特許第6284313号(P6284313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 一方社油脂工業株式会社の特許一覧

特許6284313剥離フィルムの製造方法および剥離フィルム
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284313
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】剥離フィルムの製造方法および剥離フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20180215BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20180215BHJP
   B32B 37/06 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   B32B27/00 L
   B32B37/06
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-161429(P2013-161429)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-30795(P2015-30795A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年5月14日
【審判番号】不服2017-2376(P2017-2376/J1)
【審判請求日】2017年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】川上 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 智行
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆一
【合議体】
【審判長】 冨士 良宏
【審判官】 川端 修
【審判官】 井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−115784(JP,A)
【文献】 特開2011−230289(JP,A)
【文献】 特開昭62−81476(JP,A)
【文献】 特開2003−147327(JP,A)
【文献】 特開2003−220666(JP,A)
【文献】 特開2009−132876(JP,A)
【文献】 特開2012−171230(JP,A)
【文献】 特開2006−192734(JP,A)
【文献】 特開2003−12829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00 〜 C09D 201/10
C09J 1/00 〜 C09J 201/10
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に剥離剤層が形成された剥離フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルムの、前記剥離剤層が形成される剥離剤層形成面に、水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)と、水酸基と反応可能な官能基を複数有する架橋剤(B)とを含む剥離剤層形成用組成物を塗工する塗工工程と、
前記塗工工程後、前記剥離剤層形成面上で前記剥離剤層形成用組成物を60〜150℃で加熱して前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)と前記架橋剤(B)とを反応させて架橋体を形成させる架橋体形成工程と、
前記架橋体形成工程後、前記剥離剤層形成面上で前記剥離剤層形成用組成物を35〜60℃温度で12〜170時間加熱する加熱工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が、下記化学式(1)の構造を含むビニルアルコールポリマーである請求項1記載の製造方法。
【化1】
下記化学式(1)中、★印は、共有結合(単結合)により他の原子と結合していることを表す。
【請求項3】
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、前記化学式(1)で表される構造に由来する主鎖炭素原子の数が5〜50%である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記剥離剤層形成用組成物において、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の水酸基の数に対し、前記架橋剤(B)の前記官能基の数が30〜100%となるモル比である請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記架橋剤(B)がイソシアネート化合物であり、前記架橋剤(B)の前記官能基がイソシアネート基である請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記架橋剤(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が、さらに、下記化学式(2)で表される構造を含み、
【化2】
前記化学式(2)中、★印は、共有結合(単結合)により他の原子と結合していることを表し、
は、直鎖または分枝アルキル基であり、
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、前記化学式(2)で表される構造に由来する主鎖炭素原子の数が25%以下である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が、さらに、下記化学式(3)で表されるエチレン基を含み、
【化3】
前記化学式(3)中、★印は、共有結合(単結合)により他の原子と結合していることを表し、
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、前記化学式(3)で表される構造に由来する主鎖炭素原子の数が90%以下である請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が、さらに、下記化学式(4)で表される構造を含み、
【化4】
前記化学式(4)中、★印は、共有結合(単結合)により他の原子と結合していることを表し、
は、直鎖または分枝脂肪族炭化水素基であり、
Lは、単結合または任意の原子団である請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記化学式(4)で表される構造が、下記化学式(4−2)で表される構造である請求項9記載の製造方法。
【化4-2】
前記化学式(4−2)中、★印およびRは、前記化学式(4)と同じである。
【請求項11】
前記化学式(4)中、Rが、オクタデシル基である請求項9または10記載の製造方法。
【請求項12】
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、前記化学式(4)で表される構造に由来する主鎖炭素原子の数が30〜75%である請求項9から11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記剥離剤層形成用組成物が、さらに、溶剤を含み、
さらに、前記塗工工程後に前記溶剤を揮発させて前記剥離剤層形成用組成物を乾燥させる乾燥工程を含む請求項1から12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記溶剤が、芳香族炭化水素および水溶性非プロトン性溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類である請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
基材フィルムの少なくとも片面に剥離剤層が形成された剥離フィルムであって、
前記剥離剤層が、水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)と、水酸基と反応可能な官能基を複数有する架橋剤(B)とを反応させて得られるポリマーを含み、
前記剥離剤層のゲル分率が70重量%以上であることを特徴とする剥離フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離フィルムの製造方法および剥離フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
感圧性粘着テープ、粘着シート等の基材に用いられる剥離処理剤は、前記基材に塗工して剥離剤層を形成すること(剥離処理)により、前記感圧性粘着テープ、粘着シート等の剥離性を向上させることができる。以下において、剥離剤層を形成したフィルムを「剥離フィルム」ということがある。
【0003】
従来の剥離処理剤としては、シリコーン系剥離処理剤、非シリコーン系剥離処理剤などがある。シリコーン系剥離処理剤としては、付加型シリコーン、縮合型シリコーンなどが用いられている。シリコーン系剥離処理剤は、剥離性、残留接着性、耐熱性などの特性が優れているが、高価である。また、シリコーン系剥離処理剤は、特に剥離処理時に高温での熱処理が必要であるために、OPP(オルトフェニルフェノール)、ポリエチレン等の耐熱性の悪い基材には使用できない。さらに、シリコーン系剥離処理剤は、剥離処理剤中に不純物として存在する低分子シリコーン化合物の問題があり、かつ、筆記性等に欠点がある。
【0004】
一方、非シリコーン系剥離処理剤としては、ポリビニルアルコールまたはエチレン−ビニルアルコール共重合体にアルキルイソシアネートを反応させた長鎖アルキルペンダント型ポリマーなどが知られている。非シリコーン系剥離処理剤における剥離性などの特性は、一般に、シリコーン系剥離処理剤より低い。しかし、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合物とアルキルイソシアネートとの反応生成物である長鎖アルキルペンダント型ポリマーによる剥離処理剤は、実用的に十分な剥離性を有している。このような剥離処理剤では、特別な触媒の併用、および熱処理などの操作が必要でなく、剥離処理剤の溶剤溶液を支持体に塗布後、乾燥するだけで剥離性能が得られる。このため、耐熱性が低い支持体(例えば、熱可塑性プラスチックなど)に対しても剥離処理が簡単に行える。
【0005】
ポリビニルアルコール重合体、エチレン/ビニルアルコール重合体にアルキルイソシアネートを付加させる場合、アルキルイソシアネートの付加量を調整し、ポリマー中に水酸基を残存させることで、反応性基を持たせることができる。例えば、水酸基を有するビニルアルコール/ビニルアルキルカルバメート化合物が提案されている(特許文献1)。また、粘着テープの背面処理剤として水酸基を有するビニルアルコール/ビニルアルキルカルバメート化合物を多官能イソシアネートと反応させることで、粘着剤の移行防止効果、加熱プレス板への汚染防止効果を付与することが提案されている(特許文献2)。さらに、離型フィルム用途として、水酸基量を有するビニルアルコール/ビニルアルキルカルバメート化合物を多官能イソシアネートで架橋させることで、耐溶剤性および100℃での耐熱性が向上するとの報告がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−81476号公報
【特許文献2】特開昭54−56638号公報
【特許文献3】特開2004−115784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術では、どのような剥離処理剤を用いても、100℃を超える高温条件下でも剥離力上昇(剥離性の低下)が小さく、かつ、剥離剤層の耐溶剤性に優れた剥離フィルムを製造することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、100℃を超える高温条件下でも剥離力上昇(剥離性の低下)が小さく、かつ、剥離剤層の耐溶剤性に優れた剥離フィルムを製造可能な製造方法の提供を目的とする。さらに、本発明は、前記製造方法により製造される剥離フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の剥離フィルムの製造方法は、
基材フィルムの少なくとも片面に剥離剤層が形成された剥離フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルムの、前記剥離剤層が形成される剥離剤層形成面に、水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)と、水酸基と反応可能な官能基を複数有する架橋剤(B)とを含む剥離剤層形成用組成物を塗工する塗工工程と、
前記塗工工程後、前記剥離剤層形成面上で前記剥離剤層形成用組成物を60℃以下の温度で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の剥離フィルムは、前記本発明の製造方法により製造される剥離フィルムである。
【0011】
または、本発明の剥離フィルムは、
基材フィルムの少なくとも片面に剥離剤層が形成された剥離フィルムであって、
前記剥離剤層が、水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)と、水酸基と反応可能な官能基を複数有する架橋剤(B)とを反応させて得られるポリマーを含み、
前記剥離剤層のゲル分率が70重量%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、100℃を超える高温条件下でも剥離力上昇(剥離性の低下)が小さく、かつ、剥離剤層の耐溶剤性に優れた剥離フィルムを製造可能である。また、本発明の剥離フィルムは、前記本発明の製造方法により製造されることで、100℃を超える高温条件下でも剥離力上昇(剥離性の低下)が小さく、かつ、剥離剤層の耐溶剤性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0014】
本発明の剥離フィルムの製造方法は、前述のとおり、
基材フィルムの少なくとも片面に剥離剤層が形成された剥離フィルムの製造方法であって、
前記基材フィルムの、前記剥離剤層が形成される剥離剤層形成面に、水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)と、水酸基と反応可能な官能基を複数有する架橋剤(B)とを含む剥離剤層形成用組成物を塗工する塗工工程と、
前記塗工工程後、前記剥離剤層形成面上で前記剥離剤層形成用組成物を60℃以下の温度で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする。
【0015】
[1.水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)]
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)は、特に限定されないが、下記化学式(1)の構造を含むビニルアルコールポリマーであることが好ましい。
【化1】
前記化学式(1)中、★印は、共有結合(単結合)により他の原子と結合していることを表す。
【0016】
前記化学式(1)に由来する主鎖炭素原子数の数は、特に限定されないが、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、例えば5〜50%である。
【0017】
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)は、主鎖中に、前記化学式(1)等の水酸基含有構造以外の構造を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。
【0018】
例えば、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が、さらに、下記化学式(2)の構造を含み、
【化2】
前記化学式(2)中、★印は、共有結合(単結合)により他の原子と結合していることを表し、
は、直鎖または分枝アルキル基であり、
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、前記化学式(2)で表される構造に由来する主鎖炭素原子の数が、例えば、25%以下または20%以下であっても良い。また、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の溶解性(溶剤に対する溶解しやすさ)の観点から、前記化学式(2)に由来する主鎖炭素原子数を、主鎖炭素原子数に対し、例えば15%以上、20%以上または30%以上と多くしても良い。また、Rにおいて、直鎖もしくは分枝アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜24である。前記直鎖もしくは分枝アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ter-ブチル基等が挙げられる。
【0019】
なお、前記化学式(2)中のRは、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)中に複数存在する場合は、同一でも異なっていても良い。
【0020】
また、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が、さらに、下記化学式(3)で表されるエチレン基を含み、
【化3】
前記化学式(3)中、★印は、共有結合(単結合)により他の原子と結合していることを表し、
前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、前記化学式(3)で表される構造に由来する主鎖炭素原子の数が90%以下であっても良い。前記化学式(3)に由来する主鎖炭素原子数の数は、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、理想的には0%である。
【0021】
また、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が、さらに、下記化学式(4)で表される構造を含み、
【化4】
前記化学式(4)中、★印は、共有結合(単結合)により他の原子と結合していることを表し、
は、直鎖または分枝脂肪族炭化水素基であり、
Lは、単結合または任意の原子団であっても良い。
【0022】
Lとしては、特に限定されないが、例えば、−CO−、−CH−CH(OH)−、−CO−NH−、−SO−、−PO(OH)−O−、等が挙げられる。
【0023】
なお、前記化学式(4)中のRおよびLは、それぞれ、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)中に複数存在する場合は、同一でも異なっていても良い。
【0024】
前記化学式(4)で表される構造は、下記化学式(4−2)で表される構造であることが好ましい。
【化4-2】
前記化学式(4−2)中、★印およびRは、前記化学式(4)と同じである。
【0025】
前記化学式(4)に由来する主鎖炭素原子数の数は、特に限定されないが、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の主鎖炭素原子数に対し、例えば30〜75%である。Rにおいて、前記直鎖もしくは分枝脂肪族炭化水素基は、飽和でも不飽和でも良く、例えば、アルキル基でも、アルケニル基でも、アルキニル基でも良いが、アルキル基が好ましい。また、前記直鎖もしくは分枝脂肪族炭化水素基は、直鎖状であることが好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。前記直鎖もしくは分枝脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは12〜30である。前記直鎖もしくは分枝脂肪族炭化水素基としては、例えば、ドデシル基、ラウリル基(n−ドデシル基)、テトラデシル基、ミリスチル基(n−テトラデシル基)、ヘキサデシル基、パルミチル基(n−ヘキサデシル基)、オクタデシル基、ステアリル基(n−オクタデシル基)、オレイル基等が挙げられ、より好ましくはオクタデシル基、特に好ましくはステアリル基(n−オクタデシル基)である。
【0026】
なお、前記化学式(4−2)で表される構造を含む水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)は、例えば、ビニルアルコールポリマーの水酸基を、下記化学式(5)で表される脂肪族イソシアネート化合物と反応させて得ることができる。
【化5】
前記化学式(5)中、Rは、前記化学式(4)および(4−2)と同じである。また、脂肪族イソシアネート化合物(5)は、単一構造のものを用いても良いし、Rの構造が異なる複数種類を併用しても良い。
【0027】
また、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の重合度は、特に限定されないが、溶剤への溶解性およびハンドリングの観点からは、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の重合度が高すぎないことが好ましい。前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)がエチレン−ビニルアルコール共重合体(前記化学式(1)および(3)を含む)である場合、その平均重合度は、例えば500〜3,000、好ましくは800〜2,500である。また、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が、ポリビニルアセテートの一部または全部をケン化して得られたポリビニルアルコール(前記化学式(1)を含み、さらに、前記化学式(2)を含むかまたは含まない)である場合、その平均重合度は、例えば100〜3,000、好ましくは150〜500の範囲である。なお、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の重合度は、主鎖炭素原子数2(すなわち、エチレンまたはビニルアルコール1つ分)を1単位(重合度1)として計算する。
【0028】
なお、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)は、市販品を用いても良いし、適宜製造しても良い。
【0029】
[2.架橋剤(B)]
前記架橋剤(B)は、前述のとおり、水酸基と反応可能な官能基を(1分子内に)複数有する。前記架橋剤(B)は、水酸基と反応可能な官能基を(1分子内に)3個以上有することが好ましい。前記水酸基と反応可能な官能基としては、例えば、カルボキシ基、カルボン酸無水物基、ハロカルボニル基(酸ハロゲン化物基)、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基等が挙げられ、中で、イソシアネート基が好ましい。前記架橋剤(B)は、特に限定されないが、例えば、イソシアネート化合物、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸等、それらの酸無水物および酸ハロゲン化物等が挙げられ、さらに、エポキシ基含有化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等が挙げられ、アミノ基含有化合物としては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン等の低分子化合物、ポリエチレングリコールジアミン、ポリプロピレングリコールジアミン等の高分子化合物、および、トリメチロールプロパンまたはグリセリンへのこれらの多官能アミノ基含有化合物付加体等が挙げられ、イソシアネート化合物が特に好ましい。前記イソシアネート化合物は、前記架橋剤(B)の前記水酸基と反応可能な官能基がイソシアネート基(−N=C=O)である場合である。前記イソシアネート化合物も特に限定されず、例えば、脂肪族イソシアネートでも、芳香族イソシアネートでも良い。前記脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。前記芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート等が挙げられる。また、前記イソシアネート化合物は、前記各脂肪族イソシアネートおよび前記各芳香族イソシアネートのうち任意の1種または複数種類の重合体、ポリオール付加体等であっても良く、脂肪族イソシアネートの重合体が特に好ましい。
【0030】
また、前記イソシアネート化合物としては、例えば、下記化学式(6)で表されるビウレット、下記化学式(7)で表されるイソシアヌレート、下記化学式(8)で表されるアダクト、下記化学式(9)または(10)で表される2官能型、下記化学式(11)または(12)で表されるTDI(トルエンジイソシアネート)等が挙げられる。
【0031】
【化6】
【0032】
【化7】
【0033】
【化8】
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11-12】
【0037】
前記化学式(6)〜(10)中、各Rは、それぞれ、直鎖または分枝アルキレン基であり、同一でも異なっていても良く、前記直鎖または分枝アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜24である。前記化学式(8)中、Rは、メチン基である。前記化学式(10)中、Rは、直鎖または分枝アルキル基であり、同一でも異なっていても良く、前記直鎖または分枝アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜24である。前記架橋剤(B)としては、前記化学式(6)において各Rがヘキサメチレン基である、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(HDIイソシアヌレート)が特に好ましい。
【0038】
なお、前記架橋剤(B)は、市販品を用いても良いし、適宜製造しても良い。
【0039】
[3.剥離フィルムの製造方法]
本発明の剥離フィルムの製造方法は、前述のとおり、前記塗工工程および前記加熱工程を含むが、その他の工程を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。本発明の剥離フィルムの製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0040】
まず、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)を準備する。前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)は、前述のとおり、市販品を用いても、製造しても良い。製造する場合の製造方法は、特に限定されず、公知技術等を参考にして適宜行うことができる。例えば、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)が前記化学式(1)および前記化学式(4−2)で表される構造を含む場合は、例えば、原料ビニルアルコールポリマーに、前記化学式(5)で表される脂肪族イソシアネート化合物を反応させて製造できる。前記原料ビニルアルコールポリマーとしては、例えば、ポリビニルアセテートの一部または全部をケン化して得られたポリビニルアルコール(前記化学式(1)を含み、さらに、前記化学式(2)を含むかまたは含まない)、およびエチレン−ビニルアルコール共重合体(前記化学式(1)および(3)を含む)等が挙げられる。前記脂肪族イソシアネート化合物の物質量(モル数)は、特に限定されないが、例えば、イソシアネート基の数が、前記原料ビニルアルコールポリマーの水酸基数に対し、50〜95%とする。また、反応系が、前記原料ビニルアルコールポリマー、および前記化学式(5)で表される脂肪族イソシアネート化合物以外の他の物質を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記他の物質としては、例えば、反応溶媒(溶剤)、触媒等が挙げられる。前記反応溶媒(溶剤)は、特に限定されないが、例えば、水、芳香族炭化水素、水溶性非プロトン性溶剤等が挙げられ、1種類でも複数種類併用しても良い。前記芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。前記水溶性非プロトン性溶剤としては、例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、NEP(N−エチル−2−ピロリドン)、アセトニトリル等が挙げられる。前記反応溶媒(溶剤)は、芳香族炭化水素および水溶性非プロトン性溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類であることが特に好ましい。前記触媒としては、例えば、アルキルスズ触媒(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート)、3級アミン(例えば、トリエチルアミン)、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート等が挙げられる。反応温度および反応時間は、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0041】
つぎに、基材フィルムの、剥離剤層が形成される剥離剤層形成面に、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)および前記架橋剤(B)を含む剥離剤層形成用組成物を塗工する(塗工工程)。前記架橋剤(B)の物質量(モル数)は、特に限定されないが、例えば、水酸基と反応可能な官能基(例えば、イソシアネート基)の数が、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の水酸基数に対し、30〜100%とする。前記剥離剤層形成用組成物は、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)および前記架橋剤(B)以外の他の物質を適宜含んでいても良い。前記他の物質としては、例えば、反応溶媒(溶剤)、触媒等が挙げられる。前記反応溶媒(溶剤)は、特に限定されないが、例えば、水、芳香族炭化水素、水溶性非プロトン性溶剤等が挙げられ、1種類でも複数種類併用しても良い。前記芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。前記水溶性非プロトン性溶剤としては、例えば、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、NEP(N−エチル−2−ピロリドン)、アセトニトリル等が挙げられる。前記反応溶媒(溶剤)は、芳香族炭化水素を含むことが好ましく、芳香族炭化水素および水溶性非プロトン性溶剤からなる群から選択される少なくとも1種類であることがより好ましく、芳香族炭化水素および水溶性非プロトン性溶剤を併用することが特に好ましい。芳香族炭化水素溶剤を用いれば、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)および前記架橋剤(B)を溶解させやすく、さらに、水溶性非プロトン性溶剤を併用することで、より低温でも塗工(塗布)しやすくなる。より具体的には、例えば、トルエンとNメチルピロリドンまたはNエチルピロリドンを、重量比で98/2〜50/50、より好ましくは95/5〜70/30で混合して用いる。前記触媒としては、例えば、アルキルスズ触媒(例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート)、3級アミン(例えば、トリエチルアミン)、アルミニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート等が挙げられる。
【0042】
前記基材フィルムは、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良いが、熱可塑性樹脂が好ましい。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン、例えば配向ポリプロピレン)、熱可塑性樹脂をラミネートした紙等が挙げられる。
【0043】
前記塗工工程時の前記基材フィルムおよび前記剥離剤層形成用組成物の温度は、特に限定されず、適宜設定可能である。例えば、前記溶剤が芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレンなど)である場合は、溶液(前記剥離剤層形成用組成物)のゲル化を防止するために、40℃以上の温度で塗工することが好ましい。前述のとおり、水溶性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、Nメチルピロリドン、Nエチルピロリドンなど)を併用することで、より低温でも塗工しやすくなる。具体的には、例えば、20℃程度の温度でも、ゲル化せずに溶液状態を維持できる。前記塗工工程における塗工方法は、特に限定されず、例えば、前記剥離剤層形成用組成物を前記基材フィルムに塗布しても良いし、前記基材フィルムを前記剥離剤層形成用組成物に浸漬させても良い。塗布法も特に限定されないが、例えば、バーコータ、ロールコータ、キスコータ、スロットダイコータ、スクイズコータ、グラビアコータ等を用いる方法が挙げられる。前記剥離剤層形成用組成物の塗工量も特に限定されないが、乾燥後の膜厚が、例えば0.1〜5μmとなるようにする。
【0044】
前記塗工工程後、前記60℃以下で加熱する加熱工程に先立ち、前記剥離剤層形成面上で前記剥離剤層形成用組成物を加熱し、前記水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)と架橋剤(B)とを反応させて架橋体を形成させる工程(架橋体形成工程)を行っても良い。前記架橋体形成工程における加熱温度は、例えば、後に行う前記加熱工程より高温でも良い。また、前記剥離剤層形成用組成物が溶剤を含む場合は、前記塗工工程後に前記溶剤を揮発させて前記剥離剤層形成用組成物を乾燥させる(乾燥工程)。前記乾燥工程は、例えば、前記架橋体形成工程に先立ち、または前記架橋体形成工程と同時に行うことができる。前記乾燥工程においては、前記剥離剤層形成用組成物を加熱することが好ましい。加熱温度は、特に限定されないが、例えば60〜150℃、好ましくは60〜100℃である。加熱時間も特に限定されないが、例えば0.1〜1分間である。また、前記架橋体形成工程における加熱温度および加熱時間は、特に限定されず、適宜設定可能である。
【0045】
さらに、前記剥離剤層形成面上において、前記剥離剤層形成用組成物を60℃以下の温度で加熱する(加熱工程)。加熱温度は、60℃以下であれば特に限定されないが、例えば35〜60℃、好ましくは40〜60℃である。加熱時間も特に限定されないが、例えば12〜170時間、好ましくは24〜72時間である。前記60℃以下で加熱する加熱工程を行うことにより、100℃を超える高温条件下(例えば、150℃またはそれ以上)でも剥離力上昇(剥離性の低下)が小さく、かつ、剥離剤層の耐溶剤性に優れた剥離フィルムを得ることができる。前記60℃以下の温度で加熱する加熱工程において起こる現象は不明であるが、例えば、前記乾燥工程または前記架橋体形成工程において未反応であった水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の水酸基と架橋剤(B)の官能基との反応がさらに進行し、前記架橋体の架橋構造の数が増加してより強固になると考えられる。また、前記加熱工程に先立ち架橋体が形成されない場合(例えば、前記架橋体形成工程を行わない場合、および、前記乾燥工程を行わない場合)は、前記加熱工程において、水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)の水酸基と架橋剤(B)の官能基との反応により架橋構造(架橋体)が形成されると推測される。なお、前記加熱工程において起こると思われる現象を、以下「熟成」ということがある。このように低温で熟成させることで、前記基材フィルムが耐熱性の低い基材(ポリエチレン、配向ポリプロピレンなど)である場合でも、耐熱性の高い剥離剤層を形成できる。
【0046】
以上のようにして、基材フィルムの少なくとも片面に剥離剤層を形成し、剥離フィルムを製造することができる。
【0047】
[4.剥離フィルム]
本発明の剥離フィルムは、前述のとおり、前記本発明の製造方法により製造される剥離フィルムである。または、本発明の剥離フィルムは、前述のとおり、基材フィルムの少なくとも片面に剥離剤層が形成された剥離フィルムであって、前記剥離剤層が、水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)と、水酸基と反応可能な官能基を複数有する架橋剤(B)とを反応させて得られるポリマーを含み、前記剥離剤層のゲル分率が70重量%以上であることを特徴とする剥離フィルムであっても良い。本発明の剥離フィルムにおいて、前記剥離剤層のゲル分率は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、理想的には100重量%である。前記加熱工程において熟成させることで、例えば、このようにゲル分率が高く、耐熱性の高い剥離剤層となる。なお、前記ゲル分率は、例えば、前記剥離剤層を前記基材フィルムから分離後、重量を測定し、テトラヒドロフランに浸漬し、30℃で72時間放置し、ステンレスメッシュでろ過し、乾燥後の残渣の重量を再度測定し、前記残渣の重量変化率から算出することができる。すなわち、前記乾燥後の残渣の重量を、前記基材フィルムから分離後の前記剥離剤層の重量で割った値が、ゲル分率となる。ただし、この測定法は一例であり、本発明がこの測定方法により限定されるものではない。
【0048】
本発明の剥離フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、粘着テープ、転写フィルム、離型フィルムなどの、耐熱性および耐溶剤性が要求される用途に特に適している。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
[製造例1:水酸基を含むビニル重合体]
撹拌機、冷却器、滴下ロートを備えた反応容器中に、ビニルアルコール/酢酸ビニル共重合物(ケン化度88モル%、平均重合度300)35.3重量部、トルエン40重量部、ジメチルスルホキシド85部、ジブチルスズジラウレート0.1部を添加し、攪拌しながら、90℃に加温した。さらに、オクタデシルイソシアネートを130.8重量部(前記活性水素含有高分子の水酸基に対し70モル%)加えた。反応進行に伴い、前記ビニルアルコール/酢酸ビニル共重合物の粒子が溶解した。このビニルアルコール/酢酸ビニル共重合物の粒子が完全に溶解してから、さらに2時間反応を続けた後、80℃まで冷却し、反応混合物を5倍量のメタノール中へ注いで白色沈殿物を得た。この沈殿物をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して目的の水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)を得た。
【0051】
[実施例1]
製造例1で得られた水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)(100重量部)、トルエン(5000重量部)、ジブチルスズジラウレート(0.1重量部)を、60℃で、固形物が全て溶解するまで攪拌した。固形物溶解後の液を40℃に冷却し、架橋剤(B)としてデュラネートTPA−100(HDIイソシアヌレート、旭化成ケミカルズ製)を7重量部添加し、溶解させた。その液(剥離剤層形成用組成物)を、膜厚が25μmの未処理PETフィルム(基材フィルム)にワイヤーバーを用いて塗布(塗工)し、100℃で1分乾燥させた。塗布厚は約0.1μmであった。塗布および乾燥後の前記フィルムを、前記50℃の加熱炉に入れ、24時間熟成させた。
【0052】
[実施例2]
デュラネートTPA−100(HDIイソシアヌレート、旭化成ケミカルズ製)の添加量を14部に変更した以外は実施例1と同様の剥離フィルムを得た。
【0053】
[実施例3]
トルエン(5000重量部)に代えてトルエン(4500重量部)およびN-メチル-2-ピロリドン(500重量部)を用いた以外は実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
【0054】
[実施例4]
デュラネートTPA−100(HDIイソシアヌレート、旭化成ケミカルズ製)の添加量を1.4部に変更した以外は実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
【0055】
[実施例5]
架橋剤(B)として、デュラネートTPA−100(HDIイソシアヌレート、旭化成ケミカルズ製)に代えてコロネートL(TDI系変性物、日本ポリウレタン製)を用いた以外は実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
【0056】
[比較例1]
前記フィルムに対し、50℃で24時間の熟成を行わない(塗布および乾燥のみを行う)こと以外は実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
【0057】
[比較例2]
製造例1で得られた水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)および架橋剤(B)に代えて、酢酸ビニル/ビニルアルコール重合体をオクタデシルイソシアネートと反応させた水酸基を含まない剥離処理剤を用いることと、50℃で24時間の熟成を行わない(塗布および乾燥のみを行う)こと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルムを得た。
【0058】
[比較例3]
製造例1で得られた水酸基含有長鎖アルキルポリマー(A)および架橋剤(B)に代えて、エチレン/ビニルアルコール重合体をオクタデシルイソシアネートと反応させた水酸基を含まない剥離処理剤を用いることと、50℃で24時間の熟成を行わない(塗布および乾燥のみを行う)こと以外は、実施例1と同様にして塗工フィルムを得た。
【0059】
[フィルムの評価方法]
以下の方法により、実施例および比較例で製造した各剥離フィルムの特性を評価した。
【0060】
剥離力
評価対象の剥離フィルムに、幅25mmのアクリル系粘着テープ(製品名ポリエステルテープ31B、日東電工製)を2kgのゴムローラーで圧着して貼り付け、23℃、50%RHの雰囲気下で100g/cmの荷重をかけ、2時間放置し、300cm/minの速度で剥離力を測定した。剥離力が小さい程、剥離性能が優れていることを示す。
【0061】
耐熱性
上記で圧着した試料を150℃の熱風乾燥器に90分間放置し、23℃で放冷後、上記と同じ条件で剥離力を測定した。
【0062】
残留接着率
上記剥離力測定時と同じ条件で作製し、剥離した試験片を、ステンレス板に2kgのゴムローラーで圧着し、貼り付けた。その剥離フィルムを、23℃、50%RHの雰囲気下で2時間放置し、300cm/minの速度で接着力Aを側置した。一方、ステンレス板に、アクリル系粘着テープ(製品名ポリエステルテープ31B、日東電工製)を、上記剥離力測定時と同じ条件で圧着して貼り付け、300cm/minの速度で接着力Bを測定した。その後、接着力A/接着力B×100の式により残留接着率を算出した。残留接着率が高いほど、剥離剤の粘着剤への移行が小さいことを示す。
【0063】
ゲル分率
評価対象の剥離フィルムにおける剥離剤層を基材フィルムから剥がし、前記剥離剤層をテトラヒドロフランに浸漬し、30℃×72時間放置し、ステンレスメッシュでろ過し、残査の重量変化率からゲル分率を算出した。また、ゲル分率が高いほど、前記剥離剤層が溶剤に溶解しにくいこと、すなわち、前記剥離剤層が耐溶剤性に優れていることを示す。
【0064】
また、参考として、剥離剤層形成用組成物(塗工液)の液安定性も評価した。すなわち、各実施例および比較例で用いた剥離剤層形成用組成物(塗工液)を、20℃または40℃でそれぞれ24時間放置し、その後の状態を目視で評価した。なお、前記各剥離剤層形成用組成物(塗工液)は、ポリマー濃度が約2重量%である。
【0065】
上記評価方法による評価結果を、下記表1にまとめて示す。
【表1】
【0066】
上記表1に示したとおり、50℃で24時間の加熱工程(熟成)を行った実施例1〜5は、150℃熱処理後の剥離力(N/25mm)がいずれも低く、150℃熱処理後であっても剥離性能が優れていることが確認された。特に、実施例1〜3は、実施例4および5に対し、さらに、150℃熱処理後の剥離力(耐熱性)が優れていた。なお、架橋剤(B)として、実施例1〜4では、1分子内にイソシアネート基を3つ有するHDIイソシアヌレートを用いたが、前述のとおり、実施例4は、実施例1〜3と比較して架橋剤(B)の添加量が少ない。また、実施例5では、1分子内にイソシアネート基を2つ有するTDI系変性物を用いた。
【0067】
一方、50℃で24時間の加熱工程(熟成)を行わなかった比較例1〜3は、実施例1〜5と比較すると、150℃熱処理後の剥離力(N/25mm)がいずれもきわめて高く、剥離性能が低下していた。
【0068】
また、上記表1に示したとおり、50℃で24時間の加熱工程(熟成)を行った実施例1〜5は、残留接着率が90〜98%と、いずれもきわめて高かった。これに対し、50℃で24時間の加熱工程(熟成)を行わない比較例1〜3は、残留接着力が34〜35%と低かった。
【0069】
さらに、上記表1に示したとおり、50℃で24時間の加熱工程(熟成)を行った実施例1〜5は、剥離剤層のゲル分率がいずれもきわめて高く、優れた耐溶剤性を有することが示された。これに対し、50℃で24時間の加熱工程(熟成)を行わない比較例1〜3は、剥離剤層のゲル分率がほぼ0%であり、耐溶剤性が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上、説明したとおり、本発明の製造方法によれば、100℃を超える高温条件下でも剥離力上昇(剥離性の低下)が小さく、かつ、剥離剤層の耐溶剤性に優れた剥離フィルムを製造可能である。また、本発明の剥離フィルムは、前記本発明の製造方法により製造されることで、100℃を超える高温条件下でも剥離力上昇(剥離性の低下)が小さく、かつ、剥離剤層の耐溶剤性に優れている。本発明の剥離フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、粘着テープ、転写フィルム、離型フィルムなどの、耐熱性および耐溶剤性が要求される用途に特に適している。