部93a〜93dに沿って折り曲げられた直線部96a〜96dと、隣接する直線部96a〜96dを連結する4つの曲部97a〜97dとを有する。直線部96a〜96dは、収容部92の壁部93a〜93dに沿って直線に形成されている。よって、直線部96a〜96dを壁部93a〜93dに近づけることができる。
また、曲部97a〜97dは、収容部92の角部94a〜94dに沿って、平面視湾曲に形成されている。よって、曲部97a〜976dを収容部12の角部94a〜94dに近づけることができる。
【0055】
第3実施形態の電池90によれば、封止部95の直線部96a〜96dを壁部93a〜93dに近づけることができる。さらに、曲部97a〜97dを収容部12の角部94a〜94dに近づけることができる。これにより、収容部12の中心軸Oに対して直交する方向への直線部96a〜96dの張出、曲部97a〜97dの張出を小さく抑えることができる。すなわち、封止部95の張出を小さく抑えることができる。
【0056】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の電池100を図9に基づいて説明する。
図9は、第4実施形態に係る電池の斜視図である。
図9に示すように、電池100は、一対の端子部103,104を封止部95から突出させた点で第3実施形態の電池90と異なるだけで、その他の構成は第3実施形態の電池90と同様である。
一対の端子部103,104は、封止部102のうち、平行に配置された直線部95a,95cにシーラントフィルム106,107を介して支持され、直線部95a,95cから外部に突出されている。
一対の端子部103,104は、封止部95とともに折り曲げられている。これにより、一対の端子部103,104を収容部108側に寄せることができ、電池100を小さく抑えることができる。収容部108は、第3実施形態の収容部92と類似部材である。
【0057】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の電池110を図10に基づいて説明する。
図10は、第5実施形態に係る電池の斜視図である。
図10に示しように、電池110は、一対の端子部113,114を封止部15から突出させた点で第1実施形態の電池1と異なるだけで、その他の構成は第1実施形態の電池1と同様である。
一対の端子部113,114は、封止部112にシーラントフィルム116,117を介して支持され、封止部15から外部に突出されている。
一対の端子部113,114は、封止部15とともに折り曲げられている。これにより、一対の端子部113,114を収容部118側に寄せることができ、電池110を小さく抑えることができる。収容部118は、第1実施形態の収容部12と類似部材である。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
前記実施形態では、負極電極3と正極電極4とが互い違いに積層するように折り畳まれた積層タイプの電極体2を収容部12,92,108,118に収容した例について説明したが、これに限定するものではない。その他の電極体として、捲回タイプ、ペレットタイプの電極体を収容部12に収容することも可能である。
捲回タイプの電極体は、負極電極3と正極電極4とが捲回されたものである。ペレットタイプの電極体は、セパレータの両側に負極電極3と正極電極4とを備えたものである。
【0059】
また、前記実施形態では、下型51の載置部51aおよび上型52の押圧部52aで熱融着部46の外周縁46aを挟持する例について説明したが、これに限定するものではない。その他の例として、載置部51aおよび押圧部52aの少なくとも一方の内周側に凹みを形成し、凹みに対して外周縁46aを非接触とすることも可能である。
よって、成形型50で封止部15を絞り成形する際に、外周縁46aのうち凹みに対して非接触な部位を封止部15に寄せることができる。これにより、封止部15を一層良好に絞り成形することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,80,90,100,110…電池(電気化学セル)
2………電極体
3………負極電極
4………正極電極
10……外装体
12,92,108,118……収容部
12a…収容部の外周
15,82,95,102,112…封止部
17……第1容器(第1部材)
18……第2容器(第2部材)
26……負極端子(貫通電極)
32,93…第2周壁部(収容部の外周)
32b…第2周壁部の一方の半部
39……正極端子(貫通電極)
46……熱融着部
46a…熱融着部の外周縁(熱融着部の一部)
46c…熱融着部の他の部位
83,97a〜97d…曲部(封止部の少なくとも一部)
94a〜94d…角部
103,104,113,114…端子部
O………収容部の中心軸
【要約】
【課題】封止部を小さく抑えることができる電気化学セル及び電気化学セルの製造方法を提供する。
【解決手段】電池1は、正極電極4および負極電極3を含む電極体2と、第1容器17および第2容器18を重ね合わせた外装体10とを備える。外装体10は、電極体2が収容される収容部12と、収容部12に沿って折り曲げられた封止部15とを有する。封止部15は、熱融着された状態で、収容部12の第2周壁部32に沿って折り曲げられる。これにより、収容部12の中心軸に対して直交する方向への張出が小さく抑えられる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10