特許第6284524号(P6284524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284524キャストポリアミド、その製造方法、およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284524
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】キャストポリアミド、その製造方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/20 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   C08G69/20
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-513052(P2015-513052)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公表番号】特表2015-517598(P2015-517598A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2013056149
(87)【国際公開番号】WO2013174545
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】12168904.6
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511206984
【氏名又は名称】ライン・ケミー・ライノー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム・ラウファー
(72)【発明者】
【氏名】アルミン・エッカート
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・パルツァー
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−197231(JP,A)
【文献】 米国特許第04742128(US,A)
【文献】 米国特許第03418268(US,A)
【文献】 米国特許第03575938(US,A)
【文献】 特開昭61−000214(JP,A)
【文献】 特開平05−170896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の触媒;
b)アニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤;
c)共活性化剤としての少なくとも1種の第三級アミン、ならびに
d)少なくとも1種のラクタム
を、少なくとも80℃〜130℃の温度で反応させることによって得られ得るキャストポリアミドを製造するための方法であって、
前記活性化剤が、ビウレットおよび/またはウレトジオンから選択される少なくとも1種の化合物である、方法。
【請求項2】
110〜130℃の温度で反応させることによって得られ得る請求項1に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項3】
前記触媒が、ラクタムハロゲン化マグネシウム、アルカリ金属アルミノジラクタメート、、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ラクタメートの群から選択される、少なくとも1種の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項4】
ラクタムハロゲン化マグネシウムが、ラクタム臭化マグネシウムである、請求項3に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項5】
アルカリ金属アルミノジラクタメートが、ナトリウムアルミノジラクタメートである、請求項3に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項6】
アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ラクタメートが、ナトリウムラクタメート、カリウムラクタメートおよび/またはマグネシウムラクタメートである、請求項3に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項7】
前記第三級アミンが、トリエチレンジアミンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項8】
前記ラクタムが、一般式
【化1】
(ここで、Rは、3〜13個の炭素原子を有するアルキレン基である)
に相当することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項9】
ラクタムに基づく以下の比率
a)0.1〜3重量%の少なくとも1種の触媒、
b)0.1〜2重量%の少なくとも1種の活性化剤、および
c)0.0005〜0.2重量%の、共活性化剤としての少なくとも1種の第三級アミン、
を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項10】
a)0.2〜1.5重量%の少なくとも1種の触媒
を含むことを特徴とする、請求項9に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項11】
b)0.5〜1重量%の少なくとも1種の活性化剤
を含むことを特徴とする、請求項9に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【請求項12】
c)0.005〜0.1重量%の、共活性化剤としての少なくとも1種の第三級アミン
を含むことを特徴とする、請求項9に記載のキャストポリアミドを製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なキャストポリアミド、その製造方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キャストポリアミドは、特に高分子量のポリアミドである。キャストポリアミドの製造においては、ラクタムが、少なくとも1種の触媒および少なくとも1種の活性化剤と一緒に型中に注がれ、次いで、この型中でアニオン重合される。これは、一般には加熱によって、型中に存在する出発化合物を重合することを含む。これは、結晶化度の点で押出ポリアミドよりも優れた、均質な材料を生じる。
【0003】
キャストポリアミドは、複雑な部品の製造のための熱可塑性プラスチックとして適する。他の多くの熱可塑性プラスチックと対照的に、それらを溶融する必要がなく;その代わりに、それらは型中120〜150℃でわずか数分以内のラクタムのアニオン重合によって形成する。これは、いずれの公知のキャスティング法、例えば、固定キャスティング、射出キャスティング、回転キャスティング、および遠心分離キャスティングによっても行うことができる。それぞれの場合に得られる最終製品は、高分子量の結晶性ポリアミドの成形品であり、これは、低い重量、高い機械耐久性、非常に良好な滑り特性、および優れた耐薬品性を特色とし、かつ型は加圧下で充填されないので、低い内部応力しか有しない。キャストポリアミドは、のこぎりで切る、ドリルで穴を開ける、機械加工する、研磨する、溶接する、および印刷または塗装することができ;複雑な中空の型物のみならず、このポリマーから製造された他の物品の例は、乗用エレベータ用のローラ、ならびに半製品、例えば、機械工学および自動車産業用の管、棒、およびシートである。
【0004】
低粘度ラクタム溶融物および触媒、ならびに活性化剤に由来するキャストポリアミド部品の製造は、活性化アニオン重合と呼ばれるものによって、それ自体公知である。このために、液体溶融物の形態で触媒とラクタムとの混合物、および活性化剤とラクタムとの混合物の2つの混合物を混ぜ合わせ、次いで、それらをキャスティング用型中で重合させることが慣例である;(特許文献1)および(特許文献2)を参照のこと。しかしながら、現キャストポリアミドの不利点は、操作を不経済にする、製造の過程で必要な高温、および活性化剤の高い比率である。射出キャスティング法によるキャストポリアミド部品の製造におけるさらなる不利点は、長い加工時間であり、これは、製造を不経済にする。したがって、本発明の目的は、短い加工時間および/または低温で製造することができ、かつ従来技術の不利点を有しないキャストポリアミドを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第2447302号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/045806号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
今や、意外なことに、本発明のキャストポリアミドは、この特性のプロファイルを有することが見出された。
【0007】
したがって、本発明は、
a)ラクタムのアニオン重合のための少なくとも1種の触媒;
b)アニオン重合のための少なくとも1種の活性化剤;
c)共活性化剤としての少なくとも1種の第三級アミンおよび/またはジブチルスズジラウレート、ならびに
d)少なくとも1種のラクタム
を、少なくとも80℃〜130℃、好ましくは110〜130℃の温度で反応させることによって得られ得るキャストポリアミドを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、触媒は、ラクタムハロゲン化マグネシウム、アルカリ金属アルミノジラクタメート、ならびにアルカリ金属/およびまたはアルカリ土類金属ラクタメートの群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0009】
本発明の文脈で用いられる触媒は、個別にまたは混合物で、ラクタムハロゲン化マグネシウム(好ましくは臭化物)、アルカリ金属アルミノジラクタメート(好ましくはナトリウム)、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属ラクタメート(好ましくはナトリウム、カリウムおよび/またはマグネシウム)であってもよく、「ハロゲン化物」、「アルカリ金属」、および「アルカリ土類金属」という用語は、元素の周期律表からのものに相当する意味を有する。
【0010】
上述の触媒は、基礎化学品であり、例えば、Rhein Chemie Rheinau GmbHまたはKatChem spol.s.r.oから入手可能である。
【0011】
本発明の文脈で用いられる活性化剤は、単一の化合物として、または混合物の形態で、イソシアネート、イソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、および/またはカルボジイミドであってもよい。同様に本発明の文脈で使用可能なものは、例えば、ラクタム、より好ましくはカプロラクタム、またはフェノール、オキシム、および/もしくはエポキシドでブロックされた活性化剤であり、同様に、溶媒含有活性化剤である。好適な溶媒は、すなわち、N−アルキルピロリドン、好ましくはN−メチルピロリドンおよびN−エチルピロリドン、ポリグリコール、好ましくはポリグリコールDME200、ジプロピレングリコールDME、またはテトラエチレングリコールDMEである。
【0012】
本発明の文脈におけるイソシアネートは、好ましくはジイソシアネート、好ましくは2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,2’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニレンイソシアネート、およびそれらの混合物である。特に好ましいものは、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートである。上述の化合物は、基礎化学品であり、例えば、Bayer MaterialScience AGから入手可能である。
【0013】
本発明の文脈におけるイソシアヌレートは、好ましくは式(I)
【化1】
[ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、−(CH−N=C=Oまたは−(CH−[(C)(Me/Et)(N=C=O)](m=1〜12であり、q=0〜6であり、Meはメチルであり、Etはエチルである)であり、ここで、R、R、およびRは、好ましくは同じである]
の化合物である。
【0014】
好ましいものは、以下の式(II)
【化2】
および式(III)
【化3】
の化合物である。
【0015】
上述の化合物は、基礎化学品であり、例えば、Bayer MaterialScience AGから入手可能である。
【0016】
本発明の文脈におけるビウレットは、好ましくは式(IV)
【化4】
[ここで、R、R、およびRは、それぞれ独立して、−(CH−N=C=O(p=1〜12である)であり、ここで、R、R、およびRは、好ましくは同じである]の化合物である。特に好ましい実施形態において、R、R、およびRは、−(CH−N=C=O(pは6である)、すなわち、式(V)
【化5】
のビウレットに相当する。
【0017】
上述の化合物は、基礎化学品であり、例えば、Bayer MaterialScience AGから入手可能である。
【0018】
本発明の文脈におけるウレトジオンは、ジオキソジアゼチジン結合の形成を伴う、少なくとも2個のイソシアネートの反応生成物である:
【化6】
【0019】
この調製は、それ自体当業者に公知である。この化合物は、例えば、欧州特許出願公開第1422223A1号明細書に記載された方法によって、調製され得る。
【0020】
ウレトジオンは、ダイマー、トリマー、オリゴマー、またはポリマーである。
【0021】
ウレトジオンの好適な例は、それ自体当業者に公知である。好ましいものは、脂肪族または芳香族イソシアネートに由来して得られるウレトジオンである。芳香族イソシアネートは、好ましくは6〜20個の炭素原子、より好ましくは6〜15個の炭素原子を有する。相当する芳香族モノマーイソシアネートは、例えば、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、1,3−ビス(3−イソシアナト−4−メチルフェニル)−2,4−ジオキソジアゼチジン、N,N’−ビス(4−メチル−3−イソシアナトフェニル)尿素、およびテトラメチルキシレンジイソシアネートからなる群から選択されてもよい。これらの芳香族イソシアネートは、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、および4,4’−メチレンビス(フェニルジイソシアネート)が好ましく、とりわけ好ましいものは、2,6−ジイソシアナトトルエンおよび4,4’−メチレンビス(フェニルジイソシアネート)である。
【0022】
脂肪族イソシアネートは、好ましくは6〜20個の炭素原子、より好ましくは6〜15個の炭素原子を有する。相当する脂肪族モノマーイソシアネートは、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシル1,4−ジイソシアネート、1,1−メチレンビス(4−イソシアナトシクロヘキサン)、1,2−ビス(4−イソシアナトノニル)−3−ヘプチル−4−ペンチル−4−シクロヘキサン、およびヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートからなる群から選択されてもよい。ここで好ましいものは、イソホロンジイソシアネートおよびヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートの使用である。
【0023】
上述の化合物は、基礎化学品であり、例えば、Rhein Chemie Rheinau GmbHまたはBayer MaterialScience AGから入手可能である。
【0024】
本発明の文脈におけるアロファネートは、好ましくは式(VI)
【化7】
(ここで、R’およびR”は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜20個の炭素原子を有するアリール基であり、R’’’は、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基と定義される)
の化合物である。
【0025】
これらの化合物は、一般に、一般式(R”OOC−NHR’)の単位を有する、ウレタンおよび/尿素基を有する任意の所望の出発化合物と、一般式R’’’−NCOのモノイソシアネートまたは一般式OCN−A−NCOのジイソシアネーとの反応によって得ることができ、ここで、R’’’またはAは、好ましくは1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜20個の炭素原子を有するアリール基であり、R’およびR”は、それぞれ独立して、1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、または6〜20個の炭素原子を有するアリール基である。
【0026】
好適なモノイソシアネートは、20個までの炭素原子を有する、任意の所望の芳香族、脂肪族、および脂環式モノイソシアネート、例えば、メチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、n−ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、任意選択的にハロゲン化されたフェニルイソシアネート、1−ナフチルイソシアネート、任意選択的に塩素化またはフッ素化されたm−、o−、およびp−トリルイソシアネート、p−イソプロピルフェニルイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、およびp−トルエンスルホニルジイソシアネートである。
【0027】
好適なジイソシアネートは、6〜40個の炭素原子、好ましくは6〜15個の炭素原子を有する、任意の所望の芳香族、脂肪族、および脂環式ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシル1,4−ジイソシアネート、1,1−メチレンビス(イソシアナトヘキサン)、1,2−ビス(4−イソシアナトノニル)−3−ヘプチル−4−ペンチルシクロヘキサン、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート、1,3−ビス(3−イソシアナト−4−メチルフェニル)−2,4−ジオキソジアゼチジン、N,N−ビス(4−メチル−3−イソシアナトフェニル)尿素、およびテトラメチルキシリレンジイソシアネートである。これらのうちで、好ましいものは、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネートである。
【0028】
本発明の文脈において特に好ましいアロファネートは、式(VII)
【化8】
(ここで、分子内のRIVおよびRVIは、同じであっても、異なっていてもよく、それぞれ、C〜C−アルキル、好ましくは−(CH−であり、Rは、C〜C−アルキルである)
の化合物である。
【0029】
相当するアロファネートおよびその調製は、例えば、欧州特許出願公開第0000194A号明細書に記載されており、この点でこの開示は、参照により本発明中に組み込まれる。上述の化合物は、基礎化学品であり、例えば、Bayer MaterialScience AGから入手可能である。
【0030】
本発明の文脈におけるカルボジイミドは、好ましくは式(VIII)
11−(−N=C=N−R12−)m−R13 (VIII)
[式中、
mは、1〜500の整数であり、
12は、C〜C18−アルキレン、C〜C18−シクロアルキレン、アリーレン、および/またはC〜C18−アラルキレンであり、
11は、R−NCO、R−NHCONHR、R−NHCONR、またはR−NHCOORであり、
13は、−NCO、−NHCONHR、−NHCONR、または−NHCOORであり、
ここで、R11、R、およびRは、同じか、または異なり、独立して、C〜C−アルキル、C〜C10−シクロアルキル、またはC〜C18−アラルキル基であり、Rは、R11の定義の一つを有するか、あるいはポリエステルもしくはポリアミド基、または−(CH−O−[(CH−O]−R10(h=1〜3、k=1〜3、g=0〜12であり、ここで、R10は、HまたはC〜C−アルキルと定義される)である]
の化合物である。
【0031】
対応するオリゴマーおよび/またはポリマーを含めた、式(VIII)のカルボジイミドの混合物も同様に使用可能であり、好ましいものは、ポリマーカルボジイミドである。
【0032】
式(VIII)の化合物は、例えば、Rhein Chemie Rheinau GmbHから市販されており、あるいは独国特許出願公開第A−1130594号明細書もしくは米国特許第2,840,589号明細書に記載されたとおりに、当業者によく知られている方法によって、または触媒での存在下、高温、例えば、40℃〜200℃で、二酸化炭素の脱離を伴った、ジイソシアネートの縮合によって調製され得る。有用な触媒は、例えば、強塩基またはリン化合物であることがわかった。好ましいものは、ホスホレンオキシド、ホスホリジン、またはホスホリンオキシド、および相当するスルフィドを用いることである。触媒として、第三級アミン、塩基性金属化合物、金属カルボキシレート、および非塩基性有機金属化合物を用いることも可能である。
【0033】
上述の化合物は、基礎化学品であり、例えば、Rhein Chemie Rheinau GmbHから入手可能である。
【0034】
好ましくはラクタム、より好ましくはカプロラクタムでブロックされたブロック活性化剤、またはフェノール、オキシムおよび/もしくはエポキシドでブロックされた活性化剤は、例えば、当業者よく知られている方法によって、少なくとも1種の式(I)から式(VIII)の化合物と、少なくとも1種のラクタム、カプロラクタム、フェノール、オキシム、および/またはエポキシドとの80〜100℃の温度での反応によって調製可能である。
【0035】
本発明のさらなる好ましい関与において、第三級アミン共活性化剤は、トリエチレンジアミン、1,3,5−トリス(3−ジメチルアミノ)プロピル、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジモルホリノジエチルエーテル、ビス(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−エチルモルホリン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、および/またはN,N−ジメチルピペラジンである。
【0036】
ジブチルスズラウレートおよび/または第三級アミンの共活性化剤は、本発明のさらなる実施形態において、溶媒、例えば、グリコール中に溶解させて任意選択的に用いることもできる。上述の化合物は、基礎化学品であり、例えば、Rhein Chemie Rheinau GmbHまたはBASF AGから入手可能である。
【0037】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、ラクタムd)は、一般式
【化9】
(ここで、Rは、3〜13個の炭素原子を有するアルキレン基である)
の化合物である。
【0038】
ここで、好ましいものは、カプロラクタムおよび/またはラウロラクタムである。これらは、例えば、Lanxess Deutschland GmbHから市販されている。
【0039】
さらなる好ましい実施形態において、本発明キャストポリアミドは、それぞれの場合に、ラクタムに基づいて、以下の成分
触媒a): 0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜1.5重量%、
活性化剤b):0.1〜2重量%、好ましくは0.5〜1重量%、および
共活性化剤c):0.0005〜0.2重量%、好ましくは0.005〜0.1重量%
を含有する。
【0040】
本発明の好ましい実施形態において、キャストポリアミドは、
a)触媒として、好ましくは18〜20重量%カプロラクタム溶液として、ナトリウムラクタメート、
b)ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、カプロラクタムブロック化ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、式(IV)(p=6)のビウレット、および/または2,4−ジイソシアナトトルエンに基づくウレトジオンの群から選択される、少なくとも1種の代表物、
c)トリエチレンジアミン、ならびに
d)カプロラクタム
の反応によって得られ得る。
【0041】
さらに好ましい実施形態において、本発明キャストポリアミドは、ラクタムに基づいて、以下の成分:
触媒a):好ましくは18〜20重量%カプロラクタム溶液として、0.5〜3重量%、好ましくは1〜2重量%のナトリウムラクタメート、
活性化剤b):ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、カプロラクタムブロック化ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート、式(IV)(p=6)のビウレット、および/または2,4−ジイソシアナトトルエンに基づくウレトジオンの群から選択される、0.1〜2重量%、好ましくは0.5〜1重量%の少なくとも1種の代表物、ならびに
共活性化剤c):カプロラクタムに基づいて、0.0005〜2.0重量%、好ましくは0.005〜0.1重量%のトリエチレンジアミン
を含有する。
【0042】
本発明はさらに、
80℃〜130℃、好ましくは110〜130℃の範囲の温度で、
−少なくとも1種のラクタム溶融物が、触媒a)および任意選択的に共活性化剤c)と混合され、および
−少なくとも1種のラクタム溶融物が、活性化剤b)および任意選択的に共活性化剤c)と混合され、ならびに任意選択的に、
−ラクタム溶融物が、共活性化剤(c)と混合され、
ここで、共活性化剤c)は、上述のラクタム溶融物の少なくとも1つで存在しなければならず、そして
型中で重合される、
本発明キャストポリアミドを製造する方法を提供する。
【0043】
この混合操作は、好ましくは連続的にまたはバッチ式で、例えば、静的ミキサー、攪拌容器、押出機中で、または搬送スクリューによって、1秒〜10分の期間内、好ましくは1〜120秒の範囲内で行われる。
【0044】
本発明の1つの実施形態において、ラクタム溶融物(a)およびラクタム溶融物(b)ならびに任意選択的にラクタム溶融物(c)は、重合のために80〜130℃、好ましくは100〜130℃の温度で混ぜ合わされる。重合は、例えば、Kunststoffhandbuch[プラスチックハンドブック]、第3/4巻、Technische Thermoplaste[工業用熱可塑性プラスチック]、Hanser Fachbuch、413〜430頁に記載された、当業者によく知られている方法によって行われる。この過程において、ラクタム溶融物は、好ましくは攪拌される。このために、混合装置、例えば、攪拌槽を用いることができる。
【0045】
本発明のさらなる実施形態において、ラクタム溶融物(a)およびラクタム溶融物(b)ならびに任意選択的にラクタム溶融物(c)は、重合のために、最初に冷却され、混練され、保存され、次いで、溶融され、80〜130℃、好ましくは100〜130℃の温度で混ぜ合わされる。
【0046】
本発明の別の実施形態において、ラクタム溶融物(a)およびラクタム溶融物(b)ならびに任意選択的にラクタム溶融物(c)は、重合のために、最初に80〜90℃で短時間混合され、冷却され、混練され、保存され、次いで、溶融され、80〜130℃、好ましくは100〜130℃の温度で混ぜ合わせられる。
【0047】
本発明のさらなる実施形態において、さらなるラクタムおよび/もしくはさらなる触媒a)ならびに/または任意選択的にさらなる添加剤[例えば、衝撃改質剤(好ましくはポリエーテルアミンコポリマー)、ガラス繊維、連続ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、および/または加工助剤(例えば、高分子量ポリオール)、増粘剤(好ましくは、Aerosil)、UV安定剤および熱安定剤、導電性向上剤(好ましくは、カーボンブラックおよび黒鉛)、イオン液体、標識(label)および/または染料]が、ラクタム溶融物(a)および/もしくはラクタム溶融物(b)ならびに任意選択的にラクタム溶融物(c)に添加される。
【0048】
ラクタム溶融物(a)およびラクタム溶融物(b)は、好ましくは1:3〜3:1の量比、より好ましくは1:1の量比で使用される。
【0049】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、キャストポリアミドは、充填剤および/もしくは補強剤、ポリマー、ならびに/または使用される触媒および共活性化剤と化学的に異なるさらなる添加剤から選択される、少なくとも1種のさらなる成分を追加的に含む。
【0050】
本発明の文脈における充填剤および/または補強剤は、有機および無機の充填剤および/または補強剤である。好ましいものは、無機充填剤、とりわけ、カオリン、チョーク、ウォラストナイト、タルク、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、二酸化チタン、酸化亜鉛、黒鉛、グラフェン、ガラス粒子(例えば、ガラスビーズ)、ナノスケール充填剤(例えば、カーボンナノチューブ)、カーボンブラック、層状ケイ酸塩、ナノスケール層状ケイ酸塩、ナノスケール酸化アルミニウム(Al)、ナノスケール二酸化チタン(TiO)、および/またはナノスケール二酸化ケイ素(SiO)である。
【0051】
好ましいものは、さらに充填剤および/または補強剤としての繊維状材料の使用である。これらの充填剤および/または補強剤は、一般に熱可塑性プラスチック用途に慣例の粒度の鉱物、とりわけ、カオリン、チョーク、ウォラストナイトまたはタルク、炭素繊維またはガラス繊維、好ましくは粉砕ガラス繊維、より好ましくはガラス繊維および炭素繊維を含む群から選択される。
【0052】
より好ましくは、公知の無機補強用繊維、とりわけ、ホウ素繊維、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、セラミック繊維、および玄武岩繊維;有機補強用繊維、とりわけ、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維;ならびに天然繊維、とりわけ、木質繊維、亜麻繊維、麻繊維、およびサイザル繊維から選択される、1種以上の繊維状材料が用いられる。とりわけ好ましいのは、ガラス繊維、とりわけ、チョップドガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、金属繊維、および/またはチタン酸カリウム繊維の使用である。
【0053】
より好ましくは、前記充填剤および/または補強剤の混合物を用いることも可能である。特に好ましいのは、充填剤および/または補強剤として、ガラス繊維および/またはガラス粒子、とりわけ、ガラスビーズの選択である。
【0054】
用いられる充填剤および/または補強剤の量は、好ましくは30〜90重量%、とりわけ、30〜80重量%、好ましくは30〜50重量%、さらに好ましくは50〜90重量%である。
【0055】
本発明の文脈におけるポリマーは、すなわち、ポリスチレン、スチレンコポリマー(とりわけ、スチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)、アクリロリトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、またはスチレン−ブタジエンコポリマー(SB))、ポリフェニレンオキシドエーテル、ポリオレフィン(とりわけ、ポリエチレン(HTPE(高温ポリエチレン)、LTPE(低温ポリエチレン)、ポリプロピレン、またはポリブテン−1)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル(とりわけ、ポリエチレンテレフタレート(PET));ポリアミド、ポリエーテル(とりわけ、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはポリエーテルスルホン(PESUまたはPES));ビニル基を有するモノマーのポリマー(とりわけ、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、ポリビニルカルバゾール、ポリ酢酸ビニル、またはポリビニルアルコール)、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、および/またはポリスルホンである。さらに、ポリマーとして、上述のポリマーのモノマー単位からなるコポリマーを用いることも可能である。
【0056】
本発明のさらなる実施形態において、用いられるポリマーは、モノマーから形成されたポリマーとのブロックおよび/またはグラフトコポリマーの形成に適した基を有してもよい。このような基の例は、エポキシ、アミン、無水カルボン酸、オキサゾリン、カルボジイミド、ウレタン、イソシアネート、およびラクタム基である。カルボジイミド基を有するポリマーは、カルボジイミドが活性化剤としてまったく用いられていない場合に用いられる。
【0057】
存在するいかなるポリマーも、好ましくは0〜40重量%、好ましくは0〜20重量%の量、より好ましくは0〜10重量%の量で存在する。
【0058】
好ましい実施形態において、本発明組成物は、さらなる添加剤を含む。好ましいのは、0〜5重量%、より好ましくは0〜4重量%、最も好ましくは0〜3.5重量%の量の添加剤の使用である。加えられる添加剤は、好ましくは安定剤(とりわけ、銅塩)、染料、帯電防止剤、充填剤油、安定剤、表面改質剤、乾燥剤(siccative)、離型助剤、分離剤、酸化防止剤、光安定剤、PVC安定剤、潤剤、ポリオール、難燃剤、発砲剤、衝撃改質剤、および/または核形成助剤であってもよい。
【0059】
好適な衝撃改質剤は、とりわけ、無水物および/またはエポキシ基を有する、ポリジエンポリマー、好ましくはポリブタジエン、ポリイソプレンである。ポリジエンポリマーは、とりわけ0℃未満、好ましくは−10℃未満、より好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を有する。ポリジエンポリマーは、ポリアクリレート、ポリエチレンアクリレート、および/またはポリシロキサンと一緒のポリジエンコポリマーに基づいてベース化され、標準的な方法によって、好ましくは乳化重合、懸濁重合、溶液重合、気相重合によって調製されてもよい。
【0060】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、ポリオールは、例えばRhein Chemie Rheinau GmbHからAddonyl(登録商標)8073の商品名で入手可能な、耐衝撃性を向上させる添加剤として使用される。同様に使用可能なものは、低温耐衝撃性を向上させるのに適したポリオールトリアミンである。好適な製品は、Addonyl(登録商標)8112である。好ましいのは、1〜20重量%の濃度範囲のポリオールの使用である。
【0061】
充填剤および/または補強剤ならびにさらなる添加剤の任意の添加は、触媒および/または活性化剤の添加に先行するか、またはそれと同時であってもよい。
【0062】
本発明のさらなる実施において、重合は、適切な成形法、好ましくは射出キャスティング、固定キャスティング法、回転キャッティング法によって行うことができる。
【0063】
本発明の範囲は、上および下に言及される、一般的で基本的な定義、指数、パラメータ、および例証のすべて、ならびに互いに好ましい範囲で言及されるもの、すなわち、それぞれの範囲と好ましい範囲との任意の組み合わせも包含する。
【0064】
本発明はさらに、好ましくは乗用エレベータ、ならびに半製品、好ましくは機械工学および自動車産業用の容器、ギア、管、棒、およびシートの製造のための本発明キャストポリアミドの使用を提供する。
【0065】
次に続く実施例は、本発明を例証するために役立つが、限定効果はまったく有しない。
【実施例】
【0066】
試薬:
乾燥カプロラクタム(EP>69℃)(Lanxess Deutschland GmbH製)
Addonyl(登録商標)8108活性化剤(Rhein Chemie Rheinau GmbHから市販されている、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレット、N−エチルピロリドン中70%)
Addonyl(登録商標) Kat NL(Rhein Chemie Rheinau GmbH製、カプロラクタム中約18%ナトリウムカプロラクタメート)
Addocat(登録商標)105(Rhein Chemie Rheinau GmbHから市販されている、ジプロピレングリコール中トリエチレンジアミン)
Addolink(登録商標)TT(Rhein Chemie Rheinau GmbH製TDIウレトジオン)
【0067】
設備:
溶融物を調製するために使用した装置は、以下からなった:
・2つの三つ口フラスコ(500ml)、油浴中で加熱
・2つの精密ガラス製攪拌機(スリーブ付)
・2つのガスキャップ(1つは栓付、1つは栓なし)
・1つの真空ポンプ(冷却トラップおよびマノメータ付)
【0068】
温度を測定するために使用した装置は、以下からなった:
・Testo175−T3温度測定器(IRシリアルインターフェイス付)
・硬化試料中に留まる熱電対
・600mlビーカー(高い形式)、および
・ビーカー用ヒーター(金属ブロック、油浴)
【0069】
手順および測定:
フラスコAに、196.8gのカプロラクタムおよび3.2gの活性化剤、フラスコBに192gのカプロラクタム、8gのAddonyl(登録商標)Kat NL触媒、および本発明の実験の場合、0.2gのAddocat(登録商標)105を投入した。フラスコAおよびフラスコBの溶融物を、油浴中減圧下(<15ミリバール)110〜130℃(±2℃)で20分間調製した。窒素で通気後、フラスコAおよびフラスコBの成分を三つ口フラスコ中で合わせ、短時間攪拌し、600mlビーカーに移した。
【0070】
モールド温度(ビーカー)は160℃であった。重合時間は、一般に10〜20分であった。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例は、重合がゆっくり進行する130℃未満の温度においてさえも、本発明組成物が短いポットライフをもたらすことを示す。このように、キャスティングの改善された特性と合わせて、種々の成形法、例えば、固定、回転、または射出キャスティング法によるキャスト成形の製造においてより短いサイクル時間を達成することが可能である。
【0073】
比較例C2および比較例C3により示されるように、130℃を超える温度で、共活性化剤は効果をまったく有しない。しかしながら、重合は、制御されない様式で進行し、したがって、キャスティングの特性を悪化させ得るので、これらの高い開始温度は、キャストポリアミドの製造においては避けられる。さらに、エネルギー要求量は、ここでより高い。