【実施例】
【0029】
実施例1:一次ワクチン接種およびブースト後のβ-ガラクトシダーゼに対する免疫応答
ホルムアルデヒドで架橋されたキトサン-タンパク質ワクチンを試験するための我々の最初の実験には、モデルタンパク質として古典的タンパク質であるβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)を用いた。以下の表1の記載に従って、処置群6匹および対照1匹を用いて、シチメンチョウのひなにβ-Galでワクチン接種した。孵化日に、非経口皮下(sq)注射で、ひなに、生理食塩水または、15%アラム、1%キトサン(ホルムアルデヒド(Form)で架橋)(3群)もしくは1.5%キトサン(ホルムアルデヒドで架橋されてない)のいずれかに含まれるβ-Gal100μg(0.25ml)でワクチン接種した。1%キトサン群の内の2匹を除くすべての群を14日目および25日目に同じ製剤でsqブーストした。両方の日に、1%キトサン群の内の2匹の内の1匹は、強制経口投与によって1%キトサン-β-Galでブーストし、もう1匹は、1%キトサン-β-Gal(2mL)でスプレーによってブーストした。
【0030】
β-ガラクトシダーゼに対するELISAで、血清を用いてβ-ガラクトシダーゼに対する免疫応答を測定した。結果を
図1に示す。間接ELISAにより、吸光度の試料対陽性対照比として免疫応答レベルを記録する。より大きなS/P比は、より高い抗β-ガラクトシダーゼ抗体価を示す。生理食塩水をワクチン接種されたシチメンチョウからの血清を用いたELISAでは、ほとんど交差反応性は認められなかった。β-Galを含む生理食塩水でワクチン接種されたときに、わずかに小さな数字上の増加が見られる。現在用いられている通常の市販アジュバントは15%アラムであり、これを用いたとき、優れた免疫応答が認められた。我々のキトサン免疫増強ホルムアルデヒド架橋ワクチン系(1%キトサンと呼ぶ)を用いたとき、モデル抗原であるβ-Galに対する免疫応答の有意な増加が見られた。キトサン単独を用いたとき、より高い1.5%の濃度であっても、著しく低い免疫応答が見られた。さらに、スプレーまたは経口処置を用いて1%キトサン-ホルムアルデヒド処理アジュバントで抗原をブーストしたとき、皮下に投与した標準アジュバントである15%アラムに匹敵する応答が見られた。
【0031】
表1:処置群
【0032】
実施例2:種々のアジュバントでのワクチン接種後のクロストリジウムに対する免疫応答
4X10
8cfu/mlクロストリジウム・セプチクム(Clostridium septicum)バクテリン(CS)を含むアラムまたはホルマリン架橋キトサンのいずれか単独で、あるいは12%アラムもしくは0.5%ホルマリン架橋キトサンと組み合わせて、鳥1匹あたりの最終用量が1X10
8cfu/鳥になるように、孵化日のシチメンチョウのひなの皮下(0.25mL)に投与することによって、上記の実験と同様な実験を行った。同じ経路を用い、同じワクチンですべての鳥を14日目にブーストした。得られた免疫応答のレベルを間接ELISAアッセイによって測定し、吸光度の試料対陽性対照(S/P)比で記録した。より大きなS/P比は、より高い抗CS抗体を示す。
【0033】
アジュバントなしのワクチンを投与された鳥は、
図2に示すように、S/P比が0.16の、ELISAで検出可能な抗体応答を生じた。この抗体レベルは、アラムをアジュバントとして含むCSの抗体レベルとは統計的有意差がなかった。1回のブースト後(一次ワクチン接種の14日後)、0.5%ホルマリン架橋キトサンをアジュバントとして含むCSバクテリンでワクチン接種されたひなは、アジュバントなしのCSバクテリンのS/P比のおおよそ倍のS/P比(それぞれ0.4および0.16)をもたらすIgGレベルを示した。水酸化アルミニウムアジュバントを含むCSバクテリンは、S/P比(それぞれ0.27および0.4)で比較して、キトサンを含むCSで誘導されるIgGレベルよりもおおよそ30%低いIgGレベルを誘導した(
図2参照)。重要なことに、キトサン投与により、72時間(またはそれ以後)において、注射部位の病変は著しくないのに対し、アラムは常に局所炎症および肉芽腫を生じ、多くの場合、これらは被包性の瘢痕組織になる。
【0034】
実施例3:鳥インフルエンザワクチン接種実験
鳥インフルエンザ(AI)は、重大な公衆衛生上の懸念であり、世界中に存在する商業家禽産業に対する重大な経済的脅威である。我々の以前のデータでは、CD154と関連するM2eを発現するサルモネラをベクターとするワクチンはAIに対して有効であるであることを示唆している。ベクターとしてのバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)およびM2eエピトープを用いる新規構築物を免疫刺激分子と共に試験した。孵化後11日目、15日目および21日目にELISAによってM2e特異的血清IgGおよび粘膜IgA抗体レベルを測定した。孵化日に、強制経口投与または皮下注射のいずれかを用い、野生型バチルス(BSBB)、生ワクチンとしての、バチルスをベクターとする鳥インフルエンザワクチン(BSAI)、ホルマリン不活化後のBSAI、ホルマリン不活化、凍結乾燥および生理食塩水での再構成後のBSAI、またはホルマリン不活化および1%キトサンでの架橋後のBSAIのいずれかでひなをワクチン接種した。各ワクチンを、10
6cfu/ひなで、0.25mlまたは0.25ml生理食塩水に含ませて投与した。孵化10日目に、2つの群(BSAI生、BSAI不活化および凍結乾燥)のひなに、0日目に行ったものと同じ処置のブースターワクチン接種を行い、他の群はすべて、二次のワクチン用量を投与しなかった。
【0035】
次いで、孵化11日目、15日目および21日目に、すべての群の鳥から血清IgGおよび粘膜IgA試料を採取し、抗体捕捉ELISAに用いた。BSAにコンジュゲートしたM2e(10μg/ml)でプレートをコーティングし、ブロックし、2%FBS/PBSで1:50に希釈した処置群のそれぞれからの血清と共にインキュベートし、次いで、1:7,500に希釈したHRP標識二次抗体でインキュベートし、TMB基質を用いて発色させた。結果を平均S/P比(試料平均−陰性対照平均)/(陽性対照平均−陰性対照平均)+SEM(n=20)で示す。
【0036】
バチルス骨格対照(BSBB)と比較したとき、試験した各時点において、各ワクチン接種群でM2e特異的IgG抗体応答の有意な増加が見られた。しかしながら、IgG抗体応答が増加した6つのワクチン接種群のいずれかの間で各時点において観察された違いはなかった(
図3A参照)。粘膜IgA特異的抗体応答に注目すれば、免疫応答における実際の違いは明らかである(
図3B参照)。BSAI+1%キトサンは、サンプリングされた3つすべて時点で、対照またはワクチン接種を行った追加の5つの処置群と比較して、特異的IgA抗体応答の顕著な増加を示した。
【0037】
まとめれば、架橋キトサンを用いた実験において、キトサンのこの改変は、非経口および経口経路の両方を通じて、水酸化アルミニウムよりも優れたアジュバントであることを我々は明らかにした(
図1および2)。架橋剤としてホルムアルデヒドを用いるキトサン処理は、ホルムアルデヒド無処理のキトサンよりも有効であることが示された(
図1)。経口で用いたとき、キトサンは、IgGの産生(
図3A)よりもIgAの産生(
図3B)を選択的に増強した。
【0038】
実施例4:キトサンアジュバントの増強
潜在的増強分子の添加または代替送達戦略による、キトサンベースのアジュバントを改善するために設計された一連の実験によって、本アジュバントはさらに増強された。免疫刺激化合物は、アジュバントと共に用いられるとき、応答を潜在的に改善することができ、以前、いくつかの研究がなされてきている。概説(Guy, 2007; Mutwiri et al., 2011)を参照のこと。潜在的アジュバントは、サポニン、細菌成分、自然免疫系と相互作用する化合物、例えばToll様受容体、核酸、例えばCpGモチーフ、ウイルス、リポソームを含むエマルションまたはこれらの成分の任意の組み合わせを含む。自然免疫系と相互作用するさらに有望な免疫刺激分子には、破傷風トキソイド(TT)、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニット(LTB)およびコレラ毒素Bサブユニット(CTB)がある。固有の化学的特性によって、経験的に免疫系を増強することが示されている他の化合物は、サポニンおよびモノホスホリル脂質A(MPLA)を含む。マクロファージ受容体への結合を標的とするマンノースまたは他の糖を用いて、免疫機能を増強することができる。異なるアジュバントの組み合わせは、IL-12または他のサイトカインとの組み合わせと同様に、免疫応答を刺激するために相乗的に作用することができる。
【0039】
アジュバントを改善するための最初の実験によって、ホルムアルデヒドを用いて0.5%キトサンと架橋させた対象とする抗原からなるホルムアルデヒド架橋キトサンアジュバントを比較し、上記の
図1〜3に示すデータが得られた。次いで、このアジュバント系を、選ばれた候補免疫増強分子の最良の組み合わせの選択のための対照またはベースラインとして用いた。試験免疫原には、10
8cfu/mlまで増殖させ、ホルムアルデヒドで不活化したサルモネラ・エンテリティデス(Salmonella Enteritidis)(SE)バクテリンを用いた。架橋キトサンアジュバントがさらに改善されることができるかどうかを測定するために、試験免疫原(キトサンを含むサルモネラバクテリンは4X10
7cfu/mlであったが、最終用量は鳥1匹に1X10
7cfuで用いた)を、架橋キトサン単独または破傷風トキソイド(TT)、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニット(LTB)もしくはマンノシル化キトサンで増強された架橋キトサンとを2:1比で混合し、飲料水または飼料のいずれかに含ませて投与した。結果を
図4に示す。
【0040】
TTは潜在的免疫増強分子であり、ワクチン開発に広く用いられてきた。E.コリ(E. coli)からの熱不安定性エンテロトキシンは強力な免疫刺激性分子であることが示されているが、毒性が強く、従ってアジュバントとしては適切ではない。熱不安定性エンテロトキシンは、中央コアLTAおよび5つのLTBサブユニットからなる(da Hora et al., 2011)。LTBサブユニットは免疫アジュバント特性を保持し、その上無毒である。従って、これは安全な潜在的アジュバント成分である。マンノースおよびいくつかの他の炭水化物(例えばガラクトースおよびフコース)はマクロファージを活性化する受容体のリガンドである。マンノシル化キトサンは、YalpaniおよびHall(1980および1985)ならびにJayasree et al., (2011)に記載されている方法と同様な方法を用い、亜鉛を加えずに調製した。簡潔に言えば、1倍量の0.1M酢酸ナトリウム中でマンノース2モル当量を60℃で2時間加熱した。次いでこの溶液に、2倍量の1モル当量の2%キトサンの0.15%酢酸溶液を加え、室温で10分間反応させ、1.5%マンノシル化キトサンを生成させた。次いで、1.5%マンノシル化キトサンにSEバクテリンを2対1比で加えた。次いで、形成されたシッフ塩基をシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH
4)で還元した。
【0041】
この免疫強化分子に加えて、上で述べた種々のデリバリーシステムもまた研究した。家禽産業で用いられる典型的な飲料水デリバリーシステムは、薬物または薬品を水128に対して1の割合で希釈する。
図1〜3で用いた元のキトサン製剤は、潜在的デリバリーシステムとしての飲料水に1:128に希釈した。最後の試験群には、SEバクテリンを含むホルムアルデヒドで架橋された0.5%キトサン(元のキトサン製剤)を滴下してトリポリホスフェート(TPP)に組み込み、次いで乾燥し、砕いて粉末にし、0.5%の割合(wt/wt)で飼料に添加したものを用いた。
【0042】
孵化日に、指示された製剤0.25mlを上記のようにブロイラーのひなの皮下にプライミングした。これらの群を、キトサンのみの群と同様にプライミングした。12日齢で、ひなを強制経口投与でブーストした。ただし、飲料水群およびTPP群は、1:128での水または0.5%(wt/wt)での飼料に含ませて、それぞれ8時間ブーストした。22日目における血清(IgG)および回腸粘膜(IgA)の抗体レベルを競合的ELISAキット(IDEXX)で測定した。試料対対照比の吸光度レベルの低下は、SEフラジェリンコーティングしたプレートを認識する抗体の高いレベルを示している。
【0043】
上記の
図1および
図2に示すように、ロバストな免疫応答を引き起こすのに、キトサンアジュバントはアラムよりも優れていた。ここでは、キトサンベースのアジュバントのそれぞれは、SEバクテリンに対して、皮下に投与したキトサン単独と比較して、IgGおよびIgAの両方に関して、有意に高いレベルでロバストな応答を引き起こすことができた(それぞれ
図4および5)。TTおよびドライパウダーTPP群は、sqプライミングおよびsqブーストしたキトサンアジュバントよりも有意に高い免疫応答を示した(
図4および5)。他の3群、LTBを含むキトサン、マンノシル化キトサンおよび飲料水でのキトサンブーストは、皮下に投与したキトサン単独と比較して、抗体産生において、一貫して優れていた(
図4および5)。
【0044】
次の実験セットにおいて、陰性対照(生理食塩水)および、ベンチマーク対照である、アラムよりも優れていることが以前示された、一次およびブーストワクチン接種でsq投与した0.5%ホルムアルデヒド架橋キトサンに加えて、前の実験からの3つの最良の群(LTB、DWでのキトサンブーストおよび還元型マンノシル化キトサン)を繰り返した。本実験において、コレラ毒素Bサブユニット(CTB)、サルモネラからのリピドA(MPLA)またはサポニンのいずれかで免疫強化した、ベンチマーク対照である0.5%ホルムアルデヒド架橋キトサンを用いる3つの新規処置群を加えた。本実験において、以前の実験(マンノシル化キトサンバージョン1、Man-C V1)において優れたアジュバントであることが示されたマンノシル化キトサン処置群と同様であるが、この群においてはNaCNBH
4によって還元されていないもう1つの処置群(Man-C V2)もまた加えた。
【0045】
SEフラジェリン競合的ELISAによって、一次およびブーストの両方で0.5%キトサン(C)で皮下にワクチン接種された鳥は、血清中に高いレベルの免疫グロブリンを有していることが再度示された(
図6A)。CTBを含む0.5%キトサン(C+CTB)、Man-C V2およびサポニンを含むキトサン(C+サポニン)でワクチン接種された鳥は、最も優れたIgG応答を示した(
図6A)。数字上では、Man-C V2が最も優れたIgA応答を示した(
図6B)。これらの処置群のうち、3つすべてが、ベンチマーク群(一次およびブーストの両方でsqワクチン接種された0.5%キトサン)とは大きく異なっていた(
図6)。
【0046】
さらに、19日目に、生サルモネラを5X10
7cfu/ひなで鳥にチャレンジした。チャレンジ3日後に、鳥の盲腸扁桃(CT)および肝臓/脾臓(L/S)におけるサルモネラを培養した。CTBを含むキトサン、マンノシル化キトサンの2つのバージョン、すなわち飲料水でのキトサンブーストおよびキトサン+サポニンは、陰性対照(生理食塩水をワクチン接種された)と比較して、肝臓/脾臓(L/S)において、サルモネラを検出下限よりも有意に低下させた(
図7;p<0.05)。腸(CT)において、マンノシル化キトサンの2つのバージョンのいずれかを用い、飲料水で1:128に希釈した0.5%キトサンでブーストした群において、サルモネラのレベルは著しく低下した。マンノシル化キトサン群における有意な減少は、マンノース受容体のリガンドによるマクロファージの直接標的化が、キトサンアジュバントの有効性を高めることを示している。同様に、大変に重要なことは、マンノシル化キトサンの非還元型シッフ塩基製剤が、潜在的に有害な化学物質の添加がないNaCNBH
4還元型マンノシル化キトサンと同様に有効であったことである。ブーストに用いた、飲料水で1:128に希釈した0.5%キトサンが、非経口ワクチン接種のみと比較して、サルモネラのコロニー形成の低下において優れた結果を示したことは、もう1つの大きな驚きである(
図7)。
【0047】
実施例5:ワクチン接種の投与経路
ワクチン接種のための最良の経路およびアジュバントの組み合わせを研究した。孵化日に、ひなに、生理食塩水または、
図8に示したそれぞれのアジュバント混合物を含むワクチンのいずれかを0.25mL投与した。比較したアジュバントは、ホルムアルデヒド架橋キトサン、還元型マンノシル化キトサン(Man CV1)、非還元型マンノシル化キトサン(Man CV2)を含む。各アジュバントは、抗原と混合し、孵化日に皮下にまたは飲料水で投与した。同じアジュバント-抗原組み合わせの第二投与で、皮下に、飲料水でまたは強制経口投与でのいずれかによって鳥にブーストした。飲料水(DW)でワクチン接種した群は、水に1:128に希釈した。強制経口投与によってブーストした群は、0.25mlを投与した。前述のように、競合的SEフラジェリンELISAアッセイ(IDEXX)を用いて粘膜IgA応答を測定した。
図8における最後の5つの処置群は、大きくは異なっていないが、数字的に最も低い群は、一次ワクチン接種でsq送達し、ブーストでDWに1:128に希釈したマンノシル化キトサンV2であった。この群は、sqでの0.5%キトサン一次ワクチン接種およびsqまたはDWブーストのいずれかと比較して、回腸において有意に高いIgAレベルを有していた。マンノシル化キトサンの還元型と非還元型の間において、あるいは飲料水でまたは強制経口投与によってブーストが投与された場合において、有意差は認められなかった。
【0048】
実施例6:鉱油ベースのアジュバントとの比較
次いで、マンノシル化キトサンを、市販鉱油ベースアジュバントと比較し、市販鉱油ベースアジュバントと混合した。サルモネラ・エンテリティデス(SE)バクテリンを10
8cfu/mlに増殖させ、ホルムアルデヒドで不活化したものを抗原として用いた。サルモネラバクテリンを4X10
7cfu/mlでキトサン、マンノシル化キトサン、鉱油アジュバント、キトサンと鉱油アジュバント組み合わせまたはPBSと2:1比で混合し、最終用量を鳥1匹当たり1X10
7cfuとした。孵化日に、ブロイラーのひなを、上記のように、示された製剤0.25mlでプライミングした。12日齢で、強制経口投与でひなをブーストした。競合的ELISAキット(IDEXX)を用いて、22日目に、血清(IgG)および回腸粘膜(IgA)において抗体レベルを測定した。結果を、それぞれ
図9および10に示す。試料対対照比の吸光度レベルの低下は、SEフラジェリンコーティングしたプレートを認識する抗体の高いレベルを示している。マンノシル化キトサンワクチン接種およびブーストプロトコルは、他の群のそれぞれと比較して、IgGおよびIgAレベルの有意の増加をもたらした。
【0049】
実施例7:単回投与後のIgG応答
単回非経口ワクチン接種後のIgG免疫応答を調べるために、孵化日のひなの皮下に、生理食塩水、通常のキトサンまたはマンノシル化キトサンと混合した2.5x10
8cfu/ひなのボルデテラ・アビウム(Bordetella avium)バクテリンでワクチン接種した。14日目に血清を採取し、ボルデテラ特異的IgGをELISAで測定した。結果を
図11に示す。図は、示された処置に関する吸光度の試料対陽性対照比を示す。より高いレベルの吸光度は、特異的IgGの増加を示す。ボルデテラ抗原と混合されたマンノシル化キトサンは、最も高いレベルのIgGを生じた。
【0050】
実施例8:飲料水でのブースト後のIgG応答
ボルデテラ・アビウムバクテリンを皮下に投与し、次いで14日目に飲料水ブーストを行った後にIgG免疫応答を調べた。孵化日のひなの皮下に、生理食塩水、通常のキトサンまたはマンノシル化キトサンと混合した2.5x10
8cfu/ひなのボルデテラ・アビウムバクテリンをワクチン接種した。14日目に、ワクチン接種のブーストとして、飲料水中に7.8x10
6cfu/mLのボルデテラ・アビウムバクテリンを含ませた。21日目、すなわちブースト7日目に血清を採取し、ELISAによって特異的IgG応答を測定した。結果を
図12に示す。図は、示された処置に関する吸光度の試料対陽性対照比を示す。より高いレベルの吸光度は特異的IgGの増加を示す。ボルデテラ抗原と混合されたマンノシル化キトサンは、対照または未改変キトサンと比較して有意に高いレベルのIgGを生じた。
【0051】
アジュバントの製造方法
ホルムアルデヒドで架橋されたキトサン-タンパク質ワクチンの製造
マンノースを含まないキトサンの最終生成物は、ワクチン配合物中に、最小最終濃度0.5%キトサン〜最大最終濃度2%キトサンの範囲であることができる。適切な濃度(1.5%の酢酸水溶液)で、脱イオン水1L当たり氷酢酸15ml含む溶液にキトサンを溶解する。ブロス培養物に関しては、一般的に、2倍量の培養物を1倍量の1.5%キトサンと混合する(最終ワクチン配合物中に0.5%キトサン)。他の抗原は最小限に希釈し、最終濃度を1.5%までのキトサンを得る。次いで、抗原が溶解されたキトサン混合物に、ホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒドが最終濃度0.2%、すなわち0.008Mになるように加える。上記の実施例において、ホルムアルデヒドの37%溶液を用いる。トリス-HClを最終濃度0.5g/Lまで加えることができる。
【0052】
マンノシル化キトサンの製造
1倍量の0.1M酢酸ナトリウム(pH4.0)中でマンノース2モル当量を60℃で2時間加熱した。次いでこの溶液に、2倍量の1モル当量の2%キトサンの0.15%酢酸溶液を加え、室温で10分間反応させ、1.5%マンノシル化キトサン溶液を生成させた。次いで、これを、2倍量の培養物が1倍量の1.5%マンノシル化キトサンと混合されるようにブロス培養物と混合することができる。濃縮抗原は、出来るだけまたは必要に応じて最小限に希釈することができる。最終濃度0.5g/Lまでトリス-HClを加えることができる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕キトサンに結合してシッフ塩基を形成した炭水化物を含む、アジュバント組成物。
〔2〕前記炭水化物がマンノース、マンノビオース、グルコース、ガラクトースまたはフルクトースから選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記炭水化物がマンノースである、前記〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記シッフ塩基が還元されていない、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔5〕前記シッフ塩基が還元されている、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の組成物。
〔6〕0.5%〜2%のアルデヒド架橋キトサンを含む、アジュバント組成物。
〔7〕前記キトサンがホルムアルデヒドで架橋されている、前記〔6〕に記載の組成物。
〔8〕遊離アルデヒドをクエンチするためのトリス-HClをさらに含む、前記〔6〕または〔7〕に記載の組成物。
〔9〕増強分子をさらに含む、前記〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の組成物。
〔10〕前記増強分子が、サポニン、Toll様受容体、細菌毒素Bサブユニット、細菌毒素、CpGモチーフ、リポソームまたはモノホスホリル脂質Aである、前記〔9〕に記載の組成物。
〔11〕前記増強分子が、破傷風トキソイド、コレラ毒素Bサブユニット、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニットまたはトリポリホスフェートである、前記〔9〕に記載の組成物。
〔12〕前記〔1〕〜〔11〕のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と、抗原とを含む、ワクチン配合物。
〔13〕前記抗原がタンパク質である、前記〔12〕に記載のワクチン。
〔14〕前記タンパク質が、インフルエンザM2e、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼまたは核タンパク質;アイメリアTRAPまたはMPP;クロストリジウムシアリダーゼ、SagA、α毒素、NetB毒素または鉄輸送タンパク質である、前記〔13〕に記載のワクチン。
〔15〕前記抗原が微生物を含む、前記〔12〕に記載のワクチン。
〔16〕前記微生物が、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、シゲラ(Shigella)、ボルデテラ(Bordetella)、クロストリジウム(Clostridium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バチルス(Bacillus)、インフルエンザ(Influenza)またはアイメリア(Eimeria)である、前記〔15〕に記載のワクチン。
〔17〕前記微生物が不活化されているか、または死滅されている、前記〔15〕または〔16〕に記載のワクチン。
〔18〕前記微生物が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドまたはホルマリンを用いて死滅されている、前記〔17〕に記載のワクチン。
〔19〕キトサンを酢酸溶液中に溶解すること、溶解されたキトサンに抗原を添加すること、並びに、溶解されたキトサンおよび抗原にアルデヒドを混合し、前記アルデヒドの最終濃度を0.02%〜0.5%とすることを含む、前記〔6〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
〔20〕前記抗原がタンパク質である、前記〔19〕に記載の方法。
〔21〕前記抗原が微生物ワクチンである、前記〔19〕に記載の方法。
〔22〕トリス-HClを加えて遊離アルデヒドをクエンチすることをさらに含む、前記〔19〕〜〔21〕のいずれか1項に記載の方法。
〔23〕前記アルデヒドが最終濃度0.2%で添加される、前記〔19〕〜〔22〕のいずれか1項に記載の方法。
〔24〕抗原に対する被験者の免疫応答を増強する方法であって、前記〔12〕〜〔18〕のいずれか1項に記載のワクチン配合物を被験者に投与することを含む、前記方法。
〔25〕免疫応答が、アジュバントなしのワクチンの投与と比較して、増強された抗体応答を含む、前記〔24〕に記載の方法。
〔26〕アジュバントなしのワクチンの投与と比較して、分泌IgA抗体応答が増強される、前記〔25〕に記載の方法。
〔27〕ワクチン投与後のIgA応答が、対照ベクターを投与された被験者のIgA応答に対して少なくとも2倍増大される、前記〔26〕に記載の方法。
〔28〕前記被験者が哺乳動物または家禽である、前記〔24〕〜〔27〕のいずれか1項に記載の方法。
〔29〕投与経路が皮下または経口である、前記〔24〕〜〔28〕のいずれか1項に記載の方法。
本発明の更にまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1'〕キトサンに結合してシッフ塩基を形成した炭水化物を含む、アジュバント組成物であって、前記炭水化物がマンノースである、前記アジュバント組成物。
〔2'〕前記シッフ塩基が還元されていない、前記〔1'〕に記載の組成物。
〔3'〕前記シッフ塩基が還元されている、前記〔1'〕に記載の組成物。
〔4'〕0.5%〜2%のアルデヒド架橋キトサンと、遊離アルデヒドをクエンチするためのトリス-HClとを含む、アジュバント組成物。
〔5'〕前記キトサンがホルムアルデヒドで架橋されている、前記〔4'〕に記載の組成物。
〔6'〕増強分子をさらに含む、前記〔1'〕〜〔5'〕のいずれか1つに記載の組成物。
〔7'〕前記増強分子が、サポニン、Toll様受容体、細菌毒素Bサブユニット、細菌毒素、CpGモチーフ、リポソームまたはモノホスホリル脂質Aである、前記〔6'〕に記載の組成物。
〔8'〕前記増強分子が、破傷風トキソイド、コレラ毒素Bサブユニット、熱不安定性エンテロトキシンBサブユニットまたはトリポリホスフェートである、前記〔6'〕に記載の組成物。
〔9'〕前記〔1'〕〜〔8'〕のいずれか1項に記載のアジュバント組成物と、抗原とを含む、ワクチン配合物であって、前記抗原が微生物を含む、前記ワクチン配合物。
〔10'〕前記微生物が、サルモネラ(Salmonella)、エシェリキア(Escherichia)、シゲラ(Shigella)、ボルデテラ(Bordetella)、クロストリジウム(Clostridium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バチルス(Bacillus)、インフルエンザ(Influenza)またはアイメリア(Eimeria)である、前記〔9'〕に記載のワクチン配合物。
〔11'〕前記微生物が不活化されているか、または死滅されている、前記〔9'〕または〔10'〕に記載のワクチン配合物。
〔12'〕前記微生物が、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドまたはホルマリンを用いて死滅されている、前記〔11'〕に記載のワクチン配合物。
〔13'〕キトサンを酢酸溶液中に溶解すること、溶解されたキトサンに抗原を添加すること、溶解されたキトサンおよび抗原にアルデヒドを混合し、前記アルデヒドの最終濃度を0.02%〜0.5%とすること、並びに、トリス-HClを加えて遊離アルデヒドをクエンチすることを含む、前記〔4'〕〜〔5'〕のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
〔14'〕前記抗原がタンパク質である、前記〔13'〕に記載の方法。
〔15'〕前記抗原が微生物ワクチンである、前記〔13'〕に記載の方法。
〔16'〕前記アルデヒドが最終濃度0.2%で添加される、前記〔13'〕〜〔15'〕のいずれか1項に記載の方法。
〔17'〕抗原に対する被験者の免疫応答を増強する方法であって、前記〔9'〕〜〔12'〕のいずれか1項に記載のワクチン配合物を被験者に投与することを含む、前記方法。
〔18'〕前記免疫応答が、アジュバントなしのワクチンの投与と比較して増強された抗体応答を含む、前記〔17'〕に記載の方法。
〔19'〕前記増強された抗体応答が、アジュバントなしのワクチンの投与と比較して増強された分泌IgA抗体応答である、前記〔18'〕に記載の方法。
〔20'〕前記被験者が哺乳動物または家禽である、前記〔17'〕〜〔19'〕のいずれか1項に記載の方法。
〔21'〕投与経路が皮下または経口である、前記〔17'〕〜〔20'〕のいずれか1項に記載の方法。
〔22'〕前記ワクチン配合物が食物または飲料水で投与される、前記〔17'〕〜〔21'〕のいずれか1項に記載の方法。