特許第6284352号(P6284352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284352
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】軸受装置及び情報記録再生装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/80 20060101AFI20180215BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20180215BHJP
   F16C 19/54 20060101ALI20180215BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20180215BHJP
   G11B 21/02 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   F16C33/80
   F16C19/06
   F16C19/54
   F16C33/58
   G11B21/02 630D
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-256342(P2013-256342)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-113907(P2015-113907A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 春彦
(72)【発明者】
【氏名】小坂 貴之
(72)【発明者】
【氏名】飯野 朗弘
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−332201(JP,A)
【文献】 特開2013−048005(JP,A)
【文献】 実開平04−048424(JP,U)
【文献】 実開平01−121714(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00−19/56,33/30−33/66
F16C 33/72−33/82
G11B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトに外挿され、前記シャフトの軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受と、
前記シャフトに接合され、前記転がり軸受を前記軸方向の外側から覆うハブキャップと、を備え、
前記転がり軸受は、前記シャフトに固定された内輪と、前記シャフトの径方向の外側から前記内輪を囲む外輪と、を備え、
前記ハブキャップの前記軸方向の内側には、前記転がり軸受を封止するシールドが配置され、
前記ハブキャップは、前記軸方向の内側に突出する段差部を有し、
前記段差部の軸方向の内側の面は前記外輪の軸方向の外側端部よりも前記外輪の軸方向の内側に設けられると共に前記シールドとの間には軸方向の隙間が設けられていることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
記ハブキャップは、前記軸方向の内側に突出する第二段差部を有し、
前記第二段差部の軸方向の内側の面は、前記内輪の軸方向の外側端部よりも前記内輪の軸方向の内側に設けられていると共に前記シールドとの間には軸方向の隙間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記シールドは、前記軸方向の内側に屈曲する曲げ部を有し、
前記段差部には、前記曲げ部に向けて突出する凸部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
記外輪の前記軸方向の外側端部には、前記軸方向の内側に凹み、且つ、前記シールドを保持するシールド保持部が形成され、
前記ハブキャップは、前記シールド保持部の径方向の内側端部と前記外輪の前記軸方向の外側端部とに沿って屈曲する第二曲げ部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記ハブキャップは、前記一対の転がり軸受の一方の転がり軸受の前記軸方向の外側及び他方の転がり軸受の前記軸方向の外側の両側に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記ハブキャップの径方向の内側部分の軸方向内側端部は、前記内輪の前記軸方向の外側端部に当接していることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の軸受装置と、
前記シャフトに接続されたハウジングと、
前記外輪に外嵌され、前記シャフトの中心軸回りに回動する回動部材と、
前記回動部材に装着され、磁気記録媒体に情報の記録および再生を行うスライダと、
を備えたことを特徴とする情報記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置及び情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の情報をディスク(磁気記録媒体)に記憶・再生させるハードディスクなどの情報記録再生装置が知られている。一般的に、情報記録再生装置は、ディスクに信号を記録再生するスライダを備えたヘッドジンバルアセンブリと、ヘッドジンバルアセンブリを先端側に装着したアーム(回動部材)と、を備えている。このアームは、基端側に設けられた軸受装置によって回動可能とされている。アームを回動させることにより、スライダをディスクの所定位置に移動させ、信号の記録や再生を行うことができる。
【0003】
ところで、この種の軸受装置として、例えば下記特許文献1に記載された構成が知られている。この軸受装置は、シャフトと、シャフトに外挿され、シャフトの軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受と、一対の転がり軸受を内挿するスリーブと、転がり軸受を軸方向の外側から覆うハブキャップと、を備えている。例えば、ハブキャップは、シャフトの外周及びスリーブの内周に固定され、且つ、径方向の中間部で全周に亘って細幅に切断されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−92870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、転がり軸受部が回転したときに、ハブキャップの径方向の中間部で全周に亘って細幅に切断された部分の隙間からグリースが外部に飛散するおそれがある。また、この隙間から、グリースから発生するアウトガスが外部に大量に放出されるおそれがある。とりわけ、ハードディスクなどの情報記録再生装置に軸受装置を採用した場合にあっては、グリースやアウトガスがディスク等に付着することにより、ディスクの記録不良および再生不良や、部品が劣化等の要因となるおそれがある。特に、近年、情報記録再生装置の高密度化が進んでおり、このような不良に対応することの要求が高まっている。従って、グリースの飛散やアウトガスの放出を抑制するという点で、課題が残されている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、グリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することが可能な軸受装置及び情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用した。
【0008】
(1)即ち、本発明の第一の態様に係る軸受装置は、シャフトと、前記シャフトに外挿され、前記シャフトの軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受と、前記シャフトに接合され、前記転がり軸受を前記軸方向の外側から覆うハブキャップと、を備え、前記転がり軸受は、前記シャフトに固定された内輪と、前記シャフトの径方向の外側から前記内輪を囲む外輪と、を備え、前記ハブキャップの前記軸方向の内側には、前記転がり軸受を封止するシールドが配置され、前記ハブキャップは、前記軸方向の内側に突出する段差部を有し、前記段差部の軸方向の内側の面は前記外輪の軸方向の外側端部よりも前記外輪の軸方向の内側に設けられると共に前記シールドとの間には軸方向の隙間が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ハブキャップの段差部により、ハブキャップと転がり軸受との隙間を複雑なラビリンス状とすることができる。よって、軸受装置の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することができる。
【0010】
(2)上記(1)に記載の軸受装置において、前記ハブキャップは、前記軸方向の内側に突出する第二段差部を有し、前記第2段差部の軸方向の内側の面は、前記内輪の軸方向の外側端部よりも前記内輪の軸方向の内側に設けられていると共に前記シールドとの間には軸方向の隙間が設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、ハブキャップの第二段差部により、ハブキャップとシールドとの隙間をさらに複雑なラビリンス状とすることができる。よって、軸受装置の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を確実に抑制することができる。
【0012】
(3)上記(2)に記載の軸受装置において、前記シールドは、前記軸方向の内側に屈曲する曲げ部を有し、前記段差部には、前記曲げ部に向けて突出する凸部が形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、ハブキャップの凸部とシールドの曲げ部とにより、ハブキャップとシールドとの隙間をさらに複雑なラビリンス状とすることができる。よって、軸受装置の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を確実に抑制することができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の軸受装置において、前記外輪の前記軸方向の外側端部には、前記軸方向の内側に凹み、且つ、前記シールドを保持するシールド保持部が形成され、前記ハブキャップは、前記シールド保持部の径方向の内側端部と前記外輪の前記軸方向の外側端部とに沿って屈曲する第二曲げ部を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、ハブキャップの第二曲げ部と外輪のシールド保持部とにより、ハブキャップと外輪との隙間をさらに複雑なラビリンス状とすることができる。よって、軸受装置の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を確実に抑制することができる。
【0016】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の軸受装置において、前記ハブキャップは、前記一対の転がり軸受の一方の転がり軸受の前記軸方向の外側及び他方の転がり軸受の前記軸方向の外側の両側に配置されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、一対の転がり軸受が軸方向の両側から覆われるので、軸受装置内部のグリースが飛散したり、軸受装置内部に塵埃が入り込んだりすることを抑制することができる。これにより、転がり軸受の円滑な回転が妨げられることがなく、転がり軸受の性能を確保することができる。
【0018】
(6)上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の軸受装置において、前記ハブキャップの径方向の内側部分の軸方向内側端部は、前記内輪の軸方向の外側端部に当接していてもよい。
【0019】
この構成によれば、ハブキャップと各部材との間隔が小さくなるので、ラビリンス効果が向上する。そのため、予圧管理に影響なく、軸受装置内部のグリースが飛散したり、軸受装置内部に塵埃が入り込んだりすることを抑制することができ、転がり軸受の性能を確保することができる。
さらに、ハブキャップと各部材との間隔が小さくなることで、軸受装置の薄型化も可能となる。
【0020】
(7)本発明の第二の態様に係る情報記録再生装置は、上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の軸受装置と、前記シャフトに接続されたハウジングと、前記外輪に外嵌され、前記シャフトの中心軸回りに回動する回動部材と、前記回動部材に装着され、磁気記録媒体に情報の記録及び再生を行うスライダと、を備えたことを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、上記の軸受装置を備えるため、グリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することができる。
さらに、この構成によれば、グリースに起因する情報記録再生装置の内部の汚染を抑制することができ、ディスクの書き込みや読み取りを確実に実行することができるようになるため、信頼性に優れた情報記録再生装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、グリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することが可能な軸受装置及び情報記録再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る情報記録再生装置の斜視図である。
図2図1のA−A線における側面断面図である。
図3】第一実施形態に係る軸受装置の要部の拡大断面図である。
図4】第二実施形態に係る軸受装置の要部の拡大断面図である。
図5】第三実施形態に係る軸受装置の要部の拡大断面図である。
図6】第四実施形態に係る軸受装置の要部の拡大断面図である。
図7】第五実施形態に係る軸受装置の要部の拡大断面図である。
図8】第一実施形態の第一変形例に係る軸受装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
(情報記録再生装置)
図1は、実施形態に係る情報記録再生装置1の斜視図であり、図2図1のA−A線における側面断面図である。
図1に示すように、情報記録再生装置1は、記録層を有するディスクD(磁気記録媒体)に対して、書き込み及び読み取りを行う装置である。情報記録再生装置1は、外輪40(図2参照)に外嵌され、シャフト20の中心軸L1回りに回動するアーム8(回動部材)と、アーム8の先端側に支持されたヘッドジンバルアセンブリ4と、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に装着されたスライダ2と、ヘッドジンバルアセンブリ4をスキャン移動させるアクチュエータ6(VCM:ボイスコイルモータ)と、ディスクDを回転させるスピンドルモータ7と、情報に応じて変調した電流をスライダ2に供給する制御部5と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0025】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料からなり、上部に開口部を有する箱型形状のものであって、平面視四角形状の底部9aと、底部9aの周縁部から垂直に立設された周壁(不図示)とで構成されている。周壁に囲まれたハウジング9の内側には、上述した各構成品を収容する凹部が形成される。底部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定されている。
【0026】
ディスクDの側方には、軸受装置10が配置されている。図2に示すように、軸受装置10はスリーブ8aに挿入され、スリーブ8aの外周面にアーム8が固着されている。図1に示すように、軸受装置10を挟んでアーム8の一方側は、上述したアクチュエータ6に接続されている。またアーム8の他方側はディスクDの表面と平行に延設され、その先端にヘッドジンバルアセンブリ4が接続されている。ヘッドジンバルアセンブリ4は、サスペンション3と、サスペンション3の先端に装着され、ディスクDの表面に対向配置されたスライダ2とを備えている。スライダ2は、ディスクDに対する情報の書き込み(記録)を行う記録素子と、ディスクDから情報の読み取り(再生)を行う再生素子とを備えている。
【0027】
上記のように構成された情報記録再生装置1において、情報の記録または再生を行うには、まずスピンドルモータ7を駆動して、中心軸L2の周りにディスクDを回転させる。またアクチュエータ6を駆動して、軸受装置10の中心軸L1の周りにアーム8を回動させる。これにより、ヘッドジンバルアセンブリ4の先端に配置されたスライダ2を、ディスクDの表面の各部にスキャン移動させることができる。そして、スライダ2の記録素子または再生素子を駆動することにより、ディスクDに対する情報の記録または再生を行うことができる。
【0028】
(第一実施形態、軸受装置)
図3は、第一実施形態に係る軸受装置10の要部の拡大断面図である。
図2及び図3に示すように、第一実施形態に係る軸受装置10は、シャフト20と、シャフト20に外挿され、シャフト20の軸方向に並んで配置された一対の転がり軸受30(第一転がり軸受31及び第二転がり軸受32)と、シャフト20と同軸に配置され、一対の転がり軸受31,32の軸方向の内側に配置された円板状のスペーサ70と、シャフト20に接合され、転がり軸受30を軸方向の外側から覆うハブキャップ80と、を備えている。
【0029】
尚、本願では、軸受装置10の中心軸(即ちシャフト20の中心軸)L1に沿った方向を「軸方向」と呼ぶ。また本願では、一対の転がり軸受31,32の軸方向の内側(一対の転がり軸受31,32のうち一方の転がり軸受から見て他方の転がり軸受側、各転がり軸受31,32のスペーサ70側)を「軸方向の内側」と呼び、一対の転がり軸受31,32の軸方向の外側(一対の転がり軸受31,32のうち一方の転がり軸受から見て他方の転がり軸受の反対側、各転がり軸受31,32のスペーサ70とは反対側)を「軸方向の外側」と呼ぶ。また、中心軸L1に直交する方向を「径方向」と呼び、中心軸L1回りに周回する方向を「周方向」と呼ぶ。
【0030】
シャフト20は、アルミニウムやステンレス等の金属材料により円柱形状に形成され、ハウジング9に接続されている。シャフト20の軸方向の一方側にはフランジ25が形成されている。シャフト20には、このシャフト20の軸方向の端面に開口する凹部27が形成されている。凹部27は、シャフト20を軸方向に貫通していて、シャフト20の軸方向の両端面に各別に開口している。凹部27は、中心軸L1と同軸に配置されている。凹部27は、シャフト20の軸方向の一方側(フランジ25が形成された側)において一部裾広がりとなっている。
【0031】
図2に示すように、軸受装置10は、転がり軸受30として、シャフト20の軸方向の一方側に配置された第一転がり軸受31と、シャフト20の軸方向の他方側に配置された第二転がり軸受32と、を備えている。尚、第一転がり軸受31及び第二転がり軸受32は同形状であって、面対称に配置されている。
【0032】
図3に示すように、転がり軸受30は、シャフト20に固定された内輪36と、シャフト20の径方向の外側から内輪36を囲むと共にスペーサ70の軸方向の端面に当接する外輪40と、内輪36と外輪40との間に配置された複数の転動体35と、転動体35を転動自在に保持するリテーナ50と、転動体35の軸方向の外側に配置され内輪36と外輪40との隙間を封止するシールド60(内側シールド60a及び外側シールド60b)と、を備えている。
【0033】
内輪36及び外輪40は、金属材料により略円筒形状に形成されている。
内輪36の内径は、シャフト20に挿入可能な寸法に形成されている。本実施形態では、内輪36の内径は、シャフト20の外径よりも若干大きくなるように形成されている。内輪36は、シャフト20に挿入されて、予圧が付与された状態で例えば接着剤等により固定される。尚、内輪36の内径は、シャフト20の外径と同一か、若干小さくなるように形成されていてもよい。この場合においては、内輪36は、シャフト20に挿入されて圧入固定される。
内輪36の外周面における軸方向の中心には、転動溝38が形成されている。転動溝38は、内輪36の全周に亘って形成されている。
【0034】
外輪40の軸方向の中央付近には、外輪本体部45が形成されている。外輪本体部45の内周面のうち外輪40の軸方向の中心には、転動溝48が形成されている。転動溝48は、外輪本体部45の全周に亘って形成されている。
転動体35は、金属材料により球状に形成されている。転動体35は、各転動溝38,48の内部に配置され、各転動溝38,48に沿って転動するようになっている。
【0035】
外輪40の軸方向の外側端部には、軸方向の内側に凹み、且つ、シールド60を保持するシールド保持部41(外側シールド保持部41b及び内側シールド保持部41a)が形成されている。シールド保持部41は、外輪40の軸方向の外側端部における径方向の内側縁部が全周に亘って切り欠かれることにより形成される。
【0036】
外輪本体部45の軸方向の外側には、外側シールド60bを保持する外側シールド保持部41bが形成されている。一方、外輪本体部45の軸方向の内側には、内側シールド60aを保持する内側シールド保持部41aが形成されている。内側シールド保持部41aは、スペーサを保持するスペーサ保持部としても機能する。
尚、外側シールド保持部41b及び内側シールド保持部41aは同形状であって、面対称に配置されている。
【0037】
外輪40の外径は、外輪40の軸方向の全体にわたって同等である。一方、外輪40の内径は、外輪本体部45の内径が最小である。内側シールド保持部41aの内径及び外側シールド保持部41bの内径は同等であり、外輪本体部45の内径より大きい。
【0038】
図2に示すように、スペーサ70は、軸方向に所定の厚さを有する。スペーサ70は、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス等の金属材料からなるリング状の部材であり、鍛造や機械加工等により形成されている。スペーサ70の内径は、転がり軸受30の外輪40の内径(外輪本体部45の内径)よりも若干小さい。スペーサ70の外径は、転がり軸受30の外輪40の外径よりも若干小さい。
【0039】
スペーサ70は、第一転がり軸受31と第二転がり軸受32との間に配置されている。これにより、第一転がり軸受31及び第二転がり軸受32を、軸方向に所定間隔だけ離間して配置できる。
【0040】
さらに、第一転がり軸受31の外輪40と第二転がり軸受32の外輪40との離間距離をスペーサ70により保持しつつ、第一転がり軸受31の内輪36及び第二転がり軸受32の内輪36を軸方向に沿って相対的に押圧した状態でシャフト20に固定することにより、第一転がり軸受31の内輪36及び第二転がり軸受32の内輪36に予圧を付与できる。第一転がり軸受31の内輪36及び第二転がり軸受32の内輪36は、予圧が付与された状態でシャフト20に対して、例えば接着剤により固定される。そのため、いわゆる内輪予圧により軸受装置10を形成できる。転がり軸受30の内輪36の軸方向の外側端部は、転がり軸受30の外輪40の軸方向の外側端部よりも軸方向に若干内側に配置されている。
【0041】
いわゆる内輪予圧により軸受装置10を形成することにより、一対の転がり軸受31,32の高剛性化を図ることができ、軸受装置10の共振周波数(共振点)を高くできる。そのため、高速回転に対応可能な軸受装置10とすることができる。
【0042】
本実施形態に係る内輪予圧は、例えば、第一転がり軸受31の内輪36及び第二転がり軸受32の内輪36を軸方向に沿って相対的に押圧した状態で、第一転がり軸受31の内輪36及び第二転がり軸受32の内輪36をシャフト20に固定することにより予圧を付与する、いわゆる定位置予圧を採用する。尚、定位置予圧に限らず、例えば、付勢部材を設け、第一転がり軸受31の内輪36及び第二転がり軸受32の内輪36を軸方向に沿って相対的に押圧した状態で保持することにより予圧を付与する、いわゆる定圧予圧を採用してもよい。
【0043】
尚、内輪36とシャフト20との固定方法や、外輪40とスリーブ8aとの固定方法は、接着剤に限定されない。従って、例えば、圧入やレーザー溶接等により、内輪36をシャフト20に固定し、外輪40をスリーブ8aに固定してもよい。これにより、接着剤を用いることなく、内輪36をシャフト20に固定でき、外輪40をスリーブ8aに固定できる。従って、接着剤からのアウトガスの発生を防止でき、アウトガスに起因する情報記録再生装置1(図1参照)の不良を防止できる。
【0044】
図3に示すように、外輪本体部45の軸方向の側面には、シールド60を保持する保持部42が形成されている。保持部42は、内輪36の軸方向の外側端部よりも軸方向の内側に配置されている。
【0045】
軸受装置10の大型化を抑制する観点から、保持部42は軸方向において、より内側に配置されることが好ましい。本実施形態では、いわゆる内輪予圧により、転がり軸受30の内輪36の軸方向の外側端部が、転がり軸受30の外輪40の軸方向の外側端部よりも軸方向に若干内側に配置されている。そのため、保持部42は、転がり軸受30の内輪36の軸方向の外側端部よりも軸方向の内側に配置されている。
【0046】
シールド保持部41の径方向の内側には、保持部42の外周から、保持部42よりも軸方向の外側に軸方向に沿って立ち上がる立設部43が形成されている。シールド保持部41の軸方向の外側端部には、外輪40の径方向の内側に向けて突出する庇部44が形成されている。保持部42と庇部44との間は、立設部43により連結されている。尚、立設部43は、シールド保持部41における軸方向の内側に位置する径方向の内側の部分である。
【0047】
庇部44において径方向の内側に最も突出する部分(以下、頂部44pと称する)は、転がり軸受30の内輪36の軸方向の外側端部よりも軸方向の外側で且つシャフト20の軸方向の外側端部よりも軸方向の内側に配置されている。庇部44は、外輪40の軸方向の外側端部における径方向の内側に全周に亘って形成されると共に、立設部43から頂部44pに亘って外径が漸次小さくなるように形成されている。尚、庇部44は、シールド保持部41における軸方向の外側に位置する径方向の内側の部分である。
【0048】
外側シールド60b(シールド)は、内輪36と外輪40との隙間を封止する封止部61と、封止部61の径方向の外側に配置され、軸方向の内側に屈曲する曲げ部62と、曲げ部62の径方向の外側に配置され、転動体35とは反対方向に突出する爪部65と、を備えている。曲げ部62は、外輪本体部45の軸方向の側面(保持部42)に当接する当接部64と、当接部64の径方向の内側に配置され、当接部64と封止部61との間を連結する連結部63と、を備えている。爪部65は、当接部64の外周に沿って形成されている。爪部65は、例えば外側シールド60bの周方向に等角度間隔で複数形成されている。尚、爪部65の構成はこれに限らず、例えば当接部64の全周に亘って形成されていてもよい。
【0049】
内側シールド60aは、外側シールド60bと同様の構成である。尚、内側シールド60aの曲げ部62は、軸方向の外側(転動体35の側)に屈曲している。
【0050】
ここで、シールド60の保持について、外側シールド60bを例に挙げて説明する。内側シールド60aについても同様の保持であるため、説明を省略する。
内輪36と外輪40との間に外側シールド60bを圧入すると、外輪40の外側シールド保持部41bの内周面(庇部44)に爪部65が当接し、外側シールド60bの径方向の内側に向かって爪部65が弾性変形する。これにより、外側シールド保持部41bの内周面(庇部44のうち立設部43の側の部分)に外側シールド60bが保持される。
【0051】
庇部44が形成されることにより、外側シールド60bが軸方向の外側に大きくずれたり、外部に抜け出たりすることを抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、シールド60として、外側シールド60b及び内側シールド60aの双方を備えている。これにより、内輪36と外輪40との隙間が閉塞されるので、その隙間に充填されたグリースが飛散するのを抑制することができる。これにより、転がり軸受30が焼き付くことなく、円滑な回転が可能になるため、転がり軸受30の性能を確保することができる。また、飛散したグリースがディスクDの表面に付着して書き込みエラーや読み取りエラーが発生するのを抑制することができる。さらに、内輪36と外輪40との隙間が閉塞されるので、その隙間に塵埃が入り込むのを抑制することができる。これにより、転がり軸受30の円滑な回転が可能になるため、転がり軸受30の性能を確保することができる。
尚、外側シールド60b及び内側シールド60aは同形状であって、面対称に配置されている。
【0053】
図2に示すように、ハブキャップ80は、シャフト20に外挿され、転がり軸受30を軸方向の外側から覆っている。ハブキャップ80は、転がり軸受30の軸方向の外側端部に沿って形成されている。ハブキャップ80は、第一転がり軸受31の軸方向の外側及び第二転がり軸受32の軸方向の外側の両側に配置されている。第一転がり軸受31の軸方向の外側におけるハブキャップ80は、第二転がり軸受32の軸方向の外側におけるハブキャップ80に対して、面対称形状となっている。以下、図3を用いて、第二転がり軸受32の軸方向の外側におけるハブキャップ80について説明する。
【0054】
図3に示すように、ハブキャップ80は、軸方向において転がり軸受30とシャフト20の端面を含む仮想面F1との間に配置され、第二転がり軸受32の外輪40の軸方向の外側端部から軸方向に所定間隔だけ離間している。
【0055】
ハブキャップ80は、径方向に延びる本体部81と、本体部81の径方向の外側に配置され、軸方向の内側に向けて突出する段差部82(第二段差部)と、段差部82の径方向の外側に配置され、シールド60の曲げ部62に向けて突出する凸部83と、本体部81の径方向の外側に配置され、外側シールド保持部41bの径方向の内側端部と外輪40の軸方向の外側端部とに沿って屈曲する曲げ部84(第二曲げ部)と、を備えている。
【0056】
本体部81は、径方向の内側部分が内輪36の軸方向の外側端部を覆うように形成されている。本体部81の径方向の内周面は、シャフト20の外周面21に当接している。本体部81の径方向の内側部分における軸方向の内側の面は、内輪36の軸方向の外側端部に当接している。例えば、ハブキャップ80の本体部81は、シャフト20及び内輪36のそれぞれと接着剤で固定されている。
【0057】
尚、ハブキャップ80とシャフト20、内輪36との固定方法は、接着剤に限定されない。従って、例えば、圧入やレーザー溶接等により、ハブキャップ80をシャフト20、内輪36に固定してもよい。これにより、接着剤を用いることなく、ハブキャップ80をシャフト20、内輪36に固定できる。従って、接着剤からのアウトガスの発生を防止でき、アウトガスに起因する情報記録再生装置1(図1参照)の不良を防止できる。
【0058】
本実施形態では、ハブキャップ80をプレス加工で作製するとともに、ハブキャップ80の径方向の内側端部を内輪36の軸方向の外側端部に当接させている。ところで、内輪予圧のため、ハブキャップを圧入固定する場合には、この予圧量を管理する観点から、ハブキャップが内輪に当接しないようにするのが一般的である。しかし、溶接や接着等の固定方法を用いれば、ハブキャップを内輪に当接してもよい。ハブキャップを内輪に当接させることにより、ハブキャップと各部材との間隔が小さくなるので、ラビリンス効果が向上するとともに、軸受装置の薄型化も可能となる。そして、溶接や接着等の固定方法を用いる場合は、ハブキャップの厚みを薄くすることができるので、容易にプレス加工できる。
【0059】
段差部82は、本体部81の軸方向の内側に配置され、内輪36の軸方向の外側端部の高さとシールド60の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有する。ここで、内輪36の軸方向の外側端部の高さとは、外輪40の軸方向の内側の端面から内輪36の軸方向の外側の端面までの距離をいう。シールド60の軸方向の外側端部の高さとは、外輪40の軸方向の内側の端面からシールド60の封止部61の軸方向の外側の面までの距離をいう。段差部82の厚みとは、段差部82の軸方向の厚み、即ち本体部81の軸方向の内側の面から段差部82の軸方向の内側の面までの距離をいう。
【0060】
段差部82の厚みは、内輪36の軸方向の外側端部の高さとシールド60の軸方向の外側端部の高さとの差よりも若干小さい。そのため、本体部81の径方向の内側部分における軸方向の内側の面が内輪36の軸方向の外側端部に当接することにより、段差部82とシールド60の封止部61との間には、軸方向の隙間が設けられる。
【0061】
凸部83は、段差部82の軸方向の内側に配置され、段差部82の全周に亘って形成されている。凸部83は、曲げ部62の軸方向の高さに対応する大きさの高さを有する。ここで、曲げ部62の軸方向の高さとは、基準(例えば、保持部42(外輪本体部45の軸方向の側面))から連結部63の軸方向の外側端部までの距離をいう。凸部83の高さとは、凸部83の軸方向の高さ、即ち段差部82の軸方向の内側の面から凸部83の軸方向の内側の面までの距離をいう。
【0062】
凸部83の高さは、曲げ部62の軸方向の高さよりも若干小さい。そのため、本体部81の径方向の内側部分における軸方向の内側の面が内輪36の軸方向の外側端部に当接することにより、凸部83と曲げ部62との間には、軸方向又は径方向の隙間が設けられる。
【0063】
曲げ部84は、径方向に延びる外延部86と、外延部86と本体部81との間を連結する連結部85と、を備えている。連結部85は、外側シールド保持部41bの径方向の内側端部を覆うように、本体部81の全周に亘って形成されている。連結部85は、外側シールド保持部41bの径方向の内側端部から径方向に所定間隔だけ離間している。
【0064】
外延部86は、外側シールド保持部41bの軸方向の外側端部を覆うように、連結部85の全周に亘って形成されている。外延部86は、外側シールド保持部41bの軸方向の外側端部から軸方向に所定間隔だけ離間している。外延部86の軸方向の外側の面は、仮想面F1よりも軸方向の内側に配置されている。
【0065】
ハブキャップ80(外延部86)の外径は、外輪40の外径よりも若干小さくなっている。これにより、ハブキャップ80がスリーブ8a(図2参照)の内周面に接触することがなく、転がり軸受30の円滑な回転が妨げられることがないため、転がり軸受30の性能を確保することができる。
【0066】
このように、段差部82とシールド60の封止部61との間、凸部83と曲げ部62との間及び曲げ部84と外側シールド保持部41bとの間のそれぞれには、所定間隔だけ隙間が形成されている。これにより、ハブキャップ80とシールド60との隙間及びハブキャップ80と外輪40との隙間は、ラビリンス状となっている。尚、段差部82とシールド60の封止部61との間の隙間、凸部83と曲げ部62との間の隙間及び曲げ部84と外側シールド保持部41bとの間の隙間は、概ね同じ間隔を有している。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る軸受装置10によれば、ハブキャップ80が軸方向の内側に突出する段差部82を有し、段差部82が内輪36の軸方向の外側端部の高さとシールド60の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有することで、ハブキャップ80の段差部82により、ハブキャップ80とシールド60との隙間を複雑なラビリンス状とすることができる。よって、軸受装置10の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することができる。
【0068】
また、シールド60が軸方向の内側に屈曲する曲げ部62を有し、ハブキャップ80には曲げ部62に向けて突出する凸部83が形成されていることで、ハブキャップ80の凸部83とシールド60の曲げ部62とにより、ハブキャップ80とシールド60との隙間をさらに複雑なラビリンス状とすることができる。よって、軸受装置10の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を確実に抑制することができる。
【0069】
また、ハブキャップ80が外側シールド保持部41bの径方向の内側端部と外輪40の軸方向の外側端部とに沿って屈曲する曲げ部84を有することで、ハブキャップ80の曲げ部84と外輪40の外側シールド保持部41bとにより、ハブキャップ80と外輪40との隙間をさらに複雑なラビリンス状とすることができる。よって、軸受装置10の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を確実に抑制することができる。
【0070】
また、ハブキャップ80が一対の転がり軸受30の第一転がり軸受31の軸方向の外側及び第二転がり軸受32の軸方向の外側の両側に配置されることで、一対の転がり軸受30が軸方向の両側から覆われるので、軸受装置10内部のグリースが飛散したり、軸受装置10内部に塵埃が入り込んだりすることを抑制することができる。これにより、転がり軸受30の円滑な回転が妨げられることがなく、転がり軸受30の性能を確保することができる。
【0071】
また、ハブキャップ80の径方向の内側端部が内輪36の軸方向の外側端部に当接することで、ハブキャップ80と各部材との間隔が小さくなるので、ラビリンス効果が向上する。そのため、予圧管理に影響なく、軸受装置10内部のグリースが飛散したり、軸受装置10内部に塵埃が入り込んだりすることを抑制することができ、転がり軸受30の性能を確保することができる。
さらに、ハブキャップ80と各部材との間隔が小さくなることで、軸受装置10の薄型化も可能となる。
【0072】
本実施形態に係る情報記録再生装置1によれば、上記の軸受装置10を備えるため、グリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することができる。
さらに、この構成によれば、グリースに起因する情報記録再生装置1の内部の汚染を抑制することができ、ディスクの書き込みや読み取りを確実に実行することができるようになるため、信頼性に優れた情報記録再生装置1を実現することができる。
【0073】
尚、本実施形態では、シールド60として、外側シールド60b及び内側シールド60aの双方を備えているものとしたが、これに限られない。例えば、外側シールド60bのみを備えるものとしてもよい。ただし、転がり軸受30の性能を確保する観点からは、外側シールド60b及び内側シールド60aの双方を備えていることが好ましい。
【0074】
また、本実施形態では、第一転がり軸受31の内輪36及び第二転がり軸受32の内輪36に予圧(いわゆる内輪予圧)が付与された例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第一転がり軸受31の外輪40及び第二転がり軸受32の外輪40に予圧(いわゆる外輪予圧)が付与されていてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、転がり軸受30の内輪36の軸方向の外側端部が、転がり軸受30の外輪40の軸方向の外側端部よりも軸方向に若干内側に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、転がり軸受30の外輪40の軸方向の外側端部が、転がり軸受30の内輪36の軸方向の外側端部よりも軸方向に若干内側に配置されていてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、ハブキャップ80の段差部82(第二段差部)が、内輪36の軸方向の外側端部の高さとシールド60の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、ハブキャップ80の段差部82が、外輪40の軸方向の外側端部の高さとシールド60の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有していてもよい。ここで、外輪40の軸方向の外側端部の高さとは、外輪40の軸方向の内側の端面から外輪40の軸方向の外側の端面までの距離をいう。ハブキャップ80の段差部82が、外輪40の軸方向の外側端部の高さとシールド60の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有する構成は、例えば、転がり軸受30の外輪40の軸方向の外側端部が、転がり軸受30の内輪36の軸方向の外側端部よりも軸方向に若干内側に配置されている場合に採用することができる。
【0077】
また、本実施形態では、シャフト20にハブキャップ80を当接させた例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、シャフトと一体となった鍔部を設け、この鍔部にハブキャップを当接させてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、シールド60の曲げ部62はシールド60を外輪40のシールド保持部41に保持させる構造上設けたものであるが、これに限らない。例えば、シールドにおける曲げ部の位置や大きさを自由に設定してもよい。
また、シールドに複数の凹部を設け、これに対応する位置にハブキャップに凸部を設けてもよい。これにより、ラビリンス効果を向上させることができる。
【0079】
(第二実施形態)
図4は、第二実施形態に係る軸受装置100の要部の拡大断面図である。尚、第二実施形態においては、第一実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0080】
図4に示すように、ハブキャップ180は、径方向に延びる本体部181と、本体部181の径方向の外側に配置され、シールド60の曲げ部62に向けて突出する凸部183と、本体部181の径方向の外側に配置され、外側シールド保持部41bの径方向の内側端部と外輪40の軸方向の外側端部とに沿って屈曲する曲げ部184(第二曲げ部)と、を備えている。即ち、本実施形態に係るハブキャップ180は、軸方向の内側に向けて突出する段差部(第二段差部)を有していない。
【0081】
本体部181(径方向の外側部分)とシールド60の封止部61との間には、軸方向の隙間が設けられている。尚、本体部181とシールド60の封止部61との間の隙間は、凸部183と曲げ部62との間の隙間及び曲げ部184と外側シールド保持部41bとの間の隙間よりも、段差部を有しない分、若干大きい間隔を有している。
【0082】
本体部181とシールド60の封止部61との間、凸部183と曲げ部62との間及び曲げ部184と外側シールド保持部41bとの間のそれぞれには、所定間隔だけ隙間が形成されている。これにより、ハブキャップ180とシールド60との隙間及びハブキャップ180と外輪40との隙間は、ラビリンス状となっている。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係る軸受装置100によれば、ハブキャップ180が軸方向の内側に向けて突出する段差部(第二段差部)を有していないため、第一実施形態に係る構造よりも簡単な構造で、軸受装置100の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することができる。
【0084】
(第三実施形態)
図5は、第三実施形態に係る軸受装置200の要部の拡大断面図である。尚、第三実施形態においては、第二実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0085】
図5に示すように、ハブキャップ280は、転がり軸受30の軸方向の外側端部から軸方向に所定間隔だけ離間している。ハブキャップ280は、径方向に延びる本体部281と、本体部281の径方向の内側に配置され、軸方向の内側に向けて突出する段差部282と、段差部282の径方向の外側に配置され、シールド60の曲げ部62に向けて突出する凸部283と、を備えている。即ち、本実施形態に係るハブキャップ280は、外側シールド保持部41bの径方向の内側端部と外輪40の軸方向の外側端部とに沿って屈曲する曲げ部(第二曲げ部)を有していない。
【0086】
本体部281及び段差部282の径方向の内周面は、シャフト20の外周面21に当接している。段差部282の軸方向の内側の面は、内輪36の軸方向の外側端部から所定間隔だけ離間している。例えば、ハブキャップ280の本体部281及び段差部282は、シャフト20と接着剤で固定されている。
【0087】
尚、ハブキャップ280とシャフト20との固定方法は、接着剤に限定されない。従って、例えば、圧入やレーザー溶接等により、ハブキャップ280をシャフト20に固定してもよい。これにより、接着剤を用いることなく、ハブキャップ280をシャフト20に固定できる。従って、接着剤からのアウトガスの発生を防止でき、アウトガスに起因する情報記録再生装置1(図1参照)の不良を防止できる。
【0088】
段差部282は、本体部281の軸方向の内側に配置され、内輪36の軸方向の外側端部の高さと外輪40の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有する。ここで、内輪36の軸方向の外側端部の高さとは、外輪40の軸方向の内側の端面から内輪36の軸方向の外側の端面までの距離をいう。外輪40の軸方向の外側端部の高さとは、外輪40の軸方向の内側の端面から外輪40の軸方向の外側の端面までの距離をいう。段差部282の厚みとは、段差部282の軸方向の厚み、即ち本体部281の軸方向の内側の面から段差部282の軸方向の内側の面までの距離をいう。
【0089】
段差部282の厚みは、内輪36の軸方向の外側端部の高さと外輪40の軸方向の外側端部の高さとの差と概ね同じである。そのため、段差部282の径方向の内側部分における軸方向の内側の面が内輪36の軸方向の外側端部から所定間隔だけ離間することにより、段差部282の径方向の内側部分と内輪36との間、本体部281の径方向の外側部分と外輪40との間のそれぞれには、互いの間隔が同程度に、軸方向の隙間が設けられる。
【0090】
凸部283は、段差部282の軸方向の内側に配置され、段差部282の全周に亘って形成されている。凸部283の高さは、曲げ部62の軸方向の高さよりも、段差部282と内輪36との間隔の分、若干大きくなっている。これにより、凸部283と曲げ部62との間には、段差部282と内輪36との間隔と同程度に、軸方向又は径方向の隙間が設けられている。
【0091】
尚、本体部281の径方向の外側部分は、外側シールド保持部41bの軸方向の外側端部から軸方向に所定間隔だけ離間している。段差部282の径方向の外側端部は、外側シールド保持部41bの径方向の内側端部から径方向に所定間隔だけ離間している。
【0092】
段差部282と内輪36との間、段差部282とシールド60の封止部61との間、凸部283と曲げ部62との間、段差部282と外側シールド保持部41bとの間及び本体部281と外側シールド保持部41bとの間のそれぞれには、所定間隔だけ隙間が形成されている。これにより、ハブキャップ280と転がり軸受30との隙間及びハブキャップ280とシールド60との隙間は、ラビリンス状となっている。
【0093】
以上説明したように、本実施形態に係る軸受装置200によれば、ハブキャップ280が軸方向の内側に突出する段差部282を有し、段差部282が内輪36の軸方向の外側端部の高さと外輪40の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有することで、ハブキャップ280の段差部282により、ハブキャップ280と転がり軸受30との隙間をさらに複雑なラビリンス状とすることができる。よって、軸受装置200の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を確実に抑制することができる。
【0094】
また、ハブキャップ280が外側シールド保持部41bの径方向の内側端部と外輪40の軸方向の外側端部とに沿って屈曲する曲げ部(第二曲げ部)を有していないため、第二実施形態に係る構造よりも簡単な構造で、軸受装置200の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することができる。
【0095】
(第四実施形態)
図6は、第四実施形態に係る軸受装置300の要部の拡大断面図である。尚、第四実施形態においては、第三実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0096】
図6に示すように、ハブキャップ380は、径方向に延びる本体部381と、本体部381の径方向の内側に配置され、軸方向の内側に向けて突出する段差部382と、段差部382の径方向の外側に配置され、軸方向の内側に向けて突出する段差部383(第二段差部)と、を備えている。即ち、本実施形態に係るハブキャップ380は、シールド60の曲げ部62に向けて突出する凸部を有していない。
【0097】
段差部382は、本体部381の軸方向の内側に配置され、内輪36の軸方向の外側端部の高さと外輪40の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有する。段差部382の厚みは、内輪36の軸方向の外側端部の高さと外輪40の軸方向の外側端部の高さとの差と概ね同じである。そのため、段差部382の径方向の内側部分における軸方向の内側の面が内輪36の軸方向の外側端部から所定間隔だけ離間することにより、段差部382の径方向の内側部分と内輪36との間、本体部381の径方向の外側部分と外輪40との間のそれぞれには、互いの間隔が同程度に、軸方向の隙間が設けられる。
【0098】
段差部383は、段差部382の軸方向の内側に配置され、内輪36の軸方向の外側端部の高さとシールド60の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有する。段差部383の厚みは、内輪36の軸方向の外側端部の高さとシールド60の軸方向の外側端部の高さとの差と概ね同じである。そのため、段差部382の径方向の内側部分における軸方向の内側の面が内輪36の軸方向の外側端部から所定間隔だけ離間することにより、段差部383とシールド60との間には、段差部382と内輪36との間隔と同程度に、軸方向の隙間が設けられる。
【0099】
尚、段差部383とシールド60の曲げ部62との間の隙間は、段差部383とシールド60の封止部61との間の隙間よりも、凸部を有しない分、若干大きい間隔を有している。
【0100】
段差部382と内輪36との間、段差部383とシールド60との間、段差部383と外側シールド保持部41bとの間、段差部382と外側シールド保持部41bとの間及び本体部381と外側シールド保持部41bとの間のそれぞれには、所定間隔だけ隙間が形成されている。これにより、ハブキャップ380と転がり軸受30との隙間及びハブキャップ380とシールド60との隙間は、ラビリンス状となっている。
【0101】
以上説明したように、本実施形態に係る軸受装置300によれば、ハブキャップ380がシールド60の曲げ部62に向けて突出する凸部を有していないため、第三実施形態に係る構造よりも簡単な構造で、軸受装置300の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することができる。
【0102】
(第五実施形態)
図7は、第五実施形態に係る軸受装置400の要部の拡大断面図である。尚、第五実施形態においては、第四実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0103】
図7に示すように、ハブキャップ480は、径方向に延びる本体部481と、本体部481の径方向の内側に配置され、軸方向の内側に向けて突出する段差部482と、を備えている。即ち、本実施形態に係るハブキャップ480は、軸方向の内側に向けて突出する段差部(第二段差部)を有していない。
【0104】
段差部482は、本体部481の軸方向の内側に配置され、内輪36の軸方向の外側端部の高さと外輪40の軸方向の外側端部の高さとの差に対応する大きさの厚みを有する。段差部482の厚みは、内輪36の軸方向の外側端部の高さと外輪40の軸方向の外側端部の高さとの差と概ね同じである。そのため、段差部482の径方向の内側部分における軸方向の内側の面が内輪36の軸方向の外側端部から所定間隔だけ離間することにより、段差部482の径方向の内側部分と内輪36との間、本体部481の径方向の外側部分と外輪40との間のそれぞれには、互いの間隔が同程度に、軸方向の隙間が設けられる。
【0105】
尚、段差部482とシールド60との間の隙間は、段差部482と内輪36との間の隙間よりも、段差部(第二段差部)を有しない分、若干大きい間隔を有している。
【0106】
段差部482と内輪36との間、段差部482とシールド60との間、段差部482と外側シールド保持部41bとの間及び本体部481と外側シールド保持部41bとの間のそれぞれには、所定間隔だけ隙間が形成されている。これにより、ハブキャップ480と転がり軸受30との隙間及びハブキャップ480とシールド60との隙間は、ラビリンス状となっている。
【0107】
以上説明したように、本実施形態に係る軸受装置400によれば、ハブキャップ480が軸方向の内側に向けて突出する段差部(第二段差部)を有していないため、第四実施形態に係る構造よりも簡単な構造で、軸受装置400の外部へのグリースの飛散やアウトガスの放出を抑制することができる。
【0108】
尚、上記実施形態では、ハブキャップが一対の転がり軸受30の第一転がり軸受31の軸方向の外側及び第二転がり軸受32の軸方向の外側の両側に配置される例を挙げて説明したが、これに限らない。
【0109】
(第一実施形態の第一変形例)
図8は、第一実施形態の第一変形例に係る軸受装置500の側面断面図である。例えば、図8に示すように、ハブキャップ80が一対の転がり軸受30のうち第二転がり軸受32の軸方向の外側のみに配置されていてもよい。
【0110】
ハブキャップ80は、第二転がり軸受32を軸方向の外側から覆っている。ハブキャップ80は、第二転がり軸受32の軸方向の外側端部に沿って形成されている。
第一転がり軸受31は、内輪36の軸方向の外側の側面がシャフト520のフランジ525に当接した状態で配置されている。第一転がり軸受31は、フランジ525により軸方向の外側から覆われている。
【0111】
尚、上記実施形態では、高さの基準を外輪40の軸方向の内側の端面として説明したが、これに限らない。例えば、スペーサ70が設けられている場合には、高さの基準をスペーサ70の軸方向の一面としてもよい。また、スペーサ70が設けられていない場合には、高さの基準を転動体35の中心としてもよい。
【0112】
尚、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。即ち、実施形態で挙げた具体的な材料や構造などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、情報記録再生装置の具体的な構成は、実施形態の構成に限られない。また、軸受装置のシャフトの具体的な形状も、実施形態の形状に限られない。また、実施形態では転がり軸受の外側シールドを外輪に固定したが、内輪に固定してもよい。さらに、実施形態では、凹部はシャフトを軸方向に貫通しているものとしたが、貫通していなくてもよい。また、第一実施形態の第一変形例の構成と第二〜第五実施形態の構成とを組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…情報記録再生装置、2…スライダ、8…アーム(回動部材)、9…ハウジング、10,100,200,300,400,500…軸受装置、20,520…シャフト、30,31,32…転がり軸受、36…内輪、40…外輪、41…シールド保持部、60b…外側シールド(シールド)、62…曲げ部、82,383…段差部(第二段差部)、83,183,283…凸部、84,184…曲げ部(第二曲げ部)、282,382,482…段差部、80,180,280,380,480…ハブキャップ、D…ディスク(磁気記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8