【文献】
J. Control. Release,2003年,vol.88, no.2,pp.333-342
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インターロイキン4およびインターロイキン10を含む融合タンパク質であって、前記インターロイキン4が、前記インターロイキン10のN末端に融合される、融合タンパク質。
変形性関節症、慢性疼痛、局所性もしくは全身性の炎症、免疫活性化および/またはリンパ球増殖により特徴付けられる病態の予防または治療における使用のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
局所性もしくは全身性の炎症、免疫活性化、リンパ球増殖および/または慢性疼痛により特徴付けられる前記病態が、敗血症、成人性呼吸促迫症候群、同種および異種移植、皮膚炎、炎症性腸疾患、サルコイドーシス、アレルギー、乾癬、強直性脊椎関節炎、自己免疫疾患、糸球体腎炎、免疫複合体誘導性および他の型の脈管炎、多発性硬化症、シェーグレン病、痛風、リンパ球増殖性疾患、非ホジキンリンパ腫およびB細胞性慢性リンパ性白血病、熱傷、多発性損傷、脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化、糖尿病、体外透析および血液酸素化、虚血性再灌流障害、サイトカインもしくは治療用モノクローナル抗体のin vivo投与により誘導される毒性、慢性疼痛症候群ならびに神経障害性および/または炎症性の疼痛からなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための融合タンパク質。
変形性関節症、慢性疼痛、局所性もしくは全身性の炎症、免疫活性化および/またはリンパ球増殖により特徴付けられる病態の予防または治療における使用のための、請求項8に記載の遺伝子療法ベクター。
局所性もしくは全身性の炎症、免疫活性化および/またはリンパ球増殖により特徴付けられる前記病態が、敗血症、成人性呼吸促迫症候群、同種および異種移植、皮膚炎、炎症性腸疾患、サルコイドーシス、アレルギー、乾癬、強直性脊椎関節炎、自己免疫疾患、糸球体腎炎、免疫複合体誘導性および他の型の脈管炎、多発性硬化症、シェーグレン病、痛風、リンパ球増殖性疾患、非ホジキンリンパ腫およびB細胞性慢性リンパ性白血病、熱傷、多発性損傷、脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化、糖尿病、体外透析および血液酸素化、虚血性再灌流障害、サイトカインもしくは治療用モノクローナル抗体のin vivo投与により誘導される毒性、慢性疼痛症候群ならびに神経障害性および/または炎症性の疼痛からなる群から選択される、請求項17に記載の使用のためのベクター。
【発明を実施するための形態】
【0024】
一般的定義
「核酸分子」(または「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」もしくは「ヌクレオチド配列」)という用語は、一本鎖もしくは二本鎖の形態のDNAもしくはRNA分子、特に本発明に従ったタンパク質をコードするDNAを指す。「単離核酸配列」は、核酸配列が単離された天然環境にはない核酸配列、例えば、細菌宿主細胞または植物の細胞核またはプラスチドゲノム中の核酸配列を指す。
【0025】
「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、交換可能に使用され、特定の作用方式、サイズ、3次元構造または起源に関わらず、アミノ酸の鎖からなる分子を指す。「単離タンパク質」は、その天然環境にはない、例えばin vitroまたは組み換えの細菌または植物宿主細胞中にあるタンパク質を指すように使用される。
【0026】
「融合タンパク質」という用語は、2以上のタンパク質に由来するアミノ酸配列を有する、タンパク質またはポリペプチドを指す。融合タンパク質は、別々のタンパク質に由来するアミノ酸部分の間の、アミノ酸の連結領域またはリンカーもまた含んでもよい。
【0027】
「IL4-IL10融合タンパク質」という用語は、場合により、リンカーによって互いにカップリングされた、少なくともIL4およびIL10を含む融合ポリペプチドを指す。融合タンパク質は、追加のポリペプチド配列、例えばシグナル配列、His-タグ、抗体Fc断片などを含んでもよい。
【0028】
本明細書において使用する場合、「リンカー」は、2つのタンパク質またはポリペプチド、この場合にはIL4とIL10とをカップリングするために使用されるポリペプチドを意味する。リンカーは通常、アミノ酸、例えば、主にグリシンおよび/またはセリンのストレッチである。ある実施形態において、リンカーは、100ヌクレオチドまで、例えば、約2、5、7、10、15アミノ酸から、約15、20、25、30、35、50、75または100アミノ酸までの長さを有する、好ましくは主にセリンおよびグリシン残基を含む、アミノ酸のストレッチである。
【0029】
本明細書において使用する場合、「インターロイキン10」(IL10)は、任意の哺乳動物IL10、例えば、ヒトIL10、マウスIL10またはこれらの活性種もしくは対立遺伝子変異体、断片もしくは誘導体を指す。
【0030】
本明細書において使用する場合、「インターロイキン4」(IL4)は、任意の哺乳動物IL4、例えば、ヒトIL4、マウスIL4またはこれらの活性種もしくは対立遺伝子変異体、断片もしくは誘導体を指す。
【0031】
本明細書において使用する場合、「二量体」という用語は、2つのポリペプチドが、共有結合もしくは非共有結合の相互作用を介して安定に会合した分子を指す。「ホモ二量体」という用語は、2つの同一のポリペプチドが、共有結合もしくは非共有結合の相互作用を介して安定に会合した分子を指す。適切な実施形態において、これらは、非共有結合相互作用を介して安定に会合している。
【0032】
本発明の融合タンパク質(またはこれらの変異体もしくは断片)に関して、「機能性」は、IL4およびIL10の両方の機能性を提示する能力を指す。IL4およびIL10に関する機能性アッセイは、全血におけるリポ多糖類(LPS)により誘導されるサイトカインの放出(IL1、IL6、IL8、TNFα)である。
【0033】
「遺伝子」という用語は、細胞中のRNA分子(例えばmRNA)に転写される領域(転写領域)を含む、適切な制御領域(例えばプロモーター)に動作可能に連結されたDNA配列を意味する。したがって、遺伝子は、いくつかの動作可能に連結された配列、例えばプロモーター、例えば、翻訳開始に関係する配列を含む5'リーダー配列、(タンパク質)コード領域(cDNAまたはゲノムDNA)、イントロンおよび例えば、転写終結部位を含む3'非翻訳配列を含んでよい。
【0034】
「3'UTR」または「3'非翻訳配列」(多くの場合、3'非翻訳領域または3'末端とも称される)は、遺伝子のコード配列の下流に見出される核酸配列を指し、例えば、転写終結部位および(ほとんどであるがすべてではない真核性mRNAにおいて)ポリアデニル化シグナル(例えば、AAUAAAまたはこれらの変異体など)を含む。転写の終結後、mRNA転写産物は、ポリアデニル化シグナルの下流で切断され、mRNAの(翻訳が起こる場所である)細胞質への輸送に関連するポリ(A)尾部が付加される。
【0035】
「遺伝子の発現」は、適切な制御領域、特にプロモーターに動作可能に連結されたDNA領域が、生物学的に活性な、すなわち、生物学的に活性なタンパク質またはペプチド(または活性ペプチド断片)に翻訳され得るRNAに転写される過程を指す。「ポリペプチドの発現」は、mRNAが、分泌可能な、または分泌不可能なタンパク質産物に翻訳される過程を、さらに指す。
【0036】
「転写制御配列」は、転写制御配列に動作可能に連結された(コード)配列の転写速度を制御できる核酸配列として、本明細書において定義される。したがって、本明細書において定義される転写制御配列は、転写の開始、例えば、アテニュエーターまたはエンハンサーを含む、転写の維持および制御に必要なすべての配列要素(プロモーター要素)を含むと思われる。コード配列の上流の(5')転写制御配列を主に指すが、コード配列の下流(3')に見出される制御配列もまた、この定義に包含される。
【0037】
本明細書において使用する場合、「プロモーター」という用語は、1つまたは複数の遺伝子の転写を調節するために機能し、遺伝子の転写開始部位の転写方向に対して上流に位置し、DNA依存性RNAポリメラーゼに対する結合部位、転写開始部位ならびに限定するものではないが、転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位ならびにプロモーターからの転写の量を、直接または間接的に制御するように作用する、当業者に公知のヌクレオチドの任意の他の配列を含む任意の他のDNA配列の存在により構造的に同定される核酸断片を指す。「構成的」プロモーターは、大部分の組織において、大部分の生理学的および発達的条件下で活性であるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは、(例えば、特定の化合物の外用により)生理学的にまたは発達的に制御されるプロモーターである。「組織特異的」プロモーターは、特定のタイプの組織または細胞においてのみ活性である。
【0038】
本明細書において使用する場合、「動作可能に連結された」という用語は、機能的関係におけるポリヌクレオチド要素の連結を指す。核酸は、機能的関係で別の核酸配列に配置された場合、「動作可能に連結」される。例えば、プロモーター、より正確に言えば転写制御配列が、コード配列の転写に影響を与える場合、転写制御配列はコード配列に動作可能に連結される。動作可能に連結されるは、連結されるDNA配列が、通常隣接されることを意味する。
【0039】
「核酸構築体」または「ベクター」は、組み換えDNA技術の使用によりもたらされ、外因性DNAを宿主細胞に送達するために使用される人工の核酸分子を意味すると、本明細書において理解される。ベクターは、通常、それらを使用することにより分子クローニングが容易になるさらなる遺伝要素、例えば、選択可能なマーカー、多重クローニング部位などを含む(下記を参照されたい)。
【0040】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、所与のヌクレオチド配列と実質的に同一であるヌクレオチド配列を同定するために使用できる。ストリンジェント条件は配列依存性であり、異なる状況においては異なると思われる。概して、ストリンジェント条件は、規定のイオン強度およびpHにおいて、特定の配列の熱溶融点(T
m)より約5℃低く選択される。T
mは、(規定のイオン強度およびpHの下で)標的配列の50%が、完全に一致するプローブにハイブリダイズされる温度である。通常は、塩濃度が、pH7において約0.02モルであり、温度が少なくとも60℃であるストリンジェント条件が選択される。塩濃度の低下および/または温度の上昇はストリンジェント性を上昇させる。RNA-DNAのハイブリダイゼーション(例えば100ntのプローブを使用するノーザンブロット)に関するストリンジェント条件は、例えば、0.2×SSCで少なくとも1回、63℃において20分間の洗浄および同等の条件を含む条件である。DNA-DNAハイブリダイゼーション(例えば100ntのプローブを使用するサザンブロット)に関するストリンジェント条件は、例えば、0.2×SSCで少なくとも1回(通常2回)、少なくとも50℃、通常は約55℃の温度において20分間の洗浄および同等の条件を含む条件である。Sambrookら(1989年)ならびにSambrookおよびRussell(2001年)も参照されたい。
【0041】
「配列同一性」および「配列類似性」は、グローバルおよびローカルなアライメントアルゴリズムを使用する、2つのペプチドまたは2つのヌクレオチド配列のアライメントにより決定することができる。配列が、(例えば、デフォルトパラメーターを使用して、GAPまたはBESTFITのプログラムにより最適にアライメントした場合)少なくとも特定の最小百分率の配列同一性(下記に規定)を共有するときに、その場合、配列は、「実質的に同一」または「本質的に類似」と称される。GAPは、NeedlemanおよびWunschのグローバルアライメントアルゴリズムを使用して、2つの配列を、それらの全長にわたって、一致した数を最大化し、ギャップの数を最小化してアライメントする。概して、GAPのデフォルトパラメーターは、ギャップ挿入ペナルティ(gap creation penalty)=50(ヌクレオチド)/8(タンパク質)およびギャップ伸長ペナルティ(gap extension penalty)=3(ヌクレオチド)/2(タンパク質)で使用する。ヌクレオチドに関しては、使用したデフォルトスコア行列はnwsgapdnaであり、タンパク質に関しては、デフォルトスコア行列はBlosum62(Henikoff & Henikoff、1992年、PNAS89、915-919頁)である。配列アライメントおよび配列同一性の百分率に対するスコアは、コンピュータプログラム、例えば、GCG Wisconsin Package、Version 10.3、Accelrys Inc.、9685 Scranton Road、San Diego、CA 92121-3752 USAより入手可能、またはEmbossWin version 2.10.0(「needle」プログラムを使用)を使用して決定することができる。代替的には、類似性または同一性のパーセントは、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを使用して、データベースを検索することによって決定することができる。好ましくは、配列同一性は、配列の全長にわたった配列同一性を指す。
【0042】
「宿主細胞」または「組み換え宿主細胞」または「形質転換細胞」は、少なくとも1つの核酸分子の結果として生じる、特に所望のタンパク質をコードする核酸分子を含む新しい個別細胞(または生物)を指す用語である。宿主細胞は、好ましくは植物細胞または細菌細胞である。宿主細胞は、本発明の核酸分子またはベクターを、染色体外(エピソーム性)複製子として含有でき、またはより好ましくは、宿主細胞のゲノムに統合された本発明の核酸分子またはベクターを含む。
【0043】
「選択可能なマーカー」という用語は、当業者にはよく知られた用語であり、発現した場合、選択可能なマーカーを含有する細胞(単数または複数)を選択するために使用可能な、任意の遺伝的存在を説明するために、本明細書において使用される。選択可能なマーカーの遺伝子産物は、例えば抗生物質耐性または栄養要求性をもたらす。
【0044】
「生物学的半減期」という用語は、ある物質、例えばタンパク質の量が、生物系、例えば、動物またはヒトの体内の循環において、生物学的過程、例えば、腎クリアランスおよび分解により、その値の半分に減少するために必要とされる時間を指す。
【0045】
本文書およびその特許請求の範囲において、動詞「含む(to comprise)」およびその活用形は、その非限定的意味で使用され、この単語の後に続く項目を含むが、具体的に述べられていない項目を排除しないことを意味する。「含む」はより限定的な動詞「からなる(to consist of)もまた包含する。加えて、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、文脈が、唯一の要素が存在することを明らかに要求していない限り、1より多い要素が存在する可能性を排除するものではない。したがって、不定冠詞詞「a」または「an」は、通常は、「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において「配列」についての言及する場合、概して、特定の配列のサブユニット(例えばアミノ酸)を有する実際の物理的分子について言及している。
【0046】
本発明のタンパク質、核酸配列、ベクターおよび宿主細胞
本発明は、新規な「単一分子療法」を現在までに考案した。詳細には、本発明者らは、場合により、リンカーにより物理的に一緒に融合された、IL4タンパク質およびIL10タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。特に、本発明の融合タンパク質は、その個々の対応物、すなわち、それぞれIL4およびIL10を越えた優れた生物活性(例えば、TNFαおよびIL1βを阻害する)を有することが見出された。詳細には、本発明の融合タンパク質は、個々のサイトカイン(両方とも<20kD)より有意に大きい(約35kD)ことが見出された。本発明者らは、さらに、融合タンパク質それ自体が、(融合タンパク質のIL10部分によって)二量体を形成し、したがって、さらに大きい分子量(約70kD)を有する融合タンパク質を提供することを、予期せず見出した。このような分子量の増加および結果として、分子半径の増加は、循環におけるIL4-IL10融合タンパク質の生物学的半減期を、個々のサイトカインと比較して有意に延長するだけでなく、炎症部位におけるそのバイオアベイラビリティを、前例のないレベルに増加する。本発明の融合タンパク質は、融合タンパク質が両方のサイトカインを炎症部位に送達し、そこで、それらのサイトカインは両方とも互いの存在下で同じ量の時間それらの作用を発揮できるので、IL4とIL10との間の相乗作用が起こる治療の時間窓をさらに大幅に伸ばす。さらに、本発明の融合タンパク質は、二重の治療作用を発揮することが、予期せずに見出された。詳細には、IL4-IL10融合タンパク質は、全身性に投与した場合は抗炎症剤として作用し、一方、髄腔内に投与した場合は、抗痛覚過敏剤として作用することを示した。
【0047】
本発明の一実施形態において、IL4-IL10融合タンパク質の核酸配列およびアミノ酸配列(これらの変異体および断片を含む)を提供する。IL4-IL10融合タンパク質ならびにこれらの機能性断片および変異体は、IL4活性およびIL10活性を提示する。
【0048】
一態様において、IL4およびIL10を含む融合タンパク質を提供する。該融合タンパク質は、IL4タンパク質またはこれらの変異体もしくは断片を含む。IL4タンパク質は、好ましくは、哺乳動物IL4タンパク質、例えばヒトIL4またはマウスIL4である。IL4の1つのアミノ酸配列は、配列番号1で示される。IL4の変異体は、例えば、配列番号1に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超える、例えば100%のアミノ酸配列の同一性を、好ましくは全長にわたって有するタンパク質を含む。アミノ酸配列同一性は、好ましくは、上記のNeedlemanおよびWunschのアルゴリズムならびにGAPデフォルトパラメーターを使用して、ペアワイズアライメントにより決定される。変異体はまた、IL4活性を有するタンパク質を含み、このタンパク質は、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入により、配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドに由来する。好ましくは、このようなタンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多くから約100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15までのアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む。
【0049】
融合タンパク質は、IL10タンパク質またはこれらの変異体もしくは断片をさらに含む。IL10タンパク質は、好ましくは、哺乳動物IL10タンパク質、例えばヒトIL10またはマウスIL10である。IL10を表す1つのアミノ酸配列は、配列番号2で示される。IL4の変異体は、例えば、配列番号2に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超える、例えば100%のアミノ酸配列の同一性を、好ましくは全長にわたって有するタンパク質を含む。アミノ酸配列同一性は、好ましくは、上記のNeedlemanおよびWunschのアルゴリズムならびにGAPデフォルトパラメーターを使用して、ペアワイズアライメントにより決定される。変異体はまた、IL10活性を有するタンパク質を含み、このタンパク質は、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入により、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドに由来する。好ましくは、このようなタンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多くから約100、90、80、70、60、50、45、40、35、30、25、20、15までのアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む。
【0050】
融合タンパク質中のIL4およびIL10は、リンカーによって連結されていても、また連結されていなくてもよい。追加のアミノ酸配列は、本発明の融合タンパク質のNおよび/またはC末端に、例えば、精製を容易にするために存在してもよい。例えば、ヒスチジン-タグが、CまたはN末端に、精製を容易にするために存在してもよい。代替的には、本発明のIL4-IL10融合タンパク質は、追加のタンパク質部分、例えば標的化が可能な部分、例えば、1または複数の抗体Fc領域を含むタンパク質部分を、場合により含んでもよい。
【0051】
IL4は、IL10のN末端に位置してもよく、またはIL10のC末端に位置してもよい。好ましい実施形態において、IL4分子は、IL10分子のN末端に位置する。後者の融合タンパク質は、IL4分子が、IL10分子のC末端に位置するIL4-IL10融合タンパク質と比較して、高い特異的活性を示すことが見出された(データ記載せず)。
【0052】
IL4-IL10融合タンパク質は、単量体型で存在してもよく、この場合、IL4-IL10融合タンパク質は、約35kDaのkDaを有し、または二量体IL4-IL10融合タンパク質、すなわち、2つのIL4-IL10融合タンパク質が、非共有結合的に互いに会合していてもよく、この場合、IL4-IL10融合タンパク質は、約70kDaのkDaを有する。
【0053】
ある実施形態において、本発明の融合タンパク質は、場合によりリンカーにより連結された、IL4およびIL10から本質的になる。
【0054】
ある実施形態において、本発明の融合タンパク質内のIL4およびIL10部分は両方とも活性であり、少なくとも1つの炎症性サイトカインまたはメディエーター、例えばIL1、IL6、IL8、TNFαの産生を下方制御するように細胞にシグナル伝達することができる。好ましくは、少なくともTNFα、IL6およびIL8が下方制御される。
【0055】
ある実施形態において、融合タンパク質は、サイトカイン、例えばTNFα、ΙL1β、IL6および他の炎症性サイトカインの産生を阻害するが、一方で、炎症細胞ならびにエンドトキシン、他のToll様受容体(TLR)作動薬または他の刺激により刺激された他の細胞による、阻害性分子、例えばIL1受容体拮抗薬および可溶性TNF受容体の分泌を誘導する。ある実施形態において、本発明の融合タンパク質は、エンドトキシン、他のTLR作動薬などを含む作動薬により刺激された炎症細胞、内皮細胞および他の細胞による接着分子の発現を阻害する。
【0056】
ある実施形態において、融合タンパク質は、内皮細胞、炎症細胞ならびにエンドトキシン、他のTLR作動薬または他の刺激により刺激された他の細胞による、組織因子の発現を阻害する。
【0057】
ある実施形態において、本発明の融合タンパク質は、炎症細胞およびエンドトキシン、他のTLR作動薬または他の刺激により刺激された他の細胞による、酸素ラジカルの産生を阻害する。
【0058】
ある実施形態において、融合タンパク質は、IFNγ-およびIL17を分泌するTh1およびTh17細胞の活性を阻害し、自己抗原または非自己抗原、ブドウ球菌エンテロトキシンB(Staphylococcus enterotoxin B (SEB))または有糸分裂促進因子、例えばCD3、CD28、フィトヘマグルチニン(PHA)またはポリボールミリステートアセテート(PMA)を含む超抗原により刺激された、抗原提示細胞の存在下または不在下で、in vitroで作製されたFoxP3-発現抑制T細胞(CD25+)、TGFβ分泌性のTh2、Tr1およびTh3細胞を誘導または維持する。
【0059】
ある実施形態において、融合タンパク質は、活性化Fcγ受容体の発現を阻害し、一方で、融合タンパク質は、IgG含有免疫複合体による、単球、マクロファージおよび樹状細胞などの細胞の活性化を防止する抑制性Fcγ受容体の発現を誘導する。
【0060】
適切な実施形態において、本発明の融合タンパク質は、ホモ二量体型で存在する。
【0061】
一実施形態において、本発明の融合タンパク質は、60kDaを超える分子量を有する。
【0062】
本発明の融合タンパク質は、当業者には日常的な技術により調製可能である。例えば、本発明の融合タンパク質は、連続細胞系の培養による、組換え融合タンパク質の作製を提供する技術を使用して調製可能である。例えば、本発明の融合タンパク質は、組換えDNA技術と、遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて産生可能である。
【0063】
例えば、本発明の融合タンパク質を発現させるために、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子を、標準的分子生物学技術により調製できる。本発明の核酸分子は、好ましくは、転写制御配列、例えばプロモーターおよび場合により、3'非翻訳領域に、動作可能に連結される。本発明の核酸分子は、ベクター、例えば発現ベクターに、遺伝子が、転写および翻訳の調節配列に動作可能に連結されるように挿入することができる。発現ベクターおよび転写制御配列は、使用する発現宿主細胞と適合するように選択される。本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子は、発現ベクター内に、日常的な方法により挿入可能である。本発明の核酸分子またはベクターは、宿主細胞からの融合タンパク質の分泌を容易にすることができるシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を、さらに含んでもよい。シグナルペプチドをコードする前記ヌクレオチド配列は、本発明の核酸分子に動作可能に連結することができる。好ましくは、前記シグナルペプチドは、本発明の融合タンパク質のアミノ末端に位置し、したがって、前記シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子の5'に位置してよい。シグナルペプチドは、サイトカインシグナルペプチドであっても、または非サイトカインタンパク質由来のシグナルペプチドであってもよい。プロモーターは、構成的であっても、または誘導性であってもよい。ベクターは、ベクター担持宿主細胞の選択のための選択可能なマーカーを含んでもよい。ベクターは、該ベクターが複製可能ベクターである場合、複製開始点を含んでもよい。
【0064】
本発明に従った融合タンパク質は、(例えば、Applied Biosystemsなどにより供給されるペプチドシンセサイザーを使用して)化学的合成により最初から合成されても、または融合タンパク質、断片または変異体をコードする核酸配列の発現により、組換え宿主細胞により産生されてもよい。変異体および断片は、好ましくは機能性、すなわち、IL4および/またはIL10の活性、好ましくはIL4およびIL10の活性を有する。
【0065】
IL4およびIL10ならびにIL4-IL10融合タンパク質の抗炎症活性、したがって機能性は、日常的な方法を使用して決定することができる。例えば、IL4およびIL10ならびにIL4-IL10融合タンパク質の機能性に関する適切なアッセイは、例えば実施例5において説明する、全血におけるリポ多糖類(LPS)誘導性サイトカイン放出(IL1、IL6、IL8、TNFα)である。
【0066】
別の態様において、上記の融合タンパク質のいずれかをコードする単離核酸配列、例えば、cDNA、ゲノムDNAおよびRNA配列を提供する。遺伝コードの縮重のために、さまざまな核酸配列が同じアミノ酸配列をコードすることができる。本発明の融合タンパク質をコードする任意の核酸配列は、本明細書において「IL4-IL10融合タンパク質コード核酸配列」と称される。提供される核酸配列は、組換え、人工または合成の核酸配列を含む。配列がDNA配列を表しているが、RNAについて言及している場合、RNA分子の実際の塩基配列は、チミン(T)がウラシル(U)に置き換えられる違いがあるが、同一であることは理解されている。本発明の核酸配列は、本発明のIL4-IL10融合タンパク質の発現にとって、これらのタンパク質の産生または遺伝子療法目的のいずれかにとって、特に有用である。
【0067】
本発明のIL4-IL10融合タンパク質をコードする核酸配列、特にDNA配列は、発現ベクターに挿入され、(大量の)IL4-IL10融合タンパク質を産生することができる。適切なベクターとしては、限定するものではないが、線形の核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクターなどが挙げられる。ウイルスベクターの限定されない例としては、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。
【0068】
哺乳動物宿主細胞の発現に関する好ましい制御配列としては、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を対象とするウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーが挙げられる。代替的には、非ウイルス制御配列、例えばユビキチンプロモーターが使用できる。
【0069】
IL4-IL10融合タンパク質および制御配列をコードする核酸分子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、追加の配列、例えば、宿主細胞におけるベクターの複製を制御する配列、(例えば複製開始点)および選択可能なマーカー遺伝子を担持してよい。選択可能なマーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を容易にする(例えば、US 4,399,216、US 4,634,665およびUS 5,179,017、すべてAxelらによる、を参照されたい)。例えば、通常、選択可能なマーカー遺伝子は、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサーなどの薬剤に対する耐性を、ベクターが導入された宿主細胞にもたらす。好ましい選択可能なマーカー遺伝子としては、ジヒドロホレートレダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を有するdhfr-宿主細胞に使用)およびneo遺伝子(G418選択用)が挙げられる。最終的に、組換え発現ベクターは、グリコシルトランスフェラーゼをコードする遺伝子を、本発明の融合タンパク質をコードする核酸配列に加えて含有することができる。
【0070】
別の態様において、本発明は、本発明の核酸配列を含む宿主細胞または本発明の核酸配列を含む核酸構築体もしくはベクターに関する。宿主細胞は、任意の宿主細胞であってよい。宿主細胞は、原核細胞および真核細胞から選択することができる。宿主細胞はまた、原核細胞系または真核細胞系などの細胞系であってもよい。宿主細胞は、好ましくは、動物の細胞または細胞系、例えば、哺乳動物の細胞または細胞系である。
【0071】
一実施形態において、本発明の融合タンパク質は、真核細胞、例えば哺乳動物宿主細胞において発現される。本発明の組換えIL4-IL10融合タンパク質の発現にとって好ましい哺乳動物宿主細胞としては、CHO細胞(dhfr-CHO細胞を含む、(Urlaubら、1980年)に記載、DHFR選択可能マーカーと共に使用される、NS/0骨髄腫細胞、COS細胞、HEK293細胞およびSP2.0細胞が挙げられる。IL4-IL10融合タンパク質をコードする核酸配列を含む組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞に導入される場合、本発明の融合タンパク質は、宿主細胞において融合タンパク質を発現させるために十分な期間、またはより好ましくは、融合タンパク質が、宿主細胞が成長する培養培地へ分泌されるために十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生され得る。本発明の融合タンパク質は、宿主細胞が成長する培養培地から回収できる、および/または培養培地から、標準的なタンパク質精製方法を使用して精製することができる。
【0072】
代替的には、本発明の融合タンパク質をコードする核酸配列は、例えばE.coliなどの微生物を含む原核細胞、藻類ならびに昆虫細胞を含む、他の発現系において発現可能である。さらに、本発明の融合タンパク質は、トランスジェニックの非ヒト動物、例えばヒツジおよびウサギの乳もしくはメンドリの卵またはトランスジェニック植物において産生可能である。
【0073】
本発明の核酸配列の宿主細胞への導入は、当分野において公知の、任意の標準的な技術により実施できる。本発明の融合タンパク質の発現に関して、融合タンパク質をコードする発現ベクター(複数可)は、標準的技術により、宿主細胞にトランスフェクトすることができる。「トランスフェクション」という用語のさまざまな型は、外因性DNAを原核性または真核性の宿主細胞に導入するために一般的に使用される広範囲の技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション、リポフェクタミントランスフェクションおよびフリーズドライ法トランスフェクションなどを包含することが意図される。本発明の融合タンパク質を分泌する細胞系は、培養液上清を、融合タンパク質の存在に関してアッセイすることによって、同定することができる。好ましいスクリーニング手順は、2つの連続ステップを含み、第1は、融合タンパク質を分泌する細胞系の同定であり、第2は、LPSまたは他のToll様受容体作動薬、グリコシル化パターンなどにより刺激された血液細胞による、サイトカインの産生を阻害する融合タンパク質の能力などの融合タンパク質の質の決定である。
【0074】
宿主細胞における最適な発現のために、IL4-IL10融合タンパク質コードDNA配列は、宿主細胞遺伝子において最も好ましいコドン使用を適合させることにより、コドンを最適化できる。宿主細胞に好ましいものにコドン使用を改変するためのいくつかの技術は、特許および化学の文献に見出すことができる。コドン使用改変の厳密な方法は、本発明にとって重要ではない。
【0075】
本発明の別の実施形態において、PCRのプライマーおよび/またはプローブならびにIL4-IL10融合タンパク質をコードするDNAまたはRNA配列を検出するためのキットを提供する。IL4-IL10融合タンパク質コードDNAを試料から増幅するために、縮重プライマーペアまたは特異的PCRプライマーペアを合成することができる(DieffenbachおよびDveksler(1995年) PCR Primer: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory PressならびにMcPhersonら(2000年) PCR-Basics: From Background to Bench、第1版、Springer Verlag、Germanyを参照されたい)。例えば、IL4-IL10融合タンパク質コード核酸配列の、9、10、11、12、13、14、15、16、18またはそれを超える隣接するヌクレオチドの任意のストレッチ(または相補鎖)を、プライマーまたはプローブとして使用できる。同様に、IL4-IL10融合タンパク質コード核酸配列のDNA断片を、ハイブリダイゼーションのプローブとして使用できる。IL4-IL10融合タンパク質コード核酸配列の検出キットは、IL4-IL10融合タンパク質コード核酸配列に特異的なプライマーおよび/またはIL4-IL10融合タンパク質コード核酸配列に特異的なプローブならびにプライマーまたはプローブを使用して、試料中のIL4-IL10融合タンパク質コード核酸配列を特異的に検出するための関連プロトコルを含むことができる。このような検出キットは、例えば、宿主細胞が、本発明の核酸配列をコードする特異的IL4-IL10融合タンパク質により形質転換されていてもいなくても、決定に使用することができる。遺伝コードの縮重のため、いくつかのアミノ酸コドンは、タンパク質のアミノ酸配列を変化させずに、他と置き換えることが可能である。
【0076】
ある態様において、本発明は、IL4-IL10融合タンパク質の作製方法に関係し、前記方法は、本発明の宿主細胞を、IL4-IL10融合タンパク質の産生を可能とする条件下で培養するステップ、および場合により、該融合タンパク質を回収するステップを含む。当業者は、IL4-IL10融合タンパク質の産生を可能とする条件を、日常的に選択できるであろう。さらに、当業者は、日常的な方法を使用して、産生された融合タンパク質を回収でき、この方法は、限定するものではないが、クロマトグラフィー法(限定するものではないが、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、イムノアフィニティクロマトグラフィー、金属結合などを含む)、免疫沈降法、HPLC、超遠心分離、沈降法および示差的可溶化ならびに抽出を含む。上述のように、融合タンパク質の回収または精製は、例えば、His-タグを融合タンパク質に付加することにより容易にすることができる。
【0077】
医薬組成物
ある態様において、本発明は、本発明の融合タンパク質および医薬として許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0078】
医薬組成物は、医薬として許容される担体または希釈剤ならびに従来型技術(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、PA、1995年に記載)に従った、任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤と共に製剤化することができる。
【0079】
「医薬として許容される担体」という用語は、本質的に非毒性かつ非治療性である担体または賦形剤に関する。このような賦形剤の例は、限定するものではないが、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース液およびハンクス液である。非水性賦形剤、例えば、不揮発性油およびオレイン酸エチルもまた使用可能である。好ましい賦形剤は、生理食塩水中5%デキストロースである。賦形剤は、少量の添加剤、例えば、バッファーおよび保存剤を含む等張性および化学的安定性を強化する物質を含有してもよい。
【0080】
医薬組成物は、任意の適切な経路および方式で投与することができる。当業者には明らかであろうように、投与の経路および/または方式は、所望の結果に依存して変動するものである。
【0081】
本発明に従った医薬組成物は、経口、局所、非経口、舌下、経皮などの任意の経路による、または吸入による投与のための、日常的な手順に従って製剤化することができる。組成物は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、口内錠、クリームまたは液体調製剤、例えば、経口または滅菌非経口の溶液もしくは懸濁液の形態であってよく、またはスプレー、エアロゾルの形態もしくは吸入用の、他の従来型の方法であってよい。
【0082】
本発明の医薬組成物は、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経口投与に適切な組成物を含む。
【0083】
ある実施形態において、医薬組成物は、非経口的に投与される。
【0084】
「非経口投与」および「非経口的に投与される」という用語は、本明細書において使用する場合、腸内投与および局所投与以外の投与方式を意味し、通常は注射により、限定するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内の注射および注入を含む。
【0085】
ある実施形態において、医薬組成物は、静脈内または皮下の注射または注入により投与される。
【0086】
ある実施形態において、本発明の融合タンパク質は、結晶形で、皮下注射により投与される。
【0087】
本明細書において使用する場合、「医薬として許容される担体」は、生理学的に適合性である、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張化剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などを含む。
【0088】
医薬として許容される担体は、滅菌の水溶液または分散液および滅菌の注射可能溶液または分散液の即時調製用滅菌粉末を含む。医薬的活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当分野において周知である。従来型の媒体または薬剤のいずれかが、活性化合物と非相溶性である場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるこれらの使用が企図される。好ましくは、担体は、非経口投与、例えば静脈内または皮下の注射または注入に適切である。
【0089】
医薬組成物は、通常、滅菌であり、製造および保存の条件下で安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソームまたは高薬物濃度に適切な他の秩序構造として製剤化できる。本発明の医薬組成物に採用可能な、適切な水性または非水性の担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、など)およびこれらの適切な混合物、オリーブオイルなどの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合、必要な粒径を維持することにより、および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0090】
注射可能な組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば一ステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによりもたらすことができる。
【0091】
滅菌注射可能溶液は、適切な溶媒中の所要量の活性化合物と、例えば上に列挙した原料の1つまたは組み合わせとを、必要に応じて組み込み、続いて滅菌精密ろ過を行うことによって調製できる。概して、分散液は、活性化合物を、ベースとなる分散媒および必要な他の原料、例えば上に列挙する原料を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射可能溶液の調製用の、滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、活性原料と、任意の追加の所望の原料の粉末とを、これらのあらかじめ滅菌ろ過された溶液から生じさせる、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0092】
投与の経路に依存して、活性化合物、すなわちIL4-IL10融合タンパク質は、これを、酸の作用および化合物を不活性化できる他の天然条件から保護する材料でコーティングされてもよい。例えば、化合物は、適切な担体、例えばリポソームの中で、対象に投与されてもよい。リポソームは、水中油中水型CGFエマルジョンおよび従来型のリポソーム(Strejanら、1984年)を含む。
【0093】
本発明の融合タンパク質は、急速な放出から保護する担体と一緒に、例えば、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤として調製することができる。生分解性、生体適合性のポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用可能である。このような製剤の調製方法は、一般に、当業者には公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R. Robinson編、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978年を参照されたい。
【0094】
投薬計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答)を提供するように調整可能である。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかに分割された用量を、時間をかけて投与してもよく、または用量を、治療状況の緊急性により示されるように、比例的に減少または増加してもよい。これは、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形に製剤化することが特に有用である。単位剤形は、本明細書において使用する場合、治療される対象に対して単位投薬量として適した、物理的に個別の単位を指し、個々の単位が、所望の治療効果を生み出すために計算された、あらかじめ決められた量の活性化合物を、必要な医薬担体を伴って含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の特有の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)このような活性化合物を個体における感受性の治療のために配合する場合の、当分野において固有の制限、に影響され、直接依存する。
【0095】
本発明の医薬組成物中のIL4-IL10融合タンパク質の実際の投薬量レベルは、特定の患者、組成物および投与方式に対する所望の治療応答を達成するために有効であり、患者にとって毒性でない、IL4-IL10融合タンパク質の量(「有効量」)を得るために変動してよい。選択された投薬量レベルは、用いる特定の本発明の組成物の活性、投与経路、投与時間、排出速度、治療期間、用いる特定の組成物と併用する他の薬物、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、一般的健康および既往病歴ならびに医療分野において周知の因子などを含む、さまざまな薬物動態因子に依存するものと思われる。
【0096】
一実施形態において、本発明のIL4-IL10融合タンパク質は、静脈内注射または短期注入として与えることができ、別の実施形態において、本発明のIL4-IL10融合タンパク質は、毒性の副作用を低減するために、長期にわたる、例えば24時間を超える緩慢な連続注入により投与される。
【0097】
さらに別の実施形態において、本発明のIL4-IL10融合タンパク質は、維持療法として、例えば、6カ月以上の期間、週に1回投与することもできる。
【0098】
治療的使用
さらなる態様において、本発明は、医薬品としての使用のための、本発明の融合タンパク質または該融合タンパク質を含む医薬組成物に関する。
【0099】
ある態様において、本発明は、変形性関節症の予防または治療における使用のための、本発明の融合タンパク質はまたは該融合タンパク質を含む医薬組成物に関する。特に、本発明の融合タンパク質は、軟骨保護活性を有することが見出された。したがって、融合タンパク質は、軟骨破壊、特に変形性関節症の予防および治療に使用することができる。さらに、イヌ変形性関節症モデルにおいて、本発明の融合タンパク質を与えた犬が、本発明の融合タンパク質を与えなかった犬と比較して、痛みが有意に少なくなったことが見出された。したがって、本発明の融合タンパク質は、変形性関節症およびその付随する慢性疼痛の予防または治療(軟骨破壊の予防または治療)に特に有用であると思われる。
【0100】
さらなる態様において、本発明は、変形性関節症、慢性疼痛、局所性もしくは全身性の炎症、免疫活性化、および/またはリンパ球増殖により特徴付けられる病態の予防または治療における使用のための、本発明の融合タンパク質または該融合タンパクを含む医薬組成物に関する。
【0101】
ある実施形態において、局所性もしくは全身性の炎症、免疫活性化および/またはリンパ球増殖により特徴付けられる前記病態は、敗血症、成人性呼吸促迫症候群、同種および異種移植、皮膚炎、炎症性腸疾患、サルコイドーシス、アレルギー、乾癬、強直性脊椎関節炎、全身性エリテマトーデスおよび関節リウマチなどの自己免疫疾患、糸球体腎炎、免疫複合体誘導性および他の型の脈管炎、多発性硬化症、シェーグレン病、痛風、非ホジキンリンパ腫およびB細胞性慢性リンパ性白血病などのリンパ球増殖性疾患、熱傷、多発性損傷、脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化、糖尿病、体外透析および血液酸素化、虚血性再灌流障害、サイトカインもしくは治療用モノクローナル抗体のin vivo投与により誘導される毒性、慢性疼痛症候群ならびに神経障害性および/または炎症性の疼痛からなる群から選択される。
【0102】
ある実施形態において、前記病態は、疼痛により特徴付けられ、炎症性疼痛および神経障害性疼痛から選択することができる。
【0103】
別の態様において、本発明は、哺乳動物、例えばヒトにおける、IL10が適応となる臨床状態の予防または治療における使用のための、本発明の融合タンパク質を対象とする。
【0104】
さらなる態様において、本発明は、哺乳動物、例えばヒトにおける、IL4が適応となる臨床状態の予防または治療における使用のための、本発明の融合タンパク質を対象とする。
【0105】
本発明のある実施形態において、本発明の融合ポリペプチドは、炎症促進性サイトカインおよび他の炎症性メディエーターの産生阻害が有益である疾患または障害の、予防または治療に使用される。
【0106】
さらに別の態様において、本発明は、炎症促進性サイトカインおよび他の炎症性メディエーターの産生阻害が有益な効果を有する疾患または障害を予防または治療する、本発明の融合タンパク質を、該疾患または障害の治療または予防に有効な量で、それらを必要とする対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0107】
一実施形態において、このような疾患または障害は、炎症促進性サイトカイン、例えばTNF、IL1、IL6など、ケモカイン、例えばIL8など、ならびに他の炎症性メディエーターの産生により媒介される炎症性疾患である。
【0108】
一実施形態に従って、本明細書において教示される融合タンパク質は、マクロファージ、単球、T-リンパ球および他の細胞などの細胞による、サイトカインおよび他の炎症性メディエーターの産生および放出を阻害するために使用できる。結果として、本発明の融合タンパク質は、これらの細胞によるin vivoのサイトカインおよび他の炎症性メディエーターの放出を阻害することにより、炎症反応を抑える医薬品の調製に使用することができる。本発明の融合タンパク質は、独立型の薬物としてまたは他の薬物と組み合わせて使用できる。
【0109】
治療(予防的または治療的)は、本発明の融合タンパク質を、非経口に、好ましくは静脈内、筋肉内、髄腔内、硬膜外、脊髄内または皮下に投与するステップからなってよい。しかし、上に引用した融合タンパク質を含む医薬組成物に関して上述の他の投与経路もまた、採用可能である。用量および投与計画は、目的とする炎症性サイトカインの産生および放出の阻害の程度に依存し得る。通常、与える融合タンパク質の量は、0.5μgから1 mg /kg体重の範囲であろう。投薬量は、生体試料における投与に対する、循環するサイトカイン(IL10、IL4)の量を測定することにより決定または調整できる。
【0110】
非経口投与に関して、融合タンパク質は、好ましくは、医薬として許容される非経口ビヒクルと組み合わせた、注射可能な形態で製剤化される。このようなビヒクルは当分野において周知であり、例としては、生理食塩水、デキストロース溶液、リンゲル液および少量のヒト血清アルブミンを含有する溶液が挙げられる。通常、本発明の融合タンパク質は、このようなビヒクル中で、約50μgから約100mg/mlの濃度で製剤化することができる。本発明の一実施形態において、融合タンパク質は、静脈内注射により投与される。
【0111】
さらなる投与の詳細は、上の本発明の融合タンパク質を含む医薬組成物に関する項で説明している。
【0112】
遺伝子療法
本発明の核酸構築体またはベクターは、上記の病態の治療のための、遺伝子療法薬として使用することができる。本発明の一実施形態において、アデノ随伴ウイルスが、遺伝子療法ベクターとして使用される。
【0113】
したがって、ある態様において、本発明は、変形性関節症、慢性疼痛、局所性もしくは全身性の炎症、免疫活性化、および/またはリンパ球増殖により特徴付けられる病態の予防または治療における使用のための、上記の遺伝子療法ベクターを対象とし、好ましくは、局所性もしくは全身性の炎症、免疫活性化および/またはリンパ球増殖により特徴付けられる前記病態は、敗血症、成人性呼吸促迫症候群、同種および異種移植、皮膚炎、炎症性腸疾患、サルコイドーシス、アレルギー、乾癬、強直性脊椎関節炎、全身性エリテマトーデスおよび関節リウマチなどの自己免疫疾患、糸球体腎炎、免疫複合体誘導性および他の型の脈管炎、多発性硬化症、シェーグレン病、痛風、非ホジキンリンパ腫およびB細胞性慢性リンパ性白血病などのリンパ球増殖性疾患、熱傷、多発性損傷、脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化、糖尿病、体外透析および血液酸素化、虚血性再灌流障害、サイトカインもしくは治療用モノクローナル抗体のin vivo投与により誘導される毒性、慢性疼痛症候群ならびに神経障害性および/または炎症性の疼痛からなる群から選択される。
【0114】
次に、本発明を、下記の実施例を参照しながら例示する、下記の実施例は特に有利な実施形態を説明している。しかし、これらの実施形態は例示であり、本発明を限定するものとして解釈するべきではないことに留意しなければならない。
【0115】
配列リスト
配列番号1-IL4のアミノ酸配列
【化1】
【0116】
配列番号2-IL10のアミノ酸配列
【化2】
【0117】
配列番号:3-リンカーのアミノ酸配列
【化3】
【0118】
配列番号:4-IL4-IL10融合タンパク質のアミノ酸配列(リンカー配列は下線を引いてあり、IL4は、IL10のN末端に位置する)
【化4】
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】
図1は、IL4-IL10融合タンパク質をトランスフェクトしたHEK293細胞から得たIL4-IL10融合タンパク質のレベルを示す図である。IL4-IL10融合タンパク質に関するトランス遺伝子を担持するpUPE発現ベクターをトランスフェクトしたHEK293細胞の上清を、サンドイッチELISAアッセイで、IL4(A)およびIL10(B)に関して、製造業者の取扱説明書に従って試験した。結果は、光学密度(OD)対培養上清の希釈として表した。
【
図2】
図2は、cross-ELISAによるIL4-IL10融合タンパク質の免疫化学的同定を示す図である。IL4-IL10融合タンパク質に関するトランス遺伝子を担持するpUPE発現ベクターをトランスフェクトしたHEK293細胞の上清を、cross-ELISAにおいて、抗IL4(A)または抗IL10モノクローナル抗体(捕捉抗体(capture antibodies)として使用)(B)およびビオチン化抗IL10(A)または抗IL4(B)モノクローナル抗体(検出抗体として使用)を用いて試験した。組換えIL10を、陰性対照として試験した。
【
図3】
図3は、HEK293細胞の上清中のIL4-IL10融合タンパク質を同定するウエスタンブロットを示す図である。IL4-IL10融合タンパク質をコードするcDNAをトランスフェクトしたHEK293細胞から得られた、10マイクロミリリットルの量の上清を、SDS-PAGEにおいて泳動させた。ブロットを、標識された抗IL4抗体(A)または標識された抗IL10抗体(B)を用いて発色させた。対照として、組換えIL4およびIL10を使用した。レーン1=分子マーカー、レーン2=未処理IL4-IL10融合タンパク質、レーン3=脱グリコシル化IL4-IL10融合タンパク質、レーン4=IL4およびレーン5=IL10。
【
図4】
図4はIL4-IL10融合タンパク質の重合を同定するHigh Performance Size Exclusion Chromatographyアッセイの結果を表示する図である。IL4-IL10融合タンパク質、組換えIL4および組換えIL10の試料を、High Performance Liquid Chromatographyシステムにおいて泳動させた。カラムを、サイログロブリン、ウシ血清アルブミン(66KD、左から1番目の点線)、カルボニックアンヒドラーゼ(30KD、左から2番目の点線)、ミオグロブリン(18KD、左から3番目の点線)およびリボヌクレアーゼ(13.7KD、左から4番目の点線)のタンパク質混合物を使用して較正した。これらのマーカーを使用して、分画中のタンパク質の分子量を、保持時間の比較により推定した。さまざまな泳動の分画中のIL4およびIL10の含有量を、ELISAを用いて測定し、ng/mlで表した。IL4は明らかな単量体として溶出され、IL10は明らかな二量体として溶出され、一方、IL4-IL10融合タンパク質の溶出パターンは明らかな二量体であることを明らかにした。
【
図5】
図5は、IL4-IL10融合タンパク質が、全血培養液におけるLPS-誘導性サイトカイン放出を阻害することを示す図である。健康なボランティア由来のヘパリン添加血を、培養培地で1:10に希釈し、10ng/mlの濃度のLPSと一緒に、さまざまな濃度のIL4-IL10融合タンパク質の存在下でインキュベートした。上清中のTNFαを、ELISAを用いて測定した。パネルAは、IL4-IL10融合タンパク質の、TNFの産生を阻害する能力を示す(結果を阻害%として表した)。IL4-IL10融合タンパク質を欠いた、同様の体積の培養培地を試験した場合、TNF産生阻害が見られなかったことに留意されたい。パネルBは、LPS-誘導性のTNFα(左のグラフ)、IL6(中央のグラフ)およびIL8(右のグラフ)の産生阻害を示す(上清から測定したTNFα、IL6およびIL8の濃度を、Y軸に示す)。IL4-IL10融合タンパク質を100ng/mlで試験し、それぞれ最終濃度50ng/mlの組換えIL4およびIL10の混合物の効果と比較した。パネルCは、IL4-IL10融合タンパク質のIL6LPS誘導性産生に対する効果が、IL4受容体に対する受容体遮断抗体(抗IL4R)およびIL10受容体に対する受容体遮断抗体(抗IL10R)を、両方とも加えた場合、培地のみを加えた場合(抗体を欠く)と比較して完全に無効化されたことを示す。IL4受容体に対する受容体遮断抗体(抗IL4R)またはIL10受容体対する受容体遮断抗体(抗IL10R)のいずれかを加え、両方を加えなかった場合、IL4-IL10融合タンパク質の効果は部分的に無効化されたことに留意されたい。
【
図6】
図6は、IL4-IL10融合タンパク質によるTh1およびTh17サイトカイン産生の強力な阻害が、超抗原であるブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)活性化単核細胞培養液中の持続性の制御性(FoxP3+)T細胞の百分率と関連していることを示す図である。骨髄細胞およびB細胞の活性化は、炎症促進性Th1およびTh17と制御性FoxP3-発現CD4T細胞とのバランスに決定的に依存する。T細胞活性に対するIL4-IL10融合タンパク質の効果を評価するために、健康なドナーの末梢血由来単核細胞(PBMC)を単離した。T細胞活性化は、PBMC(5.10
5/ml)を3日間、SEB(1ng/ml)および/またはIL4-IL10融合タンパク質の存在下または不在下で処理することによって誘導された。この培養期間後の増殖(パネルA)、FoxP3の発現および炎症促進性T細胞サイトカインの産生(パネルB)を測定した。SEBは、FoxP3発現の上方制御(パネルB)に関連する有意な増殖(パネルA)を誘導した。増殖(パネルA)およびFoxP3発現(パネルB)の両方とも、IL4-10融合タンパク質によりほとんど影響されなかった。それに反して、Th1およびTh17サイトカインのIFNγ(左のグラフ、パネルC)、IL17(中央のグラフ、パネルC)およびTNFα(右のグラフ、パネルC)は、IL4-IL10融合タンパク質によりすべて強力に減少した。まとめると、これは、IL4-IL10融合タンパク質が、抑制制御性CD4T細胞と炎症促進性Th1およびTh17細胞との間のバランスを強く改変することを実証している。
【
図7】
図7は、ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)活性化単核細胞培養液において、IL4-IL10融合タンパク質により、単球のIgGに対する受容体の発現が安定したことを示す図である。IgG(FcγR)に対する活性化および阻害性の受容体間のバランスは、免疫複合体により媒介される骨髄細胞およびリンパ系細胞の活性化において極めて重要な役割を果たす。単球におけるFcγRの発現に対するIL4-IL10融合タンパク質の効果を評価するために、末梢血由来単核細胞(PBMC)を、健康なドナーから単離した。T細胞依存性単球の活性化を、PBMC(5.10
5/ml)を2日間、超抗原SEB(0.1ng/ml)および/またはIL4-IL10融合タンパク質の存在下または不在下で処理することにより、誘導した。この培養期間後、FcγRの発現を測定した。IL10は、FcγRI、FcγRIlaおよびFcγRIIIの発現を上方制御した。IL4単独は、サイトカインの不在下で培養された細胞と比較して、これらの活性化FcγRの発現においてわずかな減少を示した。IL4とIL10との組み合わせならびにIL4-IL10融合タンパク質は、FcγRIおよびFcRyIIaの発現を正規化した。IL4とIL10との組み合わせ、またはIL4-IL10融合タンパク質による、FcγRIIIの発現のわずかな増加を測定したが、IL10単独により誘導されるこの受容体の上方制御と比較して取るに足らないものであった。IL4単独は、FcγRIIbの発現のわずかな減少を示した。IL4とIL10との組み合わせ、およびIL4-IL10融合タンパク質は、阻害性FcγRIIbの発現を改変しなかった。まとめると、これは、IL4-IL10融合タンパク質が活性化FcγRの発現を安定化し、結果としてこれは、免疫複合体誘導性免疫活性化を阻害できることを実証している。
【
図8】
図8は、IL4-IL10融合タンパク質の、軟骨プロテオグリカンの代謝回転に対する用量依存的効果を示す図である。5人のドナーの軟骨外植片を、4日間、5人のドナー(n=5)の50%v/vの血液に曝露した。血液曝露の間に、IL4-IL10融合タンパク質を、0.0001から100ng/mLの濃度で加えた。プロテオグリカン合成速度(A)、放出(B)および含有量(C)を、12日間の回復期間後に決定した。プロテオグリカン合成速度および含有量は、対照軟骨と比較して、血液曝露により有意に減少し、一方、プロテオグリカン放出は増加した(アスタリスクで示す;p<0.05)。ハッシュタグは、50% v/v血液(p<0.05)と比較して統計的有意差を示し、一方、AおよびBにおける点線は、用量応答のS字状の出現を強調する。中央値±四分位範囲を表す。IL4-IL10融合タンパク質を軟骨培養液に加えることによって、プロテオグリカン合成速度の用量依存的回復、プロテオグリカン放出の正規化がもたらされ、含有量の減少が相殺された。
【
図9】
図9は、IL4-IL10融合タンパク質が、血液誘導性軟骨損傷を防止することを示す図である。8人のドナーの軟骨外植片を、4日間、8人のドナーの50% v/v血液に曝露した。血液曝露の間に、IL4-IL10融合タンパク質ならびにIL4、IL10およびIL4とIL10との組み合わせを加えた(すべて10ng/mL)。軟骨外植片のプロテオグリカン合成速度は、血液曝露により76%低下した(A、p=0.012)。IL4-IL10融合タンパク質は、プロテオグリカン合成速度を、血液曝露単独と比較して241%上昇させた。血液曝露軟骨は、プロテオグリカン放出(B、p=0.017)の59%の増加を示した。IL4-IL10融合タンパク質の添加により、プロテオグリカンの血液誘導性放出は減少し(p=0.012)、対照値に戻った。血液に曝露された軟骨は、プロテオグリカン含有量が、対照と比較して10%の減少を示した(C、p=0.012)。IL4-IL10融合タンパク質は、プロテオグリカン含有量を、血液曝露単独と比較して有意に増加した(p=0.012)。記号*は、対象と比較した統計的有意差を示す。記号#は、50% v/v血液と比較した統計的有意差を示す(p<0.05)。中央値±四分位範囲を表す。
【
図10】
図10は、IL4-IL10融合タンパク質が、変形性関節症のイヌGrooveモデル(Groove-model)において疼痛を減少させることを示す図である。変形性関節症(OA)を4匹の犬に誘導し、1mlのIL4-IL10融合タンパク質の関節内注射を、OA誘導後5週目(1μg/ml)および7週目(10μg/ml)に与えた(矢印を参照されたい)。歩行板分析(FPA)を、誘導前3週間に開始して2週間ごとに実施し、誘導後8週に終了し、L4-IL10融合タンパク質注射後は追加で毎日実施した。OA関節の負荷(実験関節対対側の対照関節)は、注射直前の、立つ力におけるスパイクにより示されるレベルと比較してほぼ正常化された(それぞれOA前の負荷と比較して2%対9%の阻害)。疼痛緩和の指標である負荷に対するこの効果を、負荷が再度低下した後数日にわたって得た。7週目の第2回目の注射後、負荷軽減の変化は、(OA負荷前と比較して)-7%から、OA負荷前と比較して-2%まで到達した。したがって、罹患OA関節の負荷パターンに対するIL4-IL10融合タンパク質の再度の正の効果およびほぼ完全な正常化が確立された。記号*は、注射前の値と比較してp=0.05を示し、一方、記号#は、ベースライン値と比較してp<0.05を示す。湾曲した点線は、処置しない場合のOA疼痛(負荷軽減)の自然な過程を示した。
【
図11】
図11は、IL4-IL10融合タンパク質を用いて処置したマウスにおける、カラギーナン誘導性熱痛覚過敏の過程を示す図である。熱逃避潜時を、Hargreaves試験を使用して決定した。マウスにカラギーナンの足底内注射を与え(左から1番目の矢印を参照されたい)、熱逃避潜時の減少を決定した。IL4-IL10融合タンパク質の髄腔内注射(左から2番目の矢印を参照されたい)は、足底内カラギーナン投与に対する痛覚過敏反応を有意に低下させた。IL4-IL10融合タンパク質の効果は、2日で不明確となるが、IL4-IL10融合タンパク質により処置したマウスにより示された、熱逃避潜時の減少は、生理食塩水により処置したマウスの48時間後と比較してさらに有意に小さかった。データは、平均±SEMとして表した。記号*はp<0.05を示し、記号**はp<0.001を示す。
【
図12】
図12は、Hargreaves試験を使用して決定された熱逃避潜時を示す図である。マウスにカラギーナンの足底内注射を与え、熱逃避潜時の減少を決定した。IL4もしくはIL10のいずれか(A)またはIL4-IL10融合タンパク質(B)の髄腔内注射(矢印を参照されたい)を、痛覚過敏の誘導6日目に与えた。IL4およびIL10は両方とも、足底のカラギーナン疼痛反応に対する痛覚過敏反応がわずかに減少したが、この効果は、IL4-IL10融合タンパク質の効果と比較して取るに足らないものである。個々のIL4またはIL10の効果は1日続き、一方、IL4-IL10融合タンパク質の効果はより長期間、4日まで間続いた。データは、平均±SEMとして表した。記号*はp<0.05を示し、記号**はp<0.001を示す。
【
図13】
図13は、IL4-IL10融合タンパク質が、全血培養液におけるLPS誘導性サイトカイン放出を阻害することを示す図である。健康なボランティア由来のヘパリン添加血を、培養培地で1:1に希釈し、10ng/mlの濃度のLPSと一緒に、IL4-IL10融合タンパク質の異なる構築体を含有する、さまざまな濃度のプールの存在下でインキュベートした。上清中のTNFαを、ELISAを用いて測定した。結果を、阻害%として表した。IL4-IL10融合タンパク質の不在下のTNF産生は、0%の阻害をもたらした。IL4のc末端がIL10のn末端に連結されたプール2および4は、IL10のc末端がIL4のn末端に連結されたプール1および3と比較して、同様の濃度で、TNFα産生の最も高い阻害を示した。これは、IL4-IL10融合タンパク質の機能性が、個々のサイトカインがIL4-IL10融合タンパク質内で連結される様式に依存することを示している。
【0120】
(実施例)
(実施例1)
HEK293細胞のトランスフェクション
方法:HEK293細胞に、標準的手順に従って、トランス遺伝子を含有するベクターを一時的にトランスフェクトした(Y Derocherら、Nucleic Acids Research 2002年、30巻、2、e9)。簡潔には、IL4-IL10融合タンパク質インサートを、システインシグナル配列を含有するpUPE発現ベクターにおいてクローン化した。HEK293E細胞に、その後、本発明のIL4-IL10融合タンパク質を含有するpUPE発現ベクターをトランスフェクトした。同時に、細胞に、ベータ-ガラクトシドアルファ-2,3-シアリルトランスフェラーゼ5(SIAT9)ホモサピエンスに関するトランス遺伝子を担持するベクターを同時トランスフェクトし、シアル酸によるグリカンのキャッピングを最適にした。細胞を、0.9%のプリマトン(primatone)および約0.04%、v/vのウシ胎児血清を含むFreeStyle medium(Invitrogen)において培養した。トランスフェクト5日後、馴化培地を低速遠心分離により回収し、その後、馴化培地を10kDaのQuixStand中空繊維カートリッジ(GE Healthcare)を通して濃縮し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析ろ過した。
【0121】
(実施例2)
IL4-IL10融合タンパク質、IL4およびIL10の免疫化学的検出に関するELISAアッセイ。
方法:培養液上清またはクロマトグラフィー分画中のIL4およびIL10含有量を、ELISA(IL4 PeliPair ELISA Kit; Sanquin、Amsterdam、the Netherlands; Cat# M9314またはIL10 PeliPair ELISA Kit; Sanquin; Cat# M9310)により、製造業者の取扱説明書に従って測定した。簡潔には、IL4またはIL10に対する捕捉抗体(catching antibodies)を、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4(PBS)で1:200に希釈し、ELISAプレートを一晩コーティングした。これ以降のステップは全て、0.1%、w/vのTween-20を添加したPBS(PBS-T)中で実施した。100から2pg/mlの範囲の組換えIL4またはIL10をもたらす段階希釈からなる、用量応答曲線を試験した。結合抗体を、ストレプトアビジン-ポリ-HRP(Sanquin)を用いて検出し、次いで、TMB(3,3',5,5"-テトラメチルベンジジン; Invitrogen、Carlsbad、CA、USA;Cat# SB02)と一緒にインキュベートした。反応を、1Mの硫酸(Chem Lab; Cat# CL05-2658-1000)で停止させた。ELISAの結果を、製造業者により提供された、組換えIL4およびIL10の希釈基準曲線の結果と比較した。
【0122】
IL4-IL10融合タンパク質を特異的に検出するcross-ELISAを、抗IL4コーティングプレートおよびビオチン化抗IL10モノクローナル抗体を検出用に使用して作製した。cross-ELISAを、抗IL4コーティングプレートを、抗IL10コーティングプレートの代わりに使用したことを除き、IL10に関するELISAと厳密に同じに実施した。抗IL4コーティングプレートを、IL4 ELISAに関して記載したように厳密に調製した。このアッセイに関しては基準が存在しないので、結果をODとして示す。75pg/mlの対照組換えIL10およびIL4-IL10融合タンパク質と同等である上清の固定量を、このIL4-IL10融合タンパク質特異的cross-ELISAで試験した。
【0123】
結果:IL4-IL10融合タンパク質の検出。ELISAアッセイ(
図1および2を参照されたい)は両方ともトランスフェクトしたHEK293細胞の培養液上清の用量応答曲線をもたらし、ELISAに使用したモノクローナル抗体により認識される構造を有するIL4およびIL10タンパク質の存在を示した(
図1)。ELISA(cross-ELISA)を、その後IL4-IL10融合タンパク質を特異的に測定し、組換え野生型サイトカイン分子は測定しないように改変した(
図2のAおよびBを参照されたい)。75pg/mlの組換えIL10およびIL4-IL10融合タンパク質と同等量を、このcross-ELISAで試験した場合、IL4-IL10融合タンパク質だけがシグナルを示し、IL10はシグナルを示さなかった(
図2のAおよびB)。したがって、これらの結果は、本発明のIL4-IL10融合タンパク質の配列をトランスフェクトしたHEK293細胞から得られた上清だけが、IL4およびIL10配列が互いに連結されたタンパク質を含有したことを実証している。
【0124】
(実施例3)
SDS-Pageおよびウエスタンブロット
方法:試料を、710mMの2-メルカプトエタノールを含有するサンプルバッファー(Tris-HCl pH6.8、25%,w/vのグリセロール、2%、w/vのSDS、0.01%、w/vのブロモフェノールブルー; BioRad、Richmond、VA、USA、Cat# 161-0737)で1:1に希釈し、10分間、100℃においてインキュベートした。続いて、試料を、7.5%、w/vのポリアクリルアミド-トリス/グリシンゲル(Mini-PROTEAN TGX Precast Gels without SDS; BioRad、Cat# 456-1023)に負荷した。分子量マーカー(WesternC Standard、250-10kD; BioRad; Cat# 161-0376)を、別のレーンで泳動させた。電気泳動を、還元条件下で、トリス/グリシン/SDSバッファー(BioRad; Cat# 161-0732)を使用して実施した。IL4-IL10融合タンパク質を同定するために、免疫ブロッティングを、抗IL4または抗IL10抗体を用いて実施した。タンパク質を、上記のようにSDS-PAGEにおいて分離させ、その後、PVDF-膜(BioRad; Cat# 161-0277)に、ウェスタンブロッティングにより、トリス/グリシンバッファー(BioRad; Cat# 161-0734)を使用して100Vで1時間転写した。
【0125】
ブロッティング後、膜を、4%、w/vの粉ミルク(Elk milk powder; Campina、Zaltbommel、the Netherlands)を含有するPBS-Tと一緒にインキュベートし、残りの結合部位を遮断した。PVDF膜を、その後、3回、PBS-Tで洗浄し、一次抗体(マウスIgG1抗ヒトIL4; Santa Cruz Biotechnology、Santa Cruz、CA、USA; Cat# SC80093またはマウスIgG1抗ヒトIL10; Santa Cruz; Cat#SC32815)と一緒に、1%、w/vのミルク(PBSTに溶解)中で1時間インキュベートした。さらに1回の洗浄ステップ後、ブロットを、1時間、二次抗体(ホースラッディシュペルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスIgG; Santa Cruz; Cat SC2005)およびWesternC Marker検出抗体(StrepTactin-HRP; BioRad; Cat# 161-0382)と一緒に、PBST-1%ミルク中でインキュベートた。ECL溶液(GE Healthcare、Diegem、Belgium、Cat# RPN2132)を洗浄した膜に加え、膜をカセットに移した後で、15分まで、Kodak Imagerを使用して発色させた。IL4-IL10融合タンパク質をさらに特徴付けるために、培養液上清を、PNGaseF(Sigma Aldrich、cat# G5166)を用いて、製造業者の取り扱い説明書に従って、さらに処理し、IL4-IL10融合タンパク質を脱グリコシル化(deglysolate)し、その後、上記のように、SDS-PAGEおよび免疫ブロットにおいて分析した。
【0126】
結果:野生型IL4およびIL10は、両方とも、MW<20kDと一致する相対移動(Mr)で移動した(
図3AおよびBに示したブロットのレーン4および5)。トランスフェクトされたHEK293から得られた上清から、IL4-IL10融合タンパク質は、二重のバンドとして、MW約30-35kDに対応するMrで移動した。両方のバンドは、抗IL4(
図3A)および抗IL10モノクローナル抗体(
図3B)により認識され、したがって、両方とも、IL4-IL10融合タンパク質の変異体、おそらく異なるグリコフォームを表している。とりわけ、組換え野生型IL4またはIL10の範囲のMrに相当するバンドは検出されなかった(
図3Aおよび3Bのレーン2)。これらの結果は、IL4-IL10融合タンパク質だけが、トランスフェクトされたHEK293細胞の上清において検出され、個々のサイトカイン(すなわち、IL4およびIL10)が検出されなかったことの確認である。パネル3Aおよび3Bのレーン2に記載の二重バンドがグリコフォームであることを確認するために、IL4-IL10融合タンパク質を含有する上清を、PNGaseFを用いて、脱グリコシル化のために処理し、免疫ブロットにより、未処理の上清と比較した。結果は、1つのバンドだけが脱グリコシル化後に検出されたことを示し(
図3Aおよび3Bに示した両方のブロットのレーン3を参照されたい)、これにより、両方のブロット(
図2AおよびB)のレーン2に示された二重バンドが、実際には本発明のIL4-IL10融合タンパク質であるが、グリコシル化型であったことが確認された。
【0127】
(実施例4)
IL4-IL10融合タンパク質高速サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のゲルろ過。
方法:IL4-IL10融合タンパク質の分子量を決定するために、高速サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)アッセイを実施した。ゲルろ過(BioSuite 125 4 μm UHR SEC Column; Waters; Cat# 186002161)を、高速液体クロマトグラフィーシステム(Shimadzu)において、0.5M NaClを含有する50mMのリン酸バッファーを移動相として用いて実施した。流す前に、カラムを、サイログロブリン、ウシ血清アルブミン、カルボニックアンヒドラーゼ、ミオグロブリンおよびリボヌクレアーゼのタンパク質混合物を使用して較正した。カチオン交換により精製したIL4-IL10融合タンパク質を、最も高いIL4-IL10融合タンパク質含有量を有するクロマトグラフィー分画をプールし、濃縮することによって得た(2mlのプール分画を、100μlに濃縮し、これが2μgのIL4-IL10融合タンパク質を含有した)。50μlの20μg/mlのプールしたIL4-IL10融合タンパク質をカラムに注入し、流速0.35ml/分で圧力35barの下でカラムの中を流した。175μlの分画を回収し、IL4およびIL10の含有量を、上記のIL4およびIL10のELISA(1/500希釈)において測定した。組換えヒトIL4(Sigma、Cat# 14269)および組換えヒトIL10(Sigma、Cat# 19276)を用いて、同様の流しを実施し、IL4-IL10融合タンパク質の分子サイズと、野生型サイトカインの分子サイズとを比較した。
【0128】
結果: IL4のHP-SECの溶出パターンは、IL4が単量体(約15kD)として存在することを示している。IL10の溶出パターンは、このサイトカインが二量体型(約40kD)として存在しており、これはIL10の天然型である(Zdanovら、Stucture 1995年、3:591-601頁)。IL4-IL10融合タンパクの溶出パターンは、大部分が二量体型(約70kD)で存在することを示している(
図4)。
【0129】
(実施例5)
炎症促進性サイトカインを測定するアッセイ。
方法:TNFαの産生を、市販のELISA(TNFα Pelipair ELISA Kit; Sanquin、Amsterdam、the Netherlands; Cat# M9323)を使用して、製造業者の取り扱い説明書に従って測定した。簡潔には、プレートを、炭酸塩/重炭酸塩バッファー、pH9.6で1:150に希釈した抗TNFα捕捉抗体(catching antibody)でコーティングし、PBS-Tで3回洗浄し、2.5%、w/vのウシ血清アルブミン(BSA; Roche Applied Science、Mannheim、Germany、Cat# 10735108001)と一緒にPBS中でインキュベートし、プレートの残りの結合部位をいずれも遮断した。さらに1回の洗浄ステップ後、ウェルを、PBS-Tで希釈した試料と一緒にインキュベートした。PBS-T中200〜1.56pg/mlの濃度の組換えTNFαの標準曲線を、参照のために試験した。組換えTNFαは、キットに供給されていた。最終的に、結合TNFαを、PBS-T中のビオチン化抗TNFαおよびストレプトアビジン-ポリ-HRP(Sanquin; Cat# 2032)と一緒にインキュベートすることにより、それぞれ検出した。結合したHRPを、TMB(3,3'5,5"テトラメチルベンジジン; Invitrogen; Cat# SB02)を用いて可視化した。ELISAを完了させるために、1Mの硫酸(Chem Lab; Cat# CL05-2658-1000)を加えた。結果は、組換えTNFαの標準曲線の結果を参照し、pg/mlとして表した。同様のELISA手順を使用して、IL6およびIL8(Sanquinから購入)ならびにIFNγおよびIL17(Biosourceから購入)を測定した。
【0130】
(実施例6)
IL4-IL10融合タンパク質、IL4およびIL10の活性を測定するためのアッセイ。
方法:全血におけるリポ多糖類(LPS)誘導性サイトカイン放出(IL6、IL8、TNFα)を、IL4およびIL10の機能性アッセイとして使用した。ヘパリン添加ヒト血液を健康なボランティアから得、Pen/Strep(PAA Laboratories、Pasching、Austria; Cat# P11-013)を添加したRPMI 1640培養培地(Glutamax; Invitrogen、Cat# 61870010)で1:10に希釈した。LPS(リポ多糖類; Sigma; Cat# L4391)を加え、最終濃度10ng/mlを得た。IL4-IL10融合タンパク質を、最終濃度100ng/mlで加えた。対照として、組換えヒトIL4(Sigma、Cat# I4269)および組換えヒトIL10(Sigma、Cat# I9276)を、それぞれ最終濃度50ng/mlで加えた。IL10およびIL4の活性を検証するために、ヒトIL4受容体(a-hlL4-R; R&D Systems; Minneapolis、MN、USA、Cat# MAB230)およびヒトL10受容体(a-IL10-R、BioLegend、San Diego、CA、USA、Cat# 308807)に対する受容体遮断抗体を、それぞれ最終濃度10μg/mlおよび20μg/mlで加えた。全血培養液を、その後、18時間、37℃においてインキュベートし、上清を回収後、-80℃でサイトカインの試験まで保存した。
【0131】
結果:上清中に存在するTNFαのレベルを、ELISAを用いて測定し、TNFαの阻害%として表した(
図5A)。結果は、IL4-IL10融合タンパク質の不在下のTNFα産生は、0%の阻害をもたらしたことを示している(
図5A)。IL4-IL10融合タンパク質を欠いた、同様の体積のバッファーを試験した場合、TNFαの産生阻害は見られなかった(
図5A)。IL4-IL10融合タンパク質またはIL4とIL10との組み合わせによる、LPS誘導性のTNFα、IL6およびIL8の産生もまた、ELISAアッセイを使用して測定した(
図5B)。上清中に存在するTNFα、IL6およびIL8の濃度を、Y軸に示した。IL4-IL10融合タンパク質を、50ng/mlで試験し、組換えヒトIL4およびIL10のそれぞれ最終濃度25ng/mlの混合物の効果と比較した。結果は、IL4-IL10融合タンパク質およびIL4とIL10との組み合わせの両方とも、TNF、IL6およびIL8のLPS誘導性の産生を、対照(すなわち、サイトカインを含まない培地)と比較して有意に阻害したことを示す。IL6のLPS誘導性の産生に対するIL4-IL10融合タンパク質の効果は、ヒトIL4受容体(a-hlL4-R)およびヒトIL10受容体(a-IL10-R)に対する受容体遮断抗体を両方とも加えた場合、対照の状況(例えば、培地のみ)と比較して完全に無効化された。しかし、IL6のLPS誘導性産生に対するIL4-IL10融合タンパク質の効果は、2つの部分(すなわちIL4またはIL10)のいずれか1つを、ヒトIL4-受容体(a-hlL4-R)またはIL10受容体(a-IL10-R)に対する受容体遮断抗体により遮断した場合、対照の状況(例えば、培地のみ)と比較して部分的に無効化された。
【0132】
(実施例7)
炎症促進性(Th1およびTh17サイトカイン発現細胞)と、制御性T細胞活性(FoxP3発現CD4 T細胞)とのバランスに対する、IL4-IL10融合タンパク質の効果。
方法:骨髄細胞およびB細胞の活性化は、炎症促進性Th1およびTh17と、制御性FoxP3発現CD4 T細胞とのT細胞のバランスに非常に依存している。T細胞のサイトカイン産生に対するIL4-IL10融合タンパク質の効果を評価するために、末梢血由来単核細胞(PBMC)を、健康なドナーから単離した。簡潔には、血液を、ペニシリン(100U/ml、Yamanouchi、Leiderdorp、The Netherlands)、ストレプトマイシン(100mg/ml、Fisiopharma、Milano、Italy)およびグルタミン(2mM、Gibco BRL)を含有するRPMI 1640培地(Gibco BRL、Life Technologies、Merelbeke、Belgium)で1:1に希釈した。PBMCを、Ficoll-Paque密度勾配遠心分離(Pharmacia、Uppsala、Sweden)により単離した。PBMC(5.10
5/ml)を、3日間、37℃において、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)および10%のプールしたウシ胎児血清(FCS、Gibco BRL)を加えたRPMI/glutamax(Gibco BRL)中で培養した。PBMCを、超抗原のブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB、1ng/ml)および/またはIL4-IL10融合タンパク質の存在下または不在下で培養した。この培養期間後、上清を回収し、無細胞にし、-80℃において、IFNγ、IL17およびTNFαに関してELISAにより試験するまで保存した。加えて、細胞増殖を、3H-チミジン取込みにより測定した。3H-チミジン(5mCi/ml、NEN Life Science Products、Amsterdam、The Netherlands)を、3日間の細胞培養の最後の18時間の間に各ウェルに加えた。この培養期間後、細胞を収穫し、3H-チミジンの取込みを、液体シンチレーション計数法で測定し、総数/分で表した(CPM)。さらに、細胞内FoxP3染色を、APC結合ラット抗ヒトFoxP3染色セット(eBioscience、San Diego、USA)を使用して実施した。細胞内染色のために、APC標識ラットアイソタイプ対照抗体(eBioscience)を使用した。陽性/陰性細胞の百分率を、アイソタイプ対照を使用して設定したマーカーに基づき決定した。細胞の取得を、FACScanフローサイトメーターを使用して実施し、データを、FlowJoソフトウェア、バージョン7.5(Tree Star Inc.、Oregon、USA)を用いて分析した。
【0133】
単球における、阻害性Fcγ受容体(FcγRIIb)の発現に対するIL4-IL10融合タンパク質の相乗活性を試験した。これを、活性化FcγRIおよびFcγRIIIの制御と比較した。PBMC (1.10
6/mlを、4日間、37℃において、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)および10%のプールしたヒトAB血清(Gibco BRL)を加えたRPMI/glutamax(Gibco BRL)中で培養した。PBMCを、超抗原のSEB(1ng/ml)および/またはIL4-IL10融合タンパク質の存在下または不在下で培養した。この培養期間後、FcγRの発現を、FACS分析により評価した。FACS分析のために、単球を、APC標識CD14mAb、FITC-標識抗FcγRIおよび抗FcgRIIImab(Pharmingen)ならびにFITC-標識抗-FcgRllb mab(2B6、Genmab、Utrecht、Netherlands)と一緒にインキュベートした。細胞の取得を、FACScanフローサイトメーターを使用して実施し、データを、FlowJoソフトウェア、バージョン7.5(Tree Star Inc.、Oregon、USA)を用いて分析した。
【0134】
結果:SEBは、FoxP3発現の上方制御と関連する有意な増殖を誘導した。増殖およびFoxP3発現は両方とも、IL4-IL10融合タンパク質によりほとんど影響されなかった(それぞれ
図6AおよびB)。対照的に、Th1およびTh17サイトカインIFNγ(左のグラフ)、IL-17(中央のグラフ)およびTNFα(右のグラフ)は、IL4-IL10融合タンパク質およびIL4とIL10との組み合わせにより、すべて強力に減少した(
図6C)。まとめると、これは、IL4-10融合タンパク質が、抑制制御性CD4T細胞と、炎症促進性Th1およびTh17細胞との間のバランスを強力に改変することを実証している。
【0135】
(実施例8)
IL4-IL10融合タンパク質、IL4、IL10およびIL4とL10との組み合わせによる、活性化Fcγ受容体IおよびIIIと、阻害性FcγRllbとの間のバランスに対するIL4-IL10融合タンパク質の効果。
方法:IgG(FcγR)に対する活性化および阻害性受容体の間のバランスは、免疫複合体により媒介される骨髄細胞およびリンパ系細胞の活性化において極めて重要な役割を果たす。単球におけるFcγRの発現に対するIL4-IL10融合タンパク質の効果を評価するために、末梢血由来単核細胞(PBMC)を、健康なドナーから単離した。T細胞依存性単球活性化を、PBMC(5.10
5/ml)を2日間、超抗原のブドウ球菌エンテロトキシン(SEB)(0.1ng/ml)および/またはIL4-IL10融合タンパク質の存在下または不在下で処理することにより誘導した。この培養期間後、FcγRの発現を測定した。
【0136】
結果:IL10は、FcγRI、FcγRIIaおよびFcγRIIIの発現を上方制御し(
図7)、一方、IL4は、これらの条件下で、サイトカイン不在下で培養された細胞と比較して、これらの活性化FcγRの発現においてわずかな減少を示した。IL4とIL10との組み合わせおよびIL4-IL10融合タンパク質は、FcγRIおよびFcRyllaの発現を正規化した。FcγRIIIにおけるわずかな増加が、IL4とIL10との組み合わせおよびIL4-IL10融合タンパク質によりみられるが、IL10単独により誘導されるこの受容体の上方制御と比較して取るに足らないものであった。IL10単独は、阻害性FcγRIIbの発現のわずかな減少を示しているが、一方、IL4単独は、この受容体の発現のわずかな減少を示した。IL4とIL10との組み合わせ、およびIL4-IL10融合タンパク質は、阻害性FcγRIIbの発現を改変しなかった(
図7)。まとめると、これは、IL4-IL10融合タンパク質が活性化FcγRの発現を安定化し、結果としてこれは、免疫複合体誘導性免疫活性化を阻害できることを実証している。
【0137】
(実施例9)
血液誘導性軟骨損傷のための軟骨の培養。
方法:健康なヒト関節軟骨組織を、University Medical Centre Utrechtの医学倫理規制により承認された、ドナーの死後24時間以内に上腕骨頭から得た。ドナー(n=8; 平均年齢69.8±8.7歳、3人が男性および5人が女性)は、関節障害の既知の病歴は無かった。軟骨の全層切片を、下層骨を除く上腕骨頭から無菌で切断し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)中で保存した。切離1時間以内に、切片を、小型の全層立方体外植片に切断し、無菌で秤量した(5〜15mgの範囲、精度±0.1mg)。外植片を、96ウェルの丸底マイクロタイタープレートにおいて個別に培養した(空気中5%CO
2、pH7.4、37℃および湿度95%において)。培養培地は、グルタミン(2mM)、ペニシリン(100IU/mL)、硫酸ストレプトマイシン(100μg/mL; すべてPAA)、アスコルビン酸(85μΜ; Sigma)および10%熱不活性化プールヒト男性AB
+血清(Gemini Bioproducts)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM; Invitrogen)で構成された。
【0138】
各実験のために、新鮮な血液を、健康なドナー(n=8、平均年齢28.0±5.0歳、2人の男性および6人の女性)からバキュテナーチューブ(nr. 367895; Becton Dickinson)に採血した。ヒト関節出血を模倣するために、軟骨を、50% v/v全血に4日間曝露し、4日間は、関節腔からの血液の自然な排出時間であると考えられる。血液曝露後、軟骨外植片を、2回、培養条件下で45分洗浄し、すべての添加物を除去し、さらに12日間培養した。培地は4日ごとに新しくした。ドナー8人のうち5人の軟骨および血液を使用した最初の実験準備において、IL4-IL10融合タンパク質の用量応答曲線を、血液曝露期間に、0.0001、0.0003、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30および100ng/mLの濃度でIL4-IL10融合タンパク質を加えることによって作成した(n=5)。別の実験において、最適濃度の10ng/mLのIL4-IL10融合タンパク質を、同様の濃度のIL10とIL4との組み合わせおよび個々の成分と比較した(それぞれ10ng/mL、n=8)。
【0139】
主要な軟骨基質成分の1つであるプロテオグリカン合成速度の尺度として、硫酸塩のグリコサミノグリカン(GAG)への取込み速度を決定した。各実験の終わりに、74kBq Na
235SO
4 (NEX-041-H担体非含有; DuPont)を、各ウェルに加えた。新たに形成された硫酸化GAGのパルス標識の4時間後、軟骨試料を、冷PBSで2回洗浄し、-20℃において保存した。解凍試料を、2時間、65℃において2%パパイン(Sigma)を用いて消化した。プロテオグリカン合成速度を、0.2M NaCl中0.3Mヘキサデシルピリジニウムクロリドモノハイドレート(CPC; Sigma)によるGAGの沈殿反応により決定した。この沈殿を、3M NaClに溶解し、放射能の量を、液体シンチレーション分析により測定した。放射能カウントを、培地、標識時間および軟骨の湿重量の比放射能に対して正規化した。結果を、取り込まれた硫酸塩のナノモル/グラム軟骨組織の湿重量(nmol/h*g)として表した。
【0140】
各軟骨外植片のプロテオグリカン含有量および培養培地へのプロテオグリカンの放出を、それぞれ、Alcian Blue(Sigma)を用いたGAGの染色および沈殿反応によって、軟骨試料のパパイン消化物および培養培地において達成した。染色を、620nmにおける吸光光度法により、コンドロイチン硫酸(Sigma)を参照として定量化した。結果を、mg GAG/軟骨組織の湿重量(mg/g)および4日間に放出されたmg GAG/組織の湿重量(mg/g)として、それぞれ含有量および放出に対して表した。軟骨の組成と生物活性との限局的差のため、プロテオグリカンの代謝回転パラメーターを、ランダムに得られ、個別に処理された、同じドナーの10個の軟骨外植片に対して決定した。これら10個の試料の平均を、その軟骨ドナーに関する代表的値として採用した。
【0141】
結果:50% v/vの血液に対する4日間の軟骨の曝露は、プロテオグリカン合成速度を74%強力に減少させた(
図8A; p=0.043)。IL4-IL10融合タンパクの添加は、プロテオグリカン合成速度の用量依存的回復をもたらし、すなわち、0.1 ng/mLおよびそれを超えるIL4-IL10融合タンパク質において、IL4-IL10融合タンパク質を含まない血液曝露と比較して、プロテオグリカン合成速度における有意な増加が観察された(すべてp=0.043)。血液曝露によるプロテオグリカン放出の62%の増加は、0.1ng/mLおよびそれを超えるIL4-IL10融合タンパクを加えることによって(統計的に)有意に反転した(対照レベルまで復元)(
図8B、すべてp=0.043、1ng/mLがp=0.080であることを除く)。これは、対照培養液とはもはや異なるプロテオグリカン放出の正常化をもたらした。合計プロテオグリカン含有量は、軟骨外植片を血液に曝露した場合、11%減少した(
図8C; p=0.043)。血液曝露による含有量の減少は、IL4-IL10融合タンパク質を0.3ng/mLおよびそれを超える濃度で加えることによって相殺される(すべてp=0.043、1および100ng/mlが両方ともp=0.080であることを除く)。
【0142】
IL4-IL10融合タンパク質の効果を、サイトカインの組み合わせおよび個々の成分と比較するために、IL4-IL10融合タンパク質、IL4、IL10および両方の組み合わせ(各10ng/mL)を、同じアッセイにおいて試験した。プロテオグリカン合成速度は、血液曝露により76%減少した(
図9A; p=0.012)。IL10およびIL4は両方とも、血液と比較した場合、合成速度が、統計的に有意に上昇した(それぞれp=0.017およびp=0.012)。同じ濃度で使用したIL4-IL10融合タンパク質もまた、プロテオグリカン合成速度を上昇させ、したがって、2種の個々のサイトカインの組み合わせと同等に有効であった(それぞれ、血液曝露と比較して241%および245%)。さらに、IL4-IL10融合タンパク質の効果は、IL10単独の効果より、統計的に有意に優れていた(p=0.025)。IL4-IL10融合タンパク質、両方のサイトカインの組み合わせおよびIL4単独を含む培養液のプロテオグリカン合成速度は、これ以上対照と統計的に有意には異ならなかった。プロテオグリカン合成の血液誘導性阻害からの完全な回復、すなわち、正常化が得られた。軟骨の血液曝露は、プロテオグリカン放出を59%増加した(
図9B; p=0.017)。IL10の添加は、この放出の強化を減少させた(血液と比較してp=0.012)。IL4、IL4とIL10との組み合わせおよびIL4-IL10融合タンパク質は、血液曝露と比較した場合、放出を大幅に減少させた(すべてp=0.012)。IL4-IL10融合タンパク質は、IL10単独(p=0.012)と比較した場合より強力であり、個々のサイトカインの組み合わせと同等に有効であった(p=0.611)。
【0143】
血液に曝露した軟骨は、プロテオグリカン含有量の10%の減少を示した(
図9C; p=0.012)。個々のサイトカインのIL4およびIL10は、含有量のこの減少を防止しなかった(血液曝露と比較して、それぞれ、p=0.093およびp=0.327)。しかし、IL4-IL10融合タンパク質は、添加しない血液曝露と比較して、プロテオグリカン含有量を(統計的に)有意に増加させた(p=0.012)。
【0144】
(実施例10)
疼痛および変形性関節症に関するイヌGrooveモデル。
方法:変形性関節症に関するイヌGrooveモデルにおける疼痛および機能性能力に対するIL4-IL10融合タンパク質の効果。Grooveモデルの特徴は、ヒト変形性関節症(OA)の特徴を反映しており、ヒトOAを研究するための適切なモデルである。Grooveモデルは、変性軟骨の変化が進行しており、究極的には変形性関節症(OA)をもたらすが、滑膜炎症は時間と共に縮小するという点で独特である。このため、軟骨変性および疼痛に対する薬物治療の直接効果の評価は、炎症に対する間接的効果の可能性によりあまり影響されない。さらに、関節の損傷を引き起こし、モデルを処置に対してより感受性にする永続的な誘発は存在しないので、このモデルは独特である。OAの他の(イヌ)モデルに使用した、関節の不安定性などの関節損傷の永続的な誘発は、治療の有益な効果の可能性を相殺するものと思われる。全体的に見て、Grooveモデルは、OAによる障害が引き起こす軟骨損傷および疼痛に対するIL4-IL10融合タンパク質の治療効果を試験するために適切である。構造的変化ではなく、疼痛および機能性能力は、患者に医学的配慮を求めさせるので、これらのパラメーターは、臨床的な変形性関節症調査において非常に重要なパラメーターであると認められる。イヌモデルにおいて、疼痛および機能性能力の指標である制動、直立姿勢および推進床反力の変化を、歩行板分析(FPA)により評価することができる。関節の負荷は、関節変性の過程の段階に依存して、疼痛および機能性能力に影響を受けるものである。OA誘導後最初の2週間において、手術に関連する疼痛により引き起こされる可能性が高い、負荷軽減の明らかな減少が見出される。しかし、3週間後、OA関連疼痛の結果として、影響のある肢の確固とした負荷軽減が存在する。
【0145】
変形性関節症(OA)を、4匹の雑種犬(Mixed Breed、骨格的に成熟)の右膝に、Groove modelに従って誘導した。10の縦方向および斜め方向の溝を、深さ0.5mmで、大腿顆の体重を支える部分に作製した。出血および軟組織の損傷は可能な限り防止して、炎症性駆動モデルおよび特定の関節炎モデルとは対照的に、炎症性成分の優勢を防止した。手術後、滑膜、筋膜および皮膚を縫合した。対側の未手術の膝は、対照として機能した。1mlのIL4-IL10融合タンパク質(1ug/ml)の関節内注射を、OA誘導5週間後に与えた。(左から一番目の矢印を参照されたい)。最初の注射から2週後(7週目)、より投薬量の多い(10ug/ml)2番目の注射を与えた(左から2番目の矢印を参照されたい)。
【0146】
疼痛および機能性能力の尺度とされる平地歩行パターンを、歩行板分析(FPA)により評価した。イヌモデルにおいて、制動、直立姿勢および推進反力(GRF)の縦方向の変化を、各足に関してFPAにより評価することができる。11mの通路を表面と同一平面に埋め込んだ歩行板(FP)(100Hz)により、GRFのピークをサンプリングした。力を、体重および時間により正規化し、N/kgで表した。一人の調教師が、リードによりFPの上を、並足で、一定速度(1±0.2m/秒)で先導した。良好な走りは、それぞれ、右の前足と後足または左の前足と後足の、連続した、異なる足の打ち付けから構成された。10の有効な走りを、犬の両側に関して回収し、GRFを、4本の足のそれぞれに関して平均した。FPAを、誘導入前3週間に開始して2週間ごとに実施し、誘導後8週に終了した。さらに、IL4-IL10融合タンパク質の注射(5週および7週目)後、毎日FPAを実施した。
【0147】
結果:結果は、IL4-IL10融合タンパク質注射後、OA関節の負荷(実験関節対対側の対照関節)は、注射直前の、立つ力におけるスパイクにより示されるレベル(OA前の負荷と比較して9%の阻害)と比較して、ほぼ正常化した(OA前の負荷と比較して2%の阻害)(
図10)。疼痛緩和の指標である負荷に対する効果を、負荷が再度低下した後数日にわたって得た。7週目の第2回の注射後、IL4-IL10融合タンパク質の正の効果が、罹患OA関節の負荷パターンにおいて再度見られた。これは、-7%(OA前の負荷と比較して)からOA前の負荷と比較して-2%の変化により示され、再度、正常化がほぼ完了した。したがって、IL4-IL10融合タンパク質は、OAに関するこのイヌモデルにおいて疼痛を減少させることができる。
【0148】
(実施例11)
疼痛および変形性関節症に関するイヌGrooveモデル。
方法:変形性関節症(OA)を、雑種犬(Mixed Breed、骨格的に成熟)の右の膝に、Grooveモデルに従って誘導した。10の縦方向および斜め方向の溝を、深さ0.5mmで、大腿顆の体重を支える部分に作製した。
【0149】
出血および軟組織の損傷は可能な限り防止して、炎症性駆動モデルおよび特定の関節炎モデルとは対照的に、炎症性成分の優勢を防止した。手術後、滑膜、筋膜および皮膚を縫合した。対側の未手術の膝は、対照として機能した。犬を2つの群に分割した。第1群は、OA導入後5週目に、IL4-IL10融合タンパク質の関節内注射を受ける。第2群は、OA導入後5週目に、IL4およびIL10両方の遊離型の関節内注射を受ける。最初の注射から2週後(7週目)、より多い投薬量の2回目の注射を、第1群(10ug/mlのIL4-IL10融合タンパク質)および第2群(5ug/mlのIL4および5ug/mlのIL10)に与えた。
【0150】
疼痛および機能性能力の尺度とされる平地歩行パターンを、歩行板分析(FPA)により評価した。イヌモデルにおいて、制動、直立姿勢および推進床反力(GRF)の縦方向の変化を、各足に関してFPAにより評価することができる。11mの通路を表面と同一平面に埋め込んだ歩行板(FP)(100Hz)により、GRFのピークをサンプリングした。力を、体重および時間により正規化し、N/kgで表す。一人の調教師が、リードによりFPの上を、並足で、一定速度(1±0.2m/s)で先導した。良好な走りは、それぞれ、右の前足と後足または左の前足と後足の、連続した、異なる足の打ち付けから構成される。10の有効な走りを、犬の両側に関して回収し、GRFを、4本の足のそれぞれに関して平均する。FPAを、誘導前3週間に開始して2週間ごとに実施し、誘導後8週に終了する。両方の群において、5週目および7週目の両方において行った、IL4-IL10融合タンパク質の注射(第1群)ならびにIL4およびIL10の遊離型の注射(第2群)後、追加の毎日のFPAを実施する。
【0151】
結果:結果は、両方の注射(5週目および7週目)後、IL4-IL10融合タンパク質(1群)またはIL4とIL10との遊離型の組み合わせ(2群)のいずれかを用いた処置が、罹患OA関節の負荷パターンに正の効果を生み出すことを示す。しかし、罹患OA関節の負荷パターンにおいて、5週目および7週目の両方において行った、IL4-IL10融合タンパク質を用いた処置に対する応答において、IL4とIL10との遊離型組み合わせを用いた処置と比較してより大きな改善が観察される。IL4-IL10融合タンパク質を用いた処置の効果が、IL4とIL10との遊離型の組み合わせを用いた処置の効果より、長い時間持続することがさらに観察された。したがって、本発明のIL4-IL10融合タンパク質は、OAに関するイヌモデルにおいて、IL4とIL10との遊離型の組み合わせにより達成されるものより非常に高い程度で疼痛を減少させることができる。
【0152】
(実施例12)
痛覚過敏に関するネズミカラギーナン誘導性モデル。
方法:痛覚過敏を、雌C57BL/6マウスに、生理食塩水で希釈した5μlのλ-カラギーナン(2% w/v; Sigma- Aldrich、St. Louis、MO、USA)を、0日目に後足に足底内注射することによって誘導した(
図11の左から1番目の矢印を参照されたい)。生理食塩水単独の足底内注射は、検出可能な痛覚過敏を誘導しなかった。足を逃避させる潜時として測定される、赤外線熱刺激に対する応答を、Hargreaves試験(IITC Life Science、Woodland Hills、CA)を使用して決定した。光線の強度を、およそ8秒の熱逃避潜時時間を誘導するように、ベースラインにおいて選択した。ベースライン逃避潜時を、連続3日間決定した。マウスは、カラギーナン注射後少なくとも10日続く、逃避潜時の減少により裏付けられる痛覚過敏を発症した。6日目に、マウスに、IL4(100ng)、IL10(100ng)もしくはIL4-IL10融合タンパク質(40、100および200ng)またはビヒクル(生理食塩水)のいずれかの単回髄腔内注射を与えた(
図11および12の矢印を参照されたい)。
【0153】
結果:マウスは、カラギーナン注射後6日まで、逃避潜時の減少により示される痛覚過敏を示す(
図11)。6日目に、マウスに、100ngのIL4-IL10融合タンパク質(n=4)または対照として生理食塩水(n=4)の単回髄腔内注射を与えた。IL4-IL10融合タンパク質注射後、ベースラインまで戻った足逃避潜時値の減少により裏付けられるように、痛覚過敏が阻害された(
図11)。IL4-IL10融合タンパク質の単回投薬量の効果は、2日まで続いた。48時間後、効果は低下したが、対照の生理食塩水処置マウスにおける潜時の減少%とは、未だ有意に異なった。(
図11)。
【0154】
上記の同じ方法論を使用する相補的な実験において、カラギーナン誘導性熱痛覚過敏を、IL4、IL10またはIL4-IL10融合タンパク質を用いて処置したマウスにおいてさらに評価した。詳細には、IL4もしくはIL10のいずれか(A)またはIL4-IL10融合タンパク質(B)の髄腔内注射を、痛覚過敏誘導6日後に与えた(
図12)。IL4およびIL10は両方とも、足底内カラギーナン疼痛応答に対する痛覚過敏応答をわずかに減少させたが、この効果は、IL4-IL10融合タンパク質の効果と比較して取るに足らないものであった(
図12)。IL4またはIL10個別の効果は1日続いたが、一方、IL4-IL10融合タンパク質の効果ははるかにより長期間、すなわち4日まで続いた(
図12B)。
【0155】
(実施例13)
痛覚過敏に関するネズミカラギーナン誘導性モデル。
方法:痛覚過敏を、雌C57BL/6マウスに、生理食塩水で希釈した5μlのλ-カラギーナン(2% w/v; Sigma- Aldrich、St. Louis、MO、USA)を、0日目に後足に足底内注射することによって誘導する。生理食塩水単独の足底内注射は、検出可能な痛覚過敏を誘導しない。足を逃避させる潜時として測定される、赤外線熱刺激に対する応答を、Hargreaves試験(IITC Life Science、Woodland Hills、CA)を使用して決定する。光線の強度を、およそ8秒の熱逃避潜時時間を誘導するように、ベースラインにおいて選択する。ベースライン逃避潜時を、連続3日間決定する。マウスは、カラギーナン注射後少なくとも10日続く、逃避潜時の減少により裏付けられる痛覚過敏を発症する。6日目に、マウスに、IL4-IL10融合タンパク質(40、100および200ng)もしくはIL4(100ng)とIL10(100ng)との遊離型の組み合わせを含有する溶液またはビヒクル(生理食塩水)の単回髄腔内注射を与える。
【0156】
結果:結果は、対照状況(ビヒクル処置)と比較して、IL4-IL10融合タンパク質またはIL4とIL10との遊離型の組み合わせのいずれかによる処置が、痛覚過敏の有意な減少を生み出すことを示す。しかし、IL4-IL10融合タンパク質を用いた処置が、IL4とIL10との遊離型の組み合わせに基づく処置より、痛覚過敏に対するより大きな阻害効果を発揮することが観察されている。IL4-IL10融合タンパク質の単回投薬量の痛覚過敏に対する効果が、個々のサイトカイン(すなわち、IL4とIL10との遊離型の組み合わせ)の等価な投薬量の効果より、はるかにより長期間持続することが、さらに観察される。
【0157】
(実施例14)
全血培養液におけるLPS誘導性TNF産生に対するIL4-IL10融合タンパク質の活性。
方法:全血におけるリポ多糖類(LPS)により誘導されるサイトカインの放出(TNFα)をIL4-IL10融合タンパク質の活性のための機能性アッセイとして使用した。ヘパリン添加ヒト血液を健康なボランティアから得、Pen/Strep(PAA Laboratories、Pasching、Austria; Cat# P11-013)を添加したRPMI 1640培養培地(Glutamax; Invitrogen、Cat# 61870010)で1:10に希釈した。LPS(リポ多糖類; Sigma; Cat# L4391)を加え、最終濃度10ng/mlを得た。異なるIL4-IL10融合タンパク質構築体を含有する4種の異なるプールを試験した。プールの間の差は、IL4がIL10に連結された様式に存在する(例えば、IL4のc末端がIL10のn末端に連結された、またはその逆)。異なる構築体を、最終濃度2、10、20、30、40および50ng/mlで加えた。全血培養液を、その後、18時間、37℃においてインキュベートし、上清を回収後、-80℃でTNFα含有量に関する試験まで保存した。上清中のTNFαレベルを、ELISAアッセイを使用して測定した(上の実施例2および5に記載)。
【0158】
結果:結果は、TNFα産生の阻害%として示す。IL4-IL10融合タンパク質の不在下において、TNFα産生の阻害は観察されなかった。IL4のc末端がIL10のn末端に連結される、プール2および4は、IL10のc末端がIL4のn末端に連結される(同じ濃度で使用した)プール1および3と比較して、TNFα産生の最も高い阻害を示した。これらの結果は、IL4-IL10融合タンパク質の機能性が、個々のサイトカインがIL4-IL10融合タンパク質内で連結される様式に依存することを示している。