特許第6284443号(P6284443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284443コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284443
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/149 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   C01B33/149
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-130112(P2014-130112)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2016-8157(P2016-8157A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000238164
【氏名又は名称】扶桑化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道脇 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山脇 拓人
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−145317(JP,A)
【文献】 特開昭62−072514(JP,A)
【文献】 特表2008−530031(JP,A)
【文献】 特開2005−162533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
B01J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造方法であって、
(I)溶媒中に、前記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製する工程I、及び
(II)前記母液に、下記一般式(1)
Si(OR (1)
(式中、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシシラン、及び下記一般式(2)
Si(OR(R−NH (2)
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基である。mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。)
で表されるアルコキシシランを添加して、前記シリカ粒子の表面にシェルを形成する工程II
を有し、前記溶媒がアルコールを含まない水である製造方法。
【請求項2】
前記式(1)で表されるアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケート及びテトラエチルオルトシリケートから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(1)で表されるアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケートである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(2)で表されるアルコキシシランは、アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン及びアミノブチルトリエトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コロイダルシリカは、シリカ微粒子を水等の媒体に分散させたものであり、紙、繊維、鉄鋼等の分野で物性改良剤として使用されている他、半導体ウエハ等の電子材料の研磨剤としても使用されている。このような用途に用いられるコロイダルシリカに分散されているシリカ粒子には、高純度性や緻密性が要求され、シリカ粒子の表面を変性させる等、様々な処理が行われている。
【0003】
上記要求に応え得るコロイダルシリカの製造方法として、例えば、加水分解可能なケイ素化合物を加水分解・縮合して得られたコロイダルシリカを、変性剤で変性する変性コロイダルシリカの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の方法によれば、ケイ素化合物を加水分解・縮合して得られたコロイダルシリカ中に分散するシリカ粒子の表面をシランカップリング剤により表面改質しており、これにより安定で高純度のコロイダルシリカが製造されている。
【0005】
しかしながら、このようなコロイダルシリカの製造方法では、シリカ粒子の表面を限られた厚みでしか改質することができず、十分に改質できないという問題がある。
【0006】
また、研磨剤等の分野で用いられるコロイダルシリカには、安定性を付与するためにシリカ粒子が適切な電位を示すことが要求される。上述の方法では、得られたコロイダルシリカ中のシリカ粒子は表面が改質されているに過ぎないので、付与できる電位が限られており、シリカ粒子の電位を適切な範囲に調整することができないという問題がある。
【0007】
更に、シリカ粒子の表面改質された部分の厚みを厚くするために、多量の改質剤を用いると、コロイダルシリカがゲル化を生じるという問題がある。
【0008】
高純度性、緻密性に優れたシリカ粒子を含有し、当該シリカ粒子の電位を適切な範囲に調整することができ、ゲル化が抑制された安定したコロイダルシリカを容易に製造することができる製造方法は、未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−162533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高純度性、緻密性に優れたコアシェル型シリカ粒子を含有し、当該シリカ粒子の電位を適切な範囲に調整することができ、ゲル化が抑制された安定したコロイダルシリカを容易に製造することができるコロイダルシリカの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造方法であって、(I)溶媒中に、上記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製する工程I、及び(II)上記母液に、下記一般式(1)
Si(OR (1)
(式中、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシシラン、及び下記一般式(2)
Si(OR(R−NH (2)
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基である。mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。)
で表されるアルコキシシランを添加して、前記シリカ粒子の表面にシェルを形成する工程IIを有する製造方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記のコロイダルシリカの製造方法に関する。
1.コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造方法であって、
(I)溶媒中に、前記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製する工程I、及び
(II)前記母液に、下記一般式(1)
Si(OR (1)
(式中、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシシラン、及び下記一般式(2)
Si(OR(R−NH (2)
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基である。mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。)
で表されるアルコキシシランを添加して、前記シリカ粒子の表面にシェルを形成する工程II
を有する製造方法。
2.前記式(1)で表されるアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケート及びテトラエチルオルトシリケートから選択される少なくとも1種である、上記項1に記載の製造方法。
3.前記式(1)で表されるアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケートである、上記項1に記載の製造方法。
4.前記式(2)で表されるアルコキシシランは、アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン及びアミノブチルトリエトキシシランからなる群より選択される少なくとも1種である、上記項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0013】
以下、本発明のコロイダルシリカの製造方法について詳細に説明する。
【0014】
本発明の製造方法は、工程Iにおいて、溶媒中に、コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製し、工程IIにおいて上記母液に、アルコキシ基を有する特定のアルコキシシランと、特定の炭化水素基及びアミノ基を有する特定のアルコキシシランとを添加して、上記コアとなるシリカ粒子の表面にシェルを形成する。
【0015】
本発明の製造方法によれば、コアとなるシリカ粒子の上に、特定の炭化水素基及びアミノ基を有する官能基を有するシェルが形成されたコアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシルカを容易に製造することができる。上記コアシェル型シリカ粒子は、特定の官能基を備えるシェルが形成されているので、紙、繊維、鉄鋼等の分野で物性改良剤として使用するのに適しており、特に、半導体ウエハ等の電子材料の研磨剤として好適に用いることができる。
【0016】
また、上記コアシェル型シリカ粒子は、コアとなるシリカ粒子の表面に特定の官能基を備えるシェルが形成されているので、シリカ粒子の表面のみを改質剤により改質する場合よりも、研磨剤等として用いるのに、より適した性能を発揮することができる。
【0017】
また、上記コアシェル型シリカ粒子は、コアとなるシリカ粒子の表面に特定の官能基を備えるシェルが形成されており、当該シェルにより電位を調整するので、コアシェル型シリカ粒子の電位を所望の範囲に調整することができ、安定したコロイダルシリカを得ることができる。
【0018】
更に、本発明の製造方法によれば、多量の改質剤を用いることを必要としておらず、コロイダルシリカのゲル化が抑制されている。
【0019】
1.工程I
工程Iは、溶媒中に、コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液を調製する工程である。
【0020】
上記コアとなるシリカ粒子としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。このようなシリカ粒子としては、例えば、Stoeber法、水ガラス法等従来公知の方法により調製されたシリカ粒子が挙げられる。
【0021】
上記コアとなるシリカ粒子の平均粒子径は特に限定されないが、5〜200nm程度が好ましく、10〜100nm程度がより好ましい。尚、本明細書において、上記コアとなるシリカ粒子の平均粒子径は、2727/比表面積値によって換算される一次粒子径を表す。
【0022】
上記母液中のシリカ粒子の含有量は、母液を100質量%として0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。母液中のシリカ粒子の含有量が多過ぎると、所望の厚みのシェルを形成する際の効率が著しく低下するおそれがあり、シリカ粒子の含有量が少な過ぎると、シェルの形成が十分に進行せず、新たな核の生成を引き起こしてしまうおそれがある。
【0023】
工程Iで用いられる溶媒としては、上記シリカ粒子を分散することができれば特に限定されないが、水、有機溶媒、水を含む有機溶媒等が挙げられる。これらの中でも、水を用いることが好ましい。水を用いることにより、安価で、且つ安全にコアシェル型シリカ粒子を形成することができる。
【0024】
溶媒として有機溶媒を用いる場合には、当該有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の親水性有機溶媒を用いることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の、アルコール類を用いることがより好ましい。
【0025】
これらの溶媒は、一種を単独で使用することもでき、二種以上の有機溶媒を混合して使用することもできる。
【0026】
上記母液のpHは、7以上12以下である。母液のpHが7未満である場合、シェルの形成反応が促進できない。また、母液のpHが12を超えるとコア粒子の溶解が生じる。上記母液のpHは、7.5〜12であることが好ましい。
【0027】
母液には、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等の金属イオンを含まないアルカリ触媒が添加されて、pHが上述の範囲に調製されていてもよい。上記アルカリ触媒としては、より具体的には、3−エトキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0028】
上記母液を調製する方法としては特に限定されず、従来公知の方法により調製することができる。例えば、溶媒に、シリカ粒子、及び必要に応じてアルカリ触媒を添加して、撹拌することにより調製すればよい。
【0029】
以上説明した工程Iにより、溶媒中に、上記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子を含有する、pHが7以上12以下である母液が調製される。
【0030】
2.工程II
工程IIは、上記母液に、下記一般式(1)
Si(OR (1)
(式中、Rはアルキル基を示す。)
で表されるアルコキシシラン、及び下記一般式(2)
Si(OR(R−NH (2)
(式中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基である。mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。)
で表されるアルコキシシランを添加して、上記シリカ粒子の表面にシェルを形成する工程である。
【0031】
下記一般式(1)
Si(OR (1)
において、Rはアルキル基を示す。Rはアルキル基であれば特に限定されないが、炭素数1〜8の低級アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の低級アルキル基であることがより好ましい。上記アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を例示することができる。上記一般式(1)で表されるアルコキシシランとしては、Rがメチル基であるテトラメトキシシラン(テトラメチルオルトシリケート)、Rがエチル基であるテトラエトキシシラン(テトラエチルオルトシリケート)、Rがイソプロピル基であるテトライソプロポキシシランが好ましく、Rがメチル基であるテトラメトキシシラン、Rがエチル基であるテトラエトキシシランがより好ましく、テトラメトキシシランが更に好ましい。
【0032】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランは、誘導体であってもよい。当該アルコキシシランの誘導体としては、上記一般式(1)で表されるアルコキシシランを部分的に加水分解して得られる低縮合物を例示することができる。
【0033】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランは、単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランの添加量は特に限定されないが、上記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子1質量部に対して、0.1〜60質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。一般式(1)で表されるアルコキシシランの添加量が少な過ぎるとシェルの厚みが薄くなり過ぎるおそれがあり、多過ぎるとシェル形成以外の副反応(新たな核の生成)を生じるおそれがある。
【0035】
下記一般式(2)
Si(OR(R−NH (2)
において、mは、0〜2の整数であり、pは、1または2であり、nは、1〜3の整数であって、且つm+n+p=4である。
【0036】
上記Rは、炭素数1〜6のアルキル基を示す。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基が挙げられ、中でも、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0037】
上記Rは、炭素数1〜3のアルキル基を示す。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。
【0038】
上記Rは、炭素数1〜4の炭化水素基、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基を示す。
【0039】
上記Rのうち、炭素数1〜4の炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられ、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基がより好ましい。
【0040】
上記Rのうち、アミノ基で置換されている炭素数1〜4の炭化水素基の具体例としてはアミノメチレン基、アミノエチレン基、アミノプロピレン基、アミノイソプロピレン基、アミノブチレン基、アミノイソブチレン基等が挙げられ、アミノエチレン基、アミノプロピレン基が好ましい。
【0041】
上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの具体例としては、例えば、アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0042】
上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量は特に限定されないが、最終生成物であるコロイダルシリカを100質量%として、0.005〜1.6質量%が好ましく、0.03〜0.3質量%がより好ましい。一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量が少な過ぎると、シェルに導入されるアミノ基が少なくなり、コアシェル型シリカ粒子に所望の電位を付与することができず、長期間安定分散可能なコロイダルシリカを得ることができないおそれがある。添加量が多すぎると、二次粒径の増大、凝集物の生成、ゲル化を生じるおそれがある。
【0043】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシランの添加量に対する上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量の割合は、上記一般式(1)で表されるアルコキシシランの添加量100質量部に対して、0.05〜3質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量の割合が少な過ぎると、シェルに導入されるアミノ基が少なくなり、コアシェル型シリカ粒子に所望の電位を付与することができず、長期間安定分散可能なコロイダルシリカを得ることができないおそれがある。上記一般式(2)で表されるアルコキシシランの添加量の割合が多過ぎると、二次粒径の増大、凝集物の生成、ゲル化を生じるおそれがある。
【0044】
工程IIにおける母液の温度は特に限定されず、室温からコロイダルシリカを分散する分散媒の沸点程度の温度であればよい。具体的には0〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。母液の温度が低過ぎると、溶媒によっては凝固するおそれがあり、また上記一般式(2)で示されるアルコキシシランの反応性が低下してシェルを十分に形成できないおそれがある。母液の温度が高過ぎると、溶媒によっては当該溶媒の沸点を超えるおそれがある。
【0045】
上記一般式(1)で表されるアルコキシシラン、及び一般式(2)で表されるアルコキシシランを母液に添加する方法としては特に限定されず、従来公知の方法によりこれらのアルコキシシランを母液に滴下すればよい。アルコキシシランの滴下速度は特に限定されないが、上記コアシェル型シリカ粒子のコアとなるシリカ粒子1gに対して0.01〜0.1mol/hであることが好ましい。添加速度が速すぎると、シェルが緻密にならない(シラノール基が残存した)状態でコアシェル型シリカ粒子が形成されるおそれがある。添加速度が遅すぎると、生産効率が低下するおそれがある。
【0046】
以上説明した工程IIにより、コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカが製造される。
【0047】
上記コロイダルシリカは、ナトリウム、カリウム、鉄、カルシウム、マグネシウム、チタン、ニッケル、クロム、銅等の金属不純物の含有量が、10ppm以下であることが好ましい。金属不純物の含有量が10ppm以下であることにより、電子材料等の研磨に好適に用いることができる。
【0048】
上記の方法に従って製造されたコロイダルシリカの溶媒が水以外の溶媒を含む場合は、コロイダルシリカの長期保存安定性を高めるために、必要に応じて、溶媒を水で置換することができる。溶媒を水で置換する方法は特に限定されず、例えば、コロイダルシリカを加熱しながら水を一定量ずつ滴下する方法を例示することができる。また、他の方法としては、コロイダルシリカを沈殿・分離、遠心分離等により溶媒と分離した後に、水に再分散させる方法を例示することができる。
【0049】
本発明の製造方法により製造されたコロイダルシリカは、幅広いpH領域において長期間の分散安定性に優れる。コロイダルシリカの安定性は、コロイダルシリカのゼータ電位を測定することで評価することができる。ゼータ電位とは、互いに接している固体と液体とが相対運動を行なったときの両者の界面に生じる電位差のことであり、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発が強く粒子の安定性は高くなり、ゼータ電位の絶対値がゼロに近づくほど、粒子は凝集しやすくなる。
【0050】
特に本発明に係る変性コロイダルシリカは酸性領域において高い安定性を有する。上記一般式(2)による表されるアルコキシシランは、カチオン性基を有する。溶媒のpHが1〜5のときの当該溶媒のゼータ電位は正電位であるので、溶媒が酸性であっても高い分散安定性を示すことができる。また溶媒がpH5〜7のときにゼータ電位が0となる等電位点を有する。分散媒がpH7以上であるとゼータ電位は負電位である。
【0051】
本発明の製造方法により製造されるコロイダルシリカは、研磨剤、紙のコーティング剤などの様々な用途に使用することができるが、広いpH範囲で長期間安定分散可能であり、しかもナトリウムなどの金属不純物の含有量が10ppm以下と高純度にすることができるので、特に半導体ウエハの化学機械研磨の研磨剤として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明の製造方法によれば、高純度性、緻密性に優れたコアシェル型シリカ粒子を含有し、当該シリカ粒子の電位を適切な範囲に調整することができ、ゲル化が抑制された安定したコロイダルシリカを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】実施例及び比較例で調製されたコロイダルシリカのゼータ電位及びpHの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0055】
実施例1
(コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造)
[工程I]:フラスコに、溶媒として純水5882g、及び、コアとなるシリカ粒子としてBS−1H(シリカ濃度10.5質量%、二次粒子径35nm)2604gを入れ、アルカリ触媒として3−エトキシプロピルアミンを添加してpHを10に調整し、母液を得た。
[工程II]:母液を内温80℃まで加熱した後、当該母液にテトラメチルオルトシリケート1872.3gおよび3−アミノプロピルトリメトキシシラン16.3gの混合液を内温変動しないよう温調しつつ、180分かけて定速滴下して、コアシェル型シリカ粒子を含むコロイダルシリカ分散液を得た。
【0056】
得られた分散液を常圧下にて、4600mLまで加熱濃縮した。続けて、反応時に副生したメタノールを系外留去するために、容量を一定に保ちつつ、純水3000mLにて分散媒を置換して、シェルにアミノシランを有するコアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカを調製した。
【0057】
実施例2
(コアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造)
工程IIにおいて、添加する3−アミノプロピルトリメトキシシランの量を28.3gとした以外は実施例1と同様にして、シェルにアミノシランを有するコアシェル型シリカ粒子を含有するコロイダルシリカを調製した。
【0058】
比較例1
(表面がアミノシランで変性されたシリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造)
[工程I]:実施例1と同様にして、母液を調製した。
[工程II]:母液を内温80℃まで加熱した後、当該母液にテトラメチルオルトシリケート1872.3gを内温変動しないよう温調しつつ、180分かけて定速滴下して、コロイダルシリカ分散液を得た。
【0059】
得られた分散液を常圧下にて、4600mLまで加熱濃縮して濃縮液を得た。この濃縮液に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン16.3gとメタノール1614.5gとの混合液を添加した。その後、容量を一定に保ちつつ、純水5000mLにて分散媒を置換して、表面がアミノシランで変性されたシリカ粒子を含有するコロイダルシリカを調製した。
【0060】
比較例2
(表面がアミノシランで変性されたシリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造)
比較例1と同様にして、コロイダルシリカ分散液を得た。
【0061】
得られた分散液を常圧下にて、4600mLまで加熱濃縮して濃縮液を得た。この濃縮液に、3−アミノプロピルトリメトキシシラン28.2gとメタノール2794.6gとの混合液を添加した。添加後、混合液中にシリカの凝集物が観察された。
【0062】
比較例3
(アミノシランで変性されていないシリカ粒子を含有するコロイダルシリカの製造)
[工程I]:実施例1と同様にして、母液を調製した。
[工程II]:母液を内温80℃まで加熱した後、当該母液にテトラメチルオルトシリケート1872.3gを内温変動しないよう温調しつつ、180分かけて定速滴下して、コロイダルシリカ分散液を得た。
【0063】
得られた分散液を常圧下にて、4600mLまで加熱濃縮した。続けて、反応時に副生したメタノールを系外留去するために、容量を一定に保ちつつ、純水3000mLにて分散媒を置換して、コロイダルシリカを調製した。
【0064】
得られた実施例及び比較例のコロイダルシリカについて、以下の特性を評価した。
【0065】
(BET比表面積)
コロイダルシリカをホットプレートの上で予備乾燥後、800℃で1時間熱処理して測定用サンプルを調製した。調製した測定用サンプルを用いて、BET比表面積を測定した。
【0066】
(一次粒子径)
シリカの真比重を2.2として、2727/比表面積(m/g)の値を換算して、コロイダルシリカの一次粒子径(nm)とした。
【0067】
(二次粒子径)
動的光散乱法の測定用サンプルとして、コロイダルシリカを0.3重量%クエン酸水溶液に加えて均一化したものを調製した。当該測定用サンプルを用いて、動的光散乱法(大塚電子株式会社製「ELS8000」)により二次粒子径を測定した。
【0068】
(ゼータ電位)
大塚電子株式会社製のELS−Zを用いて、10mM塩化ナトリウム水溶液中でシリカ濃度1wt%の条件により測定した。
【0069】
なお、会合比は、二次粒子径/一次粒子径により算出される値である。
【0070】
結果を以下の表及び図に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1において、比較例2は凝集物が生成したため、測定を行っていない。
図1