(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284473
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】神経変性を減少させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4045 20060101AFI20180215BHJP
A23K 20/132 20160101ALI20180215BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20180215BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
A61K31/4045
A23K20/132
A61P25/00 171
A61P43/00 111
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-514517(P2014-514517)
(86)(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公表番号】特表2014-518899(P2014-518899A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】US2012040658
(87)【国際公開番号】WO2012170322
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年5月28日
【審判番号】不服2017-805(P2017-805/J1)
【審判請求日】2017年1月19日
(31)【優先権主張番号】61/520,332
(32)【優先日】2011年6月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599132904
【氏名又は名称】ネステク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ミドルトン, ロンド ポール
(72)【発明者】
【氏名】ザンギ, ブライアン マイケル
【合議体】
【審判長】
村上 騎見高
【審判官】
穴吹 智子
【審判官】
前田 佳与子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−145763(JP,A)
【文献】
特開2004−307354(JP,A)
【文献】
Brain Medical,2004年,Vol.16,No.1,p21−26
【文献】
J Huazhong Univ Sci Technol [Med Sci],2010年,Vol.30,No.1,p.1−7
【文献】
Pharmacology, Biochemistry and Behavior,2010年,Vol.94,p.397−403
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
CALLUS
REGISTRY
MEDLINE
BIOSIS
EMBASE
JSTPLUS
JMEDPLUS
JST7580
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物(ヒトを除く。)におけるmTORの発現を抑制するための方法であって、mTORの発現を抑制する量の5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンを前記動物に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンは約0.1ng/kg/日〜約10mg/kg/日の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンは可食組成物に含まれた状態で投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンは栄養補助食品として投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記動物はコンパニオンアニマルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
コンパニオンアニマルはイヌ科動物又はネコ科動物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
動物(ヒトを除く。)におけるS6キナーゼの発現を抑制するための方法であって、S6キナーゼの発現を抑制する量の5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンを前記動物に投与するステップを含む方法。
【請求項8】
5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンは約0.1ng/kg/日〜約10mg/kg/日の量で投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンは可食組成物に含まれた状態で投与される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンは栄養補助食品として投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
可食組成物は食品組成物である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
食品組成物はイヌ又はネコ用の食品組成物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記動物はコンパニオンアニマルである、請求項7〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コンパニオンアニマルはイヌ科動物又はネコ科動物である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
インビトロの神経細胞におけるmTOR又はS6キナーゼの発現を抑制するための方法であって、mTOR発現を抑制する量又はS6キナーゼ発現を抑制する量の5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンに神経細胞を曝露するステップを含む方法。
【請求項16】
インビトロの細胞におけるmTOR又はS6キナーゼの発現を抑制するための方法であって、mTOR発現を抑制する量又はS6キナーゼ発現を抑制する量の5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンに細胞を曝露するステップを含む方法。
【請求項17】
前記細胞は、丸ごとの動物から得られた初代細胞、樹立細胞株から得られた細胞、又は1つのタイプから別のタイプに形質転換された細胞である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本出願は、2011年6月8日出願の米国特許仮出願第61/520332号に基づく優先権を主張するものである。その出願の開示内容は、ここで参照されることにより本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野:
[0002]本発明は概して、神経変性を減少させるための方法に関する。特に、動物における神経変性を減少させるためにメラトニンを使用する方法に関する。
【0003】
関連技術の説明:
[0003]神経変性は、動物におけるいくつかの生命に関わる重大疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病)に関連する。これらの晩期発症型の疾患は、毒性タンパク質による細胞内凝集体の形成に関連する。現行の理論は、これらの細胞質毒性タンパク質が神経細胞死を引き起こすため、その蓄積が神経変性をもたらすというものである。このような状況では、神経細胞は、これらの毒性タンパク質を分解する能力を失っているようである。
【0004】
[0004]細胞質タンパク質の分解は、マクロオートファジーという(簡単にオートファジーともいう)細胞プロセスによって媒介される。神経細胞におけるオートファジーの減少は神経変性をもたらす。オートファジーの減少は、atg7遺伝子又はatg5遺伝子(これらは、オートファジーにおいて重要な役割を果たすタンパク質を産生する遺伝子である。)の欠損に関連する。
【0005】
[0005]いくつかのタンパク質キナーゼがオートファジーを制御することが示されている。最も詳細に特性解析されているのは哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)である。mTORは、細胞成長、細胞増殖、細胞運動性、細胞生存、タンパク質合成、及び転写を制御するセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。mTORは、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ関連キナーゼタンパク質ファミリーに属する。mTORは、不活性化又は脱リン酸化された形態になるとオートファジー経路を活性化する。米国特許第7052870号は、mTOR経路を制御する方法を開示している。
【0006】
[0006]オートファジーを調節する方法は知られている。ラパマイシンは、特にmTOR(これは、オートファジー経路の誘発を可能にする。)の発現を抑制する。しかしながら、長期間のラパマイシン治療は有害な副作用(例えば、創傷治癒の遅延、免疫抑制)を有する。
【0007】
[0007]すなわち、動物におけるmTORの発現の抑制、オートファジーの増加、及び神経変性の減少のための新たな方法が求められている。
【発明の概要】
【0008】
[0008]すなわち、本発明の目的は、動物における神経変性を減少させるための方法を提供することである。
【0009】
[0009]本発明の別の目的は、動物におけるオートファジー経路を活性化するための方法を提供することである。
【0010】
[0010]本発明の別の目的は、動物におけるmTORの発現を抑制するための方法を提供することである。
【0011】
[0011]本発明の別の目的は、動物におけるS6キナーゼの発現を抑制するための方法を提供することである。
【0012】
[0012]これら又は他の目的の少なくとも1つは、神経変性の減少、オートファジー経路の活性化、mTORの発現の抑制、S6キナーゼの発現の抑制、又はそれらの組み合わせに十分な量のメラトニンを動物に投与することによって達成される。概して、メラトニンは、約0.1ng/kg/日〜約10mg/kg/日、好ましくは約0.5ng/kg/日〜約5mg/kg/日、より好ましくは約1ng/kg/日〜約2mg/kg/日の量で動物に投与される。
【0013】
[0013]本発明のさらなる目的、特徴及び利点は当業者には明らかであろう。
【0014】
定義:
[0014]「神経変性」とは、神経細胞の構造又は機能の進行性消失(神経細胞死を含む。)を意味する。
【0015】
[0015]「メラトニン」とは、5−メトキシ−N−アセチルトリプタミン、及び5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンと実質的に同じ生物活性を有するその誘導体又は類似体、及びそれらのインビボの前駆体を意味する。この用語はまた、オートファジー経路において5−メトキシ−N−アセチルトリプタミンと実質的に同じ生物活性を有する任意の他のホルモンを意味する。
【0016】
[0016]「動物」とは、神経変性の減少から利益を受け得る任意の動物を意味する。動物としては、例えば、ヒト、鳥類、ウシ属の動物、イヌ科の動物、ウマ科の動物、ネコ科の動物、ヤギ属の動物、オオカミ、ネズミ科の動物、ヒツジ、ブタが挙げられる。
【0017】
[0017]「コンパニオンアニマル」とは飼い慣らされた動物を意味し、例えば、イヌ、ネコ、トリ、ウサギ、モルモット、フェレット、ハムスター、マウス、アレチネズミ、プレジャーホース、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ブタ、並びに同伴、娯楽、精神的支援、外向けの飾り、及び人間が他種の動物と共有する必要のあるその他のすべての機能のために人間に飼われているより珍しい種の動物が挙げられる。
【0018】
[0018]「ng/kg」とは、動物の体重1キログラム当りのナノグラムを意味する。
【0019】
[0019]「mg/kg」とは、動物の体重1キログラム当りのミリグラムを意味する。
【0020】
[0020]「栄養補助食品」とは、動物の通常の食餌に加えて摂取されることが意図された製品を意味する。栄養補助食品はいかなる形態であってもよく、例えば、固体、液体、ゲル、タブレット、カプセル、粉末のいずれであってもよい。栄養補助食品は、使いやすい剤形(例えば小袋)で提供されるのが好ましい。栄養補助食品は、バルクの消費者パッケージ(例えば、バルクの粉末、液体、ゲル又は油)の形態で提供されてもよい。同様に、栄養補助食品は、他の食品(例えば、スナック、トリート、サプリメントバー、飲料)に含まれるようにバルク量で提供されてもよい。
【0021】
[0021]本明細書において、範囲内の1つ1つの値を列挙及び記載することを避けるため、範囲は簡略に記載する。範囲の上限値、下限値又は端値として、必要に応じて範囲内の任意の適切な値を選択し得る。
【0022】
[0022]本明細書では、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合でない限り、単語の単数形は複数形を含み、逆もまた同様である。したがって、“a”、“an”及び“the”は概してその語の複数形を含む。例えば、“a compound”又は“a method”は、その複数形の“compounds”又は“methods”を含む。同様に、“comprise”、“comprises”及び“comprising”は、排他的ではなく包含的に解釈されるべきである。同様に、“include”、“including”及び“or”は、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合でない限り包含的に解釈されるべきである。
【0023】
[0023]「…を含む」(“comprising …”又は“including …”)は、「…から本質的になる」(“consisting essentially of …”)及び「…からなる」(“consisting of …”)により包含される実施形態を包含するものとする。同様に、「…から本質的になる」(“consisting essentially of …”)は、「…からなる」(“consisting of …”)により包含される実施形態を包含するものとする。
【0024】
[0024]本明細書に開示される方法、組成物及び他の提案は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコール及び試薬に限定されるものではない。なぜならば、当業者には理解されるように、それらは変わり得るものだからである。さらに、本明細書で使用される用語は、専ら特定の実施形態を記載するためのものであり、開示又は請求の範囲を限定するものではない。
【0025】
[0025]特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての技術的・科学的用語、当技術分野の用語、及び頭字語は、本発明の分野又は該用語が使用される分野の当業者が通常理解するのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様又は同等のすべての組成物、方法、製品又は他の手段若しくは材料は本発明の実施に際して使用することができるが、本明細書には、好ましい組成物、方法、製品又は他の手段若しくは材料が記載されている。
【0026】
[0026]本明細書で引用又は参照されたすべての特許、特許出願、出版物、技術的及び/又は学術的論文及び他の文献は、ここで参照されることにより、法律で許容される範囲でその全体が本明細書に組み込まれる。これらの文献についての説明は、単にその主張内容を要約することを意図したものである。そのような特許、特許出願、出版物又は文献又はそれらの任意の一部が関連技術又は先行技術であることを認めるものではない。そのような特許、特許出願、出版物及び他の文献が関連技術又は先行技術であるとのいかなる主張に関しても、その正確性及び妥当性について異議を申し立てる権利は特に留保されている。
【0027】
発明:
[0027]一態様において、本発明は、動物における神経変性を減少させるための方法を提供する。この方法は、神経変性を減少させる量のメラトニンを動物に投与するステップを含む。
【0028】
[0028]別の態様において、本発明は、動物におけるオートファジー経路を活性化するための方法を提供する。この方法は、オートファジー経路を活性化する量のメラトニンを動物に投与するステップを含む。
【0029】
[0029]別の態様において、本発明は、動物におけるmTORの発現を抑制するための方法を提供する。この方法は、mTORの発現を抑制する量のメラトニンを動物に投与するステップを含む。
【0030】
[0030]別の態様において、本発明は、動物におけるS6キナーゼの発現を抑制するための方法を提供する。この方法は、S6キナーゼの発現を抑制する量のメラトニンを動物に投与するステップを含む。
【0031】
[0031]別の態様において、本発明は、動物によるmTORの発現の増加に関連する1又は複数の状態又は疾患に影響を及ぼすための方法を提供する。この方法は、状態又は疾患に影響を及ぼす量のメラトニンを動物に投与するステップを含む。メラトニンは、動物によるmTOR発現の増加に関連する任意の状態又は疾患(例えば、移植拒絶反応、老化、加齢性網膜疾患、運動ニューロン疾患、網膜疾患、癌、循環器疾患、及び糖尿病)に影響を及ぼすために使用可能である。概して、メラトニンは、動物に投与されてmTORの発現を減少させ、その結果、動物の利益になるような方法で病状に影響を及ぼす(例えば、動物の健康を増進する、状態又は疾患の重症度を低下させる、状態又は疾患によって引き起こされた症状を軽減する)。
【0032】
[0032]本発明は、メラトニンが、動物における神経変性の減少、オートファジー経路の活性化、mTORの発現の抑制、又はS6キナーゼの発現の抑制のうちの少なくとも1つに効果的であるという基本的発見に基づいている。理論に拘束されるものではないが、メラトニンは、mTOR及びS6キナーゼの発現に影響を及ぼすものと考えられており、また、そのような発現の制御は神経細胞におけるオートファジー経路を活性化し、神経細胞における毒性タンパク質の蓄積に起因する神経変性を減少させるものと考えられている。
【0033】
[0033]そのような本発明の方法に関して、メラトニンは、神経変性を減少させること、オートファジー経路を活性化させること、mTORの発現を抑制すること、S6キナーゼの発現を抑制すること、mTORの発現の増加に関連する1又は複数の状態又は疾患に影響を及ぼすこと、又はそれらの組み合わせに有効な任意の量で動物に投与される。種々の実施形態において、メラトニンは、約0.1ng/kg/日〜約10mg/kg/日、好ましくは約0.5ng/kg/日〜約5mg/kg/日、より好ましくは約1ng/kg/日〜約2mg/kg/日の量で動物に投与される。他の実施形態において、メラトニンは、約0.2ng/日〜約50mg/日、好ましくは約0.5ng/日〜約20mg/日、より好ましくは約1ng/日〜約10mg/日の量で動物に投与される。他の実施形態において、メラトニンは、約0.05mg/日〜約5mg/日、好ましくは約0.3mg/日〜約3mg/日、より好ましくは約0.1mg/日〜約1mg/日の量で動物に投与される。当業者は、動物に投与するメラトニンの量を、該動物の種類、年齢、サイズ、体重、健康、病状等に基づいて選択できる。
【0034】
[0034]メラトニンは、任意の適切な方法を用いて、好ましくは経口で投与される。典型的には、メラトニンは、カプセル、ゲル、タブレット、又はその他の適切な経口投与形態で投与される。好ましい実施形態において、メラトニンは、可食組成物、好ましくは食品組成物又は栄養補助食品の一部として投与される。ある実施形態において、メラトニンは、コンパニオンアニマル用の食品組成物、好ましくはイヌ科動物(例えばイヌ)又はネコ科動物(例えばネコ)用に処方された食品組成物の成分として投与される。最も好ましい実施形態において、食品組成物はイヌ又はネコ用に処方されたものである。他の実施形態において、メラトニンは栄養補助食品として投与される。
【0035】
[0035]経口投与に関して、メラトニンは、例えば、薬学的に許容される賦形剤[例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)]と共に常法によって調製されるタブレット又はカプセルに組み込まれていてもよい。タブレットは、当技術分野で周知の方法によってコーティングされていてもよい。経口投与用の液体製剤は、例えば、溶液、シロップ又は懸濁液の形態をとってもよく、あるいは使用前に水又はその他の適切なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供されてもよい。そのような液体製剤は、薬学的に許容される添加剤[例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、硬化食用脂)、乳化剤(例えば、レシチン、アラビアゴム)、非水性ビヒクル(例えば、ationd油、油性エステル、エチルアルコール、分留植物油)、保存料(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸)]と共に常法によって調製されたものであってもよい。それらの製剤はまた、適宜、緩衝塩、香料、着色料及び甘味料を含んでもよい。経口投与用製剤は、メラトニンの制御放出を可能にするように適切に処方されたものであってもよい。好ましい実施形態において、メラトニンはタブレット又はカプセルに組み込まれている。
【0036】
[0036]動物に投与されるメラトニンは、動物への投与に適した任意のメラトニンである。メラトニンは、任意の適切な合成又は天然の供給源から得られる。メラトニンの好ましい供給源は、例えば、タブレット、カプセル及び舌下錠の形態の合成メラトニンである。その他の供給源としては、天然供給源(例えば、藻類、菌類、植物(例えば、種子、クルミ))由来のメラトニンが挙げられる。メラトニンは、メラトニン供給源(天然でも合成でもよい。)のブレンドに由来するものであってもよい。可食組成物に関しては、典型的には、メラトニンは、可食組成物(例えば、コンパニオンアニマル用の食品組成物)の成分として含まれる藻類又はその他の天然成分に由来する。
【0037】
[0037]別の態様において、本発明は、本発明のメラトニンを収容するのに有用なパッケージを提供する。このパッケージは、メラトニンを含むのに適した少なくとも1種の材料と、該材料に貼付されたラベルと、を含み、ラベルは、神経変性を減少させること、オートファジー経路を活性化すること、mTORの発現を抑制すること、S6キナーゼの発現を抑制すること、動物によるmTORの発現の増加に関連する1又は複数の状態又は疾患に影響を及ぼすこと、又はそれらの組み合わせに有用な化合物がパッケージに含まれることを示す言葉、絵、デザイン、頭字語、標語、句若しくは他の意匠又はそれらの組み合わせを備える。通常、そのような意匠は、材料に印刷された形で、「神経変性が減少」又は「オートファジーを活性化」又は「mTOR発現を抑制」又は「S6キナーゼの発現を抑制」、又は「mTORの発現の増加に関連する1又は複数の状態又は疾患に影響を及ぼす」又は「老化を遅らせる」といった文言又は同等の表現を含む。メラトニンを含むのに適した任意のパッケージ形態及びパッケージ材料(例えば、紙、プラスチック、ホイル又は金属から製造された袋、箱、ボトル、缶又はパウチ)が本発明において有用である。好ましい実施形態において、パッケージはメラトニンをさらに含む。種々の実施形態において、パッケージは、パッケージを開けなくても中身を見ることを可能にする少なくとも1つの窓をさらに備える。いくつかの実施形態において、窓はパッケージ材料の透明な部分である。他の実施形態では、窓はパッケージ材料の欠落部分である。
【0038】
[0038]別の態様において、本発明は、インビトロの神経細胞におけるmTOR又はS6キナーゼの発現を抑制するための方法を提供する。この方法は、mTOR発現を抑制する量又はS6キナーゼ発現を抑制する量のメラトニンに神経細胞を曝露するステップを含む。一般に、神経細胞は、非常に低い又は検出不可能なレベルのメラトニンを典型的には含有する血清を含むか又は含まない細胞培養培地に曝露される。それ故、合成メラトニン又は抽出された若しくは天然供給源のメラトニンで強化された培地に神経細胞を曝露することは、mTOR又はS6キナーゼの発現を抑制し、オートファジープロセスを促し、又は神経変性を減少させる。
【0039】
[0039]さらなる態様において、本発明は、インビトロの細胞におけるmTOR又はS6キナーゼの発現を抑制するための方法を提供する。そのような細胞としては、例えば、丸ごとの動物(whole animal)から得られた初代細胞、樹立細胞株から得られた細胞、又は1つのタイプから別のタイプに形質転換された細胞が挙げられる。この方法は、mTOR発現を抑制する量又はS6キナーゼ発現を抑制する量のメラトニンに細胞を曝露するステップを含む。一般に、細胞は、非常に低い又は検出不可能なレベルのメラトニンを典型的には含有する血清を含むか又は含まない細胞培養培地に曝露される。それ故、合成メラトニン又は抽出された若しくは天然供給源のメラトニンで強化された培地に細胞を曝露することは、mTOR又はS6キナーゼの発現を抑制し、オートファジープロセスを促し、又は神経変性を減少させる。
【実施例】
【0040】
[0040]本発明は以下の実施例によりさらに説明することができるが、これらの実施例は、特に断らない限り、単に例示のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことは理解されよう。
【0041】
実施例1:
[0041]細胞培養手順:
市販のメイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞を不死化細胞のストック懸濁液としてATCCから入手した。MDCK細胞は、95%空気/5%CO
2の雰囲気下、10%ウシ胎仔血清及び1%抗生物質/抗菌剤溶液を含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中、37℃で培養した(DMEM負荷)。0.05%トリプシンを含有する溶液を用いて1〜2日毎に培地を交換し、細胞を継代した。RNA抽出のため、細胞を、35mmディッシュ中、50000〜60000個/cm
2の播種密度で蒔いた。播種の24時間後、培地を、対照培地(DMEM負荷)又は試験培地(DMEM負荷+1nMメラトニン)に変えた。対照培地又は試験培地への曝露後1日目、3日目又は5日目に細胞を採取した。細胞採取の日に、残りのディッシュ中で培地を変えた。
【0042】
[0042]全RNAを、RNAlater RNA安定化試薬を用い、製造業者(Ambion,Austin,Texas)の指示に従ってMDCK細胞ライセートから採取した。mTOR遺伝子、S6キナーゼ遺伝子及びTATAボックス結合タンパク質遺伝子のmRNA転写物を、培地処理の1日目、3日目及び5日目に半定量PCRによって分析した。TATAボックス結合タンパク質遺伝子(「ハウスキーピング」遺伝子として広く使用される。)の転写物は、mTOR及びS6キナーゼの発現を標準化するために使用された。
【0043】
実施例2:
[0043]実施例1の手順を繰り返した。実施例1及び実施例2のデータを表1に示す。
【表1】
【0044】
[0044]表1を参照すると、最大5日間、細胞培養培地中、1nMメラトニンで処理されたMDCK細胞は、無処理の対照細胞と比較して、mTORのmRNA発現において7.4〜59.5%の減少をもたらす。さらに、S6キナーゼ(これはmTORの標的タンパク質であり、リボソームタンパク質を活性化(リン酸化)してタンパク質合成を刺激することに関与する。)についても、mRNA発現の24.2〜55%の減少が観察された。mTOR及びS6キナーゼ発現の減少は、メラトニンによるmTOR経路の抑制を示している。これらの結果は、動物へのメラトニンの投与は、動物における、神経変性を減少させること、オートファジー経路を活性化させること、mTORの発現を抑制すること、atg5遺伝子の発現を増加させること、atg7遺伝子の発現を増加させること、mTORの発現の増加に関連する1又は複数の状態又は疾患に影響を及ぼすこと、又はそれらの組み合わせに有用であることを示している。
【0045】
[0045]本明細書では、本発明の代表的な好適な実施形態が開示されている。特定の用語が使用されているが、それらは単に一般的かつ説明的な意味で使用したものであり、限定を意図したものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲に記載の通りである。上述の教示内容に照らせば、本発明の多くの修正及び改変が可能であることは明らかである。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲内で、特に記載されている以外の形態でも実施可能であることが理解されよう。