【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人情報通信研究機構、「革新的光ファイバの実用化に向けた研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1及び第2のモードの光が多重された、入射した信号光を、当該入射した信号光に含まれる直交する偏光成分のうちでそれぞれ異なる偏光成分を含む第1及び第2のビームに分割する分割手段と、
前記第1及び第2のビームのそれぞれについて、異なる2つの光路を伝搬する、第1の偏光成分を含むビームと前記第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分を含むビームとに分割し、前記第1の偏光成分を含むビームの光路上で、前記第1の偏光成分を含むビームについての光の空間分布を予め定められた反転面に対して反転させた後、前記第1及び第2の偏光成分をそれぞれ含む、前記2つの光路をそれぞれ伝搬した2つのビームを合波することによって当該2つのビームを干渉させる、透過型の光学素子で構成された干渉手段であって、当該干渉により、前記干渉手段から出力する前記第1及び第2のビームのそれぞれにおいて、各ビームに含まれる直交する2つの偏光成分に対して前記第1及び第2のモードの光を分離する前記干渉手段と、
前記干渉手段から出力された前記第1及び第2のビームをそれぞれ、前記2つの偏光成分に分割し、前記第1及び第2のビーム間で、同一のモードの光に対応する偏光成分をそれぞれ合波することによって、前記第1のモードの信号光と前記第2のモードの信号光とを出力する合波手段と、を備え、
前記干渉手段は、前記第1及び第2のビームのそれぞれから分割される、前記第1の偏光成分を含むビームの光路上に配置され、当該ビームが透過する際に当該ビームについての光の空間分布を前記予め定められた反転面に対して反転させる像反転機構を備え、
前記第1のモードは、前記空間分布の反転により位相分布が変化しないモードであり、
前記第2のモードは、前記空間分布の反転により位相分布が反転するモードである、
ことを特徴とするモード分離装置。
前記空間分布の反転に用いられる反転面は、前記第1のモードの光の空間分布を当該反転面に対して反転させた場合に光の位相分布が変化せず、かつ、前記第2のモードの光の空間分布を当該反転面に対して反転させた場合に光の位相分布が反転するように定められる
ことを特徴とする請求項1に記載のモード分離装置。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C. Koebele, M. Salsi, L. Milord, R. Ryf, C. Bolle, P. Sillard, S. Bigo, and G. Charlet,"40km transmission of five mode division multiplexed data streams at 100Gb/s with low MIMO-DSP complexity", ECOC2011, Th.13.C.3, (2011).
【非特許文献2】A. Okamoto, K. Morita, Y. Wakayama, J. Tanaka, and K. Sato,"Mode division multiplex communication technique based on dynamic volume hologram and phase conjugation,"Photonics in Europe 2010, proc. Vol.7716, (2010).
【非特許文献3】B. E. A. Saleh、M. C. Teich、「基本 光工学1」、森北出版、2006年6月
【非特許文献4】神谷武志,多田邦雄 共訳「光エレクトロニクスの基礎」丸善 p11〜p12、1988年12月
【非特許文献5】「図解 光デバイス辞典」オプトロニクス社 p79、1996年7月
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0013】
<比較例>
まず、後述する実施形態に対する比較例について説明する。本比較例では、マッハツェンダ干渉計(例えば、非特許文献3を参照。)をモードの多重及び分離に利用することを特徴としている。具体的には、マッハツェンダ干渉計における2つの光路のうちの一方の光路に対して、伝搬する光の空間分布を予め定められた軸(反転面)に対して反転させる機能(以下、「像反転機能」とも称する。)を付加する。これにより、マッハツェンダ干渉計に入力(入射)される光に対して、原理的に損失を生じさせることなくモードの多重及び分離を行うことが可能になる。
【0014】
ここで、
図2を参照して、比較例及び後述する実施形態の前提となる、マッハツェンダ干渉計の動作原理について説明する。
図2に示すように、マッハツェンダ干渉計20では、入力ポートから入力され、ビームスプリッタ(BS)1に入射した光は、透過光と反射光に分割され、2つの光路(光路1及び光路2)をそれぞれ伝搬する。更に、光路1及び2をそれぞれ伝搬した2つの光は、BS2で再び合波されて干渉する。
【0015】
マッハツェンダ干渉計20では、BS2で合波される際の2つの光の位相差に依存して、干渉の効果により出力ポートA及びBから出射される光のパワーが変化する。ここで、光路1及び2をそれぞれ伝搬した2つの光が出力ポートAから出射する際の2つの光の位相差が0の場合、出力ポートAでは、2つの光が同位相となって強め合う。この場合、光路1及び2をそれぞれ伝搬した2つの光が出力ポートBから出射する際の2つの光の位相差はπとなるため、出力ポートBでは、2つの光が逆位相となって弱め合う(打ち消し合う)。その結果、原理的には出力ポートAのみから光が出射し、出力ポートBからは光は出射しない(即ち、出力ポートBから出射する光の強度は0となる)。
【0016】
一方、光路1及び2をそれぞれ伝搬した2つの光が出力ポートAから出射する際の2つの光の位相差がπの場合、出力ポートAでは、2つの光が逆位相となって弱め合う(打ち消し合う)。この場合、光路1及び2をそれぞれ伝搬した2つの光が出力ポートBから出射する際の2つの光の位相差は0となるため、出力ポートBでは、2つの光が同位相となって強め合う。その結果、原理的には出力ポートBのみから光が出射し、出力ポートAからは光は出射しない(即ち、出力ポートAから出射する光の強度は0となる)。
【0017】
上述のマッハツェンダ干渉計の特性を利用することで、モードの多重及び分離を行うことが可能である。具体的には、マッハツェンダ干渉計に2つのモードの光を入力した場合に、一方のモード(第1のモード)については、光路1及び2(第1及び第2の光路)をそれぞれ伝搬した2つの光が出力ポートAから出射する際の2つの光の位相差は0となるようにする。他方のモード(第2のモード)については、光路1及び2をそれぞれ伝搬した2つの光が出力ポートAから出射する際の2つの光の位相差はπとなるようにする。その結果、第1のモードの光は出力ポートAからのみ出射し、第2のモードの光は出力ポートBからのみ出射することになり、原理的に損失を生じさせることなくモードの分離を実現できる。
【0018】
本比較例では、マッハツェンダ干渉計をモード分離装置として機能させるために、
図3(A)に示すように、マッハツェンダ干渉計の光路2に対して像反転機能を付加する。更に、第1のモードとして、像反転機能により光の空間分布が反転した場合に位相分布が変化しないモードを選択し、第2のモードとして、像反転機能により空間分布が反転した場合に位相分布が反転するモードを選択する。これにより、第1のモードについては、光路1及び2からの2つの光が出力ポートAから出射する際の位相差を0とする一方で、第2のモードについては、光路1及び2からの2つの光が出力ポートAから出射する際の位相差をπとすることを実現できる。
【0019】
また、
図3(B)に示すように、マッハツェンダ干渉計をモード分離装置としても機能させる場合と同様の構成で、マッハツェンダ干渉計をモード多重装置としても機能させることが可能である。この場合、BS1に対して光路1の方向へ、上述の第1のモードの光を入射させ、BS1に対して光路2の方向へ、上述の第2のモードの光を入射させればよい。その結果、光路2からBS2を透過する方向の出力ポートに、これら第1及び第2のモードの光が多重された状態で出射する。
【0020】
図3(A)及び(B)に示す像反転機能は、例えば、光路2を伝搬する光を順に反射させる複数のミラーを光路2に設け、光路1及び2に設けられるミラーと、BS1及びBS2とによる光の反射回数を制御することによって、像反転機能を実現できる。具体的には、BS1に入射した光が出力ポートAまたはBから出力されるまでの、BS1及びBS2とミラーとによる光路1における反射回数と、BS1及びBS2とミラーとによる光路2における反射回数との差分が奇数となるようにすればよい。
【0021】
しかし、上述の比較例のような構成では、2光路(光路1及び光路2)上に配置される、BSやミラーといった反射型の光学素子の位置ずれが生じると、BS1とBS2との間の光路長が変化するため、環境負荷や装置筐体の歪みなどにより2光路間の光路差(位相差)が変動する問題が起こりうる。このため、実システムへ適用するためには、2光路の光路差を高精度に安定化する必要があるため、反射型の光学素子のより高精度な位置決め安定化制御または装置内光学系温度などのフィードバック制御が必要になりうる。また、上述の比較例のように反射型の光学素子を用いてモード多重(分離)装置を構成する場合よりも、装置構成を小型化できることが望まれる。
【0022】
そこで、以下で説明する実施形態では、モードの多重および分離に利用するマッハツェンダ干渉計及び像反転機能を、ミラーやBSといった反射型の光学素子ではなく、透過型の光学素子を用いて実現する。これにより、モード多重装置及びモード分離装置を反射型の光学素子で構成する場合に課題となる光学部品の位置決め精度と位相差精度との関係を事実上分離でき、位相差調整に関わる光学部品の高精度な位置決めが不要となるとともに、装置内の光学素子の位置ずれや装置の変形に対して耐性を有するモード多重装置及びモード分離装置を実現できる。また、透過光学系であるため光路集約が容易であり、装置構成の小型化が容易になる。
【0023】
<モード分離>
図4は、一実施形態に係るモード分離装置の構成例を示す図であり、(A)及び(B)はそれぞれ、xz平面及びyz平面を図示している。なお、x軸方向を水平方向、y軸方向を垂直方向、z軸方向を光(ビーム)の伝搬方向としている。
図4に示すように、モード分離装置40は、分割部41、干渉部42、及び合波部43で構成される。干渉部42は、上述のマッハツェンダ干渉計の構成を有し、x軸方向(水平方向)に分岐する2つの光路のうちの一方の光路に、当該光路を伝搬する光の空間分布を予め定められた軸(反転面)に対して反転させる機能である像反転機能を有する像反転機構が像反転部50として付加されている。干渉部42は入射光の偏波が
図5に示す垂直偏波v成分と水平偏波h成分との光強度が等しい場合にのみ有効に機能するが、分割部41と合波部43の寄与により、光学系全体として入射光の偏光状態によらずモード分離が機能する偏波無依存性が確保される。本実施形態では、マッハツェンダ干渉計(干渉部42)及び像反転機構は、透過型の光学素子で構成される。これにより、上述のように、ミラーやBSといった反射型の光学素子を用いることなくマッハツェンダ干渉計及び像反転機能を実現する。
【0024】
具体的には、
図4に示すように、マッハツェンダ干渉計(干渉部42)は、透過型の光学素子の一例である複屈折結晶BC21,BC22(例えば、非特許文献4を参照。)によって実現される。また、像反転機構(像反転部50)は、透過型の光学素子の一例であるシリンドリカルレンズCL1,CL2によって実現される。モード分離装置40には、2つのモード(第1及び第2のモード)の光が多重された信号光が入射する。モード分離装置40は、入射した信号光から、マッハツェンダ干渉計の構成及び像反転機構により、個別のモードの光(第1及び第2のモードの信号光)を分離して出力する。なお、モード分離装置40においてモード分離が可能となるためには、上述の比較例のように、第1のモードは、像反転により位相分布の変化が生じないモードであり、第2のモードは、像反転により位相分布の反転が生じるモードであることが必要である。
【0025】
分割部41は、第1及び第2のモードの光が多重された、入射した信号光を、入射した信号光に含まれる直交する偏光成分のうちでそれぞれ異なる偏光成分を含む2つのビーム(第1及び第2のビーム)に分割し、干渉部42に出力する。
図4では、分割部41は、入射した信号光を、y軸方向において、同一の信号成分を有する2つのビームに分割する。
【0026】
干渉部42は、分割部41から出力される第1及び第2のビームのそれぞれについて、まず、x軸方向において、異なる2つの光路を伝搬する、第1の偏光成分を含むビーム(垂直偏波v)と、第1の偏光成分と直交する第2の偏光成分を含むビーム(水平偏波h)とに分割する。その結果、合計4つのビームが得られる。これら4つのビームのうち、第1の偏光成分を含む2つのビーム(垂直偏波v)は、その光路上に配置された像反転部50に入射する。像反転部50は、入射した2つのビームに対して像反転を行う。像反転部50では、それら2つのビームの光路上で対向して配置された2つのシリンドリカルレンズCL1,CL2によって、それら2つのビームに対して、光の空間分布をyz平面に対して反転させる(即ち、x軸方向(水平方向)に反転させる)像反転を行う。
【0027】
更に、干渉部42は、上述の第1のビームから分割され、2つの光路をそれぞれ伝搬してきた(第1及び第2の偏光成分をそれぞれ含む)2つのビームを、x軸方向において合波することによって当該2つのビームを干渉させる。その結果、干渉部42は、出力する第1のビームに含まれる直交する2つの偏光成分(+45°及び−45°の偏光成分)に対して第1及び第2のモードの光を分離して、当該第1のビームを出力する。また、干渉部42は、上述の第2のビームから分割され、2つの光路をそれぞれ伝搬してきた(第1及び第2の偏光成分をそれぞれ含む)2つのビームを、x軸方向において合波することによって当該2つのビームを干渉させる。その結果、干渉部42は、出力する第2のビームに含まれる直交する2つの偏光成分(+45°及び−45°の偏光成分)に対して第1及び第2のモードの光を分離して、当該第2のビームを出力する。
【0028】
合波部43は、干渉部42から出力された2つのビーム(第1及び第2のビーム)をそれぞれ、上述の2つの偏光成分に分割し、第1及び第2のビーム間で、同一のモードの光に対応する偏光成分をそれぞれ合波する。その結果、合波部43は、第1及び第2のモードの光が多重された信号光から分離された、第1のモードの信号光と第2のモードの信号光とを出力する。
【0029】
以下では、
図4及び
図5を参照して、モード分離装置40の構成及び動作について、より具体的に説明する。なお、
図4及び
図5は、伝送用ファイバから、同一の伝搬モード(LPモード)のaモード及びbモードである、LP11a及びLP11bの2つのモードの光が、モード分離装置40に入力される場合を一例として示している。なお、LP11a及びLP11bは、同一の伝搬モードにおける縮退している2つのモードに相当する。
【0030】
なお、
図4及び
図5に示す例では、複屈折結晶BC1,BC32は、入射したビームに対して、垂直偏波vを他方(水平偏波h)に対して分離または合波することが可能な構成を有している。また、複屈折結晶BC21,BC22,BC31は、入射したビームに対して、水平偏波hを他方(垂直偏波v)に対して分離または合波することが可能な構成を有している。
【0031】
(分割部41)
分割部41は、z軸方向(ビームの伝搬方向)において順に配置された、複屈折結晶BC1及び半波長板HW1で構成される。複屈折結晶BC1は、モード分離装置40に入射した信号光を、直交する2つの偏光成分に分割する。具体的には、複屈折結晶BC1は、入射した信号光から、−y方向に垂直偏波vを分離することによって、2つの偏光成分に対応する、2つの平行ビーム(水平偏波h及び垂直偏波v)を出力する。半波長板HW1は、複屈折結晶BC1から出力された2つのビームが透過する位置に配置される。
【0032】
半波長板HW1は、y軸方向に2分割されており、分割された各領域を、複屈折結晶BC1から出力された2つのビームがそれぞれ透過する。半波長板HW1は、透過する2つのビームの偏光方向が+45°で同一となるよう、当該2つのビームが透過する領域ごとに、各ビームの偏光方向を異なる方向に変化させる(具体的には、y軸方向における+側の領域では+45°、−側の領域では−45°変化させる)。半波長板HW1は、偏光方向が45°に揃えられた2つのビームを、上述の第1及び第2のビームとして干渉部42に出力する。
【0033】
(干渉部42)
干渉部42は、z軸方向(ビームの伝搬方向)において順に配置された、複屈折結晶BC21、2つのシリンドリカルレンズCL1,CL2を備える像反転部50、半波長板HW2、及び複屈折結晶BC22で構成される。複屈折結晶BC21は、第1及び第2のビームのそれぞれについて、+x方向に水平偏波hを分離することによって、2つの光路を伝搬する水平偏波h(第1の偏光成分を含むビーム)及び垂直偏波v(第2の偏光成分を含むビーム)に分割する。その結果、複屈折結晶BC21は、合計4つのビームを出力する。
【0034】
シリンドリカルレンズCL1,CL2(像反転部50)は、x軸方向(水平方向)の像反転機能を有しており、即ち、
図4に示すように、yz平面(垂直方向に沿った反転面)に対して、LP11a及びLP11bモードの光の空間分布をそれぞれ反転させる。その結果、第1のモードに相当するLP11aモードの光は、像反転の前後で位相分布が変化せず、第2のモードに相当するLP11bモードの光は、像反転によって位相分布が反転する。このように、シリンドリカルレンズCL1,CL2による像反転に用いられる反転面(yz平面)は、LP11aモード(第1のモード)の光の空間分布を当該反転面に対して反転させた場合に光の位相分布が変化せず、かつ、LP11bモード(第2のモード)の光の空間分布を当該反転面に対して反転させた場合に光の位相分布が反転するように定められている。
図5に示すように、シリンドリカルレンズCL1,CL2は、4つのビームのうち、垂直偏波vに対応する2つのビームのみに対して、x軸方向(水平方向)の像反転を行う。
【0035】
半波長板HW2は、複屈折結晶BC21から出力された、水平偏波hに対応する2つのビームと、シリンドリカルレンズCL1,CL2による像反転が行われた、垂直偏波vに対応する2つのビームとの、それぞれの偏光方向を所定の角度(+90°)だけ変化させる。その結果、水平偏波hは垂直偏波vに、垂直偏波vは水平偏波hに変換された状態で出力される。
【0036】
複屈折結晶BC22は、半波長板HW2から出力された2つの水平偏波h(第1の偏光成分を含むビーム)をそれぞれ、+x方向において、対応する垂直偏波v(第1の偏光成分を含むビーム)に合波することで、2つのビームを出力する。干渉部42内において適切な位相差の調整を行うことにより、複屈折結晶BC22から出力される2つのビームでは、LP11aモードの光が、+45°の偏光成分のみを有し、LP11bモードの光が、−45°の偏光成分のみを有する状態を実現できる。即ち、これら2つのビームは、直交する2つの偏光成分である+45°の偏光成分及び−45°の偏光成分に、LP11aモードの光及びLP11bモードの光が分離された状態となる。
【0037】
(合波部43)
合波部43は、z軸方向(ビームの伝搬方向)において順に配置された、半波長板HW31、複屈折結晶BC31、半波長板HW32、及び複屈折結晶BC32で構成される。半波長板HW31は、干渉部42(複屈折結晶BC22)から出力された2つのビーム(第1及び第2のビーム)をそれぞれ、複屈折結晶BC31によって2つの偏光成分に分割可能となるよう、各ビームの偏光方向を所定の角度(−45°)だけ変化させる。これにより、LP11aモードの光が、水平偏波hに相当する偏光成分、LP11bモードの光が、垂直偏波vに相当する偏光成分を有する状態となる。
【0038】
複屈折結晶BC31は、半波長板HW31から出力された2つのビームをそれぞれ、−x方向において、2つの偏光成分(垂直偏波v及び水平偏波h)に分割することで、4つのビームを出力する。これにより、複屈折結晶BC31から出力される4つのビームのうち、水平偏波hに対応する2つのビームには、LP11aモードの信号成分のみが含まれ、垂直偏波vに対応する2つのビームには、LP11bモードの信号成分のみが含まれる結果となる。
【0039】
半波長板HW32は、x軸方向及びy軸方向に4分割されており、分割された各領域を、複屈折結晶BC31から出力された4つのビームがそれぞれ透過する。半波長板HW32は、y軸方向における2つのビーム(第1及び第2のビーム)間で、同一のモードの光に対応する偏光成分をそれぞれ合波可能となるよう、4つのビームが透過する領域ごとに各ビームの偏光方向を変化させる。具体的には、半波長板HW32は、水平偏波hに対応する2つのビームのうちの、y軸方向における+側のビームの偏光方向と、垂直偏波vに対応する2つのビームのうちの、y軸方向における−側のビームの偏光方向を、それぞれ+90°変化させる。
【0040】
複屈折結晶BC32は、半波長板HW32を透過した4つのビームについて、y軸方向における2つのビーム(第1及び第2のビーム)間で、同一のモードの光に対応する偏光成分をそれぞれ合波する。具体的には、複屈折結晶BC32は、半波長板HW32から出力された2つの垂直偏波vをそれぞれ、−x方向において、対応する水平偏波hに合波することで、2つのビームを出力する。その結果、複屈折結晶BC32から、LP11aモードの信号光(LP11aモードに対応する信号成分のみを有するビーム)と、LP11bモードの信号光(LP11bモードに対応する信号成分のみを有するビーム)とが出力される。
【0041】
このように、本実施形態によれば、同一LPモードのaモード及びbモードである、LP11a及びLP11bの2つモードの光を、原理的に損失を生じさせることなく分離することが可能である。
【0042】
また、モード分離装置40は、LP11a及びLP11bモードに限らず、同一のLPモードのa及びbモードの組み合わせであれば、同様にモードの分離を実現できる。これは、
図6に示すように、同一のLPモード(
図6では、LP11、LP21及びLP31モード)のa及びbモードの光に対して像反転を行った場合、a及びbモードの一方の光は位相分布が変化せず、他方は位相分布が反転する。したがって、LP11a及びLP11bモードに限らず、同一のLPモードのa及びbモードの組み合わせであれば、モード分離装置40によって原理的に損失を生じさせることなくモードの分離を行うことが可能である。
【0043】
また、モード分離装置40は、LP11a及びLP11bモードのように同一のLPモードにおける縮退している2つのモードだけでなく、異なるLPモードについても、同様にモードの分離を実現できる。
図7は、異なるLPモードの例として、LP11及びLP21モードの分離をモード分離装置40によって行う例を示している。
図7に示すように、LP11及びLP21モードの光に対して像反転を行った場合、LP11モードの光は位相分布が変化せず、LP21モードの光は位相分布が反転する。このように、像反転により一方のモードの光には位相分布の変化が生じず、他方のモードの光に位相分布の反転が生じる組み合わせであれば、異なるLPモードの組み合わせであっても原理的に損失を生じさせることなくモードの分離を行うことが可能である。
【0044】
<モード多重>
次に、
図8は、一実施形態に係るモード多重装置の構成例を示す図であり、xz平面のみを図示している。
図8に示すように、モード多重装置80は、モード分離装置40と同一の構成を有し、モード分離装置40の入力と出力とを入れ替えたものに相当する。
【0045】
モード多重装置80は、分割部81、干渉部82、及び合波部83を備え、これらはモード分離装置40における合波部43、干渉部42、及び分割部41にそれぞれ対応する。モード多重装置80では、入力側(モード分離装置40の出力側)から、第1のモードの信号光と第2のモードの信号光とが入射されることによって、出力側(モード分離装置40の入力側)から、それらの信号光が多重された信号光が出力される。
【0046】
本実施形態によれば、モード分離の場合と同様、原理的に損失を生じさせることなく、同一のLPモードのa及びbモード、並びに異なるLPモードについてモードの多重(合波)を行うことが可能である。
【0047】
<他の実施形態>
上述の実施形態で説明したモード分離装置40及びモード多重装置80を複数用いることによって、3つ以上のモードの光の分離及び多重を行うことが可能である。
図9は、複数のモードの光が伝搬可能な光ファイバ(マルチモードファイバ(MMF))から出射される、5つのモード(LP01,LP11a,LP11b,LP21a,LP21b)の光を分離するモード分離システムの例を示している。なお、
図9では、モード分離装置40を像反転MZI(マッハツェンダ干渉計)として示している。
【0048】
図9に示すモード分離システムは、2つの像反転MZI40に加えて、5つのモードの光を、異なるLPモードの数に相当する数の光に分割するためのBS91及びBS92を備える。BS91及びBS92で分割された(分岐した)光は、2つの像反転MZI40に入力される。これにより、同一LPモードのa及びbモードの光を、原理的に損失を生じさせることなく分離して出力できる。
【0049】
また、
図9に示すモード分離システムの入力と出力とを入れ替えることによって、
図10に示すように、5つのモード(LP01,LP11a,LP11b,LP21a,LP21b)の光を多重するモード多重システムを実現できる。
図10に示すモード多重システムは、5つのモードの光のうち、同一LPモードのa及びbモードの光を、原理的に損失を生じさせることなく多重(合波)して、多重された光をMMFに出力できる。
【0050】
更に、
図11に示すように、複数の像反転MZI40を多段に設ける(接続する)ことによって、同一LPモードのa及びbモードだけでなく異なるLPモードについても、BSを用いることなく分離できる。これにより、MMF内を伝搬する複数のモードの光を原理的に損失を生じさせることなく分離することが可能である。
【0051】
上述の種々の実施形態は、光ファイバの空間利用効率の向上によって伝送容量の拡大を図る、空間多重(モード多重)伝送技術の実現に貢献しうる。これらの実施形態を用いることで、光ファイバ中の各モードについて独立した信号を変復調することが可能になる。その結果、理論的な通信容量は、(1モード当たりの伝送容量)×(モード数)となり、光ネットワークの大容量化を見込める。
【0052】
また、上述の種々の実施形態で説明したモード多重分離技術によれば、各ネットワーク拠点において、モード多重光信号から必要な数のモードの光信号を分離し、また、モード多重光信号に対して必要な数のモードの光信号を多重できる。即ち、従来の波長多重光信号における波長と同様に、モード多重光信号におけるモードを扱うことが可能になる。
【0053】
更に、上述の種々の実施形態では、ミラーやBSといった反射型の光学素子を用いることなく、透過型の光学素子を用いてマッハツェンダ干渉計及び像反転機能を実現している。このため、モード多重装置及びモード分離装置を反射型の光学素子で構成する場合に課題となる光学部品の位置決め精度と位相差精度との関係を事実上分離でき、位相差調整に関わる光学部品の高精度な位置決めが不要となるとともに、装置内の光学素子の位置ずれや装置の変形に対して耐性を有するモード多重装置及びモード分離装置を実現できる。また、透過光学系であるため光路集約が容易であり、装置構成の小型化が容易になる。即ち、光信号のモード多重および分離を行う際に生じる損失を、より簡易な構成で低減することが可能になる。