(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポルトランドセメント、カルシウムアルミネート、無水セッコウ及び水酸化カルシウムからなる結合材100部中、ポルトランドセメントが35〜55部、カルシウムアルミネートが20〜40部、無水セッコウが10〜25部、水酸化カルシウムが3〜10部である請求項1に記載の高流動軽量モルタル組成物。
結合材100部に対して、炭酸リチウム0.3〜2部、炭酸リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩0.5〜3.0部、有機酸0.1〜1.0部である請求項2に記載の高流動軽量モルタル組成物。
【背景技術】
【0002】
土木・建築工事において使用されるセメント系モルタルのグラウト材料は、PCグラウト、プレパックドコンクリート用グラウト、トンネルやシールド裏込めグラウト、プレキャスト用グラウト、構造物の補修や補強注入グラウト、橋梁の支承下グラウト、軌道下グラウト、耐震鉄骨ブレース周辺枠グラウト、増設壁逆打ちグラウト、鋼板巻き立て工法用グラウト、及び原子力発電所格納容器下グラウトなどがある。
【0003】
そのグラウト材料に求められる性能としては、材料分離やブリーディングが発生しないこと、施工時に良好な流動性を示すことなどが挙げられる。
特に、橋脚の鋼板巻立て工法においてはRC製橋脚の周囲に鋼板を巻立て、概ね30〜50mmの間隙にグラウト材を充填するため良好な流動が求められるが、一般のグラウト材は、通常、単位容積質量が2t/m
3以上であることから、打設速度を早くすると鋼板に膨らみが生じることがあった。
【0004】
そこでモルタルの単位容積質量が小さく、流動性に優れたモルタルが提案されている。
例えばモルタル中に気泡を導入する方法(特許文献1、2)や軽量骨材を添加する方法が知られている。軽量モルタルの圧縮強度は軽量化ともに直線的に低下し、さらに起泡剤や軽量骨材の使用はコスト増となる。一方で練混ぜ水の増量は直接的にはコスト増につながらないものの、ブリーディング発生や分離抵抗性の低下が起こることがあり、分離抵抗性を向上するため増粘剤の添加も提案されている(特許文献3,4,5)。
しかしながら、多量の増粘剤の添加は凝結遅延が生じ、強度発現が抑制されるといった課題があった。
【0005】
一方で、高流動モルタルは温度依存性が大きく、低温環境下の強度発現性が課題となっていた。そこで、急硬性を付与するため、ポルトランドセメントにカルシウムアルミネートや、さらに、セッコウ類を添加することが古くから検討されている(特許文献6)。
しかしながら、これらのセメント組成物は、温度依存性が大きいものであった。そこで、温度依存性を改善するため、カルシウムアルミネート、セッコウ類に炭酸リチウムを配合した超速硬セメント(特許文献7)、ポルトランドセメントにカルシウムアルミネート、無水セッコウ、炭酸リチウムおよび消石灰を配合したモルタルも提案されている(特許文献8)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
【0011】
本発明で使用するセメントとは、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱のポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、エコセメント、白色セメント、超速硬セメント、石灰石微粉末等を混合したフィラーセメント等が挙げられる。
【0012】
本発明のカルシウムアルミネートとは、CaOとAl
2O
3を主成分とする化合物を総称するものである。本発明では、CaO/Al
2O
3モル比が0.75〜1.5のカルシウムアルミネートを用いる。
カルシウムアルミネートの具体例としては、例えば、CaO・2Al
2O
3、CaO・Al
2O
3、12CaO・7Al
2O
3、11CaO・7Al
2O
3・CaF
2、3CaO・3Al
2O
3・CaSO
4等と表される結晶性のカルシウムアルミネート類や、CaOとAl
2O
3成分を主成分とする非晶質の化合物が挙げられる。CaO/Al
2O
3モル比が0.75未満では充分な強度発現性が得られない。また、逆に、CaO/Al
2O
3モル比が1.5を超えると充分な流動性や可使時間が得られない。
【0013】
カルシウムアルミネートを得る方法としては、CaO原料とAl
2O
3原料をロータリーキルンや電気炉等によって熱処理して得る方法が挙げられる。
カルシウムアルミネートを製造する際のCaO原料としては、例えば、石灰石や貝殻等の炭酸カルシウム、消石灰等の水酸化カルシウム、あるいは生石灰等の酸化カルシウムを挙げることができる。また、Al
2O
3原料としては、例えば、ボーキサイトやアルミ残灰と呼ばれる産業副産物のほか、アルミ粉等が挙げられる。
【0014】
カルシウムアルミネートを工業的に得る場合、不純物が含まれることがある。
その具体例としては、例えば、SiO
2、Fe
2O
3、MgO、TiO
2、MnO、Na
2O、K
2O、Li
2O、S、P
2O
5、及びF等が挙げられる。これらの不純物の存在は本発明の目的を実質的に阻害しない範囲では特に問題とはならない。具体的には、これらの不純物の合計が10%以下の範囲では特に問題とはならない。
【0015】
また、化合物としては、4CaO・Al
2O
3・Fe
2O
3、6CaO・2Al
2O
3・Fe
2O
3、6CaO・Al
2O
3・2Fe
2O
3等のカルシウムアルミノフェライト、2CaO・Fe
2O
3やCaO・Fe
2O
3等のカルシウムフェライト、ゲーレナイト2CaO・Al
2O
3・SiO
2、アノーサイトCaO・Al
2O
3・2SiO
2等のカルシウムアルミノシリケート、メルビナイト3CaO・MgO・2SiO
2、アケルマナイト2CaO・MgO・2SiO
2、モンチセライトCaO・MgO・SiO
2等のカルシウムマグネシウムシリケート、トライカルシウムシリケート3CaO・SiO
2、ダイカルシウムシリケート2CaO・SiO
2、ランキナイト3CaO・2SiO
2、ワラストナイトCaO・SiO
2等のカルシウムシリケート、カルシウムチタネートCaO・TiO
2、遊離石灰、リューサイト(K
2O、Na
2O)・Al
2O
3・SiO
2等を含む場合がある。本発明ではこれらの結晶質または非晶質が混在していても良い。
【0016】
本発明のカルシウムアルミネートの粒度は、特に限定されるものではないが、通常、ブレーン比表面積で3000〜9000cm
2/gの範囲にあり、4000〜80000cm
2/g程度のものがより好ましい。3000cm
2/g未満では強度発現性が充分でない場合があり、9000cm
2/gを超えるようなものは流動性や可使時間の確保が困難になる場合がある。
【0017】
本発明の無水セッコウとは、特に限定されるものではないが、II型の無水セッコウを使用することが好ましく、中でも、pHが4.5以下の酸性無水セッコウを利用することが、可使時間の確保のしやすさと、その後の強度増進が良好なことから好ましい。
ここで、無水セッコウのpHとは、純水100ccに無水セッコウ1gを入れて撹拌した際の上澄液のpHを意味する。無水セッコウの粒度は、ブレーン比表面積で3000〜9000cm
2/gが好ましく、4000〜8000cm
2/gがより好ましい。
【0018】
本発明の水酸化カルシウムとは、特に限定されるものではない。Ca(OH)
2と表される化合物を総称するものである。
その不純物も環境に有害なものを含まなければ特に限定されるものではない。Ca(OH)
2含有量で80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。不純物としては、炭酸カルシウムや酸化カルシウムを含む場合がある。
【0019】
水酸化カルシウムの比表面積は特に限定されるものではないが、通常、BET比表面積で20m
2/g以下が好ましく、15m
2/g以下がより好ましい。水酸化カルシウムのBET比表面積が20m
2/gを超えると、流動性が悪くなったり、可使時間の確保が困難になる傾向がある。
【0020】
本発明の炭酸リチウムとは、カルシウムアルミネートの硬化を促進し、短時間での強度発現性を実現する役割を担う。
炭酸リチウム以外のリチウム塩もカルシウムアルミネートの硬化を促進することは知られているが、炭酸リチウム以外のリチウム塩を使用すると、まず、流動化することができず、また、可使時間も確保できない。
【0021】
本発明の炭酸リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩とは、流動化及び可使時間の確保に重要な役割を果たす。
アルカリ金属炭酸塩は、特に限定されるものではないが、その具体例としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等が挙げられる。中でも、炭酸カリウムが好ましい。
【0022】
本発明の有機酸とは、炭酸塩や流動化剤とともに流動化及び可使時間の確保に重要な役割を果たす。
有機酸は、特に限定されるものではないが、その具体例としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸等のオキシカルボン酸及びそれらのナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、アルミニウム等の塩等が挙げられる。中でも、クエン酸やその塩が好ましい。本発明では、これらのうちの1種または2種以上を併用できる。
【0023】
本発明の高流動軽量モルタル組成物を用いたモルタルにおける各材料の配合割合は、ポルトランドセメントと、CaO/Al
2O
3モル比が0.75〜1.5のカルシウムアルミネート、無水セッコウ及び水酸化カルシウムからなる結合材100部中、ポルトランドセメントが35〜55部、CaO/Al
2O
3モル比が0.75〜1.5のカルシウムアルミネートが20〜40部、無水セッコウが10〜25部、水酸化カルシウムが1〜10部であることが好ましい。
【0024】
ポルトランドセメントが35部未満では、可使時間の確保が困難になる場合や長期耐久性が得られにくい場合がある。一方、55部を超えると、優れた初期強度発現性が得られない場合がある。
CaO/Al
2O
3モル比が0.75〜1.5のカルシウムアルミネートが20部未満では、優れた初期強度発現性が得られない場合があり、40部を超えて使用すると、可使時間の確保が困難になる場合や長期耐久性が得られにくい場合がある。
無水セッコウが10部未満では、可使時間の確保が困難になる場合があり、25部を超えると、優れた初期強度発現性が得られない場合や過膨張が生じる場合がある。
水酸化カルシウムが1部未満では、十分な初期強度発現性が得られない場合や、材料分離抵抗性が得られない場合があり、10部を超えると初期強度および長期強度の発現性が悪くなる場合がある。
【0025】
炭酸リチウムの配合割合が、結合材100部に対して、0.3部未満では、初期強度発現性が得られない場合がある。反対に2部を超えて使用しても更なる効果の増進が期待できない。
【0026】
炭酸リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩の配合割合が、結合材100部に対して、05.部未満では、充分な可使時間の確保が難しく、3部を超えると凝結遅延が強くなる場合がある。
【0027】
有機酸の配合割合が、結合材100部に対して、0.1部未満では、流動性や充分な可使時間の確保が難しく、1.0部を超えると凝結遅延が強くなり、5℃環境下において材齢6時間で硬化しない場合がある。
【0028】
本発明では増粘剤を使用する。増粘剤を配合することにより、材料分離がなく単位容積質量の小さい軽量骨材を配合でき、さらに、ブリーディングを発生させずに練混ぜ水の増量ができる。これらによりモルタル組成物の軽量化が可能となる。
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性セルロース系、ポリアクリル酸やポリアクリルアミド等のアクリル系、アルギン酸、β−1,3グルカン、プルラン、ウェランガム等の多糖類、ポリビニルアルコール等のポリビニル化合物等が挙げられる。
本発明では、水溶性セルロース系増粘剤とアクリル系増粘剤を併用することが好ましい。
【0029】
水溶性セルロースは、粘性が大きく塑性粘度が小さく、少量で材料分離やブリーディング発生の防止に対して効果的に作用する。
しかしながら、水溶性セルロースのみで粘性を与えた場合、モルタルの広がり(フロー値)が大きく、充填した際、鋼鈑の間隙があった場合には漏れ出したり、鋼鈑にかかる側圧が大きくなってしまい、鋼鈑に膨らみが発生する場合がある。
一方、アクリル系増粘剤は、粘性の増大は小さいが、塑性粘度を上げることができる。ポリアクリルアミドは、デキストリンを含有したほうが水中での分散性が向上するので好ましい。
本発明では、水溶性セルロース系増粘剤とアクリル系増粘剤を併用することにより、材料分離抵抗性の向上、ブリーディングの抑制、高水材料比のモルタルの過度の広がり(フロー値)を抑えることができ、型枠の間隙からの漏れだし対する抵抗性の向上と、鋼鈑内部に充填したモルタルの側圧の下げることができる。
【0030】
水溶性セルロース系増粘剤の使用量は、高流動モルタル組成物100部に対して0.05〜0.8部が好ましく、0.1〜0.5部がより好ましい。この水溶性セルロースの使用量が0.05部未満では、ブリーディングが発生する場合があり、0.8部を超えると粘性が上がりすぎ充填に必要な流動性が得られない場合や、凝結遅延を起こす場合がある。
アクリル系増粘剤の使用量は、高流動モルタル組成物100部に対して0.01〜0.5部が好ましく、0.1〜0.3部がより好ましい。このアクリル共重合体系増粘剤の使用量が0.01未満では、材料分離の発生の他、モルタルの広がりを小さくできず型枠の間隙からの漏れだし対する抵抗性の向上と、鋼鈑内部に充填したモルタルの側圧の低減ができず、0.5を超えると塑性粘度が上がりすぎ、充填に必要な流動性が得られない場合がある。
【0031】
本発明において使用する軽量骨材は、セメント組成物に使用可能な軽量骨材であれが良く、例えば、黒曜石、シラス又は真珠岩等の火成岩を粉砕し過熱したパーライトやシラスバルーン等、並びにフライアッシュバルーン等が挙げられ、軽量の密度が0.1〜0.7kg/lのものを使用する。0.7kg/lを超えるとモルタルの密度が大きくなり、鋼板巻立て工法用の充填材として用いた場合、鋼板に膨らむ恐れがあり、0.1kg/lを下回る場合は、他の構成を十分に配合できず、圧縮強度不足が発生する場合がある。
【0032】
軽量骨材の使用量は、水と高流動軽量モルタル組成物を練混ぜた高流動軽量モルタル1000リットル中、80〜400リットルが好ましい。80リットル以下ではモルタルの密度を小さくできず、鋼鈑間隙に充填した際にハラミが生じる場合がある。また400リットルを超えると十分な圧縮強度が得られない場合がある。
軽量骨材の最大粒径は、1.2mm以下が好ましい。1.2mmを超えると単位当たりの骨材粒の個数が少なくなり、プレミックスモルタルを製造する場合、各構成成分との密度差が大きいことから偏析が生じる場合がある。
【0033】
本発明では、高流動軽量モルタル組成物に対して50〜100%、より好ましくは60〜80%の水比で練混ぜる。50%以下だとモルタル密度を十分に小さくすることができず、反対に100%を超えると圧縮強度が十分でなくなる場合がある。
【0034】
本発明では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系粉末起泡剤を配合することができる。モルタル密度の軽量化は起泡剤によっても調整でき、更に微細な空気をモルタル組成物中に導入することで、分離抵抗性を向上することができる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系粉末起泡剤の使用量は、高流動軽量モルタル組成物100部に対して0.05〜0.50部が好ましく、0.10〜0.20部がより好ましい。0.05部未満だと起泡剤添加によるモルタル密度の軽量化の効果は小さく、0.5部を超えても空気導入量が頭打となり更なる軽量化にはならない場合がある。
【0035】
本発明では、高流動軽量モルタル組成物をドライブレンドしたプレミックスタイプとすることが好ましい。プレミックスタイプとすることにより品質安定化や、施工現場においては水のみを用意し練混ぜることで施工でき簡便化でき好ましい。
【0036】
本発明では、モルタル・コンクリートで一般的に使用する減水剤は使用しない。減水剤を使用すると所定の流動性を得るための練混ぜ水量が減少してしまい、モルタルの密度を減少させるために必要な練混ぜ水の増量ができなくなる。
【0037】
構造物と一体化させるためや、まだ固まらない状態のグラウトモルタルが沈下や収縮するのを抑止するためにガス発泡物質を使用することができる。
ガス発泡物質としては、ステアリン酸で表面処理した燐片状のアルミニウム粉末やアトマイズ製法で製造したアルミニウム粉末や、アゾ化合物、ニトロソ化合物、及びヒドラジン誘導体等のアルカリ雰囲気下で窒素ガスを発泡する物質や、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、及び過炭酸アンモニウムなどの過炭酸塩、過ホウ酸ナトリウムや過ホウ酸カリウム等の過ホウ酸塩、過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムなどの過マンガン酸塩、並びに、過酸化水素等の過酸化物質が使用可能である。
ガス発泡物質の使用量は、結合材100部に対してアルミニウム粉末は0.0005〜0.003部、窒素ガス発泡物質は0.01〜0.5部、過酸化物質は0.01〜0.1部が好ましい。
【0038】
また、本発明の高流動軽量モルタル組成物に通常使用する細骨材を使用してもよい。細骨材として川砂、砕砂等が使用できプレミックスモルタルをするときは乾燥砂が好ましい。
さらに、各種添加材(剤)、気泡剤、ベントナイ等の粘土鉱物、シリカ質微粉末、炭酸カルシウムのうち1種又は2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
「実験例1」
表1に示すような各種のカルシウムアルミネートを使用し、セメント45部、カルシウムアルミネート30部、無水セッコウ20部、水酸化カルシウム5部からなる結合材を調製し、結合材100部に対して、炭酸リチウム1部、炭酸リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩(1)0.8部、有機酸α0.5部、軽量骨材A10部、細骨材25部、増粘剤A0.3部、増粘剤B0.2部をV型ブレンダーにて均一に混合し、高流動軽量グラウト組成物を得た。
そして、5℃の室内で、その高流動軽量グラウト組成物100部に対して水65部加えミキサで練混ぜて高流動軽量モルタルとし、J
14漏斗値と圧縮強度試験を行った。結果を表1に併記する。
【0041】
<使用材料>
セメント:市販普通ポルトランドセメント
カルシウムアルミネートA:CaO/Al
2O
3モル比0.75、結晶質、ブレーン比表面積5000cm
2/g
カルシウムアルミネートB:CaO/Al
2O
3モル比1.00、結晶質、ブレーン比表面積5000cm
2/g
カルシウムアルミネートC:CaO/Al
2O
3モル比1.50、結晶質、ブレーン比表面積5000cm
2/g
カルシウムアルミネートD:CaO/Al
2O
3モル比1.00、非晶質、カルシウムアルミネートBに、試薬1級のシリカを5%添加して、1650℃で溶融後、急冷して合成、ブレーン比表面積5000cm
2/g
カルシウムアルミネートE:CaO/Al
2O
3モル比1.50、非晶質、カルシウムアルミネートCに、試薬1級のシリカを3%添加して、1650℃で溶融後、急冷して合成、ブレーン比表面積5000cm
2/g
カルシウムアルミネートF:CaO/Al
2O
3モル比0.60、結晶質、CaO・Al
2O
3とCaO・2Al
2O
3が主成分、ブレーン比表面積5000cm
2/g
カルシウムアルミネートG:CaO/Al
2O
3モル比1.60、結晶質、CaO・Al
2O
3、12CaO・7Al
2O
3が主成分、ブレーン比表面積5000cm
2/g
無水セッコウ:II型無水セッコウ、pH3.0、ブレーン比表面積5000cm
2/g
水酸化カルシウム:市販品、BET比表面積10m
2/g
炭酸リチウム:試薬1級
炭酸リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩(1):試薬1級炭酸カリウム
有機酸α:試薬1級クエン酸
軽量骨材A:真珠岩系軽量骨材1.2mm全通、密度0.26g/l(市販品)
増粘剤A:水溶性セルロース系増粘剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(市販品)、2%水溶液粘度32000mPa・s
増粘剤B:アクリル(ポリアクリルアミド)系増粘剤(市販品)、ポリアクリルアミド80%、デキストリン6%、硫酸ナトリウム14%、平均分子量30万
細骨材:石灰石粉砕品0.6mm全通品
水:水道水
【0042】
(測定方法)
流動性:JSCE−F541に準じてJ
14漏斗値を測定。
圧縮強度:JSCE−G505に準じて測定。
可使時間:J
14漏斗値が20秒を超え、充分な流し込みが出来なくなった時点とした。
【0043】
【表1】
【0044】
表1によれば、本発明の高流動軽量モルタルは、流動性に優れ、充分な可使時間を確保しつつ、低温下での強度発現が良好であることが分かる。
【0045】
「実験例2」
カルシウムアルミネートBを使用し、セメント、カルシウムアルミネート、無水セッコウ、水酸化カルシウムの配合割合を表2に示すように変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0046】
【表2】
【0047】
表2によれば、本発明の高流動軽量モルタルは、流動性に優れ、充分な可使時間を確保しつつ、低温下での強度発現が良好であることが分かる。
【0048】
「実験例3」
実験例1の実験No.1-2において、結合材100部に対して、炭酸リチウム、炭酸リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩、有機酸の種類と配合割合を表3に示すように変化したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0049】
<使用材料>
炭酸リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩(2):試薬1級炭酸ナトリウム
炭酸リチウム以外のアルカリ金属炭酸塩(3):試薬1級炭酸水素ナトリウム
有機酸β:試薬1級酒石酸
有機酸γ:試薬1級グルコン酸ナトリウム
【0050】
【表3】
【0051】
表3によれば、本発明の高流動軽量モルタルは、流動性に優れ、充分な可使時間を確保しつつ、低温下での強度発現が良好であることが分かる。
【0052】
「実験例4」
実験例1の実験No.1-2について、高流動軽量グラウト組成物100部に対して水の使用量と水溶性セルロース系増粘剤とアクリル系増粘剤の種類と使用量を変えて高流動軽量モルタルを調製し、流下値以外に、静置フロー値、ブリーディング、材料分離の有無を測定した。結果を表4に併記する。また、減水剤を添加して同様に試験した。結果を表4に併記する。
【0053】
(使用材料)
減水剤A:ナフタレン系「マイティー100」(花王社製)
減水剤B:メラミン系「メルメントF10M」(BASFジャパン社製)
減水剤C:ポリカルボン酸系「メルフラックス2651F」(BASFジャパン社製)
【0054】
(測定方法)
静置フロー値:JIS R 5202のフロー試験の15回の落下運動をしない静置フロー値。
ブリーディング:JSCE−F533に準じて測定した。ブリーディング発生のないものを○、発生したものを×とした。
材料分離:ペースト層の浮きや、細骨材の沈降の有無を目視で観察。材料分離の発生がなかったものを○、発生したものを×とした。
【0055】
【表4】
【0056】
表4によれば、水溶性セルロース系増粘剤とアクリル系増粘剤を併用することで、流下値と静置フロー値のバランスがよく、ブリーディングと材料分離発生の双方を抑制できることが分かる。
【0057】
「実験例5」
表5に示す軽量骨材と細骨材を用いた以外、実験例1と同様に試験した。その高流動軽量グラウト組成物100部に対して表2に示す水を加えミキサで練混ぜて高流動軽量モルタルとし、流下値、圧縮強度以外に、モルタル密度、さらに、鋼鈑内部に充填し鋼鈑の膨らみを計測した。結果を表5に併記する。
【0058】
(使用材料)
軽量骨材B:真珠岩系軽量骨材1.2mm全通、密度0.13kg/l(市販品)
軽量骨材C:真珠岩系軽量骨材1.2mm全通、密度0.48kg/l(市販品)
軽量骨材D:真珠岩系軽量骨材1.2mm全通、密度0.67kg/l(市販品)
【0059】
(試験方法)
モルタル密度:JIS A 1171準じ測定した。
鋼鈑の膨らみ:□50×50cm×高さ2mのコンクリート柱に間隙幅40mmでt=4.5mm鋼鈑を巻き立て、その間隙にモルタルを0.8m
3/hの速度で連続的に充填して、充填終了後の鋼鈑の膨らみを目視で確認した。
【0060】
【表5】
【0061】
表5より、本発明では、低温環境下でも圧縮強度も高く、鋼鈑の膨らみが小さいことがわかる。
【0062】
「実験例6」
表6に示す起泡剤を使用し、高流動軽量グラウト組成物100部に対して水65部を加えミキサで練混ぜて高流動軽量モルタルとしたこと以外は、実験例1と同様に試験し、流動性とモルタル密度(実験例5と同様)、圧縮強度を測定した。結果を表5に示す。
【0063】
(使用材料)
起泡剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル系粉末起泡剤(市販品:分子内に平均50個のエチレンオキシド単位を有するセテアリルアルコールをベースとした脂肪アルコールポリグリコールエーテル)
【0064】
【表6】
【0065】
表6によれば、起泡剤を添加することでモルタル密度の軽量化が可能であるが、0.5部を超えて添加しても、軽量化の効果は小さい。