【実施例】
【0028】
実施例に係る車体前部構造10について説明する。
なお、車体前部構造10は略左右対称の構成であり、以下、左側の構成部材と右側の構成部材とに同じ符号を付して左側の構成部材について詳説し、右側の構成部材の説明を省略する。
【0029】
図1、
図2に示すように、車体前部構造10は、車体11の左前側(前側)において車体前後方向に延出される左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)12と、左フロントサイドフレーム12の車幅方向外側に設けられる左フロントピラー(フロントピラー)13と、左フロントピラー13から車体前下方に傾斜して延出される左アッパメンバ(アッパメンバ)14とを備える。
【0030】
また、車体前部構造10は、左アッパメンバ14および左フロントサイドフレーム12を連結する左枝ガセット(枝ガセット)16と、左枝ガセット16および左フロントサイドフレーム12を連結する左連結部(連結部)18と、左連結部18の前端部18aに設けられる左バンパビームエクステンション(バンパビームエクステンション)19と、左バンパビームエクステンション19および右バンパビームエクステンション19の各前端部19aに架け渡されるバンパビーム21とを備える。
【0031】
図3に示すように、左フロントサイドフレーム12は、ロアダッシュパネル22の左側下方から車体前方へ向けて延出され、車体11の骨格を形成する部材である。この左フロントサイドフレーム12は、車内23側に配置されるインナパネル25と、車外24側に配置されるアウタパネル26とを備える。
【0032】
図4に示すように、インナパネル25は、車内23側に対峙するインナ壁31と、インナ壁31の上端から車外24側に張り出されるインナ上面32と、インナ壁31の下端から車外24側に張り出されるインナ下面33と、インナ上面32の外端から上方に張り出される上フランジ34と、インナ下面33の外端から下方に張り出される下フランジ35とを有する。
ここで、上フランジ34は、インナ上面32の前部32a(
図3参照)を除いた部位に形成される。以下、インナ上面32の前部32aを「インナ前上面32a」という。また、インナ下面33の前部33aを「インナ前下面33a」という。
【0033】
インナ壁31、インナ上面32、インナ下面33でインナパネルが断面略U(コ)字状に形成される。
インナ壁31が車内23側に対峙されることにより、インナ壁31で左フロントサイドフレーム12の内壁が形成される。
【0034】
また、アウタパネル26は、車外24側に対峙するアウタ壁部37と、アウタ壁部37の上端から上方に張り出される上フランジ38と、アウタ壁部37の下端から下方に張り出される下フランジ39とを有する。アウタパネル26のアウタ壁部37で左フロントサイドフレーム12の外壁が形成される。
【0035】
インナパネル25の上フランジ34とアウタパネル26の上フランジ38が接合される。また、インナパネル25の下フランジ35と、アウタパネル26の下フランジ39が接合される。これにより、左フロントサイドフレーム12がインナパネル25およびアウタパネル26で断面略矩形状の閉断面に形成される。
【0036】
図5、
図6に示すように、アウタパネル26は、前部を形成する前傾斜部41と、前傾斜部41の車体後方に形成される第1凹部42と、第1凹部42の車体後方に形成される直線部43と、直線部43の車体後方に形成される第3アウタ凹部44(
図3も参照)とを有する。
【0037】
前傾斜部41は、左枝ガセット16に沿って傾斜状に延出される。前傾斜部41が左枝ガセット16の後面16aに接合される。第1凹部42は、前傾斜部41の車体後方向において、車内23側に向けて凹状に形成される。直線部43は、第1凹部42から車体後方へ平坦に延出される。第3アウタ凹部44は、アウタ直線部43の車体後方において、車内23側に向けて凹状に形成される(
図3も参照)。
【0038】
図3、
図6に示すように、インナパネル25は、前部を形成する前直線部46と、前直線部46から車体後方へ平坦に延びる中央直線部47と、中央直線部47の車体後方に形成される第2凹部48と、第2凹部48の車体後方に形成される第3インナ凹部49とを有する。
【0039】
前直線部46は、車体後方へ平坦に延びる前インナ直線壁46aを有する。また、中央直線部47は、前インナ直線壁46aから車体後方へ平坦に延びるインナ中央壁47aを有する。具体的には、インナ中央壁47aは、後述する第1折部51から第2折部52に向けて車体後方向へ平坦に延出される。
さらに、第2凹部48は、インナ中央壁47aの車体後方において、車外24側に向けて凹状に形成される。また、第3インナ凹部49は、第2凹部48の車体後方において、車内23側に向けて凹状に形成される。
【0040】
ここで、左フロントサイドフレーム12は、第1折部51、第2折部52、および第3折部53を含む。第1折部51は、第1凹部42と中央直線部47の前半部47bとで断面略矩形状の閉断面に形成される。第1折部51は、車外24側に第1凹部42を有し、車内23側にインナ中央壁47aを有する。
よって、スモールオーバラップ衝突で入力する衝撃荷重F1により、第1折部51が車幅方向内側(すなわち、車内23側)に矢印Aの如く略V字状に折り曲げられる。
【0041】
ここで、スモールオーバラップ衝突とは、車両の前部のうち車幅方向の1/4の左フロントサイドフレーム12の外側の前側部が車両、立木や電柱などの障害物に衝突することをいう。なお、スモールオーバラップ衝突を、微小ラップ衝突や、ナローオフセット衝突ともいう。
【0042】
また、第2折部52は、直線部43の後半部43aと第2凹部48とで断面略矩形状の閉断面に形成される。第2折部52は、第1折部51の車体後方に位置し、車内23側に第2凹部48を有し、車外24側に直線部43の後半部43aを有する。
よって、スモールオーバラップ衝突で入力する衝撃荷重F1で第2折部52が車幅方向外側(すなわち、車外24側)に矢印Bの如く略V字状に折り曲げられる。
【0043】
さらに、第3折部53は、第3アウタ凹部44と第3インナ凹部49とで断面略矩形状の閉断面に形成される。第3折部53は、第2折部52の車体後方に位置し、車外24側に第3アウタ凹部44を有し、車内23側に第3インナ凹部49を有する。すなわち、第3折部53は、車内23側に向けて凹状に形成される。
【0044】
よって、第3折部53が車体後方から前方に向けて車幅方向外側へ湾曲状に形成される。これにより、左フロントサイドフレーム12の第1折部51や第2折部52側の部位を車外24側(すなわち、車幅方向外側)に広げて配置できる。
したがって、
図1に示すように、左フロントサイドフレーム12および右フロントサイドフレーム12間の車幅方向の寸法W1が大きく確保される。よって、エンジンルーム55の車幅方向の寸法を大きくでき、パワーユニットを搭載する空間が確保される。
【0045】
図3に戻って、第3折部53は、車幅方向の幅寸法W2が第1折部51、第2折部52の幅寸法より大きく形成される。よって、スモールオーバラップ衝突により入力した衝撃荷重F1を第3折部53で支えることができる。これにより、入力した衝撃荷重F1を第1折部51、第2折部52および第3折部53に集中させることができる。
したがって、左フロントサイドフレーム12を第1折部51、第2折部52および第3折部53で良好に折曲げ変形させて、衝撃エネルギの吸収量を高めることができる。
【0046】
また、第3折部53の後端部53aがロアダッシュパネル22で支持される。よって、スモールオーバラップ衝突で入力する衝撃荷重F1により、第2折部52および第3折部53間のフレーム部56が第3折部53を支点にして車幅方向外側(すなわち、車外24側)に矢印Cの如く折り曲げられる。
【0047】
図5に示すように、左フロントサイドフレーム12の車幅方向外側に左フロントピラー13が設けられる。左フロントピラー13から左アッパメンバ14が左枝ガセット16に向けて車体前下方、かつ、車幅方向内側に傾斜して延出される。左アッパメンバ14の前端部14aが左枝ガセット16の前端部16bに連結される。
左アッパメンバ14は、断面略矩形状に形成され、スモールオーバラップ衝突により入力する衝撃荷重F1で折曲げ変形されることにより、衝撃荷重F1を吸収可能な部材である。
【0048】
図6に示すように、左フロントサイドフレーム12の第1折部51から左枝ガセット16が傾斜状に延出される。左枝ガセット16は、インナ中央壁47aから第1折部51の内部57を経て車幅方向外側で、かつ斜め前方へ傾斜状に延出される。
【0049】
図7、
図8に示すように、左枝ガセット16は、ガセット壁部(壁部)61、上接合片(上フランジ)62、下接合片(下フランジ)63、前接合片64、後接合片(後フランジ)65を有する。ガセット壁部61、上接合片62、および下接合片63で左枝ガセット16が断面略U(コ)字状に形成される。
【0050】
ガセット壁部61は、インナ中央壁47aから左バンパビームエクステンション19の後端部19bまで車幅方向外側で、かつ斜め前方へ傾斜状に延出される。ガセット壁部61にビード66が形成される。ビード66は、車内23側に向けて凹むように凹状に形成され、ガセット壁部61の長手方向に延出される。
左枝ガセット16の長手方向にビード66を形成することにより、左枝ガセット16の剛性が高められる。これにより、左枝ガセット16に入力した衝撃荷重がインナ中央壁47a側に良好に伝えられる。
【0051】
また、上接合片62は、ガセット壁部61の上端から車外側に向けて張り出すように折り曲げられる。上接合片62の後部62aがインナ前上面32aに下方から接合される。下接合片63は、ガセット壁部61の下端から車外側に向けて張り出すように折り曲げられる。下接合片63の後部63aがインナ前下面33aに下方から接合される。
【0052】
前接合片64は、ガセット壁部61の前端から車外24側に向けて張り出すように折り曲げられる。前接合片64は、左連結部18の支持壁部69の外端接合部69aに車体後方から接合される。
後接合片65は、ガセット壁部61の後端から車体後方へ向けて張り出すように折り曲げられる。後接合片65がインナ中央壁47aに車外24側から接合される。
【0053】
図6に戻って、上接合片62の内面、下接合片63の内面およびガセット壁部61の後面にアウタパネル26の前傾斜部41が接合される。すなわち、左枝ガセット16がアウタパネル26と別体に構成されている。
左枝ガセット16をアウタパネル26と別体とすることにより、左枝ガセット16の前端部16bに入力した衝撃荷重F2をインナ中央壁47aに良好に伝えることができる。
ここで、インナ中央壁47aは第1折部51から第2折部52に向けて車体後方向へ平坦に延出されている。よって、衝撃荷重F2がインナ中央壁47aを経て第2折部52に良好に伝えられる。
【0054】
図3に示すように、第2折部52の第2凹部48が車外24側に向けて凹状に形成されている。よって、第2折部52に伝えられた衝撃荷重F2で、第2折部52が車外24側へ矢印Bの如く優先的に折り曲げられる。
また、第1折部51の第1凹部42が車内23側に向けて凹状に形成されている。さらに、第3折部53のアウタパネル26が車内23側に向けて凹状に形成されている。よって、第2折部52の変形に追従させて、第1折部51が車内23側へ矢印Aの如く折り曲げられ、第3折部53を支点にしてフレーム部56が車外24へ矢印Cの如く折り曲げられる。
【0055】
左フロントサイドフレーム12が第1折部51、第2折部52および第3折部53で車幅方向へ水平に折曲げ変形することにより、衝撃エネルギの吸収量を高めることができる。これにより、スモールオーバラップ衝突のように、左フロントサイドフレーム12の外側に衝撃荷重F1が入力する場合に、衝撃エネルギの吸収量を特に高めることができる。
【0056】
図7に戻って、左枝ガセット16が左フロントサイドフレーム12のインナパネル25に左連結部18で連結される。左連結部18は、インナパネル25のインナ上面32から張り出される上連結プレート67と、インナパネル25のインナ下面33から張り出される下連結プレート68と、上連結プレート67および下連結プレート68を連結する支持壁部69(
図9も参照)とを備える。
【0057】
図9、
図10に示すように、上連結プレート67は、平面視略三角形の平坦に形成される上プレート部71と、上プレート部71の外端に形成される上接合フランジ72とを有する。
上プレート部71は、インナ前上面32aの外接合片32bから左枝ガセット16の上接合片62に向けて張り出される。上プレート部71の内接合片71aが外接合片32bに下方から接合される。
【0058】
また、上プレート部71の外接合片71bが、左枝ガセット16の上接合片62のうち、後部62a(
図7参照)を除いた部位に上方から接合される。
ここで、上接合片62の後部62aがインナ前上面32a(
図7参照)に下方から接合されている。よって、上接合片62がインナ前上面32aおよび外接合片71bに接合される。
【0059】
上接合フランジ72は、上プレート部71の外接合片(上連結プレートの外端)71bから上方に向けて張り出すように折り曲げられる。上接合フランジ72の前半部72aが左アッパメンバ14の前端部14aに接合される。
【0060】
下連結プレート68は、平面視略三角形の平坦に形成される下プレート部74と、下プレート部74の内端に形成される下内接合フランジ75と、下プレート部74の外端に形成される下外接合フランジ(下接合フランジ)76とを有する。
【0061】
下プレート部74の内端から下内接合フランジ75が折り曲げられて下方へ向けて張り出される。下内接合フランジ75がインナパネル25の下フランジ35に車外24側から接合される。
下内接合フランジ75の上端から下プレート部74が左枝ガセット16の下接合片63に向けて張り出される。換言すれば、下プレート部74は、インナ下面33から左枝ガセット16の下接合片63に向けて張り出される。
【0062】
また、下プレート部74の外接合片74aが、左枝ガセット16の下接合片63のうち後部63a(
図7参照)を除いた部位に上方から接合される。
ここで、下接合片63の後部63aがインナ前下面33a(
図7参照)に下方から接合される。よって、下接合片63がインナ前下面33aおよび外接合片74aに接合される。
【0063】
よって、左枝ガセット16がインナパネル25のインナ前上面32aに上連結プレート67および下連結プレート68を介して強固に連結される。これにより、スモールオーバラップ衝突により左枝ガセット16に入力した衝撃荷重F2で左枝ガセット16がインナパネル25から分離することを防止できる。
【0064】
ここで、
図6に戻って、左枝ガセット16の後接合片65がインナ中央壁47aに接合されている。これにより、左枝ガセット16に入力した衝撃荷重F2が左枝ガセット16からインナ中央壁47aに伝えられる。さらに、インナ中央壁47a伝えられた衝撃荷重F2が、インナ中央壁47aを経て第2折部52に良好に伝えられる。
【0065】
図9、
図10に示すように、下外接合フランジ76は、下プレート部74の外接合片(下連結プレートの外端)74aから下方に向けて張り出すように折り曲げられる。下外接合フランジ76の前半部76aが左アッパメンバ14の前端部14aに接合される。
ここで、上接合フランジ72の前半部72aが左アッパメンバ14の前端部14aに接合されている。このように、上接合フランジ72の前半部72aや下外接合フランジ76の前半部76aが左アッパメンバ14の前端部14aに接合される。
よって、左アッパメンバ14の前端部14aが上連結プレート67や下連結プレート68を介して左枝ガセット16の前端部16bに連結される。
【0066】
また、上接合フランジ72や下外接合フランジ76を左アッパメンバ14に接合することにより、左連結部18に左アッパメンバ14を接合する専用の取付ブラケットを不要にできる。これにより、部品数を減らすことができ、構成の簡易化が図れる。
さらに、左連結部18、左アッパメンバ14(具体的には、前端部14a)および左枝ガセット16で閉断面の部位78が断面略矩形状に形成される。これにより、左連結部18と左アッパメンバ14とが強固に接合され、左連結部18と左アッパメンバ14との接合部の強度・剛性が高められる。
【0067】
この状態において、
図2に示すように、左アッパメンバ14と左枝ガセット16とが車幅方向に対して略左右対称に傾斜される。具体的には、左アッパメンバ14が車体前方から後方へ向けて水平方向の傾斜角θ1で車外24側に傾斜状態に設けられる。また、左枝ガセット16が車体前方から後方へ向けて水平方向の傾斜角θ2で車内23側に傾斜状態に設けられる。
【0068】
よって、スモールオーバラップ衝突により入力する衝撃荷重F1が、左枝ガセット16に衝撃荷重F2、左アッパメンバ14に衝撃荷重F3として略均等に分散される。これにより、左枝ガセット16に伝えられた衝撃荷重F2を左フロントサイドフレーム12の折曲げ変形で吸収でき、左アッパメンバ14に伝えられた衝撃荷重F3を左アッパメンバ14の折曲げ変形で吸収できる。
このように、スモールオーバラップ衝突により入力する衝撃荷重F1を左フロントサイドフレーム12と左アッパメンバ14との2部材で吸収でき、衝撃エネルギの吸収量を高めることができる。
【0069】
図9に示すように、上連結プレート67の前端67aおよび下連結プレート68の前端68aが支持壁部69で連結される。支持壁部69は、前面視略矩形状に形成され、外端接合部69aに左枝ガセット16の前接合片64が車体後方から接合される(
図7も参照)。
【0070】
上連結プレート67、下連結プレート68、支持壁部69で左連結部18が、車体前後方向において断面略U(コ)字状に形成される。よって、左連結部18、インナパネル25および左枝ガセット16で平面視略台形状のボックス構造に形成される。これにより、左連結部18、インナパネル25および左枝ガセット16が強固に連結される。
また、支持壁部69と、左フロントサイドフレーム12の前端部12aとに取付ブラケット81が設けられる。
【0071】
図2に戻って、取付ブラケット81に左バンパビームエクステンション19の後端部19bが取り付けられる。すなわち、支持壁部69と、左フロントサイドフレーム12の前端部12aとに左バンパビームエクステンション19が取付ブラケット81を介して支持される。
ここで、左連結部18、インナパネル25および左枝ガセット16で平面視略台形状のボックス構造に形成されている。よって、左連結部18の支持壁部69およびインナパネル25で左バンパビームエクステンション19が強固に支持される。これにより、左バンパビームエクステンション19の支持剛性が高められる。
【0072】
左バンパビームエクステンション19は、衝撃荷重を吸収可能なクラッシュボックス、衝撃吸収部である。よって、左バンパビームエクステンション19の支持剛性が高められることにより、スモールオーバラップ衝突の初期において、左バンパビームエクステンション19を好適に潰して衝撃荷重F1を吸収できる。
このように、左連結部18、インナパネル25および左枝ガセット16でボックス構造を形成する簡易な構成で、スモールオーバラップ衝突の初期において、左バンパビームエクステンション19を好適に潰して衝撃荷重F1を吸収できる。
【0073】
図1に戻って、左バンパビームエクステンション19の前端部19aおよび右バンパビームエクステンション19の前端部19aにバンパビーム21が架け渡される。すなわち、左バンパビームエクステンション19の前端部19aにバンパビーム21の左端部21aが設けられる。また、右バンパビームエクステンション19の前端部19aにバンパビーム21の右端部21bが設けられる。
【0074】
つぎに、車体前部構造10でスモールオーバラップ衝突の衝撃荷重を吸収する例を
図11〜
図12に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、スモールオーバラップ衝突の初期において、スモールオーバラップ衝突によりバンパビーム21の左端部21aに衝撃荷重F4が入力する。左端部21aに入力した衝撃荷重F4が左バンパビームエクステンション19に伝えられる。
【0075】
図11(b)に示すように、左バンパビームエクステンション19に衝撃荷重F4が伝えられることにより、左バンパビームエクステンション19が衝撃荷重F4で潰される(軸圧壊される)。左バンパビームエクステンション19が潰れることにより、衝撃荷重F1の一部が吸収される。
【0076】
左バンパビームエクステンション19で衝撃荷重F4の一部を吸収した後、スモールオーバラップ衝突の後期において、衝撃荷重F1の残りの荷重が左枝ガセット16と左アッパメンバ14とに略均等に分散される。
具体的には、衝撃荷重F1の残りの荷重が左枝ガセット16に衝撃荷重F5として分散され、左アッパメンバ14に衝撃荷重F6として分散される。
【0077】
左枝ガセット16に伝えられた衝撃荷重F5が左フロントサイドフレーム12のインナ中央壁47aを経て第2折部52に伝えられる。第2折部52に伝えられた衝撃荷重F5で、第2折部52が車外24側へ矢印Dの如く優先的に折れ曲がる。
第2折部52の変形に追従して、第1折部51が車内23側へ矢印Eの如く折れ曲がる。さらに、フレーム部56が第3折部53を支点にして車外24へ矢印Fの如く折れ曲がる。
【0078】
また、左アッパメンバ14に衝撃荷重F6が伝えられることにより、衝撃荷重F6で左アッパメンバ14が車外24側へ矢印Gの如く変形する。
【0079】
図12に示すように、左フロントサイドフレーム12が第2折部52、第1折部51および第3折部53で車幅方向へ略水平に折曲げ変形する。よって、左枝ガセット16に伝えられた衝撃荷重F5を左フロントサイドフレーム12の折曲げ変形で吸収できる。
【0080】
また、左アッパメンバ14に伝えられた衝撃荷重F6で左アッパメンバ14が変形する。これにより、左アッパメンバ14の折曲げ変形で衝撃荷重F6を吸収できる。
【0081】
このように、車体前部構造10によれば、スモールオーバラップ衝突の初期において、左バンパビームエクステンション19を潰して衝撃荷重F1の一部を吸収できる。
さらに、スモールオーバラップ衝突の後期において、衝撃荷重F1の残りの荷重を左枝ガセット16と左アッパメンバ14とに略均等に分散できる。左枝ガセット16に分散された衝撃荷重F5を左フロントサイドフレーム12の折曲げ変形で吸収できる。また、左アッパメンバ14に分散された衝撃荷重F6を左アッパメンバ14の折曲げ変形で吸収できる。
これにより、スモールオーバラップ衝突による衝撃エネルギの吸収量を高めることができる。
【0082】
なお、本発明に係る車体前部構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、左枝ガセット16の後接合片65をインナ中央壁47aに接合させる例について説明したが、これに限るものではなく、左枝ガセット16の後接合片65をインナ中央壁47aに所定間隔をおいて対峙させることも可能である。
この状態においても、左枝ガセット16に入力する衝撃荷重をインナ中央壁47aに良好に伝えることができる。これにより、左フロントサイドフレーム12を、実施例と同様に、第1折部51、第2折部52、第3折部53で良好に折り曲げることができる。
【0083】
また、前記実施例では、左アッパメンバ14の前端部14aを上連結プレート67や下連結プレート68を介して左枝ガセット16の前端部16bに連結する例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、左アッパメンバ14の前端部14aを左枝ガセット16の前端部16bに直接連結させることも可能である。
【0084】
さらに、前記実施例で示した車体前部構造、車体、左フロントサイドフレーム、左フロントピラー、左アッパメンバ、左枝ガセット、左連結部、左バンパビームエクステンション、バンパビーム、インナパネル、アウタパネル、第1〜第3の凹部、インナ中央壁、第1〜第3の折部、ガセット壁部、上下の接合片、後接合片、ビード、上下の連結プレートや支持壁部などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。