(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284315
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】非接触給電システム、受信機器、およびアナログ回路
(51)【国際特許分類】
H04B 5/02 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
H04B5/02
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-168016(P2013-168016)
(22)【出願日】2013年8月13日
(65)【公開番号】特開2015-37229(P2015-37229A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100122910
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 広之
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴志
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 竜也
【審査官】
金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/046104(WO,A1)
【文献】
特開平04−265039(JP,A)
【文献】
特開2010−074950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電方式で送信機器から受信機器に電力を給電する非接触給電システムであって、
前記送信機器は、
送信コイルと、
前記送信コイルに電磁界の電力信号を発生させるドライバと、
前記送信コイルを介してFSK信号を送信するFSK変調部と
を備え、
前記受信機器は、
受信コイルと、
前記受信コイルを介して受信されるFSK信号を復調するFSK復調部と、
前記FSK復調部により復調されたFSK信号が入力されるコントローラと
を備え、
前記FSK復調部がアナログ回路で構成され、
前記FSK復調部は、
前記受信コイルを介して受信される第1レベル信号と第2レベル信号とからなる前記FSK信号が入力され、前記第1レベル信号に基づく第1矩形波信号と前記第2レベル信号に基づく第2矩形波信号とからなる矩形波信号を生成する矩形波生成回路と、
前記矩形波信号の周波数の変化を電圧に変換し、前記第1矩形波信号に基づく第1F/V変換信号と前記第2矩形波信号に基づく第2F/V変換信号とからなるF/V変換信号として出力するF/V変換回路と、
前記F/V変換信号の周波数の変化分を通過させ、BPF処理信号として出力するBPFと、
前記BPF処理信号の振幅を増幅して増幅信号として出力する増幅回路と、
前記増幅回路からの前記増幅信号に基づいて、前記周波数の変化の有無を“0”または“1”の信号であるFSK出力信号として出力する出力判定回路と
を備え、
前記増幅回路は、前記第2F/V変換信号が前記第1F/V変換信号に切り替わる第1期間において第1増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記第1F/V変換信号が前記第2F/V変換信号に切り替わる第2期間において第2増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、
前記出力判定回路は、前記第1増幅波形の終端のエッジから次の第2増幅波形の終端のエッジまでを第3期間とし、前記第2増幅波形の終端のエッジから次の第1増幅波形の終端のエッジまでを第4期間として、前記第3期間の前記FSK出力信号と前記第4期間の前記FSK出力信号のうちの一方を前記“0”の信号として出力し、他方を前記“1”の信号として出力することを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記FSK信号を復調する処理は、前記送信機器と前記受信機器との間の認証・設定フェーズの後であり且つ前記送信機器から前記受信機器への送電フェーズの前である前記第3期間に行われることを特徴とする請求項1に記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記第3期間は、前記第1期間の終了時点から前記第2期間の終了時点までの期間であることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記第4期間は、前記第2期間の終了時点から次の第2期間の終了時点までの期間であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
入力される基本周波数によって前記F/V変換回路のゲインを調整するゲイン調整回路を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項6】
前記入力される整流波形は、sin波であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項7】
前記受信機器は、非接触給電IC、携帯電話、タブレット端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器のいずれかに搭載されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の非接触給電システム。
【請求項8】
非接触給電方式で送信機器から電力を給電される受信機器であって、
受信コイルと、
前記受信コイルを介して受信されるFSK信号を復調するFSK復調部と、
前記FSK復調部により復調されたFSK信号が入力されるコントローラと
を備え、
前記FSK復調部がアナログ回路で構成され、
前記FSK復調部は、
前記受信コイルを介して受信される第1レベル信号と第2レベル信号とからなる前記FSK信号が入力され、前記第1レベル信号に基づく第1矩形波信号と前記第2レベル信号に基づく第2矩形波信号とからなる矩形波信号を生成する矩形波生成回路と、
前記矩形波信号の周波数の変化を電圧に変換し、前記第1矩形波信号に基づく第1F/V変換信号と前記第2矩形波信号に基づく第2F/V変換信号とからなるF/V変換信号として出力するF/V変換回路と、
前記F/V変換信号の周波数の変化分を通過させ、BPF処理信号として出力するBPFと、
前記BPF処理信号の振幅を増幅して増幅信号として出力する増幅回路と、
前記増幅回路からの前記増幅信号に基づいて、前記周波数の変化の有無を“0”または“1”の信号であるFSK出力信号として出力する出力判定回路と
を備え、
前記増幅回路は、前記第2F/V変換信号が前記第1F/V変換信号に切り替わる第1期間において第1増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記第1F/V変換信号が前記第2F/V変換信号に切り替わる第2期間において第2増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、
前記出力判定回路は、前記第1増幅波形の終端のエッジから次の第2増幅波形の終端のエッジまでを第3期間とし、前記第2増幅波形の終端のエッジから次の第1増幅波形の終端のエッジまでを第4期間として、前記第3期間の前記FSK出力信号と前記第4期間の前記FSK出力信号のうちの一方を前記“0”の信号として出力し、他方を前記“1”の信号として出力することを特徴とする受信機器。
【請求項9】
前記FSK信号を復調する処理は、前記送信機器と前記受信機器との間の認証・設定フェーズの後であり且つ前記送信機器から前記受信機器への送電フェーズの前である前記第3期間に行われることを特徴とする請求項8に記載の受信機器。
【請求項10】
前記第3期間は、前記第1期間の終了時点から前記第2期間の終了時点までの期間であることを特徴とする請求項8または9に記載の受信機器。
【請求項11】
前記第4期間は、前記第2期間の終了時点から次の第2期間の終了時点までの期間であることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の受信機器。
【請求項12】
入力される基本周波数によって前記F/V変換回路のゲインを調整するゲイン調整回路を備えることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の受信機器。
【請求項13】
前記入力される整流波形は、sin波であることを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載の受信機器。
【請求項14】
非接触給電IC、携帯電話、タブレット端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器のいずれかに搭載されることを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の受信機器。
【請求項15】
非接触給電方式で送信機器から電力を給電される受信機器において用いられ、前記送信機器から受信コイルを介して受信される第1レベル信号と第2レベル信号とからなるFSK信号を復調するアナログ回路であって、
前記第1レベル信号に基づく第1矩形波信号と前記第2レベル信号に基づく第2矩形波信号とからなる矩形波信号を生成する矩形波生成回路と、
前記矩形波信号の周波数の変化を電圧に変換し、前記第1矩形波信号に基づく第1F/V変換信号と前記第2矩形波信号に基づく第2F/V変換信号とからなるF/V変換信号として出力するF/V変換回路と、
前記F/V変換信号の周波数の変化分を通過させ、BPF処理信号として出力するBPFと、
前記BPF処理信号の振幅を増幅して増幅信号として出力する増幅回路と、
前記増幅回路からの前記増幅信号に基づいて、前記周波数の変化の有無を“0”または“1”の信号であるFSK出力信号として出力する出力判定回路と
を備え、
前記増幅回路は、前記第2F/V変換信号が前記第1F/V変換信号に切り替わる第1期間において第1増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記第1F/V変換信号が前記第2F/V変換信号に切り替わる第2期間において第2増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、
前記出力判定回路は、前記第1増幅波形の終端のエッジから次の第2増幅波形の終端のエッジまでを第3期間とし、前記第2増幅波形の終端のエッジから次の第1増幅波形の終端のエッジまでを第4期間として、前記第3期間の前記FSK出力信号と前記第4期間の前記FSK出力信号のうちの一方を前記“0”の信号として出力し、他方を前記“1”の信号として出力することを特徴とするアナログ回路。
【請求項16】
前記FSK信号を復調する処理は、前記送信機器と前記受信機器との間の認証・設定フェーズの後であり且つ前記送信機器から前記受信機器への送電フェーズの前である前記第3期間に行われることを特徴とする請求項15に記載のアナログ回路。
【請求項17】
前記第4期間は、前記第2期間の終了時点から次の第2期間の終了時点までの期間であることを特徴とする請求項15または16に記載のアナログ回路。
【請求項18】
入力される基本周波数によって前記F/V変換回路のゲインを調整するゲイン調整回路を備えることを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載のアナログ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電システム、受信機器、およびアナログ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やタブレット等の電子機器に電力を供給する非接触給電方式(ワイヤレス給電方式、無接点電力伝送方式ともいう。)が普及し始めている。異なるメーカーの製品間の相互利用を促進するためにWPC(Wireless Power Consortium)が組織され、WPCにより国際標準規格であるQi(チー)規格が策定された。
【0003】
このような非接触給電システムは、送信機器(TX)と受信機器(RX)とを備える(例えば、特許文献1、2参照)。送信機器(TX)と受信機器(RX)との間は、整流波形を介して通信を行う。送信機器(TX)から受信機器(RX)への通信は、FSK(Frequency Shift Keying)信号で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−38854号公報
【特許文献2】特開2012−80772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非接触給電ICで用いられるFSK信号は、110kHz〜205kHzの基本周波数に対して、数μsecの変化を“0”または“1”の信号に変換する必要がある。そこで、数μsecの変化を認識するために、高周波のサンプリングクロックやスイッチドキャパシタ方式等が採用されるが、このような従来技術によると、クロック制御が複雑化するのはもちろん、消費電力や回路規模が増加する課題があった。
【0006】
本発明の目的は、FSK通信を低消費電力・省スペースで実現することができる非接触給電システム、受信機器、およびアナログ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、非接触給電方式で送信機器から受信機器に電力を給電する非接触給電システムであって、前記送信機器は、送信コイルと、前記送信コイルに電磁界の電力信号を発生させるドライバと、前記送信コイルを介してFSK信号を送信するFSK変調部とを備え、前記受信機器は、受信コイルと、前記受信コイルを介して受信されるFSK信号を復調するFSK復調部と、前記FSK復調部により復調されたFSK信号が入力されるコントローラとを備え、前記FSK復調部がアナログ回路で構成され
、前記FSK復調部は、前記受信コイルを介して受信される第1レベル信号と第2レベル信号とからなる前記FSK信号が入力され、前記第1レベル信号に基づく第1矩形波信号と前記第2レベル信号に基づく第2矩形波信号とからなる矩形波信号を生成する矩形波生成回路と、前記矩形波信号の周波数の変化を電圧に変換し、前記第1矩形波信号に基づく第1F/V変換信号と前記第2矩形波信号に基づく第2F/V変換信号とからなるF/V変換信号として出力するF/V変換回路と、前記F/V変換信号の周波数の変化分を通過させ、BPF処理信号として出力するBPFと、前記BPF処理信号の振幅を増幅して増幅信号として出力する増幅回路と、前記増幅回路からの前記増幅信号に基づいて、前記周波数の変化の有無を“0”または“1”の信号であるFSK出力信号として出力する出力判定回路とを備え、前記増幅回路は、前記第2F/V変換信号が前記第1F/V変換信号に切り替わる第1期間において第1増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記第1F/V変換信号が前記第2F/V変換信号に切り替わる第2期間において第2増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記出力判定回路は、前記第1増幅波形の終端のエッジから次の第2増幅波形の終端のエッジまでを第3期間とし、前記第2増幅波形の終端のエッジから次の第1増幅波形の終端のエッジまでを第4期間として、前記第3期間の前記FSK出力信号と前記第4期間の前記FSK出力信号のうちの一方を前記“0”の信号として出力し、他方を前記“1”の信号として出力する非接触給電システムが提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、非接触給電方式で送信機器から電力を給電される受信機器であって、受信コイルと、前記受信コイルを介して受信されるFSK信号を復調するFSK復調部と、前記FSK復調部により復調されたFSK信号が入力されるコントローラとを備え、前記FSK復調部がアナログ回路で構成され
、前記FSK復調部は、前記受信コイルを介して受信される第1レベル信号と第2レベル信号とからなる前記FSK信号が入力され、前記第1レベル信号に基づく第1矩形波信号と前記第2レベル信号に基づく第2矩形波信号とからなる矩形波信号を生成する矩形波生成回路と、前記矩形波信号の周波数の変化を電圧に変換し、前記第1矩形波信号に基づく第1F/V変換信号と前記第2矩形波信号に基づく第2F/V変換信号とからなるF/V変換信号として出力するF/V変換回路と、前記F/V変換信号の周波数の変化分を通過させ、BPF処理信号として出力するBPFと、前記BPF処理信号の振幅を増幅して増幅信号として出力する増幅回路と、前記増幅回路からの前記増幅信号に基づいて、前記周波数の変化の有無を“0”または“1”の信号であるFSK出力信号として出力する出力判定回路とを備え、前記増幅回路は、前記第2F/V変換信号が前記第1F/V変換信号に切り替わる第1期間において第1増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記第1F/V変換信号が前記第2F/V変換信号に切り替わる第2期間において第2増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記出力判定回路は、前記第1増幅波形の終端のエッジから次の第2増幅波形の終端のエッジまでを第3期間とし、前記第2増幅波形の終端のエッジから次の第1増幅波形の終端のエッジまでを第4期間として、前記第3期間の前記FSK出力信号と前記第4期間の前記FSK出力信号のうちの一方を前記“0”の信号として出力し、他方を前記“1”の信号として出力する受信機器が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
非接触給電方式で送信機器から電力を給電される受信機器において用いられ、前記送信機器から受信コイルを介して受信される第1レベル信号と第2レベル信号とからなるFSK信号を復調するアナログ回路であって、前記第1レベル信号に基づく第1矩形波信号と前記第2レベル信号に基づく第2矩形波信号とからなる矩形波信号を生成する矩形波生成回路と、前記矩形波信号の周波数の変化を電圧に変換し、前記第1矩形波信号に基づく第1F/V変換信号と前記第2矩形波信号に基づく第2F/V変換信号とからなるF/V変換信号として出力するF/V変換回路と、前記F/V変換信号の周波数の変化分を通過させ、BPF処理信号として出力するBPFと、前記BPF処理信号の振幅を増幅して増幅信号として出力する増幅回路と、前記増幅回路からの前記増幅信号に基づいて、前記周波数の変化の有無を“0”または“1”の信号であるFSK出力信号として出力する出力判定回路とを備え、前記増幅回路は、前記第2F/V変換信号が前記第1F/V変換信号に切り替わる第1期間において第1増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記第1F/V変換信号が前記第2F/V変換信号に切り替わる第2期間において第2増幅波形からなる前記増幅信号を出力し、前記出力判定回路は、前記第1増幅波形の終端のエッジから次の第2増幅波形の終端のエッジまでを第3期間とし、前記第2増幅波形の終端のエッジから次の第1増幅波形の終端のエッジまでを第4期間として、前記第3期間の前記FSK出力信号と前記第4期間の前記FSK出力信号のうちの一方を前記“0”の信号として出力し、他方を前記“1”の信号として出力するアナログ回路が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、FSK通信を低消費電力・省スペースで実現することができる非接触給電システム、受信機器、およびアナログ回路を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】基本技術に係る非接触給電システムの模式的ブロック構成図。
【
図2】基本技術に係る非接触給電システムの送信機器(TX)の動作シーケンス図。
【
図3】比較例に係る受信機器(RX)が備えるFSK復調部の模式的ブロック構成図。
【
図4】実施の形態に係る非接触給電システムの模式的ブロック構成図。
【
図5】実施の形態に係る非接触給電システムの送信機器(TX)の動作シーケンス図。
【
図6】実施の形態に係る受信機器(RX)が備えるFSK復調部(アナログ回路)の模式的ブロック構成図。
【
図7】実施の形態に係る受信機器(RX)が備えるFSK復調部(アナログ回路)の内部波形例であって、(a)元のFSK信号Sf、(b)矩形波Sf1、(c)F/V変換波形Sf2、(d)BPF後波形Sf3、(e)増幅波形Sf4、(f)FSK出力波形Sf5。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
(基本技術:非接触給電システム)
基本技術に係る非接触給電システム100の模式的ブロック構成は、
図1に示すように表される。
図1に示すように、非接触給電システム100は、Qi規格に準拠したシステムであり、送信機器(TX)200と、受信機器(RX)300とを備える。
【0015】
送信機器(TX)200は、送信コイル(1次コイル)202と、ドライバ204と、コントローラ206と、復調器208とを備える。ドライバ204には、Hブリッジ回路(フルブリッジ回路)またはハーフブリッジ回路が含まれる。ドライバ204は、送信コイル202に駆動信号S1(具体的にはパルス信号)を印加し、送信コイル202に流れる駆動電流により、送信コイル202に電磁界の電力信号S2を発生させる。コントローラ206は、送信機器(TX)200全体を統括的に制御するものであり、具体的には、ドライバ204のスイッチング周波数、またはスイッチングのデューティ比を制御することにより、送信電力を変化させる。
【0016】
Qi規格では、送信機器(TX)200と受信機器(RX)300との間で通信プロトコルが定められており、受信機器(RX)300から送信機器(TX)200に対して制御信号S3による情報の伝達が可能となっている。この制御信号S3は、後方散乱変調(Backscatter modulation)を利用して、AM(Amplitude Modulation)変調された形で、受信コイル(2次コイル)302から送信コイル202に送信される。この制御信号S3には、例えば、受信機器(RX)300に対する電力供給量を指示する電力制御データや、受信機器(RX)300の固有の情報を示すデータ等が含まれる。復調器208は、送信コイル202の電流または電圧に含まれる制御信号S3を復調する。コントローラ206は、復調された制御信号S3に含まれる電力制御データに基づいてドライバ204を制御する。
【0017】
受信機器(RX)300は、受信コイル302と、整流回路304と、コンデンサ306と、変調器308と、負荷回路310と、コントローラ312と、電源回路314とを備える。受信コイル302は、送信コイル202からの電力信号S2を受信するとともに、制御信号S3を送信コイル202に対して送信する。整流回路304およびコンデンサ306は、電力信号S2に応じて受信コイル302に誘起される電流S4を整流・平滑化し、直流電圧に変換する。電源回路314は、送信機器(TX)200から供給された電力を利用して図示しない2次電池を充電し、または直流電圧Vdcを昇圧あるいは降圧し、コントローラ312やその他の負荷回路310に供給する。コントローラ312は、受信機器(RX)300が受けている電力供給量をモニタし、それに応じて、電力供給量を指示する電力制御データを生成する。変調器308は、電力制御データを含む制御信号S3を変調し、受信コイル302のコイル電流を変調することにより、送信コイル202のコイル電流およびコイル電圧を変調する。
【0018】
(基本技術:動作シーケンス)
基本技術に係る非接触給電システム100の送信機器(TX)200の動作シーケンスは、
図2に示すように表される。
図2に示すように、送信機器(TX)200の状態は、選択フェーズ(Selection Phase)φ1と、送電(Power Transfer)フェーズφ2と、認証・設定フェーズ(Identification & Configuration Phase)φ3とに大別される。
【0019】
はじめに、送電フェーズφ2について説明する。送信機器(TX)200から受信機器(RX)300への送電が開始されると(S100)、現在の送電状態を示す制御信号S3が受信機器(RX)300から送信機器(TX)200にフィードバックされる(S102)。これにより、送信機器(TX)200は、制御信号S3に基づいて送電量を調節する(S104)。送電中は、制御信号S3のフィードバックと送電量の調整が繰り返される(S102→S104→S102→…)。充電完了を示す制御信号S3が受信機器(RX)300から送信機器(TX)200に送信されるか(S106)、または、送信機器(TX)200の給電範囲から受信機器(RX)300が取り外されたことにより通信のタイムアウトエラーが発生すると(S110)、そのことを送信機器(TX)200が検知して送電を停止し(S108)、選択フェーズφ1に移行する。
【0020】
次に、選択フェーズφ1について説明する。送信機器(TX)200は、所定の時間間隔(Object detection interval、例えば500msec)毎に電力信号S2を送信し、受信機器(RX)300の有無を確認する(S200)。これをアナログピンフェーズ(Analog Ping Phase)と称する。受信機器(RX)300が検出されると(S202)、認証・設定フェーズφ3に移行する。
【0021】
最後に、認証・設定フェーズφ3について説明する。送信機器(TX)200は、デジタルピンフェーズ(Digital Ping Phase)を実行し(S204)、受信機器(RX)300の個体情報を受信する(S206)。続いて、送電条件に関する情報が受信機器(RX)300から送信機器(TX)200に送信され(S208)、送電フェーズφ2に移行する。
【0022】
(比較例)
比較例に係る受信機器(RX)300が備えるFSK復調部340の模式的ブロック構成は、
図3に示すように表される。この受信機器(RX)300は、
図3に示すように、矩形波生成回路341と、サンプリング回路342と、OSC343とを備え、送信機器(TX)200との間でFSK通信を行う。
【0023】
既に説明した通り、非接触給電ICで用いられるFSK信号は、110kHz〜205kHzの基本周波数に対して、数μsecの変化を“0”または“1”の信号に変換する必要がある。そこで、数μsecの変化を認識するために、高周波のサンプリングクロックやスイッチドキャパシタ方式等が採用される。しかしながら、サンプリング回路342は、例えば、100kHzを数MHzでサンプリングするため、回路規模が大きい。また、OSC343はMHz単位のものであるが、このような高周波のクロックを受信機器(RX)300側で使用するのはFSK復調部340だけである。
【0024】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を基本技術または比較例と異なる点を中心に説明する。
【0025】
本実施の形態でも、
図4に示すように、送信機器(TX)200と受信機器(RX)300との間でFSK通信を行う非接触給電システム100を前提としている。送信機器(TX)200側のFSK変調部240は、FSK信号Sfの元になるFSK元信号Sf0をFSKの方式で変調し、送信コイル202を介してFSK信号Sfを送信する。受信機器(RX)300側のFSK復調部330は、受信コイル302の電流または電圧に含まれるFSK信号Sfを復調してコントローラ312に入力する。本実施の形態では、このような非接触給電システム100においてFSK通信を低消費電力・省スペースで実現するため、以下の構成を採用している。
【0026】
(非接触給電システム)
実施の形態に係る非接触給電システム100は、非接触給電方式で送信機器(TX)200から受信機器(RX)300に電力を給電する非接触給電システム100であって、送信機器(TX)200は、送信コイル202と、送信コイル202に電磁界の電力信号を発生させるドライバ204と、送信コイル202を介してFSK信号Sfを送信するFSK変調部240とを備え、受信機器(RX)300は、受信コイル302と、受信コイル302を介して受信されるFSK信号Sfを復調するFSK復調部330と、FSK復調部330により復調されたFSK信号Sf(Sf5)が入力されるコントローラ312とを備え、FSK復調部330がアナログ回路で構成される。以下、このアナログ回路の符号として、FSK復調部330と同じ符号330を用いる場合がある。
【0027】
具体的には、アナログ回路330は、入力される周波数の変化を電圧に変換するF/V変換回路332と、入力される周波数の変化分を出力するBPF(Band Pass Filter)333と、入力される周波数の変化の有無を“0”または“1”の信号で出力する出力判定回路335とを備えても良い。このように、入力されたFSK信号SfをF/V変換し、BPFを通過させ、出力バッファを介して出力すれば、高周波のサンプリングクロックを用いずに数μsecの変化を認識することが可能である。
【0028】
また、F/V変換回路332の前段に、入力される整流波形を矩形波にする矩形波生成回路331を備えても良い。これにより、入力される整流波形(sin波)が後段で処理しやすくなる。
【0029】
また、出力判定回路335の前段に、入力される周波数の変化分を増幅する増幅回路334を備えても良い。これにより、入力される周波数の変化分が増幅されるため、FSK復調の精度を向上させることができる。
【0030】
また、入力される基本周波数によってF/V変換回路332のゲインを調整するゲイン調整回路336を備えても良い。これにより、入力される基本周波数の全範囲に対してF/V変換回路332が動作可能となる。
【0031】
また、FSK通信は、送信機器(TX)200と受信機器(RX)300との間の認証・設定フェーズφ3の後、送信機器(TX)200から受信機器(RX)300への送電フェーズφ2の前に行われても良い。
【0032】
また、受信機器(RX)300は、非接触給電IC、携帯電話、タブレット端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器のいずれかに搭載されても良い。
【0033】
なお、受信機器(RX)300が備えるAM変調器308aの機能は、基本技術に係る変調器308と同様である。すなわち、AM変調器308aは、受信コイル302のコイル電流を変調することにより、送信コイル202のコイル電流およびコイル電圧を変調する。
【0034】
また、送信機器(TX)200が備えるAM復調器208aの機能も、基本技術に係る復調器208と同様である。すなわち、AM復調器208aは、送信コイル202の電流または電圧に含まれるAM変調された信号を復調してコントローラ206に渡す。
【0035】
(動作シーケンス)
実施の形態に係る非接触給電システム100の送信機器(TX)200の動作シーケンスは、
図5に示すように表される。例えば、
図5に示すように、FSK通信は、送信機器(TX)200と受信機器(RX)300との間の認証・設定フェーズφ3の後、送信機器(TX)200から受信機器(RX)300への送電フェーズφ2の前に行われても良い。
【0036】
すなわち、送電条件に関する情報が受信機器(RX)300から送信機器(TX)200に送信されると(S208)、FSK通信フェーズφ4に移行する(S210)。その後、FSK通信が終了すると、送電フェーズφ2に移行して、送信機器(TX)200から受信機器(RX)300への送電が開始される(S100)。その他の動作については基本技術と同様である。
【0037】
(FSK復調部:アナログ回路)
実施の形態に係る受信機器(RX)300が備えるFSK復調部330の模式的ブロック構成は、
図6に示すように表される。
図6に示すように、FSK復調部330はアナログ回路で構成され、矩形波生成回路331と、F/V変換回路332と、BPF333と、増幅回路334と、出力判定回路335と、ゲイン調整回路336とを備える。このようなアナログ回路330はICとして実現され、受信機器(RX)300に搭載される。
【0038】
矩形波生成回路331は、入力される整流波形(sin波)を後段で処理しやすいように矩形波Sf1にして出力する。F/V変換回路332は、入力される矩形波Sf1の周波数の変化を電圧に変換し、F/V変換波形Sf2として出力する。BPF333は、入力されるF/V変換波形Sf2の周波数の変化分を通過させ、BPF後波形Sf3として出力する。増幅回路334は、入力されるBPF後波形Sf3が微少振幅(例えば数十mV程度)であるため、入力されるBPF後波形Sf3の周波数の変化分を例えば100mV程度に増幅して増幅波形Sf4を出力する。出力判定回路335は、入力される増幅波形Sf4の周波数の変化の有無を“0”または“1”の信号であるFSK出力波形Sf5として出力する。ゲイン調整回路336は、入力される基本周波数の全範囲に対応できるように、入力される基本周波数によってF/V変換回路332のゲインを自動調整する。
【0039】
(波形例)
実施の形態に係る受信機器(RX)300が備えるFSK復調部330の内部波形例は、
図7に示すように表される。
図7(a)は、FSK信号Sfの元になるFSK元信号Sf0である。このFSK元信号Sf0は、送信機器(TX)200側のコントローラ206から出力される信号である。
図7(b)は、矩形波生成回路331から出力される矩形波Sf1である。
図7(c)は、F/V変換回路332から出力されるF/V変換波形Sf2である。
図7(d)は、BPF333から出力されるBPF後波形Sf3である。
図7(e)は、増幅回路334から出力される増幅波形Sf4である。
図7(f)は、出力判定回路335から出力されるFSK出力波形Sf5である。
【0040】
図7(a)に示すように、FSK元信号Sf0は、期間T1においてハイレベル、期間T2においてローレベルであるとする。また、
図7(b)に示すように、期間T1におけるFSK信号Sf(矩形波Sf1)の周波数F1は例えば180kHzであり、期間T2におけるFSK信号Sfの周波数F2は例えば175kHzである。この場合、
図7(c)(d)に示すように、周波数F1と周波数(基本周波数)F2が切り替わる期間T3と期間T4において周波数の変化分が検出された後、
図7(e)に示すように、検出された周波数の変化分が増幅される。その結果、
図7(f)に示すように、期間T5(期間T3の終了時点から期間T4の終了時点まで)はFSK出力波形Sf5として “1”の信号が出力され、また、期間T6(期間T4の終了時点から次の期間T3の終了時点まで)はFSK出力波形Sf5として “0”の信号が出力される。このようなハイレベルとローレベルの信号はコントローラ312に入力され、コントローラ312によって処理される。
【0041】
以上のように、本実施の形態によれば、FSK復調部330がアナログ回路で構成されるため、高周波のサンプリングクロックが不要である。これにより、回路規模の大きいサンプリング回路342やMHz単位のOSC343が不要となるため、低消費電力化や省スペース化、更には設計の容易化を図ることが可能となる。また、FSK復調部330をアナログ回路で構成すると、非接触給電においてFSK通信する場合でも、FSK復調部330以外は既存の回路を用いることができるという効果もある。
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、FSK通信を低消費電力・省スペースで実現することができる非接触給電システム、受信機器、およびアナログ回路を提供することが可能である。
【0043】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0044】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る非接触給電システムは、非接触給電方式で電力を供給する様々なシステムに利用することができる。また、本発明に係る受信機器は、非接触給電IC、携帯電話、タブレット端末、スマートホン、オーディオプレイヤ、ゲーム機器等の電子機器に利用することができる。また、本発明に係るアナログ回路は、FSK信号を復調するためのFSK復調IC等に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
100…非接触給電システム
200…送信機器(TX)
202…送信コイル
204…ドライバ
240…FSK変調部
300…受信機器(RX)
302…受信コイル
312…コントローラ
304…整流回路
330…FSK復調部(アナログ回路)
331…矩形波生成回路
332…F/V変換回路
333…BPF
334…増幅回路
335…出力判定回路
336…ゲイン調整回路
φ1…選択フェーズ
φ2…送電フェーズ
φ3…認証・設定フェーズ
φ4…FSK通信フェーズ