(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284535
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】時間制御された動作用の紫外線照射装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/12 20060101AFI20180215BHJP
B05D 3/06 20060101ALN20180215BHJP
【FI】
B01J19/12 C
!B05D3/06 102Z
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-538325(P2015-538325)
(86)(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公表番号】特表2016-505348(P2016-505348A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】EP2013003176
(87)【国際公開番号】WO2014063809
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】102012020743.3
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507269681
【氏名又は名称】エーリコン・サーフェス・ソリューションズ・アーゲー・プフェフィコン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・リベイロ
(72)【発明者】
【氏名】タッソ・カルシュ
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー・シェーファー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・カスパル
【審査官】
中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−150549(JP,A)
【文献】
特開2011−255337(JP,A)
【文献】
特開昭61−039305(JP,A)
【文献】
特表2003−535315(JP,A)
【文献】
特開昭49−010735(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0030882(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/12
B05C 9/12
B05D 3/06
G02B 5/28
G03B 27/32
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線とW放射線つまり可視光及び/又は赤外線とを放出する少なくとも一つの放射源と、
照射される基板を供給するための輸送機構と、
45°の角度において紫外線を反射してW放射線を透過させる少なくとも一つの波長選択フィルタと、
前記波長選択フィルタによって偏向されなかったW放射線の光線経路内の伝播方向において前記フィルタの下流に位置する赤外線吸収手段と、を備えた照射装置であって、
前記赤外線吸収手段が、可視光及び紫外線吸収手段としても構成されていて、前記照射装置が、前記放射源の光線経路の中及び外に前記波長選択フィルタを移動させる移動手段を備えることを特徴とする照射装置。
【請求項2】
前記移動手段が、前記光線経路の外に位置する軸の周りでフィルタを回転させることを特徴とする請求項1に記載の照射装置。
【請求項3】
前記波長選択フィルタが干渉フィルタとして構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記フィルタの基板の片面にのみ紫外線反射層システムが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項5】
前記フィルタの基板の他方の面にW放射線用の反射防止層が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の照射装置。
【請求項6】
紫外線を基板に照射するための方法であって、
紫外線及びW放射線を放出する放射源を提供するステップと、
W放射線を波長選択フィルタを通して透過させて、紫外線を前記波長選択フィルタにおいて反射させることによって、紫外線をW放射線から分離するステップと、
前記波長選択フィルタによって偏向されなかった放射線を吸収するための吸収手段を提供するステップと、
紫外線照射用の領域に基板を供給するステップと、
紫外線が照射された前記基板を除去するステップと、を備え、
前記基板の供給及び/又は除去の間において紫外線が前記波長選択フィルタによって反射されず前記吸収手段に当たり前記吸収手段によって吸収されるように、前記基板の供給及び/又は除去の前に前記波長選択フィルタの局所的な向き及び/又は位置が変更されることを特徴とする方法。
【請求項7】
前記基板の供給及び除去の間において前記フィルタを光線経路の外に実質的に移動させることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光線経路の外に位置する軸の周りでの回転によって前記フィルタを前記光線経路の外に移動させることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が時間制御されて複数回行われることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係るラッカー層の紫外線架橋用の方法に係る。本発明は更にその方法を行うための照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線(UV)架橋ラッカーは、基板に適用されて、硬化及び乾燥させられる。ラッカーは、架橋時までは流動性のままであり、基板に適用された後に急激に硬化され得る。
【0003】
紫外線源として、紫外線だけではなく可視光及び高い割合の赤外線(IR)も放出する放射源が多く使用されている。高い割合の赤外線は、高いプロセス温度をもたらし、照射が行われる基板を損傷し得る。特に、ラッカー加工された基板がプラスチック材料基板である場合、一般的な照射の適用では、臨界温度に頻繁に達する。一例として、ABSとの名称で知られているプラスチック材料では、85℃の温度を超えてはならない。
【0004】
特許文献1によると、紫外線源の光線を光線選択ミラーを通して基板に向けることで、偏向紫外線のみを基板に照射する一方、光線の熱の多い部分は直線的にミラーを通過させることによって、上記課題に対処している。
図1は従来技術を示す。ミラーの後方において、光線の熱の多い部分の光線経路内に、冷却機構が適用されている。これは、例えば、キャスティング部の壁の一部である冷却フィンによって実現可能である。
【0005】
特許文献1は、動作のシャットダウンの度に、可能であれば放射源をオフにしたくないという課題にも対処している。そこで、光線ビームの光軸に対して45°の角度で配置されるミラーを、90°回転可能にすることによって、動作のシャットダウンの際に、紫外線を単純で急速に逸らすことを実現している。紫外線の多い光線ビームは180°逸らされて、照射装置のキャスティング壁に当たる。
【0006】
しかしながら、これには、特定の方法でミラーを実現しなければならないという欠点がある。ミラーの片面又は両面に紫外線反射層が設けられ得る。ミラー基板の両面に紫外線反射層が設けられる場合、その反射層によって、可視光及び/又は赤外線の一部分も常に反射されることを考慮しなければならない。特に、これは、異なる衝突角度で放射線がミラー表面に当たる場合に当てはまる。両面紫外線反射層を有することで、紫外線ではない部分が増えて、紫外線の光線経路内に反射されて、基板に当たるという望ましくない状況となる。
【0007】
ミラー基板の片面にのみ紫外線反射層を適用して、他方の面に、広範な衝突角度範囲にわたる可視光及び赤外線用の反射防止層を選択することが望ましい。この場合、紫外線を実質的に吸収しない特別な材料を、ミラー基板材料として選択することが望ましい。おそらくは、これに起因して、特許文献1では、放射源は半分の出力で動作させることが望ましいものにもなっている。しかしながら、このような紫外線を吸収しない材料(例えば、石英ガラス)は高価である。これは特に大型装置の場合に問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第3529800号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一課題は、上述の従来技術の問題が少なくとも軽減され好ましくは完全に解消された装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、上記課題は、
図1に示されるような照射装置から出発して、冷却機構を紫外線吸収機構として更に構成することによって解決される。本発明によると、基板の紫外線照射を中断する際に、ミラーが放射線の光線経路から外される。例えば、これは、放射線の光線経路の外に位置する軸に対してミラーを回転させることによって実現可能である。
【0011】
また、ミラー基板の縁にのみ放射線を照射するように、又は放射線が非常に広い衝突角度で基板表面に当たり大部分反射されるがその広い衝突角度のためにほとんど偏向されないように、ミラーを回転させることもできる。
【0012】
これによって、ミラー基板を紫外線吸収材料製にすることができ、ミラー基板の片面にのみ紫外線反射コーティングを適用し、好ましくは、ミラー基板の他方の面に反射防止層を設ける。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によると、ミラー基板の縁に、衝突してくる放射線を少なくとも部分的に遮断する手段(吸収又は反射)が設けられる。
【0014】
本発明の更に好ましい実施形態によると、放射線が照射される基板が、時間制御された動作(クロックド動作)で輸送機構によって照射装置に供給される。従って、供給ステップ中において、照射用に基板が配置される領域への紫外線照射が中断されることが特に有利である。これは、時間制御によって、好ましくはミラーの回転によって供給と同期させることで実現可能である。
【0015】
本発明の更なる実施形態によると、紫外線照射中にミラーを振動させて、基板の均一な照射を達成する。
【0016】
以下、例を用いて本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】基板照射モードにおける本発明に係る照射装置を示す。
【
図3】供給モードにおける本発明に係る照射装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2には、輸送機構3を備えた本発明に係る照射装置1が示されていて、その機構のキャリアは、二重スピンドルキャリアによって実現されている。スピンドル5、7の上に、硬化される基板が提供されるが、明確性のため図示されていない。この例では、照射装置1は、紫外線(破線の矢印)並びに可視光及び赤外線を発生させる二つの放射源9、11を備える。以下、可視光及び赤外線をまとめて、熱の多い(warmereiche)放射線(W放射線)(実線の矢印で示される)と指称する。放射源9、11は、例えば、偏向されていない光線が単一平面内で互いに交差するような向きにされる。この交差平面内に、紫外線及びW放射線を吸収する吸収プレート17が設けられる。好ましくは、二つの放射源9、11は、吸収プレートが存在しないと仮定した場合に、互いを照らし合うような向きにされる。
【0019】
放射源から吸収プレートまでの光線経路内に、それぞれ波長選択ミラー13、15が設けられる。これらミラーは、放射源の光軸に対して45°傾斜されて、放射線が元々の光線経路に対して90°で反射されるようになる。ミラー13、15は紫外線を反射して、W放射線の実質的な部分、好ましくは大部分を透過させる。このようなミラーは、例えば、光干渉フィルタによって実現可能である。ミラー基板(一般的なBK7ガラスを備え得る)の片面に、紫外線反射体及びW放射線透過体を設けて、他方の面に広帯域反射防止コーティングを設けることが特に有利である。これらはどちらも、干渉性を示す薄い多重層を用いて実現可能である。
【0020】
スピンドル5、7は、90°偏向した紫外線の光線経路内に置かれる。従って、放射源9、11がオンの間、W放射線は偏向されず、ミラー13、15を通り抜けて、吸収プレートに向かう。逆に、紫外線は、ミラーでの反射によって、スピンドルの上に配置された基板に導かれる。スピンドルは一般的に回転スピンドルによって実現されて、紫外線照射中に光が当たる領域へと各基板を回転させることができる。この例では、ミラー13、15は、ミラー表面の垂線とは異なる軸であって反射された放射の光軸及び偏向されていない放射の光軸によって画定される平面内に在る軸の周りにおいて小さな振幅(例えば1°)で振動する。これによって、紫外線放射の均一性が上昇する。
【0021】
紫外線照射を終了させるため、ミラー13、15を、偏向されていない放射の光軸がミラー表面と平行になる向きに回転させる。これは、好ましくは、動かされていない放射源の光線経路の外に位置する軸の周りで実現される。このようにして、紫外線の大部分が偏向されず、吸収プレートに向けて伝播し、そこで吸収されるようになる。この状況が
図3に示されている。この状況では、既に紫外線照射されたスピンドルが、輸送機構によって除去されて、更なる照射が行われる新たなスピンドルを照射領域に輸送することができる。ミラーを元々の向きに回転させて戻して、新たな照射シーケンスを開始する。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、開示される照射装置は、
‐ 紫外線及びW放射線(つまり、可視光及び/又は赤外線)を放出する少なくとも一つの放射源と、
‐ 照射される基板を供給するための輸送機構と、
‐ 45°の角度において、紫外線を反射してW放射線を透過させる少なくとも一つの波長選択フィルタと、
‐ 波長選択フィルタによって偏向されないW放射線の光線経路内の伝播方向における光フィルタの下流に位置する赤外線吸収手段とを備え、
赤外線吸収手段が、可視光及び紫外線吸収手段としても構成されていること、及び、その照射装置が、放射源の光線経路の中及び外に波長選択フィルタを移動させるための移動手段を備えることを特徴としている。
【0023】
移動手段は、光線経路の外に位置する軸の周りでのフィルタの回転を可能にするように実現され得る。
【0024】
波長選択フィルタは干渉フィルタとして実現され得る。例えば、フィルタ基板の片面にのみ、紫外線反射層システムを設けて、フィルタ基板の他方の面に、W放射線用の反射防止層を設け得る。
【0025】
開示される紫外線を基板に照射するための方法は、
‐ 紫外線及びW放射線を放出する放射源を提供するステップと、
‐ W放射線を波長選択フィルタを通して透過させ、紫外線を波長選択フィルタにおいて反射させることによって、紫外線をW放射線から分離するステップと、
‐ 波長選択フィルタによって偏向されなかった放射線を吸収する吸収手段を提供するステップと、
‐ 基板を紫外線照射用の領域に供給するステップと、
‐ 紫外線が照射された基板を除去するステップと、を備え、
基板の供給及び/又は除去の間において紫外線が波長選択フィルタによって反射されず吸収手段に当たりその手段で吸収されるように、基板の供給及び/又は除去の前に波長選択フィルタの局所的な向き及び/位置が変更される。
【0026】
本方法では、フィルタが、基板の供給及び/又は除去の間において光線経路から実質的に外される。
【0027】
フィルタを、光線経路の外に位置する軸の周りでの回転によって、その光線経路の外に移動させ得る。本方法を、複数回にわたって、時間制御された動作で行うことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 照射装置
3 輸送機構
5、7 スピンドル
9、11 放射源
13、15 波長選択ミラー
17 吸収プレート