(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液を管理するエッチング液管理装置において、
前記エッチング液の導電率値を測定する導電率計と、
前記エッチング液の密度値を測定する密度計と、
前記エッチング液のシュウ酸濃度と導電率値との間の相関関係及び前記導電率計の測定結果に基づいて、前記シュウ酸濃度が前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間に相関関係がある濃度範囲内となるように、及び、前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間の相関関係及び前記密度計の測定結果に基づいて、前記インジウム濃度、前記ガリウム濃度又は前記亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理される濃度のしきい値以下となるように、前記エッチング液に補給される補充液の送液を制御する補充液送液制御手段と、
を備えたことを特徴とするエッチング液管理装置。
シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液を管理するエッチング液管理装置において、
前記エッチング液の導電率値を測定する導電率計と、
前記エッチング液の密度値を測定する密度計と、
前記導電率計により測定された導電率値及び前記密度計により測定された密度値に基づいて、多変量解析法により前記エッチング液のシュウ酸濃度、並びに、前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する成分濃度演算手段と、
前記成分濃度演算手段により算出される前記エッチング液のシュウ酸濃度が管理される濃度範囲内となるように、及び、前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理される濃度のしきい値以下となるように、前記エッチング液に補給される補充液の送液を制御する補充液送液制御手段と、
を備えたことを特徴とするエッチング液管理装置。
シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液を管理するエッチング液管理方法において、
前記エッチング液の導電率値を測定する導電率測定工程と、
前記エッチング液のシュウ酸濃度と導電率値との間の相関関係及び前記導電率測定工程の測定結果に基づいて、前記シュウ酸濃度が前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間に相関関係がある濃度範囲内となるように、前記エッチング液に補給する補充液の送液を制御するシュウ酸濃度用補充液送液制御工程と、
前記シュウ酸濃度用補充液送液制御工程によりシュウ酸濃度が前記濃度範囲内に管理されたエッチング液の密度値を測定する密度測定工程と、
前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間の相関関係及び前記密度測定工程の測定結果に基づいて、前記インジウム濃度、前記ガリウム濃度又は前記亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理される濃度のしきい値以下となるように、前記エッチング液に補給される補充液の送液を制御する金属濃度用補充液送液制御工程と、
を有することを特徴とするエッチング液管理方法。
シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液を管理するエッチング液管理方法において、
前記エッチング液の導電率値を測定する導電率測定工程と、
前記エッチング液の密度値を測定する密度測定工程と、
前記導電率測定工程により測定された導電率値及び前記密度測定工程により測定された密度値に基づいて、多変量解析法により前記エッチング液のシュウ酸濃度、並びに、前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する成分濃度演算工程と、
前記成分濃度演算工程により算出される前記エッチング液のシュウ酸濃度が管理される濃度範囲内となるように、及び、前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理される濃度のしきい値以下となるように、前記エッチング液に補給される補充液の送液を制御する補充液送液制御工程と、
を有することを特徴とするエッチング液管理方法。
シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液の導電率値を測定する導電率測定工程と、
前記エッチング液の密度値を測定する密度測定工程と、
前記導電率測定工程により測定された導電率値及び前記密度測定工程により測定された密度値に基づいて、多変量解析法により前記エッチング液のシュウ酸濃度、並びに、前記エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する成分濃度演算工程と、
を有することを特徴とするエッチング液の成分濃度測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法及び装置は、使用後のエッチング液から金属を回収するものであり、使用中のエッチング液の金属濃度についての検討は行われていなかった。また、NF膜を設けることで、析出する固形粒子の除去を行うことはできるが、エッチング液中の金属濃度は高いままであるので、エッチング液のエッチング性能の改善はみられなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シュウ酸系エッチング液のエッチング液としての性能を略一定に維持・管理し、固体粒子の析出を抑制するエッチング液管理装置、エッチング液管理方法、及び、エッチング液の成分濃度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液を管理するエッチング液管理装置において、エッチング液の導電率値を測定する導電率計と、エッチング液の密度値を測定する密度計と、エッチング液のシュウ酸濃度と導電率値との間の相関関係及び導電率計の測定結果に基づいて、シュウ酸濃度がエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間に相関関係がある濃度範囲内となるように、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間の相関関係及び密度計の測定結果に基づいて、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理される濃度のしきい値以下となるように、エッチング液に補給される補充液の送液を制御する補充液送液制御手段と、を備えたことを特徴とするエッチング液管理装置を提供する。
【0011】
本発明によれば、エッチング液のシュウ酸濃度の管理範囲を含むシュウ酸濃度域において、エッチング液のシュウ酸濃度と導電率とは相関関係を有するから、あらかじめエッチング液のシュウ酸濃度と導電率との間の相関関係を得ておけば、導電率計により測定されたエッチング液の導電率値に基づいて、エッチング液のシュウ酸濃度をエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間に相関関係がある濃度範囲内に制御するために必要な補充液の液量を算出することができる。したがって、この算出された液量の補充液をエッチング液に補給することにより、エッチング液のシュウ酸濃度をエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間に相関関係がある濃度範囲内に制御し、シュウ酸濃度を略一定の値に管理することができる。また、被エッチング膜からエッチング液中にインジウムが溶出する場合には、シュウ酸濃度が所定の濃度範囲内に管理されているエッチング液のインジウム濃度の管理範囲を含むインジウム濃度域において、エッチング液のインジウム濃度と密度とは相関関係を有するから、あらかじめエッチング液のインジウム濃度と密度との間の相関関係を得ておけば、密度計により測定されたエッチング液の密度値に基づいて、エッチング液のインジウム濃度をその管理範囲の濃度上限値(以下、「しきい値」という)以下の濃度に制御するために必要な補充液の液量を算出することができる。したがって、この算出された液量の補充液をエッチング液に補給することにより、エッチング液のインジウム濃度をしきい値以下とすることができる。ゆえにエッチング液中に溶解したインジウムの濃度を飽和させることなく管理できるので、インジウム由来の固形粒子がエッチング液中に析出するのを防止することができる。また、エッチング液のシュウ酸濃度が略一定に管理されるとともに、エッチング液のインジウムの溶解性も維持することができるので、エッチング液のエッチング性能を良好な状態に維持することができる。また、IGZO膜のエッチングのように被エッチング膜からエッチング液中にインジウムだけでなくガリウムや亜鉛が溶出する場合には、同様に、あらかじめエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度や亜鉛濃度と密度との間の相関関係を得ておくことで、密度計により測定されたエッチング液の密度値に基づいて、必要な液量の補充液をエッチング液に補給し、エッチング液のインジウム濃度だけでなく、エッチング液のガリウム濃度や亜鉛濃度をしきい値以下とすることができるので、ガリウム由来又は亜鉛由来の固形粒子の析出を防止し、エッチング液のエッチング性能を良好な状態に維持することができる。
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液を管理するエッチング液管理装置において、エッチング液の導電率値を測定する導電率計と、エッチング液の密度値を測定する密度計と、導電率計により測定された導電率値及び密度計により測定された密度値に基づいて、多変量解析法によりエッチング液のシュウ酸濃度、並びに、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する成分濃度演算手段と、成分濃度演算手段により算出されるエッチング液のシュウ酸濃度が管理される濃度範囲内となるように、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理される濃度のしきい値以下となるように、エッチング液に補給される補充液の送液を制御する補充液送液制御手段と、を備えたことを特徴とするエッチング液管理装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、エッチング液の導電率値及び密度値から、多変量解析法により、エッチング液のシュウ酸濃度、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を高精度に算出することができる。そして、このエッチング液のシュウ酸濃度、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度に基づいて、エッチング液のシュウ酸濃度が管理される濃度範囲内となるように、かつ、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度がしきい値以下となるように、必要な液量の補充液をエッチング液に供給することができる。したがって、エッチング液のシュウ酸濃度を略一定の値に管理することができ、インジウム由来、ガリウム由来又は亜鉛由来の固形粒子がエッチング液中に析出しないようなインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度にエッチング液を管理することができるので、エッチング液のエッチング性能を良好な状態に維持することができる。
【0014】
本発明は、前記目的を達成するために、シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液を管理するエッチング液管理方法において、エッチング液の導電率値を測定する導電率測定工程と、エッチング液のシュウ酸濃度と導電率値との間の相関関係及び導電率測定工程の測定結果に基づいて、シュウ酸濃度がエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間に相関関係がある濃度範囲内となるように、エッチング液に補給される補充液の送液を制御するシュウ酸濃度用補充液送液制御工程と、シュウ酸濃度用補充液送液制御工程によりシュウ酸濃度が前記濃度範囲内に管理されたエッチング液の密度値を測定する密度測定工程と、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間の相関関係及び密度測定工程の測定結果に基づいて、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理される濃度のしきい値以下となるように、エッチング液に補給される補充液の送液を制御する金属濃度用補充液送液制御工程と、を有することを特徴とするエッチング液管理方法を提供する。
【0015】
本発明によれば、エッチング液のシュウ酸濃度の管理範囲を含むシュウ酸濃度域において、エッチング液のシュウ酸濃度と導電率とは相関関係を有するから、あらかじめエッチング液のシュウ酸濃度と導電率との間の相関関係を得ておけば、導電率測定工程により測定されたエッチング液の導電率値に基づいて、エッチング液のシュウ酸濃度をエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間に相関関係がある濃度範囲内に制御するために必要な補充液の液量を算出することができる。したがって、この算出された液量の補充液をエッチング液に補給することにより、エッチング液のシュウ酸濃度をエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との間に相関関係がある濃度範囲内に制御し、シュウ酸濃度を略一定の値に管理とすることができる。また、被エッチング膜からエッチング液中にインジウムが溶出する場合には、シュウ酸濃度が所定の濃度範囲内に管理されているエッチング液のインジウム濃度の管理範囲を含むインジウム濃度域において、エッチング液のインジウム濃度と密度とは相関関係を有するから、あらかじめエッチング液のインジウム濃度と密度との間の相関関係を得ておけば、密度測定工程により測定されたエッチング液の密度値に基づいて、エッチング液のインジウム濃度をしきい値以下の濃度に制御するために必要な補充液の液量を算出することができる。したがって、この算出された液量の補充液をエッチング液に補給することにより、エッチング液のインジウム濃度をしきい値以下とすることができる。ゆえに、エッチング液中に溶解したインジウムの濃度を飽和させることなく管理できるので、インジウム由来の固形粒子がエッチング液中に析出するのを防止することができる。また、エッチング液のシュウ酸濃度が略一定に管理されるとともに、エッチング液のインジウムの溶解性も維持することができるので、エッチング液のエッチング性能を良好な状態に維持することができる。また、IGZO膜のエッチングのように被エッチング膜からエッチング液中にインジウムだけでなくガリウムや亜鉛が溶出する場合には、同様に、あらかじめエッチング液のガリウム濃度や亜鉛濃度と密度との間の相関関係を得ておくことで、密度測定工程により測定されたエッチング液の密度値に基づいて、必要な液量の補充液をエッチング液に補給し、エッチング液のガリウム濃度や亜鉛濃度をしきい値以下とすることができるので、ガリウム由来又は亜鉛由来の固形粒子の析出を防止し、エッチング液のエッチング性能を良好な状態に維持することができる。
【0016】
本発明は、前記目的を達成するために、シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液を管理するエッチング液管理方法において、エッチング液の導電率値を測定する導電率測定工程と、エッチング液の密度値を測定する密度測定工程と、導電率測定工程により測定された導電率値及び密度測定工程により測定された密度値に基づいて、多変量解析法によりエッチング液のシュウ酸濃度、並びに、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する成分濃度演算工程と、成分濃度演算工程により算出されるエッチング液のシュウ酸濃度が管理される濃度範囲内となるように、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理される濃度のしきい値以下となるように、エッチング液に補給される補充液の送液を制御する補充液送液制御工程と、を有することを特徴とするエッチング液管理方法を提供する。
【0017】
本発明によれば、導電率測定工程及び密度測定工程により測定されたエッチング液の導電率値及び密度値から、多変量解析法により、エッチング液のシュウ酸濃度、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を高精度に算出することができる。そして、このエッチング液のシュウ酸濃度、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度に基づいて、エッチング液のシュウ酸濃度が管理される濃度範囲内となるように、かつ、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとの一つの濃度がしきい値以下となるように、必要な液量の補充液を供給することができる。したがって、エッチング液のシュウ酸濃度を略一定の値に管理することができ、インジウム由来、ガリウム由来又は亜鉛由来の固形粒子がエッチング液中に析出しないようなインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度にエッチング液を管理することができるので、エッチング液のエッチング性能を良好な状態に維持することができる。
【0018】
本発明は、前記目的を達成するために、シュウ酸を含むエッチング液であって、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜のエッチングに用いられるエッチング液の導電率値を測定する導電率測定工程と、エッチング液の密度値を測定する密度測定工程と、導電率測定工程により測定された導電率値及び密度測定工程により測定された密度値に基づいて、多変量解析法によりエッチング液のシュウ酸濃度、並びに、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する成分濃度演算工程と、を有することを特徴とするエッチング液の成分濃度測定方法を提供する。
【0019】
本発明によれば、導電率測定工程と密度測定工程により測定されたエッチング液の導電率値と密度値とから、多変量解析法により、エッチング液のシュウ酸濃度、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する成分濃度演算工程を有しているので、エッチング液のシュウ酸濃度、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を高精度に測定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のエッチング液管理装置、エッチング液管理方法、及び、エッチング液の成分濃度測定方法によれば、測定した各成分の濃度値、又は、物性値に基づいて、エッチング液に適切な量の補充液を補給することができるので、エッチング液のシュウ酸濃度を管理される濃度範囲内に、常に略一定の値に管理することができる。また、エッチング液中に溶解したインジウム、ガリウム及び亜鉛といった金属成分の濃度を、常に管理される濃度のしきい値以下に管理することができる。したがって、エッチング液のエッチング性能が低下することを防止でき、エッチング液の液性能が一定化するとともに液寿命が長くなる。また、金属成分に由来する固形粒子の析出を抑制することができ、被エッチング膜に固形粒子が付着し、品質が低下することを抑制することができる。
【0021】
さらに、エッチング液が、常時最適な液性能に自動的に維持されることにより、生産装置のダウンタイムを減少させることができ、生産性の向上を実現することができる。また、エッチング処理の進行に伴う溶解金属の析出によるエッチング残渣の発生を防止することができ、製品歩留まりの向上を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、これらの実施の形態に記載されている構成機器の形状、その相対配置などは、とくに特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定するものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0024】
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態であるエッチング液管理装置を含むエッチング処理機構100の系統図である。
【0025】
本実施形態のエッチング液管理装置は、主として、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む被エッチング膜である金属膜又は金属化合物膜をエッチングするエッチング処理において、エッチング液がシュウ酸を含む水溶液であり、エッチング液のシュウ酸濃度及び溶解金属濃度の管理が重要な場合などに適用されるものである。
図1の系統図には、本発明のエッチング液管理装置と接続され所定の成分濃度に維持管理されるエッチング液が貯留されるエッチング処理槽1を含むエッチング処理部A、エッチング処理槽1に貯留されたエッチング液を循環し撹拌するエッチング液循環部B、各種補充液を貯留する補充液供給缶21〜23と補充液供給管路に取り付けられ開閉制御される流量調節弁25〜28とを含む補充液供給部D、エッチング液のシュウ酸濃度や溶解金属濃度に相関するエッチング液の導電率や密度を測る測定部E、様々な演算や制御を行うコンピューター30、などを備えている。なお、本発明のエッチング液管理装置は、測定部E、コンピューター30、補充液供給部Dのうちの流量調節弁25、26、27、28から構成される。
【0026】
<エッチング処理部A>
エッチング処理部Aは、搬送される基板表面にエッチング液を噴射し、これにより基板表面をエッチングするためのものである。
【0027】
図1に示すように、エッチング処理部Aは、エッチング液が貯留されるエッチング処理槽1、エッチング処理槽1からオーバーフローしたエッチング液を受けるためのオーバーフロー槽2、エッチング処理槽1内のエッチング液の液面を測定する液面レベル計3、エッチング室フード4、エッチング処理槽1上方に配置された基板6を搬送するためのローラーコンベア5、及び、エッチング液スプレー7等を備えている。
【0028】
エッチング処理槽1とエッチング液スプレー7とは、途中に送液ポンプ8及びエッチング液の微細粒子等を除去するためのフィルター9が設けられた循環管路10により接続されている。
【0029】
送液ポンプ8を作動させると、エッチング処理槽1に貯留されたエッチング液は、循環管路10を介してエッチング液スプレー7に供給され、このエッチング液スプレー7から噴射させられる。これにより、ローラーコンベア5により搬送される基板6表面がエッチングされる。なお、基板6の表面は、金属膜又は金属化合物膜とレジスト膜で覆われている。
【0030】
エッチング後のエッチング液は、エッチング処理槽1に落下し再び貯留され、上記と同様、循環管路10を介してエッチング液スプレー7に供給され、このエッチング液スプレー7から噴射させられる。
【0031】
<エッチング液循環部B>
エッチング液循環部Bは、主として、エッチング処理槽1内に貯留されたエッチング液を循環し、攪拌するためのものである。
【0032】
エッチング処理槽1の底部は、途中に循環ポンプ11が設けられた循環管路12によりエッチング処理槽1の側部と接続されている。循環ポンプ11を作動させると、エッチング処理槽1に貯留されたエッチング液は、循環管路12を介して循環する。エッチング液は、循環管路12を介してエッチング処理槽1の側部からエッチング処理槽1に戻され、貯留されたエッチング液を攪拌する。
【0033】
また、合流管路29を介して循環管路12に補充液が流入した場合、この流入した補充液は、循環管路12内において循環するエッチング液と混合されながら、エッチング処理槽1内に供給される。
【0034】
<補充液供給部D>
補充液供給部Dは、エッチング処理槽1内に補充液を供給するためのものである。補充液としては、エッチング原液、エッチング新液、シュウ酸原液、純水及びエッチング再生液がある。これらは必ずしも全て必要というのではなく、エッチング液の組成、濃度変化の程度、設備条件、運転条件、補充液の入手状況などにより、最適な補充液及び供給装置が選択される。
【0035】
補充液供給部Dは、各補充液を貯留するための、エッチング原液供給缶21、エッチング新液供給缶22、シュウ酸原液供給缶23、及び、純水供給用の既設の配管等を備えている。ただし、供給缶21〜23は、一例として図示しているに過ぎず、供給缶の設置数やその内容物である補充液の種類は、前記諸条件等により適宜選択すればよい。
【0036】
各供給缶21〜23から補充液を送る送液配管及び純水供給用の既設の配管は、コンピューター30により開閉制御される流量調節弁25〜28が設けられ、流量調節弁より先で合流管路29に集約されて循環管路12と接続する。なお、本実施形態においては、コンピューター30及び流量調節弁25〜28が補充液送液制御手段に該当する。各供給缶21〜23にはN
2ガス供給用の配管24が接続されており、この配管24から供給されるN
2ガスにより各供給缶21〜23は加圧されている。このため、コンピューター30により流量調節弁25〜28のうちの少なくとも一つを開くように制御すると、その制御された流量調節弁に対応する補充液が送液管路、合流管路29、及び循環管路12を介してエッチング処理槽1内に圧送される。なお、流量調節弁25〜28の開閉制御には、コンピューター30の代わりにシーケンサなどのコントローラを使用することもできる。
【0037】
例えば、コンピューター30により流量調節弁25(エッチング原液補給弁)を開くように制御すると、エッチング原液供給缶21に貯留されているエッチング原液が、送液管路、合流管路29、及び循環管路12を介してエッチング処理槽1に圧送される。同様にコンピューター30により流量調節弁28(純水補給弁)を開くように制御すると、既設配管から純水が送液管路、合流管路29、及び循環管路12を介してエッチング処理槽1内に供給される。
【0038】
各流量調節弁はそれが開時に所定量の液体が流れるように流量調節されているので、コンピューター30が各流量調節弁を開ける時間を制御することにより、必要な補充液が必要量だけ補充される。
【0039】
図1においては、各補充液は、各送液配管及び合流管路29を介して循環管路12に流入し、循環管路12内において循環するエッチング液と混合されながら、エッチング処理槽1内に供給される。補充液の補給の仕方は、これに限定されず、合流管路29を介することなく各送液配管を循環管路12又はエッチング処理槽1に直接接続することで、補充液を補給することも可能である。
【0040】
なお、エッチング処理槽1内に貯留されたエッチング液を排出するための液排出ポンプ20が設けられている。これはエッチング処理槽1内の初期洗浄や液交換の際に使用される。
【0041】
補充液供給部Dでは、以下に記載する測定部Eの導電率計17で測定された導電率値から得られたエッチング液のシュウ酸濃度に基づいて補充液の補給を行う。また、密度計18で測定された密度値から得られたエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度に基づいて補充液の補給を行う。シュウ酸濃度は、得られたエッチング液のシュウ酸濃度の値と、管理されるシュウ酸濃度の値を比較し、シュウ酸濃度が不足していればシュウ酸濃度を高めるように、シュウ酸濃度が過剰であればシュウ酸濃度を低くするように、エッチング原液、エッチング新液、エッチング再生液、シュウ酸原液、水のうち、少なくとも一つを補充液として補給し、シュウ酸濃度を管理される濃度範囲内、ほぼ一定の値に制御する。また、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度は、得られたインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度の値と、管理されるインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のしきい値を比較し、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度がしきい値以上である場合、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度を低くするように、エッチング原液、エッチング新液、エッチング再生液、シュウ酸原液、水のうち、少なくとも一つを補充液として補給し、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度を管理される濃度のしきい値以下に制御する。なお、本発明において「補充液」とは、エッチング液の成分を調整するために用いられる液であり、エッチング原液、エッチング新液、エッチング再生液、シュウ酸原液、水などの液の総称である。補充液は、複数の液体を補給前に混合しても良いし、複数の液体のそれぞれを別々に補給してもよい。
【0042】
また、エッチング液の成分濃度の制御は、シュウ酸濃度、及び、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度を管理値と比較することによる制御に限定されず、導電率計17により常時監視されるエッチング液の導電率値に基づいて得られるシュウ酸濃度の経時変化の積分値や微分値を用いるものでもよく、または、これらを適宜組み合わせた制御とすることもできる。このような制御を実現できる制御装置を導電率計17及び流量調節弁25〜28と連動させることで、エッチング液のシュウ酸濃度に基づいて、エッチング液のシュウ酸濃度を所定範囲内となるように制御することができる。同様に、金属濃度についても、密度計18により常時監視されるエッチング液の密度値に基づいて得られるインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度の経時変化の積分値や微分値を用いるものでもよく、または、これらを適宜組み合わせた制御とすることもできる。このような制御を実現できる制御装置を密度計18及び流量調節弁25〜28と連動させることで、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度に基づいて、エッチング液の金属濃度を管理されるしきい値以下となるように制御することができる。
【0043】
また、上記においては、エッチング液のシュウ酸濃度、及び、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度に基づいて、補充液の調整を行っているが、導電率計17及び密度計18により測定された導電率値及び密度値を、シュウ酸濃度が管理される濃度範囲に相当する導電率値の範囲内、および、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が管理されるしきい値に相当する密度値以下にすることで、シュウ酸濃度、及び、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を制御することもできる。
【0044】
<測定部E>
測定部Eは、サンプリングしたエッチング液のシュウ酸濃度及びエッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度のうち少なくとも一つの濃度を測定するものである。
【0045】
測定部Eは、循環管路10からエッチング液をサンプリングするためのサンプリングポンプ32とサンプリング配管31が接続されており、サンプリングされたエッチング液の導電率値を測定するための導電率計17、密度値を測定するための密度計18、サンプリングされたエッチング液を戻す戻り配管33とを備えている。なお、サンプリング配管31と戻り配管33は、エッチング処理槽1に直接接続してもよい。
【0046】
エッチング液のシュウ酸濃度は、その管理される濃度範囲を含むシュウ酸濃度域において導電率値と相関があるので、あらかじめエッチング液のシュウ酸濃度と導電率値との間の相関関係を求めておき、この相関関係を利用すれば、導電率計17により測定した導電率値よりシュウ酸濃度を得ることができる。また、エッチング液の溶解金属濃度は、シュウ酸濃度が所定の濃度範囲内に管理されているエッチング液の溶解金属濃度の管理範囲を含む溶解金属濃度域において密度値と相関があるので、あらかじめエッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度のうちいずれか一つと密度値との間の相関関係を求めておき、この相関関係を利用すれば、密度計18により測定した密度値よりインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を得ることができる。
【0047】
なお、エッチング液中に複数の金属が溶解する場合、例えば、ITO膜をエッチングした場合インジウム及び錫が溶出し、IZO膜をエッチングした場合インジウム及び亜鉛が溶出し、IGO膜をエッチングした場合インジウム及びガリウムが溶出し、IGZO膜をエッチングした場合インジウムとガリウムと亜鉛が溶出するが、このような場合、エッチング液の密度値は、これらの金属成分のうち、主に原子量の大きいインジウムの濃度に左右される。また、他の金属成分のエッチング液中の溶存比については、被エッチング膜の膜組成により自明であり、ITO膜の場合は、インジウム:錫は、90〜95:10〜5%程度であり、IGZO膜の場合は、インジウム:ガリウム:亜鉛=1:1:1mol程度である。したがって、エッチング液中に複数の金属が溶解する場合、密度値を測定することで、エッチング液中に溶解したインジウムの濃度を求めることができ、他の金属については、膜組成により求めることができる。
【0048】
導電率計17及び密度計18はコンピューター30に接続されており、測定結果などが通信される。
【0049】
エッチング液のシュウ酸濃度と導電率計17により測定される導電率値との間の相関関係は、一義的に対応付けられる関係であればよく、好ましくは多項式、指数関数、対数関数などの簡単な関数で近似的に表現できる関係であり、より好ましくは直線関係である。
【0050】
通常、エッチング液の導電率値はシュウ酸濃度の変化に伴って連続的に滑らかに変化するものであるため、エッチング液のシュウ酸濃度が緩やかな経時変化を示すのに伴い、導電率値も連続的に緩やかな経時変化を示す。そのため、エッチング液のシュウ酸濃度の管理範囲を含むシュウ酸濃度範囲において、エッチング液の導電率値とシュウ酸濃度との間に前述のような相関関係を得ることができる。そして、この相関関係を用いれば、導電率計17が測定したエッチング液の導電率値からエッチング液のシュウ酸濃度を得ることができる。
【0051】
また、エッチング液中に溶解するインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度と密度計18により測定される密度値との間の相関関係は、一義的に対応付けられる関係であればよく、好ましくは多項式、指数関数、対数関数などの簡単な関数で近似的に表現できる関係であり、より好ましくは直線関係である。
【0052】
通常、エッチング液の密度値は、溶解金属濃度の変化に伴って連続的に滑らかに変化するものであるため、エッチング液の溶解金属濃度が緩やかな経時変化を示すのに伴い、密度値も連続的に緩やかな経時変化を示す。そのため、エッチング液中に溶解したインジウムの濃度、溶解したガリウムの濃度又は亜鉛の濃度の管理範囲を含む濃度範囲において、エッチング液の密度値とインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度との間に前述のような相関関係を得ることができる。そして、この相関関係を用いれば、密度計18が測定したエッチング液の密度値からエッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度のうち少なくとも一つの濃度を得ることができる。
【0053】
このようにして得られた溶解金属濃度値は、その管理値と比較することで、溶解金属濃度値が、管理される濃度のしきい値以下となるように、補充液送液制御手段により、補充液の供給量を制御する。
【0054】
溶解金属濃度が管理される値は、溶解金属濃度が管理される濃度範囲の上限以下の溶解金属濃度値とすることが好ましい。また、溶解金属濃度が管理される値は、予め設定しておくことが好ましいが、装置の稼働中に適宜調整してもよい。
【0055】
[シュウ酸濃度及び溶解金属濃度の測定方法]
次に、エッチング液のシュウ酸濃度及び溶解金属濃度を測定する方法の一例を説明する。なお、以下の説明では、酸にシュウ酸を用い、エッチング液のシュウ酸濃度の管理値を3.4%、エッチング液中の溶解金属をインジウムとした例で説明するが、本発明はこれに限定されず、他の材料、他の管理値でも行うことができる。
【0056】
エッチング液としては、金属酸化膜の一種であるITO膜やIZO膜やIGO膜等の透明導電膜やIGZO膜等の酸化物半導体膜をエッチングするために用いられている3.4%シュウ酸水溶液を用い、溶解金属としてインジウムを用い、模擬サンプル液を調製した。この模擬サンプル液の導電率と密度を測定し、シュウ酸濃度及びインジウム濃度との相関を調べた。
【0057】
サンプルの調製は、シュウ酸2水和物と酸化インジウムとを所定量秤量して、純水に溶かして種々の濃度のサンプルを用意した。表1は、調製したシュウ酸濃度(wt%)とインジウム濃度(ppm)、及び、導電率(mS/cm)と密度(g/cm
3)の関係を示す。サンプルは、A系列サンプル10種類(A−1〜A−10)、B系列サンプル10種類(B−1〜B−10)、C系列サンプル14種類(C−1〜C-14)を調製し、それぞれについて、導電率及び密度を測定した。C系列サンプルは、シュウ酸濃度がおよそ3.4%付近に管理されている状況を模したサンプルである。なお、サンプルのシュウ酸濃度及びインジウム濃度は、サンプル調製のために秤量した試薬の秤量値から算出した値である。また、シュウ酸濃度は無水和物として換算した濃度である。測定時の温度は、全サンプル測定温度25℃とした。
【0059】
図2及び
図3は、表1の結果をグラフにしたものである。
図2は、横軸がサンプルのシュウ酸濃度(wt%)、縦軸がサンプルの導電率(mS/cm)である座標系に、全サンプルの導電率値の測定結果をプロットしたグラフである。
図2から明らかなように、インジウムが溶解しているシュウ酸水溶液のシュウ酸濃度と導電率とは直線関係にあることが確認できる。したがって、この関係に基づいて、この直線関係が得られるシュウ酸濃度領域において、シュウ酸水溶液の導電率を検出することにより、シュウ酸水溶液のシュウ酸濃度が得られることが確認できる。
【0060】
図3は、横軸がサンプルのインジウム濃度(ppm)、縦軸がサンプルの密度(g/cm
3)である座標系に、全サンプルの密度の測定結果をプロットしたグラフである。
図3から明らかなように、シュウ酸濃度がほぼ一定の値に管理されている場合を模したC系列サンプルにおいては、インジウム濃度と密度とは直線関係にあることが確認できる。したがって、この関係に基づいて、シュウ酸濃度がほぼ一定に管理されている場合には、シュウ酸水溶液の密度を検出することにより、シュウ酸水溶液に溶解するインジウム濃度が得られることが確認できる。
【0061】
このように、本発明者らは、実験により、エッチング液のシュウ酸濃度とエッチング液の導電率との間には直線関係があること、を見出し、この直線関係に基づけばエッチング液の導電率を検出することによりエッチング液の酸濃度を測定することができることを知見したのである。
【0062】
また、本発明者らは、実験により、シュウ酸濃度がほぼ一定に管理されている場合には、エッチング液の溶解金属濃度とエッチング液の密度との間には直線関係があること、を見出し、この直線関係に基づけばエッチング液の密度を検出することによりエッチング液の溶解金属濃度を測定することができることを知見したのである。
【0063】
シュウ酸濃度の管理幅としては、管理目標値(表1においては3.4%)の±0.1%以内、好ましくは管理目標値の±0.05%以内である。シュウ酸の濃度をほぼ一定の値とすることで、シュウ酸による密度値の変化の影響を抑えることができるので、インジウムの濃度変化をエッチング液の密度変化に相関させることができる。したがって、溶液中に溶解したインジウムの濃度を正確に測定することができる。
【0064】
これらの知見より、測定部Eにおいて、エッチング液の導電率を検出することによりエッチング液のシュウ酸濃度と導電率との間の前記直線関係に基づいてエッチング液のシュウ酸濃度を得ることができる。また、エッチング液の密度を検出することによりエッチング液の溶解金属濃度と密度との間の前記直線関係に基づいてエッチング液の溶解金属濃度を得ることができる。
【0065】
また、
図1においては、導電率計17及び密度計18が、エッチング処理槽1とは別に設けられ、サンプリング配管31を介してエッチング液のサンプリングを行っているが、導電率計17及び密度計18の測定部をエッチング処理槽1内に設けることで、エッチング液の酸濃度及び溶解金属濃度を得ることができる。
【0066】
<コンピューター30>
コンピューター30は、導電率計17、密度計18、流量調節弁25〜28などと電気的に接続されている。コンピューター30は、これらの接続機器に対して動作指令を発して制御するほか、シュウ酸濃度やエッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度の測定データを取得するなど、接続機器との情報の送受信を行う。また、入出力機能、演算機能、情報記憶機能など、多様な機能を有している。
【0067】
図1においては、エッチング液のシュウ酸濃度とエッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度の制御をコンピューター30により行っているが、溶解金属濃度を制御する制御装置とシュウ酸濃度を制御する制御装置とを、別々に設けてもよい。装置の構成をより簡素に省スペースで実現できるという観点から、シュウ酸濃度と溶解金属濃度とを一体の制御装置で維持管理することが好ましいが、より好ましくは、種々の演算を行う演算機能、測定データなどの保持を行う記憶機能、設定値の入力と測定データや演算結果などの種々の情報の表示などを行う入力機能などを一括して処理できる本エッチング液管理装置に内蔵されたコンピューターによりなされることが好ましい。
【0068】
〔動作例〕(エッチング液管理方法)
次に、上記構成のエッチング処理装置の動作について説明する。以下、エッチング液として金属酸化膜の一種であるITO膜、IZO膜、IGO膜等の透明導電膜、IGZO膜等の酸化物半導体膜をエッチングするのに多用されるシュウ酸水溶液を使用した例について説明する。
【0069】
送液ポンプ8を作動させると、エッチング処理槽1に貯留されたエッチング液は、循環管路10を介してエッチング液スプレー7に供給され、このエッチング液スプレー7から噴射させられる。これにより、ローラーコンベア5により搬送される基板6表面がエッチングされる。エッチング液は、所定のエッチング速度を保つために、例えば35℃に維持されている。
【0070】
エッチング後のエッチング液は、エッチング処理槽1に落下し再び貯留され、上記と同様、循環管路10を介してエッチング液スプレー7に供給され、このエッチング液スプレー7から噴射させられる。
【0071】
例えば35℃に維持されたエッチング液がスプレーされると水分が優先的に蒸発する。そのため、エッチング液のシュウ酸濃度が上昇する。シュウ酸はインジウムを溶解してシュウ酸イオンとインジウムイオンになり、消費される。それにもかかわらず、水分の蒸発量の方が大きいため、シュウ酸が濃縮され、エッチング速度が大きくなる。また、エッチングが繰り返し行われることにより、基板表面からエッチングにより溶出したインジウムが、エッチング液中に溶解金属として蓄積される。エッチング液中の溶解金属濃度が上昇すると基板表面からの金属成分の溶出が抑えられるため、エッチング液のエッチング性能の低下を招くこととなる。このように、エッチングを行うことにより、エッチング液の酸濃度の上昇と溶解金属濃度の上昇に起因するエッチング性能が変動する。そこで、エッチング液の変動を防止するべく、下記の制御を行う。
【0072】
まず、測定部Eにおいて、エッチング液のシュウ酸濃度に相関する物性値である導電率値が測定される(導電率測定工程)。エッチング処理に繰り返し使用されるエッチング液は、サンプリング配管31、サンプリングポンプ32により常時連続してサンプリングされ、測定部Eに供給される。サンプリングされたエッチング液は、導電率計17により、エッチング液の導電率値が検出される。
【0073】
導電率計17はコンピューター30の指令を受けて所定間隔で繰り返しエッチング液の導電率値を検出し、測定データをコンピューター30に返す。コンピューター30には予め取得されたエッチング液のシュウ酸濃度と導電率値との相関関係(例えば直線関係)が検量線として保持されており、検出された導電率値からこの相関関係に基づいてエッチング液のシュウ酸濃度が算出される。
【0074】
コンピューター30では、このようにして常時監視されるエッチング液のシュウ酸濃度が、その管理値と比較され、所定の管理値に維持されるように補充液を補給する制御がなされる(シュウ酸濃度用補充液送液制御工程)。
【0075】
制御は、比例制御や積分制御、微分制御など、種々の制御方法を採用し得るが、これらを組み合わせたPID制御とするのが好ましい。コンピューター30には適切なPIDパラメータを設定しておけば、シュウ酸濃度が所定の管理値に適切に維持管理されるよう、制御される。
【0076】
エッチング液のシュウ酸濃度が低下した場合は、コンピューター30が演算した制御指令により、例えばシュウ酸原液を補給するためにシュウ酸原液供給缶23からの配管途中に設けられた流量調節弁27が開き、酸原液が必要量補給される。エッチング液のシュウ酸濃度が上昇した場合は、コンピューター30が演算した制御指令により、例えば純水を補給するために既設の純水配管の途中に設けられた流量調節弁28が開き、純水が必要量補給される。このようにして、エッチング液のシュウ酸濃度は、常時監視されながら、管理値からずれた場合には管理値に戻すように制御され、所定の管理値に維持されるよう、制御される。
【0077】
エッチング液のシュウ酸濃度が低下することがない場合においては、シュウ酸原液供給缶23及び流量調節弁27は不要であり、シュウ酸濃度が上昇することがない場合においては、純水を供給するための配管及び流量調節弁28は不要である。
【0078】
シュウ酸濃度が所定の管理値に維持されている状態で、溶解金属濃度に相関する密度値が測定される(密度測定工程)。なお、上述したように、エッチング液は、常時連続してサンプリングされ所定の管理値となるように補充液が供給されているため、シュウ酸濃度は常に所定の管理値に維持されている。密度計18により密度値の測定においても、エッチング液は、サンプリング配管31、サンプリングポンプ32により常時連続してサンプリングされ、測定部Eに供給され密度計18により、エッチング液の密度値が検出される。
【0079】
密度計18はコンピューター30の指令を受けて所定間隔で繰り返しエッチング液の密度値を検出し、測定データをコンピューター30に返す。コンピューター30には予め取得されたシュウ酸の濃度が管理値に維持されているエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうちいずれか一つの濃度と密度値との相関関係(例えば直線関係)が検量線として保持されており、検出された密度値からこの相関関係に基づいてエッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度が算出される。
【0080】
コンピューター30では、このようにして常時監視されるエッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度が、それらの管理値と比較され、管理される濃度のしきい値以下となるように補充液を補給する制御がなされる(金属濃度用補充液送液制御工程)。
【0081】
エッチング液の溶解金属濃度が上昇した場合は、コンピューター30が演算した制御指令により、例えば、エッチング新液を補給するためにエッチング新液供給缶22からの流量調節弁26が開き、エッチング新液が必要量供給される。このようにして、エッチング液中に溶解した金属の濃度は、常時監視されながら、管理されるしきい値を超えた場合には、しきい値以下になるように制御され、管理される濃度のしきい値以下に維持されるよう、制御される。
【0082】
以上のコンピューター30による制御により、エッチング処理槽1内のエッチング液のシュウ酸濃度及び溶解した金属の濃度を一定範囲に管理することが可能となる。例えば、エッチング処理部Aによるエッチング中にシュウ酸濃度の上昇や溶解金属濃度の上昇が起こったとしても、エッチング処理槽1内のエッチング液のシュウ酸濃度及び溶解金属濃度を一定範囲に管理することが可能となる。
【0083】
[被エッチング膜]
本実施形態に用いられる被エッチング膜としては、インジウム、ガリウム又は亜鉛のうち少なくとも一つを含む膜を用いることができ、例えば、ITO膜、IZO膜、IGO膜、又は、IGZO膜を用いることができる。
【0084】
[エッチング液]
本実施形態に用いられるエッチング液としては、少なくともシュウ酸を含むエッチング液を用いることができる。
【0085】
〔第二実施形態〕
本発明の第二実施形態のエッチング液管理装置は、第一実施形態のエッチング液管理装置の導電率計17が測定した導電率値、密度計18が測定した密度値から多変量解析法(例えば、重回帰分析法)によりエッチング液のシュウ酸濃度及びエッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する演算機能(成分濃度演算手段)を有したものである。第二実施形態のエッチング液管理装置を含むエッチング処理機構は、
図1に示す第一実施形態のエッチング処理機構と同様のものを用いることができる。
【0086】
被エッチング膜から溶出した金属成分などを含むエッチング液は、通常、酸成分、溶解金属成分、界面活性剤等の添加材成分等、多様な成分からなる。そのため、第一実施形態に記載のエッチング液管理装置のように、シュウ酸の濃度が所定の値に維持管理される条件のもとで、エッチング液のインジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のいずれか一つの濃度と密度値との間に、所定の濃度範囲内で線形関係などの相関関係が近似的に得られるとしても、一般的には、測定されるエッチング液の物性値が特定成分の濃度にのみ相関しているのではない。シュウ酸濃度に相関するエッチング液の導電率値は、シュウ酸濃度に強く依存するとしても、より厳密には他の電解質成分からの寄与も受ける。また、エッチング液中に溶解した金属の濃度に相関するエッチング液の密度値は、溶解金属濃度に強く依存するとしても、より厳密には他の成分からの寄与も受ける。したがって、より精密に、エッチング液の成分濃度を管理する、という観点からは、測定されるエッチング液の物性値が、それにより検出しようとしている特定成分の濃度のみならず他成分の濃度にも相関する、として取り扱うことが必要不可欠である。この点、多変量解析法、たとえば重回帰分析法を用いることにより、複数の測定されるエッチング液の物性値からこれに影響を与える各成分の濃度をより正確に算出することができる。
【0087】
本実施形態のエッチング液管理装置は、主として、エッチング処理において、エッチング液のシュウ酸濃度及び溶解金属濃度の測定、制御、管理をより精密に行うことが必要な場合に適用されるものであり、エッチング液のシュウ酸濃度及び溶解金属濃度の演算手法に多変量解析法(例えば、重回帰分析法)を採用したものである。第一実施形態においては、エッチング液のシュウ酸濃度を管理される濃度範囲とし、エッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度のうち少なくとも一つの濃度を測定しているが、本実施形態については、多変量解析法(例えば、重回帰分析法)により、エッチング液の成分濃度を求めているので、導電率値及び密度値から、エッチング液のシュウ酸濃度、及び、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度を求めることができる(成分濃度演算工程)。したがって、第二実施形態においては、これらのシュウ酸濃度、及び、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度のうち少なくとも一つの濃度に基づいて、シュウ酸濃度については、管理される濃度範囲内となるように、インジウム濃度、ガリウム濃度又は亜鉛濃度については、管理される濃度のしきい値以下となるように、補充液の送液を制御する(補充液送液制御工程)。補充液の制御、他の構成については、第一実施例と同様であるのでその説明を省略する。
【0088】
[多成分演算手法]
本発明者は、実験により、シュウ酸水溶液にインジウムが溶存する場合、このシュウ酸水溶液の導電率及び密度の測定値は、シュウ酸濃度、溶解インジウム濃度のうちのそれぞれ一つの成分だけに感応するわけでなく、相互に相関するので、重回帰分析によりさらに正確に濃度が求められることを知見した。
【0089】
また、本発明者は、相関関係による研究、及び、解析の結果、2種類の特性値(インジウムが溶存するシュウ酸水溶液の導電率値及び密度値)から、線形重回帰分析法(MLR−ILS)によりさらに正確なエッチング液(インジウムが溶存するシュウ酸水溶液)の成分濃度(シュウ酸濃度及び溶解インジウム濃度)を演算できることを見出した。
【0090】
ここで、重回帰分析の演算式について例示する。重回帰分析は校正と予測の二段階からなる。n成分系の重回帰分析において、校正標準溶液をm個用意したとする。i番目の溶液中に存在するj番目の成分の濃度をC
ijと表す。ここで、i=1〜m、j=1〜nである。m個の標準溶液について、それぞれ、p個の特性値(たとえば、ある波長における吸光度とか導電率とか密度)A
ik(k=1〜p)を測定する。濃度データと特性値データは、それぞれ、まとめて行列の形(C、A)に表すことができる。
【0092】
これらの行列を関係づける行列を校正行列といい、ここでは記号S(S
kj;k=1〜p、j=1〜n)で表す。
【0094】
既知のCとA(Aの内容は同質の測定値のみならず異質の測定値が混在しても構わない。例えば、導電率と密度。)からSを行列演算により算出するのが校正段階である。この時、p>=n、且つ、m>=npでなければならない。Sの各要素は全て未知数であるから、m>npであることが望ましく、その場合は次のように最小二乗演算を行う。
【0096】
ここで、上付きのTは転置行列を、上付きの−1は逆行列を意味する。
【0097】
濃度未知の試料液についてp個の特性値を測定し、それらをAu(Au
k;k=1〜p)とすれば、それにSを乗じて求めるべき濃度Cu(Cu
j;j=1〜n)を得ることができる。
【0100】
本発明者は、前記表1に記載したインジウムが溶解したシュウ酸水溶液を模擬したサンプル液を用いて、複数の校正標準溶液のうちの一つを未知試料に見立てて残りの標準溶液で校正行列を求め、仮定した未知試料の濃度を算出して既知の濃度(重量調製値)と比べる手法Leave−One−Out法によって、MIL−ILS計算を行った。その計算結果を表2に示す。表2は、導電率と密度の測定値から求めたシュウ酸及びインジウムの濃度である。
【0104】
上記の実験に基づく重回帰分析法を用いた演算により、本発明者は、エッチング液の導電率が所定の範囲(たとえば、55.00±2.5(mS/cm))であれば溶解インジウム濃度として標準偏差24(ppm)程度の精度で、シュウ酸濃度として標準偏差32(ppm)程度の精度で算出できることを知見した。
【0105】
なお、多成分演算手法は、本実施形態においては、コンピューター30の演算機能により実現される。すなわち、コンピューター30に予め多変量解析法(例えば、重回帰分析法)の演算プログラムを組んでおけば、コンピューター30は導電率計17と密度計18に接続されているから、導電率値と密度値を取得して、演算プログラムによりエッチング液のシュウ酸濃度及び溶解金属濃度が算出される。
【0106】
本実施形態におけるエッチング液のシュウ酸濃度及び溶解金属濃度を算出した後の動作は、第一実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0107】
[成分濃度測定方法]
本実施形態においては、エッチング液中の成分濃度を測定する成分濃度測定方法として用いることができる。
【0108】
エッチング液の成分濃度測定方法としては、まず、導電率計17により、エッチング液の導電率値を測定する(導電率測定工程)。また、密度計18により、エッチング液の密度値を測定する(密度測定工程)。導電率計17により測定された導電率値、及び、密度計18により測定された密度値に基づいて、例えば、上記の多成分演算手法により、エッチング液のシュウ酸濃度、及び、エッチング液中に溶解したインジウムの濃度、ガリウムの濃度又は亜鉛の濃度のうち少なくとも一つの濃度を算出する(成分濃度演算工程)。
【0109】
多成分演算手法により、エッチング液中の成分濃度を算出することで、精度よくエッチング液中の成分濃度を求めることができる。