(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パターン形成されたフィルム、プレカットシートおよび接着剤層が、ポリ(メチルメタクリレート)などのアクリルポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリシクロオレフィンおよび他の非晶質オレフィンポリマー、ポリアミド、ポリイミド、スチレン系物質、ポリウレタン、ポリスルホンおよびこれらのコポリマーまたはブレンドをはじめとするが、これらに限定されるものではない光透過性ポリマーを含む、請求項1に記載の導光板。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)は、コスト面および性能面での改良が続けられ、多くのコンピュータ、器具およびエンターテイメント用途に好ましいディスプレイ技術になっている。典型的なLCD携帯電話、ノートブック機およびモニタは、光源からの光を受け取り、その光をLCDにわたってほぼ均一に再分配するための導光板を含む。既存の導光板の厚みは、典型的には、0.8mm〜2mmである。導光板は、光源、典型的には、冷陰極蛍光管(CCFL)または複数の発光ダイオード(LED)と効果的に結合し、より多くの光を見る者へ方向変換するために十分な厚みのものでなければならない。また、一般に、従来の射出成形プロセスを用いて約0.8mmより薄い厚みで約60mmを超える幅または長さの導光板を製造するのは困難であるとともに、コストがかかる。一方で、一般に、LCDの全体的な厚みおよび重量を低減するために、特に、LEDのサイズが小型化するにつれ、導光板をスリム化することが望まれている。このように、最適な光利用効率、低い製造コスト、薄さおよび明るさを達成するためには、これらの相反する要求の間でバランスを取る必要がある。しかしながら、比較的大きな寸法(典型的には、300mmを超える対角線長)の多くのLCDおよび一般的な照明ライティングシステムでは、典型的に、2mmより厚みのある比較的厚い導光板が必要とされる。このような大きな厚みは、寸法および機械的剛性の要求によって、ならびに、これらの大型のライティングシステムに最適なより大きなサイズのLEDによって要求される場合が多い。
【0003】
米国特許出願公開第2011/0242847号に開示されている押出ロール成形プロセスは、ロールツーロール方式で比較的高速のライン速度で薄い導光板を製造する有効な手段を提供する。これら押出キャストプロセスは、パターン形成された導光板の厚みが約1mmを超えると有効ではなくなる。このように厚み範囲が大きくなると、典型的なプロセス条件下において光取り出しのマイクロパターンの複製忠実度が非常に低くなるとともに、ライン速度が非常に遅くなる。比較的厚みのある導光板および他のタイプの厚みのあるマイクロパターン形成された光学フィルムにおいても押出ロール成形プロセスの効率を発揮させるためには、比較的高速のライン速度および良好な製造効率を維持しながら、所望のマイクロパターンの良好な複製忠実度を達成する際の問題の一部を解消する方法で、このプロセスを修正する明確な必要性がある。
【0004】
従来選択されていた方法は、射出成形プロセスおよびその何らかの変形方法であった。このプロセスにおいては、マイクロマシン加工されたパターンのある表面を有する型のキャビティに、高速かつ高圧で高温ポリマー溶融物が射出され、このパターンは、型の充填および冷却段階中に固化した成形板の表面上に転写される。射出成形技術は、横寸法(幅および/または長さ)が比較的短い(≦約300mm)場合には非常に有効である。しかしながら、比較的大きい導光板の場合、射出成形プロセスには非常に大きな型および著しいレベルの射出圧力が必要になり、このレベルの射出圧力により、典型的に、複製の低下、高残留応力および成形プレートにおける複屈折が生じることで、劣った寸法安定性および低い製造歩留まりをもたらす。また、射出成形は、バッチプロセスであり、したがって、量産運転にはあまり効率的ではない。厚みのある導光板を製造するために用いられる別のアプローチは、インクジェット、スクリーン印刷または他のタイプの印刷方法を用いて、平らな押出キャストシートの片面上に離散した(「ドット状の」)マイクロパターンを印刷することである。このプロセスの欠点は、押出キャスト工程では、コストのかかる印刷工程がさらに必要になるとともに、離散したマイクロ取り出し部分の形状および寸法が予め決められて十分に制御されないため、光の取り出しおよび方向変換(redirection)が非効率的なことである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、バックライトアセンブリ32の部品として導光板10を使用するディスプレイ装置100が示されている。光源アセンブリ20からの光が、入光面12を通って導光板10に結合される。LCDパネルなどのディスプレイパネル30が、バックライトアセンブリ32にある導光板10の出光面14から放出された光を変調する。また、
図1においてフィルム22および24として示されている1つ以上の追加のフィルムが、導光板10から放出される光の方向、均一性または他の特性を改善するため、またはLCDパネル30を通過する光に対して偏光を与えるために、バックライトアセンブリ32の部品として設けられてもよい。ディスプレイパネルを通る光の経路は、破線矢印Rで示されている。出光面14とは反対側のその底面16上に与えられるが、典型的には、これに限定されたものではない場所に与えられた離散した微小フィーチャのアレイによって、導光板10による光の取り出しおよび方向変換が促される。また、光源からの光取り出し効率を改善するために、通常、フィーチャ面16に隣接して導光板10の下方に光反射板が配置される。出光面14および底面またはフィーチャ面16は、導光板の主面として見なされる。
【0010】
LCDバックライトおよび一般的な照明デバイスにある導光板またはフィルムは、点状光源、発光ダイオード(LED)などの複数の点状光源または冷陰極蛍光管(CCFL)などの線状光源からの放射光を平面または局面の発光面に変換する一般的な機能を有する。光が光源から効率的に取り出され、できるだけ均一に出光面から放出されることが望ましい。
【0011】
図2Aおよび
図2Bに示すように、導光板10は、光源20aから放出される光に合する入光面12と、導光板から光を放出する出光面14と、入光面12の反対側にある端面13と、出光面14の反対側にある底面16と、2つの側面15aおよび15bとを有する。光源20aは、CCFLなどの単一の線状光源、LEDなどの点状光源または複数の点状光源、例えば、LEDアレイでありうる。
【0012】
本発明の導光板は、離散した要素として形作られて導光板の一方の主面上に配置された光取り出しマイクロ構造と、場合によっては、連続プリズムとして概して形作られて導光板の反対の主面上に配置される光方向変換マイクロ構造とを使用する。真プリズムは少なくとも2つの平坦面を有する。しかしながら、すべての実施形態において、光方向変換構造の1つ以上の表面が平面である必要はなく、曲面であっても、または複数の部分を有してもよく、本明細書において、より一般的な用語である「光方向変換構造」が使用される。典型的には、光取り出しマイクロパターン217は底面16上に配置されるが、光方向変換構造は、存在すれば、導光板の出光面14上に配置されるが、これに限定されるわけではない。
【0013】
導光板10は、その底面16上のドットで表される離散した要素のマイクロパターン217を有する。パターン217は、光源20aのラインに対してそれぞれ平行および直交である長さL
0および幅W
0を有する。一般に、パターン217は、長さ方向、幅方向または両方の方向において、導光板10より小さい寸法を有する。すなわち、L
0≦LおよびW
0≦Wである。離散した要素のサイズおよび数は、長さ方向および幅方向に沿って変動するものであってもよい。あるいは、パターン217は、導光板10の出光面14上にありうる。
【0014】
一般に、離散した要素D
2D(x,y)の密度は、位置(x,y)とともに変動する。実際には、密度関数D
2D(x,y)は長さ方向に沿って大きく変動し、幅方向に沿って小さく変動する。簡略化するために、1次元密度関数D(x)は、通常、離散した要素のパターンを特徴付けるために使用され、例えば、
【数1】
のように計算されうる。また、他の形態の1次元(1D)密度関数が、2D密度関数D
2D(x,y)から簡単に導き出されうる。以下、独立変数xは、1次元密度関数D(x)を計算するために使用可能な任意のものとして解釈されるべきである。例えば、光源が点状であって、導光板の角付近に設置される場合には、xは原点Oからの半径でありうる。
【0015】
図3Aは、幅方向と平行な方向に見た場合の、導光板10、方向変換フィルム(turning film)22や拡散体のようなプリズムフィルム、および反射フィルム142の拡大側面図を示す。場合によっては、導光板10の出光面14上には複数のプリズム216があり、底面16には複数の離散した要素227がある。
図3Bは、長さ方向に沿って見た場合の導光板10の拡大側面図を示す。出光面14上の各プリズム216は、一般に、頂角α
0を有する。プリズムは丸い頂部を有していてもよく、レンズ状のパターンと置き換えられてもよい。
図3Cは、プリズム216の上面図である。この実施例において、プリズムは互いに平行である。
図3Dに示す別の実施例において、プリズム216は曲線状または波形状である。本発明において、任意の既知の修正を加えたプリズムまたはレンズ状の(丸い)要素が使用されてもよい。実施例には、可変高さ、可変頂角および可変ピッチを有するプリズムが含まれるが、これらに限定されるものではない。しかしながら、最も一般的には、導光板の出光面は平坦であり、フィーチャがない。
【0016】
図4A−1、
図4A−2および
図4A−3は、それぞれ、本発明に従って使用されうる第1の種類の離散した要素227aの斜視図、上面図および側面図を示す。各離散した要素は、本質的に、三角形セグメント化プリズムである。
図4B−1、
図4B−2および
図4B−3は、それぞれ、本発明に従って使用されうる第2の種類の離散した要素227bの斜視図、上面図および側面図を示す。各離散した要素は、本質的に、平坦頂部を有する三角形セグメント化プリズムである。
図4C−1、
図4C−2および
図4C−3は、それぞれ、本発明に従って使用されうる第3の種類の離散した要素227cの斜視図、上面図および側面図を示す。各離散した要素は、本質的に、丸くされたセグメント化プリズムである。また、円柱、半球および球形部分などの他の既知の形状の離散した要素が使用されうる。これらの形状は、対称形であっても、対称形でなくてもよい。
【0017】
導光板10の厚みに特定の制約はないが、一般に、ディスプレイシステムまたは照明デバイスの厚み要件、導光板に結合される光源のサイズおよび照明システムの一般的な剛性および堅さの要件によって規定される。一般に、携帯電話、タブレットおよびノートブックコンピュータで使用されるような小型ディスプレイの場合、バックライトは比較的薄型の要素を有するものでなければならないため、薄い(<1mm)導光板を要求する。大型のディスプレイ、例えば、テレビ受像機、モニタならびにフラットパネル照明器具およびダウンライトなどの場合、導光板は著しく厚く、典型的には、>1mmでなければならない。薄い導光板の場合、押出ロール成形プロセスなどの一般的なロールツーロール方式の押出キャスト作製方法は、うまく機能し、射出成形やスクリーン印刷などのより確立された製造方法の代替となる低コストのものを与えることが示されている。厚み>約1mmの厚い導光板の場合、光取り出しマイクロパターンの複製が困難であるとともに、押出キャストシステムによるポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などの比較的脆い材料でできた厚いシートまたはスラブの搬送が困難であるため、押出キャスト方法はうまく機能しない。加えて、比較的厚いシートのライン速度は、典型的な溶融押出条件下で非常に遅くなるため、押出キャスト操作のコスト効率が低下する。本発明は、複製忠実度、搬送およびライン速度に関して上述した困難な点のいくつかを回避し、または最小限に抑えながら、比較的厚い導光板(>1mm)の作製に押出ロール成形プロセスを適用することができる作製方法を開示する。
【0018】
作製
本発明は、複合導光板およびその製造方法を提供する。本明細書に記載するこの方法は、特に、ウェブ製造およびロールツーロール操作に適し、本発明の複合導光板の製造に容易に適応可能である。
図5に略図的に示す作製プロセスは、以下の工程を含む。
【0019】
1.押出機310からシート形成ダイ330を通して樹脂を押し出すことによって、必要な光学的および物理的特性を有する光学ポリマーの溶融シート450を作成し、この溶融シートを供給ローラ472から提供されるキャリアフィルム基材474上であって、加圧ローラ478とパターンローラ480との間のニップ内にキャストし、このパターンローラは、キャストされたシートの表面に転写される適切なマイクロパターンを有する。加圧ローラおよびパターンローラは、パターンローラから押出シートの表面に転写されるべきフィーチャの良好な複製を達成するために必要なある表面温度に維持される。ローラ480の表面は、T
PaR>T
g−50℃となるような高温T
PaRに維持され、式中、T
gは押出ポリマー樹脂のガラス転移温度である。加圧ローラであるローラ478は、通常、軟質エラストマー性表面および表面温度T
Pを有し、T
P<T
PaRである。2つのローラ間のニップ圧力Pは、P>8ニュートン/ローラ幅のミリメートルになるように維持される。本発明を実施する際にさまざまなタイプのキャリアフィルムが使用されうるが、キャリアの一般的な例は、可撓性、剛性、堅牢性および低コストの望ましい組み合わせを備えたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムである。キャリアフィルムの使用は、場合によっては任意選択的であるが、一般に、このようなフィルムを使用せずに製造されたフィルムの品質を制御することはさらに困難になる。ニップ領域から出るキャリアフィルム474およびキャストポリマーシート450は、パターンローラ480に優先的に付着して、ニップから下流のある距離で固化するまでに、所望の厚みを有するポリマーシートを形成する。
【0020】
2.固化したパターン形成されたフィルム410は、剥離点481でパターンローラ480から剥離された後、キャリアフィルム474から剥がされ、キャリアフィルムは、パターン形成されたフィルムから分離されると、巻き取りローラ482に巻き取られ、パターン形成されたフィルム410は、制御された張力下でコーティングステーション501に搬送される。パターン形成されたフィルム410の厚みd
1は、典型的には、<1mmであり、好ましくは、押出ロール成形プロセスの最適な範囲内である<0.6mmである。この厚みでは、マイクロパターン217の複製忠実度およびフィルムの搬送およびライン速度が完全に最適化されうる。
【0021】
3.コーティングステーション501で共屈折(co−refractive)接着剤の薄い層505をパターン形成されたフィルム410のパターン形成されていない表面にコーティングする。コーティングされた接着剤層の厚みは、特に制約はないが、望ましくは、<0.1mmである。薄い接着剤層のコーティング方法は、スロットダイ、グラビア、ロールコーティング、ブレードコーティングまたは比較的薄く均一な液体層を可動ウェブに塗布するのに適した他のコーティングプロセスなどのさまざまなコーティングプロセスを含んでもよいが、これらに特に限定されるものではない。硬化および固化後の接着材料の屈折率およびスペクトル特性は、2つの屈折率の差が0.01を超えないように固体のパターン形成されたフィルムのものにごく近く整合したものでなければならない。
【0022】
4.シートフィーダ510を通してコーティングフィルムを搬送することで、必要な厚みd
2および特定の寸法を有し、パターン形成されたフィルム410に光学的にごく近く整合された材料を含むプレカットされたシートまたはスラブ515が、可動ウェブ上のコーティング層上に所定の配列で配置される。シートの屈折率は、3つの層の3つの屈折率のうちのどの2つの差も<0.01であるように、パターン形成されたフィルムおよび固化した接着層の屈折率にごく近く整合される。好ましい実施形態において、シート515およびフィルム410の構成材料は同じであり、シート515はブランクであり、すなわち、その主面のいずれの表面上も平坦でパターン形成されていない。シート515の厚みd
2は、特に制約はないが、それは典型的には、導光板の最終的な特定の厚みに応じて0.5〜10mmの範囲である。
【0023】
5.1つの実施形態において、接着材料がUV硬化性樹脂であれば、積層シート500はUV硬化ステーション520を通って搬送され、このUV硬化ステーション520において、接着剤層を硬化するのに十分な放射線量でUV光によって接着剤層が照射される。UV硬化ステーションは任意選択的であり、かつコーティングされた接着剤が、接着機能および硬化機能を引き起こすために高温を必要とする熱接着剤であれば、熱硬化ステーションと置き換えられてもよい。別の実施形態において、接着剤層は、ステーション520において、ピンチローラまたは可動ウェブに圧力をかける他の方法を用いて、シート515とパターンフィルム410との間に圧力を印加する必要がある感圧接着剤である。さらなる別の実施形態において、パターン形成されたフィルム401は、熱結合によってプレカットシート515に結合され、この熱結合によって、互いに対面する両方の要素の表面が、対応する材料のガラス転移温度より高くまで加熱され、その後、層間の界面で結合を形成するために、ピンチローラなどによって押圧される。この後者の選択肢では、接着剤層をコーティングする必要はないが、結合工程の前にこれら層の表面を予熱しなければならず、このようにしてコーティングステーション501を予熱ステーションと置き換えることができる。
【0024】
6.積層ウェブは、複合導光板の最終的な切断および仕上げを行うための仕上げステーションに搬送される。接着剤層505の厚みが無視できるほど小さいとすると、仕上げられた導光板500の厚みはd〜(d
1+d
2)である。この複合導光板において、接着剤層は、導光板のバルク内に限定され、導光板内を進む光に対して透明であると考えられる。上述したガイドラインに従って積層複合導光板の3つの材料コンポーネントの光学的特性、特に屈折率をごく近く整合させることによって、導光板内を進む光の散乱、導波および吸収損失は最小限に抑えられるため、その光取り出し効率が高まる。好ましい実施形態において、プレカットシート515の主面は平坦であり、パターン形成されていない。別の実施形態において、プレカットシートは、接着剤層と対面する表面とは反対側の表面上に方向変換フィーチャを有する。この場合、可動ウェブ上での位置付け中、プレカットシートの適切な位置合わせが必要な場合がある。
【0025】
材料
LCDバックライトまたは一般的な照明デバイスの導光板に使用するポリマー材料の選択肢は、導波路およびLCDの必要とされる光学的および物理的性能要求に従う。一般に、この材料は、いくつかある要求の中でも特に、非常に高い光透過率、非常に低い色度、良好な環境的および寸法的安定性ならびに高い耐摩耗性を有するものでなければならない。加えて、この材料は、溶融加工可能なものでなければならず、この製品クラスのコスト要求に見合うために、比較的安価なものでなければならない。これらの厳しい要求は、ポリマー樹脂の選択の幅を非常に少ない材料の選択肢に限定する。LCDおよび一般的な照明導光板において今日使用されている2つの主要な樹脂クラスは、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびビスフェノールAポリカーボネート(PC)である。これらの材料の各々は特別な強度を有するが、それぞれには多くの深刻な欠点もある。例えば、PMMAは、優れた光学的特性および非常に高い耐摩耗性を備えるが、非常に脆く、環境的安定性も不明確である。比較すると、PCは、優れた機械的特性および良好な環境的安定性を備えているが、その光学的特性、特に、光透過率および色調が、PMMAのものより若干劣り、耐摩耗性が低い。また、すべてのプラスチック材料が、溶融押出操作によって確実に作製可能なわけではない。例えば、PMMAは、脆度が高いという問題があるため、0.3mm未満の厚みでの作製は困難であることが分かっているが、比較的厚い導光板に対してはうまく機能するはずである。
【0026】
PMMAおよびPCが、本発明の導光板において使用するのに特に適したものであるが、多くの他の光学的透明材料が使用されてもよい。本発明の導光板は、溶融加工可能である任意のタイプの透明ポリマーから形成されてもよい。これらの材料には、これに限定されないが、以下の群からのホモポリマー、コポリマー、およびさらに処理されてポリマーになることができるオリゴマーが挙げられる:ポリエステル、ポリアリーレート、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールA以外の部分を含有するポリカーボネート)、ポリアミド、ポリエーテル−アミド、ポリアミド−イミド、ポリイミド(例えば、熱可塑性ポリイミドおよびポリアクリルイミド)、ポリエーテルイミド、環状オレフィンポリマー、PMMAおよび耐衝撃性改良アクリルポリマーなどのアクリルポリマー、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリルおよびポリスチレン、スチレン系物質のコポリマーおよびブレンド(例えば、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマーおよびアクロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー)、ポリエーテル(例えば、ポリフェニレンオキシド、ポリ(ジメチルフェニレンオキシド))、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースニトレート)および硫黄含有ポリマー(例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリアリールスルホンおよびポリエーテルスルフォン)。2種以上のポリマーまたはコポリマーの光学的に透過性の混和性ブレンドまたはアロイが使用されてもよい。
【0027】
適切には、いくつかの実施形態において、導光板は、溶融加工可能な可撓性ポリマーを含んでもよい。本発明の目的のために、可撓性ポリマーは、フィルムまたはシートの形態で、直径5cmの円筒の周囲に通常の使用温度範囲下で破砕することなく巻き付けることが可能なポリマーである。望ましくは、導光板は、少なくとも85パーセント(ASTM D−1003)、より望ましくは、少なくとも90パーセントの結合有効光透過率と、2パーセント以下、より望ましくは、1パーセント以下のヘイズ(ASTM D−1003)とを有するポリマー材料を含むことができる。一般に、適切なポリマーは、本質的に結晶性、半結晶性または非晶質であってもよいが、非晶質ポリマーは、最低レベルのヘイズを有する光学的に均質な構造を形成する能力のせいで最も適したものである。ディスプレイおよび一般的な照明用途のための熱的寸法安定性の要件を最良に満たすために、本発明の導光板のポリマーは、少なくとも85℃のガラス転移温度(Tg)(ASTM D3418)および周囲温度で1.0×10
−4mm/mm/℃以下の熱膨張係数(ASTM D−696)を有するべきである。
【0028】
本発明の導光板に特に適した溶融加工可能なポリマーは、非晶質ポリエステル(すなわち、導光板の作製に用いられる押出プロセス中に使用される時間および温度下で、結晶形態を自然発生的に形成しないポリエステル)、ポリカーボネート(すなわち、ビスフェノールAなどの二価フェノール系物質をベースにしたポリカーボネート)、エステル部分とカーボネート部分の両方を含むポリマー材料および環状オレフィンポリマーを含む。加えて、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリスチレンおよびポリ(アクリロニトリル)などの、通常は壊れやすく、溶融加工可能なポリマーは、耐衝撃性改良剤が、導光板の光学的要件を満たさない点に対して厚い導光板の光学特性を悪化させないのであれば、耐衝撃性改良ポリマー粒子(例えば、軟質コア/硬質シェルのラテックス粒子を含む耐衝撃性改良PMMA)の組み込みによって可撓性にされた後で、本発明における使用に適した材料である。ポリマー層の可撓性は望ましいものであるが、本発明の実施に必須なわけではない。また、可視光の波長より寸法がかなり小さいナノ粒子と混合されたマトリクスポリマーを含むさまざまなタイプのナノ複合材料が、これらの材料から作られた導光板の光学特性が、ナノ粒子の添加によって悪影響を及ぼされない限り、導光板の1つまたはすべての層に使用されてもよい。
【0029】
ポリエステルに用いられる適切なモノマーおよびコモノマーは、ジオール酸もしくはジカルボン酸またはエステル型でもよい。ジカルボン酸コモノマーとしては、これらに限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、すべての異性体のナフタレンジカルボン酸、二安息香酸(例えば、4,4’−ビフェニルジカルボン酸およびその異性体、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸およびその異性体、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸およびその異性体、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸およびその異性体、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸およびその異性体など)、ハロゲン化芳香族ジカルボン酸(例えば、2−クロロテレフタル酸および2,5−ジクロロテレフタル酸など)、他の置換芳香族ジカルボン酸(例えば、ターシャリーブチルイソフタル酸およびナトリウムスルホン化イソフタル酸など)、シクロアルカンジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸およびその異性体ならびに2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸およびその異性体など)、二環式または多環式ジカルボン酸(例えば、種々の異性体のノルボルネンおよびノルボルネンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸およびビシクロ−オクタンジカルボン酸など)、アルカンジカルボン酸(例えば、セバシン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アゼライン酸およびドデカンジカルボン酸など)、および縮合環芳香族炭化水素(例えば、インデン、アントラセン、フェナンスレン、ベンゾナフタレン、フルオレンなど)の異性体ジカルボン酸のいずれかが挙げられる。他の脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、シクロアルカンジカルボン酸またはシクロアルケンジカルボン酸を用いてもよい。あるいは、これらジカルボン酸そのものの代わりに、またはこれらジカルボン酸そのものと組み合わせて、ジメチルテレフタレートなどのこれらジカルボン酸モノマーのいずれかのエステルを用いてもよい。
【0030】
適切なジオールコモノマーとしては、これらに限定されないが、直鎖または分枝のアルカンジオールまたはグリコール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコールなどのプロパンジオール、テトラメチレングリコールなどのブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのペンタンジオール、ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールおよびより高次のジオールなど)、エーテルグリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、連鎖エステル(chain−ester)ジオール(例えば、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−d−iメチルプロパノエートなど)、シクロアルカングリコール(例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびその異性体、ならびに1,4−シクロヘキサンジオールおよびその異性体など)、二環式ジオールまたは多環式ジオール(例えば、種々の異性体のトリシクロデカンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルネンジメタノールおよびビシクロ−オクタンジメタノールなど)、芳香族グリコール(例えば、1,4−ベンゼンジメタノールおよびその異性体、1,4−ベンゼンジオールおよびその異性体、ビスフェノールAなどのビスフェノール、2,2’−ジヒドロキシビフェニルおよびその異性体、4,4’−ジヒドロキシメチルビフェニルおよびその異性体、ならびに1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンおよびその異性体など)、並びにこれらジオールのより低次のアルキルエーテルまたはジエーテル(例えば、ジメチルジオールまたはジエチルジオールなど)が挙げられる。他の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、シクロアルキルジオールおよびシクロアルケニルジオールを用いてもよい。
【0031】
エステル部分およびカーボネート部分の両方を含むポリマー材料は、少なくとも一方の構成要素が、ポリエステル(ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか)に基づくポリマーであり、他方の構成要素が、ポリカーボネート(ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか)である(混和性)ブレンドであってもよい。このようなブレンドは、例えば、ポリエステルのペレットがポリカーボネートのペレットと混合され、その後、均質な混合物を形成するように単軸または2軸押出機で溶融ブレンドされる従来の溶融加工技術によって作られてもよい。溶融温度で、一部の交換反応(エステル交換)が、ポリエステルとポリカーボネートとの間に起こる可能性があり、その程度は、亜リン酸化合物などの1種以上の安定剤の添加によって制御されてもよい。あるいは、エステル部分およびカーボネート部分の両方を含むポリマー材料は、二価フェノール、カーボネート前駆物質(例えば、ホスゲンなど)およびジカルボン酸、ジカルボン酸エステルまたはジカルボン酸ハライドを反応させることによって調製されるコ(ポリエステルカーボネート)であってもよい。
【0032】
環状オレフィンポリマーは、高いガラス転移温度、高い光透過率および低い光複屈折を提供するかなり新しい種類のポリマー材料である。本発明の実施に有用な非晶質環状オレフィンポリマーとしては、ホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。環状オレフィン(コ)ポリマーとしては、例えば、α−オレフィンなどの非環状オレフィンと環状オレフィンとの環状オレフィン付加コポリマー;エチレン、環状オレフィンおよびα−オレフィンの環状オレフィン付加コポリマー;ならびに環状モノマーの開環重合と、その後の水素化によって調製されるホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。好ましい環状オレフィンポリマーは、ノルボルネンまたはテトラシクロドデセン構造を有する環状オレフィンから構成される環状オレフィンポリマーである。好ましい環状オレフィンポリマーおよびコポリマーの典型例としては、ノルボルネン/エチレンコポリマー、ノルボルネン/プロピレンコポリマー、テトラシクロドデセン/エチレンコポリマーおよびテトラシクロドデセン/プロピレンコポリマーが挙げられる。現在市販されている環状オレフィンポリマーとしては、APEL
(商標)(Mitsui Chemical Inc.)、ARTON
(登録商標)(JSR Corporation)、TOPAS
(登録商標)(Ticona GmbH)ならびにZeonex
(登録商標)およびZeonor
(登録商標)(Zeon Chemical Corporation)が挙げられる。このクラスのポリマーの光学的特性は、一般に、導光板での使用に非常に適したものであるが、それらはコストが比較的高く、脆性が高い場合も多い。
【0033】
好ましい実施形態において、パターン形成されたフィルム410、接着剤層およびプレカットシート515の製造に使用される材料は、同一のものであり、またはわずかに異なるだけである。一般に、これらの材料は、仕上げられた導光板における散乱、導波および吸収損失を最小限に抑えるように光学的にごく近く整合されなければならないが、同じものである必要はない。光学的な整合には、それらの屈折率がほぼ同一であるか、または異なる場合でも0.01未満である必要がある。また、全内部反射による損失を最小限に抑えるために、複合導光板の3つの材料の屈折率がn
f≧n
a≧n
sの関係(式中、n
f、n
aおよびn
sが、それぞれ、パターン形成されたフィルム、接着剤層およびプレカットシートの屈折率である)にあることが望まれる。加えて、これらのスペクトル特性は、
望ましくない色度の影響を生じる、可視スペクトルの異なる部分での異なる層によ
る選択的吸収を最小限に抑えるようにごく近く整合されなければならない。接着剤層の組成および種類は、固化され硬化された接着剤の光学的特性が、パターン形成されたフィルム410およびプレカットシート515のものとごく近く整合されるのであれば、特に制約されない。接着剤層の屈折率が、層410および515の屈折率と0.01以内にごく近く整合されることが特に重要である。接着剤は、UV硬化可能なタイプ、熱硬化可能なタイプまたは感圧タイプのものでありうる。多くの異なる接着剤材料は、当業者に広く知られている。接着剤材料の選択肢は、その接着性と、上述したガイドラインに従って接着剤材料の光学的特性と複合導光板の2つの構成層とを整合させる必要性とに従ったものでなければならない。
【0034】
このように、本発明において、LCDバックライトまたは一般的な照明デバイスにおいて使用するための、厚みが1mmを超える複合導光板と、この複合導光板を製造するための押出キャスト方法が提供される。本発明の製造方法において、押出ロール成形プロセスは、厚みのある導光板をコスト効率良くロールツーロール方式またはロールツーシート方式で製造可能にするコーティング工程および積層工程と組み合わせられ、一方または両方の主面は、導光板の1つまたは複数の縁部に配置された1つの光源または複数の光源からの光を導光板によって取り出しおよび方向変換可能なパターンを含む。良好な光取り出し効率を得るために、導光板の接着剤層および2つの構成層の光学的特性は、高い光透過性のものであり、かつ複合導光板のこれら3つの材料のうちどの2つの屈折率の差も0.01を超えないように光学的に整合されなければならず、並びにこれら屈折率は、n
f≧n
a≧n
sの関係にあることが好ましく、式中、n
f、n
aおよびn
sは、それぞれ、パターン形成されたフィルム、接着剤層およびプレカットシートの屈折率である。