(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6284287
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】H形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
E04G23/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-179671(P2017-179671)
(22)【出願日】2017年9月20日
【審査請求日】2017年9月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593179783
【氏名又は名称】株式会社フジモト
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆司
【審査官】
坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】
特許第6128574(JP,B1)
【文献】
特許第5999862(JP,B1)
【文献】
特開2002−070326(JP,A)
【文献】
特開2008−255646(JP,A)
【文献】
特許第6192252(JP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0218616(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0055660(US,A1)
【文献】
特開平02−164957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E01D 22/00
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
H形鋼柱とH形鋼梁のフランジ間に嵌入する中央部の両端にフランジ端部と係合する係合部を形成し、ウェブに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成し、縦方向、横方向に連設される型枠部材と、
型枠部材の外表面及びH形鋼柱、H形鋼梁のフランジ外表面に配置される連続繊維シートと、
連続繊維シートが配置された型枠部材の外側に積層されウェブに形成したタイロッド挿通孔及び型枠部材に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した補強プレートと、
補強プレート、型枠部材、ウェブに形成したタイロッド挿通孔に挿入される両端に雄ネジを形成したタイロッドと、
H形鋼柱とH形鋼梁のフランジに連続繊維シートが配置され、補強プレートが配置され補強された交差部の直交する複数のコーナー部の連続繊維シート及び補強プレートの上に配され連結ボルトを介してH形鋼柱とH形鋼梁に連結されるL字形連結補強部材と、
H形鋼柱、H形鋼梁と型枠部材に囲まれた空間に充填される固化材と、
を備えることを特徴とするH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造。
【請求項2】
平行に対向する一対のL字形連結補強部材を連結長ボルトで両者を連結することを特徴とする請求項1に記載のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造。
【請求項3】
H形鋼柱、H形鋼梁のウェブを挟んだ両側又はウェブの一方の側のみを耐震補強することを特徴とする請求項1又は2に記載のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造。
【請求項4】
型枠部材とH形鋼柱、H形鋼梁との空間に補強筋を配筋することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造。
【請求項5】
補強プレートの長さを型枠部材の長さより長くし、型枠部材の連設部と補強プレートの連設部が合致しないようにすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造。
【請求項6】
H形鋼柱とH形鋼梁のウェブとフランジの交差部に連続繊維シートを挟み込んだ断面L字形補強部材を接着剤で配置することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、H
形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既存のH
形鋼柱を耐震補強するために、H
形鋼柱の周囲を囲い鋼板で囲み、H
形鋼柱と囲い鋼板間の空間に補強筋を配筋し、H
形鋼柱と囲い鋼板間の空間にグラウト等の固化材を充填して固化させるH形鋼柱の耐震補強構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−203199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のH
形鋼柱の耐震補強構造は、H
形鋼柱の全周を囲い鋼板で囲う必要があるため、十分補強スペースが必要である。しかし、既存のH
形鋼柱の周囲に壁等の構造物が隣接しているか、又は、壁等の構造物が連設されているケースが多く、H
形鋼柱の全周を囲い鋼板で囲うスペースが確保できないという問題と、H形鋼柱とH形鋼梁の交差部の補強構造についても検討されていないという問題を有していた。
【0005】
本発明は、従来技術の持つ課題を解決する簡単な構成で耐震補強スペースを最小限として耐震性能を向上させることが可能なH
形鋼柱、H形鋼梁及びその交差部の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のH
形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造は、前記課題を解決するために、H
形鋼柱とH形鋼梁のフランジ間に嵌入する中央部の両端にフランジ端部と係合する係合部を形成し、ウェブに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成し、縦方向、横方向に連設される型枠部材と、
型枠部材の外表面及びH形鋼柱、H形鋼梁のフランジ外表面に配置される連続繊維シートと、連続繊維シートが配置された型枠部材の外側に積層されウェブに形成したタイロッド挿通孔及び型枠部材に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した補強プレートと、補強プレート、型枠部材、ウェブに形成したタイロッド挿通孔に挿入される両端に雄ネジを形成したタイロッドと、H形鋼柱とH形鋼梁の
フランジに連続繊維シートが配置され、補強プレートが配置され補強された交差部の直交する複数のコーナー部
の連続繊維シート及び補強プレートの上に配され連結ボルトを介してH形鋼柱とH形鋼梁
に連結
されるL字形連結補強部材と、H
形鋼柱、H形鋼梁と型枠部材に囲まれた空間に充填される固化材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造は、平行に対向する一対のL字形連結補強部材を連結長ボルトで両者を連結することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のH
形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造は、H
形鋼柱、H形鋼梁のウェブを挟んだ両側又はウェブの一方の側のみを耐震補強することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造は、型枠部材とH形鋼柱、H形鋼梁との空間に補強筋を配筋することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造は、補強プレートの長さを型枠部材の長さより長くし、型枠部材の連設部と補強プレートの連設部が合致しないようにすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造は、H形鋼柱とH形鋼梁のウェブとフランジの交差部に連続繊維シートを挟み込んだ断面L字形補強部材を接着剤で配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
H
形鋼柱とH形鋼梁のフランジ間に嵌入する中央部の両端にフランジ端部と係合する係合部を形成し、ウェブに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成し、縦方向、横方向に連設される型枠部材と、
型枠部材の外表面及びH形鋼柱、H形鋼梁のフランジ外表面に配置される連続繊維シートと、連続繊維シートが配置された型枠部材の外側に積層されウェブに形成したタイロッド挿通孔及び型枠部材に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した補強プレートと、補強プレート、型枠部材、ウェブに形成したタイロッド挿通孔に挿入される両端に雄ネジを形成したタイロッドと、H形鋼柱とH形鋼梁の
フランジに連続繊維シートが配置され、補強プレートが配置され補強された交差部の直交する複数のコーナー部
の連続繊維シート及び補強プレートの上に配され連結ボルトを介してH形鋼柱とH形鋼梁
に連結
されるL字形連結補強部材と、H
形鋼柱、H形鋼梁と型枠部材に囲まれた空間に充填される固化材と、を備えることで、耐震補強スペースを最小に抑えることができ、部品点数が少なくH形鋼柱及びH形鋼梁への補強材の配置作業を容易に素早く実施でき、H形鋼柱とH形鋼梁の交差部が強固に耐震補強され極めて耐震性能の大きなH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造を提供することが可能となる。
平行に対向する一対のL字形連結補強部材を連結長ボルトで両者を連結することで、連結作業を容易にすることが可能となり、固化材の固化により連結長ボルトが固化材と一体化して補強効果を発揮することが可能となる。
H形鋼柱、H形鋼梁のウェブを挟んだ両側又はウェブの一方の側のみを耐震補強することで、障害物の存在で片側だけの耐震補強でも十分な耐震性を得ることが可能となる。
型枠部材とH形鋼柱、H形鋼梁との空間に補強筋を配筋することで、耐震性能を増強することが可能となる。
補強プレートの長さを型枠部材の長さより長くし、型枠部材の連設部と補強プレートの連設部が合致しないようにすることで、地震時の変位に対しての強度を向上させることが可能となる。
H形鋼柱とH形鋼梁のウェブとフランジの交差部に連続繊維シートを挟み込んだ断面L字形補強部材を接着剤で配置することで、より耐震性能を増強することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を図により説明する。
図1は、H形鋼柱1とH形鋼梁2からなる構造物を示す斜視図である。
【0015】
図1に示される実施形態では、H形鋼柱1とH形鋼梁2が十字形に交差しているが、H形鋼柱1とH形鋼梁が3方向で交差するT字形のものでも、2方向で交差する一文字形のものであっても良い。H形鋼柱1は、上下フランジ1a、1aがウェブ1bで連結された形状をしている。H形鋼梁2は、上下フランジ2a、2aがウェブ2bで連結された形状をしている。
【0016】
図2、
図3、
図4は、H形鋼柱1の耐震補強を示す図である。ウェブ1bには所定間隔毎にタイロッド挿通孔が形成される。
【0017】
型枠部材3は、鋼等の金属や、強化樹脂等の樹脂で形成される。型枠部材3は、H形鋼柱1のフランジ1a、1a間に嵌入する中央部3aと中央部3aの両端にフランジ1a、1aの端面に係合する係合部3bを備えている。型枠部材3の中央部3aには、H形鋼柱1のウェブ1bに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔が形成される。
【0018】
型枠部材3の表面に連続繊維シート4を接着剤により配置する。連続繊維シート4を上下フランジ1a、1a表面にも配置する。連続繊維シート4の材料としては、カーボン繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアレート繊維などの有機系繊維である。これらの繊維で形成される1方向及び2方向の引張強度は5〜180ton/mと大きい。連続繊維シート4を備えることで、引張強度と地震の減衰性を向上させることが可能となる。
【0019】
連続繊維シート4が配置された型枠部材3に補強プレート5が積層配置される。補強プレート5は、鋼等の金属や、強化樹脂等の樹脂で形成される。補強プレート5には、ウェブ1bに形成したタイロッド挿入通孔、型枠部材3に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成する。補強プレート5の長さを型枠部材3の長さより長くする。型枠部材3を連設して形成される連設部の位置と、補強プレート5の連設部の位置が合致しないようにし、地震時の変位に対しての強度を向上させる。
【0020】
図3は、ウェブ1bに挟んだ両側を耐震補強する実施形態を示す。ウェブ1bに形成したタイロッド挿入通孔、型枠部材3に形成したタイロッド挿通孔、補強プレート5に形成したタイロッド挿通孔に挿入されるタイロッド6の両端雄ネジにるナットを螺着して固定する。
【0021】
図4は、障害物等の存在によりウェブ1bの一方側のみ耐震補強する実施形態を示す図である。片側のみの耐震補強であっても十分な耐震性能を得ることが可能となる。
【0022】
型枠部材3とH形鋼柱1間の空間への固化材充填前に必要に応じて補強筋7を配筋する。
【0023】
図5、
図6、
図7は、H形鋼梁2の耐震補強を示す図である。ウェブ2bには、所定間隔毎にタイロッド挿通孔が形成される。
【0024】
型枠部材3は、鋼等の金属や、強化樹脂等の樹脂で形成される。型枠部材3は、H形鋼梁2の上下フランジ2a、2a間に嵌入する中央部3aと中央部3aの両端にフランジ2a、2aの端面に係合する係合部3bを備えている。型枠部材3の中央部3aには、H形鋼梁2のウェブ2bに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔が形成される。
【0025】
型枠部材3の表面に連続繊維シート4を接着剤により配置する。連続繊維シート4を上下フランジ2a、2a表面にも配置する。連続繊維シート4の材料としては、カーボン繊維などの無機系繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアレート繊維などの有機系繊維である。これらの繊維で形成される1方向及び2方向の引張強度は5〜180ton/mと大きい。連続繊維シート4を備えることで、引張強度と地震の減衰性を向上させることが可能となる。
【0026】
連続繊維シート4が配置された型枠部材3に補強プレート5が積層配置される。補強プレート5は、鋼等の金属や、強化樹脂等の樹脂で形成される。補強プレート5には、ウェブ2bに形成したタイロッド挿入通孔、型枠部材3に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成する。補強プレート5の長さを型枠部材3の長さより長くする。型枠部材3を連設して形成される連設部の位置と、補強プレート5の連設部の位置が合致しないようにする。型枠部材3の連設部と補強プレート5の連設部の位置が合致しないようにすることで、地震時の変位に対しての強度を向上させることが可能となる。
【0027】
図6は、ウェブ2bに挟んだ両側を耐震補強する実施形態を示す。ウェブ2bに形成したタイロッド挿入通孔、型枠部材3に形成したタイロッド挿通孔、補強プレート5に形成したタイロッド挿通孔に挿入されるタイロッド6両端雄ネジにナットを螺着して固定する。
【0028】
図7は、障害物等の存在によりウェブ2bの一方側のみ耐震補強する実施形態を示す図である。片側のみの耐震補強であっても十分な耐震性能を得ることが可能となる。
【0029】
型枠部材3とH形鋼梁2との空間に固化材を充填する前に必要に応じて補強筋7を配筋する。
【0030】
図8は、H形鋼柱1とH形鋼梁2への型枠部材3、補強プレート5の配置後で固化材充填前の段階で実施されるH形鋼柱1とH形鋼梁2の交差部の耐震補強の実施形態を示す正面図であり、
図9は上面図である。
【0031】
図8、
図9に示される実施形態は、H形鋼柱1にH形鋼梁2が十字形に交差するケースを示す。H形鋼柱1とH形鋼梁2が十字形に交差する場合、直交する交差部は8ヶ所存在する。直交する8ヶ所の交差部にL字形の連結補強部材8を配置する。
【0032】
H形鋼柱1とH形鋼梁2に型枠部材3、連続繊維シート4、補強プレート5が配置された状態で、L字形の連結補強部材8は、連続繊維シート4が配置されたH形鋼柱1のフランジ1aと連続繊維シート4が配置されたH形鋼梁2のフランジ2aに接し、平行に対向するケースと、H形鋼柱1に配置された補強プレート5とH形鋼梁2に配置された補強プレート5に接し、平行に対向するケースが存在する。
【0033】
L字形の連結補強部材8が、連続繊維シート4が配置されたH形鋼柱1のフランジ1aと連続繊維シート4が配置されたH形鋼梁2のフランジ2aに接し、平行に対向するケースの連結は、フランジ1a、1a及びフランジ2a、2aに連結長ボルト挿通孔を形成し、対応するL字形の連結補強部材8にも連結長ボルト挿通孔を形成し、連結長ボルト9で平行に対向するL字形の連結補強部材両者を同時に連結する。
【0034】
L字形の連結補強部材8が、H形鋼柱1に配置された補強プレート5、H形鋼梁2に配置された補強プレート5に接し、平行に対向するケースの連結は、タイロッド6と同様に、ウェブ1b、2b、型枠部材3、補強プレート5に連結長ボルト挿通孔を形成し、対応するL字形の連結補強部材8にも連結長ボルト挿通孔を形成し、連結長ボルト9で平行に対向するL字形の連結補強部材両者を同時に連結する。また、L字形の連結補強部材8にタイロッド挿通孔を形成し、タイロッド6でL字形の連結補強プレート9を連結し、連結長ボルト9と兼用する。
【0035】
L字形の連結補強部材8を連結長ボルト9で両者を同時に連結することにより連結作業を容易に実施することが可能になる。さらに、連結長ボルト9は固化材が充填固化すると固化材と一体化し補強筋の機能を発揮する。
【0036】
L字形の連結補強部材8のH形鋼柱1にH形鋼梁2の交差部への配置連結が終了すると、H形鋼柱1と型枠部材3との空間、H形鋼梁2と型枠部材3の空間に高強度コンクリートモルタル等の固化材を充填し固化させる。H形鋼柱1、H形鋼梁2と型枠部材3、補強プレート5が一体化し、H形鋼柱1とH形鋼梁2が耐震補強される。さらに、H形鋼柱1とH形鋼梁2の交差部に配置連結されたL字形連結補強部材8により、地震時の応力が集中するH形鋼柱1とH形鋼梁2の交差部が耐震補強され強固なH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造となる。
【0037】
図10は、連続繊維を挟みこんだ断面L字形補強部材10を形成する基本形状である断面T字形部材11を示す図である。断面T字形部材11は、一対のL型鋼12の直立部12a間に連続繊維シート4がサンドイッチ状に接着剤を介して配置される。また、一対のL型鋼12の水平部12bと押えプレート13間に連続繊維シート4がサンドイッチ状に接着剤を介して配置される。
【0038】
図11は、
図10に示される連続繊維シート4を挟み込んだ断面T字形部材11から形成される連続繊維シート4を挟み込んだ断面L字形補強部材10を示す図である。一対の断面T字部材11の端部を45度の角度で切除し、一対の断面T字形部材1の切除部が接するように配置する。一対の断面T字形部材11の繊維シート3をサンドイッチ状に配置した水平部12bと押えプレート13がL字形の外側直角角部に位置する。内側直角コーナー部にL字形連結プレート14を配置し、L字形連結プレート14と一対の断面T字形部材11の繊維シート3をサンドイッチ状に配置した水平部12bと押えプレート13を連結ボルト15で連結して連続繊維シート4を挟み込んだ断面L字形補強部材10を形成する。
【0039】
このようにして形成される連続繊維シート4を挟み込んだ断面L字形補強部材10は、引張強度と振動エネルギー減衰性を向上させる連続繊維シート4が周囲環境に露出することがなく、紫外線等による劣化が防止され長期間その性能を維持することが可能となり、耐震性、耐久性に優れた補強部材とすることが可能となる。
【0040】
連続繊維シートを挟み込んだ断面L字形補強部材10をH形鋼柱1のウェブ1bとフランジ1aの交差部とH形鋼梁2のウェブ2bとフランジ2aの交差部に接着剤を介して配置する。より耐震性能を増強することが可能となる。
【0041】
以上のように、本発明のH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造によれば、耐震補強スペースを最小に抑えることができ、部品点数が少なくH形鋼柱及びH形鋼梁への補強材の配置作業を容易に素早く実施でき、H形鋼柱とH形鋼梁の交差部が強固に耐震補強され極めて耐震性能の大きなH形鋼柱とH形鋼梁からなる構造物の耐震補強構造を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1:H
形鋼柱、1a:フランジ、2b:ウェブ、2:H形鋼梁、2a:フランジ、2b:ウェブ、3:型枠部材、3a:中央部、3b:係合部、4:連続繊維シート、5:補強プレート、6:タイロッド、7:補強筋、8:L字形の連結補強
部材、9:連結長ボルト、10:連続繊維シートを挟み込んだ断面L字形補強部材,11:断面T字形部材、12:L形鋼、12a:直立部、12b:水平部、13:押えプレート、14:L字形連結プレート、15:連結ボルト
【要約】
【課題】簡単な構成で耐震補強スペースを最小限として耐震性能を向上させることが可能なH型鋼柱、H形鋼梁及びその交差部の耐震補強構造を提供することを目的とする。
【解決手段】H型鋼柱とH形鋼梁のフランジ間に嵌入する中央部の両端にフランジ端部と係合する係合部を形成し、ウェブに形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成し、縦方向、横方向に連設される型枠部材と、型枠部材の外側に積層されウェブに形成したタイロッド挿通孔及び型枠部材に形成したタイロッド挿通孔と対応する位置にタイロッド挿通孔を形成した補強プレートと、補強プレート、型枠部材、ウェブに形成したタイロッド挿通孔に挿入される両端に雄ネジを形成したタイロッドと、H形鋼柱とH形鋼柱の交差部の直交する複数のコーナー部に配され連結ボルトを介してH形鋼柱とH形鋼梁を連結するL字形連結補強部材と、H型鋼柱、H形鋼梁と型枠部材に囲まれた空間に充填される固化材と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図8