(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態は、5つの櫛歯台を有する。すなわち、
図4に示すように半割円筒状に形成された第一櫛歯台1と、
図5に示すように同じく半割円筒状に形成された第二の櫛歯台である原動櫛歯台2と、
図6に示すように同じく半割円筒状に形成された第三櫛歯台3と、
図7に示すように同じく半割円筒状に形成された第四櫛歯台4と、
図8に示すように丸棒状に形成された
第五櫛歯台5である。また、これらの櫛歯台のほかに、
図9に示すように半割円筒状に形成されたカバー6を有する。
図2に示すように、このカバー6と第一櫛歯台1とが結合されてハウジング7を構成している。カバー6と第一櫛歯台1の結合構造は、カバー6と第一櫛歯台1が合接するそれらの合接縁部の所定の複数箇所に、凹凸の関係で嵌合する嵌合部を設け、カバー6と第一櫛歯台1の合接縁部を合せて押し付けることにより、嵌合部同士がパチンと嵌合して確実に結合することができる構造である。結合構造はこれに限定されるものでなく、例えば接着剤や溶着によるものであってもよい。
【0016】
第一櫛歯台1は、その上面に七本の第一櫛歯である第一櫛歯8が長手方向に一列に並ぶように一体に設けられ、それらの第一櫛歯8により櫛歯列が構成されている。原動櫛歯台2は、その上面に七本の第二櫛歯である原動櫛歯9が長手方向に一列に並ぶように一体に設けられ、それらの原動櫛歯9により櫛歯列が構成されている。第三櫛歯台3は、その上面に七本の第三櫛歯10が長手方向に一列に並ぶように一体に設けられ、それらの第三櫛歯10により櫛歯列が構成されている。第四櫛歯台4は、その上面に七本の第四櫛歯11が長手方向に一列に並ぶように一体に設けられ、それらの第四櫛歯11により櫛歯列が構成されている。
第五櫛歯台5は、その上面に七本の
第五櫛歯12が長手方向に一列に並ぶように一体に設けられ、それらの
第五櫛歯12により櫛歯列が構成されている。
【0017】
各櫛歯台は外側から、第一櫛歯台1、原動櫛歯台2、第三櫛歯台3、第四櫛歯台4、及び
第五櫛歯台5の順に同心円状に重ねられ、原動櫛歯台2、第三櫛歯台3、第四櫛歯台4、及び
第五櫛歯台5は、ハウジング7に対して長手方向の回転軸線を中心に相互に回転可能にハウジング7の内部に取り付けられている。原動櫛歯台2は、手からの回転駆動力が直接的に伝えられる櫛歯台であり、第三櫛歯台3、第四櫛歯台4、及び
第五櫛歯台5は、それぞれ原動櫛歯台2の回転力を得て回転するものである。第三櫛歯台3は、原動櫛歯台2の回転に対し所定のタイムラグを置いて遅れて回転する。また、後述するように、第四櫛歯台4と
第五櫛歯台5は、原動櫛歯台2の回転と同時に回転し始める。
【0018】
原動櫛歯台2の端部にはハンドル13を取り付けるためのハンドル取付け部14が設けられている。ハンドル取付け部14には一対の軸孔15,15が設けられ、
図1に示すように、この軸孔15,15に嵌挿された支軸16によりハンドル13はハンドル取付け部14に取り付けられる。このように、ハンドル13は原動櫛歯台2と結合しており、原動櫛歯台2を回転させるための操作部として機能する。また、ハンドル13は、支軸16を中心に回転可能であり、したがって、折り畳み可能である。
図1に示すように、ハンドル13の内面は、両側部が中央部よりも高くなるように形成されているので凹状をなしており、ハンドル13を折り畳んだときに、櫛歯の先端はハンドル13の内面によって囲まれるように覆われる。
【0019】
次に、
図2に示すように各櫛歯列が一列に並んだ状態から、長手方向に延びる回転軸線を中心に、原動櫛歯台2をハンドル取付け部14側から見て時計回りに回転させることにより、
図1に示すように櫛歯列を開く機構について説明する。なお、これ以降、時計回りというときはこれと同じ方向を意味するものとする。前述したように、第一櫛歯台1は、カバー6と結合してハウジング7を構成する部材であり、最も外側にある櫛歯台である。第一櫛歯台1の内側には、他の4つの櫛歯台2,3,4,5が同心円状に重ねられている。各櫛歯台2,3,4,5は、それぞれ櫛歯9,10,11,12を有しているから、それらの櫛歯を突出させるための7つの共同孔17が第一櫛歯台1に設けられている。各共同孔17からは、それぞれ他の櫛歯台の櫛歯9,10,11,12が一本ずつ、合計四本の櫛歯が突出している。共同孔17は、櫛歯9,10,11,12の四本の櫛歯を突出させるので、櫛歯四本分の幅を有している。共同孔17の内縁には、共同孔17内での各櫛歯9,10,11,12の周方向の回転を所定の角度で規制するための4つの端縁、すなわち第一端縁18、第二端縁19、第三端縁20及び第四端縁21が、階段状に形成されている。なお、共同孔17とせず、各櫛歯専用の長円孔を個別に設けてもよい。すなわち、共同孔17は、各櫛歯専用の長円孔を一つの孔としてまとめたものであって、前記4つの端縁18,19,20,21は、各長円孔の一方の端縁が連続して階段状に並んだものである。さらに、各櫛歯9,10,11,12の反対方向への回転を規制して、各櫛歯9,10,11,12を一列に並べるための直線端縁22が、前記4つの端縁18,19,20,21に対向して形成されている。
図2に示すように、直線端縁22は、可動櫛歯の反時計回りの回転を規制することにより、櫛歯を一列に並べることができる。
【0020】
そこでまず、第一櫛歯台1を固定した状態で、その第一櫛歯台1に対して原動櫛歯台2を時計回りに回転させ、第一櫛歯台1と原動櫛歯台2の櫛歯列を二列にする機構から説明する。まず、
図4に示す第一櫛歯台1の下側から
図5に示す原動櫛歯台2を内接させる。そのとき、原動櫛歯9は、共同孔17から突出する。第一櫛歯台1の端部内面には、周方向に延びる突条23が形成され、原動櫛歯台2のハンドル取付け部14に隣接した部分には、周方向に延びる条溝24が形成されている。第一櫛歯台1に原動櫛歯台2を内接させたときに、突条23が条溝24内で摺動可能に嵌り、第一櫛歯台1と原動櫛歯台2とが長手方向に相互にずれることを規制する。詳述しないが、他の櫛歯台も長手方向に相互にずれることを規制されている。第一櫛歯台1を固定し、原動櫛歯台2を時計回りの方向に回転させると、原動櫛歯9は、共同孔17の第二端縁19に当たって、それ以上の回転が規制される。この位置が、原動櫛歯9を一杯に開いた位置である。
【0021】
次に、第一櫛歯台1を固定した状態で、その第一櫛歯台1に対して原動櫛歯台2及び第三櫛歯台3を回転させ、第一櫛歯台1と原動櫛歯台2と第三櫛歯台3の櫛歯列を三列にする機構について説明する。前述したように、まず、
図4に示す第一櫛歯台1の下側から
図5に示す原動櫛歯台2を内接させる。次いで、原動櫛歯台2の下側から
図6に示す第三櫛歯台3を内接させる。ここで、第三櫛歯台3の第三櫛歯10を、原動櫛歯台2を通して突出させるための7つの長円孔25が、原動櫛歯9の根元に隣接した位置で原動櫛歯台2の周方向に延びるように形成されている。この長円孔25は、第三櫛歯10を突出させるための専用の孔である。第三櫛歯10は、長円孔25と第一櫛歯台1の共同孔17を通って突出している。これにより、第一櫛歯台1とその内側の原動櫛歯台2とその内側の第三櫛歯台3とが、長手方向に延びる一つの回転軸線を中心に相対的に回転可能に同心円状に重ねられる。第一櫛歯台1と原動櫛歯台2と第三櫛歯台3の各櫛歯列が一列に並ぶ状態から、第一櫛歯台1を固定した状態で原動櫛歯台2を時計周りに回転させると、原動櫛歯9も同時に回転するが、原動櫛歯台2の長円孔25から突出している内側の第三櫛歯10は、その櫛歯10を開かせる方向に押す長円孔25の一方の端縁26と接していないので、同時に回転しない。そこでさらに原動櫛歯台2を回転させると、長円孔25の一方の端縁26が第三櫛歯10の根元に当たってその櫛歯10を押すことになる。すなわち、内側の第三櫛歯10は、原動櫛歯台2の回転に遅れて回転が始まることになる。そして、原動櫛歯台2を一杯に回転させると、第三櫛歯10は、第一櫛歯台1の共同孔17の第一端縁18に当たって、それ以上の回転が規制され、それと反対方向の回転は端縁26で規制される。この位置が、第三櫛歯10を一杯に開いた位置である。これにより、原動櫛歯台2の一つの回転で自動的に原動櫛歯台2とその内側の第三櫛歯台3の2つの櫛歯列を異なる開き角度で開かせることができる。そして、第一櫛歯台1の櫛歯列と原動櫛歯台2の櫛歯列の間に、第三櫛歯台3の櫛歯列が存在する合計三列の櫛歯列が出来上がるのである。
【0022】
次に、原動櫛歯台2を回転させて、
第五櫛歯台5を回転させる機構について説明する。原動櫛歯台2の回転を
第五櫛歯台5に伝える機構は、歯車機構である。用いられる歯車は、
図10,11に示すラック27と、
図12に示す大径ピニオン28と、
図13,14に示す小径ピニオン29である。
図10に示すように、ラック27には上側歯列30と下側歯列31が平行に形成されている。
図11に示すように、ラック27の前側に歯列方向に延びるガイド溝32が形成されている。なお、ここで、本実施形態の前側と後ろ側の方向について説明する。
図1において、ハウジング7の先端の側を前側、それと反対側のハウジング7のハンドル13寄りの側を後ろ側であるものとし、これ以降それに従う。そこで、前述したラック27は、
図15に示すように、カバー6の後ろ側内面に装着される。カバー6には幅方向に延びるガイドレール33が設けられており、ラック27のガイド溝32がこのガイドレール33に嵌った状態で、ラック27は、ガイドレール33上を滑動することができる。
【0023】
図16に示すように、原動櫛歯台2の後ろ側の端面34に、大径ピニオン28が装着されている。この端面34に凹部(図示せず。)が設けられ、これと対向する大径ピニオン28の裏面には凸部(図示せず。)が設けられ、これらの凹部と凸部が嵌合している。また、
図12に示すように、大径ピニオン28には回転規制凸部35が設けられている。
図16に示すように、端面34には嵌合凹部36が形成されており、この嵌合凹部36に回転規制凸部35が嵌合している。これにより、大径ピニオン28は、原動櫛歯台2に対して相対的に回転せず、原動櫛歯台2の回転と共に回転する。
【0024】
図8に示すように、
第五櫛歯台5の後ろ側の端面に五角形の嵌合凸部37が設けられている。また、
図13に示すように、小径ピニオン29の後ろ側に五角形の嵌合凹部38が設けられている。これらの嵌合凸部37と嵌合凹部38が嵌合することにより、
図17に示すように、
第五櫛歯台5の後ろ側の端部に小径ピニオン29が取り付けられる。嵌合凸部37と嵌合凹部38は共に五角形であるから、
第五櫛歯台5は、小径ピニオン29に対して相対的に回転せず、小径ピニオン29の回転と共に回転する。
【0025】
丸棒状に形成されている
第五櫛歯台5は、同心円状に重ねられた櫛歯台の最も内側に位置している。
図8に示すように、
第五櫛歯台5の前側の端面にはジャーナル軸69が設けられている。このジャーナル軸69は、第一櫛歯台1の前側の端面に設けられたジャーナル軸受65に係合する。また、
第五櫛歯台5の後ろ側の端部に取り付けられた小径ピニオン29のジャーナル軸39が、大径ピニオン28のU字形軸受40に係合し、
図18の上図に示すように、小径ピニオン29が大径ピニオン28に対し相対的に回転可能に隣接して取り付けられている。このように、
第五櫛歯台5は、その前端でハウジング7とジャーナル結合し、その後端で小径ピニオン29を介して大径ピニオン28にジャーナル結合することにより、両端で支持され、ジャーナル軸線を中心に回転可能である。
図18は、ハウジング7を構成する第一櫛歯台1とカバー6を結合する前の状態を示しており、この状態から、両者を結合して歯車をかみ合わせる。カバー6を第一櫛歯台1に結合させるときは、
図18の下図に示すように、あらかじめラック27をこの図で見て上方にずらしてセットしておく。ハウジング7の中での歯車の噛み合わせは、大径ピニオン28がラック27の下側歯列31に噛み合い、小径ピニオン29が上側歯列30に噛み合う。ここで、原動櫛歯台2をハンドル取付け部14側から見て時計回りに回転させると、大径ピニオン28も同時に回転し、それと噛み合うラック27の下側歯列31を介して、上方にずれているラック27を
図18で見て下側に移動させる。当初のラック27のずれがラック27の移動を担保できるので、ここにおいて、あらかじめラック27を上方にずらしておいた意味がある。このラック27の移動により、その上側歯列30が、それと噛み合う小径ピニオン29を回転させ、これにより
第五櫛歯台5が回転するのである。ここで、大径ピニオン28と小径ピニオン29が直接噛み合っている場合には、回転が逆になるが、ラック27を介しているので、両ピニオンの回転方向は同じである。また、大径ピニオン28の径は、文字通り小径ピニオン29の径よりも大きいので、大径ピニオン28の回転により移動したラック27は、小径ピニオン29に対し、大径ピニオン28の回転角度よりも大きな回転角度を与える。これにより、
第五櫛歯台5の回転角度は、原動櫛歯台2の回転角度よりも大きくなるので、
図1に示すように、
第五櫛歯台5の
第五櫛歯12は、原動櫛歯台2の原動櫛歯9よりも大きく開くのである。本実施形態では、櫛歯が全開したときに、第一櫛歯8と原動櫛歯9とのなす角度は約40度であり、第一櫛歯8と
第五櫛歯12とのなす角度は約80度である。すなわち、原動櫛歯台2を40度回転させたときに、
第五櫛歯台5は歯車機構によりその倍の80度回転しているのである。なお、一杯に開いた
第五櫛歯12は、第一櫛歯台1に設けられた共同孔17の第四端縁21に当たるので、それ以上の回転が規制される。
【0026】
次に、原動櫛歯台2を回転させて、第四櫛歯台4を回転させる機構について説明する。第四櫛歯台4は、
第五櫛歯台5と第三櫛歯台3の間に存在する。原動櫛歯台2の回転を第四櫛歯台4に伝える部材は、
第五櫛歯台5である。
図7に示すように、第四櫛歯台4には、7つの長円孔41が設けられている。第四櫛歯台4の下側に内接している
第五櫛歯台5の7本の
第五櫛歯12は、それぞれ長円孔41から突出する。第四櫛歯11と
第五櫛歯12が一列に並んだ状態では、
図7で見て、長円孔41の奥側にある端縁42側に
第五櫛歯12が寄っている。このことは、第四櫛歯11が、元々、長円孔41の中央でなく端縁42側に寄せて設けられているということである。ここで、原動櫛歯台2を回転させると、それに伴って
第五櫛歯台5が回転し、長円孔41から突出している
第五櫛歯12は、長円孔41内をその一方の端縁42から他方の端縁43の方向に回転する。このとき、
第五櫛歯12は第四櫛歯台4に対して何ら作用をしないが、第四櫛歯台4の第四櫛歯11は原動櫛歯台2に設けられた共同孔62から突出しているので、その共同孔62の直線端縁70が第四櫛歯11を押すことにより、第四櫛歯台4は原動櫛歯台2と同時に回転する。さらに原動櫛歯台2を回転させて、
第五櫛歯12が他方の端縁43に当たったときに、
第五櫛歯12が端縁43を押して第四櫛歯台4を回転させるのである。原動櫛歯台2を一杯に回転させると、第四櫛歯11も一杯に開いて、第一櫛歯台1に設けられた共同孔17の第三端縁20に当たるので、それ以上の回転が規制され、それと反対方向の回転は、長円孔41から突出した
第五櫛歯12の根元が端縁43に当たることにより規制される。第四櫛歯台4の長円孔41の周方向の長さが比較的短いので、原動櫛歯9よりも大きく開く
第五櫛歯12と共に、その
第五櫛歯12が端縁43を押すことにより、第四櫛歯11も
図1に示すように原動櫛歯9よりも大きく開くが、その開き角度は
第五櫛歯12の開き角度に比べて小さい。
【0027】
前述したように、第四櫛歯台4の長円孔41は、内側の一本の
第五櫛歯12のみを突出させる孔であるから、形状は長円形でよいのであるが、他の櫛歯台の孔は二本以上の櫛歯を突出させる共同孔であるから、櫛歯の数に対応した幅が必要である。前述したように、第一櫛歯台1の共同孔17は、原動櫛歯9と、第三櫛歯10と、第四櫛歯11と、
第五櫛歯12の四本の櫛歯を突出させるので、
図4に示すように、櫛歯四本分の幅を有している。そして、階段状に4つの端縁18,19,20,21を形成して、各櫛歯の回転角度を規制している。
図5に示すように、原動櫛歯台2にも、櫛歯を突出させるための7つの共同孔62が設けられている。共同孔62は、第四櫛歯11と
第五櫛歯12の二本の櫛歯を突出させるので、櫛歯二本分の幅を有している。そして、階段状に2つの端縁63,64を形成して、第一櫛歯台1と同様に各櫛歯の回転角度を規制している。なお、前述したように、第三櫛歯10は長円孔25から突出するので、共同孔62は櫛歯二本分の幅でよいのである。さらに、
図6に示すように、第三櫛歯台3にも、櫛歯を突出させるための7つの共同孔66が設けられている。共同孔66は、共同孔62と同様に、第四櫛歯11と
第五櫛歯12の二本の櫛歯を突出させるので、櫛歯二本分の幅を有している。そして、階段状に2つの端縁67,68を形成して、第一櫛歯台1及び原動櫛歯台2と同様に各櫛歯の回転角度を規制している。なお、共同孔62,66についても、共同孔とせず、各櫛歯専用の長円孔を個別に設けてもよい。このようにして、各櫛歯を一杯に開いたときに、
第五櫛歯12が共同孔17の第四端縁21に当たり、第四櫛歯11が共同孔17の第三端縁20に当たり、原動櫛歯9が共同孔17の第二端縁19に当たり、第三櫛歯10が共同孔17の第一端縁18に当たる。したがって、すべての櫛歯が一列に並ぶように閉じたときに、
図2又は
図18に示すように、一列に並んだ櫛歯列の最も後ろ側に第一櫛歯8が位置し、その前に第三櫛歯10が位置し、その前に原動櫛歯9が位置し、その前に第四櫛歯11が位置し、その前に
第五櫛歯12が位置する。これよりも前側の櫛歯もこれらの櫛歯と同じ並びを繰り返して続くことになる。
【0028】
以上述べた機構によって、一方の手でハウジング7を持ち、他方の手でハンドル13を摘んで回転軸線を中心に時計回りに回転させることにより櫛歯を開くことができる。開いた各櫛歯の歯列の並びは、
図1に示すように、ハンドル取付け部14側から見て、一番左側が第一櫛歯台1の第一櫛歯8の歯列であり、その右隣りが第三櫛歯台3の第三櫛歯10であり、その右隣りが原動櫛歯台2の原動櫛歯9であり、その右隣りが第四櫛歯台4の第四櫛歯11であり、さらにその右隣りが
第五櫛歯台5の
第五櫛歯12である。櫛歯列は5つあるので、原動櫛歯台2の原動櫛歯9の歯列が各歯列の中央に存在する。また、原動櫛歯台2はハンドル13と結合されているので、原動櫛歯9とハンドル13の回転方向の相対的角度は変化しない。したがって、すべての櫛歯を一列に並べたときの櫛歯とハンドル13のバランスは、櫛歯を開いたときにも変化しないので、櫛歯を開いて使用するときに違和感なく使用することができる。
【0029】
以上述べた機構以外に必要な機構としては、各櫛歯を一列に並べて使用するときと、各櫛歯を開いて使用するときに、いずれの場合にもその位置に櫛歯を固定する機構である。特に、櫛歯を一列に並べたときは、各櫛歯の間隔が狭くなるので、使用時に頭髪から受ける摩擦力が大きくなって櫛歯が自然に回転する虞があるから、しっかり固定する必要がある。この櫛歯の固定は、可動の櫛歯台をハウジング7に係止する係止機構により行われる。第一櫛歯台1の第一櫛歯8は、ハウジング7に設けられていてハウジング7に対して固定されているから、使用中に回転することはない。また、第三櫛歯台3と第四櫛歯台4は、原動櫛歯台2の回転に伴って回転するので、原動櫛歯台2を係止すれば、第三櫛歯台3と第四櫛歯台4は回転しない。したがって、原動櫛歯台2を係止する機構を設ければ、第三櫛歯台3と第四櫛歯台4の係止機構は不要である。また、第四櫛歯台4は、
第五櫛歯台5の回転に伴って回転するので、
第五櫛歯台5を係止する機構を設ければ、第四櫛歯台4の係止機構は不要である。
【0030】
そこでまず、原動櫛歯台2の係止機構について説明する。
図19に示すように、原動櫛歯台2のハンドル取付け部14に隣接する表面に、細長い切欠部44が周方向に延びるように形成され、そこに一対の凸部45,46が設けられている。さらに、孔47を挟んで切欠部44の反対側に凸部48,49が設けられている。他方、第一櫛歯台1の後ろ側の端部の内面に、突条23を挟んで係止凸部50,51が設けられている。そして、各櫛歯が一列に並べられているときは、係止凸部50が、凸部45と切欠部44の端面52との間に位置して凸部45によって係止されるので、原動櫛歯台2の回転が規制される。同様に、係止凸部51が凸部48に係止されるので、これによって、原動櫛歯台2の回転が二重に規制される。櫛歯を開くときは、原動櫛歯台2に時計回りの方向の力を加えると、係止凸部50が凸部45を乗り越え、同じく係止凸部51が凸部48を乗り越えることによって係止状態が解除され、原動櫛歯台2が回転を開始する。さらに回転させると、係止凸部50が、凸部46に当たってそれを乗り越え、凸部46と切欠部44の他方の端面53との間に位置して凸部46によって係止される。同様に、係止凸部51が、凸部49に当たってそれを乗り越え、凸部49に係止されるので、この位置でも原動櫛歯台2の回転が二重に規制される。以上の機構により、原動櫛歯台2は、櫛歯が一列に並んだ位置と、櫛歯が開いた位置で係止され、櫛歯が自然に回転することを防止することができる。
【0031】
次に、
第五櫛歯台5の係止機構について説明する。
図17に示すように、
第五櫛歯台5の
第五櫛歯12と反対側の面に3つの係止凸部54,55,56が設けられている。また、
図9に示すように、カバー6の内面に6つのリブが設けられているが、
第五櫛歯台5がセットされたときに、その係止凸部54がリブ57に係合し、係止凸部55がリブ58に係合し、係止凸部56がリブ59に係合する。他方、カバー6のリブ57には、2つの凹部60,61が設けられている。櫛歯が一列に並べられているときに、係止凸部54は凹部60内に係止して、
第五櫛歯台5の回転を規制する。また、
第五櫛歯台5を回転させて第四櫛歯11を開くときは、係止凸部54は凹部60を乗り越えて回転し、凹部61内に係止して
第五櫛歯台5の回転を規制する。これらのことは、他の、係止凸部55,56とリブ58,59も同様である。このような係止機構によって、
第五櫛歯台5は、櫛歯が一列に並んだ位置と、櫛歯が開いた位置で係止され、櫛歯が自然に回転することを防止することができる。
【0032】
次に、本実施態様のサイズについて説明する。ハウジング7の全長すなわち第一櫛歯台1及びカバー6の全長は約75mmである。ハンドル取付け部14を含んだ原動櫛歯台2の全長は約90mmである。第三櫛歯台3及び第四櫛歯台4の全長は約66mmである。原動櫛歯台5の嵌合凸部37及びジャーナル軸69を除いた全長は約66mmである。ハウジング7の直径は約16mmである。第一櫛歯8の長さは約15mmであり、原動櫛歯9の長さは約18mmであり、第三櫛歯10の長さは約18mmであり、第四櫛歯11の長さは約20mmであり、
第五櫛歯12の長さは約20mmである。このような各櫛歯の長さにより、
図2に示すように、櫛歯を一列に並べたときに、各櫛歯の頂部は直線状とならずやや不揃いとなる。これにより、櫛歯を一列にして櫛として使用したときに、各櫛歯の頂部が一時に頭皮に当たることがなく、頭皮の負担を軽くすることができる。また、櫛歯を開いてヘアブラシとして使用したときも、櫛歯は扇状に開いて、中央の櫛歯が高く側方の櫛歯が低くなるので、櫛歯が一時に頭皮に当たることがなく、頭皮の負担を軽くすることができる。なお、サイズは以上の通りであるが、本発明がこれらの数値に限定されないことは勿論である。
【0033】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、ハンドル13を取付けず、ハンドル取付け部14を、原動櫛歯台2を回転させるための操作部としてもよい。ハンドル13又はハンドル取付け部14を操作せず、直接櫛歯を操作することによって櫛歯を開閉することも可能である。また、すべての櫛歯が開くのではなく、例えば、
第五櫛歯台5と第四櫛歯台4のみを回転可能とすることにより、
第五櫛歯12と第四櫛歯11と第三櫛歯10だけが一列に並ぶものとしてもよい。この場合、櫛歯が三列と五列で使用できるヘアブラシとなる。櫛歯は合成樹脂等で形成された一本の細棒状のものが使用されているが、これに代えて、豚毛のように細いブリッスルの複数本を一束にまとめたものを櫛歯としてもよい。また、歯列が五列に限定されないことは勿論である。