特許第6284330号(P6284330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特許6284330-タッチセンサー装置及びタッチ感応方法 図000016
  • 特許6284330-タッチセンサー装置及びタッチ感応方法 図000017
  • 特許6284330-タッチセンサー装置及びタッチ感応方法 図000018
  • 特許6284330-タッチセンサー装置及びタッチ感応方法 図000019
  • 特許6284330-タッチセンサー装置及びタッチ感応方法 図000020
  • 特許6284330-タッチセンサー装置及びタッチ感応方法 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284330
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】タッチセンサー装置及びタッチ感応方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20180215BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   G06F3/041 512
   G06F3/044 Z
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-206169(P2013-206169)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-75127(P2014-75127A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】101136429
(32)【優先日】2012年10月3日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】林 嘉豪
(72)【発明者】
【氏名】許 孟哲
【審査官】 若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−242875(JP,A)
【文献】 米国特許第05463388(US,A)
【文献】 国際公開第2011/088726(WO,A1)
【文献】 特表2013−515302(JP,A)
【文献】 特開平9−91079(JP,A)
【文献】 特開平9−69021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041−3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の横方向誘導信号線及び複数本の縦方向誘導信号線を含むタッチパネルと、
下記の公式によってユーザーの前記タッチパネルでの接触点の座標(X,Y)を計算するための計算ユニットと、を備え、
前記複数本の横方向誘導信号線は、複数の横方向誘導信号値a、a、…、aを生成し、
前記複数本の縦方向誘導信号線は、複数の縦方向誘導信号値b、b、…、bを生成し、
n及びmは、何れも2或いは2以上の整数であり、
各横方向誘導信号値は、1つの横座標に対応し、
各縦方向誘導信号値は、1つの縦座標に対応し、
前記計算ユニットは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、A(2≦r≦n)を選び取り、且つ前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、B(2≦s≦m)を選び取って、以下の公式1によって接触点の座標(X,Y)を計算することを特徴とするタッチセンサー装置。
【数14】
(式中において、X、X…、Xは、前記最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、Aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、Bにそれぞれ対応する縦座標を表す。)
【請求項2】
前記計算ユニットは、前記複数の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大の2つの横方向誘導信号値を選び取って、選んだ2つの横方向誘導信号値に基づいて前記接触点の横座標を計算し、
また、前記計算ユニットは、前記複数の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大の2つの縦方向誘導信号値を選び取って、選んだ2つの縦方向誘導信号値に基づいて前記接触点の縦座標を計算することを特徴とする請求項に記載のタッチセンサー装置。
【請求項3】
タッチパネルはユーザーによる押圧力を感知して、n個の横方向誘導信号値a、a、…、a及びm個の縦方向誘導信号値b、b、…、bを生成する感知ステップと、
前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、A(2≦r≦n)を選び取ると共に、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、B(2≦s≦m)を選び取って、下記の公式によって接触点の座標(X,Y)を計算する計算ステップと、を備え、
前記感知ステップにおいて、n及びmは、何れも2或いは2以上の整数であり、
各横方向誘導信号値は、1つの横座標に対応し、
各縦方向誘導信号値は、1つの縦座標に対応していることを特徴とするタッチ感応方法。
【数16】
(式中において、X、X…、Xは、前記最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、Aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、Bにそれぞれ対応する縦座標を表す。)
【請求項4】
前記計算ステップは、前記複数の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大の2つの横方向誘導信号値を選び取り、且つ選んだ2つの横方向誘導信号値に基づいて前記接触点の横座標を計算し、また、
前記複数の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大の2つの縦方向誘導信号値を選び取り、且つ選んだ2つの縦方向誘導信号値に基づいて前記接触点の縦座標を計算することを特徴とする請求項に記載のタッチ感応方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ技術に関し、特にタッチセンサー装置及びタッチ感応方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチ技術は70年代に出現し、特にこの数年、携帯電話或いはタブレットパソコンに大量に応用されるようになった。以後数年内、タッチ技術は更に発展するとみ込まれている。一般的なタッチ技術は、タッチパネルの表面の測位原理に基づいて、音響パルス認識(APR)技術、表面音波(SAW)技術、静電容量式、抵抗式及び赤外線/光学式技術の5種類に分けられる。現在最も広く用いられている技術は、静電容量式タッチ技術である。
【0003】
前記静電容量式タッチ技術は、タッチパネル上の横方向誘導信号線(horizontal sensing lines)及び縦方向誘導信号線(vertical sensing lines)を介して検知した電圧値を、タッチチップの内部に伝送して処理させる。前記タッチチップは、前記各誘導信号線からの電圧値を受信した後、これらの電圧値を演算して、複数の横方向誘導信号値及び複数の縦方向誘導信号値を含むデジタル誘導信号(sensing signals)に変換させて、前記横方向誘導信号値と前記縦方向誘導信号値とを相乗することで、二次元誘導信号値行列(matrix of 2D sensing signals)を生成し、且つ補間法を利用して接触点の座標(X,Y)を探し出す。より詳細には、X点を計算する時に、横方向における二次元誘導信号値に対応する横座標をそれぞれに掛けた後、和を求めて、さらに横方向における二次元誘導信号値の総和で割る。また、Y点を計算する時に、縦方向における二次元誘導信号値に対応する縦座標をそれぞれに掛けた後、和を求めて、さらに縦方向における二次元誘導信号値の総和で割る。
【0004】
上述した静電容量式のタッチ技術にとって、横方向誘導信号値と縦方向誘導信号値とを相乗して二次元誘導信号値行列を生成することは、巨大な演算負荷及び記憶空間を必要とし、且つ誘導信号線の増加(即ち、横方向誘導信号値と縦方向誘導信号値の数量が増えること)に従い、演算負荷及び記憶空間に対する需要も倍になる。これにより、タッチセンサーの処理効率を低下させるだけでなく、タッチチップの体積を増大させ(記憶空間への要求が高まったため)、タッチセンサー装置の生産コストを増加させ、タッチセンサー装置の軽薄化の発展を遅速させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明は、演算負荷及び記憶空間に対する需要を低減させることができるタッチセンサー装置及びタッチ感応方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係るタッチセンサー装置は、複数本の横方向誘導信号線及び複数本の縦方向誘導信号線を含むタッチパネルと、下記の公式1によってユーザーの前記タッチパネルでの接触点の座標(X,Y)を計算するための計算ユニットと、を備え、前記複数本の横方向誘導信号線は、複数の横方向誘導信号値a、a、…、aを生成し、前記複数本の縦方向誘導信号線は、複数の縦方向誘導信号値b、b、…、bを生成し、n及びmは、何れも2或いは2以上の整数であり、各横方向誘導信号値は、1つの横座標に対応し、各縦方向誘導信号値は、1つの縦座標に対応している。
【0007】
【数1】
(式中において、X、X…、Xは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bにそれぞれ対応する縦座標を表す。)
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明に係るタッチセンサー装置は、複数本の横方向誘導信号線及び複数本の縦方向誘導信号線を含むタッチパネルと、下記の公式2によってユーザーの前記タッチパネルでの接触点の座標(X,Y)を計算するための計算ユニットと、を備え、
前記複数本の横方向誘導信号線は、複数の横方向誘導信号値a、a、…、aを生成し、前記複数本の縦方向誘導信号線は、複数の縦方向誘導信号値b、b、…、bを生成し、n及びmは、何れも2或いは2以上の整数であり、各横方向誘導信号値は、1つの横座標に対応し、各縦方向誘導信号値は、1つの縦座標に対応し、
前記計算ユニットは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、A(2≦r≦n)を選び取って、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、B(2≦s≦m)を選び取って、以下の公式2によって接触点の座標(X,Y)を計算する。
【0009】
【数2】
(式中において、X、X…、Xは、前記最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、Aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、Bにそれぞれ対応する縦座標を表す。)
【0010】
また、本発明に係るタッチ感応方法は、タッチパネルはユーザーによる押圧力を感知して、n個の横方向誘導信号値a、a、…、a及びm個の縦方向誘導信号値b、b、…、bを生成する感知ステップと、下記の公式1によって接触点の座標(X,Y)を計算する計算ステップと、を備え、前記感知ステップにおいて、n及びmは、何れも2以上の整数であり、各横方向誘導信号値は、1つの横座標に対応し、各縦方向誘導信号値は、1つの縦座標に対応している。
【0011】
【数3】
(式中において、X、X…、Xは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bにそれぞれ対応する縦座標を表す。)
【0012】
また、本発明に係るタッチ感応方法は、タッチパネルはユーザーによる押圧力を感知して、複数の横方向誘導信号値a、a、…、a及び複数の縦方向誘導信号値b、b、…、bを生成し、n及びmは、何れも2或いは2以上の整数であり、各横方向誘導信号値は、1つの横座標に対応し、各縦方向誘導信号値は、1つの縦座標に対応している感知ステップと、
前記複数の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、A(2≦r≦n)を選び取ると共に、前記複数の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、B(2≦s≦m)を選び取って、下記の公式2によって接触点の座標(X,Y)を計算する計算ステップと、を備える。
【0013】
【数4】
(式中において、X、X…、Xは、前記最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、Aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、Bにそれぞれ対応する縦座標を表す。)
【発明の効果】
【0014】
従来の技術と異なり、本発明のタッチセンサー装置及びタッチ感応方法の計算ユニットは、n個の横方向誘導信号値a、a、…、aとm個の縦方向誘導信号値b、b、…、bとを相乗するため、所謂二次元誘導信号値行列を生成する必要がない。従って、演算負荷を大きく軽減し、記憶空間に対する要求を大きく低減させ、タッチチップのコストダウン及び体積の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るタッチセンサー装置の機能モジュールを示す図である。
図2】本発明の1種の実施形態に係るタッチパネルを示す図である。
図3】本発明のタッチパネルが生成した誘導信号値のインスタンスである。
図4】本発明の1つの典型例として、従来技術に対して節約した記憶空間の割合を示す表である。
図5】本発明の第一実施形態に係るタッチ感応方法のフローチャートである。
図6】本発明の第二実施形態に係るタッチ感応方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るタッチセンサー装置10は、タッチパネル12及び計算ユニット16を備える。タッチセンサー装置10は、ノートパソコンのタッチパッド、スマートフォンのタッチパネル或いは他の電子装置のタッチセンサー部品であることができる。
【0017】
タッチパネル12は、複数本の横方向誘導信号線及び複数本の縦方向誘導信号線を含む。各横方向誘導信号線は1つの横座標にそれぞれ対応しており、各縦方向誘導信号線は1つの縦座標にそれぞれ対応している。前記複数本の横方向誘導信号線及び前記複数本の縦方向誘導信号線は、タッチパネル12において交錯するように分布しており、2次元の座標システムを構成する。
【0018】
ユーザーは、タッチパネル12に接触する或いはタッチパネル12を押圧すると、前記複数本の横方向誘導信号線及び前記複数本の縦方向誘導信号線の接触位置の近くにおけるコンデンサの電気容量は増大して、複数の横方向誘導信号値及び複数の縦方向誘導信号値を生成する。各横方向誘導信号値は、タッチパネル12上の対応する横座標が受けた押圧強度を表し、横方向誘導信号の値が大きくなればなるほど、対応する横座標が受けた押圧強度は大きいことを意味する。また、各縦方向誘導信号値は、タッチパネル12上の対応する縦座標が受けた押圧強度を表し、縦方向誘導信号の値が大きくなればなるほど、対応する縦座標が受けた押圧強度は大きいことを意味する。
【0019】
図2に示すように、本発明の1種の実施形態に係るタッチパネル12は、n本の横方向誘導信号線と、m本の縦方向誘導信号線と、を含む。前記n本の横方向誘導信号線に対応する横座標は、X、X、…、Xとそれぞれ表記される。前記m本の縦方向誘導信号線に対応する縦座標は、Y、Y、…、Yとそれぞれ表記される。中でも、n及びmは、何れも2或いは2以上の整数である。図3において、n=m=5である。
【0020】
図3に示すように、ユーザーがタッチパネル12を押圧すると、前記n本の横方向誘導信号線は、横座標X、X…、Xに対応して、n個の横方向誘導信号値a、a、…、aをそれぞれ生成し、前記m本の縦方向誘導信号線は、縦座標Y、Y…、Yに対応して、m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bをそれぞれ生成する。中でも、n及びmは、何れも2或いは2以上の整数である。図3において、n=m=5である。
【0021】
計算ユニット16は、タッチパネル12に電気的に接続されて、タッチパネル12が生成した前記複数の横方向誘導信号値及び前記複数の縦方向誘導信号値に基づいて、ユーザーのタッチパネル12における接触点の座標を確定する。
【0022】
≪実施例1≫
計算ユニット16は、以下の公式1によって接触点の座標(X,Y)を計算する。
【0023】
【数5】
前記公式1において、a、a、…、aは、前記n本の横方向誘導信号線が生成したn個の横方向誘導信号値を表し、b、b、…、bは、前記m本の縦方向誘導信号線が生成したm個の縦方向誘導信号値を表し、X、X…、Xは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bにそれぞれ対応する縦座標を表す。
【0024】
従来の技術に対して、本発明の実施例1は、計算ユニット16が前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aと前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bとを相乗するので、所謂二次元誘導信号値行列を生成する必要がない。従って、本発明のタッチ感応方法は、演算負荷を大きく軽減し、記憶空間に対する需要も低減させ、タッチチップのコストダウン及び体積の小型化を実現することができる。
【0025】
また、接触点の座標を計算する過程におけるタッチセンサー装置の演算量及び記憶空間に対する需要をさらに低減させるために、上記の実施例1において、計算ユニット16は、接触点の座標を計算する前に、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、a及び前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bに対して濾過し、且つ濾過された後の誘導信号値に基づいて接触点の座標(X,Y)を計算して得る。具体的には、計算ユニット16は、各前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aを、1つの横方向誘導信号閾値とそれぞれ比較して、前記n個の横方向誘導信号値の中から前記横方向誘導信号閾値より小さい横方向誘導信号値を取り除いた後、濾過された後の横方向誘導信号値に基づいて接触点の横座標Xを計算する。同じように、計算ユニット16は、各前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bを、1つの縦方向誘導信号閾値とそれぞれ比較して、前記m個の縦方向誘導信号値の中から前記縦方向誘導信号閾値より小さい縦方向誘導信号値を取り除いた後、濾過された後の縦方向誘導信号値に基づいて接触点の縦座標Yを計算する。このように、計算ユニット16は演算過程において、誘導信号値の数の大きな減少に関係して、上述した実施例1上でタッチセンサー装置の演算負荷をさらに軽減し、記憶空間に対する需要も低減させることができる。
【0026】
≪実施例2≫
計算ユニット16は、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、A(2≦r≦n)を選び取って、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、B(2≦s≦m)を選び取って、以下の公式2によって接触点の座標(X,Y)を計算する。
【0027】
【数6】
前記公式2において、A、A、…、Aは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から選び取った最大のr個の横方向誘導信号値を表し、B、B、…、Bは、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から選び取った最大のs個の縦方向誘導信号値を表し、X、X…、Xは、前記最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、Aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、Bにそれぞれ対応する縦座標を表す。
【0028】
従来の技術に対して、実施例2は、計算ユニット16が前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aと前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bとを相乗するので、所謂二次元誘導信号値行列を生成する必要がない。従って、演算負荷を大きく軽減し、記憶空間に対する需要も低減させ、タッチチップのコストダウン及び体積の小型化を実現することができる。
【0029】
他方、実施例2において、計算ユニット16は接触点の座標を計算する前に、前記n個の横方向誘導信号値及び前記m個の縦方向誘導信号値の中から、最大のr個の横方向誘導信号値及び最大のs個の縦方向誘導信号値をそれぞれ選び取って、計算ユニット16の演算過程において関係するデータの量をさらに減少し、データの記憶空間への要求も低減させることができる。
【0030】
上記の実施例2の1つの典型例として、rとsとの値は、それぞれ2である。つまり、計算ユニット16は前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大の2つの横方向誘導信号値A及びAを選び取ると共に、m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大の2つの縦方向誘導信号値B及びBを選び取り、且つ以下の公式3によって接触点の座標(X,Y)を計算して得る。
【0031】
【数7】
前記公式3において、A及びAは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から選び取った最大の2つの横方向誘導信号値であり、B及びBは、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から選び取った最大の2つの縦方向誘導信号値であり、X及びXは、前記最大の2つの横方向誘導信号値A、Aにそれぞれ対応する横座標であり、Y及びYは、前記最大の2つの縦方向誘導信号値B、Bにそれぞれ対応する縦座標である。
【0032】
上述した典型例によって、本発明は、記憶空間に対する需要を低減させることにおいて、その進歩は著しい。しかも、横/縦誘導信号線の数の増加につれて、こうした進歩は更に著しい。計算ユニット16が接触点の横座標X及び縦座標Yを計算する場合の原理は同じであるから、以下接触点の横座標Xのみを計算することを例として、既存の技術に対して、上記の典型例は記憶空間に対する需要を低減させることに対する進歩或いは効果を述べている。
【0033】
図4は、上記の典型例が従来技術に対して節約した記憶空間の割合を示している。ここで、基本的なメモリ・セルが7ビット(bits)であることを例として説明する。上記典型例は2つの最大の横方向誘導信号値のみを選び取って演算を行なうため、縦/横誘導信号線が任意の数である場合、必要な記憶空間は固定した37ビットである。具体的には、2つの最大の横方向誘導信号値を選び取ることは2つの基本的なメモリ・セルを占用し、即ち7×2=14ビットである。この2つの横方向誘導信号値を前記公式3に導入して演算する時に、分子部分は7×2+1=15ビットの記憶空間を必要し、分母部分は7+1=8ビットの記憶空間を必要する。これにより、本発明の上記の典型例が14+15+8=37ビットの記憶空間を必要とすることが分かる。
【0034】
これに対して、従来の技術において、縦/横誘導信号線の数が増加することに従って、所要の記憶空間も相応して増加する。具体的には、縦/横誘導信号線の数が2×2である場合、先ず2つの横方向誘導信号値と2つの縦方向誘導信号値とを相乗することで、2×2の二次元誘導信号値行列を生成する。接触点の横座標を計算する場合、分子部分は7×3+1+1=23ビットの記憶空間を必要し、分母部分は7×2+1+1=16ビットの記憶空間を必要する。これにより、従来の技術が縦/横誘導信号線の数が2×2である場合、全部で23+16=39ビットの記憶空間を必要する。この時、本発明の上記の典型例によって、従来の技術に対して5.4%の記憶空間を節約することができる。
【0035】
また、従来の技術において、縦/横誘導信号線の数が3×3である場合、先ず三つの横方向誘導信号値と三つの縦方向誘導信号値とを相乗することで、3×3の二次元誘導信号値行列を生成する。接触点の横座標を計算する場合、分子部分は7×3+1+1+1+1=25ビットの記憶空間を必要とし、分母部分は7×2+1+1+1+1=18ビットの記憶空間を必要とする。これにより、従来の技術が縦/横誘導信号線の数が3×3である場合、全部で25+18=43ビットの記憶空間を必要とする。この時、本発明は上記の典型例によって、従来の技術に対して16.2%の記憶空間を節約することができる。
【0036】
さらに、これにより類推して、従来の技術において、縦/横誘導信号線の数がn×nである場合、
【数8】
ビットの記憶空間を必要とし、nは2或いは2以上の整数である。これに相応して、上記の典型例によって節約した記憶空間の役割は
【数9】
である。
【0037】
図5に示すように、本発明の第一実施形態に係るタッチ感応方法は、以下のステップS501及びS502を含む。
【0038】
ステップS501において、タッチパネル12はユーザーによる押圧力を感知して、n個の横方向誘導信号値a、a、…、a及びm個の縦方向誘導信号値b、b、…、bを生成する。ここで、n及びmは全て2以上の整数である。
【0039】
ステップS502において、計算ユニット16は以下の公式1によって接触点の座標(X,Y)を計算する。
【0040】
【数10】
前記公式1において、a、a、…、aは、前記n本の横方向誘導信号線が生成したn個の横方向誘導信号値を表し、b、b、…、bは、前記m本の縦方向誘導信号線が生成したm個の縦方向誘導信号値を表し、X、X…、Xは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bにそれぞれ対応する縦座標を表す。
【0041】
また、上記の実施形態に基づく改善例として、計算ユニット16は接触点の座標を計算する前に、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aと前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bに対して濾過し、且つ濾過された後の誘導信号値に基づいて前記接触点の座標(X,Y)を計算する。
【0042】
図6に示すように、本発明の第二実施形態に係るタッチ感応方法は、以下のステップS601及びS602を含む。
【0043】
ステップS601において、タッチパネル12はユーザーによる押圧力を感知して、n個の横方向誘導信号値a、a、…、a及びm個の縦方向誘導信号値b、b、…、bを生成する。ここで、n及びmは全て2以上の整数である。
【0044】
ステップS602において、計算ユニット16は、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、A(2≦r≦n)を選び取って、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、B(2≦s≦m)を選び取る。
【0045】
ステップS603において、計算ユニット16は以下の公式2によって接触点の座標(X,Y)を計算する。
【0046】
【数11】
前記公式2において、A、A、…、Aは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から選び取った最大のr個の横方向誘導信号値を表し、B、B、…、Bは、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から選び取った最大のs個の縦方向誘導信号値を表し、X、X…、Xは、前記最大のr個の横方向誘導信号値A、A、…、Aにそれぞれ対応する横座標を表し、Y、Y…、Yは、前記最大のs個の縦方向誘導信号値B、B、…、Bにそれぞれ対応する縦座標を表す。
【0047】
上記の第二実施例に係るタッチ感応方法の1つの典型例として、rとsとの値は、それぞれ2である。つまり、計算ユニット16は前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から最大の2つの横方向誘導信号値A及びAを選び取ると共に、m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から最大の2つの縦方向誘導信号値B及びBを選び取り、且つ以下の公式3によって接触点の座標(X,Y)を計算して得る。
【0048】
【数12】
前記公式3において、A及びAは、前記n個の横方向誘導信号値a、a、…、aの中から選び取った最大の2つの横方向誘導信号値であり、B及びBは、前記m個の縦方向誘導信号値b、b、…、bの中から選び取った最大の2つの縦方向誘導信号値であり、X及びXは、前記最大の2つの横方向誘導信号値A、Aにそれぞれ対応する横座標であり、Y及びYは、前記最大の2つの縦方向誘導信号値B、Bにそれぞれ対応する縦座標である。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形又は修正が可能であり、該変形又は修正もまた、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
10 タッチセンサー装置
12 タッチパネル
16 計算ユニット
、X…、X 横座標
、Y…、Y 縦座標
、a、…、a 横方向誘導信号値
、b、…、b 縦方向誘導信号値
図1
図2
図3
図4
図5
図6