特許第6284366号(P6284366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284366
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】複数の組織部分の接続
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   A61B17/04
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-528487(P2013-528487)
(86)(22)【出願日】2011年9月19日
(65)【公表番号】特表2013-537813(P2013-537813A)
(43)【公表日】2013年10月7日
(86)【国際出願番号】CH2011000220
(87)【国際公開番号】WO2012037697
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年9月17日
【審判番号】不服2016-5224(P2016-5224/J1)
【審判請求日】2016年4月8日
(31)【優先権主張番号】61/384,919
(32)【優先日】2010年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193366
【氏名又は名称】スポートウェルディング・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SPORTWELDING GMBH
(73)【特許権者】
【識別番号】501485227
【氏名又は名称】ウッドウェルディング・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】レーマン,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ベンガー,アンドレアス
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 根本 徳子
【審判官】 平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0287989(US,A1)
【文献】 特開平6−47048(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0250118(US,A1)
【文献】 米国特許第5163960(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の組織部分または組織部分および移植部分を互いに固定するための締結器具であって、
第1の接触面を有する第1の器具構成要素と、
第2の接触面を有する第2の器具構成要素とを備え、
第1の器具構成要素および第2の器具構成要素は互いに関して変位可能であり、
第1の器具構成要素は、遠位側に向かって面する第1の接触面を有し、
第2の器具構成要素は、第1の接触面の遠位方向に、かつ近位側に向かって面する第2の接触面を有する脚部を有し、
締結具は、締結具が第1および第2の組織部分または移植部分の共通開口に挿通されるように位置づけられることが可能であり、ここで共通開口は第1の組織部分または移植部分の第1貫通開口および第2の組織部分または移植部分の第2貫通開口によって構成され、第1貫通開口および第2貫通開口は互いに整合し、締結具はさらに、第1の接触面が締結具の近位側の端面に接触し、第2の接触面が締結具の遠位側の端面に接触するように位置づけられることが可能であり、締結具が超音波振動の衝撃によって液化可能な熱可塑性材料により構成され、
締結具は、第1および第2の器具構成要素の間に相対力を印加することによって、第1および第2の接触面の間で圧縮可能であり、
器具は、第1および第2の器具構成要素の少なくとも一方に超音波振動の衝撃を相対力に加えてさらに結合するためのエネルギ源をさらに備え、
第1および第2の器具構成要素は分離したツールであり、
第1の接触面もしくは第2の接触面、または第1の接触面および第2の接触面は、エネルギ指示構造を有するヘッド成形部分を有し、エネルギ指示構造が締結具の変形のための液化が起こる地点を決定する、締結器具。
【請求項2】
ヘッド成形部分は、平坦な部分に囲まれたくぼみである、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
エネルギ源は、超音波振動を生成し、第1および第2の器具構成要素のうち少なくとも一方に超音波振動を結合することが可能な振動発生器を含む、請求項1または2のうちいずれか1項に係る器具。
【請求項4】
振動が締結具に当たる位置での振動の出力軸が、振動発生器内の振動の軸に対してある角度となるように超音波振動を偏向するように構成される、請求項3に記載の器具。
【請求項5】
第2の器具構成要素は、締結具を保持し、締結具が近位側からアクセス可能となるまで締結具を遠位側から組織部分または組織部分および移植部分を通って挿入するように装備される、請求項1〜4のうちいずれか1項に係る器具。
【請求項6】
第1および第2の組織部分または組織部分および移植部分を互いに固定するための部品のキットであって、締結器具と、少なくとも1つの締結具と、締結具によって保持されるように構成された少なくとも1つのフィラメント状要素と、を備え、
締結器具は、
第1の接触面を有する第1の器具構成要素と、
第2の接触面を有する第2の器具構成要素とを備え、
第1の器具構成要素および第2の器具構成要素は互いに関して変位可能である分離したツールであり、
第1の器具構成要素は、遠位側に向かって面する第1の接触面を有し、
第2の器具構成要素は、第1の接触面の遠位方向に、かつ近位側に向かって面する第2の接触面を有する脚部を有し、
締結具は、締結具が第1および第2の組織部分または移植部分の共通開口に挿通されるように位置づけられることが可能であり、ここで共通開口は第1の組織部分または移植部分の第1貫通開口および第2の組織部分または移植部分の第2貫通開口によって構成され、第1貫通開口および第2貫通開口は互いに整合し、締結具はさらに、第1の接触面が締結具の近位側の端面に接触し、第2の接触面が締結具の遠位側の端面に接触するように位置決めされることが可能であり、
締結具は、第1および第2の器具構成要素の間に相対力を印加することによって、第1および第2の接触面の間で圧縮可能であり、
器具は、第1および第2の器具構成要素の少なくとも一方に超音波振動の衝撃を相対力に加えてさらに結合するためのエネルギ源をさらに備え、超音波振動の衝撃を結合するためのエネルギ源は超音波装置であって、
締結具は近位および遠位端を含み、近位端もしくは遠位端、または近位端および遠位端の両方は、超音波振動の衝撃によって変形可能/流動可能となることができる熱可塑性材料を含み、フィラメント状要素は締結具の周りにループを形成し、ループの直径は、第1の締結具端部分における第1のヘッドおよび第2の締結具端部分における第2のヘッドの少なくとも一方より小さい、部品のキット。
【請求項7】
締結具は、端部の一方にあらかじめ形成されたヘッドを有する概ねピン形状であり、熱可塑性材料は端部の少なくとも他方に存在する、請求項6に記載の部品のキット。
【請求項8】
締結具は、第1および第2の組織または移植部分の複数の共有開口部を通って伸びるように構成された複数のシャフトを含み、締結具はシャフトを接続するブリッジ部分をさらに含む、請求項6に記載の部品のキット。
【請求項9】
第1および第2の組織部分または組織部分および移植部分を互いに固定するためのシステムであって、前記システムは、
熱可塑性材料を含む締結具と、
締結具によって保持されるように構成された少なくとも1つのフィラメント状要素と、
締結器具とを含み、締結器具は、第1の接触面を有する第1の器具構成要素と第2の接触面を有する第2の器具構成要素とを含み、第1の器具構成要素および第2の器具構成要素は分離したツールであって互いに関して変位可能であり、さらに、
締結具および締結器具を位置決めするための手段を備え、
締結具は第1および第2の組織または移植部分の共有開口部を通って伸び、共有開口部は、第1の組織または移植部分の第1の貫通開口部と、第2の組織または移植部分の第2の貫通開口部とによって構成され、第1および第2の貫通開口部は互いに位置合せされ、
第1の接触面は締結具の近位端面に接し、第2の接触面は締結具の遠位端面に接し、さらに、
締結具が第1および第2の接触面の間で押されるように第1および第2の器具構成要素に相対力をかけ、同時に、端部分を少なくとも部分的に軟化させかつ/または融解するのに十分な超音波振動時間中に、相対力および超音波振動の共通の衝撃を受けて超音波振動力によって第1および第2の器具構成要素の少なくとも一方に超音波振動を結合し、端部分の軟化および/または融解を用いて、直径が貫通開口部の少なくとも一方の直径よりも大きいヘッドを端部分に設けるための手段を含み、
軟化されたかつ/または融解された端部分は再凝固することが可能であり、フィラメント状要素は締結具の周りにループを形成し、ループの直径は、第1の締結具端部分における第1のヘッドおよび第2の締結具端部分における第2のヘッドの少なくとも一方より小さい、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は医療技術の分野に属し、2つ以上の組織部分を互いに固定するため、または移植された装置に少なくとも1つの組織部分を貼付けるための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
外科医学では、2つの組織部分を互いに貼付けるか、またはいわゆるメッシュなどの移植された装置を組織部分に貼付けることが必要であることが多い。2つの骨部分を互いに貼付けるための多くの方法が知られているが、これらは、引張力によって取外されることで締結具が安全に定着され得る硬組織の定着能力に依存する。しかし、骨組織ではなく、たとえば軟骨または軟組織である2つの組織部分を互いに貼付けることは難題であることが多い。移植された装置が軟骨または軟組織に貼付られる場合、同じ難題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、組織部分(人間または動物の組織の部分または臓器)を互いに固定するため、または移植部分を組織部分に固定する方法および装置を提供することであって、当該方法および装置は、先行技術の方法および装置の欠点を克服し、かつ/または骨組織ではなく、かつ/または寸法的に堅くない組織部分に特に好適である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の一局面によれば、第1および第2の組織部分または組織部分および移植部分を互いに固定する方法が提供される。当該方法は、
−(一般的に少なくとも端部分に)熱可塑性材料を含む締結具を設けるステップと、
−締結器具を設けるステップとを含み、締結器具は、第1の接触面を有する第1の器具構成要素と第2の接触面を有する第2の器具構成要素とを含み、第1の器具構成要素および第2の器具構成要素は互いに関して変位可能であり、さらに、
−締結具および締結器具を位置決めするステップを含み、
締結具は第1および第2の組織または移植部分の共有開口部を通って伸び、共有開口部は、第1の組織または移植部分の第1の貫通開口部と、第2の組織または移植部分の第2の貫通開口部とによって構成され、第1および第2の貫通開口部は互いに位置合せされ、
第1の接触面は締結具の近位端面に接し、第2の接触面は締結具の遠位端面に接し、さらに、
−締結具が第1および第2の接触面の間で押されるように第1および第2の器具構成要素に相対力をかけ、同時に、振動力によって、かつ相対力および振動の共通の衝撃を受けて端部分を少なくとも部分的に軟化させかつ/または融解するのに十分な振動時間中に、第1および第2の器具構成要素の少なくとも一方に機械的振動を結合し、端部分の軟化および/または融解を用いて、直径が貫通開口部の少なくとも一方の直径よりも大きいヘッドを端部分に設けるステップと、
−軟化されたかつ/または融解された端部分を再凝固させるステップとを含む。
【0005】
発明は、そのような方法において締結具または締結具部(部分)として使用される熱可塑性材料(たとえば以下に明示的に言及される材料のいずれか1つ)にも関係する。特に、そのような使用は、熱可塑性材料の変形によって、または以下に説明されるように熱可塑性ヘッド成形要素に溶接されている熱可塑性材料によって変形および/または融解されて遠位または近位ヘッドを設けることができる締結具部分に関係する。当該方法に関係のある本稿中のすべての所見および教示は、そのような方法における締結具または締結具部分として使用される熱可塑性材料にも関係する。
【0006】
当該方法に戻り、締結具を位置決めするステップと器具を位置決めするステップとは、いずれかの順序で、または同時にもしくは部分的に同時に、セットアップと場合によっては外科医の要望とに依存して行われ得る。
【0007】
端部分の軟化および/または融解を用いて端部分にヘッドを設けるステップにおいて、相対力および振動の共通の衝撃を受けて端部分を変形させヘッドを生じさせ得る。
【0008】
これはたとえば、端部分そのものがヘッドに変形されるように行われ得る、つまりヘッド材料は、変形した端部分材料であり得る。
【0009】
代替的な実施例において、ヘッド部分が形成される接触面における器具構成要素は、ヘッド形成要素を含み得、ヘッド形成要素は、振動および相対力の衝撃を受けて締結具の端部分に溶接され、したがって端部分を再凝固させるステップ後の締結具は、当初の締結具材料に加えてヘッド形成要素材料を含む。この目的のために、上記の器具構成要素(たとえば、締結具の遠位端に接し、脚部を有する第2の器具構成要素)はヘッド形成要素ディスペンサを含み得る。
【0010】
組織部分または組織部分および移植部分の貫通開口部は、自然に存在し得るか(または移植部分の場合にはあらかじめ製造され得る)、締結具の挿入前の準備ステップにおいて(たとえば掘削によって)あらかじめ作製され得るか、または締結具の挿入によって作製され得、その後たとえば穿孔先端もしくはエッジ(または一般にリーマ加工機能)を含む。組合せ、たとえば、一部分にあらかじめ作製された貫通開口部と他の部分に挿入によって作製された開口部との組合せ、またはいずれかの他の組合せが可能である。また、開口部が部分的にあらかじめ作製されることも可能である。たとえば、第1の、より小さい横断面積のあらかじめ作製されたかまたは自然に存在する開口部が存在し、締結具の挿入によって、第2のより大きい横断面積に締結具の挿入によって追加的に広げられる。
【0011】
実施例において、締結具は一般に近位側から挿入され、その側は手術中に外科医によってアクセスすることができる側でもある。その場合、変形されてヘッドをもたらす端部分は遠位端部分である。
【0012】
代替的な実施例では、締結具は遠位側から挿入される。この目的のために、締結具は、器具(または少なくとも別個の器具の第2の器具構成要素)を手術部位に配置する前に、第2の器具構成要素に一時的に取付けられ得る。可能性として、第2の器具構成要素は、処理中に締結具の遠位端に接し、連続的に複数の締結具を投入するディスペンサを含み得る。
【0013】
軟化および/または融解が始まるとすぐに、相対力によって第1および第2の器具構成要素の相対運動が生じることになり、それによって第1および第2の接触面が互いに向かって移動し、したがって締結具が圧縮される。
【0014】
したがって発明の一局面では、超音波振動などの機械的振動を用いて締結具の(遠位部分または近位部分であり得る)端部分を(遠位または近位それぞれの)ヘッドに変形させることが提案される。その結果、締結具は一種のリベットとして機能する。ここで、締結具は当初は任意の断面の締結ピンであり得る。また、締結具は反対の(近位または遠位それぞれの)側にあらかじめ形成されたヘッドを任意に含み得る。
【0015】
多くの実施例において、第2の器具構成要素は、近位シャフト部分および遠位脚部分を有し、第2の接触面は、脚部分の近位対向面またはその一部として形成される。実施例では、第2の接触面は、近位遠位締結具軸にほぼ垂直であり得る。
【0016】
多くの実施例では、締結具にその近位側から当たる第1の器具構成要素を用いて、たとえば機械的振動を締結具に結合することによって機械的振動を締結具に当てる。この目的のために、器具は、圧電素子および圧電素子のための電気的励起回路を含む振動発生器などの機械的振動発生器をさらに含み得る。第1の器具構成要素は、器具のソノトロード(sonotrode)として機能し得、ソノトロードは振動発生器に結合される。器具は器具ハウジングをさらに含み得、ソノトロードがそこに結合された振動発生器がその中に収容される。ハウジングは、振動発生器を密封し得るが、完全に密封する必要はない。その場合、第2の器具構成要素は、たとえば第1の器具構成要素(および存在する場合はハウジング)に対して移動可能に搭載された、または別個のツールなど外科医によって保持されることができるカウンタ要素であり得る。第2の器具構成要素は、近位側に向かって面する第2の接触面とカウンタ部分から近位方向に延在するシャフト部分とを有する(脚部分であり得る)遠位カウンタ部分を含み得る。シャフト部分は、摺動するように(または旋回するように)ハウジングに搭載され得、シャフト部分に相対力が印加され得る。
【0017】
一オプションとして、発明の実施例において、第2の器具構成要素は、振動発生器によって生成された機械的振動を偏向させるように構成され得る。これはたとえば、振動要素を有する器具構成要素によって行われ得、入力軸に沿った横振動が出力軸に沿った横振動に偏向される。そのような装置の一例は、国際公開第2007/101362号に教示されている。機械的振動の偏向を含む実施例は、締結具の軸に沿った直線的なアクセスが困難であり、横からの方が手術部位にアクセスしやすい状況に特に適する。横からのアクセスによる挿入にも適していることが、本発明の実施例の利点の1つである。
【0018】
また一オプションとして、複数の締結具を使用することができる。たとえば、複数の締結具を組織/移植部分上に分散させることができる。その場合、隣接する締結具のヘッド同士を、互いに接するようにまたは互いに溶接されるように任意に構成することができる。
【0019】
一オプションによれば、互いに固定された組織部分には、補強のための人工材料の1つ以上の可撓性平面構造が同時に設けられる。例として、そのような可撓性平面構造はメッシュであり得る。そのような可撓性平面構造は、組織部分の一方の外側上、組織部分の複数の外側上、および/または組織部分同士の間に設けられ得る。代替的に、移植部分が組織部分に固定される場合、そのような可撓性平面構造が移植部分を構成し得る。
【0020】
第1および第2の組織部分は、共通の組織要素または臓器の部分であり得る。たとえば、第1および第2の組織部分は、断裂を治さなければならない断裂したかもしくは部分的に断裂した組織要素または臓器の部分であり得る。代替例として、第1および第2の組織部分は、別個の要素および/または臓器、たとえば平坦な曲げることができる組織部分に貼付けられる平坦な曲げることができる移植片であり得る。
【0021】
第1および第2の組織部分はたとえば、軟骨の層または他の部分であり得る。発明の方法の局面の用途は、半月板の修復である。当該方法の準備において、断裂した半月板の端部分が互いに重なり合うように曲げられ、互いに重なり合った部分のアセンブリに第1および第2の開口部が作られる。
【0022】
軟骨の代替例として、第1および第2の組織部分の少なくとも一方は、他の組織、特に軟組織、または組織置換材料の部分であり得る。第1および第2の組織部分の一方は、組織部分に貼付けられる移植片でもあり得る。
【0023】
本稿では、簡潔にするために、互いに貼付けられる部分を「第1および第2の組織部分」と称することが多いが、発明の実施例は、人工要素(移植片)を組織部分にその場で貼付けることにも関係する。
【0024】
発明は、3つ(以上)の組織部分を互いに重ね合わせ、締結具を共通の位置合せされた穴に導入することによって、2つを超える組織部分、たとえば3つ以上の組織部分を1回のステップで互いに固定することにも適用される。
【0025】
発明に係る方法および装置の多くの実施例は、軟骨もしくは軟組織部分を互いに貼付けること、またはそのような組織に人工装置(移植部分)を貼付けることに特に適しているが、寸法的に堅い骨組織への適用はすべての実施例において排除されない。むしろ、当該方法および装置は、骨組織、特に平らな骨(扁平骨)または弱い骨組織にも好適であり得る。
【0026】
さらなるオプションは、外科用糸(特に外科縫合用の糸)などのフィラメント状要素を組織に締結するための方法および装置を使用することである。例として、そのようなフィラメント状要素は、固定処理中に互いに固定された組織部分または組織部分および移植部分に取付けられ得る。たとえば、フィラメント状要素のループを締結具のシャフトに巻きつけ、締結具のヘッド(あらかじめ製造されたヘッド、または端部分の軟化および/または融解を用いて設けられたヘッド)によって保持し得る。他の例として、そのようなフィラメント状要素は移植部分を構成し、その場合、ループは組織部分の貫通開口部と位置合せされた貫通開口部を形成する。
【0027】
より一般的に、一局面に係る発明は、フィラメント状要素、特に糸を組織部分に定着させる方法に関し、当該方法は、
−締結具を設けるステップを含み、締結具は第1の締結具端部分において第1のヘッドを含み、さらに、
−締結器具を設けるステップを含み、締結器具は、第1の接触面を有する第1の器具構成要素と第2の接触面を有する第2の器具構成要素とを含み、第1の器具構成要素および第2の器具構成要素は互いに関して変位可能であり、さらに、
−締結具が組織の開口部を通って伸びるように、かつ第1の接触面が締結具の近位端面に接し、第2の接触面が締結具の遠位端面に接するように、締結具および締結器具を位置決めするステップと、
−器具構成要素の少なくとも一方によって、エネルギを締結具に結合して、第2の締結具端部分を少なくとも部分的に軟化させかつ/または融解させ、第2の端部分の軟化および/または融解を用いて開口部の直径より大きい直径の第2のヘッドを第2の端部分に設けるステップと、
−軟化されたかつ/または融解された端部分を再凝固させるステップとを含み、フィラメント状要素が締結具の周りにループを形成し、ループの直径は、第1のヘッドおよび第2のヘッドの少なくとも一方より小さい。
【0028】
一実施例によれば、フィラメント状要素は、それが搭載される位置決め要素(針または他の要素、場合によっては締結具そのものなど)によって位置決めされる。一実施例に係るこの要素は、端部分がループを形成するフィラメント状要素の端部分が近位側からアクセス可能であるやり方で、遠位側から組織部分を通って挿入される。
【0029】
位置決め要素が針である場合は、形状記憶材料の針であり得、第2の器具構成要素のチャネル内を案内されて、近位側から押され、遠位側から組織を穿孔し、組織を通って近位側に糸(または他のフィラメント状要素)を戻し得る。
【0030】
多くの実施例において、第2の器具構成要素(または締結具が遠位側から導入される場合は第1の器具構成要素)は、第2の(または第1のそれぞれの)接触面を形成するヘッド成形部分を有する。ヘッド成形部分は、カウンタ部分/脚部分に存在する場合は、たとえば浅いくぼみとして設けられ得、その底部は第2の(第1の)接触面を形成する。ヘッド成形部分は、異なる方向への所望の材料流を確実にする少なくとも1つのエネルギディレクタまたは分配構造をさらに含み得る。ヘッド成形部分はたとえば、凹面または部分的に凹面形状を有し得る。発明の一局面に係る方法によって、成形される遠位ヘッドは、ヘッド成形部分の複製である表面部分を含む。
【0031】
方法のいずれかの局面において、下記の1つまたは任意の(意味のある)組合せが成り立ち得る。
−機械的振動は、締結具を位置決めするステップ中に第1の器具構成要素から締結具に結合され得る。
−締結具は、一般に(いずれかの好適な断面の、つまり円形または非円形の)円筒形部分、場合によってはあらかじめ形成された(近位または遠位)ヘッド部分を有するピン形状であり得る。
−ピン形状の代替例として、締結具は、近位(または遠位)ブリッジ部分によって接続される複数のシャフトを含み得、シャフトは、第1および第2の組織または移植部分の対応する数の共有開口部を通って伸びるように構成される。
−締結具は、力および振動が締結具に結合されると、第1の組織部分に対して当接する肩部を形成するあらかじめ作製された近位(または遠位)ヘッド部分を含み得る。
−締結具は熱可塑性材料で構成され得るかまたは、締結具は(少なくとも遠位または近位の端部分を含む)熱可塑性構成要素と熱可塑性でない構成要素とを含み得る。
−締結具に振動を結合し、第1および第2の器具構成要素の間で締結具を圧縮する同時に起こるステップ中、(たとえばピン形状の)締結具の他方端(締結具が遠位側から挿入される場合、締結具の近位端は近位側または遠位端から挿入される)における熱可塑性部分は、近位/遠位のさらなるヘッドに変形され得る。締結具が、熱可塑性材料からなるあらかじめ成形されたさらなる(近位/遠位)ヘッドを含む場合は、あらかじめ成形されたさらなるヘッド部分が任意にさらに成形され得、したがってたとえばその遠位/近位肩部は、第1の組織部分の形状に適合化された形状を有する。
−締結具は、近位案内および/または保持構造を含み得、第1の器具構成要素の対応する案内および/または保持要素が、その挿入中に締結具を案内しかつ/または保持するようにそこに係合し得る。
−振動発生器に加えて、器具は、自動的に相対力を印加するための力付与装置をさらに含み得る。そのような力付与装置はたとえば、処理の前にあらかじめ張力がかけられ得るばねを含み得、ばね力は振動の生成と同時に解放され得る。代替的に、力付与装置は電気作動機構などの他の駆動装置を含み得る。
−力付与装置に加えて、または代替例として、器具は、外科医自身が力を加えることを可能にするためのハンドルを含み得る。その場合、器具は抵抗ばねをさらに任意に含み得、その力に対抗して相対力を印加しなければならず、第1および第2の器具構成要素を互いに対して移動させなければならない。そのようなばねは、熱可塑性材料の凝固後の器具構成要素の締結具からの解放を容易化し得る。
−締結具の熱可塑性材料は、第1および/または第2の組織部分の組織に付着させ得、かつ/または第1および/または第2の組織部分の構造に貫入させて押込み嵌合接続(positive-fit connection)を形成し得る。これは、近位および/または遠位ヘッド部分、および/またはヘッド部分同士間の残りの円筒形部分の熱可塑性材料であり得る。
【0032】
第1および第2の組織部分または組織部分および移植部分を互いに固定するための、またはフィラメント状要素、たとえば糸を組織に定着させるための締結器具は、
−第1の接触面を有する第1の器具構成要素と、
−第2の接触面を有する第2の器具構成要素とを含み、
−第1の器具構成要素および第2の器具構成要素は互いに関して変位可能であり、
−第1の器具構成要素は、遠位側に向かって面する第1の接触面を有し、
−第2の器具構成要素は、第1の接触面の遠位方向にあり、かつ近位側に向かって面する第2の接触面を有する脚部を有し、
−締結具は、第1および第2の器具構成要素の間に相対力を印加することによって第1および第2の接触面の間で圧縮可能であり、
−器具はさらに、第1および第2の器具構成要素の少なくとも一方に機械的エネルギを結合するためのエネルギ源を含む。
【0033】
接触面は、それに接して端部分にヘッドが設けられており、ヘッド成形部分を含み得る。たとえば、近位側から挿入される締結具については、第2の器具構成要素の脚部の第2の接触面がヘッド成形部分として形成される。締結具が遠位側から挿入される場合、第1の器具構成要素の遠位端面がヘッド成形部分を含み得る。また、各場合において、他方の接触面も任意にヘッド成形部分を含み得る。
【0034】
少なくとも第1および第2の器具構成要素を殺菌することが可能である。
第1および第2の組織部分または組織部分および移植部分を互いに固定するための部品のキットは上記の種類の器具を含み、さらに、少なくとも1つの締結具を含み、締結具は近位および遠位端を含み、近位端および/または遠位端は、機械的エネルギの衝撃によって変形可能/流動可能となることができる熱可塑性材料を含む。締結具は一般に、任意の近位ヘッドと、任意の遠位切断および/または穿孔および/またはリーマ加工構造とを有するピン形状であり得る。
【0035】
たとえば、少なくとも1つの締結具が無菌パッケージで供給される。
機械的振動の代替例として、他の形態の機械的エネルギを用いて熱可塑性材料を流動可能/変形可能にし得る。これは特に、カウンタ要素に対する締結具の回転運動を含む。さらに別の代替例として、電磁放射を用いて熱可塑性材料を流動可能/変形可能にし得る。この目的のために、締結具は、特に遠位領域において放射線吸収材によって本質的に透明であり得る。放射線は、レーザまたは他の放射線源によって締結具に結合され得る。
【0036】
本稿において、「機械的振動の衝撃によって軟化および/または融解させることが可能な熱可塑性材料」、または要約して「液化可能な熱可塑性材料」もしくは「液化可能材料」という表現は、少なくとも1つの熱可塑性成分を含む材料を説明するために使用される。この材料は、加熱されると、特に摩擦により加熱されると、つまり互いに接し、かつ互いに対して振動でもしくは回転して移動される一対の表面(接触面)の一方に配置されると、液体または流動可能となる。振動の周波数は、2kHzと200kHzとの間、好ましくは20〜40kHzであり、振幅は1μmと100μmとの間、好ましくは約10〜30μmである。たとえばそのような振動は、たとえば歯科用途で知られている超音波装置によって生成される。荷重支持接続が可能となるように、材料は0.5GPaより大きい、好ましくは1GPaより大きい弾性率を有し得る。少なくとも0.5GPaの弾性率によって、内部の液化およびしたがって液化可能要素の不安定化が生じない、つまり液化可能材料がストップ面との液化境界面にある場合にのみ液化が生じるように減衰が小さい超音波振動を液化可能材料が伝えることが可能となることも確実となる。可塑化温度は、好ましくは200℃まで、200℃と300℃との間、またはさらに300℃より高い。用途によって、液化可能な熱可塑性材料は再吸収可能であっても再吸収可能でなくてもよい。
【0037】
好適な吸収性ポリマーは、たとえば乳酸および/またはグリコール酸(PLA、PLLA、PGA、PLGA等)、またはポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖類、ポリジオキサノン(PD)、ポリ酸無水物、ポリペプチド、もしくは対応するコポリマーもしくは混合されたポリマーをベースとし、または上記のポリマーを成分として含有する複合材料が再吸収可能な液化可能材料として好適である。たとえばポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリフェニル硫化物、または液晶ポリマー(LCPS)、ポリアセタール、ハロゲン化ポリマー、特にハロゲン化ポリオレフィン、ポリフェニレン硫化物、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性材料、もしくは対応するコポリマーもしくは混合されたポリマー、または上記のポリマーを成分として含有する複合材料が非吸収性ポリマーとして好適である。適合する熱可塑性材料の例は、Bohringer Ingelheim社によるポリラクチド生成物LR708(非晶質Poly−L−DLラクチド70/30)、L209またはL210Sのうちいずれか1つを含む。
【0038】
分解性材料の特定の実施例は、すべてBohringer社によるLR706 PLDLLA 70/30、R208 PLDLA 50/50、L210S、およびPLLA 100%Lのようなポリラクチドである。好適な分解性ポリマー材料のリストが、Erich Wintermantel und Suk-Woo Haa, 「Medizinaltechnik mit biokompatiblen Materialien und Verfahren」, 3.Auflage, Springer, Berlin 2002(以下「Wintermantel」と称する)200頁においても見つけることができる。PGAおよびPLAに関する情報については202頁以降を参照のこと。PCLについては207頁を参照のこと。PHB/PHVコポリマーについては206頁を参照のこと。ポリジオキサノンPDSについては209頁を参照のこと。さらなる生体吸収性材料の議論はたとえばCA Bailey他, J Hand Surg [Br] 2006 Apr;31(2):208-12に見つけることができる。
【0039】
非分解性材料の特定の実施例は、ポリエーテルケトン(Invibio社のPEEK(登録商標)Optima、グレード450および150)、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、またはポリカーボネートウレタン(特にDSMによるBionate)である。ポリマーおよび用途の概略表がWintermantelの150頁にリスト化されている。特定の例がWintermantelの161頁以降(PE, Hostalen Gur 812, Hochst AG)、164頁以降、(PET)、169頁以降(PA、すなわちPA6およびPA66)、171頁以降(PTFE)、173頁以降(PMMA)、180頁(PUR、表参照)、186頁以降(PEEK(登録商標))、189頁以降(PSU)、191頁以降(POM−ポリアセタール、商品名Delrin、TenacもProtecによって内部プロテーゼにおいて使用されている)に見つけることができる。
【0040】
熱可塑特性を有する液化可能材料は、さらなる機能に役立つ異質相または化合物を含んでもよい。特に、熱可塑性材料は、混合された充填剤、たとえば治療または他の所望の効果を有し得る微粒子充填剤によって強化され得る。熱可塑性材料は、その場で拡張するかまたは溶ける(孔を作成する)成分(たとえばポリエステル、多糖類、ヒドロゲル、リン酸ナトリウム)、またはその場で放出されるとともにたとえば治癒および再生の促進といった治療効果を有する化合物(たとえば、成長因子、抗生物質、炎症抑制剤、またはリン酸ナトリウムもしくは炭酸カルシウムといった、酸性分解の悪影響に対抗する緩衝液)を含み得る。熱可塑性材料が再吸収可能である場合、そのような化合物の放出は遅延される。
【0041】
液化可能材料が振動エネルギによってではなく電磁放射によって液化される場合は、特定の周波数範囲の(特に可視または赤外線周波数範囲の)そのような放射を吸収することが可能な化合物(微粒子または分子)、たとえばリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、酸化チタン、マイカ、飽和脂肪酸、多糖類、グルコース、またはそれらの混合物を局所的に含み得る。
【0042】
用いられる充填剤は、分解性ポリマーにおいて用いられる分解性の骨刺激性充填剤を含んでもよく、β−リン酸三カルシウム(TCP)、ハイドロキシアパタイト(HA、<90%の結晶度);またはTCP、HA、DHCP、生体ガラスの混合物(Wintermantel参照)を含む。非分解性のポリマーのための、部分的にのみ分解性またはほとんど分解性でない骨統合刺激性充填剤は、生体ガラス、ハイドロキシアパタイト(>90%の結晶度、HAPEX(R)を含む。SM Rea他, J Mater Sci Mater Med. 2004 Sept;15(9):997-1005を参照のこと。ハイドロキシアパタイトについては、L. Fang他、Biomaterials 2006 Jul; 27(20):3701-7, M. Huang他、J Mater Sci Mater Med 2003 Jul; 14(7):655-60、ならびにW. BonfieldおよびE. Tanner, Materials World 1997 Jan; 5 no. 1:18-20を参照のこと。生物活性充填剤の実施例およびそれらの議論は、たとえばX.HuangおよびX.Miao, J Biomater App. 2007 Apr; 21(4):351-74), JA Juhasz他、Biomaterials, 2004 Mar; 25(6):949-55において見つけることができる。微粒子充填剤タイプは、粗大タイプ:5〜20μm(含有量は好ましくは10〜25容積%)、サブミクロン(析出からのナノ充填剤、好ましくは縦横比>10、10〜50nm、含有量0.5〜5容積%)のようなプレートを含む。
【0043】
図面の簡単な説明
以下に、図面を参照して発明の実施例について説明する。概略的であって縮尺通りではない図面において、同じ参照符号は同じかまたは対応する要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】2つの組織部分を互いに貼付けるように位置決めされた締結具を有する器具の図である。
図2】2つの組織部分を貼付ける処理中の締結具と器具とを示す図である。
図3a】2つの組織部分を互いに貼付ける処理の2つの異なる処理工程における代替的な締結具と器具との配置を示す図である。
図3b】2つの組織部分を互いに貼付ける処理の2つの異なる処理工程における代替的な締結具と器具との配置を示す図である。
図4a】2つの組織部分を互いに貼付ける異なる処理工程中の締結具と器具との配置のさらに別の実施例の図である。
図4b】2つの組織部分を互いに貼付ける異なる処理工程中の締結具と器具との配置のさらに別の実施例の図である。
図4c】2つの組織部分を互いに貼付ける異なる処理工程中の締結具と器具との配置のさらに別の実施例の図である。
図5a】材料案内およびエネルギ誘導構造の図である。
図5b】ヘッド成形部分の可能な形状の図である。
図6】器具のさらなる実施例の図である。
図7】組織部分の面内補強材を含む配置の図である。
図8a】ワイヤまたは糸を定着させる方法の図である。
図8b】ワイヤまたは糸を定着させる方法の図である。
図9】連続的に複数の締結具を投入するための格納部の図である。
図10】複数のシャフトを含む締結具を有する変形例の図である。
図11】複数のシャフトを含む締結具を有する変形例の図である。
図12】複数のシャフトを含む締結具を有する変形例の図である。
図13】複数のシャフトを含む締結具を有する変形例の図である。
図14】複数のシャフトを含む締結具を有する変形例の図である。
図15】複数のシャフトを含む締結具を有する変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
好ましい実施例の説明
図1に示される第1の組織部分1および第2の組織部分2は、たとえば断裂した半月板の部分であり得る。断裂に沿った半月板の縁部分は互いに重なり合って位置決めされる。代替的に、第1の組織部分および第2の組織部分は互いに貼付けられる他の組織部分であり得る。それらの一方は、組織置換材および/または補強移植片でもあり得る。たとえば、組織部分の一方または両方は、他の軟骨組織、または靭帯、または腱、または椎間板、または皮膚等であり得る。組織置換材または補強移植片は、たとえばメッシュ、または同種移植片、または人工靱帯、または腱、または軟骨組織の置換材等であり得る。方法は特定の種類の組織/または移植片に制限されないが、骨または骨置換材料とは異なる組織に特に適する。
【0046】
器具3は器具ハウジング4を含み、そこに超音波変換器(図示せず)または他の振動生成装置が配置される。超音波変換器または他の振動生成装置は、第1の器具構成要素であるソノトロード6を振動させるように操作可能である。第2の器具構成要素11は、カウンタ要素シャフト12および脚部13を有するカウンタ要素である。シャフト12は、ハウジング4または(または第1の器具構成要素に結合された他の要素)に摺動するように搭載される。図示の構成では、これはハウジング4に貼付けられた案内要素8によって行われ、案内要素は、シャフト部分の外径に適合化された内径を有する貫通孔を有し、誘導装置として機能し、相対的な近位遠位移動方向を規定する。
【0047】
図示の構成の締結具21は、任意のあらかじめ形成された近位ヘッド22を有し、熱可塑性材料で構成される(断面が円形であるかまたは所望の形態に適合化された他の断面を有し得る)円筒形本体またはシャフト23を有するピン形状である。近位の案内穴25がソノトロード6の保持突起に適合化され、したがって締結具21をソノトロードに取付けることができる。締結具は、わずかにチップ形状の遠位端部分24を有する。
【0048】
図示の構成において、第1および第2の組織部分の共有開口部31はあらかじめ作製される。しかし直径は締結具の直径より小さい。締結具を開口部に導入すると、開口部31を広げる処理を支援するように超音波振動がそこに結合され得る。
【0049】
カウンタ要素11の脚部13は、ソノトロード6および、搭載される場合は締結具と位置合せされたくぼみ14を有する。締結具軸41は、たとえばくぼみ41の軸であり得る。くぼみの直径、またはより一般的には断面積は、締結具の円筒形部分の直径/断面積より大きい。くぼみ(存在する場合)の領域では、または一般的に締結具の圧縮中に締結具がカウンタ要素に接する箇所では、カウンタ要素は、処理後の締結具からのカウンタ要素の取外しの解放を容易化するように、非粘着材料の任意のコーティングを含み得る。
【0050】
図示の構成では、器具は任意のばね16をさらに含む。第1のオプションによれば、締結具をソノトロード6と脚部13との間で圧縮するように第1および第2の器具構成要素を互いに向かって引張るために、図1の構成においてばねにあらかじめ張力をかけ得る。これは、圧縮ステップ中にあらかじめ規定された圧縮力をもたらす。第2のオプションによれば、ばねは、処理後に解放機構をもたらすようにソノトロードとカウンタ要素とが互いに押付けられると圧縮されるようなものであり得る。
【0051】
図2は、ソノトロードおよびしたがって締結具に振動を結合しつつ、ソノトロードとカウンタ要素とを互いに向かって同時に押付けるステップの終わりにおけるアセンブリを示す。締結具の遠位端が変形されて遠位ヘッド25を生じさせ、その形状はくぼみによって規定される。また、近位ヘッド22および/または円筒形部分が変形され得る。処理の結果は、2つの組織部分を互いに永久にクランプするリベットである。
【0052】
図示の構成では、組織部分の剛性は、締結具の遠位端が組織をくぼみの底部に押付けないほど十分であると仮定される。むしろ、第2の組織部分は、脚部13の近位面の平坦な部分16に載り、平坦な部分16がくぼみ14を囲む。締結具21は組織を穿孔し、遠位ヘッドのための空間を第2の組織部分2の真下に生じさせる。剛性が十分でない状況では、共有開口部は締結具の円筒形部分に対応する直径を有するように、または後者より若干大きく、あらかじめ形成され得る。これらの実施例では、組織部分は、たとえば外科用クランプによって共有開口部をあらかじめ形成した後で、互いに対して一時的に固定されることが有利である。まず共有開口部を押抜き、次いで、円筒形部分を有する締結具本体が開口部に残っている間に引戻される格納式の押抜きシースを締結具に設けることも可能である。これらの実施例では、締結具はあらかじめ形成された近位ヘッドを有さず、他の実施例のように近位ヘッドが処理中にのみ形成されることが有利である。
【0053】
また、ソノトロードは、近位ヘッドの形状を規定するようにくぼみを含み得る。
図1および図2に示される構成の変形例が図3aおよび図3bに示される。図3aは締結具21が導入されている間の変形例を示し、図3bは、機械的エネルギの作用によって材料を液化するステップの終わりの変形例を示す。
【0054】
図1および図2のアセンブリとの第1の違いとして、図3aおよび図3bのアセンブリの第2の器具構成要素11は、第1の器具構成要素に機械的に接続された案内要素によって必ずしも案内されず、独立して保持される。たとえば、手術を行なう外科医は、一方の手で第1の器具構成要素を含む振動生成器具を、他方の手で第2の器具構成要素を保持し得る。
【0055】
さらに、第2の器具構成要素11は、締結具に機械的振動を結合するステップ中に締結具に溶接され得る締結具ヘッド形成要素51の格納部50を含み、したがって当該ステップ後の締結具は、最初に構成されていた材料に加えて、ヘッド形成要素の材料を含む。
【0056】
たとえばヘッド形成要素の格納部において第2の器具構成要素によって担持される少なくとも1つの遠位ヘッド形成要素も、いずれの実施例においても使用し得る。たとえば、図1および図2に示される種類の第1の器具構成要素と共に、たとえば第2の器具構成要素のための案内要素および/または必要な力を自動的に抜き出すためのばね機構を含む第1の器具構成要素と共に使用され得る。ヘッド形成要素格納部は、最後のヘッド形成要素が使用されると、(接触面の一部を形成する)加工位置にヘッド形成要素を自動的に供給することが可能なばねなどを含み得る。
【0057】
図4a〜図4cの実施例は、遠位ヘッド22′を有する締結具21が当初第2の器具構成要素によって担持され、遠位側から導入される変形例を示す。この目的のために、締結具は、それが締結し合う組織部分(または組織および移植部分)を穿孔するように任意に装備され得る。一見解として、穿孔締結具も、近位側から導入される実施例において使用され得る。
【0058】
穿孔締結具を有する実施例では、共有開口部を別個の器具などによってあらかじめ作製する必要はなく、締結具を導入することによって作製され得る。(いずれかの実施例と組合わされ得る)さらに別の代替例として、組織部分の少なくとも1つの初期開口部は、最終的な共有開口部より少なくとも1つの寸法が小さくてもよく、締結具を導入することによって拡張され得る。
【0059】
図4aは、第2の器具構成要素11によって遠位側から締結具を導入する初期工程を示す。これが行われた後、ハウジング4および第2の器具構成要素6(ソノトロード)を含む振動生成器具を用いて、図4bおよび図4cに示されるように、締結具の近位端部分を液化し、かつ近位ヘッド25′を形成する。この目的のために、ソノトロード6は、先の実施例の脚部の浅いくぼみ14と同様の浅いくぼみ54である遠位ヘッド成形部分を含む。
【0060】
図1図3bの実施例では、振動エネルギは締結具を介して少なくとも部分的に送られ、主に脚部に接する遠位端において熱の発生下で吸収されるが、図4a〜図4cの実施例では、振動エネルギの吸収は、主としてソノトロードと締結具との接触位置で起こる。
【0061】
一般に、(図1図3bの締結具の遠位端部分、および図4a〜図4cの近位端部分における)液化の部位では、ヘッド成形部分は、第2の器具構成要素または第1の器具構成要素にそれぞれ設けられ得る。上記のように、ヘッド成形部分は、くぼみ、たとえば浅いくぼみの形態を有する表面構造を含み得る。その場合くぼみの輪郭は、形成されるヘッドの輪郭に対応し得る。さらに、ヘッド成形部分は、材料指示および/またはエネルギ指示構造を含み得る。超音波溶接の技術から知られているように、エネルギ指示構造は、振動エネルギがソノトロードに結合されると液化が起こる地点を決定するのに役立ち得る。材料指示構造は、所望のやり方で溶融材料を分布させるのに役立ち得る。図5aは、第2の器具構成要素の脚部13の端部分の断面を示す。くぼみ14の中央において、機械的振動が結合されている間に(図に示されている方向に上から)脚部に押付けられる締結具からの材料のためのエネルギ指示構造および材料指示構造の両方として機能し得る隆起15が形成される。締結具が遠位側から導入される場合、図4a〜図4cで示されるような構成が選択されると、類似した構造がソノトロードに存在し得る。
【0062】
図5bは、くぼみ14が、円形ではなくその直径が締結具の直径と同様であり得るか若干だけ増大され得る中心セクション17と、対向する方向に延在するローブ16とを含む外側輪郭を有するヘッド成形部分の上面図をさらに示す。要件および幾何学的条件に適合化されたほぼ任意の他の形状(円形、楕円、1つまたは3つ以上のローブ、対称または非対称など)が可能である。また、先行技術の方法とは対照的に、締結具の挿入も処理中のいずれの他のステップも締結具の回転運動を必ずしも必要としないことから、締結具のシャフトは断面が円形である必要はない。
【0063】
図5bのヘッド成形部分は脚部13の構造であるものとして示されるが、遠位側からの締結具の挿入を含む実施例では、そのような構造はソノトロードに存在してもよい。
【0064】
図6に示される器具3は、側面から手術部位にアクセスしなければならない状況に特に適する。第1の器具構成要素6は、機械的振動を入力軸に沿った横方向の振動から第2の軸に沿った横方向の機械的振動に偏向させる装置61を有する。そのような装置は、その全体を引用によってここに援用する国際公開第2007/101362号/US2010/0179654に記載されている。特に、図示される振動偏向装置61の実施例は、図3aを参照して説明した装置および国際公開第2007/101362号における対応する説明に基づくが、他の実施例も使用され得る。
【0065】
さらなる特徴として、第2の器具構成要素11は旋回するようにハウジング4に搭載され、脚部13は、レバー71を旋回させることによって第1の器具構成要素6に押付けられ得る。図示の実施例では、締結具21は第2の器具構成要素に取付けられ、遠位側から挿入されるが、振動偏向装置61の側に締結具を設けることも可能であろう。
【0066】
図7は、組織部分および/またはそれらの接続を補強するためのメッシュなどの人工材料(または場合によっては自家移植片もしくは同種移植片組織)の柔軟に曲げることができる平面構造の使用を例示する。図7に示される構成では、メッシュ71である可撓性平面構造が使用され、各々が組織部分1,2の一方に接して配置される。メッシュは外側に配置されるため、組織部分は互いに直接接している。メッシュ(または他の可撓性平面構造)によってもたらされる補強材は、図7の2つの締結具21によって例示されるように、多数の締結具が使用される場合に特に有益であり得る。補強材は、それがなければ共有開口部において組織部分に作用するであろう面内力を吸収することができる。
【0067】
2つの組織部分と2つの外側の可撓性平面構造とを有する図示の構成の代わりに、他の構成も可能である。
−わずか1つの可撓性平面構造を、組織部分の一方または組織部分同士の間のいずれかに接して設ける。後者の場合、可撓性平面構造は任意に、組織部分が互いに付着するように組織の成長を促進する種類であり得る。
−組織部分の1つの代わりに、1つ以上の可撓性平面構造を設ける。その場合、方法は、移植部分、すなわち、たとえば組織部分を補強するかまたはたとえばヘルニアの場合に(他の)軟組織を被覆し保持するような他の機能を有する可撓性平面構造に、組織部分を固定する方法である。
−これらの構成の各々において、わずか1つの締結具または3つ以上の締結具を使用する。
【0068】
図8aおよび図8bは、案内針を使用してフィラメント状要素を組織部分に接続することを示す。第2の器具構成要素の脚部13はチャネルを含み、曲げることができる針81がそこを通って組織部分1,2を穿孔するように案内される。針は、たとえば、それが案内されるチャネル82を出た後、伸張された構成に自動的になる形状記憶材料からなる。針は、たとえばニチノール(登録商標)からなり得る。針は脚部の一部を通ってチャネルによって案内され、次いで、遠位側から組織部分を穿孔し、外科医にとってアクセス可能な近位側から外に出る。
【0069】
フィラメント状要素は、たとえば、針の先端または針の先端付近の取付スポットに取付けられ得、したがって穿孔する際に、針はフィラメント状要素を組織部分を通って引張る。代替的に、針は挿管されてもよく、フィラメント状要素は挿管によって押され得る。これらの場合、フィラメント状要素が組織を通って案内された後で、針が完全に引戻される。さらに別の代替例として、針そのものまたは針の一部(たとえば鋭い先端を含むニチノール(登録商標)端部分以外)は、穿孔するステップ後に所望の形状に形成されることによってフィラメント状要素を構成し得る。
【0070】
図8bは、フィラメント状要素83の端部分が、締結具21のシャフトが通るループにどのように形成されるかを示す。その場合、フィラメント状要素は、組織部分の近位側に取付けられ、穿孔穴を通って遠位側に案内され、組織部分の側面に沿って近位側に戻る。外科医は、組織部分の端部分を何らかの他の要素へと通すか、またはそうでなければその上の力を抜き出すために、フィラメント状要素を使用し得る。
【0071】
フィラメント状要素は、外科用糸または他のフィラメントであり得る。引張荷重を受けることができるようにフィラメント状要素を締結具に取付けるループまたは他の構造は、締結具21の挿入前または、場合によってはその後にも作製され得る。加えてまたは代替例として、フィラメント状要素は締結具に、後者の挿入中または挿入後に溶接され得る。
【0072】
図9は、特に図4a〜図4cを参照して説明したような構成のための、たとえばばね機構91、締結具によって自動的に投入するためのディスペンサ90が設けられている脚部の原理をさらに極めて概略的に示す。
【0073】
上記の実施例の締結具21は、組織部分/組織および移植部分の1つの共有開口部を通って伸びるように構成される1つの締結具本体またはシャフト24を含むが、発明は、ブリッジ部分26によって接続され、したがって対応する数の共有開口部を通って伸びるように構成される複数のシャフト24を有する締結具にも適する。処理後のブリッジ部分は組織(または移植部分)に支持され、任意のあらかじめ形成された(近位または遠位)ヘッド22の機能を置換するかまたは高める。図10は、2本のシャフトを有する実施例を示し、図11は3本のシャフトを有する実施例を示す。たとえば、一列に3本以上、たとえば櫛状配置と言えるほどの3本、4本、5本のシャフトを有するか、または図11のように列を形成しない他の形態を有する他の構成が可能である。また、外科医の必要性に従って、いずれかのブリッジ部分形状を選択することができる。
【0074】
ヘッドがそれに接して形成される器具構成要素(一般に、ヘッド成形部分および/またはヘッド形成要素を有する器具構成要素が対応して形成される。締結具21が近位側から挿入される実施例については、これは第2の器具構成要素の脚部13に関係がある。図12図15は、たとえば図10の締結具についてこれを例示する。図12では、脚部は、移植された後の締結具が2つの遠位ヘッドを含むように、2本のシャフト部分の各々の遠位端においてヘッドを成形するためのくぼみを形作る2つのヘッドを含む。代替例を図13に示す。くぼみを成形する共通ヘッドは、締結具のあらかじめ成形された近位部分のように、ブリッジ部分も含む遠位ヘッドを形成する。ヘッド形成要素を用いて遠位ヘッドが設けられる場合、同じ原理が当てはまる。第1のオプションとして、2つの別個のヘッド形成要素51が設けられる(図14)が、第2のオプションは、ブリッド部分を有する共通のヘッド形成要素51を提案する。
【0075】
図12図15は、締結具が近位側から挿入され2本のシャフトを含む構成に関連するが、同じ考察は遠位側から挿入され、かつ/または3本以上のシャフトを有する締結具に当てはまる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15