特許第6284367号(P6284367)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284367ミーリングカッター用の切削インサート及び敷板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284367
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ミーリングカッター用の切削インサート及び敷板
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20180215BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20180215BHJP
   B23C 5/06 20060101ALI20180215BHJP
   B23C 5/10 20060101ALI20180215BHJP
   B23C 5/22 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   B23C5/20
   B23B27/16 Z
   B23C5/06 A
   B23C5/10 D
   B23C5/22
【請求項の数】19
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-557665(P2013-557665)
(86)(22)【出願日】2012年3月2日
(65)【公表番号】特表2014-510644(P2014-510644A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】SE2012050238
(87)【国際公開番号】WO2012125105
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年1月8日
【審判番号】不服2016-16598(P2016-16598/J1)
【審判請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】13/045,637
(32)【優先日】2011年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ホエフラー
(72)【発明者】
【氏名】エブゲニー コチェロウスキー
【合議体】
【審判長】 西村 泰英
【審判官】 近藤 裕之
【審判官】 平岩 正一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/067910(US,A1)
【文献】 特開2008−80490(JP,A)
【文献】 米国特許第6921234(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/099386(US,A1)
【文献】 実開平1−79510(JP,U)
【文献】 特開平7−60528(JP,A)
【文献】 特表2007−522955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/06
B23C 5/10
B23C 5/20-5/22
B23C 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り屑生成加工用の刃先割出可能な切削インサート(14A)であって、
一対の長い側面(46)と一対の短い側面(48)とによって連結された上面と底面(42,44)とを含む多角形の形のボディを備え、
長い側面(46)は上面(42)と交わってそれと共に一対の主切れ刃(50)を形成し、短い側面(48)は上面(42)と交わってそれと共に一対の副切れ刃(52)を形成し、
副切れ刃(52)は主切れ刃(50)より短く、二つの主切れ刃(50)と交わり、
上面(42)は、二つの副切れ刃(52)を通って延びる切削インサート(14A)の仮想二等分線(B)に対して実質的に対称に形成され、
前記切削インサート(14A)は180°回して一対の主切れ刃と副切れ刃のペアを切削位置に配置できるように割出し可能であり、
底面(44)には複数のセレーション(60)が形成され、底面(44)に形成されたすべてのセレーション(60)は互いに平行に向いて二等分線(B)に対して横方向に延びており、
前記セレーション(60)の各々は二等分線(B)に対して30°から90°までの範囲にある角度(α)を成し、該角度(α)が鋭角である場合、前記セレーション(60)は切削位置にある一対の主切れ刃と副切れ刃とが交わる方向に向かって傾いていることを特徴とする刃先割出可能な切削インサート(14A)。
【請求項2】
角度(α)は実質的に90°であることを特徴とする請求項1に記載の刃先割出可能な切削インサート(14A)。
【請求項3】
切削インサート(14A)の幾何中心を通って上面(42)から底面(44)まで貫通孔(54)が延び、少なくとも2つのセレーション(60)が二等分線(B)に沿って間隔をあけ、貫通孔(54)の対向するそれぞれの側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の刃先割出可能な切削インサート(14A)。
【請求項4】
セレーション(60)は底面(44)の実質的に全域に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の刃先割出可能な切削インサート(14A)。
【請求項5】
切削インサート(14,14A)用のインサート座を画定する敷板(70)であって、敷板(70)は第1及び第2の部分(72,74)を含み、第1の部分(72)は実質的に平行な上面と下面(76,78)とを有し、敷板(70)の前後方向(D)に沿って間隔をあけた前端と後端とを画定し、
上面(76)は複数のセレーション(80A)を含み、上面(76)に形成されるすべてのセレーション(80A)は互いに平行に向いて前後方向(D)に対して横方向に延び、
第二の部分(74)は第1の部分(72)の前端に配置され、下面(72)を超えて下向きに突出するリップ(75)を形成し、セレーション(80A)は敷板(70)の前後方向(D)に対して30°〜90°までの範囲にある角度を形成することを特徴とする敷板(70)。
【請求項6】
第1の部分(72)は上面と下面(76,78)とを通って延びる貫通孔(90)を含むことを特徴とする請求項5に記載の敷板(70)。
【請求項7】
リップ(75)は、それぞれ上面と下面(76,78)とから延びる前面と背面(84,86)とを含み、背面(86)は上面(76)に対して実質的に直角方向に向いていることを特徴とする請求項5に記載の敷板(70)。
【請求項8】
リップ(75)は、それぞれ上面と下面(76,78)とから延びる前面と背面(84,86)とを含み、背面(86)は下面(78)と斜めの角度(β)を成すことを特徴とする請求項5に記載の敷板(70)。
【請求項9】
リップ(75)は、それぞれ上面と下面(76,78)とから延びる前面と背面(84,86)とを含み、背面(86)は下面(78)と鋭角を成すことを特徴とする請求項5に記載の敷板(70)。
【請求項10】
長手軸(A)を画定するカッターボディ(12)と、カッターボディ(12)の軸方向一端に配置されたセレーションを有するインサート座に取り付けられた切り屑生成加工用の少なくともひとつの刃先割出可能な端部切削インサート(14A)と、を備える切削工具であって、
切削インサート(14A)は複数の側面(46,48)によって相互に連結された上面と底面(42,44)とを含み、
複数の側面(46,48)は上面(42)と交わってそれと共に複数の切れ刃を形成し、そのうちのひとつは長手軸(A)と略平行に配置された有効切れ刃となるように配置され、
底面(44)は複数の平行なセレーション(60)を含み、それがセレーションを有するインサート座の対応するセレーション(80,80A)と噛み合って係合するように配置され、
切削インサート(14A)の底面(44)とセレーションとを有するインサート座に形成されたすべてのセレーション(60,80,80A)は、互いに平行に向き、有効切れ刃(50)と長手軸(A)との両方に対して横方向に延びて、切削インサート(14A)がカッターボディ(12)の横方向に向いた面に圧しつけられる状態で切削作業中に切削インサート(14A)に加わる軸方向後方への力に対抗し、前記セレーション(60、80、80A)は長手軸(A)に対して30°から90°までの範囲にある角度(α)を成し、該角度(α)が鋭角である場合、前記セレーションの径方向外側端がその径方向内側端よりも前方に配置されるように前記セレーションが傾いていることを特徴とする切削工具。
【請求項11】
角度(α)は実質的に90°であることを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項12】
側面(46,48)と上面(42)との交わりが主切れ刃及び副切れ刃(50,52)の第1及び第2の対を形成し、副切れ刃(52)は主切れ刃(50)よりも短く、各副切れ刃(52)は二つの主切れ刃(50)と交わり、上面(42)は二つの副切れ刃(52)を通って延びる仮想二等分線(B)に対して実質的に対称に形成され、切削インサート(14)のセレーション(60)とインサート座のセレーションとは二等分線(B)に対して横方向に延びていることを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項13】
さらに、切削インサート(14)の貫通孔(54)を通って延びてカッターボディ(12)のねじ溝つき孔(92)に螺合的に結合される取り付けねじを含み、取り付けねじによって切削インサート(14)がカッターボディ(12)の横方向の面に圧しつけられることを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項14】
インサート座は切削インサート(14)とカッターボディ(12)との間に取り付けられた敷板(70)によって形成されることを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項15】
敷板(70)は、インサート座のセレーション(80)が形成された第1の部分(72)と、カッターボディ(12)の軸方向端に位置する第1の部分の前端に配置された第2の部分(74)とを含み、第2の部分(74)は切削インサート(14)から離れる方向に延び、カッターボディ(12)の前端の下部と係合するリップ(75)を画定することを特徴とする請求項14に記載の切削工具。
【請求項16】
セレーションを有するインサート座がカッターボディ(12)に直接形成されることを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項17】
さらに、追加の切削インサート(14)を含み、それらがカッターボディ(12)上でそれぞれの端部インサート(14A)の後に配置されて複数のらせん状切れ刃(18)を形成することを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項18】
切削工具がミーリングカッターを含むことを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項19】
長手軸(A)を画定し切削インサート(14)を取り付けるのに適合するインサート座を形成しているカッターボディ(12)であって、
インサート座はカッターボディ(12)の長手方向前端に配置された端部インサート座を含み、インサート座は複数のセレーション(80,80A)を含み、カッターボディ(12)に形成されたすべてのセレーション(80,80A)は互いに平行に向き、長手軸(A)に対して横方向に延びており、
前記セレーション(80、80A)は長手軸(A)に対して30°から90°までの範囲にある角度(α)を成し、該角度(α)が鋭角である場合、前記セレーションの径方向外側端がその径方向内側端よりも前方に配置されるように前記セレーションが傾いていることを特徴とするカッターボディ(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッターボディに装着され、カッターボディの軸方向及び長手方向でかなり大きな切削力を受ける金属を切削するインサートを使用して切り屑生成加工を行う方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術に関する以下の説明で、いくつかの構造及び/又は方法が参照される。しかし、それは以下の参照がそれらの構造及び/又は方法が従来技術を構成すると認めるものであると解釈してはならない。本発明の出願人は、それらの構造及び/又は方法が従来技術を構成するものではないと強調する権利を明記して留保する。
【0003】
金属被削材の切り屑生成加工のための切削工具は、普通、薄い多角形の、例えば四角形(正方形又は非正方形)や三角形の切削インサートをカッターボディに装着して用いる。そのようなインサートは上面と底面が側面で連結され、側面が上面と交わって切れ刃を形成する。
【0004】
例えば、長い切れ刃を有するミーリングカッターでは、切削インサートはカッターボディ上のそれぞれのインサート座に、各インサートの切れ刃のひとつが有効切れ刃を連続するように、そして前後の軸方向で、すなわちカッターボディの長手軸に対して略径方向に配置される。これらの切れ刃は、一般に、らせん状の切れ刃を形成するように整列され、カッターボディの長手軸のまわりでカッターボディと被削材との間に相対的な回転が生ずるとそれによって被削材が切削される。さらに、カッターボディ上の最先端の各インサートは長手軸に対して横方向に向いた有効な先端切れ刃を有する。切削動作の際、すべてのインサートにはカッターボディの径方向内向きの力がかかり、インサートがカッターボディの径方向外向きの面に支えられるような仕方でインサートを装着することによってそれに対抗する。その他に、先端インサートには、横向きの有効切れ刃があるために、カッターボディの軸方向後方への相当な力がさらに加わる。
【0005】
先端インサートにかかる軸方向後方への力は、装着ねじによっては完全に対抗することはできず、さらにインサートをカッターボディの軸方向前向きの支持壁に当接させることによって対抗できる。しかし、これはカッターボディを製作するための材料の量を増加させ、隣接する位置のインサートでの切り屑生成を妨げることがある。また、当接するインサートの当接面の形に合致するように支持壁を構成することで、カッターボディが多様な形を受け入れることができなくなる恐れがある。
【0006】
また、先端インサートにかかる軸方向の力に対して、インサートの底面に凹み、例えば略ピラミッド形の凹みを設けて、インサート座の対応する形の上向き突起にそれが載るようにすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このやり方では限られた場合しか成功しない。
【0007】
アルミニウムなどの比較的軽い材料を切削する高速カッターの場合、インサートには大きな遠心力がかかる。このような遠心力に対して、切削インサートの底面にカッターボディの長手軸と平行な向きのセレーションを設け、それがインサート座に形成される対応するセレーションと噛み合うようにして遠心力に対抗することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、このようなセレーションは、もっと重い材料を切削する低速のカッターの先端に加わる軸方向の力には効果的に対抗できないであろう。
【0008】
特許文献3及び4では、切削インサートの底面に2組のセレーションを設け、各組のセレーションは互いに平行で、他方の組のセレーションに対して直角になるようにすることが提案された。このような対向するセレーションの組が、インサート座に形成される対応するセレーションと噛み合って、異なる方向に加わる切削力に対抗する。このタイプのインサートは効果的であるが、製造が比較的難しく高価になる。各組のセレーションによって規定される力に対抗する全表面積は、他方の組が存在するために小さくなる。さらに、いったんインサートが装着されると、どの方向への動きもロックされ、インサートをカッターボディの面に圧しつけて、例えば取り付けねじによって圧しつけてインサートの安定性を高めることができない。
【0009】
インサート座をカッターボディ上に直接形成することも、インサートとカッターボディの間に別の敷板を介在させて形成することもできる。この敷板は、切削作業中に切削インサートに破壊的な故障が起こった場合にカッターボディにある程度の防護となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7819610号明細書
【特許文献2】米国特許第6921234号明細書
【特許文献3】米国特許第6146060号明細書
【特許文献4】米国特許第7585137号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のことから、軸方向後方への力に対する支持が改善された切削インサートを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に開示されるのは、切り屑生成加工のための切削インサートであって、一対の長い側面と一対の短い側面によって連結される上面と底面を含む多角形ボディを備え、側面が上面と交わって一対の主切れ刃と一対の副切れ刃を形成している切削インサートである。各副切れ刃は主切れ刃よりも短く、二つの主切れ刃と交わる。上面は二つの副切れ刃を通って延びる仮想的二等分線に関して対称に形成される。底面には複数のセレーションが形成されている。底面のセレーションはすべて互いに平行であり、この二等分線に対して横方向に延びている。
【0013】
切削インサートのインサート座を規定する敷板も開示される。この敷板は第1及び第2の部分を含み、第1の部分は実質的に平行な上面と下面を有し、敷板の前後方向で間隔をあけた前端と後端を規定している。上面は複数のセレーションを含む。上面に形成されたすべてのセレーションは互いに平行であり、前後方向に対して横方向に延びている。第2の部分は、第1の部分の少なくとも前端に配置されて下面を超えて下向きに突出したリップを形成する。リップの代わりに、第1の部分の下面に平行なセレーションを設けることもできる。
【0014】
さらに、長手軸を規定するカッターボディと、カッターボディの軸方向の一端に配置されたセレーションを有するインサート座に装着された少なくともひとつの切り屑生成加工用の刃先割出可能な端部切削インサートを備える切削工具が開示される。切削インサートは、上面と下面を含み、それらが複数の側面によって連結され、側面は上面と交わって複数の切れ刃を形成し、それらのひとつが長手軸と略平行に向いた有効切れ刃を構成するように位置している。底面は、複数の平行なセレーションを有し、それらはインサート座の対応するセレーションと噛み合うように配置される。インサートのすべてのセレーション及びインサート座のすべてのセレーションは互いに平行に向いており、有効切れ刃と長手軸の両方に対して横方向に延びて、切削動作の際にインサートがカッターボディの横方向に向いた面に圧しつけられる状態でインサートに加わる軸方向後方への力に対抗する。
【0015】
さらに、切り屑生成加工用の切削インサートが開示される。これは、上面と底面を含む多角形ボディと、上面に連結されて対応する切れ刃を形成する少なくとも3つの切削インサートを含む。底面には複数の組のセレーションがそれぞれの切れ刃に隣接する配置で形成される。各組のすべてのセレーションは互いに平行で、それぞれの切れ刃に対して横方向に延びている。各組の少なくともいくつかのセレーションは一端が閉じている。各組のセレーションは少なくとも2つの他の組のセレーションと非平行に向いている。
【0016】
また、長手軸を規定するカッターボディと、カッターボディの軸方向の一端に配置されたセレーションを有するインサート座に取り付けられた少なくともひとつの刃先割出可能な端部切削インサートを含む切削工具も開示される。切削インサートは、上面と下面と、上面と連結して対応する切れ刃を形成する少なくとも3つの側面を含む多角形のボディを備える。下面には複数の組のセレーションがそれぞれの切れ刃に隣接した配置で形成されている。各組のすべてのセレーションは互いに平行に向き、それぞれの切れ刃に対して横方向に延びている。各組のセレーションは少なくとも2つの他の組のセレーションと非平行に向いている。セレーションを有するインサートは切れ刃に対して横方向にただひとつの方向に延び、この横方向に延びるセレーションとだけ噛み合って切削インサートをカッターボディの横向きの面に(例えば、取り付けねじによって)圧しつけることを可能にするセレーションを含む。
【0017】
また、長手軸を規定し切削インサートを取り付けるのに適するインサート座を形成するカッターボディも開示される。インサート座は、カッターボディの長手方向の前端に配置された端部インサート座を含み、その端部インサート座は複数のセレーションを含む。カッターボディに形成されたすべてのセレーションは互いに平行に向き、長手軸に対して横方向に延びている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】長い切れ刃を有するミーリングカッターを示す正面斜視図であり、正面側切削インサートのひとつがインサート座を構成する敷板と共に取り付けられる過程で示されている。
図2図1の切削インサートと敷板を示す分解斜視図である。
図3図1の切削インサートを示す底面斜視図である。
図4】第1の形態の敷板に取り付けられた切削インサートを示す側面図である。
図5】第2の形態の敷板に取り付けられた切削インサートを示す側面図である。
図6】第3の形態の敷板に取り付けられた切削インサートを示す側面図である。
図7】長い切れ刃を有するミーリングカッターを示す側面図であり、カッターボディに直接形成されたセレーションを有するインサート座を示している。
図8】インサート座のセレーションとカッターボディの長手軸の第1の関係を示すカッターボディの概略図である。
図9】インサート座のセレーションとカッターボディの長手軸の第2の関係を示すカッターボディの概略図である。
図10】底面に複数組のセレーションが形成された正方形の切削インサートを示す概略図である。
図11図10の正方形の切削インサートをカッターボディのポケットに配置された敷板に取り付けて示す側面図である。
図12】底面に複数組の平行なセレーションが形成された三角形の切削インサートを示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下で説明するように、カッターボディ、例えばミーリングカッターのカッターボディなど、の軸方向前端に配置されたそれぞれのインサート座に取り付けられる切削インサートはセレーションを有し、それがインサート座の対応するセレーションと噛み合う。セレーションはフライス削り作業中にインサートに加わる軸方向後方への力に対抗するように向いている。すなわち、セレーションはカッターボディの長手軸に対して横方向に向いている。
【0020】
図1には、カッターボディ12を備え、そこに取り付けねじ16によってそれぞれの切削インサート14が固定されるインサート座が配置されるロングエッジ・フライス削りカッター10が示されている。これらのねじはインサートに形成された貫通孔を通ってカッターボディに形成されたねじ溝つき孔にねじ込まれて固定される。インサート14はカッターボディの長手軸Aのまわりにらせん状に配列された複数のカッティング・フリュート18を形成するように配置される。フリュート18に隣接してらせんチャンネル22が配置されて切削動作中に被削材(図示せず)から分離される切り屑を導くようになっている。
【0021】
インサート14は、カッターボディの軸方向前端に位置する正面インサート、又は端部インサート、を含む。前に説明したように、フライス削りカッターにおけるすべてのインサートには、カッターボディの長手軸に略平行に向いた有効な軸方向切れ刃が存在するため、フライス削り作業の間に径方向内向きの切削力が作用する。しかし、正面インサート14Aには、また、横方向の有効な切れ刃が存在するために軸方向後方への強い切削力が作用する。本発明は、正面インサートに作用するこの軸方向の力に、正面インサートとそれぞれのインサート座に特別の向きのセレーションを設けることによって効果的かつ経済的な仕方で対抗するやり方を説明する。
【0022】
各正面インサート14Aは,一般に非正方形の矩形のボディを有するが、あとで説明するように、インサートは正方形や三角形など別の形であってもよい。インサート14は,また、上面と底面42、44を含み、それらは複数の長い側面46と短い側面48を含む側面によって連結されている。長い側面は上面と交わって2つの主切れ刃50を形成し、短い側面は上面と交わって2つの副切れ刃52を形成する。副切れ刃52は主切れ刃よりも短く、各副切れ刃はインサートのそれぞれのコーナーで二つの主切れ刃と交わる。貫通孔54がインサートの幾何的中心を通って延び、固定ねじ16を受け入れる。
【0023】
インサートの長手方向の仮想二等分線B(図3)は副切れ刃52を通り貫通孔54を通って延びてインサートを長手方向に沿って二等分する。すなわち、副切れ刃52は、二等分線Bに対して横方向に延び、主切れ刃50はこの二等分線と略平行に延びる。インサートは、180°回して主切れ刃と副切れ刃のペアのどちらかを切削位置に配置できるという意味で割出可能である。
【0024】
各正面インサート14Aの上面42は仮想二等分線Bに関して実質的に対称に成形される。底面44は平行に交替する凹みと突起を含み、それらは二等分線Bに対して横方向に延びる複数のセレーション60を画定し、あとで説明するように、それはインサート座のセレーション80又は80Aと噛み合う。力に対抗する面積を最大にするために面44の全体にセレーションが形成されることが好ましい。セレーション60は二等分線Bと角度αを成し、したがって軸Aと角度αを成す。例えば、図8に示すように角度αは軸方向後方への切削力に対する最大の抵抗を与えるように実質的に90°であってもよい。しかし、図9に示すように、角度αは鋭角で、約30°という小さな角であってもよい。鋭角の場合。セレーションの傾きは、図9に示すように、各セレーションの径方向外側端がそのセレーションの径方向内側端よりも前方に配置されるようになることが好ましい。こうして、インサートに作用する軸方向後方への切削力は径方向内向きの成分を有し、それが切削インサートを径方向内側へカッターボディに対して圧しつけるように働いて切削作業中のインサートの振動に対してより効果的に抵抗できる。
【0025】
セレーション60は二等分線Bに沿って間隔をあけて、二等分線Bの方向で考えたとき、貫通孔54のそれぞれの側にひとつ以上のセレーションが配置されるようになっている。貫通孔のそれぞれの側にいくつのセレーションがあってもよく、一方の側に他方の側よりも多くのセレーションがあってもよい。
【0026】
セレーション60は適当などんな形態を有してもよく、例えば開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6921234号明細書に記載されたどの形態を有してもよい。
【0027】
上述したように、インサート14Aカッターボディに配置されたインサート座に取り付けられる。インサート座80は、図7に示されるように、カッターボディ12に直接形成することもでき、又はインサート座80Aを、図1,2及び4〜6に示されるように、カッターボディとインサートの間に配置される敷板70によって構成することもできる。
【0028】
最初にインサート座が敷板70によって画定される場合について説明する。敷板はカッターボディ12と正面インサート14Aの間に配置することが好ましい。何故なら、破壊的なインサートの故障が起こった場合、正面インサートの下に配置されたカッターボディの部分は特に損傷しやすいからである。しかし、敷板は他のインサートに対して設けることもできる。
【0029】
各敷板は前後方向Dを規定し(図2)、第1及び第2の部分72,74を含む。方向Dはカッターボディの軸Aと実質的に平行に向いている。第1の部分72は実質的に平行な上面と下面76,78を有する。下面78はなめらかであり、上面76には複数のセレーション80が形成され、それは前後方向Dに対して横方向に、すなわちインサートのセレーションの角度αに対応する角度で延びている。第2の部分74は、第1の部分の前端に配置され、下面78を超えて延びる下向きに突出するリップ75を形成する。このリップは、カッターボディのセクション82の上に被さって係合し(図1)、敷板をカッターボディの軸方向で正確に定位させ、切削インサートによって伝達される軸方向後方への力に抵抗する。また、リップは切削インサートに破壊的な故障が起こった場合に下にあるカッターボディの部分に対してある程度の余分な保護となる。リップ75は、上面と下面76,78の前端からそれぞれ延びる前面と背面84,86を含む。好ましくは、図4に示されるように、背面86は下向きに延び、前方に、すなわち下面78から離れるように、鈍角δで傾斜してカッターボディの対応する角度がつけられたセクション82と係合する。
【0030】
あるいはまた、背面86を図6に示されるように下面78と直角方向に向ける、又はそれを後方に、すなわち敷板の後端の方に傾斜させて図5に示されるように下面78と鋭角βを成すようにすることもできる。
【0031】
上面76から下面78まで貫通孔90が敷板を通って延び(図2)、固定ねじ16を受けるようになっている。敷板のセレーション80は、インサートのセレーション60と噛み合うように形成されている。すなわち、セレーション60の向きに応じて、セレーション80は前後方向Dに対して(したがって、軸Aに対して)直角方向に向けることも、又は前後方向Dに対して(したがって、軸Aに対して)45°の角度に向けることもできる。
【0032】
セレーション60の場合と同様、セレーション80の一部は貫通孔90の一方の側に配置され、他のセレーションは方向Dで考えて貫通孔90の反対の側に配置されている。
【0033】
フライス削り作業の間、端部切削インサートに加えられる軸方向後方への力は、セレーション60,80によって敷板に伝達され、その力はさらに、リップ75によってカッターボディに伝達され、カッターボディがそれに抵抗する。
【0034】
リップ75の代わりに、敷板を工具のポケットに取り付け、ポケットの壁と係合して伝達される軸方向後方への力に抵抗することもできる。
【0035】
敷板が設けられない場合、すなわち、インサート座がカッターボディに直接形成される場合、図7に示されるように、セレーション80aがカッターボディに直接形成される。セレーション60,80,80aの場合と同様、このセレーション80aも長手軸Aに対して30〜90°の範囲にある角を成す。セレーション80aの孔92に対する関係は前述したセレーション80の貫通孔90に対する関係と同じである。
【0036】
上で説明したように、各正面インサートは固定ねじ16を受け入れる貫通孔54を有する。ねじ16は、インサートの孔54の側面に支えられるヘッド100を有する(図4を見よ)。ねじ16はまたねじ溝つきの端102を有し、それがカッターボディのねじ溝つき孔92に螺合して受け入れられる。(インサート座が敷板によって構成されるかカッターボディに直接形成されるかに関わりなく)インサートのセレーション60とインサート座のセレーション80(又は80a)が噛み合うようにインサート座にインサートが装着され、インサートがカッターボディに当接するように径方向に押しつけられたとき、ねじ溝つき孔92の中心と貫通孔54の中心が完全に一致しないことが好ましい。むしろ、図4に示されるように、これらの中心は距離dだけ径方向にわずかにずれている。ずれは、固定ねじが取り付けられたとき、固定ねじのヘッド100が軸方向前向き成分と径方向外向き成分を有する方向にわずかに弾性的に曲げられるような方向に生ずる。その結果、ねじが径方向内向き軸方向後方に曲がっていない形にリバウンドしようとして、インサートに対するプレストレスが生まれ、インサートをカッターボディの横方向に向いた面93に略軸方向後方へそして略径方向内向きに圧しつけて(図1及び7参照)、振動に対するインサートの安定性を高める。
【0037】
ねじ16の曲げの程度(したがって、プレストレスの強さ)は、敷板を用いた場合には敷板を用いない実施形態に比べて長いねじ16を用いることができるので、より大きくなるということは理解されるであろう。
【0038】
以上の説明から、正面インサート14Aがカッターボディ12に取り付けられると、インサートのセレーション60とインサート座のセレーション80(又は80A)の噛み合う係合によって、インサートはフライス削り作業中に正面インサート14Aに加わる比較的強い軸方向後方への力に効果的に対抗できるということが理解されるであろう。敷板が用いられる場合、リップ75と工具ボディの係合によって、軸方向後方への切削力を敷板からカッターボディに伝達することが可能になる。
【0039】
前に指摘したように、切削インサートはいろいろな形をとることができる。図10には4つの切れ刃202a〜202dを有し、4つの切削位置の間で割出すことができる正方形の切削インサート200が示されており、切れ刃のひとつがカッターボディの長手軸に略平行に向いた有効な切れ刃になっている。その底面に、インサート200は各切れ刃202a〜202dに関連した4組の平行なセレーション204a〜204dを有する。各組のセレーションは、他の2組のセレーションと非平行に延び、それぞれの切れ刃に対しては横方向に向いてそれに加わる軸方向の切削力に抵抗するようになっている。各組のセレーションは長さが累進的に変わり、最も長いセレーションはインサートの貫通孔206に隣接しており、最も短いセレーションは切れ刃のそれぞれの端に位置している。各セレーションは一端が閉じているが、孔206の方へ延びる各組の中央に位置するセレーションは孔と交わるので両端が開いていることがある。
【0040】
インサート200のためのインサート座は、軸方向の切削力に対抗することができ、インサートをカッターボディの横方向に向いた面に圧しつけることができるように構成される。そのようなインサート座の一例は、敷板によって、又はカッターボディ自身によって形成できる。インサート座には、カッターボディの軸Aに対して横方向に向いた2組の平行なセレーションが設けられ、どちらの切れ刃が有効な切れ刃になるかによって、インサートのセレーション204a及び204c(同じ方向に延びている)又はインサートのセレーション204b及び204d(同じ方向に延びている)と噛み合う。インサートのセレーションの噛み合っていない2つの組は、インサート座のセレーションがない部位によって、例えば凹んだ部位によって受けられ、したがって不使用の状態とされ、カッターボディの方へのインサートの動きを妨げることができない。こうして前述したように、インサートを取り付けねじによってカッターボディの横向きの面に圧しつけることができる。
【0041】
前に説明したように、セレーションの組204a〜204dは、切れ刃に対して直角方向に向ける代わりに、それぞれの切れ刃に対して約30°以上の鋭角で向けることもできる。その場合、インサート座は有効な切れ刃につながるセレーションと噛み合うように配置されたセレーションの組をただひとつ有する。インサート座はまた、インサートの他の2組のセレーションを受け入れて不使用の状態とするための2つのセレーションなしの部位を含む。したがって、取り付けねじによってインサートを確実にカッターボディに圧しつけることができる。
【0042】
正方形インサート200のインサート座が敷板によって構成される場合、敷板は軸方向後方に向けられる切削力を任意の適当な仕方で、例えば前述のリップ75によって、又は図11に示されるようなポケット214の壁212との係合によって、カッターボディに伝達するように構成できる。
【0043】
切削インサートの別の可能な形は、図12に示されるような三角形の形である。その場合、三角形インサート300は3つの切れ刃の組302a〜302cを有し、3つの切削位置の間で割出可能である。3組のセレーション304a〜304cがそれぞれの切れ刃に対して設けられる。各組のセレーションは他の2組のセレーションに対して非平行になる。対応するカッターボディのインサート座はただひと組のセレーションだけを有し、インサートのただひと組のセレーション、すなわち有効な切れ刃と関連するセレーション、と噛み合う。インサート座はまた、他のセレーションを受容するための2つの大きな凹みを含む。
【0044】
ここで開示されたフライス削り工具の実施例は長い切れ刃を有するフライス削り作業用のものであるが、ここに開示した方法は他のフライス削り作業、例えば正面フライス削りやエンドミリング、にも有用であることは理解されるであろう。さらに、それらの方法はフライス削り以外の、旋削や中ぐりなど、大きな軸方向の力に対抗しなければならない他のタイプの切り屑生成加工にも有用である。
【0045】
ここでは好ましい実施形態につて説明してきたが、具体的に特定しては述べなかった追加、削除、変更及び代用が、添付された特許請求の範囲を逸脱することなく可能であるということは当業者には理解されるであろう。
【0046】
本出願が優先権を主張する米国特許出願第13/045637号明細書の開示内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12