【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造方法であって、(I)溶媒中に、上記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製する工程I、及び(II)上記母液に、下記一般式(1)
Si(OR
1)
4 (1)
(式中、R
1はアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシシラン、及び下記一般式(2)
R
2mSi(OR
3)
n(R
4−NH
2)
p (2)
(式中、R
2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R
3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、R
4は、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基である。mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。)
で表されるアルコキシシランを添加して、前記シリカ粒子の表面にシェルを形成する工程IIを有する製造方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記のコロイダルシリカの製造方法に関する。
1.コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造方法であって、
(I)溶媒中に、前記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製する工程I、及び
(II)前記母液に、下記一般式(1)
Si(OR
1)
4 (1)
(式中、R
1はアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシシラン、及び下記一般式(2)
R
2mSi(OR
3)
n(R
4−NH
2)
p (2)
(式中、R
2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R
3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、R
4は、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基である。mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。)
で表されるアルコキシシランを添加して、前記シリカ粒子の表面にシェルを形成する工程II
を有する製造方法。
2.前記式(1)で表されるアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケート及びテトラエチルオルトシリケートから選択される少なくとも1種である、上記項1に記載の製造方法。
3.前記式(1)で表されるアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケートである、上記項1に記載の製造方法。
4.前記式(2)で表されるアルコキシシランは、アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン及びアミノブチルトリエトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種である、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0013】
以下、本発明のコロイダルシリカの製造方法について詳細に説明する。
【0014】
本発明の製造方法は、工程Iにおいて、溶媒中に、コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製し、工程IIにおいて上記母液に、アルコキシ基を有する特定のアルコキシシランと、特定の炭化水素基及びアミノ基を有する特定のアルコキシシランとを添加して、上記コアとなるシリカ粒子の表面にシェルを形成する。
【0015】
本発明の製造方法によれば、コアとなるシリカ粒子の上に、特定の炭化水素基及びアミノ基を有する官能基を有するシェルが形成されたコアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシルカを容易に製造することができる。上記コアシェル型シリカ粒子は、特定の官能基を備えるシェルが形成されているので、紙、繊維、鉄鋼等の分野で物性改良剤として使用するのに適しており、特に、半導体ウエハ等の電子材料の研磨剤として好適に用いることができる。
【0016】
また、上記コアシェル型シリカ粒子は、コアとなるシリカ粒子の表面に特定の官能基を備えるシェルが形成されているので、シリカ粒子の表面のみを改質剤により改質する場合よりも、研磨剤等として用いるのに、より適した性能を発揮することができる。
【0017】
また、上記コアシェル型シリカ粒子は、コアとなるシリカ粒子の表面に特定の官能基を備えるシェルが形成されており、当該シェルにより電位を調整するので、コアシェル型シリカ粒子の電位を所望の範囲に調整することができ、安定したコロイダルシリカを得ることができる。
【0018】
更に、本発明の製造方法によれば、多量の改質剤を用いることを必要としておらず、コロイダルシリカのゲル化が抑制されている。
【0019】
1.工程I
工程Iは、溶媒中に、コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製する工程である。
【0020】
上記コアとなるシリカ粒子としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。このようなシリカ粒子としては、例えば、Stoeber法、水ガラス法等従来公知の方法により調製されたシリカ粒子が挙げられる。
【0021】
上記コアとなるシリカ粒子の平均粒子径は特に限定されないが、5〜200nm程度が好ましく、10〜100nm程度がより好ましい。尚、本明細書において、上記コアとなるシリカ粒子の平均粒子径は、2727/比表面積値によって換算される一次粒子径を表す。
【0022】
上記母液中のシリカ粒子の含有量は、母液を100質量%として0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。母液中のシリカ粒子の含有量が多過ぎると、所望の厚みのシェルを形成する際の効率が著しく低下するおそれがあり、シリカ粒子の含有量が少な過ぎると、シェルの形成が十分に進行せず、新たな核の生成を引き起こしてしまうおそれがある。
【0023】
工程Iで用いられる溶媒としては、上記シリカ粒子を分散することができれば特に限定されないが、水、有機溶媒、水を含む有機溶媒等が挙げられる。これらの中でも、水を用いることが好ましい。水を用いることにより、安価で、且つ安全にコアシェル型シリカ粒子を形成することができる。
【0024】
溶媒として有機溶媒を用いる場合には、当該有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の親水性有機溶媒を用いることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の、アルコール類を用いることがより好ましい。
【0025】
これらの溶媒は、一種を単独で使用することもでき、二種以上の有機溶媒を混合して使用することもできる。
【0026】
上記母液のpHは、7以上12以下である。母液のpHが7未満である場合、シェルの形成反応が促進できない。また、母液のpHが12を超えるとコア粒子の溶解が生じる。上記母液のpHは、7.5〜12であることが好ましい。
【0027】
母液には、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の金属イオンを含まないアルカリ触媒が添加されて、pHが上述の範囲に調製されていてもよい。上記アルカリ触媒としては、より具体的には、3−エトキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0028】
上記母液を調製する方法としては特に限定されず、従来公知の方法により調製することができる。例えば、溶媒に、シリカ粒子、及び必要に応じてアルカリ触媒を添加して、撹拌することにより調製すればよい。
【0029】
以上説明した工程Iにより、溶媒中に、上記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液が調製される。
【0030】
2.工程II
工程IIは、上記母液に、下記一般式(1)
Si(OR
1)
4 (1)
(式中、R
1はアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシシラン、及び下記一般式(2)
R
2mSi(OR
3)
n(R
4−NH
2)
p (2)
(式中、R
2は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R
3は、炭素数1〜3のアルキル基であり、R
4は、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基である。mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。)
で表されるアルコキシシランを添加して、上記シリカ粒子の表面にシェルを形成する工程である。
【0031】
下記一般式(1)
Si(OR
1)
4 (1)
において、R
1はアルキル基を示す。R
1はアルキル基であれば特に限定されないが、炭素数1〜8の低級アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の低級アルキル基であることがより好ましい。上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示することができる。上記一般式(1)で表されるアルコキシシランとしては、R
1がメチル基であるテトラメトキシシラン(テトラメチルオルトシリケート)、R
1がエチル基であるテトラエトキシシラン(テトラエチルオルトシリケート)、R
1がイソプロピル基であるテトライソプロポキシシランが好ましく、R
1がメチル基であるテトラメトキシシラン、R
1がエチル基であるテトラエトキシシランがより好ましく、テトラメトキシシランが更に好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランは、誘導体であってもよい。当該アルコキシシランの誘導体としては、上記一般式(1)で表されるアルコキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合物を例示することができる。
【0033】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランは、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランの添加量は特に限定されないが、上記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子1質量部に対して、0.1〜60質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。一般式(1)で表されるアルコキシシランの添加量が少な過ぎるとシェルの厚みが薄くなり過ぎるおそれがあり、多過ぎるとシェル形成以外の副反応(新たな核の生成)を生じるおそれがある。
【0035】
下記一般式(2)
R
2mSi(OR
3)
n(R
4−NH
2)
p (2)
において、mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。
【0036】
上記R
2は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。R
2の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基が挙げられ、中でも、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0037】
上記R
3は、炭素数1〜3のアルキル基を示す。R
3の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0038】
上記R
4は、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基を示す。
【0039】
上記R
4のうち、炭素数1〜4の炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられ、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基がより好ましい。
【0040】
上記R
4のうち、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基の具体例としてはアミノメチレン基、アミノエチレン基、アミノプロピレン基、アミノイソプロピレン基、アミノブチレン基、アミノイソブチレン基等が挙げられ、アミノエチレン基、アミノプロピレン基が好ましい。
【0041】
上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの具体例としては、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0042】
上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量は特に限定されないが、最終生成物であるコロイダルシリカを100質量%として、0.005〜1.6質量%が好ましく、0.03〜0.3質量%がより好ましい。一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量が少な過ぎると、シェルに導入されるアミノ基が少なくなり、コアシェル型シリカ粒子に所望の電位を付与することができず、長期間安定分散可能なコロイダルシリカを得ることができないおそれがある。添加量が多すぎると、二次粒径の増大、凝集物の生成、ゲル化を生じるおそれがある。
【0043】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランの添加量に対する上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量の割合は、上記一般式(1)で表されるアルコキシシランの添加量100質量部に対して、0.05〜3質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量の割合が少な過ぎると、シェルに導入されるアミノ基が少なくなり、コアシェル型シリカ粒子に所望の電位を付与することができず、長期間安定分散可能なコロイダルシリカを得ることができないおそれがある。上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量の割合が多過ぎると、二次粒径の増大、凝集物の生成、ゲル化を生じるおそれがある。
【0044】
工程IIにおける母液の温度は特に限定されず、室温からコロイダルシリカを分散する分散媒の沸点程度の温度であればよい。具体的には0〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。母液の温度が低過ぎると、溶媒によっては凝固するおそれがあり、また上記一般式(2)で示されるアルコキシシランの反応性が低下してシェルを十分に形成できないおそれがある。母液の温度が高過ぎると、溶媒によっては当該溶媒の沸点を超えるおそれがある。
【0045】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン、及び一般式(2)で表されるアルコキシシランを母液に添加する方法としては特に限定されず、従来公知の方法によりこれらのアルコキシシランを母液に滴下すればよい。アルコキシシランの滴下速度は特に限定されないが、上記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子1gに対して0.01〜0.1mol/hであることが好ましい。添加速度が速すぎると、シェルが緻密にならない(シラノール基が残存した)状態でコアシェル型シリカ粒子が形成されるおそれがある。添加速度が遅すぎると、生産効率が低下するおそれがある。
【0046】
以上説明した工程IIにより、コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカが製造される。
【0047】
上記コロイダルシリカは、ナトリウム、カリウム、鉄、カルシウム、マグネシウム、チタン、ニッケル、クロム、銅等の金属不純物の含有量が、10ppm以下であることが好ましい。金属不純物の含有量が10ppm以下であることにより、電子材料等の研磨に好適に用いることができる。
【0048】
上記の方法に従って製造されたコロイダルシリカの溶媒が水以外の溶媒を含む場合は、コロイダルシリカの長期保存安定性を高めるために、必要に応じて、溶媒を水で置換することができる。溶媒を水で置換する方法は特に限定されず、例えば、コロイダルシリカを加熱しながら水を一定量ずつ滴下する方法を例示することができる。また、他の方法としては、コロイダルシリカを沈殿・分離、遠心分離等により溶媒と分離した後に、水に再分散させる方法を例示することができる。
【0049】
本発明の製造方法により製造されたコロイダルシリカは、幅広いpH領域において長期間の分散安定性に優れる。コロイダルシリカの安定性は、コロイダルシリカのゼータ電位を測定することで評価することができる。ゼータ電位とは、互いに接している固体と液体とが相対運動を行なったときの両者の界面に生じる電位差のことであり、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発が強く粒子の安定性は高くなり、ゼータ電位の絶対値がゼロに近づくほど、粒子は凝集しやすくなる。
【0050】
特に本発明に係る変性コロイダルシリカは酸性領域において高い安定性を有する。上記一般式(2)による表されるアルコキシシランは、カチオン性基を有する。溶媒のpHが1〜5のときの当該溶媒のゼータ電位は正電位であるので、溶媒が酸性であっても高い分散安定性を示すことができる。また溶媒がpH5〜7のときにゼータ電位が0となる等電位点を有する。分散媒がpH7以上であるとゼータ電位は負電位である。
【0051】
本発明の製造方法により製造されるコロイダルシリカは、研磨剤、紙のコーティング剤などの様々な用途に使用することができるが、広いpH範囲で長期間安定分散可能であり、しかもナトリウムなどの金属不純物の含有量が10ppm以下と高純度にすることができるので、特に半導体ウエハの化学機械研磨の研磨剤として好適に用いることができる。