特許第6284537号(P6284537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アーカンソーの特許一覧

特許6284537新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム
<>
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000003
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000004
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000005
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000006
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000007
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000008
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000009
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000010
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000011
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000012
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000013
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000014
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000015
  • 特許6284537-新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284537
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】新規粘膜アジュバントおよびデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20180215BHJP
   A61K 39/112 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/108 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/10 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/08 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/085 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/09 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/07 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/102 20060101ALI20180215BHJP
   A61K 39/012 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   A61K39/39
   A61K39/112
   A61K39/108
   A61K39/10
   A61K39/08
   A61K39/00 J
   A61K39/085
   A61K39/09
   A61K39/07
   A61K39/102
   A61K39/012
   A61K39/00 H
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-539892(P2015-539892)
(86)(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公表番号】特表2015-535259(P2015-535259A)
(43)【公表日】2015年12月10日
(86)【国際出願番号】US2013067212
(87)【国際公開番号】WO2014070709
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】61/719,713
(32)【優先日】2012年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500467264
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アーカンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100162422
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 将
(72)【発明者】
【氏名】ハージス ビリー エム
(72)【発明者】
【氏名】パムフォード ニール アール
(72)【発明者】
【氏名】モーガン マリオン
(72)【発明者】
【氏名】シバランアイア スリチャイタンヤ
(72)【発明者】
【氏名】テレス ギレルモ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフェンデン アマンダ
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−510223(JP,A)
【文献】 特表2007−537722(JP,A)
【文献】 特表平05−504554(JP,A)
【文献】 特開2012−140470(JP,A)
【文献】 特開2010−065027(JP,A)
【文献】 特開2009−263266(JP,A)
【文献】 Biomaterials,2008年,Vol.29,p.1931-1939
【文献】 Journal of Controlled release,2007年,Vol.121,p.200-207
【文献】 Carbohydrate Polymers,2011年,Vol.85,p.37-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
A61P 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キトサンに結合してシッフ塩基を形成した炭水化物を含むジュバント組成物と、抗原とを含むワクチン配合物であって、前記炭水化物が開環型マンノース部分である、経口投与用に配合されている前記ワクチン配合物
【請求項2】
前記シッフ塩基が還元されていない、請求項1に記載のワクチン配合物
【請求項3】
前記シッフ塩基が還元されている、請求項1に記載のワクチン配合物
【請求項4】
増強分子をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1に記載のワクチン配合物
【請求項5】
前記増強分子が、サポニン、Toll様受容体、細菌毒素Bサブユニット、細菌毒素、CpGモチーフ、リポソームまたはモノホスホリル脂質Aである、請求項4に記載のワクチン配合物
【請求項6】
前記増強分子が、破傷風トキソイド、コレラ毒素Bサブユニット、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニットまたはトリポリホスフェートである、請求項4に記載のワクチン配合物
【請求項7】
記抗原が微生物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のワクチン配合物。
【請求項8】
前記微生物が、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、シゲラ(Shigella)、ボルデテラ(Bordetella)、クロストリジウム(Clostridium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バチルス(Bacillus)、インフルエンザ(Influenza)またはアイメリア(Eimeria)である、請求項7に記載のワクチン配合物。
【請求項9】
前記微生物が不活化されているか、または死滅されている、請求項7または8に記載のワクチン配合物。
【請求項10】
前記微生物が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドまたはホルマリンを用いて死滅されている、請求項9に記載のワクチン配合物。
【請求項11】
前記抗原に対する被験者の免疫応答を増強するためのものであって、かつ前記被験者に投与されるものである、請求項110のいずれか1項に記載のワクチン配合物
【請求項12】
前記免疫応答が、アジュバントなしのワクチンの投与と比較して増強された抗体応答を含む、請求項11に記載のワクチン配合物
【請求項13】
前記増強された抗体応答が、アジュバントなしのワクチンの投与と比較して増強された分泌IgA抗体応答である、請求項12に記載のワクチン配合物
【請求項14】
前記被験者が哺乳動物または家禽である、請求項1113のいずれか1項に記載のワクチン配合物
【請求項15】
投与経路が口である、請求項1114のいずれか1項に記載のワクチン配合物
【請求項16】
物または飲料水で投与される、請求項1115のいずれか1項に記載のワクチン配合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2012年10月29日出願の米国仮特許出願第61/719,713号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
アジュバントは、薬物またはワクチンなどの他の薬剤の効果を改変する薬理学的物質または免疫物質である。アジュバントは、多くの場合、供給される抗原に対するレシピエントの免疫応答を増強し、注入される外来物質を最小に抑えるためにワクチンに含まれる。
【0003】
アジュバントは、本来、免疫を付与しない。アジュバントは、免疫系への抗原の提示においてさまざまに機能することができる。アジュバントは、長期にわたって抗原を提示し、それと共に身体が抗原を除去する前に免疫応答を最大限にするための、抗原のデポ剤として機能することができる。デポ剤型アジュバントの例には、フロイントアジュバントなどのオイルエマルションがある。アジュバントはまた、身体にその免疫応答を動員させそれを増幅させる刺激物として機能することもできる。例えば、破傷風・ジフテリア・百日咳ワクチンは、標的細菌のそれぞれによって産生される少量の毒素ばかりでなく水酸化アルミニウムもまた含む。アルミニウム塩は、アメリカ合衆国で販売されているワクチンに汎用されるアジュバントであり、70年以上にわたってワクチンに用いられてきた。
【0004】
キトサンは、ランダムに分布するβ-(1-4)-結合型D-グルコサミン(脱アセチル化ユニット)およびN-アセチル-D-グルコサミン(アセチル化ユニット)から構成される直鎖状多糖である。キトサンは、シュリンプおよび他の甲殻類の殻をアルカリの水酸化ナトリウムで処理することによって製造される。キトサンは経口ワクチンおよび皮下ワクチンの両方で担体として用いられてきており、ある程度の成功を収めている。本明細書において、我々は、従来用いられてきたアラムアジュバントよりもアジュバントとしてよく機能することを示す新規なキトサンベースのアジュバント製剤を提供する。特に、本明細書で提供されるキトサンベースのアジュバントは、IgA応答を刺激するのに有効であった。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、アジュバント、前記アジュバントを含むワクチン配合物(vaccine formulation)、前記アジュバントの製造方法ならびに前記アジュバントおよびワクチン配合物の使用方法が提供される。特に、キトサンと抗原はアルデヒドを用いて架橋させることができる。一側面において、アルデヒドで架橋されたキトサンおよび抗原を0.5%〜2%含む組成物が提供される。ワクチン組成物に含まれるアルデヒドの最終濃度は0.5%未満である。
【0006】
他の側面において、キトサンに結合してシッフ塩基を形成した炭水化物を含むアジュバント組成物が提供される。該アジュバントは抗原と混合することができる。該炭水化物はマンノースであることができる。
【0007】
さらに他の側面において、ワクチン配合物が提供される。ワクチン配合物は、本明細書で提供されるアジュバントおよび抗原を含むことができる。抗原は、タンパク質または天然の微生物であることができる。適切な微生物は、細菌、酵母または他の真菌、真核寄生虫およびウイルスを含み、それらは、弱毒化、組換え、死滅または別の方法で不活化されることができる。
【0008】
さらに他の側面において、アジュバントおよびワクチン組成物の製造方法が本明細書で提供される。キトサンを酢酸溶液に溶解し、溶解されたキトサンに抗原を加える。最後に、抗原およびキトサンに、アルデヒドを、アルデヒドの最終濃度が0.02%〜0.5%になるように混合する。遊離アルデヒドをクエンチし、より安定なアジュバントを得るために、アジュバントにトリスを加えることができる。
【0009】
さらに他の側面において、抗原に対する被験者の免疫応答を増強する方法が提供される。本方法は、抗原および本明細書に開示されたキトサンベースのアジュバントを含むワクチン配合物を被験者に投与することを含む。キトサンベースのアジュバントは、アルデヒド架橋キトサンまたは炭水化物結合型キトサンであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】示されたワクチン-アジュバント製剤での、一次ワクチン接種およびブースト後のシチメンチョウにおける抗β-ガラクトシダーゼIgG抗体応答を示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図2】示されたワクチン-アジュバント製剤での一次ワクチン接種およびブースト後のシチメンチョウにおけるクロストリジウム・セプチクムIgG抗体応答を示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図3】示されたバチルスをベクターとする鳥インフルエンザワクチン-アジュバント製剤でのワクチン接種およびブースト後の種々の時点でのニワトリにおけるIgG(図3A)及びIgA(図3B)抗体応答を示すグラフである。
図4】競合的ELISAを用いて測定した、一次ワクチン接種およびブースト後の、示されたワクチン-アジュバント製剤でのサルモネラに対するIgG抗体レベルを示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図5】競合的ELISAを用いて測定した、一次ワクチン接種およびブースト後の、示されたワクチン-アジュバント製剤でのサルモネラに対するIgA抗体レベルを示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図6】競合的ELISAを用いて測定した、一次ワクチン接種およびブースト後の、示されたワクチン-アジュバント製剤でのサルモネラに対するIgG(図6A)及びIgA(図6B)抗体レベルを示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図7】一次ワクチン接種22日後(チャレンジ3日後)における、肝臓/脾臓(L/S)または盲腸扁桃(CT)におけるサルモネラの回収率を示すグラフである。ワクチン接種プロトコルは、図6で用いたものと同じものを用いた。*はP<0.05を示す。
図8】競合的ELISAを用いて測定した、示された投与経路による、示されたワクチン-アジュバント製剤での一次ワクチン接種およびブースト(12日目)後の、22日目におけるサルモネラに対するIgA抗体レベルを示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図9】競合的ELISAを用いて測定した、示されたワクチン-アジュバント製剤でのひなのワクチン接種後の、サルモネラに対するIgG免疫応答を示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図10】競合的ELISAを用いて測定した、示されたワクチン-アジュバント製剤での、ひなのワクチン接種後の、サルモネラに対するIgA免疫応答を示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図11】示されたワクチン-アジュバント製剤での、シチメンチョウの単回非経口ワクチン接種後の、ボルデテラ・アビウムに対するIgG免疫応答を示すグラフである。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
図12】孵化日のシチメンチョウの、示されたワクチン-アジュバント製剤での皮下ワクチン接種に続く、14日目での同じワクチン-アジュバント組み合わせの飲料水投与後の、ボルデテラ・アビウムに対するIgG免疫応答を示すグラフである。応答は21日目に測定した。種々の文字は有意差(p≦0.05)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書において、キトサンを含むアジュバント、前記アジュバントを含むワクチン配合物、前記アジュバントの製造方法ならびに前記アジュバントおよびワクチン配合物の使用方法が提供される。要約すれば、非経口剤(注射剤)などに用いられる他のアジュバントと同様な方法に用いることができる新規アジュバント系が本明細書に記載される。基本分子はキトサンを含む。キトサンは、多くの無脊椎動物(シュリンプ、カニ、昆虫など)の外骨格であるキチンの脱アセチル化体である。キトサンは一般に安全と考えられる(GRAS)化合物とみなされ、体重減少、コレステロール低下、不眠症および腎機能改善に用いられている。キトサンはまた、種々の粘膜ワクチンにアジュバントとして用いられているが(Jabbal-Gill et al., 2012)、本明細書に記載のキトサンは新規であり、実施例に示すように、従来のキトサンよりも機能が優れている。
【0012】
ホルムアルデヒドで架橋されたキトサン-タンパク質および炭水化物結合型キトサンは、ワクチン抗原の経口または非経口送達のための特有のアジュバントを提供する。キトサンは、経口および皮下ワクチンの両方の担体として用いられてきている。一部の製剤では、ホルムアルデヒドによる処理によってキトサンが抗原に共有結合しているものもある。他の製剤では、抗原提示細胞上のマンノース受容体を標的化し、それによってキトサン-抗原複合体に対する免疫応答を増強するために、キトサンに結合した炭水化物(マンノース、フコースおよびガラクトース)を加えることによってアジュバント系が改善されているものもある。ホルムアルデヒドで架橋されたキトサン-タンパク質およびマンノシル化キトサンタンパク質複合体の両方とも、非経口および経口(または他の粘膜)送達経路の両方でロバストな免疫応答を引き起こすが、これは不活化ワクチンでは、他では見られない。
【0013】
一側面において、キトサンに結合してシッフ塩基を形成した炭水化物を含むアジュバント組成物が提供される。前記アジュバントは抗原と混合することができる。炭水化物は、マンノース、マンノビオース、グルコース、ガラクトースまたはフルクトースであることができる。他の適切な炭水化物を用いることもできる。理論に拘束されるものではないが、抗原提示細胞の表面上のこれらの炭水化物の受容体に対してキトサンを標的化する目的で炭水化物がキトサンに添加される。
【0014】
本明細書で用いられる炭水化物-キトサンは、以下の実施例でさらに詳細に説明されるように製造される。我々の方法は、キトサンのアミノ基と反応してシッフ塩基を形成する利用可能なカルボニル基を有する開環型の炭水化物を用いるJayasree (Jayasree et al., 2011)に基づく。このシッフ塩基は、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH4)を用いる還元によって安定化されることができる。キトサンの還元型(Man-C V1)と非還元型(Man-C V2)が比較されている図6において、この還元が免疫強化には必要ではないことが示された。非還元型は、最も強いIgA応答を引き起こした。従って、どちらの型も使用することができる。さらに、マンノシル化キトサンの非還元型は、毒性化学物質(NaCNBH4)の添加を必要としない。簡潔に言えば、炭水化物、適切にはマンノース(10μM)を、pH4.0、60℃で2時間、0.1M酢酸ナトリウムに溶解し、キトサン(0.2〜2%)を1.5%酢酸に溶解する。次いで、溶解されたマンノースと溶解されたキトサンとを混合し、室温でインキュベートし、キトサンのアミン基と糖のカルボニルとを反応させてシッフ塩基を形成させる。シッフ塩基の還元は、アジュバントが機能するのに必要ではなく、実際、非還元型シッフ塩基がより優れたアジュバントであることを実施例は示している(図6参照)。他の実施形態において、シッフ塩基は還元型であることができる。
【0015】
他の実施形態において、アルデヒドを用いてキトサンと抗原とを架橋させることができる。一側面において、組成物は、アルデヒドで架橋されたキトサンおよび抗原を0.5%〜2%含む。最終ワクチン配合物は、適切には、キトサンを0.5〜1.5%含む。アジュバントは、キトサンを0.5%〜3%、適切にはキトサンを0.5%〜2%、適切にはキトサンを0.5%〜1.5%、適切にはキトサンを0.5%〜1.2%含むことができる。ワクチン組成物に含まれるアルデヒドの最終濃度は、適切には0.5%未満である。アルデヒドの最高濃度は、ワクチンに許容される残留アルデヒドの最高レベルに基づく。キトサンを架橋するために、より高いレベルのアルデヒドを用いることができるが、最終ワクチン配合物は、適切には、0.5%未満のアルデヒドを含む。実施例において、キトサンを架橋するためのアルデヒドとしてホルムアルデヒドを用いた。他のアルデヒド、例えばホルマリン、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドまたはブチルアルデヒドもまた用いることができる。これらのアルデヒドは、キトサンのアミノ基と他のキトサン分子または抗原のアミノ基とを架橋する。
【0016】
本明細書において、アルデヒドで架橋されたキトサンおよび抗原を含むワクチン配合物の製造方法もまた提供される。本方法は、キトサンを酢酸溶液に溶解することを含む。本方法において、炭水化物結合型キトサンもまたキトサンとして使用することができる。適切には、酢酸は、最終濃度1.5%の水溶液で用いるか、または水1Lに酢酸15mLを溶解して用いる。適切には、キトサンの量は0.5%〜2%であり、適切には0.5%〜1.5%である。溶解されたキトサンに適切なレベルで抗原を加える。当業者は、ワクチン配合物に用いられる抗原の量および型を決定することができる。最後に、抗原およびキトサンに、アルデヒドを、アルデヒドの最終濃度が0.02%〜0.5%になるように混合する。アルデヒドは、キトサンと他のキトサン分子とを化学的に架橋することもできるし、キトサンと抗原とを化学的に架橋することもできる。遊離アルデヒドをクエンチするためにトリス-HClを加えることができる。最終濃度0.5g/Lまでトリスを加えることができる。
【0017】
本明細書に開示されたいずれのアジュバント組成物も、サポニン、Toll様受容体、細菌毒素Bサブユニット、細菌毒素、破傷風トキソイド、CpGモチーフ、リポソームまたはモノホスホリル脂質Aを含むがこれに限定されない増強分子と組み合わせることができる。適切には、増強分子は、免疫系のさらなる刺激因子として機能し、被験者へのワクチン配合物の投与後に生じる免疫応答を増強する。
【0018】
本明細書で提供されるワクチン配合物は、本明細書に記載のキトサンベースのアジュバントおよび抗原を含む。抗原は、当業者に利用可能な任意の抗原であることができる。タンパク質、合成ペプチド、担体にコンジュゲートしたペプチドまたは微生物などの抗原をワクチンに用いることができる。微生物は、細菌、酵母、寄生虫、真菌、ウイルス、蠕虫類または他の病原体を含む。微生物は、生菌、死菌、弱毒化微生物、組換え微生物または不活化微生物を含む。微生物の例は、限定するものではないが、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、シゲラ(Shigella)、ボルデテラ(Bordetella)、クロストリジウム(Clostridium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バチルス(Bacillus)、インフルエンザ(Influenza)およびアイメリア(Eimeria)を含む。微生物は、使用前に、加熱、メタノールまたは他の固定液、例えばホルムアルデヒドもしくは他のアルデヒドによる処理によって不活化または死滅させることができる。アルデヒドは、最終濃度0.5g/Lまでのトリス-HClのその後の添加によってクエンチすることができる。適切な抗原は、インフルエンザM2e、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼまたは核タンパク質;アイメリアTRAP(Eimeria TRAP)またはMPP;クロストリジウム(Clostridium)シアリダーゼ、SagA、α毒素、NetB毒素または鉄輸送タンパク質などのペプチド抗原を含むこともできる。他のペプチド抗原の例は、少なくとも、米国特許出願第12/441,851号;第12/740,631号;第12/740,608号;第13/574,504号;および第13/702,827号において見出すことができる(それらは全て参照により本願に組み込まれる)。すでに入手可能なワクチン、新規に開発されたワクチンまたは自家ワクチンに対する免疫応答を増強させるためにキトサンベースのアジュバントを用いることができる。
【0019】
本研究に関連するワクチン接種には、2つの著明な改善が認められる。第1に、不活性ワクチンと改変キトサンとを非経口経路で共投与するとき、最小限の注射部位反応と共に、アラムなどの他のアジュバントで認められる免疫応答よりも優れた免疫応答が認められる。多くのアジュバントは、注射部位で炎症反応を引き起こすことによって、あるいは注射部位からの吸収を遅延させることによって機能する。従来のアジュバントの欠点の1つは、それらが多くの場合、何らかの反応または苦痛を引き起こし、場合によっては、それらが、屠殺時に食肉動物の等級低下または削減を引き起こす持続性の病変を引き起こすからである。改変キトサンは、他のワクチンアジュバントに関連したこれらの懸念を軽減することができる。改変キトサンは安価に製造でき、市販ワクチンへの製造が容易である。
【0020】
さらに、死滅抗原が強制給餌または飲料水への組み入れのいずれかで経口投与される場合、ロバストな免疫応答が引きこされるであろう。このことは、実際、家畜、特に家禽にとって重要である。なぜなら、注射剤の取り扱いには大きな労働力を要し、鳥または他の動物にストレスを引き起こすからである。大型養豚場を除いては、投与費用のため、家禽に不活化ワクチンを使用するのは一般に高価すぎる。ワクチンを経口で送達できることによって、動物にワクチン接種可能な方法が変化する。集団投与のための生(改変生ワクチンまたは弱毒ワクチンと呼ばれる)には2つの大きな利点がある。第1に、飲料水投与またはスプレー投与によって集団投与することができる。第2に、これらの生ワクチンは、局所粘膜(大部分の病原体が感染する気道および腸管)において免疫を生じさせる。このように、死滅ワクチンまたは生ワクチンのいずれも疾患を防御することができるが、生ワクチンは、歴史的にみて実際の感染症の予防により有効であり、従って好ましい。
【0021】
死菌ワクチンは、感染症および疾患を引き起こすリスクがほとんどなく、迅速に製造することができるという大きな利点を有する。死菌ワクチンは、疾患を引き起こす親タイプに遺伝的に変化することができず、死菌ワクチンは、これらの理由から、規制問題はあまりない。同様に、規制された/認可されたワクチンを開発するのにワクチン会社にとって十分に一般的でない多数の、増え続ける希少疾患が存在する。起源鶏群(または動物もしくはヒト集団)に用いるための、死滅させた、特に対象とする病原体から製造した“自家”ワクチンを製造するための米国法(および多くの他の国々)における規定がある。発展途上国においては、入手可能ではない、あるいは地域的に製造するのに、または発生に十分に速く対処するのに技術的に不可能なワクチンを必要とする希少疾患が存在する。本明細書で提供されるアジュバントは入手可能であり、製造するのに技術的に簡単である。本明細書で提供されるアジュバントは死滅または不活化微生物と混合して容易にワクチンを製造することができる。
【0022】
本明細書に記載の技術のためのいくつかの潜在的な用途がある。死菌ワクチンに対する全身反応は、注射のためのアジュバントとして改変キトサンを組み込むことによって改善することができる。このアジュバントプラットフォームを含む死菌ワクチンの経口投与によって多くの疾患を予防することができる。このアジュバントプラットフォームは、経口投与されるとき、全身および/または粘膜反応を刺激することを目標とすることができる。このことは、このアジュバントプラットフォームが、生ワクチンの利点の多くを有しながら、前述の生ワクチンの問題を回避することを意味する。
【0023】
本明細書に記載のアジュバントおよびワクチン配合物は、他の薬学的に許容される担体と組み合わせることができる。薬学的に許容される担体は、in vivo投与に適した任意の担体である。組成物に使用するのに適した薬学的に許容される担体の例は、限定するものではないが、水、緩衝液、グルコース溶液、オイルベース流体または細菌培養液を含む。組成物の追加の成分は、適切には、例えば賦形剤、例えば安定剤、防腐剤、希釈剤、乳化剤および滑沢剤を含むことができる。薬学的に許容される担体または希釈剤の例は、安定剤、例えば炭水化物(例えばソルビトール、マンニトール、デンプン、ショ糖、グルコース、デキストラン)、タンパク質、例えばアルブミンまたはカゼイン、タンパク質含有薬剤、例えばウシ血清またはスキムミルクおよび緩衝液(例えばリン酸緩衝液)を含む。特に、このような安定剤が組成物に添加されるとき、該組成物は凍結乾燥または噴霧乾燥に適している。組成物は乳化されることもできる。
【0024】
本明細書に記載の組成物は、他の医薬組成物と組み合わせることもでき、これらの組成物は、任意の順序で、同時にまたは単一組成物の一部として投与することができる。1つの組成物がもう1つの組成物とは投与時間が1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、16時間、20時間、1日、2日、4日、7日、2週間、4週間またはそれ以上異なるように2つの組成物を投与することができる。
【0025】
本明細書においては、ワクチン配合物の有効量または治療的有効量は、標的疾患に対する被験者の免疫応答を増強するために被験者に投与されるとき、免疫応答、例えば、標的疾患への感染または暴露に関連する罹患率・死亡率を抑制するための細胞性または抗体性免疫応答を増強することができる組成物の量を意味する。適切には、免疫応答は、投与が、罹患率・死亡率を治療または予防するのに十分なレベルまで増強される。治療的有効量は、ワクチン配合物または組成物、疾患およびその重症度ならびに年齢、体重、身体状態および被験者の反応性に応じて変化する。例えば、ワクチン接種に応答して産生される抗体のレベルは、アジュバントを含まないまたはアジュバントとしてアラムを含む同じ抗原の投与と比較して、本明細書に記載のアジュバントの組み入れによって、2倍以上、3倍以上または4倍以上増強させることができる。増強される免疫応答は、IgA応答またはIgG応答であることができる。アジュバントはまた、その後の感染症に関連する罹患率・死亡率の減少をもたらすこともできる。実施例に示すように、抗原と組み合わせた本明細書に記載のアジュバントの使用は、抗原単独でのワクチン接種または抗原および異なるアジュバントでのワクチン接種と比較して、抗原が免疫応答を誘発する微生物によるその後の感染症の割合の軽減またはその後の感染症の重症度の軽減をもたらすことができる。感染症の重症度は、侵入部位を超えて組織に侵入する微生物の能力、経時的に生体内で複製するかつ/または持続する微生物の能力あるいは罹患率・死亡率を引き起こす微生物の能力によって測定することができる。ワクチン接種動物は、続いて、病原体に感染する可能性がある。このような場合には、チャレンジ後の被験者における病原体の増殖は、対照を投与した被験者と比較して、ワクチンを投与した被験者において、少なくとも1log10、2log10またはさらには3log10に減少する。
【0026】
本明細書に記載の組成物は、限定するものではないが、経口、鼻腔内、腹腔内、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、上咽頭または経粘膜吸収を含む当業者に公知の任意の手段によって投与することができる。従って、本化合物は、経口摂取剤、スプレー剤または注射剤として製剤化することができる。例えば、経口投与は、飲料水への添加、食物へのスプレー、動物(例えば、羽づくろいするときにスプレーのワクチンを摂取するニワトリまたはシチメンチョウ)へのスプレーを含むことができる。被験者は、ヒト、ウシ、ブタ、ネコ、イヌもしくは他の家畜を含む哺乳動物または非哺乳動物、例えば家禽、すなわちニワトリまたはシチメンチョウであることができる。
【0027】
投与される特定の用量および、任意の所定の場合における投与のタイミング(すなわち一次ワクチン接種およびブースト)は、投与される製剤、標的の疾患、暴露のリスク、被験者の状態および被験者の応答を変える可能性のある他の関連性のある医学的要因または被験者に製剤を投与する実現可能性に従って調整されることは明らかであろう。例えば、被験者のための特定の用量は、被験者のタイプ、年齢、体重、一般健康状態、食事、タイミングおよび投与方法、排泄率、組み合わせに用いられる医薬ならびにワクチンが標的とする特定の障害の重症度に左右される。最初のワクチン接種およびブーストは、異なる手段で投与することができる。例えば、最初のワクチン接種には皮下経路を用い、ブーストには、飲料水または食物にアジュバント-抗原複合体を組み入れることができる。ワクチン配合物に含まれるキトサンの百分率は一般に0.2〜2%であり、適切には0.5〜1.5%である。投与されるキトサンの総量は、ワクチン接種あたり1mg未満〜100mgであり、適切にはキトサン2、4、5、6、8、10、12、14、16、18、20、25、50、75または100mgであることができる。以下の実施例において、1用量当たりキトサン2〜5mgを用いた。微生物抗原と組み合わされる場合、該微生物は1用量当たり、1x106〜1x109個の微生物が含まれることができる。本実施例において、1用量当たり、1x107〜1x108個の微生物を用いた。抗原は、1用量当たり10μg〜10mg含まれることができる。本実施例において、1用量当たり100μgを用いた。
【0028】
以下の実施例は、例示としてのみ解釈されるものであって、本発明の範囲または添付の特許請求の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用したすべての参考文献は、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【実施例】
【0029】
実施例1:一次ワクチン接種およびブースト後のβ-ガラクトシダーゼに対する免疫応答
ホルムアルデヒドで架橋されたキトサン-タンパク質ワクチンを試験するための我々の最初の実験には、モデルタンパク質として古典的タンパク質であるβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)を用いた。以下の表1の記載に従って、処置群6匹および対照1匹を用いて、シチメンチョウのひなにβ-Galでワクチン接種した。孵化日に、非経口皮下(sq)注射で、ひなに、生理食塩水または、15%アラム、1%キトサン(ホルムアルデヒド(Form)で架橋)(3群)もしくは1.5%キトサン(ホルムアルデヒドで架橋されてない)のいずれかに含まれるβ-Gal100μg(0.25ml)でワクチン接種した。1%キトサン群の内の2匹を除くすべての群を14日目および25日目に同じ製剤でsqブーストした。両方の日に、1%キトサン群の内の2匹の内の1匹は、強制経口投与によって1%キトサン-β-Galでブーストし、もう1匹は、1%キトサン-β-Gal(2mL)でスプレーによってブーストした。
【0030】
β-ガラクトシダーゼに対するELISAで、血清を用いてβ-ガラクトシダーゼに対する免疫応答を測定した。結果を図1に示す。間接ELISAにより、吸光度の試料対陽性対照比として免疫応答レベルを記録する。より大きなS/P比は、より高い抗β-ガラクトシダーゼ抗体価を示す。生理食塩水をワクチン接種されたシチメンチョウからの血清を用いたELISAでは、ほとんど交差反応性は認められなかった。β-Galを含む生理食塩水でワクチン接種されたときに、わずかに小さな数字上の増加が見られる。現在用いられている通常の市販アジュバントは15%アラムであり、これを用いたとき、優れた免疫応答が認められた。我々のキトサン免疫増強ホルムアルデヒド架橋ワクチン系(1%キトサンと呼ぶ)を用いたとき、モデル抗原であるβ-Galに対する免疫応答の有意な増加が見られた。キトサン単独を用いたとき、より高い1.5%の濃度であっても、著しく低い免疫応答が見られた。さらに、スプレーまたは経口処置を用いて1%キトサン-ホルムアルデヒド処理アジュバントで抗原をブーストしたとき、皮下に投与した標準アジュバントである15%アラムに匹敵する応答が見られた。
【0031】
表1:処置群
【0032】
実施例2:種々のアジュバントでのワクチン接種後のクロストリジウムに対する免疫応答
4X108cfu/mlクロストリジウム・セプチクム(Clostridium septicum)バクテリン(CS)を含むアラムまたはホルマリン架橋キトサンのいずれか単独で、あるいは12%アラムもしくは0.5%ホルマリン架橋キトサンと組み合わせて、鳥1匹あたりの最終用量が1X108cfu/鳥になるように、孵化日のシチメンチョウのひなの皮下(0.25mL)に投与することによって、上記の実験と同様な実験を行った。同じ経路を用い、同じワクチンですべての鳥を14日目にブーストした。得られた免疫応答のレベルを間接ELISAアッセイによって測定し、吸光度の試料対陽性対照(S/P)比で記録した。より大きなS/P比は、より高い抗CS抗体を示す。
【0033】
アジュバントなしのワクチンを投与された鳥は、図2に示すように、S/P比が0.16の、ELISAで検出可能な抗体応答を生じた。この抗体レベルは、アラムをアジュバントとして含むCSの抗体レベルとは統計的有意差がなかった。1回のブースト後(一次ワクチン接種の14日後)、0.5%ホルマリン架橋キトサンをアジュバントとして含むCSバクテリンでワクチン接種されたひなは、アジュバントなしのCSバクテリンのS/P比のおおよそ倍のS/P比(それぞれ0.4および0.16)をもたらすIgGレベルを示した。水酸化アルミニウムアジュバントを含むCSバクテリンは、S/P比(それぞれ0.27および0.4)で比較して、キトサンを含むCSで誘導されるIgGレベルよりもおおよそ30%低いIgGレベルを誘導した(図2参照)。重要なことに、キトサン投与により、72時間(またはそれ以後)において、注射部位の病変は著しくないのに対し、アラムは常に局所炎症および肉芽腫を生じ、多くの場合、これらは被包性の瘢痕組織になる。
【0034】
実施例3:鳥インフルエンザワクチン接種実験
鳥インフルエンザ(AI)は、重大な公衆衛生上の懸念であり、世界中に存在する商業家禽産業に対する重大な経済的脅威である。我々の以前のデータでは、CD154と関連するM2eを発現するサルモネラをベクターとするワクチンはAIに対して有効であるであることを示唆している。ベクターとしてのバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)およびM2eエピトープを用いる新規構築物を免疫刺激分子と共に試験した。孵化後11日目、15日目および21日目にELISAによってM2e特異的血清IgGおよび粘膜IgA抗体レベルを測定した。孵化日に、強制経口投与または皮下注射のいずれかを用い、野生型バチルス(BSBB)、生ワクチンとしての、バチルスをベクターとする鳥インフルエンザワクチン(BSAI)、ホルマリン不活化後のBSAI、ホルマリン不活化、凍結乾燥および生理食塩水での再構成後のBSAI、またはホルマリン不活化および1%キトサンでの架橋後のBSAIのいずれかでひなをワクチン接種した。各ワクチンを、106cfu/ひなで、0.25mlまたは0.25ml生理食塩水に含ませて投与した。孵化10日目に、2つの群(BSAI生、BSAI不活化および凍結乾燥)のひなに、0日目に行ったものと同じ処置のブースターワクチン接種を行い、他の群はすべて、二次のワクチン用量を投与しなかった。
【0035】
次いで、孵化11日目、15日目および21日目に、すべての群の鳥から血清IgGおよび粘膜IgA試料を採取し、抗体捕捉ELISAに用いた。BSAにコンジュゲートしたM2e(10μg/ml)でプレートをコーティングし、ブロックし、2%FBS/PBSで1:50に希釈した処置群のそれぞれからの血清と共にインキュベートし、次いで、1:7,500に希釈したHRP標識二次抗体でインキュベートし、TMB基質を用いて発色させた。結果を平均S/P比(試料平均−陰性対照平均)/(陽性対照平均−陰性対照平均)+SEM(n=20)で示す。
【0036】
バチルス骨格対照(BSBB)と比較したとき、試験した各時点において、各ワクチン接種群でM2e特異的IgG抗体応答の有意な増加が見られた。しかしながら、IgG抗体応答が増加した6つのワクチン接種群のいずれかの間で各時点において観察された違いはなかった(図3A参照)。粘膜IgA特異的抗体応答に注目すれば、免疫応答における実際の違いは明らかである(図3B参照)。BSAI+1%キトサンは、サンプリングされた3つすべて時点で、対照またはワクチン接種を行った追加の5つの処置群と比較して、特異的IgA抗体応答の顕著な増加を示した。
【0037】
まとめれば、架橋キトサンを用いた実験において、キトサンのこの改変は、非経口および経口経路の両方を通じて、水酸化アルミニウムよりも優れたアジュバントであることを我々は明らかにした(図1および2)。架橋剤としてホルムアルデヒドを用いるキトサン処理は、ホルムアルデヒド無処理のキトサンよりも有効であることが示された(図1)。経口で用いたとき、キトサンは、IgGの産生(図3A)よりもIgAの産生(図3B)を選択的に増強した。
【0038】
実施例4:キトサンアジュバントの増強
潜在的増強分子の添加または代替送達戦略による、キトサンベースのアジュバントを改善するために設計された一連の実験によって、本アジュバントはさらに増強された。免疫刺激化合物は、アジュバントと共に用いられるとき、応答を潜在的に改善することができ、以前、いくつかの研究がなされてきている。概説(Guy, 2007; Mutwiri et al., 2011)を参照のこと。潜在的アジュバントは、サポニン、細菌成分、自然免疫系と相互作用する化合物、例えばToll様受容体、核酸、例えばCpGモチーフ、ウイルス、リポソームを含むエマルションまたはこれらの成分の任意の組み合わせを含む。自然免疫系と相互作用するさらに有望な免疫刺激分子には、破傷風トキソイド(TT)、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニット(LTB)およびコレラ毒素Bサブユニット(CTB)がある。固有の化学的特性によって、経験的に免疫系を増強することが示されている他の化合物は、サポニンおよびモノホスホリル脂質A(MPLA)を含む。マクロファージ受容体への結合を標的とするマンノースまたは他の糖を用いて、免疫機能を増強することができる。異なるアジュバントの組み合わせは、IL-12または他のサイトカインとの組み合わせと同様に、免疫応答を刺激するために相乗的に作用することができる。
【0039】
アジュバントを改善するための最初の実験によって、ホルムアルデヒドを用いて0.5%キトサンと架橋させた対象とする抗原からなるホルムアルデヒド架橋キトサンアジュバントを比較し、上記の図1〜3に示すデータが得られた。次いで、このアジュバント系を、選ばれた候補免疫増強分子の最良の組み合わせの選択のための対照またはベースラインとして用いた。試験免疫原には、108cfu/mlまで増殖させ、ホルムアルデヒドで不活化したサルモネラ・エンテリティデス(Salmonella Enteritidis)(SE)バクテリンを用いた。架橋キトサンアジュバントがさらに改善されることができるかどうかを測定するために、試験免疫原(キトサンを含むサルモネラバクテリンは4X107cfu/mlであったが、最終用量は鳥1匹に1X107cfuで用いた)を、架橋キトサン単独または破傷風トキソイド(TT)、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニット(LTB)もしくはマンノシル化キトサンで増強された架橋キトサンとを2:1比で混合し、飲料水または飼料のいずれかに含ませて投与した。結果を図4に示す。
【0040】
TTは潜在的免疫増強分子であり、ワクチン開発に広く用いられてきた。E.コリ(E. coli)からの熱不安定性エンテロトキシンは強力な免疫刺激性分子であることが示されているが、毒性が強く、従ってアジュバントとしては適切ではない。熱不安定性エンテロトキシンは、中央コアLTAおよび5つのLTBサブユニットからなる(da Hora et al., 2011)。LTBサブユニットは免疫アジュバント特性を保持し、その上無毒である。従って、これは安全な潜在的アジュバント成分である。マンノースおよびいくつかの他の炭水化物(例えばガラクトースおよびフコース)はマクロファージを活性化する受容体のリガンドである。マンノシル化キトサンは、YalpaniおよびHall(1980および1985)ならびにJayasree et al., (2011)に記載されている方法と同様な方法を用い、亜鉛を加えずに調製した。簡潔に言えば、1倍量の0.1M酢酸ナトリウム中でマンノース2モル当量を60℃で2時間加熱した。次いでこの溶液に、2倍量の1モル当量の2%キトサンの0.15%酢酸溶液を加え、室温で10分間反応させ、1.5%マンノシル化キトサンを生成させた。次いで、1.5%マンノシル化キトサンにSEバクテリンを2対1比で加えた。次いで、形成されたシッフ塩基をシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH4)で還元した。
【0041】
この免疫強化分子に加えて、上で述べた種々のデリバリーシステムもまた研究した。家禽産業で用いられる典型的な飲料水デリバリーシステムは、薬物または薬品を水128に対して1の割合で希釈する。図1〜3で用いた元のキトサン製剤は、潜在的デリバリーシステムとしての飲料水に1:128に希釈した。最後の試験群には、SEバクテリンを含むホルムアルデヒドで架橋された0.5%キトサン(元のキトサン製剤)を滴下してトリポリホスフェート(TPP)に組み込み、次いで乾燥し、砕いて粉末にし、0.5%の割合(wt/wt)で飼料に添加したものを用いた。
【0042】
孵化日に、指示された製剤0.25mlを上記のようにブロイラーのひなの皮下にプライミングした。これらの群を、キトサンのみの群と同様にプライミングした。12日齢で、ひなを強制経口投与でブーストした。ただし、飲料水群およびTPP群は、1:128での水または0.5%(wt/wt)での飼料に含ませて、それぞれ8時間ブーストした。22日目における血清(IgG)および回腸粘膜(IgA)の抗体レベルを競合的ELISAキット(IDEXX)で測定した。試料対対照比の吸光度レベルの低下は、SEフラジェリンコーティングしたプレートを認識する抗体の高いレベルを示している。
【0043】
上記の図1および図2に示すように、ロバストな免疫応答を引き起こすのに、キトサンアジュバントはアラムよりも優れていた。ここでは、キトサンベースのアジュバントのそれぞれは、SEバクテリンに対して、皮下に投与したキトサン単独と比較して、IgGおよびIgAの両方に関して、有意に高いレベルでロバストな応答を引き起こすことができた(それぞれ図4および5)。TTおよびドライパウダーTPP群は、sqプライミングおよびsqブーストしたキトサンアジュバントよりも有意に高い免疫応答を示した(図4および5)。他の3群、LTBを含むキトサン、マンノシル化キトサンおよび飲料水でのキトサンブーストは、皮下に投与したキトサン単独と比較して、抗体産生において、一貫して優れていた(図4および5)。
【0044】
次の実験セットにおいて、陰性対照(生理食塩水)および、ベンチマーク対照である、アラムよりも優れていることが以前示された、一次およびブーストワクチン接種でsq投与した0.5%ホルムアルデヒド架橋キトサンに加えて、前の実験からの3つの最良の群(LTB、DWでのキトサンブーストおよび還元型マンノシル化キトサン)を繰り返した。本実験において、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、サルモネラからのリピドA(MPLA)またはサポニンのいずれかで免疫強化した、ベンチマーク対照である0.5%ホルムアルデヒド架橋キトサンを用いる3つの新規処置群を加えた。本実験において、以前の実験(マンノシル化キトサンバージョン1、Man-C V1)において優れたアジュバントであることが示されたマンノシル化キトサン処置群と同様であるが、この群においてはNaCNBH4によって還元されていないもう1つの処置群(Man-C V2)もまた加えた。
【0045】
SEフラジェリン競合的ELISAによって、一次およびブーストの両方で0.5%キトサン(C)で皮下にワクチン接種された鳥は、血清中に高いレベルの免疫グロブリンを有していることが再度示された(図6A)。CTBを含む0.5%キトサン(C+CTB)、Man-C V2およびサポニンを含むキトサン(C+サポニン)でワクチン接種された鳥は、最も優れたIgG応答を示した(図6A)。数字上では、Man-C V2が最も優れたIgA応答を示した(図6B)。これらの処置群のうち、3つすべてが、ベンチマーク群(一次およびブーストの両方でsqワクチン接種された0.5%キトサン)とは大きく異なっていた(図6)。
【0046】
さらに、19日目に、生サルモネラを5X107cfu/ひなで鳥にチャレンジした。チャレンジ3日後に、鳥の盲腸扁桃(CT)および肝臓/脾臓(L/S)におけるサルモネラを培養した。CTBを含むキトサン、マンノシル化キトサンの2つのバージョン、すなわち飲料水でのキトサンブーストおよびキトサン+サポニンは、陰性対照(生理食塩水をワクチン接種された)と比較して、肝臓/脾臓(L/S)において、サルモネラを検出下限よりも有意に低下させた(図7;p<0.05)。腸(CT)において、マンノシル化キトサンの2つのバージョンのいずれかを用い、飲料水で1:128に希釈した0.5%キトサンでブーストした群において、サルモネラのレベルは著しく低下した。マンノシル化キトサン群における有意な減少は、マンノース受容体のリガンドによるマクロファージの直接標的化が、キトサンアジュバントの有効性を高めることを示している。同様に、大変に重要なことは、マンノシル化キトサンの非還元型シッフ塩基製剤が、潜在的に有害な化学物質の添加がないNaCNBH4還元型マンノシル化キトサンと同様に有効であったことである。ブーストに用いた、飲料水で1:128に希釈した0.5%キトサンが、非経口ワクチン接種のみと比較して、サルモネラのコロニー形成の低下において優れた結果を示したことは、もう1つの大きな驚きである(図7)。
【0047】
実施例5:ワクチン接種の投与経路
ワクチン接種のための最良の経路およびアジュバントの組み合わせを研究した。孵化日に、ひなに、生理食塩水または、図8に示したそれぞれのアジュバント混合物を含むワクチンのいずれかを0.25mL投与した。比較したアジュバントは、ホルムアルデヒド架橋キトサン、還元型マンノシル化キトサン(Man CV1)、非還元型マンノシル化キトサン(Man CV2)を含む。各アジュバントは、抗原と混合し、孵化日に皮下にまたは飲料水で投与した。同じアジュバント-抗原組み合わせの第二投与で、皮下に、飲料水でまたは強制経口投与でのいずれかによって鳥にブーストした。飲料水(DW)でワクチン接種した群は、水に1:128に希釈した。強制経口投与によってブーストした群は、0.25mlを投与した。前述のように、競合的SEフラジェリンELISAアッセイ(IDEXX)を用いて粘膜IgA応答を測定した。図8における最後の5つの処置群は、大きくは異なっていないが、数字的に最も低い群は、一次ワクチン接種でsq送達し、ブーストでDWに1:128に希釈したマンノシル化キトサンV2であった。この群は、sqでの0.5%キトサン一次ワクチン接種およびsqまたはDWブーストのいずれかと比較して、回腸において有意に高いIgAレベルを有していた。マンノシル化キトサンの還元型と非還元型の間において、あるいは飲料水でまたは強制経口投与によってブーストが投与された場合において、有意差は認められなかった。
【0048】
実施例6:鉱油ベースのアジュバントとの比較
次いで、マンノシル化キトサンを、市販鉱油ベースアジュバントと比較し、市販鉱油ベースアジュバントと混合した。サルモネラ・エンテリティデス(SE)バクテリンを108cfu/mlに増殖させ、ホルムアルデヒドで不活化したものを抗原として用いた。サルモネラバクテリンを4X107cfu/mlでキトサン、マンノシル化キトサン、鉱油アジュバント、キトサンと鉱油アジュバント組み合わせまたはPBSと2:1比で混合し、最終用量を鳥1匹当たり1X107cfuとした。孵化日に、ブロイラーのひなを、上記のように、示された製剤0.25mlでプライミングした。12日齢で、強制経口投与でひなをブーストした。競合的ELISAキット(IDEXX)を用いて、22日目に、血清(IgG)および回腸粘膜(IgA)において抗体レベルを測定した。結果を、それぞれ図9および10に示す。試料対対照比の吸光度レベルの低下は、SEフラジェリンコーティングしたプレートを認識する抗体の高いレベルを示している。マンノシル化キトサンワクチン接種およびブーストプロトコルは、他の群のそれぞれと比較して、IgGおよびIgAレベルの有意の増加をもたらした。
【0049】
実施例7:単回投与後のIgG応答
単回非経口ワクチン接種後のIgG免疫応答を調べるために、孵化日のひなの皮下に、生理食塩水、通常のキトサンまたはマンノシル化キトサンと混合した2.5x108cfu/ひなのボルデテラ・アビウム(Bordetella avium)バクテリンでワクチン接種した。14日目に血清を採取し、ボルデテラ特異的IgGをELISAで測定した。結果を図11に示す。図は、示された処置に関する吸光度の試料対陽性対照比を示す。より高いレベルの吸光度は、特異的IgGの増加を示す。ボルデテラ抗原と混合されたマンノシル化キトサンは、最も高いレベルのIgGを生じた。
【0050】
実施例8:飲料水でのブースト後のIgG応答
ボルデテラ・アビウムバクテリンを皮下に投与し、次いで14日目に飲料水ブーストを行った後にIgG免疫応答を調べた。孵化日のひなの皮下に、生理食塩水、通常のキトサンまたはマンノシル化キトサンと混合した2.5x108cfu/ひなのボルデテラ・アビウムバクテリンをワクチン接種した。14日目に、ワクチン接種のブーストとして、飲料水中に7.8x106cfu/mLのボルデテラ・アビウムバクテリンを含ませた。21日目、すなわちブースト7日目に血清を採取し、ELISAによって特異的IgG応答を測定した。結果を図12に示す。図は、示された処置に関する吸光度の試料対陽性対照比を示す。より高いレベルの吸光度は特異的IgGの増加を示す。ボルデテラ抗原と混合されたマンノシル化キトサンは、対照または未改変キトサンと比較して有意に高いレベルのIgGを生じた。
【0051】
アジュバントの製造方法
ホルムアルデヒドで架橋されたキトサン-タンパク質ワクチンの製造
マンノースを含まないキトサンの最終生成物は、ワクチン配合物中に、最小最終濃度0.5%キトサン〜最大最終濃度2%キトサンの範囲であることができる。適切な濃度(1.5%の酢酸水溶液)で、脱イオン水1L当たり氷酢酸15ml含む溶液にキトサンを溶解する。ブロス培養物に関しては、一般的に、2倍量の培養物を1倍量の1.5%キトサンと混合する(最終ワクチン配合物中に0.5%キトサン)。他の抗原は最小限に希釈し、最終濃度を1.5%までのキトサンを得る。次いで、抗原が溶解されたキトサン混合物に、ホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒドが最終濃度0.2%、すなわち0.008Mになるように加える。上記の実施例において、ホルムアルデヒドの37%溶液を用いる。トリス-HClを最終濃度0.5g/Lまで加えることができる。
【0052】
マンノシル化キトサンの製造
1倍量の0.1M酢酸ナトリウム(pH4.0)中でマンノース2モル当量を60℃で2時間加熱した。次いでこの溶液に、2倍量の1モル当量の2%キトサンの0.15%酢酸溶液を加え、室温で10分間反応させ、1.5%マンノシル化キトサン溶液を生成させた。次いで、これを、2倍量の培養物が1倍量の1.5%マンノシル化キトサンと混合されるようにブロス培養物と混合することができる。濃縮抗原は、出来るだけまたは必要に応じて最小限に希釈することができる。最終濃度0.5g/Lまでトリス-HClを加えることができる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕キトサンに結合してシッフ塩基を形成した炭水化物を含む、アジュバント組成物。
〔2〕前記炭水化物がマンノース、マンノビオース、グルコース、ガラクトースまたはフルクトースから選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記炭水化物がマンノースである、前記〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記シッフ塩基が還元されていない、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔5〕前記シッフ塩基が還元されている、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔6〕0.5%〜2%のアルデヒド架橋キトサンを含む、アジュバント組成物。
〔7〕前記キトサンがホルムアルデヒドで架橋されている、前記〔6〕に記載の組成物。
〔8〕遊離アルデヒドをクエンチするためのトリス-HClをさらに含む、前記〔6〕または〔7〕に記載の組成物。
〔9〕増強分子をさらに含む、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の組成物。
〔10〕前記増強分子が、サポニン、Toll様受容体、細菌毒素Bサブユニット、細菌毒素、CpGモチーフ、リポソームまたはモノホスホリル脂質Aである、前記〔9〕に記載の組成物。
〔11〕前記増強分子が、破傷風トキソイド、コレラ毒素Bサブユニット、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニットまたはトリポリホスフェートである、前記〔9〕に記載の組成物。
〔12〕前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と、抗原とを含む、ワクチン配合物。
〔13〕前記抗原がタンパク質である、前記〔12〕に記載のワクチン。
〔14〕前記タンパク質が、インフルエンザM2e、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼまたは核タンパク質;アイメリアTRAPまたはMPP;クロストリジウムシアリダーゼ、SagA、α毒素、NetB毒素または鉄輸送タンパク質である、前記〔13〕に記載のワクチン。
〔15〕前記抗原が微生物を含む、前記〔12〕に記載のワクチン。
〔16〕前記微生物が、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、シゲラ(Shigella)、ボルデテラ(Bordetella)、クロストリジウム(Clostridium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バチルス(Bacillus)、インフルエンザ(Influenza)またはアイメリア(Eimeria)である、前記〔15〕に記載のワクチン。
〔17〕前記微生物が不活化されているか、または死滅されている、前記〔15〕または〔16〕に記載のワクチン。
〔18〕前記微生物が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドまたはホルマリンを用いて死滅されている、前記〔17〕に記載のワクチン。
〔19〕キトサンを酢酸溶液中に溶解すること、溶解されたキトサンに抗原を添加すること、並びに、溶解されたキトサンおよび抗原にアルデヒドを混合し、前記アルデヒドの最終濃度を0.02%〜0.5%とすることを含む、前記〔6〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
〔20〕前記抗原がタンパク質である、前記〔19〕に記載の方法。
〔21〕前記抗原が微生物ワクチンである、前記〔19〕に記載の方法。
〔22〕トリス-HClを加えて遊離アルデヒドをクエンチすることをさらに含む、前記〔19〕〜〔21〕のいずれか1項に記載の方法。
〔23〕前記アルデヒドが最終濃度0.2%で添加される、前記〔19〕〜〔22〕のいずれか1項に記載の方法。
〔24〕抗原に対する被験者の免疫応答を増強する方法であって、前記〔12〕〜〔18〕のいずれか1項に記載のワクチン配合物を被験者に投与することを含む、前記方法。
〔25〕免疫応答が、アジュバントなしのワクチンの投与と比較して、増強された抗体応答を含む、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕アジュバントなしのワクチンの投与と比較して、分泌IgA抗体応答が増強される、前記〔25〕に記載の方法。
〔27〕ワクチン投与後のIgA応答が、対照ベクターを投与された被験者のIgA応答に対して少なくとも2倍増大される、前記〔26〕に記載の方法。
〔28〕前記被験者が哺乳動物または家禽である、前記〔24〕〜〔27〕のいずれか1項に記載の方法。
〔29〕投与経路が皮下または経口である、前記〔24〕〜〔28〕のいずれか1項に記載の方法。
本発明の更にまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1'〕キトサンに結合してシッフ塩基を形成した炭水化物を含む、アジュバント組成物であって、前記炭水化物がマンノースである、前記アジュバント組成物。
〔2'〕前記シッフ塩基が還元されていない、前記〔1'〕に記載の組成物。
〔3'〕前記シッフ塩基が還元されている、前記〔1'〕に記載の組成物。
〔4'〕0.5%〜2%のアルデヒド架橋キトサンと、遊離アルデヒドをクエンチするためのトリス-HClとを含む、アジュバント組成物。
〔5'〕前記キトサンがホルムアルデヒドで架橋されている、前記〔4'〕に記載の組成物。
〔6'〕増強分子をさらに含む、前記〔1'〕〜〔5'〕のいずれか1つに記載の組成物。
〔7'〕前記増強分子が、サポニン、Toll様受容体、細菌毒素Bサブユニット、細菌毒素、CpGモチーフ、リポソームまたはモノホスホリル脂質Aである、前記〔6'〕に記載の組成物。
〔8'〕前記増強分子が、破傷風トキソイド、コレラ毒素Bサブユニット、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニットまたはトリポリホスフェートである、前記〔6'〕に記載の組成物。
〔9'〕前記〔1'〕〜〔8'〕のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と、抗原とを含む、ワクチン配合物であって、前記抗原が微生物を含む、前記ワクチン配合物。
〔10'〕前記微生物が、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、シゲラ(Shigella)、ボルデテラ(Bordetella)、クロストリジウム(Clostridium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バチルス(Bacillus)、インフルエンザ(Influenza)またはアイメリア(Eimeria)である、前記〔9'〕に記載のワクチン配合物。
〔11'〕前記微生物が不活化されているか、または死滅されている、前記〔9'〕または〔10'〕に記載のワクチン配合物。
〔12'〕前記微生物が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドまたはホルマリンを用いて死滅されている、前記〔11'〕に記載のワクチン配合物。
〔13'〕キトサンを酢酸溶液中に溶解すること、溶解されたキトサンに抗原を添加すること、溶解されたキトサンおよび抗原にアルデヒドを混合し、前記アルデヒドの最終濃度を0.02%〜0.5%とすること、並びに、トリス-HClを加えて遊離アルデヒドをクエンチすることを含む、前記〔4'〕〜〔5'〕のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
〔14'〕前記抗原がタンパク質である、前記〔13'〕に記載の方法。
〔15'〕前記抗原が微生物ワクチンである、前記〔13'〕に記載の方法。
〔16'〕前記アルデヒドが最終濃度0.2%で添加される、前記〔13'〕〜〔15'〕のいずれか1項に記載の方法。
〔17'〕抗原に対する被験者の免疫応答を増強する方法であって、前記〔9'〕〜〔12'〕のいずれか1項に記載のワクチン配合物を被験者に投与することを含む、前記方法。
〔18'〕前記免疫応答が、アジュバントなしのワクチンの投与と比較して増強された抗体応答を含む、前記〔17'〕に記載の方法。
〔19'〕前記増強された抗体応答が、アジュバントなしのワクチンの投与と比較して増強された分泌IgA抗体応答である、前記〔18'〕に記載の方法。
〔20'〕前記被験者が哺乳動物または家禽である、前記〔17'〕〜〔19'〕のいずれか1項に記載の方法。
〔21'〕投与経路が皮下または経口である、前記〔17'〕〜〔20'〕のいずれか1項に記載の方法。
〔22'〕前記ワクチン配合物が食物または飲料水で投与される、前記〔17'〕〜〔21'〕のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12