特許第6284294号(P6284294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284294画像表示媒体の駆動装置、画像表示装置、及び駆動プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284294
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】画像表示媒体の駆動装置、画像表示装置、及び駆動プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/34 20060101AFI20180215BHJP
   G02F 1/167 20060101ALI20180215BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   G09G3/34 C
   G02F1/167
   G09G3/20 612U
   G09G3/20 621A
   G09G3/20 623C
   G09G3/20 623D
   G09G3/20 642A
   G09G3/20 642E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-124331(P2012-124331)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-250386(P2013-250386A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】阿部 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】諏訪部 恭史
(72)【発明者】
【氏名】町田 義則
【審査官】 武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−107536(JP,A)
【文献】 特開2010−145479(JP,A)
【文献】 特開2010−78902(JP,A)
【文献】 特開平7−13509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 − 3/38
G02F 1/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する表示基板及び前記表示基板と間隙を持って対向配置された背面基板を有する一対の基板と、前記表示基板側に設けられる第1電極と、前記背面基板側に設けられる複数の第2電極と、前記一対の基板間に封入され、前記一対の基板間に印加された電圧によって前記一対の基板のうちいずれか一方の基板に付着した状態から該基板を離脱する粒子を含み、画像情報に基づいて画像を表示する画像表示媒体の前記一対の基板間に前記電圧を印加する電圧印加手段と、
前記画像情報に基づいて前記粒子を駆動する駆動電圧を前記一対の基板間に印加する際に、前記駆動電圧の印加期間の中で、同じ画素情報を表示する隣接する前記第2電極間で電位差が発生する期間を設けるように、前記電圧印加手段を制御する制御手段と、
を備えた画像表示媒体の駆動装置であって、
前記印加期間には、前記隣接する2つの前記第2電極の各々に同時に前記駆動電圧が印加される期間があり、
前記駆動電圧が前記隣接する2つの前記第2電極の一方に印加される第1の期間の長さは、前記駆動電圧が前記隣接する2つの前記第2電極の他方に印加される第2の期間の長さと同じであり、
前記第1の期間の第1の開始タイミングは、前記第2の期間の第2の開始タイミングよりも時間的に前である、
画像表示媒体の駆動装置。
【請求項2】
前記制御手段は、隣接する前記第2電極の何れか一方の駆動電圧の印加終了時に、隣接する前記第2電極間で電位差が発生するように、前記電圧印加手段を制御する請求項1に記載の画像表示媒体の駆動装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記駆動電圧として、前記一対の基板のうち一方に付着した粒子を画像情報に応じた量の粒子を離脱させる大きさの第1電圧を印加した後に、前記第1電圧の絶対値より絶対値が小さい第2電圧を印加するように、前記電圧印加手段を制御する請求項1に記載の画像表示媒体の駆動装置。
【請求項4】
前記制御手段は、隣接する前記第2電極間で電位差が発生する期間を前記第2電圧の印加期間に設けるように、前記電圧印加手段を制御する請求項3に記載の画像表示媒体の駆動装置。
【請求項5】
透光性を有する表示基板及び前記表示基板と間隙を持って対向配置された背面基板を有する一対の基板と、前記表示基板側に設けられる第1電極と、前記背面基板側に設けられる複数の第2電極と、前記一対の基板間に封入され、前記一対の基板間に印加された電圧によって前記一対の基板のうちいずれか一方の基板に付着した状態から該基板を離脱する粒子を含み、画像情報に基づいて画像を表示する画像表示媒体と、
請求項1〜4の何れか1項に記載の画像表示媒体の駆動装置と、
を備えた画像表示装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1〜4の何れか1項に記載の画像表示媒体の駆動装置の前記制御手段として機能させるための駆動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示媒体の駆動装置、画像表示装置、駆動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メモリ性を有し繰り返し書換えが可能な画像表示媒体として、着色粒子を用いた画像表示媒体が知られている。このような画像表示媒体は、例えば一対の基板と、印加された電界により基板間を移動可能に基板間に封入されると共に、色及び帯電特性が異なる複数種類の粒子群と、を含んで構成される。
【0003】
このような画像表示媒体では、画像に応じた電圧を一対の基板間に印加することにより粒子を移動させ、異なる色の粒子のコントラストとして画像を表示させる。
【0004】
例えば、このような画像表示媒体の駆動方法としては、例えば、特許文献1〜3に記載の技術が提案されている。
【0005】
特許文献1に記載の技術では、表示内容の変更を行う際にそれまで表示していた内容を表示領域全体に渡って消去し、その後新たな表示内容の書き換えを行うことが開示されている。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、1つ又は複数の画素からなり互いに異なる階調を表示させる第1の領域と第2の領域とを交互に配置し、第1の領域の画素に第1の階調を表示し、第2の領域の画素に第2の階調を表示する第1の消去ステップと、第1の領域の画素に第2の階調を表示し、第2の領域の画素に第1の階調を表示する第2の消去ステップと、によって画像を消去することが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3に記載の技術では、表示駆動電圧を印加する前に、予備駆動として、表示基板に設けられた列電極、または背面基板に設けられた行電極の少なくとも一方に、各電極の配列方向に帯電粒子群が移動可能な電界が発生するよう電圧を印加した後に、表示駆動電圧を印加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−149115号公報
【特許文献2】特開2009−058645号公報
【特許文献3】特開2007−033710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、隣接する電極間に粒子が付着するのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の画像表示媒体の駆動装置は、透光性を有する表示基板及び前記表示基板と間隙を持って対向配置された背面基板を有する一対の基板と、前記表示基板側に設けられる第1電極と、前記背面基板側に設けられる複数の第2電極と、前記一対の基板間に封入され、前記一対の基板間に印加された電圧によって前記一対の基板のうちいずれか一方の基板に付着した状態から該基板を離脱する粒子を含み、画像情報に基づいて画像を表示する画像表示媒体の前記一対の基板間に前記電圧を印加する電圧印加手段と、前記画像情報に基づいて前記粒子を駆動する駆動電圧を前記一対の基板間に印加する際に、前記駆動電圧の印加期間の中で、同じ画素情報を表示する隣接する前記第2電極間で電位差が発生する期間を設けるように、前記電圧印加手段を制御する制御手段と、を備えている。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、隣接する前記第2電極の何れか一方の駆動電圧の印加終了時に、隣接する前記第2電極間で電位差が発生するように、前記電圧印加手段を制御する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記制御手段は、前記駆動電圧として、前記一対の基板のうち一方に付着した粒子を画像情報に応じた量の粒子を離脱させる大きさの第1電圧を印加した後に、前記第1電圧の絶対値より絶対値が小さい第2電圧を印加するように、前記電圧印加手段を制御する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記制御手段は、隣接する前記第2電極間で電位差が発生する期間を前記第2電圧の印加期間に設けるように、前記電圧印加手段を制御する。
【0014】
請求項5に記載の画像表示装置は、透光性を有する表示基板及び前記表示基板と間隙を持って対向配置された背面基板を有する一対の基板と、前記表示基板側に設けられる第1電極と、前記背面基板側に設けられる複数の第2電極と、前記一対の基板間に封入され、前記一対の基板間に印加された電圧によって前記一つの基板のうちいずれか一方の基板に付着した状態から該基板を離脱する粒子を含み、画像情報に基づいて画像を表示する画像表示媒体と、請求項1〜4の何れか1項に記載の画像表示媒体の駆動装置と、を備えている。
【0015】
請求項6に記載の駆動プログラムは、コンピュータを、請求項1〜4の何れか1項に記載の画像表示媒体の駆動装置の前記制御手段として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、隣接する電極間で電位差が発生する期間がない場合に比べて、隣接する電極間に粒子が付着するのを抑制することが可能な画像表示媒体の駆動装置を提供することができる、という効果がある。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、一対の基板間への駆動電圧の印加終了時以外に隣接する電極間で電位差が発生する期間を設ける場合に比べて、隣接する電極間に粒子が付着するのを抑制することが可能な画像表示媒体の駆動装置を提供することができる、という効果がある。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、本構成を採用しない場合に比べて、表示濃度への影響を小さくすることが可能な画像表示媒体の駆動装置を提供することができる、という効果がある。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、第2電圧の印加期間以外に隣接する電極間で電位差が発生する期間を設ける場合に比べて、表示濃度への影響を小さくすることが可能な画像表示媒体の駆動装置を提供することができる、という効果がある。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、隣接する電極間で電位差が発生する期間がない場合に比べて、隣接する電極間に粒子が付着するのを抑制することが可能な画像表示装置を提供することができる、という効果がある。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、隣接する電極間で電位差が発生する期間がない場合に比べて、隣接する電極間に粒子が付着するのを抑制することが可能な駆動プログラムを提供することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は本実施形態に係わる画像表示装置の概略図であり、(B)は本発実施形態に係わる画像表示装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係わる画像表示媒体に封入される泳動粒子群の帯電特性の一例を示す図である。
図3】(A)は隣接電極間に電位差を発生させた駆動電圧の第1例を示す図であり、(B)は隣接電極間に電位差を発生させた駆動電圧の第2例を示す図である。
図4】(A)は隣接電極間に電位差を発生させた駆動電圧の第3例を示す図であり、(B)は隣接電極間に電位差を発生させた駆動電圧の第4例を示す図である。
図5】本実施形態に係わる画像表示装置の作用を説明するための図である。
図6】従来の泳動粒子の駆動方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。作用・機能が同じ働きを担う部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する場合がある。また、説明を簡易化するために、適宜1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。
【0024】
図1(A)は、本実施形態に係わる画像表示装置を概略的に示している。この画像表示装置100は、画像表示媒体10と、画像表示媒体10を駆動する駆動装置20と、を備えている。駆動装置20は、画像表示媒体10の表示側電極3、背面側電極4間に電圧を印加する電圧印加部30と、画像表示媒体10に表示させる画像の画像情報に応じて電圧印加部30を制御する制御部40と、を含んで構成されている。
【0025】
画像表示媒体10は、画像表示面とされる、透光性を有する表示基板1と、非表示面とされる背面基板2と、が間隙を持って対向して配置される一対の基板を有する。
【0026】
これらの基板1、2間を予め定められた間隔に保持すると共に、該基板間を複数のセルに区画する間隙部材5が設けられている。
【0027】
上記セルとは、背面側電極4が設けられた背面基板2と、表示側電極3が設けられた表示基板1と、間隙部材5と、によって囲まれた領域を示している。なお、1つのセルは複数の画素を含む。
【0028】
セル中には、例えば絶縁性液体で構成された分散媒6と、分散媒6中に分散された泳動粒子群11が封入されている。泳動粒子群11は、予め定めた色に着色されると共に、帯電特性を有しており、一対の電極3、4間に印加する電圧を制御することにより、着色粒子群11が基板間を泳動する。
【0029】
泳動粒子群11は、本実施形態では、1種類の予め定めた色に着色された泳動粒子群を封入した例を説明するが、複数種類の粒子群を基板間に封入するようにしてもよい。複数種類の着色粒子群を基板間に封入する場合には、それぞれ色及び帯電特性が異なる泳動粒子群を封入するようにしてもよいし、帯電特性を有さず浮遊する浮遊粒子群(例えば、泳動粒子群11より帯電量が少なく泳動粒子群11が電極側まで移動する電圧が電極間に印加されても何れの電極側まで移動しない粒子群)を含むようにしてもよい。浮遊粒子群としては白色に着色された白色粒子群を適用して白色表示するようにしてもよい。或いは、分散媒に着色剤を混合することで、泳動粒子の色とは異なる色(例えば、白色)を表示させる構成としてもよい。
【0030】
駆動装置20(電圧印加部30及び制御部40)は、画像表示媒体10の表示側電極3、背面側電極4間に印加する電圧を表示させる色に応じて制御することにより、泳動粒子群11を泳動させ、それぞれの帯電極性に応じて表示基板1、背面基板2の何れか一方に引き付ける。
【0031】
電圧印加部30は、表示側電極3及び背面側電極4にそれぞれ電気的に接続されている。また、電圧印加部30は、制御部40に信号授受されるように接続されている。
【0032】
制御部40は、図1(B)に示すように、例えばコンピュータ40として構成される。コンピュータ40は、一例として、CPU(Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、RAM(Random Access Memory)40C、不揮発性メモリ40D、及び入出力インターフェース(I/O)40Eがバス40Fを介して各々接続された構成であり、I/O40Eには電圧印加部30が接続されている。この場合、各色の表示に必要な電圧の印加を電圧印加部30に指示する処理をコンピュータ40に実行させるプログラムを、例えば不揮発性メモリ40Dに書き込んでおき、これをCPU40Aが読み込んで実行させる。なお、プログラムは、CD−ROM等の記録媒体により提供するようにしてもよい。
【0033】
電圧印加部30は、表示側電極3及び背面側電極4に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部40の制御に応じた電圧を表示側電極3及び背面側電極4に印加する。電圧印加部30は、アクティブマトリクス方式を適用してもよいし、パッシブマトリクス方式を適用するようにしてもよい。或いは、セグメント方式を適用するようにしてもよい。
【0034】
図2は、本実施形態に係わる画像表示媒体10に封入される泳動粒子群の帯電特性の一例を示す図である。図2では、表示側電極3をグランド(0V)とし、背面側電極4に駆動電圧を印加する例を示す。
【0035】
本実施形態では、泳動粒子群11は、正の帯電特性を有している。泳動粒子11は、帯電量と粒子径(体積平均粒子径)などを設定することにより、基板への付着力を設定する。本実施形態では、電圧|V0|以上の電圧を印加すると泳動粒子群11の基板間の移動が開始され、電圧|V1|(V0<V1)で何れかの基板へ移動した泳動粒子群が付着するように設定されている。
【0036】
ところで、本実施形態に係わる画像表示媒体10に封入された泳動粒子群11を駆動する場合には、従来では、図2に示す泳動粒子群の特性及び画像情報に基づいて表示基板1と背面基板2の基板間に電圧を印加することにより、泳動粒子群11の移動を制御して画像を表示するようにしていた。
【0037】
しかしながら、泳動粒子11の駆動後に、泳動粒子群11が隣接する電極間に付着してしまい、粒子の制御性が悪化してしまう。特に、隣接する画素が同じ表示濃度となる場合に、隣接する電極間に粒子が付着してしまい、粒子の制御性が悪化してしまう。例えば、図6(A)に示すように背面側電極4側に泳動粒子群11が付着した状態から泳動粒子群11を表示側電極3側へ移動する場合には、背面側電極4間に付着した粒子の基板からの剥離が、図6(B)に示すように、遅れてしまい、泳動粒子群11の制御性が悪化する。すなわち、泳動粒子の基板からの剥離の遅れによって電圧印加期間に泳動粒子が移動しきれずに浮遊した状態となり、コントラストや解像度が低下する。
【0038】
これを解決するために、上述の特許文献3に記載の技術では、予備駆動を行うようにしている。すなわち、表示用の電圧印加の前に予備駆動を行うことによって、泳動粒子群11の付着を一旦剥離(図6(C))してから泳動粒子群11を駆動することにより(図6(D))、上述したような泳動粒子の制御性の悪化を抑制するようにしている。当該技術により制御性の悪化を抑制することが可能となるが、予備駆動を行うため、表示用の駆動電圧以外の電圧を印加する必要がある。
【0039】
そこで、本実施形態では、予備駆動のように表示用の駆動電圧とは別の駆動を行うことなく、表示用の駆動電圧の印加期間において、隣接する電極間で電位差が発生する期間を設けるように、制御部40が電圧印加部30を制御して表示用の駆動電圧を基板間に印加するようになっている。
【0040】
ここで、本実施形態に係わる画像表示装置の駆動電圧の一例について説明する。図3(A)は隣接電極間に電位差を発生させた駆動電圧の第1例を示す図であり、図3(B)は隣接電極間に電位差を発生させた駆動電圧の第2例を示す図であり、図4(A)は隣接電極間に電位差を発生させた駆動電圧の第3例を示す図であり、図4(B)は隣接電極間に電位差を発生させた駆動電圧の第4例を示す図である。
【0041】
図3(A)に示す駆動電圧の第1例では、隣接する電極の駆動タイミングを時間Δtずらして印加することによって隣接電極間に電位差が発生する期間を設けている。当該第1例では、画素Bの表示用の駆動電圧の印加開始前と画素Aの表示用の駆動電圧の印加終了時に隣接電極間で電位差が発生するため、当該期間で背面側電極4間に存在する泳動粒子群11が何れかの背面側電極4側へ付着する。なお、上記時間Δtは、隣接電極間の粒子を移動させるために十分な長さの時間であり、アクティブマトリクス方式やパッシブマトリクス方式における各画素のスキャン時の時間(画素選択時間)以上の時間である。また、駆動電圧の印加を開始するタイミングを同じにして、印加の終了するタイミングをずらす、又は駆動電圧の印加の開始するタイミングをずらして印加の終了するタイミングを同じにしてもよい。
【0042】
図3(B)に示す駆動電圧の第2例では、隣接する電極間に印加する駆動電圧の大きさ及び長さを変えて、駆動電圧の印加期間の全体で隣接電極間に電位差が発生する期間を設けている。この例では、画素Aでは、駆動電圧−Vを印加し、画素Bでは画素Aと同タイミングで駆動電圧−V’(|−V|>|−V’|)の電圧を印加して、さらに、画素Bの駆動電圧の印加終了タイミングを時間Δt遅らせて終了する。これにより、表示用の駆動電圧の印加期間の中で、隣接画素間で電位差が発生するため、当該期間で電極間に存在する泳動粒子群11が何れかの背面側電極4側へ付着する。なお、この例においても、時間Δtはアクティブマトリクス方式やパッシブマトリクス方式などにおける各画素のスキャン時の時間(画素選択時間)以上の時間である。また、画素Aと画素Bの駆動電圧を同じにして、画素Aの電圧印加が終了した時から画素Bの電圧印加が終了するまでのΔtの間での電位差|V’|のみとする、又は駆動電圧の印加終了タイミングを同じにして(Δt=0)、画素Aと画素Bの両方に電圧が印加されている期間での電位差|V−V’|のみとしても構わない。第2例では、基板間に印加する電圧の大きさ及び時間を電極間で変えているため、画素Aと画素Bとで同じ濃度で表示する場合には、表示濃度が変わらないように、電圧の大きさと時間の積(図3(B)のハッチング部分の面積)が同じになるように、電圧の大きさ及び時間を決定することがより好ましい。
【0043】
図4(A)に示す駆動電圧の第3例では、駆動電圧が2つのステップを有する。2つのステップのうち始めの第1ステップでは、基板に付着した粒子が離脱する大きさの第1電圧を印加し、第2ステップでは第1電圧の絶対値より絶対値が小さく、第1電圧と極性が同じ第2電圧を印加して離脱した粒子を基板に付着させるようにしている。すなわち、第1電圧で付着した粒子の離脱する量を制御し、一方の基板から離脱させた粒子を第2電圧で他方の基板に付着させるようにしている。そして、第2ステップ(第2電圧の印加期間)で、画素Aでは駆動電圧−V’を印加し、画素Bでは画素Aと同タイミングで駆動電圧−V’’(|−V’|>|−V’’|)の電圧を印加するとともに、画素Bの駆動電圧の印加終了タイミングを時間Δt遅らせて終了する。このことにより、隣接する背面側電極4間で電位差が発生する期間を設けている。画素Aと画素Bの駆動電圧を同じにして、画素Aの電圧印加が終了した時から画素Bの電圧印加が終了するまでのΔtの間での電位差|V’’|のみとする、又は駆動電圧の印加終了タイミングを同じにして(Δt=0)、画素Aと画素Bの両方に電圧が印加されている期間での電位差|V’−V’’|のみとしても構わない。
【0044】
図4(B)に示す駆動電圧の第4例では、駆動電圧が2つのステップを有する場合の駆動電圧のその他の例を示す。第4例では、2つのステップのうち始めの第1ステップでは、基板に付着した粒子が離脱する大きさの第1電圧を印加し、第2ステップでは第1電圧の絶対値より絶対値が小さく、第1電圧と極性が異なる第2電圧を印加して、第1電圧で離脱した粒子のうち、他方の基板に付着せずに浮遊する粒子を元の基板に付着させるようにしている。すなわち、第3例では、第1電圧で一方の基板から粒子を離脱させて第2電圧で他方の基板へ付着させるようにしたが、第4例では、第1電圧で一旦一方の基板から離脱させて他方の基板へ付着させた後、第1電圧で一方の基板から離脱した粒子のうち、他方の基板へ付着しなかった粒子を、第2電圧でまた元の基板へ付着させるようにした例を示す。
【0045】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係わる画像表示装置の作用について説明する。図5は、本実施形態に係わる画像表示装置100の作用を説明するための図である。
【0046】
例えば、図5(A)に示すように、泳動粒子群11が表示側電極3側に付着した状態から、背面側電極4側へ移動する場合に、隣接する背面側電極4の何れか一方の表示用の電圧の印加終了時などの期間に、本実施形態では、背面側電極4A、4B間で電位差が発生する期間が発生するように、制御部40が電圧印加部30を制御して駆動電圧を基板間に印加する。駆動電圧としては、上述の図3(A)、(B)、図4(A)、(B)の何れかの駆動電圧を適用する。
【0047】
これにより、基板間に電圧が印加開始されると、図5(B)に示すように、泳動粒子群11が背面側電極4側へと移動を開始する。
【0048】
図3(A)、(B)、図4(A)、(B)のそれぞれの場合において、背面側電極4間に電位差が発生する期間があるので、泳動粒子群11は背面側電極4側へと移動するとともに、背面側電極4間の泳動粒子群11は背面側電極4間の電位差に応じた方向の背面側電極4へ移動し、背面側電極4A、4B間に泳動粒子群11が付着せずに、電極間の電位差に応じて何れかの背面側電極4側に付着する。そして、いずれの場合においても背面側電極4Aの駆動電圧の印加終了時には、背面側電極4間に電位差が発生する期間があるので、背面側電極4間の泳動粒子群11は、背面側電極4間の電位差に応じた方向の背面側電極4へ移動してから、図5(C)に示すように、背面側電極4A、4B間に泳動粒子群11が付着せずに、電極間の電位差に応じて何れかの背面側電極4側に付着した状態で背面側電極4Bの駆動電圧の印加が終了する。
【0049】
このように、泳動粒子群11を駆動する駆動電圧において、隣接する電極間に電位差が発生する期間を設けることにより、電極間に泳動粒子群11が付着することが抑制されるので、次に駆動する際の泳動粒子群11の制御性の悪化が抑制される。
【0050】
なお、上記の実施形態では、背面側電極4Aにおける泳動粒子群11の駆動電圧の印加終了時に、背面側電極4間に電位差が発生する期間を設けた例を説明したが、これに限るものではなく、駆動電圧を印加する期間のうち何れのタイミングでもよく、隣接する電極のうちどちらか一方の駆動電圧の印加開始の期間でもよいし、印加中の期間でもよい。但し、上記の実施形態のように、隣接する電極のうちどちらか一方の駆動電圧の印加終了時の期間に隣接電極間の電位差を設ける方が、泳動粒子群11を電極間に付着しないようにする効果が大きいのでより好ましい。
【0051】
また、上記の実施形態において、図4(A)、(B)のように、駆動電圧が2つのステップを有する場合、上記では第2ステップに背面側電極4間の電位差が発生する期間が存在するようにした例を示したが、これに限るものではなく、第1ステップ(第1電圧の印加期間)に背面側電極4間の電位差が発生する期間を設けるようにしてもよい。但し、図4(A)、(B)の例においては、第1ステップでは粒子の離脱する量を制御し、第2ステップでは、第1ステップにおいて離脱した粒子のうち、基板に付着せず浮遊する粒子を何れか一方の基板に付着させる。すなわち、第1ステップで表示濃度が決定され、第2ステップは表示濃度に影響しない。従って、第2ステップに隣接する電極間で電位差が発生する期間を設けることで、表示濃度への影響を与えずに、隣接する電極間に粒子が付着するのを抑制することができる。
【0052】
また、上記の実施形態における制御部40による電圧印加手段の制御は、ハードウエアによって実現するようにしてもよいし、ソフトウエアのプログラムを実行することによって実現するようにしてもよい。また、当該プログラムは、各種記憶媒体に記憶して流通するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 表示基板
2 背面基板
3 表示側電極
4、4A、4B 背面側電極
10 画像表示媒体
11 泳動粒子群
20 駆動装置
30 電圧印加部
40 制御部
100 画像表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6