(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の有機カチオントランスポーター3(OCT3)の阻害剤を有効成分として含むうつ病及びうつ様症状の治療剤であって,前記うつ病及びうつ様症状は,身体的抑うつ, 単極性うつ,心因性機能的疾患,非定形うつ,気分変調症,双極性感情病,季節性うつ,持続性気分障害を含むうつ病及びうつ様症状の治療剤。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の第1の側面は,式(I)で示される化合物(本発明の化合物),その薬学的に許容される塩,又はその薬学的に許容される溶媒和物を有効成分として含む,有機カチオントランスポーター3(OCT3)の阻害剤に関する。下記式(I)のとおり,本発明の化合物は,イミダゾピリジン誘導体である。より詳しく説明すると,本発明の化合物は,イミダゾ[1,2-a]ピリジン誘導体である。
【0037】
式(I)中,
R
1〜R
3及びR
5〜R
6は,同一でも異なってもよく,水素原子,ハロゲン原子,C
1−3アルキル基,C
1−3アルコキシ基,C
1−3アルキルチオ基,又はC
1−3ハロゲノアルキル基を示す。R
1〜R
3及びR
5〜R
6の好ましい例は,水素原子,又はC
1−3アルキル基である。ここで,C
1−3アルキル基として,メチル基又はエチル基が好ましい。
【0038】
そして,R
4は,式(II)〜式(VII)のいずれかの基を示す。
【0040】
式(II)中,
X
2は,置換基を有しても良いC
1−10アルキル基,置換基を有しても良いC
1−10アルコキシ基,置換基を有しても良いC
1−10アルキルチオ基,置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基又は置換基を有しても良いC
2−10アルキニル基,置換基を有しても良いC
6−10アリール基,又は置換基を有してもよい良いC
7−10アラルキル基を示す。
【0042】
式(III)中,
X
3は,置換基を有しても良いC
1−10アルキル基,置換基を有しても良いC
1−10アルコキシ基,置換基を有しても良いC
1−10アルキルチオ基,置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基又は置換基を有しても良いC
2−10アルキニル基を示す。なお式(III)において,R
4に隣接する炭素原子(C)との結合部分に記号(*)を付与した。
【0044】
式(VI)中,
X
4は,置換基を有しても良いC
1−10アルキル基,置換基を有しても良いC
1−10アルコキシ基,置換基を有しても良いC
1−10アルキルチオ基,置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基,置換基を有しても良いC
2−10アルキニル基,又は置換基を有しても良いC
6−12アリール基を示す。
【0046】
式(V)中,
X
5は,置換基を有しても良いC
1−10アルキル基,置換基を有しても良いC
1−10アルコキシ基,置換基を有しても良いC
1−10アルキルチオ基,置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基,置換基を有しても良いC
2−10アルキニル基,置換基を有してよい5員環の基又は置換基を有しても良いC
6−12アリール基を示す。
【0048】
式(VI)中,
X
6は,置換基を有しても良いC
1−10アルキル基,置換基を有しても良いC
1−10アルコキシ基,置換基を有しても良いC
1−10アルキルチオ基,置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基,置換基を有しても良いC
2−10アルキニル基,置換基を有してよい5員環の基又は置換基を有しても良いC
6−12アリール基を示す。
【0050】
式(VII)中,
X
7は,置換基を有しても良いC
1−10アルキル基,置換基を有しても良いC
1−10アルコキシ基,置換基を有しても良いC
1−10アルキルチオ基,置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基,置換基を有しても良いC
2−10アルキニル基,置換基を有してよい5員環の基又は置換基を有しても良いC
6−12アリール基を示す。
【0051】
有機カチオントランスポーター3(OCT3)の阻害剤は,OCT3の活性を阻害する剤である。OCT3の活性阻害能は,実施例に示した方法により測定できる。
【0052】
薬学的に許容される塩は,親化合物がその酸性または塩基性塩をつくることによって修飾されている,開示化合物の誘導体を指す。製薬上許容される塩の例には,それらだけに限定するものではないが,アミンなどの塩基性残基の無機酸塩または有機酸塩,あるいはカルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩が含まれる。製薬上許容される塩には,例えば,無毒性の無機酸または有機酸から生成された親化合物の通常の無毒性塩または第4級アンモニウム塩が含まれる。そのような通常の無毒性塩には,塩酸,臭化水素酸,硫酸,スルファミン酸,リン酸,硝酸などの無機酸から誘導されたもの,および酢酸,プロピオン酸,コハク酸,グリコール酸,ステアリン酸,乳酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸,アスコルビン酸,パモン酸,マレイン酸,ヒドロキシマレイン酸,フェニル酢酸,グルタミン酸,安息香酸,サリチル酸,スルファニル酸,2−アセトキシ安息香酸,フマル酸,トルエンスルホン酸,メタンスルホン酸,エタンジスルホン酸,シュウ酸,イセチオン酸などの有機酸から調製された塩が含まれる。
【0053】
本明細書中に提供される化合物の薬学的に許容される塩の形態は,塩基性または酸性部分を含む親化合物から通常の化学的方法で合成される。一般的に,このような塩は,例えば,これらの化合物の遊離の酸性または塩基性の形態を化学量論量の適当な塩基または酸と,水中,有機溶媒中,またはこの2種の混合物中で反応させることにより調製し,一般的に,エーテル,酢酸エチル,エタノール,イソプロパノール,またはアセトニトリルなどの非水性媒質が好ましい。適当な塩の一覧は,「Remington′s Pharmaceutical Sciences」,17th
ed.,Mack Publishing Company,Easton,PA,1985,p.1418に見出され,その開示は参照により本明細書に取り込まれる。
【0054】
薬学的に許容される溶媒和物は,対象となる化合物に溶媒が溶媒和したものである。溶媒和の例は水和である。本発明の化合物は,水酸基やアミド基などを有するものがあり,これらは大気中の水分により水和物を形成しうる。
【0055】
「置換基を有しても良いC
1−10アルキル基」は,以下の置換基群Aから選択される1又は2以上の置換基を有するC
1−10アルキル基を意味する。置換基を有しても良いC
1−10アルキル基におけるC
1−10アルキル基は,1から10個の炭素原子を持つ直鎖アルキル基,3から10個の炭素原子を持つ分鎖アルキル基,あるいは3から10個の炭素原子を持つ環状アルキル基を意味する。直鎖アルキル基の例はメチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基,オクチル基,ノニル基,デシル基を含む。分鎖アルキル基の例はイソプロピル基,イソブチル基,1−メチルプロピル基,t−ブチル基,1−メチルブチル基,2−メチルブチル基,3−メチルブチル基,1−エチルプロピル基,1,1−ジメチルプロピル基,2,2−ジメチルプロピル基,1,2−ジメチルプロピル基,1−メチルペンチル基,2−メチルペンチル基,3−メチルペンチル基,4−メチルペンチル基,1−エチルブチル基,2−エチルブチル基,1,1−ジメチルブチル基,1,2−ジメチルブチル基,1,3−ジメチルブチル基,2,2−ジメチルブチル基,2,3−ジメチルブチル基,3,3−ジメチルブチル基,5−メチルヘキシル基,3−エチルペンチル基,1−プロピルブチル基,1,4−ジメチルペンチル基,3,4−ジメチルペンチル基,1,2,3−トリメチルブチル基,1−イソプロピルブチル基,4,4−ジメチルペンチル基,5−メチルペンチル基,6−メチルヘプチル基,4−エチルヘキシル基,2−プロピルペンチル基,2,5−ジメチルヘキシル基,4,5−ジメチルヘキシル基,2−エチル−3−メチルペンチル基,1,2,4−トリメチルペンチル基,2−メチル−1−イソプロピルブチル基,3−メチルオクチル基,2,5−ジメチルヘプチル基,1−(1−メチルプロピル)−2−メチルブチル基,1,4,5−トリメチルヘキシル基,1,2,3,4−テトラメチルペンチル基,7−メチルオクチル基,6−メチルノニル基,8−メチルノニル基,5−エチル−2−メチルヘプチル基,2,3−ジメチル−1−(1−メチルプロピル)ブチル基,シクロプロピルメチル基,2−(シクロプロピル)エチル基,3,7−ジメチルオクチル基,3−(シクロブチル)ペンチル基,シクロペンチルメチル基及びシクロヘキシルメチル基を含む。環状アルキル基の例はシクロプロピル基,シクロブチル基,シクロペンチル基,シクロヘキシル基,シクロヘプチル基及びシクロオクチル基を含む。C
1−10アルキル基においては,C
1−6アルキル基が好ましく,C
1−3アルキル基がより好ましい。C
1−6アルキル基の例は,メチル基,エチル基,n−プロピル基,イソプロピル基,n−ブチル基,イソブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,n−ペンチル基,イソペンチル基,ネオペンチル基,tert−ペンチル基,1−メチルブチル基,2−メチルブチル基,1,2−ジメチルプロピル基,1−エチルプロピル基,n−ヘキシル基,イソヘキシル基,1−メチルペンチル基,2−メチルペンチル基,3−メチルペンチル基,1,1−ジメチルブチル基,1,2−ジメチルブチル基,2,2−ジメチルブチル基,1−エチルブチル基,1,1,2−トリメチルプロピル基,1,2,2−トリメチルプロピル基,1−エチル−2−メチルプロピル基,1−エチル−1−メチルプロピル基である。
【0056】
「置換基を有しても良いC
1−10アルコキシ基」は,以下の置換基群Aから選択される1又は2以上の置換基を有するC
1−10アルコキシ基を意味する。置換基を有しても良いC
1−10アルコキシ基におけるC
1−10アルコキシ基の例は,上記したC
1−10アルキル基の末端に−O−で示される基が接続した基である。具体的な例は,メトキシ基,エトキシ基,プロピルオキシ基である。
【0057】
「置換基を有しても良いC
1−10アルキルチオ基」は,以下の置換基群Aから選択される1又は2以上の置換基を有するC
1−10アルキルチオ基を意味する。置換基を有しても良いC
1−10アルキルチオ基におけるC
1−10アルキルチオ基の例は,上記したC
1−10アルキル基の末端に−S−で示される基が接続した基である。
【0058】
「置換基群置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基」は,以下の置換基群Aから選択される1又は2以上の置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基を意味する。置換基を有しても良いC
2−10アルケニル基におけるC
2−10アルケニル基は2から10個の炭素原子を有し,少なくとも1つの二重結合を有する直鎖アルケニル基,3から10個の炭素原子を有する分鎖アルケニル基あるいは5から10個の炭素原子を有する環状アルケニル基を意味する。この例としては,ビニル基,アリル基,3−ブテニル基,4−ペンテニル基,5−ヘキセニル基,6−ヘプテニル基,7−オクテニル基,8−ノネニル(noneyl)基,9−デセニル基,1−メチル−2−ブテニル基,2−メチル−2−ブテニル基,2−メチル−3−ブテニル基,2−ペンテニル基,2−メチル−2−ヘキセニル基,及び2−シクロペンテニル基を含む。C
2−10アルケニル基においては,C
2−6アルケニル基が好ましく,C
2−3アルケニル基がより好ましい。
【0059】
「置換基を有しても良いC
2−10アルキニル基」は,以下の置換基群Aから選択される1又は2以上の置換基を有するC
2−10アルキニル基を意味する。アルキニル基は,少なくとも1個の三重結合(2個の隣接SP炭素原子)を有する,1価の基である。C
2−10アルキニル基の例は,エチニル基,1−プロピニル基,プロパルギル基,及び3−ブチニル基である。C
2−10アルキニル基は,好ましくはC
2−6アルキニル基,より好ましくはC
2−5アルキニル基であり,より好ましくはC
2−4アルキニル基であり,さらに好ましくはC
2−3アルキニル基が挙げられる。
【0060】
「置換基を有しても良いC
6−12アリール基」は,以下の置換基群Aから選択される1又は2以上の置換基を有するC
6−12アリール基を意味する。C
6−12アリール基はヘテロアリール基であってもよい。置換基を有しても良いC
6−12アリール基におけるC
6−12アリール基は芳香族炭素環基及び芳香族複素環基を意味する。C
6−12アリール基の例は,芳香族炭素環基又は芳香族複素環基の例は,フェニル基,2−フルオロフェニル基,3−フルオロフェニル基,4−フルオロフェニル基,4−クロロフェニル基,3,4−ジフルオロフェニル基,2,4−ジフルオロフェニル基,2−トリフルオロメチルフェニル基,3−トリフルオロフェニルメチル基,4−トリフルオロメチルフェニル基,4−メトキシフェニル基,4−メタンスルホニルフェニル基,3−フルオロ−4−メトキシフェニル基,ナフチル基,ピリジニル基,3−トリフルオロメチルピリジン−6−イル基,2−トリフルオロメチルピリジン−5−イル基,2−フルオロピリジン−5−イル基,3−フルオロピリジン−6−イル基,3−クロロピリジン−6−イル基,2−メトキシピリジン−5−イル基,3−メトキシピリジン−6−イル基,2−ジフルオロメトキシピリジン−5−イル基,3−ジフルオロメトキシピリジン−6−イル基,2−ピラジニル基,2−ピリミジニル基,5−トリフルオロメチルピリミジン−2−イル基,2−トリフルオロメチルピリミジン−5−イル基,3−トリフルオロメチル−6−ピリジニル基,3−ピリダジニル基,ピロール−1−イル基,2−イミダゾリル基,1−イミダゾイル基,トリアゾリル基,3−イソキサゾリル基,1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基,5−メチル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル基,2−チアゾリル基,チアジアゾリル基,テトラゾリル基,2−メチルピリジン−5−イル基,3−メチルピリジン−6−イル基,2−ジフルオロメチルピリジン−5−イル基,3−ジフルオロメチルピリジン−6−イル基,2−トリフルオロメトキシピリジン−5−イル基,3−トリフルオロメトキシピリジン−6−イル基である。
【0061】
置換基群A
ハロゲン原子,シアノ基,水酸基,アミノ基,ニトロ基,C
1−6アルキル基,C
3−6シクロアルキル基,フッ素原子で置換されていてもよいC
1−6アルキル基,水酸基で置換されていてもよいC
1−6アルキル基,フッ素原子で置換されていてもよいC
1−6アルキルオキシ基,モノC
1−6アルキルアミノ基,ジC
1−6アルキルアミノ基,C
1−6アルキルオキシC
1−6アルキル基,C
1−6アルキルオキシカルボニル基,(C
1−6アルキルオキシカルボニル)アミノ基,(C
1−6アルキルオキシカルボニル)C
1−6アルキルアミノ基,C
1−6アルキルカルボニル基,C
1−6アルキルカルボニルオキシ基,C
1−6アルキルカルボニルアミノ基,(C
1−6アルキルカルボニル)C
1−6アルキルアミノ基,モノC
1−6アルキルカルバモイル基,ジC
1−6アルキルカルバモイル基,モノC
1−6アルキルカルバモイルアミノ基,ジC
1−6アルキルカルバモイルアミノ基,(モノC
1−6アルキルカルバモイル)C
1−6アルキルアミノ基,(ジC
1−6アルキルカルバモイル)C
1−6アルキルアミノ基,モノC
1−6アルキルカルバモイルオキシ基,ジC
1−6アルキルカルバモイルオキシ基,C
1−6アルキルスルホニル基,C
1−6アルキルスルホニルアミノ基,C
1−6アルキルスルホニル(C
1−6アルキル)アミノ基,モノC
1−6アルキルスルファモイル基,ジC
1−6アルキルスルファモイル基,(モノC
1−6アルキルスルファモイル)アミノ基,(ジC
1−6アルキルスルファモイル)アミノ基,モノC
1−6アルキルスルファモイル(C
1−6アルキル)アミノ基,ジC
1−6アルキルスルファモイル(C
1−6アルキル)アミノ基,3〜8員のヘテロシクロアルキル基,芳香族炭素環基及び芳香族複素環基。
【0062】
ハロゲン原子の例は,フッ素原子,塩素原子,臭素原子,及びヨウ素原子である。
【0063】
「C
3−6シクロアルキル基」は炭素数3〜6のシクロアルキル基であり,具体的にはシクロプロピル基,シクロブチル基,シクロペンチル基及びシクロヘキシル基である。
【0064】
「フッ素原子で置換されていてもよいC
1−6アルキル基」には,C
1−6アルキル基又はC
1−6アルキル基の水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されているC
1−6アルキル基が包含され,後者のフッ素原子で置換されているC
1−6アルキル基として具体的にはフルオロメチル基,ジフルオロメチル基,トリフルオロメチル基,1,2−ジフルオロエチル基等が挙げられる。
【0065】
「水酸基で置換されていてもよいC
1−6アルキル基」には,C
1−6アルキル基又はC
1−6アルキル基の水素原子の一部が水酸基で置換されているC
1−6アルキル基が包含され,後者の水酸基で置換されているC
1−6アルキル基として具体的にはヒドロキシメチル基,2−ヒドロキシエチル基,3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
【0066】
「フッ素原子で置換されていてもよいC
1−6アルキルオキシ基」には,酸素原子にC
1−6アルキル基又はフッ素原子で置換されているC
1−6アルキル基が結合した基が包含され,具体的にはC
1−6アルキルオキシ基としてメトキシ基,エトキシ基,n−プロピルオキシ基,イソプロピルオキシ基,n−ブチルオキシ基,イソブトキシ基,tert−ブトキシ基,n−ペンチルオキシ基等が挙げられ,又,フッ素原子で置換されているC
1−6アルキルオキシ基としてフルオロメトキシ基,ジフルオロメトキシ基,トリフルオロメトキシ基,1,2−ジフルオロエトキシ基等が挙げられる。
【0067】
「モノC
1−6アルキルアミノ基」は,アミノ基の水素原子の1つがC
1−6アルキル基と置換した基であり,具体的にはメチルアミノ基,エチルアミノ基,n−プロピルアミノ基,イソプロピルアミノ基,n−ブチルアミノ基,sec−ブチルアミノ基,tert−ブチルアミノ基等が挙げられる。
【0068】
「ジC
1−6アルキルアミノ基」は,アミノ基の2つの水素原子がC
1−6アルキル基と置換した基であり,具体的にはジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基,エチルメチルアミノ基,ジ(n−プロピル)アミノ基,メチルプロピルアミノ基,ジイソプロピルアミノ基等が挙げられる。
【0069】
「C
1−6アルキルオキシC
1−6アルキル基」は,C
1−6アルキル基の水素原子の1つがC
1−6アルキルオキシ基と置換した基であり,具体的にはメトキシメチル基,エトキシメチル基,n−プロピルオキシメチル基,エトキシメチル基,エトキシエチル基等が挙げられる。
【0070】
「C
1−6アルキルオキシカルボニル基」は,カルボニル基にC
1−6アルキルオキシ基が結合した基であり,具体的にはメトキシカルボニル基,エトキシカルボニル基,n−プロピルオキシカルボニル基,イソプロピルオキシカルボニル基,n−ブチルオキシカルボニル基,イソブトキシカルボニル基,tert−ブトキシカルボニル基,n−ペンチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0071】
「(C
1−6アルキルオキシカルボニル)アミノ基」は,アミノ基にC
1−6アルキルオキシカルボニル基が結合した基であり,具体的にはメトキシカルボニルアミノ基,エトキシカルボニルアミノ基,n−プロピルオキシカルボニルアミノ基,イソプロピルオキシカルボニルアミノ基,n−ブトキシカルボニルアミノ基,イソブトキシカルボニルアミノ基,tert−ブトキシカルボニルアミノ基,n−ペンチルオキシカルボニルアミノ基等が挙げられる。
【0072】
「(C
1−6アルキルオキシカルボニル)C
1−6アルキルアミノ基」は,モノC
1−6アルキルアミノ基の窒素原子上の水素原子の代わりにC
1−6アルキルオキシカルボニル基が結合した基であり,具体的には(メトキシカルボニル)メチルアミノ基,(エトキシカルボニル)メチルアミノ基,(n−プロピルオキシカルボニル)メチルアミノ基等が挙げられる。
【0073】
「C
1−6アルキルカルボニル基」は,カルボニル基にC
1−6アルキル基が結合した基であり,具体的にはアセチル基,プロピオニル基,ブチリル基,イソブチリル基,バレリル基,イソバレリル基,ピバロイル基等が挙げられる。
【0074】
「C
1−6アルキルカルボニルオキシ基」は,酸素原子にC
1−6アルキルカルボニル基が結合した基であり,具体的にはアセトキシ基,プロピオニルオキシ基,バレリルオキシ基,イソバレリルオキシ基,ピバロイルオキシ基等が挙げられる。
【0075】
「C
1−6アルキルカルボニルアミノ基」は,アミノ基の水素原子の1つがC
1−6アルキルカルボニル基と置換した基であり,具体的にはアセトアミド基,プロピオニルアミノ基,イソブチリルアミノ基,バレリルアミノ基,イソバレリルアミノ基,ピバロイルアミノ基等が挙げられる。
【0076】
「(C
1−6アルキルカルボニル)C
1−6アルキルアミノ基」は,モノC
1−6アルキルアミノ基の窒素原子上の水素原子がC
1−6アルキルカルボニル基と置換した基であり,(メチルカルボニル)メチルアミノ基,(エチルカルボニル)メチルアミノ基,(n−プロピルカルボニル)メチルアミノ基等が挙げられる。
【0077】
「モノC
1−6アルキルカルバモイル基」は,カルバモイル基の水素原子の1つがC
1−6アルキル基と置換した基であり,具体的にはメチルカルバモイル基,エチルカルバモイル基,n−プロピルカルバモイル基,イソプロピルカルバモイル基,n−ブチルカルバモイル基,sec−ブチルカルバモイル基,tert−ブチルカルバモイル基等が挙げられる。
【0078】
「ジC
1−6アルキルカルバモイル基」は,カルバモイル基の2つの水素原子がC
1−6アルキル基と置換した基であり,具体的にはジメチルカルバモイル基,ジエチルカルバモイル基,エチルメチルカルバモイル基,ジ(n−プロピル)カルバモイル基,メチルプロピルカルバモイル基,ジイソプロピルカルバモイル基等が挙げられる。
【0079】
「モノC
1−6アルキルカルバモイルアミノ基」は,アミノ基の水素原子の1つがC
1−6アルキルカルバモイル基と置換した基であり,具体的にはメチルカルバモイルアミノ基,エチルカルバモイルアミノ基,n−プロピルカルバモイルアミノ基,イソプロピルカルバモイルアミノ基,n−ブチルカルバモイルアミノ基,sec−ブチルカルバモイルアミノ基,tert−ブチルカルバモイルアミノ基等が挙げられる。
【0080】
「ジC
1−6アルキルカルバモイルアミノ基」は,アミノ基の水素原子の1つがジC
1−6アルキルカルバモイル基と置換した基であり,具体的にはジメチルカルバモイルアミノ基,ジエチルカルバモイルアミノ基,ジ(n−プロピル)カルバモイルアミノ基,ジイソプロピルカルバモイルアミノ基,ジ(n−ブチル)カルバモイルアミノ基,ジ(sec−ブチル)カルバモイルアミノ基,ジ(tert−ブチル)カルバモイルアミノ基等が挙げられる。
【0081】
「(モノC
1−6アルキルカルバモイル)C
1−6アルキルアミノ基」は,モノC
1−6アルキルアミノ基」の窒素原子上の水素原子がモノC
1−6アルキルカルバモイル基と置換した基であり,具体的には(モノメチルカルバモイル)メチルアミノ基,(モノエチルカルバモイル)メチルアミノ基,[モノ(n−プロピル)カルバモイル]メチルアミノ基等が挙げられる。
【0082】
「(ジC
1−6アルキルカルバモイル)C
1−6アルキルアミノ基」は,モノC
1−6アルキルアミノ基」の窒素原子上の水素原子がジC
1−6アルキルカルバモイル基と置換した基であり,具体的には(ジメチルカルバモイル)メチルアミノ基,(ジエチルカルバモイル)メチルアミノ基,[ジ(n−プロピル)カルバモイル]メチルアミノ基等が挙げられる。
【0083】
「モノC
1−6アルキルカルバモイルオキシ基」は,酸素原子にC
1−6アルキルカルバモイル基が結合した基であり,具体的にはメチルカルバモイルオキシ基,エチルカルバモイルオキシ基,n−プロピルカルバモイルオキシ基,イソプロピルカルバモイルオキシ基,n−ブチルカルバモイルオキシ基,sec−ブチルカルバモイルオキシ基,tert−ブチルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0084】
「ジC
1−6アルキルカルバモイルオキシ基」は,酸素原子にジC
1−6アルキルカルバモイル基が結合した基であり,具体的にはジメチルカルバモイルオキシ基,ジエチルカルバモイルオキシ基,エチルメチルカルバモイルオキシ基,ジ(n−プロピル)カルバモイルオキシ基,メチルプロピルカルバモイルオキシ基,ジイソプロピルカルバモイルオキシ基等が挙げられる。
【0085】
「C
1−6アルキルスルホニル基」は,スルホニル基にC
1−6アルキル基が結合した基であり,具体的にはメチルスルホニル基,エチルスルホニル基,n−プロピルスルホニル基,イソプロピルスルホニル基,n−ブチルスルホニル基,sec−ブチルスルホニル基,tert−ブチルスルホニル基等が挙げられる。
【0086】
「C
1−6アルキルスルホニルアミノ基」は,アミノ基の水素原子の1つがC
1−6アルキルスルホニル基と置換した基であり,具体的にはメチルスルホニルアミノ基,エチルスルホニルアミノ基,n−プロピルスルホニルアミノ基,イソプロピルスルホニルアミノ基,n−ブチルスルホニルアミノ基,sec−ブチルスルホニルアミノ基,tert−ブチルスルホニルアミノ基等が挙げられる。
【0087】
「C
1−6アルキルスルホニル(C
1−6アルキル)アミノ基」は,「C
1−6アルキルアミノ基」の窒素原子上の水素原子がC
1−6アルキルスルホニル基と置換した基であり,具体的にはメチルスルホニル(メチル)アミノ基,エチルスルホニル(メチル)アミノ基,(n−プロピル)スルホニル(メチル)アミノ基等が挙げられる。
【0088】
「モノC
1−6アルキルスルファモイル基」は,スルファモイル基にC
1−6アルキル基が結合した基であり,具体的にはモノメチルスルファモイル基,モノエチルスルファモイル基,モノ(n−プロピル)スルファモイル基,モノイソプロピルスルファモイル基,モノ(n−ブチル)スルファモイル基,モノ(sec−ブチル)スルファモイル基,モノ(tert−ブチル)スルファモイル基等が挙げられる。
【0089】
「ジC
1−6アルキルスルファモイル基」は,スルファモイル基にジC
1−6アルキル基が結合した基であり,具体的にはジメチルスルファモイル基,ジエチルスルファモイル基,ジ(n−プロピル)スルファモイル基,ジイソプロピルスルファモイル基,ジ(n−ブチル)スルファモイル基,ジ(sec−ブチル)スルファモイル基,ジ(tert−ブチル)スルファモイル基等が挙げられる。
【0090】
「(モノC
1−6アルキルスルファモイル)アミノ基」は,アミノ基の水素原子の1つがモノC
1−6アルキルスルファモイル基と置換した基であり,具体的には(モノメチルスルファモイル)アミノ基,(モノエチルスルファモイル)アミノ基,[モノ(n−プロピル)スルファモイル]アミノ基,(モノイソプロピルスルファモイル)アミノ基,[モノ(n−ブチル)スルファモイル]アミノ基,[モノ(sec−ブチル)スルファモイル]アミノ基,(tert−ブチルスルファモイル)アミノ基等が挙げられる。
【0091】
「(ジC
1−6アルキルスルファモイル)アミノ基」は,アミノ基の水素原子の1つがジC
1−6アルキルスルファモイル基と置換した基であり,具体的には(ジメチルスルファモイル)アミノ基,(ジエチルスルファモイル)アミノ基,(エチルメチルスルファモイル)アミノ基,[ジ(n−プロピル)スルファモイル]アミノ基,(メチルプロピルスルファモイル)アミノ基,(ジイソプロピルスルファモイル)アミノ基等が挙げられる。
【0092】
「モノC
1−6アルキルスルファモイル(C
1−6アルキル)アミノ基」は,「モノC
1−6アルキルアミノ基」の窒素原子上の水素原子がモノC
1−6アルキルスルファモイル基と置換した基であり,具体的にはモノメチルスルファモイル(メチル)アミノ基,モノエチルスルファモイル(メチル)アミノ基,モノ(n−プロピル)スルファモイル(メチル)アミノ基等が挙げられる。
【0093】
「ジC
1−6アルキルスルファモイル(C
1−6アルキル)アミノ基」は,「モノC
1−6アルキルアミノ基」の窒素原子上の水素原子がジC
1−6アルキルスルファモイル基と置換した基であり,具体的にはジメチルスルファモイル(メチル)アミノ基,ジエチルスルファモイル(メチル)アミノ基,ジ(n−プロピル)スルファモイル(メチル)アミノ基等が挙げられる。
【0094】
「3〜8員のヘテロシクロアルキル基」としては,アゼチジニル基,ピロリジニル基,ピペリジニル基,ピペラジニル基,イミダゾリジニル基,テトラヒドロフラニル基,テトラヒドロピラニル基,モルホリニル基,1−チア−4−アゾシクロヘキシル基,2,5−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンイル基等が挙げられる。
【0095】
本発明の化合物の好ましい第1のグループの例は,以下のとおりである。すなわち,式(I)に示される化合物であって,R
1,R
2,R
3,R
5及びR
6は,水素原子又はメチル基を示し,R
4は,式(II)で示される基を示す。この態様では,R
1,R
3,R
5及びR
6が水素原子を示し,R
2がメチル基を示すものが好ましい。
【0097】
式(II)中,
X
2は,−Y
21−Y
22−Y
23,又は−Y
21−Y
22(−Y
23Y
24)で示される基を示す。そして,Y
21は,直鎖又は分岐のC
1−5アルキレン基を示す。Y
22は,単結合,酸素原子,硫黄原子,又はSO
2で示される基(−S(=O)
2−)を示す。
【0098】
Y
23及びY
24は,同一でも異なってもよく,
水素原子;
C
1−5アルキル基,
C
3−6シクロアルキル基;
メチル基,=Oで示される基(カルボニル基)又はハロゲン原子で置換されても良い,ピロリジニル(pyrrolidinyl)基;
メチル基,=Oで示される基(カルボニル基)又はハロゲン原子で置換されても良い,チアゾリジニル(thiazolidinyl)基;
直鎖又は分岐のC
1−5アルキル基に接続されたフェニル基;
直鎖又は分岐のC
1−5アルキル基に接続されたC
1−5アルコキシ基で置換されたフェニル基;
ハロゲン原子,ニトロ基,C
1−5アルキル基,C
1−5アルコキシ基,C
1−5ハルゲノアルキル基,C
1−5ハルゲノアルコキシ基,ピロリジニル(pyrrolidinyl)基,=Oで示される基(カルボニル基)で置換されたピロリジニル(pyrrolidinyl)基;又は
ベンゾイミダゾリル(benzomidazolyl)基;
を示す。
【0099】
式(II)において,X
2は,−Y
25(Y
26)−Y
27で示される基を示してもよい。
Y
25は,ハロゲン原子,ニトロ基,C
1−5アルキル基,C
1−5アルコキシ基,C
1−5ハルゲノアルキル基,C
1−5ハルゲノアルコキシ基,ピロリジニル(pyrrolidinyl)基,=Oで示される基で1〜3個の水素原子が置換されても良いフェニル基を示す。
Y
26は,水素原子,フェニル基,C
3−5シクロアルキル基,C
1−5アルキル基で置換されても良いピロリジニル基,又はC
1−5アルキル基で置換されても良いピロール基を示す。
Y
27は,
水素原子;
ハロゲン原子;
C
3−5シクロアルキル基,
直鎖又は分岐のC
1−5アルキル基に接続されたピロリジニル(pyrrolidinyl)基;
直鎖又は分岐のC
1−5アルキル基に接続されたピペリジニル(piperidinyl)基;
ジオキソラニル(dioxolanyl)基;
イミダゾリル(midazolyl)基;
−C(=O)−CH
3で示される基;
−C(=O)−NH
2で示される基;
−C(=O)−NC
5H
10で示される基;
−S(O
2)NHCH
3で示される基;
−S(O
2)NHC
3H
7で示される基;
−NC(=O)OCH
3で示される基;
−NC(=O)C
3H
5で示される基;
−NC(=O)C
3H
7で示される基;又は
【0102】
第1のグループのうち好ましい化合物は,式(I)において,R
1,R
2,R
3,R
5及びR
6は,水素原子又はメチル基を示し,R
4は,式(II)で示される基を示す。そして,式(II)中,X
2は,以下の式(1−1)〜(1−26)で示されるいずれかの基を示す。この態様では,R
1,R
3,R
5及びR
6が,水素原子を示し,R
2はメチル基を示すものがより好ましい。なお式(1−5),(1−8),(1−9),(1−10),(1−12),(1−14),(1−19),(1−22),(1−24),(1−25)において,X
2に隣接する窒素原子(N)との結合部分に記号(*)を付与することで,結合部位を明示した。
【0107】
本発明の化合物の第2のグループは,R
1,R
2,R
3,R
5及びR
6は,水素原子又はメチル基を示し,R
4は,式(III)で示される基を示す。そして,式(III)中,X
3は,以下の式(2−1)又は(2−2)で示される基を示す。この態様では,R
1,R
3,R
5及びR
6が,水素原子を示し,R
2がメチル基を示すものが好ましい。
【0109】
本発明の化合物の第3のグループは,式(I)において,R
1,R
2,R
3,R
5及びR
6は,水素原子又はメチル基を示し,R
4は,式(IV)で示される基を示す。そして,式(IV)中,X
4は,以下の式(3−1)〜(3−4)で示されるいずれかの基を示す。この態様では,R
1,R
3,R
5及びR
6は,水素原子を示し,R
2はメチル基を示すものが好ましい。
【0111】
本発明の化合物の第4のグループは,式(I)においてR
1,R
2,R
3,R
5及びR
6は,水素原子又はメチル基を示し,R
4は,式(V)で示される基を示す。そして,式(V)中,X
5は,以下の式(4−1),(5−1),(5−2),又は(6−1)で示されるいずれかの基を示す。
【0112】
この態様では,R
1がメチル基を示し,R
2,R
3,R
5及びR
6が,水素原子を示すものであって,式(V)中,X
5が式(4−1)で示される基であるもの,
R
1,R
2,R
5及びR
6が水素原子を示し,R
3がメチル基を示すものであって,式(V)中,X
5が式(5−1)又は(5−2)で示される基であるもの,又は,
R
1,R
2,R
3,R
5及びR
6が水素原子を示し,式(V)中,X
5が(6−1)で示されるいずれかの基を示すものが好ましい。なお式(4−1),(5−2),(6−1)において,X
5に隣接する硫黄原子(S)との結合部分に,記号(*)を付与することで,結合部位を明示した。
【0114】
本発明の化合物の第5のグループは,式(I)においてR
1,R
2,R
3,R
5及びR
6は,水素原子又はメチル基を示し,R
4は,式(VI)で示される基を示す。そして,式(VI)中,X
6は,以下の式(7−1)又は(7−4)で示されるいずれかの基を示す。この態様では,R
1,R
2,R
3,R
5及びR
6が,水素原子を示すものが好ましい。なお式(7−4)において,X
6に隣接する炭素原子(C)との結合部分に,記号(*)を付与することで,結合部位を明示した。
【0116】
上記式(7−1)は,立体異性体が存在し,立体異性体も本発明の化合物に含まれる。
【0117】
本発明の化合物の第6のグループは,式(I)において,R
1,R
2,R
3,R
5及びR
6は,水素原子又はメチル基を示し,R
4は,式(VII)で示される基を示す。そして,式(VII)中,X
7は,以下の式(8−1)および(8−2)で示されるいずれかの基を示す。この態様では,R
1,R
2,R
3,R
5及びR
6が,水素原子を示すものが好ましい。
【0119】
本発明の化合物を含むOCT3の活性阻害剤は,再表2005/084707号公報に開示された方法と同様にして製造できる。OCT3の活性の例は,ドパミン,セロトニン,ノルアドレナリン,ドパミン神経毒MPP+,覚せい剤等の輸送活性である。これらの活性の測定は当業者に公知の手法によって行うことができる。
【0120】
本発明の化合物等を含むOCT3の活性阻害剤は,OCT3が関与する疾患(うつ病及びうつ様症状)の治療に有効である。以下に説明するとおり,有機カチオントランスポーターOCT3を阻害することで,うつ病及びうつ様症状を治療できることは実証されている。たとえば,先行文献(Kitaichi. et al, Neurosci Lett. 2005 Jul 1-8;382(1-2):195-200)には,マウスのOCT3遺伝子の発現をアンチセンスやノックアウト技術により抑制することで,強制水泳試験において抗うつ作用を呈することが報告されている。一方,本OCT3阻害剤はOCT3蛋白質の機能を阻害することから,OCT3遺伝子の発現抑制と同様の作用を持つと推測される。
【0121】
実施例において実証されたとおり,本発明の化合物,その薬学的に許容される塩,又はその薬学的に許容される溶媒和物は,OCT3阻害活性を有する。このため,本発明は,上記したOCT3の阻害剤を有効成分として含むうつ病及びうつ様症状の治療剤をも提供する。うつ病及びうつ様症状には,身体的抑うつ, 単極性うつ,心因性機能的疾患,非定形うつ,気分変調症,双極性感情病,季節性うつ,持続性気分障害が含まれる。
【0122】
本発明の化合物は,経口又は非経口的に投与することができ,その投与に適する形態に製剤化することができる。本発明の化合物を臨床的に用いるにあたり,その投与形態に合わせ医薬上許容される担体を加えて各種製剤化の後投与することも可能である。その際の担体としては,製剤分野において従来公知の各種の添加剤が使用可能であり,例えばゼラチン,乳糖,白糖,酸化チタン,デンプン,結晶セルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,トウモロコシデンプン,マイクロクリスタリンワックス,白色ワセリン,メタケイ酸アルミン酸マグネシウム,無水りん酸カルシウム,クエン酸,クエン酸三ナトリウム,ヒドロキシプロピルセルロース,ソルビトール,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリソルベート,ショ糖脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン,硬化ヒマシ油,ポリビニルピロリドン,ステアリン酸マグネシウム,軽質無水ケイ酸,タルク,植物油,ベンジルアルコール,アラビアゴム,プロピレングリコール,ポリアルキレングリコール,シクロデキストリン又はヒドロキシプロピルシクロデキストリン等が挙げられる。
【0123】
これらの担体と本発明の化合物との混合物として製剤化される剤形としては,例えば錠剤,カプセル剤,顆粒剤,散剤若しくは坐剤等の固形製剤;又は例えばシロップ剤,エリキシル剤若しくは注射剤等の液体製剤等が挙げられ,これらは,製剤分野における従来公知の方法に従って調製することができる。尚,液体製剤にあっては,用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させる形であってもよい。特に注射剤の場合,必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖液に溶解又は懸濁させてもよく,更に緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
【0124】
これらの製剤は,本発明の化合物を医薬組成物全体の1.0〜100重量%,好ましくは1.0〜60重量%の割合で含有することができ,又,医薬上許容される担体を0〜99.0重量%,好ましくは40〜99.0重量%含有することができる。
【0125】
本発明の化合物を上記疾患・疾病の予防剤又は治療剤として使用する場合,その投与量及び投与回数は,患者の性別,年齢,体重,症状の程度及び目的とする治療効果の種類及び範囲等により異なるが,一般に経口投与の場合,成人1日あたり体重1kgあたり0.001〜10mg,好ましくは0.01〜2mgを1〜数回に分けて投与するのが好ましい。又,症状によっては予防的に投与することも可能である。
【0126】
本発明の化合物を含むOCT3の検出剤
本発明の化合物を含むOCT3の検出剤は,OCT3蛋白質の存在量を確認したい生物組織や培養細胞,人工膜等にOCT3蛋白質が含まれているか否か検出するか,OCT3蛋白質の含有量の指標を得るための剤である。OCT3蛋白質の存在量を確認したい生物組織や培養細胞,人工膜等に本発明の化合物等を有する検出剤水溶液を滴下する。すると,本発明の化合物がOCT3蛋白質に結合するため,水溶液の本発明の化合物濃度が減少する。すなわち,水溶液における本発明の化合物の濃度を測定し,本発明の化合物の濃度が減少した場合,OCT3蛋白質が存在していることがわかる。OCT3蛋白質に対する抗体が市販されており,検出剤として利用することができる。しかしながら,抗体は高分子蛋白質であることから,熱に弱いため低温で保存する必要がある。また,抗体は高分子蛋白質であることから,長期保存が困難であり,製造費用が高価である。一方,本発明の化合物等は,熱に強く,常温で長期保存が可能で,化学合成により比較的安価に製造できる。
【実施例1】
【0127】
各化合物における,OCT3による基質取込を阻害する活性を測定するため,以下のようなヒスタミン取込み実験を行った。
【0128】
Br
J Pharmacol. 2002; 136(6): 829−836 に掲載された方法に従ってヒスタミン取込実験を行った。この実験において,ヒト型有機カチオントランスポーター3(hOCT3)を発現したヒト胎児腎細胞株であるHEK293細胞を用いた。HEK293細胞を24ウェルプレートに1.5×10
5 細胞/ウェルにて播種し,炭酸ガスインキュベーター内にて一晩培養した。被験物質を100%DMSO溶液に溶解した後,HBSS-HEPES溶液(9.7g ハンクス平衡塩, 1.4%炭酸水素ナトリウム25mL,1M HEPES 25mLを超純粋940mLに溶解して1M水酸化ナトリウムでpH7.4に調整した緩衝液)に溶解した。細胞培養用培地を除去した後,HBSS-HEPES溶液 1mLで5分間前処置した。その後,被験物質および[ 3 H]ヒスタミン(最終濃度 100
nM)を細胞に添加し,室温にて1分間反応させた。反応終了後,氷冷したHBSS-HEPES溶液で反応を停止し,アスピレーターにて細胞外液を吸引除去後,HBSS-HEPES溶液で2回洗浄した。洗浄後,0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液にて細胞を溶解した。細胞内に存在するヒスタミン量は,細胞溶解液中の放射活性を液体シンチレーションカウンターで測定することにより求めた。また細胞溶解液を用いて細胞のタンパク量をLowry法(J
Biol Chem. 1951;193(1):265−75)により測定した。取込阻害剤がない場合におけるタンパク量当たりのヒスタミン取込量をヒスタミン取込率100%(control)とし,30μMの被験物質存在下のヒスタミン取込率(%)を算出した。またこのヒスタミン取込率を100(%)から減算した値(%)をOCT3阻害率(%)として算出した。また,被験物質の10
-7 〜10
-3 M濃度での抑制曲線からOCT3阻害活性(IC
50値)を算出した。
【0129】
logP の予測値の計算
各化合物のlogP をMarvinソフト(http://www.chemaxon.com/products/marvin/, version 5.7.0)に化合物構造を入力することで算出し,表に付記した。OCT3阻害剤をうつ病治療薬として利用する場合,脳内移行性が問題となる。既存のOCT3阻害剤では,logP値が小さいものが多く,脳内移行性が悪い。そこで,logP値が大きな化合物を設計し,そのlogP値を,IC
50値と共に併記した。なお本logP値を用いて脳内移行性を予測できる。
【0130】
また血中濃度に対する脳内濃度の比(以下,Brain/Bloodと表記)を,化合物構造から予測し,併記した。予測方法は複数報告されているが,Brain/Blood は,Prabha et al., In Silico
Modeling for Blood-Brain Barrier Permeability Predictions, Drug absorption studies,
2008, volume VII, 3, 510-556 に基づき,次式
log(Brain/Blood) = -0.0148 ×PSA +
0.152 × logP + 0.139
を用いて算出した。なお PSA は極性表面積を表し,上記Marvinソフトを用いて計算した。
【0131】
上記方法で予測したBrain/Blood値につき,BALB/cマウスを用いた実験により,検証を行った。検証実験での被験物質として,強いOCT3阻害作用が確認されている化合物SR-4277と,OCT3阻害作用及び抗うつ作用の両方が確認されているFamotidine,の2化合物を用いた。マウスに被験物質を5mg/kg投与し,予めイソフルランで麻酔した上で,投与5分後にマウスの後大静脈から全採血し,脳を摘出して重量測定後,脳ホモジネートを調製した。採血した血液は遠心分離することで血漿を調製し,血漿中及び脳ホモジネート中の被験物質の濃度をHPLC及びMSを用いて測定した。Brain/Bloodの予測値と実測値の結果を以下に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
検証実験における実験誤差を考慮すると,検証実験の結果では,予測値と実測値が非常に近い値(近いオーダー)を示しており,上記のBrain/Blood値の予測方法は非常に予測精度が優れていると言える。本方法を他の各化合物についても適用し,Brain/Blood値を計算した。
【0134】
各化合物の logP 値は下表のように-0.2から4.6の間に分布(中央値2.7)することから,脂溶性が高く,経口吸収性は良いと予測された。各化合物の Brain/Blood は下表のように,0.08から1.72の間に分布(中央値0.64)しており,化合物の脳内濃度は血中濃度と同程度と予測された。したがって,各化合物は優れたOCT3阻害活性を持つだけでなく,経口剤や中枢薬としての実用性に優れており,OCT3阻害作用(非特許文献2)と抗うつ作用(特許文献4)が確認されているファモチジンよりも,OCT3阻害活性及び脳内移行性の点で優れた化合物が多く得られており,うつ病治療等における有用性を期待できる。
【0135】
Xの化学構造およびOCT3阻害活性を以下に示す。
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
【表7】
【0142】
【表8】
【0143】
【表9】
【0144】
一部の化合物のIC
50値及び比較として同時に測定したOCT3阻害活性の強いファモチジンのIC
50値は以下の通りであった。
【0145】
【表10】
【0146】
特にSR-4277 のIC
50は 8.2μM,IC
80は30μMであり,強い阻害活性を持つ。なおOCT3はOCT1, OCT2とアミノ酸配列が非常に類似していることから,OCT3阻害活性を持つ化合物は,OCT1, OCT2阻害活性があることが容易に想像される。
【0147】
本発明のイミダゾピリジン誘導体はOCT3蛋白質の強い阻害剤であり,OCT3の検出剤として有用である。
【0148】
OCT3蛋白質の存在量を確認したい生物組織や培養細胞,人工膜等において,イミダゾピリジン誘導体水溶液を滴下すると,イミダゾピリジン誘導体がOCT3蛋白質に結合するため,水溶液のイミダゾピリジン誘導体濃度が減少する。この濃度が減少した場合,OCT3蛋白質が存在していることがわかる。具体的な例として,OCT3蛋白質の検出方法は,以下に説明するヒスタミン取込実験により実現できる。
【0149】
例えば,Br J Pharmacol.2002;136(6):829−836に掲載された方法に従ってヒスタミン取込実験を行い,特許1936624号公報に掲載された方法と同様に,細胞外液に遊離している化合物量からOCT3蛋白質の存在量を推定できる。実験には,ヒト型有機カチオントランスポーター3(OCT3)を発現したヒト胎児腎細胞株であるHEK293細胞を陽性対照として,OCT3の発現を確認したい細胞株を被験細胞として,準備する。各々の細胞を24ウェルプレートに1.5×10
5細胞/ウェルにて播種し,炭酸ガスインキュベーター内にて一晩培養する。被験物質は100%DMSO溶液に溶解した後,HBSS-HEPES溶液(9.7グラムハンクス平衡塩,1.4%炭酸水素ナトリウム25mL,1M HEPES25mLを超純粋940mLに溶解して1M水酸化ナトリウムでpH7.4に調整した緩衝液)に溶解させる。細胞培養用培地を除去した後,HBSS-HEPES溶液 1mLで5分間前処置する。その後,被験物質である本発明の化合物およびヒスタミン(最終濃度 100 nM)を細胞に添加し,室温にて1分間反応させる。反応終了後,氷冷したHBSS-HEPES溶液で反応を停止し,細胞外液を回収する。回収した細胞外液をLC/MSで解析することで,細胞外液中における本発明の化合物の濃度及び存在量を同定できる。こうして投与した化合物量から,回収できた細胞外液中の化合物量を減算することで,OCT3と結合した化合物量を算出することができ,細胞中のOCT3蛋白質の存在を確認することができる。なお細胞外液中における本発明の化合物の濃度を推定する別の方法は次の通りである。本発明の化合物につき複数の濃度の標準溶液を予め作製し,吸光度を予め測定しておく。次に上記のヒスタミン取込実験で回収した細胞外液の吸光度を測定し,予め測定した標準溶液での測定値と比較することにより,LC/MSを利用しなくても,簡易に濃度を推定できる。
【0150】
OCT3蛋白質に対する抗体が市販されており,検出剤として利用が可能であるが,抗体は高分子蛋白質であることから,熱に弱く(4℃で保存),長期保存が困難であり,製造費用が高価である。一方,イミダゾピリジン誘導体は,熱に強く,常温で長期保存が可能で,安価な化学合成により製造可能である。
【実施例2】
【0151】
実施例2は,抗うつ作用や抗うつ病様症状の評価方法に関する。現在,最も汎用されている抗うつ作用の評価法は,Porsoltらが開発した強制水泳試験である(Porsolt RD. et al, Arch Int Pharmacodyn. 1977; 229: 327-336)。本強制水泳試験では,試験動物としてマウスもしくはラットに逃避不可能な水槽内において強制水泳を負荷する。すると,試験動物の逃避行動の後に無動行動(水面上に頭だけを出し,手足などを動かすことなく浮いている状態)が認められる。その24時間後あるいはそれ以上経過した後に再度水槽内に試験動物を入れると,1回目の実験時よりも早期に無動行動が発現し,一定時間中(通常5分程度)におけるこの無動行動の持続時間は比較的正確に再現される。
【0152】
臨床上有効性が認められている既存の抗うつ薬は,本強制水泳試験で誘発される無動行動の持続時間を特異的かつ有意に抑制することが知られており,抗うつ作用の検出に有用と考えられている。また本方法は試験操作が極めて簡便なこともあり,新規抗うつ薬候補物質の前臨床評価や遺伝子改変動物の表現型の解析において幅広く用いられている(辻稔等, 日薬理誌, v130, p97-104, 2007)。
【0153】
本手法を用いた試験デザインとして通常以下のような方法が用いられている。まず陽性対照薬として標準的な抗うつ薬(例えば三環系抗うつ薬等)を,陰性対照として薬物を含まない緩衝液等を,各々異なる個体の動物に投与し,“特異的に生ずる行動の変化”を検出し得るように強制水泳試験の実験条件を設定する。次いで,被験物質を陽性対照薬と同様のスケジュールで投与し,陽性対照薬と同様の行動の変化を惹起することが確認された場合には,陽性対照薬と同様の臨床効果である抗うつ作用が被験薬物に期待できると結論付けることができる(中川豊, 実践行動薬理学, 金芳堂,
2010,p35-42)。
【0154】
なお本試験に用いる,マウスの体重,円筒形水槽の直径,水槽の水深などの実験条件を常に一定に設定することで,安定した実験結果を得られるように配慮することが求められる。また無動行動の発現時間は水槽内の水温に依存して変化することが知られていることから,試験を通じて水温は一定(通常24℃程度)に保つ必要があり,室温よりも約1.0から1.5℃高い水温を設定することが効果的であり,一般的である(中川豊, 実践行動薬理学, 金芳堂, 2010,p35-42)。
【0155】
また中枢興奮薬の投与などにより自発運動活性が亢進した状態でも,見かけ上無動行動が抑制された結果となることが知られている。したがって,抗うつ作用を確実に確認するためには,強制水泳試験における無動行動の抑制だけでなく,抗うつ薬候補物質の投与により,動物の自発運動活性に変化が生じていないことを確認する必要がある(辻稔等, 日薬理誌, v130, p97-104, 2007)。
【実施例3】
【0156】
実施例3は,OCT3阻害剤による抗うつ効果および抗うつ薬イミプラミンとの併用効果の確認に関する。
【0157】
OCT3阻害剤の抗うつ作用および抗うつ薬イミプラミンとの併用効果の確認は,先行文献(Kitaichi. et al, Neurosci Lett. 2005 Jul 1-8;382(1-2):195-200)と同様に実施できる。具体的には次のように試験を行う。
【0158】
実験には体重が28から33gのddY系雄性マウス(日本エスエルシー株式会社)を使用する。なおddY系マウスは,非近交系マウスで,繁殖能力が高く,発育も良好であり,薬効,薬理,毒性などの試験をはじめとして,さまざまな試験研究に広く用いられている実験用マウスの代表的な系統名である。本マウスを入手後,温度(22から24℃)と湿度(50から60%),照明(午前8時から午後8時まで点灯)を制御した部屋で3日以上飼育する。初回の強制水泳試験では,全ての実験用マウスをガラス製シリンダー(直径15.5cm,深さ17cm,水深12cm, 水温25℃)内で300秒間遊泳させ,無動時間を測定し,無動時間の平均値がほぼ同一になるように各実験群(OCT3阻害剤投与群,陽性対照群,陰性対照群)に振り分ける。このとき無動時間の平均値から60秒以上の差(長い場合と短い場合)がついた無動時間を発現したマウスは,実験から除外する。また試験に用いたマウスのフェロモン等が後続のマウスに影響を与えることを避けるため,水槽の水は各マウスごとに交換する。OCT3阻害剤投与群については,遊泳翌日に生理緩衝液(140mM NaCl, 3.0mM
KCl, 1.5mM NaH2PO4, 1.2mM MgCl2, 1.2mM CaCl2, pH7.4)に溶解したOCT3阻害剤を,既報(J. Chem. Neuroanat. 2000
20:375-87)の方法に基づき,浸透圧ポンプで持続的に第三脳室内に注入する。注入より1週間後にマウスを再度シリンダー内で300秒間遊泳させ,無動時間を測定する。なお陽性対照群では,抗うつ薬イミプラミンを生理食塩水に溶かした上で(終濃度4, 8, 16 mg/kgの3種類を準備),2回目の強制水泳試験開始の30分前に腹腔内に投与する(各濃度の薬物を陽性対照となる各群に各々投与)。また陰性対照群では,上記OCT3阻害剤の替りに生理緩衝液のみを,OCT3阻害剤投与群と同様の投与方法と実験スケジュールで,持続的に第三脳室内に注入し,強制水泳試験を行う。
【0159】
上記の強制水泳試験では,先行文献(Kitaichi. et al, Neurosci
Lett. 2005 Jul 1-8;382(1-2):195-200)での結果と同様の結果が予想される。すなわち,陰性対照ではうつ病様症状が惹起され,300秒間の遊泳中のほとんどで無動状態を呈し(無動時間の平均値が200秒程度),IC50濃度に対して十分量のOCT3阻害剤を持続注入(0.25μl/hr)したマウスではこの無動状態は有意に短縮することが期待される(無動時間の平均値が70秒程度)。また,低用量の抗うつ薬イミプラミン(4mg/kg)あるいは低用量のOCT3阻害剤を各々単独で投与(0.25μl/hr)した場合には,強制水泳試験での無動時間は陰性対照に比して差が見られない(両者共に無動時間の平均値が200秒程度)と予測されるが,両者を併用した場合は陰性対照に対して無動状態を有意に短縮させる,と期待できる(無動時間の平均値が100秒程度)。以上の結果が得られれば,OCT3阻害剤の抗うつ作用が確認され,またイミプラミンとの併用効果についても確認できる。
【実施例4】
【0160】
OCT3阻害剤の投与前後の自発運動活性の変化の確認
“OCT3阻害剤の投与により,自発運動活性が亢進し,見かけ上無動行動が抑制されている(抗うつ作用がない)”という可能性を排除するため,先行文献(Kitaichi. et al, Neurosci Lett. 2005 Jul 1-8;382(1-2):195-200)と同様にして,OCT3阻害剤の投与前後の自発運動活性を測定する。
【0161】
実験にはddY系雄性マウスを使用する。購入より3日以上飼育したマウスを2群に分割し,一群はOCT3阻害剤を,既報(J. Chem. Neuroanat. 2000
20:375-87)に基づき,浸透圧ポンプで持続的に第三脳室内に注入する。別の一群は偽手術を行い,陰性対照としてOCT3阻害剤の替りに生理緩衝液を第三脳室内に注入する。注入1週間後のマウスをプラスチックケージ(30cm×35cm×17cm)に入れて,覚せい剤メタンフェタミン(1 mg/kg)の静脈内投与前後の自発運動量の測定を行う。自発運動量は壁面に取り付けられた赤外線センサー(有限会社メルクエスト, SCANET SV-10)により,自動カウントする。覚せい剤メタンフェタミンの投与120分前から投与直前までは,陰性対照群における自発運動量およびOCT3阻害剤投与群の自発運動量を測定し,メタンフェタミンの投与直後から投与180分後までは,各群における覚せい剤誘発性自発運動量を測定する。測定後,各群の自発運動量のカウント数について,Scheffe法を用いた有意差検定を行い,自発運動量が統計的に有意(p値が0.05未満)に変化しているかどうかを判断する。
【0162】
上記の自発運動活性試験では,先行文献(Kitaichi. et al, Neurosci
Lett. 2005 Jul 1-8;382(1-2):195-200)での結果と同様の結果が予想される。すなわち,覚せい剤メタンフェタミンの投与前では,陰性対照群及びOCT3阻害剤投与群において,共に同程度のカウント数の自発運動であり,覚せい剤メタンフェタミンの投与後は,OCT3阻害剤非投与群が陰性対照群の2倍程度のカウント数に,OCT3阻害剤投与群では陰性対照群の5倍程度のカウント数に,増加すると予測される。そしてカウント数を有意差検定することにより,覚せい剤メタンフェタミンの投与前における,陰性対照群とOCT3阻害剤投与群において有意差が無いこと,すなわちOCT3阻害剤の投与により自発運動量が変化しないことを確認できると期待できる。また覚せい剤メタンフェタミンの投与後は,投与前に比べ,統計的に有意に自発運動が亢進すると期待されることから,本試験系が有効に機能していることを確認できると期待できる。以上の結果が得られれば,OCT3阻害剤に自発運動活性がないことを確認でき,強制水泳試験によって確認された無動時間の短縮は,抗うつ作用を示す根拠となる。