特許第6284348号(P6284348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284348
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ベッド用マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/045 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   A47C27/045
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-250209(P2013-250209)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-107150(P2015-107150A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】594128625
【氏名又は名称】シモンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100077241
【弁理士】
【氏名又は名称】桑原 稔
(72)【発明者】
【氏名】関口 正二
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−094532(JP,A)
【文献】 実開昭58−090153(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C23/00−31/11
B65G7/05
F16B2/00−2/26
F16B5/00−5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケットコイル又はオープンコイルの集合体と、輪郭を四角形状とするこの集合体の水平面部を縁取るボーダーワイヤーとを備えてなるコイルコンストラクションを主体とするベッド用マットレスであって、
前記ボーダーワイヤーに対するクリップと、
前記クリップとの間で前記水平面部を覆う表地の縁部に連接されたフランジ状生地及び前記表地と前記水平面部との間に納められる詰物の縁部の双方又はいずれか一方を挟持するリテーナとを有しており、
前記クリップは、前記水平面部に接する横向き部分と、この横向き部分の外端部から高さ方向に延びる縦向き部分とを有しており、前記横向き部分と前記縦向き部分との間の屈曲部の屈曲内側に前記ボーダーワイヤーを弾性変形により内部に受け入れるクランプ部を備えると共に、前記縦向き部分の突き出し端部に頭部を備えており、
前記リテーナは、入り口を弾性的に広げながら前記クリップの前記頭部を内部に受け入れるチャンネル状体であると共に、
前記クリップの前記縦向き部分における前記クランプ部と前記頭部との間であって、前記クリップの左右方向中程の位置に、突出部を形成してなるベッド用マットレス。
【請求項2】
前記クリップの屈曲部の屈曲内側において、前記横向き部分と前記縦向き部分とがなす角度が、直角又は直角よりもやや角度を小さくした鋭角である、請求項1に記載のベッド用マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポケットコイル又はオープンコイルの集合体を主体として構成されたベッド用のマットレスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のポケットコイルP、P…(特許文献1参照)を寄せ集めてなる、輪郭を四角形状とする上下の水平面部Mbaを備えた集合体Mbを、マットレスの主体としてなるベッド用のマットレスがある。
【0003】
かかるマットレスにあっては、前記集合体Mbの上下にそれぞれ、金属製の線材からなるボーダーワイヤーMaが取り付けられ、この集合体MbとボーダーワイヤーMaとによってコイルコンストラクションMが構成される。かかるボーダーワイヤーMaは水平面部Mbaを縁取るように配されると共に、ポケットコイルPを構成する圧縮コイルスプリングPaを納めた生地Pbを貫いて当該圧縮コイルスプリングPaに止め付けられる金属リングRを利用して取り付けられる。(図9
【0004】
また、前記集合体Mbの水平面部Mbaは表地Sa(パネルなどと称される。)によって覆われるとと共に、この表地Saと水平面部Mbaとの間にはマット状をなす詰物Sbが納められる。表地Saの縁部にはその全周にフランジ状生地Sa’が備えられており、表地SaはコイルコンストラクションMに対し前記ボーダーワイヤーMaを内側に通すようにした前記金属リングRを前記フランジ状生地Sa’に止め付けることで取り付けられている。また、前記詰物SbもコイルコンストラクションMに対し前記ボーダーワイヤーMaを内側に通すようにした前記金属リングRをこの詰物Sbの縁部に止め付けることで取り付けられている。(図9
【0005】
このため、かかるマットレスを製造するにあたっては、前記金属リングRの止め付けをなすために専用の工具と設備とを必要とすると共に、表地Saを張り替えるといったマットレスの修理も簡単にはなし得ないところであった。また、マットレスの廃棄にあたっても、コイルコンストラクションM側と表地Sa及び詰物Sb側とを分離し難いため、これを適正に分別処理するのに相応の労力を要するところであった。
【0006】
なお、かかる事情は、複数のオープンコイルを寄せ集めてマットレスの主体を構成してなるベッド用のマットレスでも同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−289276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のポケットコイル又はオープンコイルを使用して構成されたベッド用マットレスにおいて、コイルコンストラクションと表地及び詰物との結合、さらには分離を、容易に行えるようにすると共に、前記結合状態を合理的に強化できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、ベッド用マットレスを、ポケットコイル又はオープンコイルの集合体と、輪郭を四角形状とするこの集合体の水平面部を縁取るボーダーワイヤーとを備えてなるコイルコンストラクションを主体とするベッド用マットレスであって、
前記ボーダーワイヤーに対するクリップと、
前記クリップとの間で前記水平面部を覆う表地の縁部に連接されたフランジ状生地及び前記表地と前記水平面部との間に納められる詰物の縁部の双方又はいずれか一方を挟持するリテーナとを有しており、
前記クリップは、前記水平面部に接する横向き部分と、この横向き部分の外端部から高さ方向に延びる縦向き部分とを有しており、前記横向き部分と前記縦向き部分との間の屈曲部の屈曲内側に前記ボーダーワイヤーを弾性変形により内部に受け入れるクランプ部を備えると共に、前記縦向き部分の突き出し端部に頭部を備えており、
前記リテーナを、入り口を弾性的に広げながら前記クリップの前記頭部を内部に受け入れるチャンネル状体としたものとした。
【0010】
前記クリップは、前記クランプ部に前記弾性変形によりボーダーワイヤーを留め付けることで前記集合体側と結合され、また、このクリップの縦向き部分の頭部とリテーナとの間にフランジ状生地及び詰物の縁部を介在させた状態からリテーナの入り口を弾性的に広げながらこのリテーナ内に前記頭部を受入させることでフランジ状生地及び詰物側と結合され、これにより、前記集合体側とフランジ状生地及び詰物側とが一体化される。かかる結合は特別な工具などを用いなくとも適切になすことができ、コイルコンストラクションを主体としたマットレスを容易に製造することが可能となる。マットレスの使用状態においては、フランジ状生地及び詰物の縁部を高さ方向に引っ張る向きの力が作用されることとなるが、前記頭部はクリップの縦向き部分の突き出し端部に形成されていることから、このような力が作用されればされるほどリテーナが前記頭部との間でかかるフランジ状生地及び詰物の縁部をより強固に挟持するようにすることができる。また、前記クリップとボーダーワイヤーの結合は、ボーダーワイヤーの受け入れ時と同じ程度のクランプ部の弾性変形が生じる力でクランプ部からボーダーワイヤーが抜け出される向きにクリップを引っ張るなどすることにより、特別な工具などを用いなくても解除できる。また、前記クリップとフランジ状生地及び詰物側との結合も、リテーナに頭部を受入させる時と同じ程度の弾性変形がリテーナに生じる力でリテーナを引っ張るなどしてこのリテーナ内から頭部を抜け出させることで、特別な工具などを用いなくても解除できる。すなわち、前記コイルコンストラクションと前記表地及び詰物との分離さらにはこれらからのクリップの分離も容易になすことができる。
【0011】
前記クリップの屈曲部の屈曲内側において、前記横向き部分と前記縦向き部分とがなす角度は、直角又は直角よりもやや角度を小さくした鋭角となるようにしておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。
【0012】
また、前記クリップの前記縦向き部分における前記クランプ部と前記頭部との間であって、前記クリップの左右方向中程の位置に、突出部を形成しておくことが、この発明の好ましい態様の一つとされる。このようにした場合、リテーナ内に突出部が位置される状態でこのリテーナと前記クリップの縦向き部分との間で強固にフランジ状生地及び詰物の縁部を挟持し得ると共に、リテーナ内に突出部が位置されない位置までリテーナをクリップの縦向き部分をガイドにしてスライド移動させることによりリテーナ内から頭部を抜け出し易くする状態を作り出すことができ、クリップとフランジ状生地及び詰物側との結合の解除をよりスムースなものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明にかかるベッド用マットレスにあっては、前記クリップとリテーナの2部材によって、コイルコンストラクションと表地及び詰物とを特別の工具などを用いることなく強固に結合することができると共に、両者の分離を特別の工具などを要することなく容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかるマットレスの分解斜視構成図であり、クリップ及びリテーナの記載は省略している。
図2図2は、前記マットレスの要部をその一部を破断して示した斜視図であり、ボーダーワイヤーに取り付けられた二個のクリップと、これに対応する二個のリテーナを一緒に表している。
図3図3は、前記マットレスの要部縦断面構成図である。
図4図4は、前記マットレスの要部断面構成図であり、図3の上部を拡大して示している。
図5図5は、マットレスを構成するクリップ及びリテーナの斜視図である。
図6図6は、マットレスを構成するクリップ及びリテーナの斜視図であり、図5の下側から両者を見て示している。
図7図7は、前記クリップの正面図(a図)及び右側面図(b図)である。
図8図8は、前記リテーナの正面図(a図)及び平面図(b図)である。
図9図9は従来のマットレスの要部をその一部を破断して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図8に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるベット用マットレスは、複数のポケットコイルP、P…を寄せ集めたもの、つまり、かかるポケットコイルPの集合体Mbをその主体として構成されたものである。
【0016】
具体的には、この実施の形態にあっては、図1に示されるように、複数のポケットコイルP、P…を並行配列させて、前記集合体Mbを構成させている。ポケットコイルPは、圧縮コイルスプリングPaを圧縮させた状態で、ポケットに納めてなる。図示の例では、かかるポケットコイルPは、圧縮コイルスプリングPaを納めた複数のポケットを、隣り合うポケット同士が納められた圧縮コイルスプリングPaの側部側において繋がった状態で、連続的に備えてなる。かかるポケットコイルPは、筒状にした生地Pb、典型的には合成樹脂製繊維より構成される不織布からなる生地Pb内に圧縮コイルスプリングPaを一つずつ納めながら、この筒状の生地Pbに対し一つずつの圧縮コイルスプリングPaの両側においてそれぞれその幅方向に沿った溶着部(図示は省略する。)を形成させることで、構成されている。すなわち、ポケットコイルPは、筒状にした前記生地Pbに対してその長さ方向において隣り合う溶着部との間に間隔を開けて施された複数のこの溶着部によって区分された各空間(すなわち前記ポケット)内にそれぞれ圧縮コイルスプリングPaを一つずつ納めてなる。典型的には、各圧縮コイルスプリングPaは同寸同形であり、各ポケットは略同じ大きさとなっている。前記隣り合うポケット同士は前記溶着部において繋がっている。各ポケットに納められた各圧縮コイルスプリングPaはいずれもスプリング巻回軸を前記筒状の生地の幅方向に沿わせている。図1に示される例では、このように構成される複数のポケットコイルP、P…を、構成されるマットレスの厚さ方向に圧縮コイルスプリングPaのスプリング巻回中心軸が沿うように並行配列させ、隣り合うポケットコイルP同士をその側面において接着させ合わせることにより、前記集合体Mbを構成させている。
【0017】
かかる集合体Mbは、寄せ集められたポケットコイルPの上端部により構成される輪郭を四角形状とする上側の水平面部Mbaと、寄せ集められたポケットコイルPの下端部により構成される輪郭を四角形状とする下側の水平面部Mbaと、寄せ集められたポケットコイルPのうちの外側に位置されるポケットコイルPの側面により構成される前記上下の水平面部Mba、Mba間に亘る厚さ側面部Mbbとを備えてなる。
【0018】
かかる集合体Mbの上側の水平面部Mba及び下側の水平面部Mbaはそれぞれ、ボーダーワイヤーMaにより縁取られている。かかるボーダーワイヤーMaは、典型的には、金属の線材から構成され、前記水平面部Mbaの輪郭に沿った四角形の枠状を呈している。かかるボーダーワイヤーMaは、金属リングRによって、前記集合体Mbを構成するポケットコイルPのうちの外側に位置されるポケットコイルPに止め付けられている。すなわち、C字状をなす金属リングRの内側にボーダーワイヤーMaを通すようにした状態でこの金属リングRの開放端を前記生地Pbに刺し込み且つこの金属リングR内に圧縮コイルスプリングPaの一部を位置させた状態から、この金属リングRを屈曲させてこの金属リングRの開放箇所を閉じることで、ボーダーワイヤーMaを集合体Mbに取り付けさせている。前記集合体Mbと、このようにかかる集合体Mbに取り付けられるボーダーワイヤーMaとによってマットレスの主体となるコイルコンストラクションMが構成されている。
【0019】
かかるコイルコンストラクションMにおける前記集合体Mbの上下の水平面部Mba、Mbaはそれぞれ、表地Saによって覆われる。また、この表地Saと集合体Mbの水平面部Mbaとの間には、詰物Sbが納められる。さらに、前記集合体Mbの厚さ側面部MbbはボーダーScと称される生地によって覆われる。このボーダーScの上縁部は上側の表地Saの縁部に止着され、このボーダーScの下縁部は図示しない下側の表地の縁部に止着され、マットレスが構成される。
【0020】
前記表地Saはパネルなどとも称され、図示の例では、かかる表地Saをキルティングによって構成させている。表地Saの縁部には、その全周に亘って、フランジ状生地Sa’が備えられている。図示の例では、かかるフランジ状生地Sa’は前記表地Saにおける水平面部Mba側に位置される内面と一体をなすと共に、前記集合体Mbの水平面部Mbaを表地Saで覆ったときにこの集合体Mbの厚さ側面部Mbbの外方に延び出すようになっている。
【0021】
詰物Sbは典型的にはマット状をなし、プラスチックフォーム材や不織布などが用いられる。図示の例では、表地Saと集合体Mbの水平面部Mbaとの間に一枚の詰物Sbが納められているが、二枚以上の詰物Sbが納められる場合もある。
【0022】
この実施の形態にかかるマットレスは、 前記ボーダーワイヤーMaに対するクリップ1と、前記クリップ1との間で前記水平面部Mbaを覆う表地Saの縁部に連接されたフランジ状生地Sa’及び前記表地Saと前記水平面部Mbaとの間に納められる詰物Sbの縁部の双方又はいずれか一方を挟持するリテーナ2とを有している。
【0023】
かかるクリップ1は、前記水平面部Mbaに接する横向き部分10と、この横向き部分10の外端部10cから高さ方向zに延びる縦向き部分11とを有しており、前記横向き部分10と前記縦向き部分11との間の屈曲部12の屈曲内側に前記ボーダーワイヤーMaを弾性変形により内部に受け入れるクランプ部13を備えると共に、前記縦向き部分11の突き出し端部に頭部11aを備えている。
【0024】
一方、前記リテーナ2は、入り口23を弾性的に広げながら前記クリップ1の前記頭部11aを内部に受け入れるチャンネル状体となっている。
【0025】
前記クリップ1は、前記クランプ部13に前記弾性変形によりボーダーワイヤーMaを留め付けることで前記集合体Mb側と結合され、また、このクリップ1の縦向き部分11の頭部11aとリテーナ2との間にフランジ状生地Sa’及び詰物Sbの縁部を介在させた状態からリテーナ2の入り口23を弾性的に広げながらこのリテーナ2内に前記頭部11aを受入させることでフランジ状生地Sa’及び詰物Sb側と結合され、これにより、前記集合体Mb側とフランジ状生地Sa’及び詰物Sb側とが一体化される。かかる結合は特別な工具などを用いなくとも適切になすことができ、コイルコンストラクションMを主体としたマットレスを容易に製造することが可能となる。
【0026】
マットレスの使用状態においては、フランジ状生地Sa’及び詰物Sbの縁部を高さ方向zに引っ張る向きの力が作用されることとなるが、前記頭部11aはクリップ1の縦向き部分11の突き出し端部に形成されていることから、このような力が作用されればされるほどリテーナ2が前記頭部11aとの間でかかるフランジ状生地Sa’及び詰物Sbの縁部をより強固に挟持するようにすることができる。すなわち、このような力が作用された場合、リテーナ2には前記頭部11aを中心とした図3及び図4において符号Fで示す向きの前記頭部11aを周回する向きの力が作用されることから、前記縦向き部分11の外側において前記頭部11aとリテーナ2との間での挟持力を前記のような力が作用されればされるほど大きくさせることができる。
【0027】
また、前記クリップ1とボーダーワイヤーMaの結合は、ボーダーワイヤーMaの受け入れ時と同じ程度のクランプ部13の弾性変形が生じる力でクランプ部13からボーダーワイヤーMaが抜け出される向きにクリップ1を引っ張るなどすることにより、特別な工具などを用いなくても解除できる。また、前記クリップ1とフランジ状生地Sa’及び詰物Sb側との結合も、リテーナ2に頭部11aを受入させる時と同じ程度の弾性変形がリテーナ2に生じる力でリテーナ2を引っ張るなどしてこのリテーナ2内から頭部11aを抜け出させることで、特別な工具などを用いなくても解除できる。すなわち、前記コイルコンストラクションMと前記表地Sa及び詰物Sbとの分離さらにはこれらからのクリップ1の分離も容易になすことができる。
【0028】
典型的には、前記四角形の枠状をなすボーダーワイヤーMaの各辺において、二以上のクリップ1を用いて前記結合がなされる。図示の例では、一つのクリップ1に一つのリテーナ2が組み合わされるようになっている。また、クリップ1の左右方向xの寸法(ボーダーワイヤーMaの長さ方向に沿った方向)はリテーナ2の左右方向xの寸法の約二倍となっている。もっとも、クリップ1の左右方向xの寸法をさらに大きくして、一つのクリップ1に二以上のリテーナ2が組み合わされるようにしても構わない。
【0029】
図示の例では、クリップ1における前記横向き部分10及び縦向き部分11は共に板状を呈している。また、クリップ1の屈曲部12の屈曲内側において、前記横向き部分10と前記縦向き部分11とがなす角度は、直角よりもやや角度を小さくした鋭角となっっている。前記屈曲部12の屈曲外側はアール面12aとなっており、このアール面12aを介して横向き部分10の外面と縦向き部分11の外面とが連続している。また、前記屈曲部12の屈曲内側もアール面12bとなっている。横向き部分10の内面側には、前記屈曲部12と頭部11aとの間となる位置において、リブ状部11bが左右方向xに亘って形成されている。このリブ状部11bは、前記屈曲部12に向けられた側を湾曲内側とするように湾曲している。リブ状部11bの突き出し端11cと横向き部分10の内面との間の距離は、ボーダーワイヤーMaの直径よりもやや小さくなっている一方で、前記屈曲部12とリブ状部11bとの間に形成されるチューブ状の空間13aはボーダーワイヤーMaの直径と実質的に等しくなっている。図示の例では、かかるリブ状部11bの突き出し端11cと横向き部分10との間から前記空間13a内に、両者の間の前記距離を広げる弾性変形を生じさせながらボーダーワイヤーMaを納め入れこれを保持するようになっている。すなわち、図示の例は、前記屈曲部12とリブ状部11bとによって前記クランプ部13を構成させている。
【0030】
図示の例では、横向き部分10の内外方向yの寸法は、縦向き部分11の高さ方向zの寸法よりも大きくなっている。また、前記ボーダーワイヤーMaよりも内方に位置される横向き部分10の内端部10aは、屈曲されて、縦向き部分11の延び出す側と同じ側に向けて突き出す立ち上がり部10bが形成されている。この立ち上がり部10bの突き出し寸法は縦向き部分11の高さ方向zの寸法よりも小さくなっている。そして、前記横向き部分10は、前記クランプ部13にボーダーワイヤーMaを保持させた状態において、前記立ち上がり部10bにおいて前記コイルコンストラクションMの水平面部Mbaに接するようになっている。
【0031】
頭部11aは、図示の例では、クリップ1の左右方向xに亘る長さを備えた帯板状体の一面であって、その外端と内端との間に、縦向き部分11の突き出し端部を一体に連接させることで、この突き出し端部に形成されている。
【0032】
また、この実施の形態にあっては、前記クリップ1の前記縦向き部分11における前記クランプ部13と前記頭部11aとの間であって、前記クリップ1の左右方向x中程の位置に、突出部11dを形成している。図示の例では、かかる突出部11dは、縦向き部分11の内面側において、クランプ部13を構成する前記リブ状部11bに一端を一体に連接させると共に他端を前記頭部11aに一体に連接させた縦向きリブ11eによって構成されている。この縦向きリブ11eの突き出し端と頭部11a、つまり、前記帯板状体の内端との間には、前記リテーナ2の後述の係合代14となる間隔が形成されている。
【0033】
一方、前記リテーナ2は、その左右方向xのいずれの位置においても、内外方向yに沿った断面を同一とする形状となっており、押し出し成形により合成樹脂から適切に生成できるようになっている。
【0034】
図示の例では、リテーナ2は、基板20と、この基板20の一面側においてこの基板20の外端から立ち上がる外側立ち上がり部21と、この基板20の一面側においてこの基板20の内端から立ち上がる内側立ち上がり部22とを備えている。また、外側立ち上がり部21の突き出し端には、内側立ち上がり部22側に向けて突き出す爪部21aが形成されていると共に、内側立ち上がり部22の突き出し端には、外側立ち上がり部21側に向けて突き出す爪部22aが形成されている。外側立ち上がり部21と内側立ち上がり部22との間の距離は前記クリップ1の頭部11aの内外方向yの寸法よりもやや大きくなっている。これに対して、前記爪部21a、22a間の距離は、前記クリップ1の頭部11aの内外方向yの寸法よりもやや小さくなっており、かかる爪部21a、22a間がリテーナ2の入り口23となっている。
【0035】
前記クリップ1の横向き部分10が前記集合体Mbの水平面部Mbaに接し、縦向き部分11がコイルコンストラクョンMの厚さ側面部Mbbの外方に位置されるように、前記クランプ部13にボーダーワイヤーMaを保持させた状態から、前記フランジ状生地Sa’及び前記詰物Sbの縁部の双方又はいずれか一方を間に挟んで頭部11aの外面部にリテーナ2の入り口23を所定の力をもって押しつけると、リテーナ2側がこの入り口23を広げるように弾性変形をして前記フランジ状生地Sa’及び前記詰物Sbの縁部の双方又はいずれか一方と一緒に頭部11aをリテーナ2内に受け入れるようになっている。そして、受け入れ終了位置でのリテーナ2の弾性復帰により、リテーナ2の外側立ち上がり部21の爪部21aがクリップ1の頭部11aを構成する帯板状体の外端を係合代14としてこれに係合すると共に、リテーナ2の内側立ち上がり部22の爪部22aがクリップ1の頭部11aを構成する帯板状体の内端と前記縦向きリブ11eの突き出し端との間を係合代14としてこれに係合するようになっている。これにより、クリップ1を介して前記集合体Mb側とフランジ状生地Sa’及び詰物Sb側とが一体化される。図示の例では、前記基板20の内面であって、前記入り口23の直下には、左右方向xに亘る突条24が形成されており、クリップ1の頭部11aをリテーナ2内に前記のように受け入れさせた状態において、この突条24が頭部11a下においてフランジ状生地Sa’及び詰物Sbの縁部に突き立てられるようになっている。なお、図示の例では、前記集合体Mbの水平面部Mbaに張り込まれるシーティングSdの縁部をクリップ1のクランプ部13に納めた状態で、このクリップ1のボーダーワイヤーMaへの取り付けがなされるようになっている。
【0036】
マットレスの使用状態においては、フランジ状生地Sa’及び詰物Sbの縁部を高さ方向zに引っ張る向きの力が作用されたときは、リテーナ2には前記頭部11aを中心とした図3及び図4において符号Fで示す向きの前記頭部11aを周回する向きの力が作用され、リテーナ2の外側立ち上がり部21の爪部21aとクリップ1の頭部11aの外端11a’との距離はより狭められ、両者の間で前記フランジ状生地Sa’及び前記詰物Sbの縁部はより強固に挟持される。
【0037】
リテーナ2内に頭部11aは位置されるが、前記突出部11dとしての縦向きリブ11eが位置されない位置までリテーナ2をクリップ1の縦向き部分11をガイドにして左右方向xにスライド移動させると、この縦向きリブ11eの突き出し寸法分の余裕が頭部11aとリテーナ2との間に生じることから、リテーナ2内から頭部11aを抜き出し易くなる。このように、リテーナ2をスライド移動させた状態から、頭部11aをリテーナ2内から抜け出させる向きにリテーナ2を引っ張ることで、前記入り口23を再び広げさせてリテーナ2内から頭部11aを抜け出させ、クリップ1とフランジ状生地Sa’及び詰物Sb側との結合をスムースに解除することができる。
【0038】
前記クリップ1及びリテーナ2を、プラスチック成形品とすることで、これらにおける前記弾性変形特性を有すべき部分に、かかる弾性変形特性を容易且つ適切に付与することができる。
【0039】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0040】
Ma ボーダーワイヤー
Mba 水平面部
Sa 表地
Sa’ フランジ状生地
z 高さ方向
1 クリップ
10 横向き部分
10c 外端部
11 縦向き部分
11a 頭部
12 屈曲部
13 クランプ部
2 リテーナ
23 入り口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9