【文献】
Chemical Industry & Chemical Engineering Quarterly,2008年,Vol.14,No.4,pp.245−249
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1)4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オンを有機溶媒中に溶解する工程、
2)4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オンを、請求項1に記載の固定化トランスアミナーゼと、
アミノ基の存在下で接触させる工程
を含む、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンを作成する方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
「トランスアミナーゼ」は、「アミノトランスフェラーゼ」とも呼ばれるものであり、アミノ基(NH
2)および水素原子を第1級アミン(3)からアクセプターカルボニル化合物(2)に移動させ、アミンドナーをその対応するカルボニル化合物(4)に、およびアクセプターをその対応する第1級アミン(1)に変換する酵素能力を持つポリペプチドを指すのに本明細書中で用いられる。
【化1】
【0021】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼに関して、トランスアミナーゼポリペプチドは、式(2a)の基質、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(「ケトアミド基質」)を、式(1a)の生成物(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(「生成物」)へと、式(3)のアミノ基ドナーの存在下で、次のように変換する能力があり、
【化2】
【0022】
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4の各々は、独立して採用される場合、置換されていない、または1もしくは複数の酵素的に非阻害性の基で置換された、アルキル、アルキルアリール基またはアリール基である。R
1およびR
3は、構造またはキラリティーにおいて、それぞれR
2およびR
4と同一であることも異なることもできる。基R
1およびR
2またはR
3およびR
4は、一緒になって、置換されていない、置換された、または他の環と縮合した環を形成し得る。
【0023】
「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、長さまたは翻訳後修飾(例として、糖鎖付加、リン酸化、脂質付加、ミリスチル化、ユビキチン化など)にかかわらず、アミド結合により共有結合した少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを表示するのに本明細書中で交換可能に用いられる。この定義の中に包含されるのは、D−およびL−アミノ酸、ならびにD−およびL−アミノ酸の混合物である。
【0024】
本明細書中で用いられる「基質」とは、トランスアミナーゼにより媒介される反応中でアミノ基ドナーからアミノ基を受け取るアミノ基アクセプター、例えばケトンなどを指す。基質として、本明細書中でさらに記載されるように、式(II)の化合物、式(2)の化合物および式(2a)の化合物を挙げることができる。本明細書中で記載されるある特定の方法において、「ケトアミド基質」とは、具体的に、式(2a)の化合物、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オンを指す。
【0025】
「アミノ基ドナー」とは、アミノ基をアクセプターカルボニル化合物(すなわち、アミノ基アクセプター)に供与し、それによってカルボニル副生成物となる能力があるアミノ化合物を指す。アミノ基ドナーは一般式(3)の分子であって、
【化3】
【0026】
式中、R
1、R
2の各々は、独立して採用される場合、置換されていない、または1もしくは複数の酵素的に非阻害性の基で置換された、アルキル、アルキルアリール基またはアリール基である。R
1は、構造またはキラリティーにおいてR
2と同一であることも異なることもできる。基R
1およびR
2は、一緒になって、置換されていない、置換された、または他の環と縮合した環を形成し得る。本発明と共に用いることができる典型的なアミノ基ドナーとして、キラルおよびアキラルなアミノ酸ならびにキラルおよびアキラルなアミンが挙げられる。
【0027】
「キラルアミン」とは、一般式R
1−CH(NH
2)−R
2であってR
1およびR
2が同一でないアミンを指し、異なったおよび混合性の官能型である幅広い種類の脂肪族および脂環式の化合物を包含するその最も広い意味で本明細書中で使われるものであって、第2級炭素原子に結合した第1級アミノ基の存在を特徴とし、この第2級炭素原子は水素原子に加えて(i)キラルな環状構造を形成する二価の基、または(ii)構造もしくはキラリティーにおいて互いに異なる2つの置換基(水素以外)のいずれかを有する。キラルな環状構造を形成する二価の基として、例えば、2−メチルブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,4−ジイル、ヘキサン−1,4−ジイル、ヘキサン−1,5−ジイル、2−メチルペンタン−1,5−ジイルが挙げられる。第2級炭素原子上の2つの異なる置換基(上のR
1およびR
2)もまた幅広く変えることができ、これらとして、アルキル、アラルキル、アリール、ハロ、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、シクロアルキル、カルボキシ、カルボアルコキシ、カルバモイル、モノ−およびジ−(低級アルキル)置換カルバモイル、トリフルオロメチル、フェニル、ニトロ、アミノ、モノ−およびジ−(低級アルキル)置換アミノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルカルボキシアミド、アリールカルボキシアミドなど、同様に前述のものにより置換されたアルキル、アラルキルまたはアリールが挙げられる。
【0028】
「カルボニル副生成物」とは、アミノ基ドナー上のアミノ基がアミノ基転移反応中にアミノ基アクセプターに移されるときにアミノ基ドナーから形成されるカルボニル化合物を指す。カルボニル副生成物は式(4)の一般構造を持ち、
【化4】
【0029】
式中、R
1およびR
2はアミノ基ドナーについて上で定義されている。
【0030】
「ピリドキサール−リン酸」、「PLP」、「ピリドキサール−5’−リン酸」、「PYP」および「P5P」は、トランスアミナーゼ反応において補酵素として作用する化合物を指すのに本明細書中で交換可能に用いられる。いくつかの実施形態において、ピリドキサールリン酸は、構造1−(4’−ホルミル−3’−ヒドロキシ−2’−メチル−5’−ピリジル)メトキシホスホン酸、CAS番号[54−47−7]により定義される。ピリドキサール−5’−リン酸は、ピリドキソール(ピリドキシンまたはビタミンB6としても知られる)のリン酸化および酸化によりインビボで生産される。トランスアミナーゼ酵素を用いるアミノ基転移反応において、アミノ基ドナーのアミノ基が補酵素に移されてケト副生成物が生み出される一方、ピリドキサール−5’−リン酸はピリドキサミンリン酸に変換される。ピリドキサール−5’−リン酸は、異なるケト化合物(アミノ基アクセプター)との反応により再生される。アミノ基がピリドキサミンリン酸からアミノアクセプターに移されることでキラルアミンが生産され、補酵素が再生される。本発明のピリドキサール−5’−リン酸は、ビタミンB6ファミリーの他のメンバー、とりわけピリドキサール(PL)、ピリドキサミン(PM)およびそれらのリン酸化対応物であるピリドキシンリン酸(PNP)およびピリドキサミンリン酸(PMP)などにより置き換えることができる。
【0031】
「天然に存在する」または「野生型」とは、自然において見出される形態を指す。例えば、天然に存在する、または野生型のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、自然における供給源から単離することができ、ヒトの操作により意図的に改変されていない、生物中に存在する配列である。
【0032】
例として細胞、核酸またはポリペプチドを参照して用いられる場合の「組換え」は、物質、または天然もしくは天然型の物質に対応する物質であって、他の場合では自然において存在しない様式で改変された、またはそれらと同一であるが合成物質からおよび/もしくは組換え技術を用いた操作により生産もしくは導出される物質を指す。限定されない例として、とりわけ、天然(非組換え)型の細胞内で見出されない遺伝子を発現する、または他の場合では異なるレベルで発現する天然遺伝子を発現する組換え細胞が挙げられる。
【0033】
「配列同一性のパーセンテージ」、「パーセント同一性」および「パーセント同一である」は、ポリヌクレオチド配列間またはポリペプチド配列間の比較を指すのに本明細書中で用いられ、比較ウインドウにわたる2つの最適に整列された配列を比較することにより決定されるものであり、比較ウインドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の一部は2つの配列の最適なアラインメントのための参照配列と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは同一の核酸塩基もしくはアミノ酸残基のいずれかが両配列中で生じる位置の数を決定することにより計算され、または核酸塩基もしくはアミノ酸残基がギャップを有して整列されることでマッチした位置の数を得て、マッチした位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で除し、結果に100を乗じることで配列同一性のパーセンテージを得る。最適なアラインメントおよびパーセント配列同一性の決定は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムを用いて実施される(例として、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403−410およびAltschul et al.,1977,Nucleic Acids Res.3389−3402を参照)。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを通じて公的に入手可能である。
【0034】
簡潔には、BLAST分析は、クエリ配列中の長さWの短いワードを同定することによりハイスコアの配列対(HSP)を同定することを最初に伴い、これはデータベース配列中の同じ長さのワードと整列させたときにマッチするか、またはいくらかの正の値の閾値スコアTを満たすかのいずれかである。Tは、近隣ワードスコア閾値(Altschul et al、上記)と呼ばれる。これらの初期近隣ワードのヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始するためのシードとして働く。ワードヒットは次いで、累積アラインメントスコアが増加することができる限り、各配列に沿って両方向に伸ばされる。累積スコアは、ヌクレオチド配列の場合、パラメータM(マッチング残基対に対する報酬スコア;常に>0)およびN(ミスマッチング残基対に対するペナルティスコア;常に<0)を用いて計算される。アミノ酸配列の場合、スコア行列が累積スコアを計算するのに用いられる。各方向におけるワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量X低下する;1もしくは複数の負のスコア残基アラインメントの蓄積のため、累積スコアがゼロもしくはそれ以下になる;またはいずれかの配列の末端に到達する場合に停止される。BLASTアルゴリズムパラメータW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列の場合)は、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4および両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワード長(W)、10の期待値(E)およびBLOSUM62スコア行列を用いる(Henikoff and Henikoff,1989,Proc Natl Acad Sci USA 89:10915を参照)。
【0035】
2つの配列についてのパーセント同一性の提供において、BLASTと同様に機能する多数の他のアルゴリズムが入手可能である。比較のための最適な配列アラインメントは、例として、Smith and Waterman,1981,Adv.Appl.Math.2:482の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444の類似法の検索により、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(GCG Wisconsin Software Package中のGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、または視覚的検査により行うことができる(一般に、Current Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,eds.,Current Protocolsを参照、Greene Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley&Sons,Inc.とのジョイントベンチャー(1995 Supplement)(Ausubel))。加えて、配列アラインメントおよびパーセント配列同一性の決定は、提供されるデフォルトのパラメータを用いて、GCG Wisconsin Softwareパッケージ(Accelrys、Madison WI)中のBESTFITまたはGAPプログラムを使うことができる。
【0036】
「実質的な同一性」とは、少なくとも20残基の位置の比較ウインドウにわたって、しばしば少なくとも30〜50残基のウインドウにわたって参照配列と比較して、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも85パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも89パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性、およびさらにより好ましくは少なくとも99パーセントの配列同一性を持つポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列を指し、配列同一性のパーセンテージは、比較ウインドウにわたって、参照配列を、合計で参照配列の20パーセントまたはそれ以下である欠失または付加を包含する配列と比較することにより計算される。ポリペプチドに適用される特定の実施形態において、用語「実質的な同一性」は、2つのポリペプチド配列が、デフォルトのギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどにより最適に整列された場合、少なくとも80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも89パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセントの配列同一性またはそれ以上(例として、99パーセントの配列同一性)を共有することを意味する。好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換により異なる。
【0037】
「立体選択性」とは、化学的または酵素的反応において1の立体異性体が別の立体異性体に対して優先的に形成されることを指す。立体選択性は部分的であることができ、この場合1の立体異性体の形成が他方に対して有利であり、または1の立体異性体のみが形成される場合、これは完全であり得る。立体異性体が鏡像異性体であるとき、立体選択性は、両方の合計における一方の鏡像異性体の割合(典型的にパーセンテージとして報告される)であるエナンチオ選択性と呼ばれる。これは一般に、式[多い方の鏡像異性体−少ない方の鏡像異性体]/[多い方の鏡像異性体+少ない方の鏡像異性体]に従ってそれから計算される鏡像異性体過剰率(e.e.)として、当技術分野において代わりに報告される(典型的にパーセンテージとして)。立体異性体がジアステレオ異性体であるとき、立体選択性は、2のジアステレオマーの混合物における1のジアステレオマーの割合(典型的にパーセンテージとして報告される)であるジアステレオ選択性と呼ばれ、一般にジアステレオマー過剰率(d.e.)として代わりに報告される。鏡像異性体過剰およびジアステレオマー過剰は、立体異性体過剰の型である。
【0038】
「高度に立体選択的である」とは、基質(例として、式(2a))をその対応する生成物(例として、式(1a))へと、少なくとも約85%の立体異性体過剰率を伴って変換する能力がある化学的または酵素的反応を指す。
【0039】
「変換」とは、基質の対応する生成物への酵素的転換を指す。「パーセント変換」とは、特定の条件下である時間内に生成物へと変換された基質のパーセントを指す。したがって、例えば、トランスアミナーゼポリペプチドの「酵素活性」または「活性」は、基質の生成物への「パーセント変換」として表すことができる。
【0040】
「安定である」とは、本明細書中で記載される固定化酵素が有機溶媒を含有する溶媒系中でその立体構造および/またはその活性を保持することができることを指す。ある特定の実施形態において、安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり10%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり9%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり8%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり7%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり6%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり5%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり4%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり3%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は、有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり2%未満の活性を喪失する。好ましくは、本明細書中で記載される安定な固定化酵素は有機溶媒を含有する溶媒系中で1時間あたり1%未満の活性を喪失する。
【0041】
本明細書中で開示されるポリペプチドの文脈において用いられる「アミノ酸」または「残基」とは、配列位置の特定のモノマーを指す(例として、P8は、配列番号2の8位の「アミノ酸」または「残基」がプロリンであることを指し示す)。
【0042】
「親水性アミノ酸または残基」とは、Eisenberg et al.,1984,J.Mol.Biol.179:125−142の正規化コンセンサス疎水性スケールに従ってゼロ未満の疎水性を呈する側鎖を持つアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる親水性アミノ酸として、L−Thr(T)、L Ser(S)、L His(H)、L Glu(E)、L Asn(N)、L Gln(Q)、L Asp(D)、L Lys(K)およびL Arg(R)が挙げられる。
【0043】
「酸性アミノ酸または残基」とは、そのアミノ酸がペプチドまたはポリペプチド中に包含される場合に約6未満のpK値を呈する側鎖を持つ、親水性のアミノ酸または残基を指す。酸性アミノ酸は、水素イオン喪失のため、生理的pHで負に帯電した側鎖を典型的に持つ。遺伝的にコードされる酸性アミノ酸として、L Glu(E)およびL Asp(D)が挙げられる。
【0044】
「塩基性アミノ酸または残基」とは、そのアミノ酸がペプチドまたはポリペプチド中に包含される場合に約6超のpK値を呈する側鎖を持つ、親水性のアミノ酸または残基を指す。塩基性アミノ酸は、ヒドロニウムイオンとの会合のため、生理的pHで正に帯電した側鎖を典型的に持つ。遺伝的にコードされる塩基性アミノ酸として、L Arg(R)およびL Lys(K)が挙げられる。
【0045】
「極性アミノ酸または残基」とは、生理的pHで帯電していないが、2つの原子により共通して共有されている電子対が原子のうちの1つによってより密接に保持されている少なくとも1の結合を持つ側鎖を持つ、親水性のアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる極性アミノ酸として、L Asn(N)、L Gln(Q)、L Ser(S)およびL Thr(T)が挙げられる。
【0046】
「疎水性アミノ酸または残基」とは、Eisenberg et al.,1984,J.Mol.Biol.179:125−142の正規化コンセンサス疎水性スケールに従ってゼロ超の疎水性を呈する側鎖を持つアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる疎水性アミノ酸として、L Pro(P)、L Ile(I)、L Phe(F)、L Val(V)、L Leu(L)、L Trp(W)、L Met(M)、L Ala(A)およびL Tyr(Y)が挙げられる。
【0047】
「芳香族アミノ酸または残基」とは、少なくとも1の芳香環または芳香族複素環を包含する側鎖を持つ、親水性または疎水性のアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる芳香族アミノ酸として、L Phe(F)、L Tyr(Y)、L His(H)およびL Trp(W)が挙げられる。L His(H)ヒスチジンは、親水性残基として、または拘束性残基として本明細書中で分類される。
【0048】
「非極性アミノ酸または残基」とは、生理的pHで帯電しておらず、2つの原子により共通して共有されている電子対が2つの原子の各々により一般に等しく保持されている結合を持つ側鎖(すなわち側鎖は極性でない)を持つ、疎水性のアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる非極性アミノ酸として、L Gly(G)、L Leu(L)、L Val(V)、L Ile(I)、L Met(M)およびL Ala(A)が挙げられる。
【0049】
「脂肪族アミノ酸または残基」とは、脂肪族炭化水素の側鎖を持つ、疎水性のアミノ酸または残基を指す。遺伝的にコードされる脂肪族アミノ酸として、L Ala(A)、L Val(V)、L Leu(L)およびL Ile(I)が挙げられる
「システイン」またはL Cys(C)は、他のL Cys(C)アミノ酸または他のスルファニル−もしくはスルフヒドリル−含有アミノ酸とジスルフィド架橋を形成することができる点で普通でない。「システイン様残基」として、システイン、およびジスルフィド架橋の形成に利用可能なスルフヒドリル部分を含有する他のアミノ酸が挙げられる。L Cys(C)(およびSH含有側鎖を有する他のアミノ酸)が還元された遊離SHまたは酸化されたジスルフィド架橋形態のいずれかでペプチド中に存在できることは、L Cys(C)がペプチドに正味の疎水性または親水性の特徴を与えるかどうかに影響する。L Cys(C)はEisenbergの正規化コンセンサススケール(Eisenberg et al.,1984、上記)に従って0.29の疎水性を呈するが、本開示の目的について、L Cys(C)はそれ自身の固有の群に分類されることが理解されるものである。
【0050】
「ヒドロキシル含有アミノ酸または残基」とは、ヒドロキシル(−OH)部分を含有するアミノ酸を指す。遺伝的にコードされるヒドロキシル含有アミノ酸として、L Ser(S)、L Thr(T)およびL−Tyr(Y)が挙げられる。
【0051】
トランスアミナーゼ
一般的に、トランスアミナーゼは、ケトンのキラルアミンへの直接的なアミノ化を触媒する。トランスアミナーゼの例として、アミノ基(NH
2)および水素原子を第1級アミン(3)からアクセプターカルボニル化合物(2)に移動させ、アミンドナーをその対応するカルボニル化合物(4)に、アクセプターをその対応する第1級アミン(1)に変換する酵素能力を持つ任意のポリペプチドが挙げられ、
【化5】
【0052】
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4の各々は、独立して採用される場合、置換されていない、または1もしくは複数の酵素的に非阻害性の基で置換されたアルキル、アルキルアリール基またはアリール基である。R
1およびR
3は、構造またはキラリティーにおいて、それぞれR
2およびR
4と同一であることも異なることもできる。基R
1およびR
2またはR
3およびR
4は、一緒になって、置換されていない、置換された、または他の環と縮合した環を形成し得る。
【0053】
本明細書中で記載されるのは、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(「ケトアミド基質」)を(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(「生成物」)へと変換する能力がある組換えトランスアミナーゼを含む、固定化トランスアミナーゼである。
【0054】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼのある特定の実施形態において、固定化トランスアミナーゼとして、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(「ケトアミド基質」)を、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(「生成物」)へと、アミノ基ドナーの存在下で、分析技術、例えばHPLC−UV吸光度などにより測定可能なレベルにまで変換する能力があるトランスアミナーゼが挙げられる。
【0055】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼの他の実施形態において、固定化トランスアミナーゼとして、配列番号2のトランスアミナーゼが挙げられる。配列番号1は、配列番号2のトランスアミナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを記述する。
【0056】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼのなおさらなる他の実施形態において、固定化トランスアミナーゼとして、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(「ケトアミド基質」)を(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(「生成物」)へと、アミノ基ドナーの存在下で、分析技術、例えばHPLC−UV吸光度などにより測定可能なレベルにまで変換することを、配列番号2と比較して改良する能力があるトランスアミナーゼが挙げられる。かかるトランスアミナーゼは、2010年2月26日に出願された米国特許出願第12/714397号に記載されており、この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0057】
いくつかの実施形態において、ケトアミド基質、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オンを生成物(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンへと、アミノ基ドナーの存在下で、分析技術、例えばHPLC−UV吸光度などにより検出可能な生成物レベルにまで変換する能力があるトランスアミナーゼは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166または168の配列に対応するアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態において、トランスアミナーゼは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166または168の参照配列と少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0059】
配列番号3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、91、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165または167は、配列番号4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166または168のトランスアミナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを記述する。
【0060】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼのある特定の実施形態において、トランスアミナーゼは、配列番号16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166または168よりなる群から選択される。
【0061】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼの他の実施形態において、トランスアミナーゼは、配列番号80、86、96、98、100、102、110または166よりなる群から選択される。
【0062】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼとして、疎水性相互作用により固体支持体に物理的に付着した、または共有結合により固体支持体に化学的に付着したトランスアミナーゼが挙げられる。
【0063】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼのある特定の実施形態において、固定化トランスアミナーゼとして、疎水性相互作用により固体支持体に物理的に付着したトランスアミナーゼが挙げられる。好適なトランスアミナーゼは、疎水性のアミノ酸または残基、すなわちEisenberg et al.,1984,J.Mol.Biol.179:125−142の正規化コンセンサス疎水性スケールに従ってゼロ超の疎水性を呈する少なくとも1の側鎖を包含するアミノ酸または残基を包含する。遺伝的にコードされる疎水性アミノ酸として、L Pro(P)、L Ile(I)、L Phe(F)、L Val(V)、L Leu(L)、L Trp(W)、L Met(M)、L Ala(A)およびL Tyr(Y)が挙げられる。ある特定の実施形態において、トランスアミナーゼは、例えばL Gly(G)、L Leu(L)、L Val(V)、L Ile(I)、L Met(M)およびL Ala(A)などであるが、これらに限定されるものではない非極性アミノ酸または残基を包含する。他の実施形態において、トランスアミナーゼは、例えばL Ala(A)、L Val(V)、L Leu(L)およびL Ile(I)などであるが、これらに限定されるものではない脂肪族アミノ酸または残基を包含する。なお他の実施形態において、トランスアミナーゼは、例えばL Phe(F)、L Tyr(Y)およびL Trp(W)などであるが、これらに限定されるものではない芳香族アミノ酸または残基を包含する。
【0064】
疎水性相互作用により固体支持体、例えば樹脂などに物理的に付着したトランスアミナーゼの好適な例は、配列番号102である。疎水性相互作用により固体支持体、例えば樹脂などに物理的に付着したトランスアミナーゼの好適な例は、配列番号110である。
【0065】
本明細書中で記載される固定化されたもののある特定の実施形態において、共有結合により固体支持体に化学的に付着したトランスアミナーゼが挙げられる。好適なトランスアミナーゼは、酸性または塩基性のアミノ酸または残基を包含する。酸性アミノ酸として、L Glu(E)およびL Asp(D)が挙げられる。塩基性アミノ酸として、L Arg(R)およびL Lys(K)が挙げられる。固体支持体に化学的に付着させることができる他のトランスアミナーゼとして、親水性アミノ酸もしくは残基、ヒドロキシル含有アミノ酸もしくは残基または極性アミノ酸もしくは残基もしくはトランスアミナーゼを包含するトランスアミナーゼが挙げられる。固体支持体に化学的に付着させることができるなお他のトランスアミナーゼとして、システインを包含するトランスアミナーゼが挙げられる。1の例として、トランスアミナーゼは、エポキシド官能性を含有する樹脂に共有結合したL Lys(K)を含有する。
【0066】
共有結合により固体支持体、例えば樹脂などに化学的に付着したトランスアミナーゼの好適な例は、配列番号102である。共有結合により固体支持体、例えば樹脂などに化学的に付着したトランスアミナーゼの好適な例は、配列番号110である。
【0067】
本明細書中で記載されるように、本開示のトランスアミナーゼポリペプチドは、トランスアミナーゼポリペプチドが他のポリペプチドと融合した融合ポリペプチドの形態であることができ、この他のポリペプチドは、例えば、限定でない例として、抗体タグ(例として、mycエピトープ)、精製配列(例として、金属に結合するためのHisタグ)および細胞局在シグナル(例として、分泌シグナル)などである。このように、トランスアミナーゼポリペプチドは、他のポリペプチドと融合させて、または融合させずに用いることができる。
【0068】
本明細書中で記載されるポリペプチドは、遺伝的にコードされるアミノ酸に制限されない。遺伝的にコードされるアミノ酸に加えて、本明細書中で記載されるポリペプチドは、天然に存在するおよび/または合成の非コードアミノ酸から、全体的にまたは部分的に構成され得る。本明細書中で記載されるポリペプチドを構成し得る、ある特定の一般に遭遇する非コードアミノ酸として、遺伝的にコードされるアミノ酸のD−立体異性体;2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr);α アミノイソ酪酸(Aib);ε アミノヘキサン酸(Aha);δ アミノ吉草酸(Ava);N−メチルグリシンまたはサルコシン(MeGlyまたはSar);オルニチン(Orn);シトルリン(Cit);t−ブチルアラニン(Bua);t−ブチルグリシン(Bug);N−メチルイソロイシン(MeIle);フェニルグリシン(Phg);シクロヘキシルアラニン(Cha);ノルロイシン(Nle);ナフチルアラニン(Nal);2−クロロフェニルアラニン(Ocf);3−クロロフェニルアラニン(Mcf);4 クロロフェニルアラニン(Pcf);2 フルオロフェニルアラニン(Off);3 フルオロフェニルアラニン(Mff);4 フルオロフェニルアラニン(Pff);2−ブロモフェニルアラニン(Obf);3−ブロモフェニルアラニン(Mbf);4−ブロモフェニルアラニン(Pbf);2−メチルフェニルアラニン(Omf);3−メチルフェニルアラニン(Mmf);4−メチルフェニルアラニン(Pmf);2−ニトロフェニルアラニン(Onf);3−ニトロフェニルアラニン(Mnf);4−ニトロフェニルアラニン(Pnf);2−シアノフェニルアラニン(Ocf);3−シアノフェニルアラニン(Mcf);4−シアノフェニルアラニン(Pcf);2−トリフルオロメチルフェニルアラニン(Otf);3−トリフルオロメチルフェニルアラニン(Mtf);4−トリフルオロメチルフェニルアラニン(Ptf);4−アミノフェニルアラニン(Paf);4−ヨードフェニルアラニン(Pif);4−アミノメチルフェニルアラニン(Pamf);2,4−ジクロロフェニルアラニン(Opef);3,4−ジクロロフェニルアラニン(Mpcf);2,4−ジフルオロフェニルアラニン(Opff);3,4−ジフルオロフェニルアラニン(Mpff);ピリド−2−イルアラニン(2pAla);ピリド−3−イルアラニン(3pAla);ピリド−4−イルアラニン(4pAla);ナフト−1−イルアラニン(1nAla);ナフト−2−イルアラニン(2nAla);チアゾリルアラニン(taAla);ベンゾチエニルアラニン(bAla);チエニルアラニン(tAla);フリルアラニン(fAla);ホモフェニルアラニン(hPhe);ホモチロシン(hTyr);ホモトリプトファン(hTrp);ペンタフルオロフェニルアラニン(5ff);スチリルカラニン(styrylkalanine)(sAla);アウスリルアラニン(authrylalanine)(aAla);3,3−ジフェニルアラニン(Dfa);3−アミノ−5−フェニペンタン酸(phenypentanoic acid)(Afp);ペニシラミン(Pen);1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic);β 2−チエニルアラニン(Thi);メチオニンスルホキシド(Mso);N(w)−ニトロアルギニン(nArg);ホモリジン(hLys);ホスホノメチルフェニルアラニン(pmPhe);ホスホセリン(pSer);ホスホスレオニン(pThr);ホモアスパラギン酸(hAsp);ホモグルタミン酸(hGlu);1−アミノシクロペンタ−(2または3)−エン−4 カルボン酸;ピペコリン酸(PA)、アゼチジン−3−カルボン酸(ACA);1−アミノシクロペンタン−3−カルボン酸;アリルグリシン(aOly);プロパルギルグリシン(pgGly);ホモアラニン(hAla);ノルバリン(nVal);ホモロイシン(hLeu)、ホモバリン(hVal);ホモイソロイシン(hIle);ホモアルギニン(hArg);N アセチルリジン(AcLys);2,4 ジアミノ酪酸(Dbu);2,3−ジアミノ酪酸(Dab);N−メチルバリン(MeVal);ホモシステイン(hCys);ホモセリン(hSer);ヒドロキシプロリン(Hyp)およびホモプロリン(hPro)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本明細書中で記載されるポリペプチドを構成し得る、さらなる非コードアミノ酸は、当業者に明らかである(例として、Fasman,1989,CRC Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology,CRC Press,Boca Raton,FL,at pp.3−70およびこの文献において引用された参考文献中で提供される様々なアミノ酸を参照、これらの全ては参照により組み込まれる)。これらのアミノ酸は、L配置であってもD配置であってもよい。
【0069】
当業者は、側鎖保護基を持つアミノ酸または残基もまた本明細書中で記載されるポリペプチドを構成し得ることを認識する。かかる保護されたアミノ酸は、この場合、芳香族のカテゴリーに属するものであり、これらの限定されない例として(保護基を括弧内に記載)、Arg(tos)、Cys(メチルベンジル)、Cys(ニトロピリジンスルフェニル)、Glu(δ−ベンジルエステル)、Gln(キサンチル)、Asn(N−δ−キサンチル)、His(bom)、His(ベンジル)、His(tos)、Lys(fmoc)、Lys(tos)、Ser(O−ベンジル)、Thr(O−ベンジル)およびTyr(O−ベンジル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本明細書中で記載されるポリペプチドを構成し得る、立体配置的に拘束性である非コードアミノ酸として、N メチルアミノ酸(L配置);1 アミノシクロペンタ−(2または3)−エン−4−カルボン酸;ピペコリン酸;アゼチジン−3−カルボン酸;ホモプロリン(hPro);および1 アミノシクロペンタン−3−カルボン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
上記のように、操作されたトランスアミナーゼ酵素を生成するように天然に存在するポリペプチド内に導入される様々な改変は、酵素の特定の性質を標的とすることができる。
【0072】
別の態様において、本開示は、改良されたトランスアミナーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、トランスアミナーゼポリペプチドを発現する能力がある組換えポリヌクレオチドを作り出すように、遺伝子発現を制御する1または複数の異種の制御性配列と作動的に連結され得る。操作されたトランスアミナーゼをコードする異種ポリヌクレオチドを含有する発現コンストラクトは、対応するトランスアミナーゼポリペプチドを発現するように適切な宿主細胞内に導入することができる。
【0073】
様々なアミノ酸に対応するコドンの知見によって、タンパク質配列が利用できると、対象をコードする能力がある全てのポリヌクレオチドについての記述が提供される。同じアミノ酸が代わりのまたは同義のコドンによりコードされる遺伝暗号の縮重は、非常に多数の核酸を作成することを可能にするが、それらの全ては本明細書中で開示される改良されたトランスアミナーゼポリペプチドをコードする。したがって、特定のアミノ酸配列を同定することにより、当業者は、タンパク質のアミノ酸配列を変えない方法で、1または複数のコドンの配列を単純に改変することにより、任意の数の異なる核酸を作成することができる。この点において、本開示は、可能なコドン選定に基づく組み合わせを選択することにより作成することができるポリペプチドそれぞれの可能なバリエーションを具体的に考えるものであり、全てのかかるバリエーションは本明細書中で開示される任意のポリペプチドについて具体的に開示されているとみなされるものである。
【0074】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、タンパク質が生産されている宿主細胞に適合するように好ましくは選択されるコドンを含むように、選択および/または操作することができる。例えば、細菌において用いられる好ましいコドンは、細菌内で遺伝子を発現させるのに用いられる。酵母において用いられる好ましいコドンは、酵母内での発現のために用いられる。哺乳動物において用いられる好ましいコドンは、哺乳動物細胞内での発現のために用いられる。トランスアミナーゼのコドン使用を最適化するのに必ずしも全てのコドンが置き換えられる必要はないことから(例として、天然の配列は好ましいコドンを持つことができるため、および好ましいコドンの使用が全てのアミノ酸残基について必要とされないことがあるため)、トランスアミナーゼポリペプチドをコードするコドン最適化ポリヌクレオチドは、完全長コード領域のコドン位置の約40%、50%、60%、70%、80%または90%超において好ましいコドンを含有し得る。
【0075】
固体支持体
本明細書中で記載されるのは、固体支持体に物理的または化学的に付着したトランスアミナーゼを含む固定化トランスアミナーゼである。支持体材料は、生物学的、非生物学的、有機、無機またはこれらのうち任意のものの組み合わせのいずれかである広範な材料を含むことができる。例えば、支持体材料は、重合させたラングミュアー・ブロジェット膜、官能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO
2、SiN
4、変性シリコンであってもよく、または幅広い種類のゲルもしくはポリマー、例えば(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチドコグリコリド)、ポリ酸無水物、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリシロキサン、重合性シリカ、ラテックス、デキストランポリマー、エポキシ、ポリカーボネートもしくはこれらの組み合わせなどのうちの任意の1であってもよい。支持体材料は平面の結晶性支持体材料であることができ、これは例えばシリカ系の支持体材料(例として、ガラス、石英など)、または例として半導体およびマイクロプロセッサ産業において用いられる結晶性支持体材料、例えばシリコン、ガリウムヒ素などである。シリカエアロゲルもまた支持体材料として用いることができ、当該技術分野で公知の方法により調製することができる。エアロゲル支持体材料は、自立基板として、または別の支持体材料のための表面コーティングとして用いられ得る。
【0076】
支持体材料は任意の形態または形状を取ることができ、典型的に、プレート、スライド、ビーズ、ペレット、ディスク、粒子、ストランド、沈殿物、膜であり、多孔質ゲル、シート、チューブ、球体、コンテナ、キャピラリー、パッド、スライス、フィルム、チップ、マルチウェルプレートまたはデイッシュ、光ファイバーなどであってもよい。典型的に支持体材料は無生物の形態を取るが、いくつかの付着ペプチド用途、例えばフローサイトメトリーまたはin situハイブリダイゼーションなどのため、剛体または半剛体である任意の形態であることができる。支持体材料は、捕捉プローブが位置する隆起または陥没した領域を含有し得る。支持体材料の表面は、周知の技術を用いてエッチングして、所望の表面形質、例えばトレンチ、v溝、メサ構造などを備えることができる。
【0077】
支持体材料上の表面は、支持体の内部の部分と同じ材料から構成することができ、または異なる材料から作成することもできるものであり、化学的または物理的な手段により内部の支持体材料に結合することができる。かかる結合された表面は、幅広い種類の材料、例えば、ポリマー、プラスチック、樹脂、多糖、シリカもしくはシリカ系の材料、炭素、金属、無機ガラス、膜または上で列挙された支持体材料のうちの任意のものから構成され得る。一実施形態において、表面は光学的に透明であり、表面Si−−OH官能性、例えばシリカ表面上に見出されるものなどを持つことができる。
【0078】
ガラスまたはプラスチックの顕微鏡スライドは、マイクロアレイ分析用の固体マトリックス支持体として一般に用いられている。マイクロアレイを生産するのに用いられる不透明マトリックス−コーティング材料として、ナイロン、PVDF(ポリビニリデンフルオリド)およびニトロセルロースが挙げられる。ニトロセルロースは、50年より長い間使用されている従来のポリマー基材であり、マイクロアレイ付着用途に用いることができる(例として、Tonkinson and Stillman,Frontiers in Bioscience 7:c1−12,2002)。不透明ニトロセルロースは、生体分子分析のためにタンパク質および核酸を固定するのに広く用いられている。ニトロセルロースは定量的に近い様式で目的の分子を固定し、短期および長期の保存を可能にする。ニトロセルロースはまた、溶液相標的種が固定化された実体に効率的に結合することも可能にする。
【0079】
固体支持体は、付着分子を適用し得る任意の好適な組成物からなり得る。これは、付着分子の結合を促すため、または任意の他の所望の目的、例えば実体の活性もしくは任意の他の所望の性質に好都合な条件の育成、もしくは他の実体との望まれない相互作用の回避などのため、付着/分子ペプチドの適用前に予め処理してもよく、または官能基化してもよい。多くのかかる表面処理および/または官能基化が当該技術分野で公知であり、好適な処理および/または官能基化の選定は付着分子/ペプチドおよび実体の個性および特性に依存し、付随する条件および所望の活性に依存する。
【0080】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼに関して、固体支持体は樹脂である。樹脂は任意の好適な組成物から作成することができ、ポリメタクリレートおよびスチレン/DVBコポリマーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。かかる樹脂は官能基を包含し、組換えトランスアミナーゼの樹脂との共有結合を促すことができる。好適な官能基として、エポキシドおよびアミノエポキシドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。加えて、他の官能基、例えばオクタデシルなど、および多孔構造を包含する樹脂は、組換えトランスアミナーゼとの疎水性相互作用の生成を促す。
【0081】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼのある特定の実施形態において、樹脂は、エポキシド官能基を有するポリメタクリレート、アミノエポキシド官能基を有するポリメタクリレート、スチレン/DVBコポリマーまたはオクタデシル官能基を有するポリメタクリレートを含む。好適な樹脂の例として、SEPABEADS EC−EP、SEPABEADS EC−HFA/S、SEPABEADS EXA252、SEPABEADS EXE119およびSEPABEADS EXE120が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
以下の表には、本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼに関連して用いることが可能である好適な樹脂が挙げられる。
【表1】
【0083】
本明細書中で記載される固定化のある特定の実施形態において、固定化トランスアミナーゼとして、疎水性相互作用によりトランスアミナーゼに物理的に付着した樹脂が挙げられる。好適な樹脂は、スチレン/DVBコポリマーまたはオクタデシル官能基を有するポリメタクリレートを含む。例として、SEPABEADS EXA252およびSEPABEADS EXE120が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
本明細書中で記載される固定化の他の実施形態において、固定化トランスアミナーゼとして、共有結合によりトランスアミナーゼに化学的に付着した樹脂が挙げられる。好適な樹脂は、エポキシド官能基を有するポリメタクリレートまたはアミノエポキシド官能基を有するポリメタクリレートを含む。例として、SEPABEADS EC−EP、SEPABEADS EC−HFA/SおよびSEPABEADS EXE119が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
本明細書中で記載される固定化のなお他の実施形態において、固定化トランスアミナーゼは、樹脂SEPABEADS EXE120(Mitsubishi)に物理的に付着したトランスアミナーゼ配列番号102を含む。本明細書中で記載される固定化のなお他の実施形態において、固定化トランスアミナーゼは、樹脂SEPABEADS EXE120(Mitsubishi)に物理的に付着したトランスアミナーゼ配列番号110を含む。
【0086】
固定化トランスアミナーゼを作成する方法
また本明細書中で記載されるのは、固定化トランスアミナーゼを作成する方法である。本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼを作成する方法のある特定の実施形態において、方法は、トランスアミナーゼの緩衝液を作成することから始まる。トランスアミナーゼポリペプチドはピリドキサールリン酸(PLP)を補酵素として用い得るが、この補酵素は、例として、ポリペプチドを発現した宿主細胞により提供されるように、調製されたときに酵素に結合していることがある。いくつかの実施形態において、PLP、PLPアナログまたはPLPの前駆体は、トランスアミナーゼポリペプチドを発現させる間に宿主細胞の培地に加えることができる。方法のいくつかの実施形態において、PLPまたはPLPアナログを反応に加えて、酵素活性に必要とされる補酵素を提供することができる。酵素活性に十分なPLPの量は、当業者が決定することができる。
【0087】
固定化トランスアミナーゼを作成する方法のいくつかの実施形態において、トランスアミナーゼ溶液は、約5.0から約9.0のpHを含むことができる。いくつかの実施形態において、方法のための反応条件は、約7.5のpHである。
【0088】
方法は、樹脂を溶液に加えることにより、トランスアミナーゼを樹脂と接触させる、またはインキュベートすることをさらに含む。溶液は次いで、ある時間、例えば一晩などの間、撹拌される。
【0089】
いくつかの実施形態において、方法を行うための反応条件は、約5℃から約70℃の温度を含むことができる。いくつかの実施形態において、反応条件は約25℃の温度(室温)である。
【0090】
反応が完了したら、固定化トランスアミナーゼをろ過してすすぐ。固定化酵素をバッファーですすいだ後、本明細書中で記載される方法のある特定の実施形態において、調製物は、100%有機溶媒系中で用いられる前に乾燥させる。固定化酵素は、真空下、窒素スイープを使用して乾燥させて、固定化酵素樹脂の外表面から水を除去することができる。固定化調製物は、固定化酵素ベッド全体で均等な水分含量にするように、および固定化酵素調製物のいずれの部分も過剰乾燥または不十分な乾燥になることを防ぐように乾燥させながら、撹拌することができる。固定化調製物はまた、有機溶媒で洗浄することにより乾燥させることもできる。過剰乾燥は、水が樹脂に付着した酵素分子から引き離されるため、活性喪失をもたらすことがある。不十分な乾燥は、有機溶媒系中での不十分な物質移動をもたらし、所望の基質のアミノ基転移に影響することがある。
【0091】
固定化トランスアミナーゼを使用する方法
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼは、アミノ基(NH
2)および水素原子を第1級アミンからアクセプターカルボニル化合物に移動させ、アミンドナーをその対応するカルボニル化合物に、およびアクセプターをその対応する第1級アミンに変換するのに用いることができる。かかる方法は、アクセプターカルボニル化合物を本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼと、アミノ基ドナーの存在下で、好適な有機溶媒中で、好適な反応条件下で接触させることを含み、アクセプターカルボニル化合物はその対応する第1級アミンに変換される。
【0092】
いくつかの実施形態において、固定化トランスアミナーゼは、*でマークした不斉中心において指し示した立体化学的配置を持つ構造式(I)の化合物
【化6】
【0093】
を、反対の鏡像異性体に対して少なくとも70%の鏡像異性体過剰率で調製する方法において用いることができ、式中、
ZはOR
2もしくはNR
2R
3であり、
R
1はC
1−8アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C
1−2アルキルもしくはヘテロアリール−C
1−2アルキルであり、
R
2およびR
3は各々独立して水素、C
1−8アルキル、アリールもしくはアリール−C
1−2アルキルであり、または
R
2およびR
3は、それらが付着している窒素原子と一緒になって、O、S、NHおよびNC
0−4アルキルから選択される追加のヘテロ原子を含有してもよい4員から7員の複素環系を形成し、複素環は置換されていない、もしくはオキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C
1−4アルコキシおよびC
1−4アルキルから独立して選択される1から3個の置換基で置換されており、式中、アルキルおよびアルコキシは置換されていない、もしくは1から5個のフッ素で置換されており、複素環系は5員から6員の飽和もしくは芳香族炭素環系、もしくはO、SおよびNC
0−4アルキルから選択される1から2個のヘテロ原子を含有する5員から6員の飽和もしくは芳香族複素環系と縮合していてもよく、縮合環系は置換されていない、またはヒドロキシ、アミノ、フッ素、C
1−4アルキル、C
1−4アルコキシおよびトリフルオロメチルから選択される1から2個の置換基で置換されている。これらの実施形態において、方法は、構造式(II)のプロキラルケトン
【化7】
【0094】
を、式(II)の化合物を式(I)の化合物に変換するため、固定化トランスアミナーゼポリペプチドと、アミノ基ドナーの存在下で、好適な有機溶媒中で、好適な反応条件下で接触させる工程を含む。
【0095】
方法のいくつかの実施形態において、式(II)のR
1はベンジルであり、ベンジルのフェニル基は置換されていない、またはフッ素、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシよりなる群から選択される1から3個の置換基で置換されている。
【0096】
方法のいくつかの実施形態において、式(II)のZはNR
2R
3である。
【0097】
方法のいくつかの実施形態において、式(II)のNR
2R
3は構造式(III)の複素環であって、
【化8】
【0098】
式中、R
4は水素であるか、または置換されていない、もしくは1から5個のフッ素で置換されたC
1−4アルキルである。
【0099】
いくつかの実施形態において、固定化トランスアミナーゼは、***でマークした不斉中心において(R)配置を持つ構造式(1)の化合物
【化9】
【0100】
を、反対の(S)配置を持つ鏡像異性体に対して少なくとも70%の鏡像異性体過剰率で調製する方法において用いることができ、式中、
Arは置換されていない、またはフッ素、トリフルオロメチルおよびトリフルオロメトキシよりなる群から独立して選択される1から5個の置換基で置換されたフェニルであり、ならびに
R
4は水素であるか、または置換されていない、もしくは1から5個のフッ素で置換されたC
1−4アルキルである。かかる実施形態において、方法は、構造式(2)のプロキラルケトン
【化10】
【0101】
を、式(2)の化合物を式(1)の化合物に変換するため、本明細書中で開示される固定化トランスアミナーゼポリペプチドと、アミノ基ドナーの存在下で、好適な有機溶媒中で、好適な反応条件下で接触させる工程を含む。
【0102】
方法のいくつかの実施形態において、式(2)のArは2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、R
4はトリフルオロメチルである。
【0103】
方法のいくつかの実施形態において、式(2)のArは2,4,5−トリフルオロフェニルである。
【0104】
いくつかの実施形態において、トランスアミナーゼは、式(1a)の化合物、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン
【化11】
【0105】
を、鏡像異性体過剰で調製する方法において用いることができる。
【0106】
これらの実施形態において、方法は、構造式(2a)のプロキラルケトン、4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン)
【化12】
【0107】
を、式(2a)の化合物を式(1a)の化合物に変換するため、本明細書中に記載される固定化トランスアミナーゼと、アミノ基ドナーの存在下で、好適な有機溶媒中で、好適な反応条件下で接触させる工程を含む。
【0108】
上の方法のいくつかの実施形態において、式(I)の化合物、式(1)の化合物または式(1a)の化合物は、少なくとも70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の鏡像異性体過剰率で生産される。
【0109】
方法のいくつかの実施形態において、式(I)の化合物、式(1)の化合物または式(1a)の化合物は、少なくとも99%の鏡像異性体過剰率で生産される。
【0110】
式(II)の化合物、式(2)の化合物および式(2a)の化合物は、それらの合成と一緒に、とりわけ、米国特許第7,326,708号および第7,468,459号中に記載されており、これらの開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼを使用する方法は、1)4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オンを有機溶媒中に溶解する工程;2)4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オンを本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼと、アミノ基の存在下で接触させる工程を含む。
【0112】
本明細書中で記載されるのは、共有結合によりまたは疎水性相互作用により樹脂に付着した組換えトランスアミナーゼを含む固定化トランスアミナーゼであって、このトランスアミナーゼは有機溶媒中で安定である。本明細書中で記載される方法において用いることができる好適な有機溶媒として、当該技術分野で一般に知られている任意の有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、THF、DMSO、トルエン、イソプロピルアセテート、ヘキサン、プロパノール、ベンゼン、アセトン、キシレン、メチルエチルケトン、エーテルおよび酢酸エチルなどが挙げられる。本明細書中で記載される方法のある特定の例において、有機溶媒はイソプロピルアセテートである。
【0113】
ある特定の実施形態において、有機溶媒は非水飽和溶媒である。他の実施形態において、有機溶媒は水飽和溶媒である。水飽和は固定化酵素を一定の水濃度で保ち得るものであり、反応過程にわたって固定化酵素がさらに乾燥するのを防ぐ。このことは、固定化酵素が反応終了時に単離され、複数のバッチで再利用される場合、より優れた操作安定性を可能にすることができる。本明細書中で記載される方法のある特定の例において、有機溶媒は水飽和イソプロピルアセテートである。
【0114】
ある特定の実施形態において、トランスアミナーゼがその中で安定である溶媒は、溶媒系の成分である。本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼを使用する方法のある特定の実施形態において、溶媒系は100%の有機溶媒系である。他の実施形態において、溶媒系は50〜60%の有機溶媒を含有する。好ましくは、溶媒系は60〜70%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は70〜80%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は80〜90%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は90〜100%の有機溶媒を含有する。他の実施形態において、溶媒系は少なくとも50%の有機溶媒を含有する。他の実施形態において、溶媒系は少なくとも55%の有機溶媒を含有する。好ましくは、溶媒系は少なくとも60%の有機溶媒を含有する。好ましくは、溶媒系は少なくとも65%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は少なくとも70%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は少なくとも75%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は少なくとも80%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は少なくとも85%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は少なくとも90%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は少なくとも95%の有機溶媒を含有する。より好ましくは、溶媒系は少なくとも100%の有機溶媒を含有する。溶媒系は1より多い有機溶媒を含有することができ、この場合、固定化トランスアミナーゼは溶媒系中に存在する有機溶媒の1または全ての中で安定である。
【0115】
上で論じたように、方法において用いられるアミノ基ドナーは、キラルアミンまたはアキラルアミンであることができる。アキラルなアミノ基ドナーは、特定の立体異性体への反応に限定されないという利点があり、したがってより少ない量のアミノ基ドナーを必要とする。様々な好適なアミノ基ドナーを用いることができ、これらとしては、限定でない例として、イソプロピルアミン(2−アミノプロパンとも呼ばれる)、L、DまたはDL アラニン、フェニルアラニン、グルタメート、グルタミン、ロイシン(または任意の他の好適なα−アミノ酸)、3−アミノ酪酸(または任意の他の好適なβ−アミノ酸)およびメチルベンジルアミンが挙げられる。いくつかの実施形態において、アミノ基ドナーはイソプロピルアミンである。いくつかの実施形態において、他のアミノ基ドナーを用い得るが、これらとしては、とりわけ、α−フェネチルアミン(1−フェニルエタンアミンとも呼ばれる)ならびにその鏡像異性体の(S)−1−フェニルエタンアミンおよび(R)−1−フェニルエタンアミン、2−アミノ−4−フェニルブタン、グリシン、L−グルタミン酸、L−グルタメート、グルタミン酸一ナトリウム、L−アスパラギン酸、L−リジン、L−オルニチン、β−アラニン、タウリン、n−オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、6−アミノヘキサン酸、4−アミノ酪酸、チラミンおよびベンジルアミン、2−アミノブタン、2−アミノ−1−ブタノール、1−アミノ−1−フェニルエタン、1−アミノ−1−(2−メトキシ−5−フルオロフェニル)エタン、1−アミノ−1−フェニルプロパン、1−アミノ−1−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1−アミノ−1−(4−ブロモフェニル)プロパン、1−アミノ−1−(4−ニトロフェニル)プロパン、1−フェニル−2−アミノプロパン、1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−2−アミノプロパン、2−アミノプロパノール、1−アミノ−1−フェニルブタン、1−フェニル−2−アミノブタン、1−(2,5−ジメトキシ−4−メチルフェニル)−2−アミノブタン、1−フェニル−3−アミノブタン、1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−アミノブタン、1−アミノ−2−メチルシクロペンタン、1−アミノ−3−メチルシクロペンタン、1−アミノ−2−メチルシクロヘキサン、1−アミノ−1−(2−ナフチル)エタン、3−メチルシクロペンチルアミン、2−メチルシクロペンチルアミン、2−エチルシクロペンチルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、1−アミノテトラリン、2−アミノテトラリン、2−アミノ−5−メトキシテトラリンおよび1−アミノインダンなどが挙げられ、これらは(R)および(S)両方の可能な単一異性体を包含し、全ての可能なアミン塩を包含する。本明細書中で記載される方法のある特定の例において、アミンドナーはイソプロピルアミンである。
【0116】
本明細書中で記載される方法のある特定の例において、固定化トランスアミナーゼは、樹脂SEPABEADS EXE120(Mitsubishi)に物理的に付着したトランスアミナーゼ配列番号102である。本明細書中で記載される方法のある特定の例において、固定化トランスアミナーゼは、樹脂SEPABEADS EXE120(Mitsubishi)に物理的に付着したトランスアミナーゼ配列番号110である。
【0117】
上記の方法のいくつかの実施形態において、本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼは再利用することができ、この場合、一度反応が完了したら、一度固定化トランスアミナーゼをろ過して取り除いて、その後に続く反応中で用いる。したがって、本明細書中で記載されるある特定の方法は、その後に続く反応中で用いるために固定化トランスアミナーゼをろ過して取り除く工程をさらに含むことができる。
【0118】
上の方法のいくつかの実施形態において、方法中の工程は、アミノ基がアミノ基アクセプターに移されるときにアミノ基ドナーから形成されるカルボニル副生成物を除去することをさらに含むことができる。かかるin situの除去は、順反応が優位になって、より多くの基質が次いで生成物に変換されるように、逆反応速度を低下させることができる。
【0119】
カルボニル副生成物の除去は、多数の方法で行うことができる。アミノ基ドナーがアミノ酸、例えばアラニンなどの場合、カルボニル副生成物のケト酸は、過酸化物との反応により除去することができる(例として、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0213845号を参照)。用いることができる過酸化物として、とりわけ、過酸化水素;ペルオキシ酸(ペル酸)、例えば過酢酸(CH
3CO
3H)、トリフルオロ過酢酸およびメタクロロペルオキシ安息香酸など;有機ペルオキシド、例えばt−ブチルペルオキシド((CH
3)
3COOH)など、または他の選択的酸化剤、例えば過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウム、MnO
2、KMnO
4、四酸化ルテニウムおよび関連の化合物などが挙げられる。あるいは、ピルビン酸除去は、乳酸デヒドロゲナーゼを利用することによる乳酸への還元を通じて、平衡を生成物アミンへとシフトさせることで達成することができる(例として、Koszelewski et al.,2008,Adv.Syn.Catal.350:2761−2766を参照)。ピルビン酸除去はまた、ピルビン酸デカルボキシラーゼを利用することによる二酸化炭素アセトアルデヒド(carbon dioxide acetoaldehyde)への脱炭酸を通じて達成することもできる(例として、Hohne et al.,2008,Chem BioChem 9:363−365を参照)。
【0120】
アミノ基ドナーの選定が水より高い蒸気圧を持つカルボニル副生成物(例として、低沸点の共生成物、例えば揮発性有機カルボニル化合物など)をもたらすいくつかの実施形態において、カルボニル副生成物は、反応溶液に非反応性ガスを注入することにより、または吸引を適用することで反応圧を下げて気相中に存在するカルボニル副生成物を除去することにより、除去することができる。非反応性ガスは、反応成分と反応しない任意のガスである。様々な非反応性ガスとして、窒素および希ガス(例として、不活性ガス)が挙げられる。いくつかの実施形態において、非反応性ガスは窒素ガスである。
【0121】
いくつかの実施形態において、方法中で用いられるアミノ酸ドナーはイソプロピルアミンであり、アミノ基がアミノ基アクセプターに移されると、これはカルボニル副生成物のアセトンを形成する。アセトンは、反応溶液に窒素ガスを注入するか、または吸引を適用して、アセトントラップ、例えば冷却器または他の冷トラップなどにより気相からアセトンを除去することによって、除去することができる。あるいは、アセトンは、ケトレダクターゼを用いてイソプロパノールへと還元することにより除去することができる。
【0122】
カルボニル副生成物が除去される上の方法のいくつかの実施形態において、対応するアミノ基ドナーをアミノ基転移反応の間に加えてアミノ基ドナーを補充し、および/または反応pHを維持することができる。アミノ基ドナーの補充はまた、生成物形成に向けて平衡をシフトさせ、それによって基質の生成物への変換を増大させる。したがって、アミノ基ドナーがイソプロピルアミンであり、アセトン生成物がin situで除去されるいくつかの実施形態において、イソプロピルアミンを溶液に加えて、アセトン除去の間に失われたアミノ基ドナーを補充することができる。あるいは、アミノ酸がアミノ基ドナーとして用いられる実施形態において、適切なアミノ酸デヒドロゲナーゼ酵素を用いて、アンモニアおよびNADHとの反応により、ケト酸カルボニル副生成物を再利用してアミノ酸に戻し、それによってアミノ基ドナーを補充することができる。
【0123】
本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼを使用する方法として、バッチ法および連続法が挙げられる。連続法は、ケトン基質が連続的に固定化トランスアミナーゼに接触し、生成物が連続的に回収される方法を包含する。例として、固定化トランスアミナーゼがカラム内に充填され、ケトン基質の溶液がカラムを通過するものが挙げられる。このように、ケトンは連続的に固定化樹脂に接触し、生成物はカラムを通過した後に回収される。
【0124】
いくつかの実施形態において、ケトアミド基質4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オンを生成物(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンへと変換する方法は、ケトアミド基質4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オンをイソプロピルアセテート中で生成物(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンに溶解すること;ケトアミド基質を本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼと、30から50℃の温度の反応条件下で、約1Mから約2Mのイソプロピルアミンの存在下で接触させることを含み、ケトアミド基質の少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%または98%もしくはそれ以上が24時間で生成物に変換される。いくつかの実施形態において、前述の反応を行う能力がある固定化トランスアミナーゼは、SEPABEADS EXE119、SEPABEADS EXE120、SEPABEADS EC−EP、SEPABEADS EC−HFA/SおよびSEPABEADS EXA252を含む樹脂に物理的または化学的に付着した、配列番号80、86、96、98、100、102、110または166に対応するアミノ酸配列を含む。
【0125】
いくつかの実施形態において、上の方法は、構造式(I)の化合物、構造式(1)の化合物または構造式(1a)の化合物を反応溶媒から単離する工程をさらに含むことができる。
【0126】
いくつかの実施形態において、上の方法は、構造式(1)の化合物または構造式(1a)の化合物を薬学的に許容される塩へと、この化合物を薬学的に許容される酸と好適な反応溶媒中で接触させることにより変換する工程をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される酸はリン酸であり、薬学的に許容される塩はリン酸二水素塩である。いくつかの実施形態において、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンの塩は、以下の化学式を持つリン酸一水和物塩である。
【化13】
【0127】
いくつかの実施形態において、(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−α]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミンホスフェート(1:1)一水和物を調製するための方法における、方法中の改良は、式(1a)の化合物を式(2a)の化合物へと、本明細書中で記載される固定化トランスアミナーゼを使用して、アミノ基ドナーの存在下で、好適な有機溶媒中で、好適な反応条件下で変換する工程を含み、式中、式(1a)の化合物は
【化14】
【0128】
であり、式(2a)の化合物は
【化15】
【0130】
リン酸一水和物塩の調製のいくつかの実施形態において、アミノドナーはイソプロピルアミンである。
【0131】
様々な塩を調製する方法は、米国特許第7,326,708号および第7,468,459号中に記載されており、これら文献の各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0132】
実施例1〜5:トランスアミナーゼの固定化
表2中に示される5つの異なる樹脂を評価した。
【表2】
【0133】
1g/L PLP(ピリドキサール−5−リン酸)を添加した、100mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)中の配列番号110の25g/L溶液を作成した。1gの各樹脂を5mLの酵素溶液と共に室温で一晩、振盪機中でインキュベートした。樹脂をろ過してトランスアミナーゼ溶液から取り除き、5mLの100mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)で5回すすいだ。樹脂性能を次いで、凍結乾燥した酵素調製物に対して、以下のアミノ基転移反応中で評価した。
【化16】
【0134】
固定化トランスアミナーゼ調製物は、凍結乾燥した酵素と比較して良好な特異活性を呈した。
【0135】
実施例6:SEPABEADS EXE120樹脂乾燥手法の評価および100%有機溶媒系中での固定化酵素活性の実証
固定化酵素(配列番号110/SEPABEADS EXE120樹脂)を真空下、窒素スイープを使用して乾燥させて、固定化酵素樹脂の外表面から水を除去した。固定化調製物は、固定化酵素ベッド全体で均等な水分含量にするように、および固定化酵素調製物のいずれの部分も過剰乾燥または不十分な乾燥になることを防ぐように乾燥させながら撹拌した。100mgのケトアミド基質を1mLの水飽和IPAc(イソプロピルアセテート)中に溶解した。40uLのIPM(イソプロピルアミン)を反応溶液に加えた。100mgの乾燥固定化トランスアミナーゼ(配列番号110/SEPABEADS EXE120樹脂)を反応に加えた。反応をThermomixer中、1000rpm、50℃で撹拌した。試料を70時間にわたって採取し、変換およびeeを決定した。>99.9% eeの所望のアミン生成物を得た。固定化トランスアミナーゼは、IPAc反応系中で活性を呈さなかった凍結乾燥した遊離酵素と比較して合理的な活性を呈した。
【0136】
実施例7:IPAc中でのシタグリプチン作成のためのプラグ流反応(Plug Flow Reaction)(PFR)方法
10mLのケトンアミド(ketonamide)基質溶液を作成した(IPAc中に100g/L〜400g/Lケトン、40uL/mL〜160uL/mLイソプロピルアミン)。0.75gの固定化トランスアミナーゼ(配列番号110/SEPABEADS EXE120樹脂)を、重力下、IPAcを用いて、カラム内にスラリー充填した。基質溶液をシリンジポンプを通じてカラムに供給し、50℃のカバーを付けた。流速を0.1mL/hに設定した。
【0137】
定常状態において、85〜90%のシタグリプチンアミン(>99% ee)変換をカラム出口において観察した。