【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって解決される。
【0009】
本方法は、一つのローター軸、ローター軸と接続される少なくとも一つのローターディスク、およびローターディスクを取り囲む少なくとも一つの補強リングを有する、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの為のローター装置の製造の為に使用される。本方法は、補強リングとローターディスクの間に、横断方向圧着接続圧着接続(独語:Querpressverbindung)、特に延伸圧着接続(独語:Dehnpressverbindung)または収縮圧着接続(独語:Schrumpfpressverbindung)が形成されることを含む。
【0010】
横断方向圧着接続によって、補強リングおよびローターディスクは、長期にわたり、高い強度で互いに接続されることが可能である。互いに横断方向圧着接続された補強リングおよびローターディスクを有する真空ポンプは、よって、極めて高い回転数でも運転されることができ、または極めて高いトルクを達成することができるので、該真空ポンプによって高いポンプ性能が図られることが可能である。
【0011】
補強リングとローターディスクの間の延伸圧着接続は、ローターディスクが冷却され、その後、補強リングがローターディスクにセットされ、または差し込まれ、その際、ローターディスクが暖められる際に膨張(拡張)し、そしてその際、延伸圧着接続が形成されることにより形成されることが可能である。
【0012】
焼き嵌め(独語:Aufschrumpfen)によって、補強リングは、ローターディスクと収縮圧着接続を行う。これは、延伸圧着接続同様、きわめて高い強度を有する。その際、補強リングは、延伸圧着接続におけるように、収縮圧着接続の外側の要素を形成し、そしてローターディスクは内側の要素を形成する。
【0013】
例えば、ローターディスクが、ローター軸に焼き嵌めされる結果、ローターディスクがローター軸上により確実に座することが保証されるとき、ローターディスクと補強リングの結合は、その極めて高い強度に基づいて、ローターディスクのみにて可能であろうよりも明らかに堅固な接続をローター軸と行う。本方法において製造されるローター装置は、よって、極めて高い強度を有し、そして問題なく高い回転数およびトルクで運転されることが可能である。これらが、高いポンプ性能を可能とする。バーストの危険は、補強リングによって提供される補強によって著しく減少されるので、高いポンプ性能においても、真空ポンプの確実な運転が補償される。
【0014】
本発明の有利な実施形は、下位の請求項、明細書、および図面中に記載される。
【0015】
横断方向圧着接続を補強リングとローターディスクの間に形成するために、ローターディスクが冷却され、そして補強リングがその後、冷却されたローターディスクに取り付けられると有利である。ローターディスクが再び温められると、横断方向圧着接続が補強リングとローターディスクの間に形成される。
【0016】
収縮圧着接続を形成するために、補強リングが加熱され、そしてその後ローターディスク上に取り付けられると有利である。補強リングが再び冷却されると、これは縮まり、そしてその際、ローターディスクと収縮圧着接続を形成する。
【0017】
ローターディスクと、このこれに座する補強リングの間に横断方向圧着接続を形成するために、ローターディスクの外直径と補強リングの内直径は、好ましくは互いにプレス嵌め(独語:Presspassung)の形式で形成されている。これによって、横断方向圧着接続が、ローターディスクと補強リングの間の高い回転強度を生じさせることが保証される。
【0018】
有利な実施形に従い、ローターディスクは、二つの軸方向の端部を有する。その際、両方の軸端部においては、各一つの補強リングがローターディスクに取り付けられ、そして横断方向圧着接続が、各補強リングとローターディスクの間に形成される。ローターディスクの両方の軸方向の端部における二つの補強リングの使用によって、補強されたローターディスクの強度と、ローターディスクおよびローター軸管の接続が追加的に高められる。
【0019】
横断方向圧着接続は、原理的には、外側のコンポーネント、つまり補強リングの加熱を含むことが可能であり、及び/又は内側のコンポーネント、つまりローターディスクの冷却を含むことが可能である。各コンポーネントは、その際、室温よりも明らかに高い温度または低い温度に、加熱または冷却される。特にローターディスクの冷却は、例えば液体窒素を使用のもと行われる。
【0020】
好ましくは、補強リングは、正確に一つのローターディスクのみと接続される。つまり補強リングは、一つより多くのローターディスクと接続されず、唯一のローターディスクのみと接続される。補強リングは、よって正確に一つのローターディスクに付設される。補強リングは、この態様において、他のローターディスクと独立して取り扱われることが可能であり、特にローター軸と接続されることが可能である。後述するように、これによって特に簡単な、ローター装置全体の組立が可能となる。
【0021】
本方法は、好ましくは、ローターディスクのローター軸との回転不能な接続を含む。当該接続は、好ましくは補強リングをローターディスクと横断方向圧着接続することによって行われる。
【0022】
有利な実施形に従い、ローターディスクは、特に補強リングとの横断方向圧着接続によってローター軸に取り付けられる。この為、好ましくはローターディスクとローター軸の間に、横断方向圧着接続、特に延伸圧着接続または収縮圧着接続が形成される。よって例えば、ローターディスクとローター軸の間に収縮圧着接続が形成されることが可能である。その際、ローターディスクは、収縮圧着接続の外側のコンポーネントおよびローター軸は内側のコンポーネントを意味する。ローターディスクにすでに補強リングが例えば焼き嵌めされると、ローター軸へのローターディスクの焼き嵌めの際に、補強リングによって図られる、補強されたローターディスクの高められた強度に基づいて、ローターディスクとローター軸の間の接続の明らかに高い強度が達成される。
【0023】
ローターディスクのローター軸との横断方向圧着接続は、外側のコンポーネント、つまりローターディスクの加熱、及び/又は内側のコンポーネント、つまりローター軸の冷却を含みうる。その際、加熱または冷却は、室温より明らかに上または下の温度への加熱または冷却を含みうる。冷却は、液体窒素を使用して行われる。
【0024】
有利な実施形に従い、ローターディスクのローター軸上への横断方向圧着接続または延伸圧着接続は、ローター軸の冷却を含む。ローターディスクの加熱は、この態様において追加的に行われるか、または行われないことが可能である。ローター軸の冷却は、有利である。というのは、冷却されたローター軸は、補強リングを有し相応して加熱されたローターディスクよりも明らかに激しく変形可能である、というのは補強リングが、ローターディスクの熱膨張性を減少させることが可能だからである。
【0025】
本方法は、好ましくは、ローター軸と接続される複数のローターディスクを有するローター装置の製造の為に使用される。これらローターディスクは好ましくは軸方向で相連続している。これに対応して、有利な実施形に従い、複数のローターディスクがローター軸上に取り付けられる。好ましくは、複数のローターディスクには、其々少なくとも一つの補強リングが取り付けられる。詳しく言うと、特に、少なくとも一つのローターディスクに関して上述したような方法で横断方向圧着接続によって取り付けられる。その際、例えば補強リングのローターディスクへの焼き嵌めは、各ローターディスクをローター軸に取り付ける前に行われる。ローターディスクをローター軸に取付ける為に、複数のローターディスクは、少なくとも一つのローターディスクに関して上述した方法で、ローター軸と横断方向圧着接続されることが可能である。
【0026】
有利な実施形に従い、ローターディスクは一つの共通なプロセスでローター軸と接続される。この為、ローター軸は冷却され、そして複数のローターディスクはその結果ローター軸に取り付けられるので、複数のローターディスクは、これに続くローター軸の加熱の際に、共通してローター軸と接続されることが可能である。ローター装置の製造のためのコストはこれによって低く保たれる。
【0027】
有利な実施形に従い、ローターディスクは個々にローター軸上に取り付けられ、そして特にローターディスクと横断方向圧着接続される。これは、ローターディスクが、ローターディスクが、自立式に互いに依存しあうことなく、ばらばらにローター軸に取り付けられることを意味する。複数のローターディスクのお互いの独立性によって、ローター軸への取付の際の容易な取扱い、および、ローターディスクとローター軸の間の良好な接続が保証される。
【0028】
ローター装置を製造するための本明細書に記載の方法は、基本的に、当該ローター装置を有する真空ポンプを製造するための方法の構成要素である。よって本発明の対象は、この明細書に記載した方法によるローター装置の製造を含む真空ポンプの製造のための方法でもある。
【0029】
有利な実施形に従い、ローターディスクは、これらが真空ポンプ内で、ローターディスクの間に位置するステーターディスクと軸方向で交互になるようローター軸に取り付けられる。その際、ステータディスクは、好ましくは真空ポンプのハウジングに設けられている、または設けられる。これによって、ローター軸が、ローターディスクも貫通し、ローター軸と軸方向で交互に位置するステータディスクも貫通して延在し、そして例えば、ターボ分子ポンプにおける使用に適している配置が得られる。
【0030】
ステータディスクは、ローター装置の組立ての際にすでにローター軸と回転可能に通され、かつローターディスクの間に挿入されることが可能であるので、ローター装置の完全なる組立の後に、ローターディスクの間に組み立てられるばらばらのステータディスクを使用する必要が無い。その代わりに、其々、一部品式に結びついており、そして特に材料統一的な構造体によって形成されているステータディスクが使用されることが可能である。一部品式のステータディスクは、其々一つの貫通した開口部を有していることが可能である。ローター装置の製造の際に、この開口部を通ってローター軸が案内される。真空ポンプの製造は、これによって著しく簡易化される。というのは、ローター装置とステータディスクが一つの共通な方法ステップ中に組み立てれらることが可能だからである。
【0031】
補強リングは、完全にまたは部分的に一つの材料から成ることが可能である。この材料は、少なくとも一つのローターディスクの材料と異なっている。特に補強リングは、少なくとも一つの方向、特に補強リングの周囲方向において、ローターディスクの材料よりも高い強度を有する一つの材料を有している。これによって、補強リングおよびローターディスクからなる結合の、特に高い強度が達成される。
【0032】
接続の強度およびローター装置によって達成可能なポンプ性能に関する特に良好な結果は、少なくとも一つの方向、特に補強リングの周囲方向において、少なくとも500MPa、好ましくは少なくとも600MPa、特に好ましくは少なくとも700MPa、そして最も好ましくは800MPaの引張強度を有する一つの材料から補強リングが、完全にまたは部分的に成っているとき達成される。好ましくは、700MPaよりも高い引張強度を有する材料が使用される。
【0033】
有利な実施形に従い、補強リングは、完全にまたは部分的に、繊維強化プラスチック、特に炭素繊維強化プラスチック(CFK)から成る。好ましくはプラスチックは、高じん性(英語:High Tenacity)繊維または高じん性繊維よりも更に高い強度を有する、超高じん性(英語:Super Tenacity)繊維を有する。この材料の高い強度に基づいて、特に堅固な接続が補強リングとローターディスクの間、およびローターディスクとローター軸の間に達成される。
【0034】
ローターディスク及び/又はローター軸及び/又は少なくとも一つのステータディスクは、完全にまたは部分的に一つの金属材料からなることが可能である。この金属材料は、アルミニウムを含むか、またはアルミニウムによって、またはアルミニウム合金によって形成されていることが可能である。ローターディスク及び/又は少なくとも一つのステータディスクは、好ましくは一部品式に関連しあい、そして特に材料統一的である構造体によって形成されている。この構造体は、管体の特に材料除去を行う処理、特に切削処理によって製造されていることが可能である。
【0035】
補強リングとローターディスクの間の特に堅固な接続は、補強リングとローターディスクが室温において、0.0005から0.04mmの間、好ましくは0.0008から0.03mmの間、および特に好ましくは0.001から0.025mmの間の放射方向の余剰を有するとき達成される。ローターディクスとローター軸の間の特に堅固な接続は、補強されたローターディスクとローター軸が室温において0.01から0.1mmの間、好ましくは0.02mmから0.08mmの間、および特に好ましウkは0.04から0.06mmの間の放射方向の余剰を有するとき達成される。
【0036】
発生する接続が、補強リングの放射方向内側面と、ローターディスクの放射方向外側面の間にシリンダー側面形状の接触領域を有するよう、補強リングはローターディスクに取り付けられることが可能である。当該接触領域において、補強リングとローターディスクは互いに押付けられ合う。発生する接続が、ローターディスクは、ローターディスクの放射方向内側面とローター軸の放射方向外側面の間にシリンダー側面形状の接触領域を有するよう、ローターディスクはローター軸に取り付けられることが可能である。この接触領域においてローターディスクとローター軸は互いに押付けられ合う。
【0037】
好ましくは、ローターディスクはターボ分子的ローターディスクとして形成されている。ローターディスクは、一つの担持リングと、担持リングから放射方向へと突き出す複数の羽根を有していることが可能である。これは、ローターディスクのマウントを形成する。担持リングは、ローターディスクの羽根の為の結束を形成することができる。担持リングは、好ましくは一つの貫通する開口部を有する。この開口部を通って完成したローター装置のローター軸が延在する。
【0038】
補強リングは、ローターディスクの担持リングに取り付けられ、特に延伸圧着接続または焼き嵌めされることが可能であるので、担持リングの放射方向外側面と補強リングの放射方向内側面は、横断方向圧着接続の接触領域を形成する。担持リングは、二つの軸方向端部を有することが可能であり、そして一方または両方の軸方向端部に、軸方向にマウントを越えて突出する各一つの部分を有することが可能である。これら部分の一方または両方の部分には、各一つの補強リングが例えば焼き嵌めされる、または延伸圧着接続されることが可能である。
【0039】
ローター軸は、好ましくは円形の断面を有する、好ましくはロッド形状の構造体によって、特に中実体によって形成されている。ローター軸は、回転軸を中心として回転可能に真空ポンプ内に支承されていることが可能である。その際、回転軸は好ましくはローター軸の長手方向軸に一致する。
【0040】
本発明の更なる特徴は、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのためのローター装置であり、当該ローター装置は、一つのローター軸、該ローター軸と接続された一つのローターディスク、および外ローターディスクを取り囲む一つの補強リングを有しており、その際、補強リングは、横断方向圧着接続によって、特に延伸圧着接続または収縮圧着接続によってローターディスクと接続されている。ローター装置は、好ましくは、本明細書に従うローター装置を製造するための方法によって製造されている、または製造可能である。ここに記載される有利な実施形および発明に係る方法の長所は、発明に係るローター装置の相当する有利な実施形および長所を表す。ローター装置は、ローターディスクとローター軸の間の特別堅固な接続によって際立っている。この接続は、極めて高い回転数においても、ローターディスクがローター軸上に堅固に座していることを保証するので、真空ポンプは極めて高い回転数においても駆動されることが可能であり、かつ高いポンプ性能を提供することができる。
【0041】
有利な実施形に従い、ローターディスクは二つの軸方向の端部を有する。その際、両方の軸方向の端部においては、各一つの補強リングがローターディスクに取り付けられており、そして各補強リングとローターディスクの間には横断方向圧着接続が形成されている。
【0042】
ローターディスクはローター軸と、横断方向圧着接続を介して、特に延伸圧着接続かまたは収縮圧着接続を介して接続されていることが可能である。よってローターディスクは、好ましくは、ローター軸に焼き嵌めされる、またはこれと得延伸圧着接続される。補強リングは、好ましくは正確に一つのローターディスクのみと接続されている、つまり好ましくは、補強リングは、一つより多くのローターディ梳くと接続されず、よってもっぱら唯一のローターディスクとのみ接続されている。原理的には、複数のローターディスクがローター軸に取り付けられていることが可能であり、そして特に焼き嵌めされる、または延伸圧着接続されていることが可能である。
【0043】
ローター装置は、真空ポンプの部分である、特にターボ分子ポンプの部分であることが可能である。本発明の対象は、よって、本明細書に従うローター装置を有する真空ポンプ、特にターボ分子ポンプでもある。
【0044】
好ましくは、真空ポンプ内で軸方向において、ローター軸と接続される複数のローターディスクは、当該ローターディスクの間に配置されるステータディスクと交互に位置している。これらステータディスクは、真空ポンプに、例えば真空ポンプのハウジングに固定されている。
【0045】
ステータディスクは、好ましくは一部品式の結びついた、そして特に材料統一的な構造体として形成されている。ステータディスクは、好ましくは其々一つの貫通する開口部を有している。この開口部を通ってローター軸が延在している。
【0046】
少なくとも一つの補強リングが全体的に、または部分的に、繊維強化プラスチックから、特に炭素繊維強化プラスチック(CFK)から成っていると好ましい。プラスチックは、HT繊維またはST繊維を有し得る。
【0047】
一または複数のローターディスクは、好ましくは、ターボ分子的ローターディスクとして形成されている。
【0048】
本発明に従う真空ポンプは、上述したようなローター装置を有している。その際ローター軸は、好ましくは、一つの回転軸を中心として回転可能に、二つの軸方向端部において支承されている。その際、一または複数のローターディスクは、両支承部の間に配置されたローター軸の部分内でローター軸に取り付けられていることが可能である。その際、一つの支承部は転がり支承部として形成されていることが可能であり、及び/又は、特にポンプの高真空側に付設されている一つの支承部は、マグネット支承部として、特に永久磁石支承部として形成されていることが可能である。
【0049】
以下に本発明を有利な実施形にもとづき例示的に、添付の図面を参照しつつ説明する。図は以下を示す。