特許第6284376号(P6284376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284376ガスタービンの運転方法および運転制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284376
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】ガスタービンの運転方法および運転制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/18 20060101AFI20180215BHJP
   F01D 25/32 20060101ALI20180215BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20180215BHJP
   F01D 25/10 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   F02C7/18 Z
   F01D25/32 C
   F02C7/18 A
   F01D17/00 G
   F01D25/10 E
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-12718(P2014-12718)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-140690(P2015-140690A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 慎一
(72)【発明者】
【氏名】中迫 寛孝
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−201862(JP,A)
【文献】 特開2012−154290(JP,A)
【文献】 特開平08−082226(JP,A)
【文献】 実開昭62−040300(JP,U)
【文献】 特開2000−161084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/18
F01D 17/00
F01D 25/10、25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の中間段または出口とタービンとを接続して前記圧縮機から抽気した圧縮空気をタービンに供給する冷却空気系統を備えており、前記冷却空気系統の途中に前記圧縮空気を冷却する熱交換器と、前記熱交換器の前記圧縮空気の下流側に設けられたドレン水排出弁とを備えるガスタービンの運転方法であって、
記ガスタービンの起動における定格速度到達の後の少なくとも所定期間前記ドレン水排出弁を開状態とし、その後、前記ドレン水排出弁を閉状態とし、
前記ガスタービンが負荷上昇すると、前記熱交換器の出口温度が露点温度より高いことを特徴とするガスタービンの運転方法。
【請求項2】
前記ガスタービンの起動における定格速度到達の後に前記熱交換器の出口温度が上昇して設定温度に至る時点を前記所定期間の終わりとすることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンの運転方法。
【請求項3】
前記ガスタービンの起動開始から設定時間が経過した時点を前記所定期間の終わりとすることを特徴とする請求項1に記載のガスタービンの運転方法。
【請求項4】
前記ガスタービンの停止時は前記ドレン水排出弁を閉状態とし、前記ガスタービンの起動開始後に前記ドレン水排出弁を開状態とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のガスタービンの運転方法。
【請求項5】
圧縮機の中間段または出口とタービンとを接続して前記圧縮機から抽気した圧縮空気をタービンに供給する冷却空気系統を備えており、前記冷却空気系統の途中に前記圧縮空気を冷却する熱交換器と、前記熱交換器の前記圧縮空気の下流側に設けられたドレン水排出弁とを備え、負荷上昇した後の運転時の前記熱交換器の出口温度が露点温度より高いガスタービンで用いる運転制御装置であって、
前記ガスタービンの起動における定格速度到達の後の所定期間を検出し、少なくとも前記所定期間前記ドレン水排出弁を開放制御し、前記所定期間を超えた場合に前記ドレン水排出弁を閉鎖制御することを特徴とするガスタービンの運転制御装置。
【請求項6】
前記熱交換器の出口温度を検出し、当該出口温度が上昇して設定温度に至った場合に前記ドレン水排出弁を閉鎖制御することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンの運転制御装置。
【請求項7】
前記ガスタービンの起動開始からの経過時間を検出し、当該経過時間が予め設定された設定時間となった場合に前記ドレン水排出弁を閉鎖制御することを特徴とする請求項5に記載のガスタービンの運転制御装置。
【請求項8】
前記ガスタービンの停止および起動開始を検出し、停止時に前記ドレン水排出弁を閉鎖制御し、起動開始後に前記ドレン水排出弁を開放制御することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載のガスタービンの運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの運転方法および運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、圧縮機と燃焼器とタービンとにより構成されている。圧縮機は、空気取入口から取り込まれた空気を圧縮させることで高温・高圧の圧縮空気とする。燃焼器は、圧縮空気に対して燃料を供給して燃焼させることで高温・高圧の燃焼ガスとする。タービンは、ケーシング内の通路に複数のタービン静翼およびタービン動翼が交互に配設されて構成されており、前記通路に供給された燃焼ガスによりタービン動翼が駆動されることで、発電機に連結されたタービン軸を回転駆動する。タービンを駆動した燃焼ガスは、排ガスとして大気に放出される。
【0003】
従来、例えば、特許文献1に記載のガスタービンは、圧縮器で圧縮された圧縮空気を取り出して熱交換器(TCAクーラ)により冷却した後、タービン側のタービン動翼に供給して当該タービン動翼を冷却する冷却空気系統(冷却空気供給手段)が示されている。
【0004】
なお、例えば、特許文献2に記載のガスタービンシステムは、液体が噴霧された空気を圧縮する圧縮機の段間および吐出部にドレン回収配管を接続して液体ドレンを機外に排出することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−146787号公報
【特許文献2】特開2012−154290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される冷却空気系統では、熱交換器の出口側に水が溜まって錆が発生する可能性がある。そして、この錆が冷却空気の流れによって運ばれてタービン側に持ち込まれることは望ましくない。また、特許文献2に示されるドレン回収配管は、液体が噴霧された空気を圧縮する圧縮機を備えるガスタービンシステムに適用されたものであるが、このドレン回収配管をガスタービンの運転中に常時使用すると、圧縮機から取り出した圧縮空気も抜けてしまいガスタービンの性能損失に繋がるおそれがある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、冷却空気系統に溜まった水をガスタービンの性能損失を防ぎつつ抜くことのできるガスタービンの運転方法および運転制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明のガスタービンの運転方法は、圧縮機の中間段または出口とタービンとを接続して前記圧縮機から抽気した圧縮空気をタービンに供給する冷却空気系統を備えており、前記冷却空気系統の途中に前記圧縮空気を冷却する熱交換器と、前記熱交換器の前記圧縮空気の下流側に設けられたドレン水排出弁とを備えるガスタービンの運転方法であって、少なくとも前記ガスタービンの起動における定格速度到達の後の所定期間に前記ドレン水排出弁を開状態とし、その後、前記ドレン水排出弁を閉状態とすることを特徴とする。
【0009】
ガスタービンの起動前は、冷却空気系統に備えられた熱交換器自体とその冷媒の温度は低い状態である。ここでガスタービンが起動すると、圧縮機から抽気された圧縮空気が冷却空気系統を通って熱交換器に供給されるが、このとき熱交換器自体や冷媒の温度が低いことにより、圧縮空気の温度が大幅に低下してドレンが多量に発生する。その後、熱交換器自体や冷媒の温度が上昇することにより、ドレンの発生量は減少する。発明者らは、ガスタービンの起動シーケンスにおける定格速度到達直後に大量のドレンが発生することを見出した。よって、このガスタービンの運転方法によれば、大量に発生したドレンが溜まっている時期に限定してドレン水排出弁を開状態として冷却空気系統の水を排出することができる。このため、冷却空気系統での錆の発生を防ぐことができるとともに、所定期間を超えた場合にドレン水排出弁を閉状態とするため、冷却空気系統に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービンの性能損失を防ぐことができる。
【0010】
また、本発明のガスタービンの運転方法では、前記ガスタービンの起動における定格速度到達の後に前記熱交換器の出口温度が上昇して設定温度に至る時点を前記所定期間の終わりとすることを特徴とする。
【0011】
設定温度は、結露によるドレン水の発生が止まる時点の温度とすることができる。従って、熱交換器の出口温度に基づいてドレン水排出弁を閉状態とすることで、冷却空気系統に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービンの性能損失を防ぐ効果を顕著に得ることができる。
【0012】
また、本発明のガスタービンの運転方法では、前記ガスタービンの起動開始から設定時間が経過した時点を前記所定期間の終わりとすることを特徴とする。
【0013】
設定時間は、ガスタービンの起動開始から結露によるドレン水の発生が止まる時点までの経過時間とすることができる。従って、ガスタービンの起動開始からの設定時間に基づいてドレン水排出弁を閉状態とすることで、冷却空気系統に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービンの性能損失を防ぐ効果を顕著に得ることができる。
【0014】
また、本発明のガスタービンの運転方法では、前記ガスタービンの停止時は前記ドレン水排出弁を閉状態とし、前記ガスタービンの起動開始後に前記ドレン水排出弁を開状態とすることを特徴とする。
【0015】
例えば、ドレン水排出弁を設けた配管が、他の設備から排出されるドレン水が共に貯留されるドレンピットに接続されている場合は、ガスタービンの停止時に配管を通じて他の設備から湿分が送られ冷却空気系統に取り込まれることで冷却空気系統に錆が発生するおそれがある。従って、ガスタービンの停止時はドレン水排出弁を閉状態とし、ガスタービンの起動開始後にドレン水排出弁を開状態とすることで、ガスタービンの停止時に冷却空気系統に湿分が取り込まれる事態を防ぐことができる。
【0016】
上述の目的を達成するために、本発明のガスタービンの運転制御装置は、圧縮機の中間段または出口とタービンとを接続して前記圧縮機から抽気した圧縮空気をタービンに供給する冷却空気系統を備えており、前記冷却空気系統の途中に前記圧縮空気を冷却する熱交換器と、前記熱交換器の前記圧縮空気の下流側に設けられたドレン水排出弁とを備えるガスタービンの運転制御装置であって、前記ガスタービンの起動における定格速度到達の後の所定期間を検出し、少なくとも前記所定期間に前記ドレン水排出弁を開放制御し、前記所定期間を超えた場合に前記ドレン水排出弁を閉鎖制御することを特徴とする。
【0017】
ガスタービンの起動前は、冷却空気系統に備えられた熱交換器自体とその冷媒の温度は低い状態である。ここでガスタービンが起動すると、圧縮機から抽気された圧縮空気が冷却空気系統を通って熱交換器に供給されるが、このとき熱交換器自体や冷媒の温度が低いことにより、圧縮空気の温度が大幅に低下してドレンが多量に発生する。その後、熱交換器自体や冷媒の温度が上昇することにより、ドレンの発生量は減少する。発明者らは、ガスタービンの起動シーケンスにおける定格速度到達直後に大量のドレンが発生することを見出した。よって、このガスタービンの運転制御装置によれば、大量に発生したドレンが溜まっている時期に限定してドレン水排出弁を開放制御して冷却空気系統の水を排出することができる。このため、冷却空気系統での錆の発生を防ぐことができるとともに、所定期間を超えた場合にドレン水排出弁を閉鎖制御するため、冷却空気系統に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービンの性能損失を防ぐことができる。
【0018】
また、本発明のガスタービンの運転制御装置では、前記熱交換器の出口温度を検出し、当該出口温度が上昇して設定温度に至った場合に前記ドレン水排出弁を閉鎖制御することを特徴とする。
【0019】
設定温度は、結露によるドレン水の発生が止まる時点の温度とすることができる。従って、熱交換器の出口温度に基づいてドレン水排出弁を閉鎖制御することで、冷却空気系統に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービンの性能損失を防ぐ効果を顕著に得ることができる。
【0020】
また、本発明のガスタービンの運転制御装置では、前記ガスタービンの起動開始からの経過時間を検出し、当該経過時間が予め設定された設定時間となった場合に前記ドレン水排出弁を閉鎖制御することを特徴とする。
【0021】
設定時間は、ガスタービンの起動開始から結露によるドレン水の発生が止まる時点までの経過時間とすることができる。従って、ガスタービンの起動開始からの設定時間に基づいてドレン水排出弁を閉鎖制御することで、冷却空気系統に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービンの性能損失を防ぐ効果を顕著に得ることができる。
【0022】
また、本発明のガスタービンの運転制御装置では、前記ガスタービンの停止および起動開始を検出し、停止時に前記ドレン水排出弁を閉鎖制御し、起動開始後に前記ドレン水排出弁を開放制御することを特徴とする。
【0023】
例えば、ドレン水排出弁を設けた配管が、他の設備から排出されるドレン水が共に貯留されるドレンピットに接続されている場合は、ガスタービンの停止時に配管を通じて他の設備から湿分が送られ冷却空気系統に取り込まれることで冷却空気系統に錆が発生するおそれがある。従って、ガスタービンの停止時はドレン水排出弁を閉鎖制御し、ガスタービンの起動開始後にドレン水排出弁を開放制御することで、ガスタービンの停止時に冷却空気系統に湿分が取り込まれる事態を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、冷却空気系統に溜まった水をガスタービンの性能損失を防ぎつつ抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施形態に係るガスタービンの運転制御装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るガスタービンの運転制御装置が適用されるガスタービンの構成図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るガスタービンの運転制御装置が適用されるガスタービンにおける冷却空気系統の構成図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るガスタービンの運転制御装置が適用されるガスタービンにおける冷却空気系統の他の例の概略構成図である。
図5図5は、空気の圧力と露点との関係を示すグラフである。
図6図6は、ガスタービンにおける時間に対するガスタービン負荷、タービン軸回転数および熱交換器出口温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0027】
図1は、本実施形態に係るガスタービン発電設備の概略構成図であり、図2は、本実施形態に係るガスタービン発電設備におけるガスタービンの構成図であり、図3は、本実施形態に係るガスタービン発電設備における冷却空気系統の構成図である。また、図4は、本実施形態に係るガスタービン発電設備の他の例の概略構成図である。また、図5は、空気の圧力と露点との関係を示すグラフであり、図6は、ガスタービンにおける時間に対するガスタービン負荷、タービン軸回転数および熱交換器出口温度を示すグラフである。
【0028】
図1に示すように、ガスタービン発電設備1は、発電機100と、ガスタービン200と、冷却空気系統300と、ドレン水排出系統400と、を有する。
【0029】
発電機100は、駆動軸101が、後述するガスタービン200のタービン軸204に接続され、タービン軸204の回転動力が付与されることで発電を行う。なお、発電機100は、ガスタービン200の起動時に、タービン軸204に回転動力を付与する起動用電動機としても用いられる。
【0030】
ガスタービン200は、圧縮機201と燃焼器202とタービン203とを備えている。このガスタービン200は、圧縮機201、燃焼器202およびタービン203の中心部に、タービン軸204が貫通して配置されている。圧縮機201、燃焼器202およびタービン203は、タービン軸204の軸心Rに沿い、空気の流れの前側から後側に向かって順に並設されている。なお、以下の説明において、タービン軸方向とは軸心Rに平行な方向をいい、タービン周方向とは軸心Rを中心とした周り方向をいう。
【0031】
圧縮機201は、空気を圧縮して圧縮空気とするものである。図2に示すように、圧縮機201は、空気を取り込む空気取入口211を有した圧縮機ケーシング212内に圧縮機静翼213および圧縮機動翼214が設けられている。圧縮機静翼213は、圧縮機ケーシング212側に取り付けられてタービン周方向に複数並設されている。また、圧縮機動翼214は、タービン軸204側に取り付けられてタービン周方向に複数並設されている。これら圧縮機静翼213と圧縮機動翼214とは、タービン軸方向に沿って交互に設けられている。
【0032】
燃焼器202は、図2に示すように、圧縮機201で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給することで、高温・高圧の燃焼ガスを生成するものである。燃焼器202は、燃焼筒として、圧縮空気と燃料を混合して燃焼させる内筒221と、内筒221から燃焼ガスをタービン203に導く尾筒222と、内筒221の外周を覆い、圧縮機201からの圧縮空気を内筒221に導く空気通路225をなす外筒223とを有している。この燃焼器202は、タービン車室をなす燃焼器ケーシング224に対しタービン周方向に複数(例えば16個)並設されている。
【0033】
タービン203は、図2に示すように、燃焼器202で燃焼された燃焼ガスにより回転動力を生じるものである。タービン203は、タービンケーシング231内にタービン静翼232およびタービン動翼233が設けられている。タービン静翼232は、タービンケーシング231側に取り付けられてタービン周方向に複数並設されている。また、タービン動翼233は、タービン軸204側に取り付けられてタービン周方向に複数並設されている。これらタービン静翼232とタービン動翼233とは、タービン軸方向に沿って交互に設けられている。また、タービンケーシング231の後側には、タービン203に連続する排気ディフューザ234aを有した排気室234が設けられている。
【0034】
タービン軸204は、圧縮機201側の端部が軸受部241により支持され、排気室234側の端部が軸受部242により支持されて、軸心Rを中心として回転自在に設けられている。そして、タービン軸204は、圧縮機201側の端部に発電機100の駆動軸101が連結されている。
【0035】
このようなガスタービン200は、圧縮機201の空気取入口211から取り込まれた空気が、複数の圧縮機静翼213と圧縮機動翼214とを通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。この圧縮空気に対し、燃焼器202において燃料が混合されて燃焼されることで高温・高圧の燃焼ガスが生成される。そして、この燃焼ガスがタービン203のタービン静翼232とタービン動翼233とを通過することでタービン軸204が回転駆動され、このタービン軸204に連結された発電機100に回転動力を付与することで発電を行う。そして、タービン軸204を回転駆動した後の排気ガスは、排気室234の排気ディフューザ234aを経て排気ガスとして大気に放出される。
【0036】
冷却空気系統300は、上述したガスタービン200に設けられ、圧縮機201から抽気した圧縮空気をタービン203に供給する。
【0037】
冷却空気系統300に係る構成について説明する。図3に示すように、上述したガスタービン200において、タービン軸204は、中間軸250に複数のタービンディスク251などが連結ボルト252により一体に連結されてなり、各軸受部241,242により回転自在に支持されている。タービンディスク251は、その外周部にタービン動翼233が取り付けられている。タービン動翼233は、タービンディスク251の外周端部にタービン周方向に沿って固定される複数の翼根部233aと、各翼根部233aを連結するプラットホーム233bと、プラットホーム233bの外周面に周方向に均等間隔で固定される複数の動翼部233cとから構成されている。
【0038】
そして、タービン軸204の外周辺に、タービン周方向に沿ってリング形状をなす中間軸カバー253が装着されており、この中間軸カバー253の外周において、燃焼器ケーシング224内であって複数の燃焼器202の外側にタービン車室254が区画されている。一方、燃焼器202は、尾筒222が、タービン203においてタービン周方向に沿って環形状に形成された燃焼ガス通路255に連通している。燃焼ガス通路255は、複数のタービン静翼232および複数のタービン動翼233(動翼部233c)がタービン軸方向に沿って交互に配設されている。
【0039】
タービン軸204は、タービンディスク251に、タービン軸方向に沿って設けられて圧縮機201側が入口部として開口された冷却空気供給孔256が形成されている。冷却空気供給孔256は、タービン軸方向に沿って形成されていると共に、各タービンディスク251を介して各タービン動翼233の内部に設けられた冷却孔(図示せず)に通じている。そして、冷却空気供給孔256の入口部の周辺であって中間軸カバー253内に、タービン周方向に沿ってリング形状をなすシールリング保持環257が設けられている。シールリング保持環257は、その外周面側において、タービン軸方向の各端部を中間軸カバー253の内周部に密着して装着され、タービン軸方向の中央において中間軸カバー253との間にタービン周方向に沿って空間部262が区画されている。また、シールリング保持環257は、その内周面側において、シールリング保持環257の内周面とタービン軸204の外周面との間の隙間をシールする複数のシール258,259,260,261が設けられている。そして、中間軸カバー253とシールリング保持環257との間に区画された空間部262は、シールリング保持環257に形成された貫通孔263を介して冷却空気供給孔256の入口部に通じている。
【0040】
燃焼器ケーシング224には、タービン車室254に対して外部に通じるように冷却空気系統300をなす冷却空気配管301の一端側が接続されている。具体的に、冷却空気配管301の一端側は、図1に示すように1本とされ、図3に示すように燃焼器ケーシング224に形成された1つの接続部302に対して接続される。また、冷却空気配管301は、図1に示すように、その他端側が複数(図1では4本)に分岐して形成され、それぞれが燃焼器ケーシング224を貫通して中間軸カバー253に取り付けられ、空間部262を介して冷却空気供給孔256に対して通じている。また、冷却空気配管301は、その途中に熱交換器であるTCAクーラ303が設けられている。TCAクーラ303は、冷却空気配管301の一端側に接続される入口ヘッダ303aと、冷却空気配管301の他端側に接続される出口ヘッダ303bとが熱交換部303cに設けられ、入口ヘッダ303aから供給される圧縮空気を熱交換部303cにて冷媒と熱交換させ、熱交換後の圧縮空気を出口ヘッダ303bから排出する。一般に、このTCAクーラ303は、図1に示すように、ガスタービン200などが収容されているガスタービン発電設備1の建屋1aの外に配置されているため、冷却空気配管301は、建屋1aの外に引き出されてTCAクーラ303に接続されるとともに、TCAクーラ303から再び建屋1aに戻る構成をとる。さらに、図1に示すように、冷却空気配管301は、その途中であってTCAクーラ303よりも他端側にフィルタ304が設けられている。
【0041】
ガスタービン200の運転時には、ガスタービン200の圧縮機201で圧縮された圧縮空気がタービン車室254に供給される。この圧縮空気がタービン車室254から燃焼器202に導かれ、燃焼器202において高温・高圧の燃焼ガスが生成され、尾筒222を経て燃焼ガス通路255に流れ込んでタービン203に送られる。冷却空気系統300は、圧縮機201の出口に通じるタービン車室254に供給された圧縮空気の一部が、冷却空気配管301の一端側から抽気され、冷却空気配管301の他端側から空間部262を経て貫通孔263を通してタービン203側である冷却空気供給孔256に供給され、各タービン動翼233の冷却孔を通過する。冷却空気配管301を通過する圧縮空気は、TCAクーラ303により冷却され、かつフィルタ304により異物が除去されて各タービン動翼233に至り、各タービン動翼233を冷却する。
【0042】
ところで、上述した冷却空気系統300は、圧縮機201の出口から圧縮空気を抽気しタービン203側に供給するものであるが、その他の冷却空気系統についても本発明を適用しうる。図4は、本実施形態に係るガスタービン発電設備の他の例の概略構成図であり、冷却空気系統の他の例を示している。図4に示すように、冷却空気系統500は、圧縮機201の中間段から圧縮空気を抽気しタービン203側に供給する。
【0043】
上述したガスタービン200において、図2に示すように、圧縮機201は、圧縮機ケーシング212における圧縮機静翼213の位置の外側に、圧縮機ケーシング212の内部に連通すると共に、タービン周方向に沿って環形状に形成された圧縮機抽気室215が設けられている。また、タービン203は、燃焼器ケーシング224におけるタービン静翼232の位置の外側に、タービン周方向に沿って環形状に形成されたタービン翼環キャビティ235が設けられている。タービン翼環キャビティ235は、各タービン静翼232の内部に設けられた冷却孔(図示せず)に通じている。
【0044】
圧縮機抽気室215には、図4に示すように、冷却空気系統500をなす冷却空気配管501の一端側が接続されている。また、冷却空気配管501は、その他端側がタービン翼環キャビティ235に接続されている。また、冷却空気配管501は、その途中に熱交換器であるTCAクーラ503が設けられている。TCAクーラ503は、冷却空気配管501の一端側に接続される入口ヘッダ503aと、冷却空気配管501の他端側に接続される出口ヘッダ503bとが熱交換部503cに設けられ、入口ヘッダ503aから供給される冷却対象と熱交換部503cにて熱交換を行い、熱交換後の冷却対象を出口ヘッダ503bから排出する。このTCAクーラ503は、熱交換効率の向上を図るため、図4に示すように、ガスタービン200などが収容されているガスタービン発電設備1の建屋1aの外に配置されており、冷却空気配管501が、建屋1aの外に引き出されてTCAクーラ503に接続されている。さらに、図4に示すように、冷却空気配管501は、その途中であってTCAクーラ503よりも他端側にフィルタ504が設けられている。このフィルタ504もガスタービン発電設備1の建屋1aの外に配置されている。
【0045】
従って、冷却空気系統500は、ガスタービン200の圧縮機201で圧縮された圧縮空気が圧縮機抽気室215から冷却空気配管501の一端側から抽気され、冷却空気配管501の他端側からタービン翼環キャビティ235を経て各タービン静翼232の冷却孔を通過する。冷却空気配管501を通過する圧縮空気は、TCAクーラ503により冷却され、かつフィルタ504により圧縮機抽気室215から持ち込まれる異物が除去されて各タービン静翼232に至り、各タービン静翼232を冷却する。
【0046】
ドレン水排出系統400は、冷却空気系統300,500からドレン水を排出するものである。ドレン水は、高温・高圧の圧縮空気をTCAクーラ303により温度を下げたときに大気中の湿分が結露して発生し、TCAクーラ303の出口ヘッダ303bに溜まりやすい。また、ドレン水は、TCAクーラ303の出口ヘッダ303bに溜まったドレン水の一部が、冷却空気配管301,501において圧縮空気の流れに従って送られて、フィルタ304のケーシングなどの冷却空気系統中で低くなっている位置に溜まりやすい。このため、ドレン水排出系統400は、図1図4に示すように、冷却空気系統300,500における冷却空気配管301,501にドレン水排出配管401が接続されている。特に、本実施形態において、ドレン水排出配管401は、TCAクーラ303の出口ヘッダ303bに接続されている。また、冷却空気系統300,500にフィルタ304,504が設けられている場合、ドレン水排出配管401は、フィルタ304,504のケーシングに接続されている。このドレン水排出配管401は、ドレン水排出弁が設けられている。ドレン水排出弁は、1つでもよいが、安全のためドレン水排出配管401に沿って併設された第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を設けてもよい。なお、ドレン水排出配管401は、ドレン水が貯留されるドレンピット(図示せず)に接続されている。ドレンピットは、当該ドレン水排出配管401が専用に接続されているものや、他の設備から排出されるドレン水も共に貯留されるものがある。
【0047】
また、ドレン水排出系統400は、ガスタービン200を運転する際にドレン水排出弁(第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403)の開閉を制御するガスタービン200の運転制御装置である制御装置404を有する。制御装置404は、TCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bにおける圧縮空気の温度(TCAクーラ303,503の出口温度)を、TCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bに設けられた温度計測器405から取得する。また、制御装置404は、ガスタービン200の起動開始を、ガスタービン200側の制御装置(図示せず)から取得する。また、制御装置404は、ガスタービン200の起動開始からの経過時間を、ガスタービン200側の制御装置(図示せず)から取得する。
【0048】
また、制御装置404は、第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉鎖制御するため、図5および図6に示すTCAクーラ303,503の出口温度における設定温度αや、図6に示すガスタービン200の起動開始からの経過時間である設定時間βが予め設定されている。
【0049】
設定温度αについて説明する。図5に実線で示す曲線は、所定の湿度の空気を圧縮した場合の露点の変化を示す。ここから、空気を圧縮することにより露点が上昇することがわかる。また、図5に示す点A、点B、点Cを結ぶ破線は、ガスタービン200の起動シーケンスにおけるTCAクーラ303,503の出口条件である。点Aはガスタービンの起動開始時であり、点Bは定格回転速度到達時である。点Aから点Bの間では、圧縮機201の回転数増加により圧縮空気の圧力は増大するものの、TCAクーラ303,503自体の温度やTCAクーラ303,503に供給される冷媒の温度が低いため、TCAクーラ303,503の出口温度はあまり上昇しない。そのため、TCAクーラ303,503の出口温度が露点温度を下回り、結露が生じてドレン水が発生する。その後、ガスタービン200を併入して負荷上昇していくと、圧縮空気の圧力が上昇するとともに、TCAクーラ303,503自体の温度やTCAクーラ303,503に供給される冷媒の温度が上昇するためTCAクーラ303,503の出口温度も上昇する。そして、TCAクーラ303,503の出口温度が露点温度を超えた点C以降は、結露が生じなくなる。すなわち、TCAクーラ303,503の出口条件が図5に示す実線より下の領域にあるとき、TCAクーラ303,503の出口で結露が生じてドレン水が溜まることになる。特に、定格回転速度到達時(点B)の近辺では、TCAクーラ303,503の出口温度はその圧力における露点を大きく下回っており、大量のドレンが発生する。なお、露点温度は、大気温度に伴って変動するため、制御装置404では、大気温度に応じて設定温度αが設定されている。
【0050】
設定時間βについて説明する。図6において、横軸は時間であり、実線はタービン軸204の回転速度を示し、破線はTCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bの温度(出口温度)を示し、一点鎖線はガスタービン200の負荷を示している。タービン軸204の回転速度は、ガスタービン200の停止(タービン静止またはターニング状態)からの起動時(点A)に、起動用電動機により回転動力が付与されて上昇し、一定速度のパージ運転を経た後、起動用電動機により再び上昇する過程で、燃焼器202が着火されてタービン203が自立運転できるようになり起動用電動機が切断され、点Dで無負荷の定格速度(例えば、3600rpm)となる。そして、ガスタービン200は、点Dの後、発電機100が併入され、タービン軸204の回転速度を定格速度に維持しつつ負荷が上昇する。そして、ガスタービン200の負荷が上昇する過程でTCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bの温度(出口温度)が設定温度αに達する。このガスタービン200の起動時において、起動時の点AからTCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bの温度が上昇し設定温度αに到達するまでの経過時間を設定時間βとする。なお、ガスタービン200を停止する場合は、タービン軸204の回転速度を定格速度に維持した状態で発電機100を解列すると共に負荷を低下させ、その後に燃焼器202への燃料の供給を停止させる。
【0051】
そして、制御装置404は、必要に応じてドレン水排出弁(第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403)を開閉制御することで、ドレン水を排出する。具体的に、制御装置404は、図6に示すように、ガスタービン200の停止からの起動時(点A)に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を開放制御する。そして、制御装置404は、ガスタービン200の起動における定格速度到達(点D)の後にTCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bの温度が上昇して設定温度αに至った場合に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉鎖制御する。制御装置404は、この閉鎖制御を次のガスタービン200の停止からの起動時(点A)まで維持する。
【0052】
なお、上述した設定温度αに基づく制御装置404の制御において、TCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bの温度(出口温度)が設定温度αに至った時点で第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉鎖制御しているが、設定温度αに至る以前に発生したドレン水を確実に排出するため、設定温度αに若干余裕を持った温度xを加えた設定温度α+xに至った場合に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉鎖制御してもよい。
【0053】
また、制御装置404は、図6に示すように、ガスタービン200の停止からの起動時(点A)に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を開放制御し、ガスタービン200の起動における定格速度到達(点D)の後にガスタービン200の起動開始から設定時間βが経過した場合に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉鎖制御してもよい。制御装置404は、この閉鎖制御を次のガスタービン200の停止からの起動時(点A)まで維持する。
【0054】
なお、上述した設定時間βに基づく制御装置404の制御において、ガスタービン200の起動開始から設定時間βが経過した時点で第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉鎖制御しているが、設定時間βの経過以前に発生したドレン水を確実に排出するため、設定時間βに若干余裕を持った時間yを加えた設定時間β+yを経過した場合に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉鎖制御してもよい。
【0055】
ところで、上述したように、制御装置404は、ガスタービン200の起動(点A)から設定温度αまたは設定時間βになるまで第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を開放制御しているが、この限りではない。ドレン水は、ガスタービン200の起動における定格速度到達の後に最も多く発生し、かつガスタービン200の起動における負荷上昇の開始後に発生が終わる。このため、制御装置404は、少なくともガスタービン200の起動における定格速度到達の後の所定の期間に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を開放制御する。所定の期間の終了時点は、結露の発生が止まって溜まっている全てのドレン水を排水できる時点であればよい。例えば、所定の期間の始まりを、上述したガスタービン200の起動時(点A)やガスタービン200の起動における定格速度到達時(点D)とし、所定の期間の終わりを、上述した設定温度α(α+x)となった時点や設定時間β(β+y)を経過した時点とすることができる。また、所定の期間の始まりを、上述した設定温度αとなった時点や設定時間βを経過した時点としてもよく、設定温度αとなった時点を過ぎたときや設定時間βを経過した時点を過ぎたときとしてもよく、所定の期間の終わりを、予め試験などで求めた全ドレン水の排出所要時間が経過したときとしてもよい。
【0056】
すなわち、本実施形態において、ガスタービン200の運転方法は、圧縮機201の中間段または出口とタービン203とを接続して圧縮機201から抽気した圧縮空気をタービン203に供給する冷却空気系統300,500を備えており、冷却空気系統300,500の途中に圧縮空気を冷却するTCAクーラ(熱交換器)303,503と、TCAクーラ303,503の圧縮空気の下流側に設けられたドレン水排出弁(第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403)と、を備えるガスタービン200の運転方法であって、少なくともガスタービン200の起動における定格速度到達の後の所定期間にドレン水排出弁を開状態とし、その後、所定期間を超えた場合にドレン水排出弁を閉状態とする。
【0057】
ガスタービン200の起動前は、冷却空気系統300,500に備えられたTCAクーラ303,503自体とその冷媒の温度は低い状態である。ここでガスタービン200が起動すると、圧縮機201から抽気された圧縮空気が冷却空気系統300,500を通ってTCAクーラ303,503に供給されるが、このときTCAクーラ303,503自体や冷媒の温度が低いことにより、圧縮空気の温度が大幅に低下してドレンが多量に発生する。その後、TCAクーラ303,503自体や冷媒の温度が上昇することにより、ドレンの発生量は減少する。発明者らは、ガスタービン200の起動シーケンスにおける定格速度到達直後に大量のドレンが発生することを見出した。よって、このガスタービン200の運転方法によれば、大量に発生したドレンが溜まっている時期に限定して第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を開状態として冷却空気系統300,500のドレン水を排出することができる。このため、冷却空気系統300,500での錆の発生を防ぐことができるとともに、所定期間を超えた場合に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉状態とするため、冷却空気系統300,500に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービン200の性能損失を防ぐことができる。
【0058】
また、本実施形態のガスタービン200の運転方法では、ガスタービン200の起動における定格速度到達の後にTCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bの温度が上昇して設定温度αに至る時点を所定期間の終わりとする。
【0059】
設定温度αは、結露によるドレン水の発生が止まる時点の温度とすることができる。従って、TCAクーラ303,503の出口ヘッダ303b,503bの温度に基づいて第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉状態とすることで、冷却空気系統300,500に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービン200の性能損失を防ぐ効果を顕著に得ることができる。
【0060】
また、本実施形態のガスタービン200の運転方法では、ガスタービン200の起動開始から設定時間βが経過した時点を所定期間の終わりとする。
【0061】
設定時間βは、ガスタービン200の起動開始から結露によるドレン水の発生が止まる時点までの経過時間とすることができる。従って、ガスタービン200の起動開始からの設定時間βに基づいて第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉状態とすることで、冷却空気系統300,500に送られた圧縮空気の抜けを抑制し、ガスタービン200の性能損失を防ぐ効果を顕著に得ることができる。
【0062】
また、本実施形態のガスタービン200の運転方法では、ガスタービン200の停止時は第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉状態とし、ガスタービン200の起動開始後に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を開状態とする。
【0063】
例えば、第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を設けたドレン水排出配管401が、他の設備から排出されるドレン水が共に貯留されるドレンピットに接続されている場合は、ガスタービン200の停止時にドレン水排出配管401を通じて他の設備から湿分が送られ冷却空気系統300,500に取り込まれることで冷却空気系統300,500に錆が発生するおそれがある。従って、ガスタービン200の停止時は第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を閉状態とし、ガスタービン200の起動開始後に第一ドレン水排出弁402および第二ドレン水排出弁403を開状態とすることで、ガスタービン200の停止時に冷却空気系統300,500に湿分が取り込まれる事態を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0064】
200 ガスタービン
201 圧縮機
203 タービン
300,500 冷却空気系統
303,503 TCAクーラ(熱交換器)
303b,503b 出口ヘッダ
400 ドレン水排出系統
401 ドレン水排出配管
402 第一ドレン水排出弁
403 第二ドレン水排出弁
404 制御装置
α 設定温度
β 設定時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6