特許第6284456号(P6284456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284456
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】放送受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20180215BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H04B1/10 N
   H04B1/16 G
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-172860(P2014-172860)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-48838(P2016-48838A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2017年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 翔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭人
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−141538(JP,A)
【文献】 特開2003−230077(JP,A)
【文献】 特開2004−187088(JP,A)
【文献】 実開平5−65184(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0142724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定された受信周波数の放送波を受信する放送受信手段と、
水平方向および垂直方向に沿った表示の有効画素数および有効表示期間は変えずに、水平方向に沿った水平ブランキング期間を可変することにより、水平方向の各ラインに対応する水平同期周波数を変更することが可能な液晶表示装置と、
前記放送受信手段において設定された前記受信周波数と、前記水平同期周波数を整数倍した逓倍周波数の差の最小値が所定値以上となるように前記水平同期周波数を設定する水平同期周波数設定手段と、
前記放送波の受信動作に対応する動作画面および操作画面の少なくとも一方を前記液晶表示装置に表示するために必要な映像信号を生成する映像描画処理手段と、
を備えることを特徴とする放送受信装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記水平同期周波数設定手段による前記水平同期周波数の設定に用いられる前記所定値は、利用者の可聴範囲よりも高い値が用いられることを特徴とする放送受信装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記水平同期周波数設定手段は、前記水平同期周波数の設定を、前記放送受信手段によって受信する放送波の周波数が変更される毎に行うことを特徴とする放送受信装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記水平同期周波数設定手段は、前記水平同期周波数の設定を、垂直方向に沿った垂直ブランキング期間内に行うことを特徴とする放送受信装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記放送受信手段によって受信する放送波の周波数毎に、前記水平同期周波数を整数倍した逓倍周波数との差の最小値が所定値以上となる前記水平同期周波数を特定する水平同期周波数設定情報が格納された設定情報格納手段をさらに備え、
前記水平同期周波数設定手段は、前記放送受信手段によって受信する放送波の周波数が変更される毎に、前記設定情報格納手段に格納された前記水平同期周波数設定情報に基づいて前記水平同期周波数の設定を行うことを特徴とする放送受信装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、
前記水平同期周波数設定手段による設定変更の前後で、変更前の前記水平同期周波数と変更後の前記水平同期周波数との差が基準値よりも大きい場合に、前記水平同期周波数の設定変更が複数回に分けて行われることを特徴とする放送受信装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記複数回に分けた設定変更は、前記液晶表示装置による表示内容が更新される毎に行われることを特徴とする放送受信装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、
前記水平同期周波数設定手段による前記水平同期周波数の設定変更の前後でリフレッシュレートが一定になるように、垂直方向に沿った垂直ブランキング期間の長さを調整する垂直ブランキング期間調整手段をさらに備えることを特徴とする放送受信装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、
前記放送受信手段は、FM放送波を受信することを特徴とする放送受信装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記液晶表示装置には、前記映像描画手段によって生成された第1の映像信号と、この第1の映像信号以外の第2の映像信号とが選択的に入力され、
前記水平同期周波数設定手段による水平同期周波数の設定変更は、前記第1の映像信号に対応する表示について行われ、前記第2の映像信号に対応する表示については行われないことを特徴とする放送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD(液晶表示装置)等の表示装置を備えた放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FM受信機に大きなLCDからなる表示部を設けると、LCDの駆動信号によってノイズが発生して出力音声に混入するおそれがあり、何らかの対策が必要になる。例えば、LCDを構成する各画素に対応するドッドクロック(ピクセルクロック)が37.125MHz、水平同期周波数が35.156kHzの場合を考えると、この水平同期周波数の整数倍の高調波成分とFM放送波の受信周波数とが接近したときに、FM受信機の聴取者の可聴範囲に含まれるビート成分が生じて、耳障りなノイズとなる。
【0003】
このような特定の通信周波数(受信周波数)とLCDの動作周波数の高調波成分とが接近することにより生じる不都合を回避する従来技術として、LCD駆動用のドットクロックの周波数を複数用意しておいて、その中から、使用する通信周波数帯が、ドットクロックの周波数の高調波成分と干渉しないように(接近しないように)選択するようにした電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この電子機器では、通信周波数が異なる2種類の無線通信が可能であり、一方の無線通信の通信周波数(例えば、1575.42MHz)を中心とした所定範囲内に、LCD駆動用のドットクロックの周波数(例えば、68.35MHz)の高調波成分が含まれる場合に、このドットクロックを異なる周波数(例えば、68.90MHz)に切り替えることにより、ドットクロックの周波数の高調波成分が無線通信の通信周波数と接近しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−141538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に開示された電子機器では、ドットクロックの周波数を切り替えることにより、その高調波成分が無線通信の通信周波数と干渉しないようにしているが、この手法をFM受信機にそのまま適用して出力音声に含まれるノイズを抑制する場合には以下に示す問題があった。
【0007】
(1)FM受信機の表示部を考えた場合に、ドットクロックを固定して用いる構成が一般的であり、ドットクロックの周波数を切り替えるためには大幅な構成の変更が必要になり、ノイズ低減のためだけにこの周波数の切り替え機構を設けることは現実的ではない。これに対し、引用文献1の電子機器では、例えばノートPCにおいてLCDの解像度を変更して使用することを想定しているため、この解像度変更のためにドットクロックを切り替える複雑な機構が予め備わっている。
【0008】
(2)特許文献1では、ノートPCを機能したときにドットクロックの周波数の切り替えを行っており、その後この切り替えられた周波数を維持してノートPCを使用すればよいが、FM受信機の場合には、動作途中で受信周波数が利用者の指示に応じて変更されるため、その都度ドットクロックの周波数を切り替えると表示のちらつき等が発生して、表示品質が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、出力音声に含まれるLCDに起因するノイズの発生を、大幅な構成の変更を行うことなく防止することが可能であり、受信周波数切替時における表示のちらつき発生による表示品質の低下を抑制することができる放送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の放送受信装置は、設定された受信周波数の放送波を受信する放送受信手段と、水平方向および垂直方向に沿った表示の有効画素数および有効表示期間は変えずに、水平方向に沿った水平ブランキング期間を可変することにより、水平方向の各ラインに対応する水平同期周波数を変更することが可能な液晶表示装置と、放送受信手段において設定された受信周波数と水平同期周波数を整数倍した逓倍周波数の差の最小値が所定値以上となるように水平同期周波数を設定する水平同期周波数設定手段と、放送波の受信動作に対応する動作画面および操作画面の少なくとも一方を液晶表示装置に表示するために必要な映像信号を生成する映像描画処理手段とを備えている。特に、上述した水平同期周波数設定手段による水平同期周波数の設定に用いられる所定値は、利用者の可聴範囲よりも高い値が用いられることが望ましい。
【0011】
これにより、水平同期周波数の整数倍の周波数とFM放送波の受信周波数とが接近することによる利用者の可聴範囲に含まれるビートノイズの発生を、ドットクロックの周波数を変更する場合のような大幅な構成の変更を伴うことなく、確実に防止することができる。
【0012】
また、上述した水平同期周波数設定手段は、水平同期周波数の設定を、放送受信手段によって受信する放送波の周波数が変更される毎に行うことが望ましい。これにより、FM放送の受信周波数が切り替えられた場合であっても、すべての受信周波数についてビートノイズの発生を防止することができる。
【0013】
また、上述した水平同期周波数設定手段は、水平同期周波数の設定を、垂直方向に沿った垂直ブランキング期間内に行うことが望ましい。これにより、水平同期周波数の変更に伴う画面のちらつきを防止することができる。
【0014】
また、上述した放送受信手段によって受信する放送波の周波数毎に、水平同期周波数を整数倍した逓倍周波数との差の最小値が所定値以上となる水平同期周波数を特定する水平同期周波数設定情報が格納された設定情報格納手段をさらに備え、水平同期周波数設定手段は、放送受信手段によって受信する放送波の周波数が変更される毎に、設定情報格納手段に格納された水平同期周波数設定情報に基づいて水平同期周波数の設定を行うことが望ましい。これにより、FM放送波の受信周波数を変更した際に、変更後の受信周波数に対応する水平同期周波数の設定処理を簡略化することができ、受信周波数変更時のビートノイズの発生を最小限に抑えることができる。
【0015】
また、上述した水平同期周波数設定手段による設定変更の前後で、変更前の水平同期周波数と変更後の水平同期周波数との差が基準値よりも大きい場合に、水平同期周波数の設定変更が複数回に分けて行われることが望ましい。これにより、受信周波数変更に伴って水平同期周波数を大幅に変更する場合であっても、急激な水平同期周波数の変更を抑制することができ、表示に違和感が生じることを防止することができる。
【0016】
また、上述した複数回に分けた設定変更は、液晶表示装置による表示内容が更新される毎に行われることが望ましい。これにより、複数回に分けて水平同期周波数を変更する場合であっても、変更の都度画面にちらつきが生じることを防止することができる。
【0017】
また、上述した水平同期周波数設定手段による水平同期周波数の設定変更の前後でリフレッシュレートが一定になるように、垂直方向に沿った垂直ブランキング期間の長さを調整する垂直ブランキング期間調整手段をさらに備えることが望ましい。これにより、水平同期周波数を変更した際の影響を最小限に抑えることができる。
【0018】
また、上述した放送受信手段は、FM放送波を受信することが望ましい。これにより、FM放送波受信時に液晶表示装置による表示動作に伴って発生するビートノイズの発生を確実に防止することができる。
【0019】
また、上述した液晶表示装置には、映像描画手段によって生成された第1の映像信号と、この第1の映像信号以外の第2の映像信号とが選択的に入力され、水平同期周波数設定手段による水平同期周波数の設定変更は、第1の映像信号に対応する表示について行われ、第2の映像信号に対応する表示については行われないことが望ましい。これにより、必要時(FM放送の音声出力時)のみについて水平同期周波数を可変する対策を行い、それ以外についてはこの対策が行われないため、水平同期周波数を可変することによる影響(違和感の発生等)を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態の車載装置の構成を示す図である。
図2】LCDユニットの有効表示領域(期間)と水平ブランキング期間および垂直ブランキング期間を示す図である。
図3】フラッシュメモリに格納された対応テーブルを示す図である。
図4】FM放送の受信周波数を切り替える際に水平同期周波数を可変設定する動作手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の放送受信装置を適用した一実施形態の車載装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態の車載装置の構成を示す図である。図1に示すように、車載装置1は、ナビゲーション処理部10、AMラジオチューナ14、FMラジオチューナ16、AV処理部18、映像描画処理部20、LCDユニット22、タッチパネル30、タッチパネル制御部32、操作部34、入力処理部36、デジタル−アナログ変換器(D/A)40、スピーカ42、制御部50、フラッシュメモリ60を備えている。
【0022】
ナビゲーション処理部10は、自車位置を検出するGPS装置12とともに用いられ、地図データを用いて車載装置1が搭載された車両の走行を案内するナビゲーション動作を行う。AMラジオチューナ14は、AM放送の番組を受信し、番組内容に対応する音声をを再生する処理を行う。FMラジオチューナ16は、FM放送の番組を受信し、番組内容に対応する音声をを再生する処理を行う。AV処理部18は、圧縮されてハードディスク装置や半導体メモリ等(図示せず)に記憶されている音楽データや映像データを読み出して再生する処理を行う。
【0023】
映像描画処理部20は、ナビゲーション処理部10、AMラジオチューナ14、FMラジオチューナ16、AV処理部18のそれぞれの動作に対応する動作画面と操作画面の少なくとも一方を表示する映像信号を生成してLCDユニット22にこれらの画面を表示する。この映像信号には、LCD描画用のドットクロック(DotCLK、水平方向の各画素の表示周期に対応する周波数を有する)と、RGB形式の映像データ(DATA)と、水平同期信号と垂直同期信号の合成波としてのデータイネーブル信号(EN)とが含まれている。
【0024】
LCDユニット22は、運転席と助手席の中央前方に配置されており、例えば、TFT(Thin Film Transistor)パネルとこれを駆動するドライバを含んで構成されている。このドライバは、水平方向(X方向)に並んだ各画素に対応するデータ線に駆動信号を供給するXドライバと、Y方向(垂直方向)に並んだ各画素に対応するデータ線に駆動信号を供給するYドライバと、映像描画処理部20から入力される映像信号(DotCLK、DATA、EN)に基づいてXドライバとYドライバの動作に必要な信号を生成するタイミングコントローラとを含んでいる。一例として、本実施形態では、水平方向が800画素で垂直方向が480画素の有効表示領域(解像度)を有するLCDユニット22が用いられる。
【0025】
また、本実施形態では、LCDユニット22は、水平方向および垂直方向に沿った表示の有効画素数(800画素×480画素)および有効表示期間は変えずに、水平方向に沿った水平ブランキング期間を可変することにより、水平方向の各ラインに対応する水平同期周波数を変更することができる。
【0026】
タッチパネル30は、LCDユニット22の表示画面の表面に配置されている。タッチパネル制御部32は、タッチパネル30を用いて位置検出を行うために必要な制御を行う。タッチパネル30とタッチパネル制御部32によって、例えば静電容量方式で位置検出を行う位置検出装置が構成されている。LCDユニット22に各種の操作画面が表示された時点で、この操作画面の一部を利用者が指などで直接指し示すことにより、操作画面に含まれるいずれかの表示項目を選択することができるようになっており、このような操作画面を用いた操作を可能とするために、指し示された指などの位置を検出するタッチパネル30が備わっている。
【0027】
操作部34は、車載装置1に対する利用者による操作を受け付けるためのものであり、LCDユニット22の周囲に配置された各種の操作キー、操作スイッチ、操作つまみ等を含んで構成されている。入力処理部36は、操作部34を用いた操作内容やタッチパネル制御部32による検出内容を監視しており、利用者の操作内容を決定する。
【0028】
デジタル−アナログ変換器40は、ナビゲーション処理部10、AMラジオチューナ14、FMラジオチューナ16、AV処理部18のそれぞれの処理によって生成される音声データや音楽データをアナログの音声信号に変換してスピーカ42から出力する。なお、実際には、デジタル−アナログ変換器40とスピーカ42の間には信号を増幅する増幅器が接続されているが、図1ではこの増幅器は省略されている。また、デジタル−アナログ変換器40とスピーカ42との組合せは再生チャンネル数分備わっているが、図1では一組のみが図示されている。
【0029】
制御部50は、車載装置1の全体を制御するためのものであり、ROMやRAMなどに格納された所定のプログラムをCPUで実行することにより実現される。
【0030】
一般に、FMラジオチューナ16を用いてFM放送波を受信してその放送内容に対応する音声を出力中に、LCDユニット22の水平同期周波数を整数倍した逓倍周波数とFM放送波の受信周波数と差が所定値未満(利用者の可聴範囲の上限値(例えば17kHz)未満)となる場合には、この差に相当する周波数のノイズ(ビートノイズ)が出力中の音声に混入する。
【0031】
本実施形態の車載装置1では、このビートノイズの混入を排除するために、FM放送受信時に、受信周波数毎にビートノイズが混入しないように、LCDユニット22の水平同期周波数を可変設定している。制御部50は、FM放送波の受信制御やLCDユニット22の水平同期周波数の可変設定を行うために、FMラジオ制御部52、水平同期周波数設定部54、垂直ブランキング期間調整部56を有する。
【0032】
FMラジオ制御部52は、FMラジオチューナ16によるFM放送波の受信動作を制御する。この制御には、FM放送局の切り替え(受信周波数変更)や、この切り替えのための操作画面の生成などが含まれる。なお、FM放送局を切り替える方法は、あらかじめ複数の放送局のそれぞれを複数のプリセットキーに割り付けておいていずれかのプリセットが押下されたときにこのプリセットキーに対応する放送局に切り替える場合や、受信周波数のアップ/ダウンキーが長押しされたときに放送波が検出されるまで受信周波数をアップ/ダウン(シーク動作)させる場合やアップ/ダウンキーが短い間隔で複数回押下されたときに受信周波数を0.1MHz間隔でアップ/ダウンさせる場合(手動切替動作)などが考えられる。
【0033】
水平同期周波数設定部54は、FMラジオ制御部52によって設定されたFM放送波の受信周波数と、LCDユニット22の水平同期周波数を整数倍した逓倍周波数の差の最小値が所定値(利用者の可聴範囲よりも高い値)以上となるようにLCDユニット22の水平同期周波数を設定(変更)する。この水平同期周波数の設定に用いられる所定値は、利用者の可聴範囲よりも高い値が用いられる。例えば、利用者の可聴範囲の上限値が約15kHzであるとし、その値よりも高い17kHzが所定値として用いられる。
【0034】
また、水平同期周波数設定部54による水平同期周波数の設定は、水平ブランキング期間の長さを可変することにより、FM放送波の受信周波数が変更される毎に行う。特に、この水平同期周波数の設定は、LCDユニット22の垂直ブランキング期間内に行われる。
【0035】
なお、本実施形態では、FM放送波の受信周波数毎に、水平同期周波数を整数倍した逓倍周波数との差の最小値が所定値以上となる水平同期周波数を特定する水平同期周波数設定情報が対応テーブルとして格納されたフラッシュメモリ60が備わっている。
【0036】
水平同期周波数設定部54は、FM放送波の受信周波数が変更される毎に、フラッシュメモリ60に格納された対応テーブルを用いて、変更後の受信周波数に対応する水平同期周波数の設定を行う。
【0037】
図2は、LCDユニット22の有効表示領域(期間)と水平ブランキング期間および垂直ブランキング期間を示す図である。図2に示すように、本実施形態のLCDユニット22は、800画素×480画素の有効表示領域を有しており、各画素に対応するドットクロックの周波数は固定(例えば、37.125MHz)となっている。すなわち、800画素×480画素の表示に要する時間(有効表示期間)は一定であって、水平ブランキング期間の長さを調整することにより、水平同期周波数の可変設定が行われる。
【0038】
具体的には、水平方向に沿った各ラインには、88画素(dot)分の固定水平ブランキング期間、800画素の有効表示期間、22〜250画素分の可変水平ブランキング期間が含まれる。すなわち、固定水平ブランキング期間と可変水平ブランキング期間を含めた各ラインの画素数は、910〜1138画素であり、1画素分の周波数であるドットクロックの周波数が37.125MHzの場合には、水平同期周波数の可変範囲は32.623〜40.797kHzとなる。
【0039】
また、垂直方向に沿って、32ライン分の固定垂直ブランキング期間、480ラインの有効表示期間、13ライン分の固定垂直ブランキング期間が含まれる。上述した水平同期周波数設定部54による水平同期周波数の可変設定は、32ライン分の固定垂直ブランキング期間内(あるいは、13ライン分の垂直ブランキング期間内でもよい)に行われる。
【0040】
図3は、フラッシュメモリ60に格納された対応テーブルを示す図である。図3に示すように、対応テーブルには、受信周波数毎に、設定値、水平同期周波数(kHz)、最小偏差(kHz)が含まれている。設定値は、図2に示す固定水平ブランキング期間、有効表示期間、可変水平ブランキング期間を合計した水平1ラインに含まれる画素数(ドットクロック数)である。水平同期周波数は、この設定値に対応する水平同期周波数を示す。また、最小偏差は、この水平同期周波数を整数倍した複数の逓倍周波数と同期周波数との差の最小値を示す。なお、実際には、受信周波数に対応する設定値がわかればよい。図3では、説明のために各設定値に対応する水平同期周波数と最小偏差を含めたが、実際の対応テーブルにはこれらは含まれていない。
【0041】
垂直ブランキング期間調整部56は、水平同期周波数設定部54による水平ブランキング期間の設定が変更されたときに、変更の前後でリフレッシュレートが一定になるように、垂直方向に沿った垂直ブランキング期間の長さを調整する。上述したように、水平方向の各ラインに画素数を可変し、かつ、垂直方向のライン数(525ライン)を固定すると、1画面の表示に要する時間が一定せずに、水平同期周波数の変更に伴ってリフレッシュレート(単位時間あたりの表示フレーム数)が変化してしまう。垂直ブランキング期間調整部56は、垂直ブランキング期間の長さを調整して、1画面の表示に要する時間がほぼ一定になるようにする。なお、この垂直ブランキング期間調整部56による動作は任意選択であって、実施の要否は利用者によって指定したり、製品開発者あるいは販売メーカーによって指定したりすることができる。また、この任意選択の動作が不要な場合には、垂直ブランキング期間調整部56を削除するようにしてもよい。
【0042】
上述したFMラジオチューナ16、FMラジオ制御部52が放送受信手段に、LCDユニット22が液晶表示装置に、水平同期周波数設定部54が水平同期周波数設定手段に、映像描画処理部20が映像描画処理手段に、フラッシュメモリ60が設定情報格納手段に、垂直ブランキング期間調整部56が垂直ブランキング期間調整手段にそれぞれ対応する。
【0043】
本実施形態の車載装置1はこのような構成を有しており、次にFM放送の受信周波数を切り替える動作を説明する。図4は、FM放送の受信周波数を切り替える際に水平同期周波数を可変設定する動作手順を示す流れ図である。
【0044】
車載装置1に電源が投入されて動作を開始すると、水平同期周波数設定部54は、FM放送を受信するか否かを判定する(ステップ100)。受信しない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、FM放送を受信する場合(利用者によってFM放送の受信が指示された場合や、前回車載装置1の電源を切断した時点でFM放送を受信しており今回の電源投入時にその状態を継続した場合)には、ステップ100の判定において肯定判断が行われる。
【0045】
次に、水平同期周波数設定部54は、FM放送の受信周波数が変更されたか否かを判定する(ステップ102)。受信周波数が変更されない場合には否定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、受信周波数が変更された場合(利用者によって変更指示が行われた場合)にはステップ102の判定において肯定判断が行われる。
【0046】
次に、水平同期周波数設定部54は、受信周波数変更中か否かを判定する(ステップ104)。例えば、アップ/ダウンキーを用いたシーク動作や手動切替動作を実施中の場合には肯定判断が行われ、この判定が繰り返される。また、受信周波数の変更が終了した場合にはステップ104の判定において否定判断が行われ、FMラジオ制御部52は、FM放送の受信周波数を確定する(ステップ106)。
【0047】
次に、水平同期周波数設定部54は、LCDユニット22で表示中の内容がFM放送波に対応する映像信号(第1の映像信号)に対応するものか否かを判定する(ステップ108)。例えば、受信中のFM放送波の周波数や受信周波数の切り替えなどを指示するための操作画面や動作画面が表示されている場合には肯定判断が行われる。
【0048】
次に、水平同期周波数設定部54は、フラッシュメモリ60に格納された対応テーブルを参照して、変更後の受信周波数に対応する設定値(水平1ラインに対応する画素数(ドットクロック数))を読み出し(ステップ110)、現在の受信周波数に対応する1ラインの画素数(ドットクロック数)と変更後の受信周波数に対応する1ラインの画素数との差を算出する(ステップ112)。
【0049】
次に、水平同期周波数設定部54は、ステップ112で算出した画素数の差が基準値(例えば10)以下か否かを判定する(ステップ114)。基準値以下の場合には肯定判断が行われる。次に、水平同期周波数設定部54は、ステップ110において読み出した変更後の受信周波数に対応する設定値に基づいて水平同期周波数(1ラインを構成する画素数およびドットクロック数)を変更する(ステップ116)。この変更は、垂直ブランキング期間にて行われる。
【0050】
一方、ステップ112で算出した画素数が基準値を超える場合にはステップ114の判定において否定判断が行われる。この場合には、水平同期周波数設定部54は、現在の受信周波数に対応する1ラインの画素数を、受信周波数変更後の1ラインの画素数に向けて10画素分変更する(ステップ118)。この変更は、LCDユニット22による表示内容が更新される毎(表示フレームが切り替わる毎)であって垂直ブランキング期間にて行われる。その後、ステップ114に戻って、画素数の差と基準値との比較判定動作が行われる。
【0051】
このようにして水平同期周波数(1ラインを構成する画素数)の変更が行われた後、あるいは、FM放送波に対応する第1の映像信号以外の映像信号(第2の映像信号)についてLCDユニット22による表示を行う場合であってステップ108の判定において否定判断が行われた後、水平同期周波数設定部54は、FM放送を受信中か否かを判定する(ステップ120)。受信中の場合には肯定判断が行われ、ステップ102に戻って受信周波数変更の有無が判定される。また、FM放送の受信が終了した場合(例えば、利用者によって、FM放送聴取の終了が指示された場合や、ナビゲーション動作やAM放送受信等の他の動作への切り替えが指示された場合)にはステップ120の判定において否定判断が行われる。この場合には、水平同期周波数設定部54は、水平同期周波数を初期値(例えば35.156kHz)に戻した後(ステップ122)、水平同期周波数の可変設定に関する一連の動作を終了する。
【0052】
このように、本実施形態の車載装置1では、水平同期周波数の整数倍の周波数とFM放送波の受信周波数とが接近することによる利用者の可聴範囲に含まれるビートノイズの発生を、ドットクロックの周波数を変更する場合のような大幅な構成の変更を伴うことなく、確実に防止することができる。
【0053】
また、水平同期周波数の設定を、FM放送波の受信周波数が変更される毎に行うことにより、変更後のすべての受信周波数についてビートノイズの発生を防止することができる。また、水平同期周波数の設定を垂直ブランキング期間内に行うことにより、水平同期周波数の変更に伴う画面のちらつきを防止することができる。
【0054】
また、FM放送波の受信周波数毎に、水平同期周波数を整数倍した逓倍周波数との差の最小値が所定値以上となる水平同期周波数を特定する水平同期周波数設定情報が対応テーブルの形式で格納されたフラッシュメモリ60が備わっており、FM放送波の受信周波数が変更される毎に、この対応テーブルに基づいて水平同期周波数の設定が行われる。これにより、FM放送波の受信周波数を変更した際に、変更後の受信周波数に対応する水平同期周波数の設定処理を簡略化することができ、受信周波数変更時のビートノイズの発生を最小限に抑えることができる。
【0055】
また、上述した水平同期周波数の設定変更の前後で、変更前の水平同期周波数と変更後の水平同期周波数との差が基準値よりも大きい場合(図4に示した例では、それぞれの水平1ラインに含まれる画素数(ドットクロック数)の差が10を超えた場合)に、水平同期周波数の設定変更が複数回に分けて行われる。これにより、受信周波数変更に伴って水平同期周波数を大幅に変更する場合であっても、急激な水平同期周波数の変更を抑制することができ、表示に違和感が生じることを防止することができる。特に、このような複数回に分けた設定変更は、液晶表示装置による表示内容が更新される毎(垂直ブランキング期間内)に行われる。これにより、複数回に分けて水平同期周波数を変更する場合であっても、変更の都度画面にちらつきが生じることを防止することができる。
【0056】
また、水平同期周波数の設定変更の前後でリフレッシュレートが一定になるように、垂直方向に沿った垂直ブランキング期間の長さを調整することにより(任意選択である垂直ブランキング期間調整部56による調整動作を有効にした場合)、水平同期周波数を変更した際の影響を最小限に抑えることができる。
【0057】
また、必要時(FM放送の音声出力時)のみについて水平同期周波数を可変する対策を行い、それ以外についてはこの対策が行われないため、水平同期周波数を可変することによる影響(違和感の発生等)を最小限に抑えることができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、FM放送波受信時の音声出力に含まれるLCDユニット22の水平同期周波数に起因するビートノイズの発生を防止するようにしたが、AM放送波受信時などのFM放送波以外の放送波受信時に発生するビートノイズの発生についても本発明を適用することができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、水平同期周波数設定情報(対応テーブル)をフラッシュメモリ60に格納したが、その他の半導体メモリやハードディスクなどを用いて同様の情報を格納するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
上述したように、本発明によれば、水平同期周波数の整数倍の周波数とFM放送波の受信周波数とが接近することによる利用者の可聴範囲に含まれるビートノイズの発生を、ドットクロックの周波数を変更する場合のような大幅な構成の変更を伴うことなく、確実に防止することができる。
【0061】
また、上述した実施形態ではFM放送受信時であってその操作画面や動作画面を表示している場合に本発明を適用したが、任意選択である垂直ブランキング期間調整部56による調整動作を有効にした場合には、リフレッシュレートが一定に維持されるため、FM放送受信時にその操作画面や動作画面以外の映像を表示する場合についても本発明を適用することができる。例えば、ナビゲーション動作中に自車位置周辺の地図表示を行いながらFM放送の音声を聴取するような場合であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車載装置
14 AMラジオチューナ
20 映像描画処理部
22 LCDユニット
30 タッチパネル
32 タッチパネル制御部
50 制御部
52 FMラジオ制御部
54 水平同期周波数設定部
56 垂直ブランキング期間調整部
60 フラッシュメモリ
図1
図2
図3
図4