特許第6284550号(P6284550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284550
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】潤滑組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20180215BHJP
   C10M 177/00 20060101ALI20180215BHJP
   C10M 143/04 20060101ALN20180215BHJP
   C10M 125/26 20060101ALN20180215BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20180215BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20180215BHJP
   C10M 145/28 20060101ALN20180215BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20180215BHJP
   C10M 143/06 20060101ALN20180215BHJP
   C10M 147/02 20060101ALN20180215BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20180215BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20180215BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20180215BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20180215BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20180215BHJP
【FI】
   C10M169/04
   C10M177/00
   !C10M143/04
   !C10M125/26
   !C10M101/02
   !C10M107/02
   !C10M145/28
   !C10M145/14
   !C10M143/06
   !C10M147/02
   !C10M129/10
   C10N30:00 Z
   C10N30:06
   C10N50:10
   C10N70:00
【請求項の数】21
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-553854(P2015-553854)
(86)(22)【出願日】2014年1月17日
(65)【公表番号】特表2016-503834(P2016-503834A)
(43)【公表日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】US2014012078
(87)【国際公開番号】WO2014113692
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2017年1月12日
(31)【優先権主張番号】13/694,911
(32)【優先日】2013年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515197215
【氏名又は名称】ランディシ サイ エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ランディシ サイ エー.
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06245720(US,B1)
【文献】 特開平07−316579(JP,A)
【文献】 特表平05−508873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M、C10N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要量の潤滑粘度の基油、並びに
少量の粘度調整剤、分散剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、抑制剤、粘着性付与剤、及び増粘剤を含むか、或いは混合することにより製造された、可動部間の摩擦を低減させるために使用される組成物であって、
前記分散剤が粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体であり、
前記増粘剤が、ジメチルジクロロシランで後処理されたヒュームドシリカ、及び比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカであり、
保管の間、油分離の抑制を図るために、前記分散剤及び前記増粘剤が粉砕され、前記組成物に溶解された組成物。
【請求項2】
前記基油が鉱油及びポリアルファオレフィン(PAO)オイルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抑制剤がポリエチレングリコールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記粘度調整剤がポリメタクリル酸アルキルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記粘着性付与剤が、選択されたパラフィン系素材に溶解させたポリイソブチレンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記摩擦調整剤がポリテトラフルオロエチレンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗酸化剤がフェノール系の抗酸化剤である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ケトルに粘度調整剤を添加する工程;
前記ケトルに第一の基油を添加する工程;
アンカー翼及び撹拌機翼により前記組成物を混合する工程;
第二の基油を添加する工程;
前記撹拌機翼の速度を増加させる工程;
抗酸化剤及び摩擦調整剤を添加する工程;
ローター/ステーターアセンブリを使用することにより、前記ケトル内に真空を形成する工程;
バキュームワンドにより分散剤を添加する工程であって、前記バキュームワンドにより、前記分散剤をローター/ステーターアセンブリ内へ直接導入することができ、それによって、前記分散剤が、前記基油の表面下で粉砕され、分散され、溶解される、工程;
ローター/ステーターアセンブリの速度を低下させる工程;
バキュームワンドにより増粘剤を添加する工程であって、前記バキュームワンドにより、前記増粘剤をローター/ステーターアセンブリ内へ直接導入することができ、それによって、前記増粘剤が、前記基油の表面下で粉砕され、分散され、溶解される、工程;
前記ローター/ステーターの運転を停止する工程;
カバーポートより粘着性付与剤及び抑制剤を添加する工程;及び
前記組成物から空気を除去するために、前記ローター/ステーターアセンブリにより真空を形成する工程
を含
前記増粘剤がジメチルジクロロシランで後処理されたヒュームドシリカ、及び比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカである、可動部間の摩擦を低減させるために使用される組成物の製造方法。
【請求項9】
前記第一の基油が鉱油であり、前記第二の基油がポリアルファオレフィン(PAO)オイルである、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記分散剤が粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記抑制剤がポリエチレングリコールである、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記粘度調整剤がポリメタクリル酸アルキルである、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記粘着性付与剤が、選択されたパラフィン系素材に溶解させたポリイソブチレンである、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記摩擦調整剤がポリテトラフルオロエチレンである、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記抗酸化剤がフェノール系の抗酸化剤である、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
35〜55%の鉱油、
30〜50%のPAOオイル、
0.5〜5%の粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体、
0.5〜5%のジメチルジクロロシランで後処理されたヒュームドシリカ、及び
1〜10%の、比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカ、
からなる成分の混合物から調製された、可動部間の摩擦を低減させるために使用される潤滑製剤であって、
前記粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体、前記ジメチルジクロロシランで後処理されたヒュームドシリカ、及び前記比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカが、ローターステーター内へ直接導入され、それによって、製剤時に、前記粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体、前記ジメチルジクロロシランで後処理されたヒュームドシリカ、及び前記比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカが、前記混合物の表面下で粉砕され、分散され、溶解される、潤滑製剤。
【請求項17】
さらに、0.1〜2%のポリエチレングリコールを含む、請求項16に記載の成分の混合物から調製される潤滑製剤。
【請求項18】
さらに、0.1〜2%のポリメタクリル酸アルキルを含む、請求項17に記載の成分の混合物から調製される潤滑製剤。
【請求項19】
さらに0.1〜2%の選択されたパラフィン系素材に溶解させたポリイソブチレンを含む、請求項18に記載の成分の混合物から調製される潤滑製剤。
【請求項20】
さらに、0.5〜5%のポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項19に記載の成分の混合物から調製される潤滑製剤。
【請求項21】
さらに、0.1〜2%のフェノール系の抗酸化剤を含む、請求項20に記載の成分の混合物から調製される潤滑製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑組成物(lubricating composition)及び潤滑組成物の製造方法に関する。より具体的には、開示された技術は、オイルの目立った分離又は消失がなく、長期間の保管後もなお潤滑特性を維持する、安定性及び性能を高めた潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油及びグリースのような潤滑剤は、可動部間の摩擦を低減させるために使用される。基油、増粘剤、及び添加剤からなる半流動体の生成物に対して、グリースは固体である。グリースは、潤滑油に増粘剤を分散することにより生成される。たいていのグリース増粘剤は、石鹸、例えば、アルミニウム、カルシウム、又はリチウム石鹸である。加えて、種々の高分子増粘剤又は粘性改良剤(viscosity improvers)は、潤滑油及びグリースに粘度を与えるために使用されている。
【0003】
潤滑グリースは、長時間保管される際、油分離する。油分離の程度は、使用した増粘剤、使用した基油及びそれ自身の製造方法のような複数の要素に依存する。グリースを製造する際、基油の含量が増加し、増粘剤の量が減少すると、基油が緩く保持され、容易に分離されるため、グリースは増粘剤と基油との間のバランスを適切にすることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故に、オイルの目立った分離又は消失がなく、保管時もなおその特性を維持する、安定性及び性能を高めた潤滑組成物を製造する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、開示された技術は、主要量の潤滑粘度の基油、並びに少量の添加剤、例えば、粘度調整剤、分散剤、摩擦調整剤、抗酸化剤、抑制剤、粘着性付与剤、及び増粘剤を含むか、或いは混合することにより製造された組成物を提供する。
【0006】
分散剤は粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体であってもよく、増粘剤はヒュームドシリカであってもよい。保管の間、油分離の抑制を図るために、分散剤及び増粘剤は粉砕され、組成物に溶解されてもよい。
【0007】
組成物の基油は、鉱油及びポリアルファオレフィン(PAO)オイルであってもよく、抑制剤はポリエチレングリコールであってもよく、粘度調整剤はポリメタクリル酸アルキルであってもよく、粘着性付与剤は、選択されたパラフィン系素材に溶解させたポリイソブチレンであってもよく、摩擦調整剤はポリテトラフルオロエチレンであってもよく、抗酸化剤はフェノール系の抗酸化剤であってもよい。
【0008】
別の実施形態では、開示された技術は組成物の製造方法を提供できる。組成物は、ケトル(kettle)に粘度調整剤を添加することにより処方されてもよい。次いで、第一の基油がケトルに添加され、アンカー翼(anchor blade)及び撹拌機翼(disperser blade)により混合される。次いで、第二の基油がケトルに添加され、撹拌機翼の速度を上げる。
【0009】
次いで、抗酸化剤及び摩擦調整剤がケトルに添加され、ローター/ステーターアセンブリを使用することにより、ケトル内に真空が形成される。次いで、バキュームワンドにより、分散剤が組成物に添加される。バキュームワンドは、分散剤をローター/ステーターアセンブリ内へ直接導入させることができ、それによって、分散剤が、基油の表面下で粉砕され、分散(discharged)され、溶解される。次いで、ローター/ステーターアセンブリの速度が低下し、それによって、バキュームワンドにより増粘剤が添加され得る。バキュームワンドは、増粘剤をローター/ステーターアセンブリ内へ直接導入させることができ、それによって、増粘剤が、基油の表面下で粉砕され、分散され、溶解される。一度添加されると、ローター/ステーターアセンブリは停止され、カバーポートにより粘着性付与剤及び抑制剤が添加される。次いで、組成物から空気を除去するために、真空が形成される。
【0010】
別の実施形態では、潤滑製剤(lubricating formulation)は、35〜55%の鉱油、30〜50%のPAOオイル、0.5〜5%の粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体、0.5〜5%のジメチルジクロロシランで後処理されたヒュームドシリカ、及び1〜10%の、比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカからなる成分の混合物から調製され得、粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体、ジメチルジクロロシランで後処理されたヒュームドシリカ、及び比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカがローター/ステーター内へ直接導入され、それによって、製剤時に、粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体、ジメチルジクロロシランで後処理されたヒュームドシリカ、及び比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカが、混合物の表面下で粉砕され、分散され、溶解される。
【0011】
他の添加剤は、0.1〜2%のポリエチレングリコール、0.1〜2%のポリメタクリル酸アルキル、0.1〜2%の選択されたパラフィン系素材に溶解させたポリイソブチレン、0.5〜5%のポリテトラフルオロエチレン、及び0.1〜2%のフェノール系の抗酸化剤を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】組成物を調製するのに使用される混合機の斜視図である。
図2a】組成物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2b】組成物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2c】組成物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2d】組成物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多軸混合機1は、潤滑組成物を調製するために使用できる。多軸混合機1は、せん断力を高めるために、分散シャフト12とローター/ステーターアセンブリ14とを組み合わせて動作させる錨型撹拌機10を含んでもよい。錨型撹拌機10、分散シャフト12、及びローター/ステーターアセンブリ14は、モーターアセンブリ8により回転される。
【0014】
また、多軸混合機1は、ケトル16、ケトルカバー18、ケトルジャケット20、カバーポート22、計量ダイアフラムポンプ24、及びバキュームワンド26を含んでもよい。バキュームワンド26は、ローター/ステーターアセンブリ14内へ直接、粉末を導入することができる。
【0015】
錨型撹拌機12は高速撹拌機翼14及びローター/ステーター16内に生成物を供給でき、確実に、混合物が常に動いている状態にできる。また、アンカー翼12は、混合機1の伝熱性能を高めるために、容器壁内部から物質を除去するスクレーパーを備えてもよい。
【0016】
高速分散機14は、被駆動垂直シャフト32及び高せん断ディスク型翼30を含んでもよい。翼30は、5000RPMまでの速度で回転でき、固定混合容器内に放射状の流動パターンを形成できる。また、翼30は、翼の尖った先に対して、容器の中に引き込む渦を形成できる。翼表面は、固体を機械的に引き裂き、これにより、その大きさを小さくし、同時に、分散媒として使用する液体中にそれらを分散させる。
【0017】
高せん断ローター/ステーター混合機16は、固定ステーター内で、高速で回転する単一ステージローターを含んでもよい。回転している翼は、ステーターを通過する際、内容物を機械的にせん断する。また、ローター/ステーター16は、ローター/ステーターエリア内に粉末及び液体を吸い込む強力な真空を形成できる。バキュームワンド26は、流れの中に粉末及び/又は固体を直接導入するための経路を備えてもよい。これにより、同一点で、粉末及び/又は固体をまとめ、混合できる。
【0018】
開示された技術に従って、潤滑組成物の製造方法は多軸混合機内で実施されてもよい。
【0019】
一実施形態では、図2a〜dに示される通り、粘度調整剤が開口したケトルに添加される(工程1)。粘度調整剤は、VISCOPLEX(登録商標)のようなポリメタクリル酸アルキル(PAMA)に基づく添加剤であってもよい。しかしながら、他の種類の粘度調整剤も考慮される。この種類の粘度調整剤は、低温で、より良好なオイルの流れを可能にする。加えて、その粘度調整剤は、高温で適度な潤滑を確保する。また、その粘度調整剤は、動作温度を低下させ、ソイランツ(soilants)及びスート(soot)を分散する効果を有し、潤滑剤及び機械双方の耐用年数をかなり延ばし、酸化及び付着物を減らす。
【0020】
ホットオイルホース40はケトルジャケット20に接続され、約325°Fの温度でケトルジャケット20全体にわたってホットオイルを循環させるために、ケトルヒーター42がつけられている。このとき、ケトルカバーは閉じられている(工程2)。
【0021】
工程3において、基油は、計量されたダイアフラムポンプ24によりケトル16内へ計量される。基油は、組成物の液体成分として使用される鉱油であってもよい。アンカー翼は10〜12RPMの速度で運転され、撹拌機翼は900〜1000RPMに調整される(工程4)。
【0022】
工程5において、合成基油は、計量されたダイアフラムポンプ24によりケトル16内に計量される。合成基油はポリアルファオレフィン(PAO)オイルであってもよい。撹拌機翼は1200〜1250RPMに調整される(工程6)。
【0023】
工程7において、抗酸化剤及び/又は摩擦調整剤は、カバーポート22によって混合物に添加されてもよい。抗酸化剤はフェノール系の抗酸化剤、例えば、IRGANOX(登録商標)L115であってもよい。フェノール系の抗酸化剤は、粘度調整及び沈殿物形成の傾向により測定されるように、熱安定性を改良することによって潤滑製剤の性能を高める。摩擦調整剤は、固形潤滑剤、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい。この種類の摩擦調整剤は、摩擦係数を低減する。撹拌機翼のスピードは、抗酸化剤及び摩擦調整剤を組成物内へ分散する。
【0024】
工程8において、ローター/ステーター高せん断混合機14は、約3300〜3800RPMに設定され、ケトル16は排出口23で通気される。これにより、バキュームワンド26で真空が形成される。真空は、高せん断混合機を経由し、その中で形成される。そのせん断作用は、ワンド注入口で真空を引き起こし、混合機内へ粉末を引き入れ、基油の表面下で粉砕し、分散して、混合機筐体から素材を移す。
【0025】
工程9において、粉末スチレンエチレン/プロピレンブロック共重合体のような分散剤は、混合物内へ吸引される。例えば、KRATON(登録商標)G1701が高せん断混合機及びバキュームワンドを使用して添加される。バッチ温度が約130°Fに達するまで、組成物は混合される。もし、混合機の動作が速すぎ、粉末が吸引され、排出口の外部に吹き出され得るなら、注意する意味がある。粉末が基油により吸収されるのは時間がかかるため、粉末導入の速度を調整することは重要である。これにより、抗酸化剤、分散剤、及び増粘剤が溶融及び/又は溶解し、完全に混合物内へ分散されるようになる。
【0026】
工程10において、ローター/ステーター高せん断混合機の速度は、1300〜1400RPMに低下され、バキュームワンドにより、増粘剤がバッチに徐々に添加され得るように、真空バルブが調整される。増粘剤は、二酸化ケイ素粉末、例えば、AEROSIL(登録商標)R972のような、DDS(ジメチルジクロロシラン)で後処理されたヒュームドシリカであってもよい。この増粘剤は、懸濁液中に粒子を保持し、固い沈殿物の形成を妨げる。
【0027】
第二の増粘剤も混合物中へ吸引されてもよい。また、第二の増粘剤は、二酸化ケイ素粉末、例えば、AEROSIL(登録商標)200のような、比表面積200m/gの親水性ヒュームドシリカであってもよい。この増粘剤は、懸濁液中に粒子を保持し、固い沈殿物の形成を妨げ、混合物の粘度を増加させる。AEROSIL(登録商標)200を導入する際、AEROSIL(登録商標)200が、高すぎる速度により、排出口の外に排出されるのを防ぐ。AEROSIL(登録商標)200は、混合物内へ吸収され得るのに十分ゆっくり導入されなければならない。これを達成するために、第二の増粘剤は、全てを一度に添加する代わりに、いくつかの部分に分けて添加されてもよい。高せん断混合機は、全てのAEROSIL(登録商標)200がバッチ内へ導入されるまで運転される。次いで、高せん断混合機の運転を停止し、真空バルブが閉じられる。
【0028】
工程11において、アンカー翼の速度は28〜30RPMに高められ、温度が約270°Fに達するまで、バッチが混合される。工程12において、粘着性付与剤は、カバーポートにより添加され、5分間混合される。例えば、PARATAC(登録商標)は、選択されたパラフィン系素材に溶解させた、非極性の、無毒の、及び無臭の、高分子量ポリイソブチレン由来の粘着性付与剤であり、潤滑剤利用に対しかなりの結合及び粘着特性を与える。
【0029】
工程13において、抑制剤は同じポートにより添加され、5分追加で間混合される。抑制剤はポリエチレングリコール、例えばP−2000であってもよい。ポリエチレングリコールは、乳化剤又は湿潤剤として使用される、水溶性の液体又はワックス状固形物である。また、ポリプロピレングリコールは発泡成形を抑える。
【0030】
工程14において、高せん断混合機は3300〜3800RPMに設定される。バッチは5分間混合され、空気を除去するために、製剤は真空に供される。
【0031】
工程15において、完全に混合した後、アンカー翼及び撹拌機翼は停止され、オイルホースは外され、カバーは開かれ、バッチが要求に適合するのを確かめる研究室分析のために、試料が取り出される。一度認証されると、バッチは包装処理される。そして、バッチは、オイルの消失がなく、保管時もなおその特性を維持する安定性及び性能を高めた潤滑組成物となる。
【0032】
開示された製造方法の利点は、ローター/ステーター高せん断混合機が2つの作用を実施することである。第一に、混合物中への添加剤の乳化及び分散を高める基油の表面下で、Kraton(登録商標)、PTFE、Aerosil(登録商標)、及びIrganox(登録商標)のような添加剤を導入するために真空を形成する。第二に、Kraton(登録商標)のような粒状の添加剤を、混合物内への粒子の取込みを速め、且つ高める、さらにより小さな粒径に粉砕する。ローター/ステーター高せん断混合機は、バッチ処理の初期における粉砕モードにおいて、3549RPMで動作させるのが好ましいが、小さく絞られた注入口バルブにより1350RPMに低下する。
【0033】
アンカー翼は10〜12RPMで開始し、初期の混合中はスクレーパーとしてのみ作用し、容器の壁面及び底をきれいに保つ。Aerosil(登録商標)が吸引され、混和ちょう度が高まり次第、アンカー翼の速度を、容器の壁面及び底を拭き取るのに加えて、混合処理を助ける28〜30RPMに上げる。
【0034】
本発明は、以下の実施例よりさらに詳述される。しかしながら、その実施例が、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【実施例】
【0035】
0.564重量%のViscoplexを、開口したケトルに加えた。ケトルのカバーを閉めて、ホットオイルホースをケトルジャケットに接続した。ホットオイルがジャケットを通して、325°Fで循環した。カバーの排出口を開口した。46.323重量%の鉱油を、ケトルに加えた。10〜12RPMでアンカー翼の運転を開始した。900〜1000RPMで撹拌機翼の運転を開始した。38.884重量%のPAOオイルを、ケトルに加えた。撹拌機翼の速度を1200〜1250RPMまで高めた。0.211重量%のIrganox及び2.254重量%のPTFEを、カバーのアクセスポートより混合物に添加した。ワンドで真空を発生させながら、高せん断混合機において、3549RPMで混合物を混合した。その後、バキュームワンドより、2.254重量%のKratonを添加し、バッチ温度は130°Fに達することができた。高せん断混合機の速度を1350RPMに下げた。ケトルカバーの排出口からAerosil(登録商標)粉末が抜け出るのを防ぐために、引き入れる真空が低いレベルとなる程度に、混合機バルブを開けた。2.818重量%のAerosil(登録商標)R−972と、5.635重量%のAerosil(登録商標)A−200の1/3の量とを、真空下で混合機に添加した。3分間追加で混合を実施した。残りのAerosil(登録商標)A−200を、真空下で混合機に加えた。混合物を、再び3分間の混合に供した。高せん断混合機モーターを止め、アンカーの速度を28〜30RPMに上げた。バッチ温度が270°Fに達するまで、さらに混合を続けた。その後、カバーのアクセスポートより、0.211重量%のParatacを添加した。5分間混合した後、カバーのアクセスポートよりP−2000を添加し、次いで、排出口カバーを閉じた。空気を除去して、ケトル内に真空を形成するために、高せん断混合機において、3549RPMで、再び回転を開始し、5分間混合を続けた。次いで、アンカー及び撹拌機のモーターを止めた。ホットオイルホースのバルブを閉めて、ホットオイルホースを混合機のケトルから取り除いた。開口したカバーより、バッチの試料を試料カップに取り入れ、次いで研究室での分析に進んだ。
【0036】
本発明は、説明的な方法において説明されており、使用された用語は、本質的に、限定というよりむしろ説明を意図するものであるということを理解されたい。網羅的であること、又は開示された正確な形態に本発明を限定することを意図しない。また、特許請求の範囲が、本願明細書に記載される本発明の、一般的特徴、及び特定の特徴の全てを含むことを意図することを理解されたい。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d