特許第6284600号(P6284600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6284600
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】照明バトン装置、および照明システム
(51)【国際特許分類】
   A63J 5/02 20060101AFI20180215BHJP
   F21V 21/38 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   A63J5/02
   F21V21/38
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-194434(P2016-194434)
(22)【出願日】2016年9月30日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】595172182
【氏名又は名称】株式会社テレビ東京
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】水野 暁夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 佳宜
(72)【発明者】
【氏名】新藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】本堂 武志
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−318727(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0231148(US,A1)
【文献】 米国特許第05361565(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63J 5/02
F21V 21/38
A63J 1/02
F21S 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが独立して昇降移動可能に天井から垂設されて、鉛直方向と直交する第1方向に延設され、前記鉛直方向および前記第1方向と直交する第2方向に沿って複数台並べて設けられた照明バトン装置であって、
前記天井から昇降移動可能に垂設された本体と;
この本体から鉛直下方に垂設されて前記第1方向に延設された第1バトンと;
前記本体に対して前記第2方向にスライド可能に設けたスライド部材と;
このスライド部材の前記本体から離間した前記第2方向の先端から鉛直下方に垂設されて前記第1方向に延設された第2バトンと;
を有する照明バトン装置。
【請求項2】
前記スライド部材の前記先端に対して前記第1方向に延びた軸線を中心に回動可能に設けられ、回動の先端に前記第2バトンを備えた回動アームをさらに有する、
請求項1の照明バトン装置。
【請求項3】
前記第2バトンを前記スライド部材の前記先端の鉛直下方に吊下げた吊下げ位置と前記第2バトンを前記スライド部材の前記先端の鉛直上方に跳ね上げた収納位置のそれぞれにおいて前記スライド部材の前記先端に対する前記回動アームの回動を選択的に禁止するロック機構をさらに有する、
請求項2の照明バトン装置。
【請求項4】
前記第2バトンは前記第1方向に分割された複数の分割バトンを含み、前記スライド部材がこれら複数の分割バトンに対応して複数設けられ、これら各分割バトンが前記回動アームを介して前記対応するスライド部材の前記先端に対して前記第1方向に延びた軸線を中心に回動可能に設けられ、前記各分割バトン毎に前記ロック機構を備える、
請求項3の照明バトン装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかの照明バトン装置を前記第2方向に沿って複数台並設した照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、テレビスタジオや劇場などの天井から照明器具を吊り下げる照明バトン装置、およびこの照明バトン装置を複数台並設した照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビスタジオや劇場などの天井から照明器具を吊り下げる場合、複数台の照明器具をまとめて昇降移動可能に支持することができる照明バトン装置を用いている。照明バトン装置は、一般に、複数台の照明器具を吊り下げるバトン、天井に設置したグリッドに固設した巻上機、およびバトンを巻上機に接続した複数本の吊下げワイヤーを有する。
【0003】
例えば、スタジオセットの上方から所望する照明光を照射するためには、スタジオセットのレイアウトに応じて複数台の照明器具を用意して、各照明器具の高さ位置を個別に調整することが望ましい。このため、通常は、複数台の照明バトン装置を比較的狭い間隔で並べて配置して、各照明バトン装置にそれぞれ取り付けた複数台の照明器具の高さ位置を照明バトン装置毎に個別に調整するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−141458号公報
【特許文献2】特開2010−5195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、照明バトン装置を狭い間隔で複数台配置した場合、所望する照明光を照射することができる反面、巻上機の台数も多くなり、天井のグリッドに取り付ける照明設備全体としての重量が重くなってしまう。また、巻上機の台数が多くなると、その分、照明設備が高価になってしまう。
【0006】
このため、照明バトン装置の台数を増やさずに少し間隔を空けて配置して、隣接する照明バトン装置の間に追加の照明器具を取り付けるための渡しバトンを架け渡す方法が知られている。しかし、このような渡しバトンを用いると、渡しバトンの両端にある2台の照明バトン装置の高さを揃える必要がある。つまり、これら2台の照明バトン装置の高さを異ならせてしまうと、渡しバトンに取り付けた追加の照明器具が傾いてしまい、最悪の場合、渡しバトンが折れてしまう可能性さえある。
【0007】
よって、比較的安価な装置構成により所望する照明光を照射することができる照明バトン装置、および照明システムの開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の実施形態に係る照明バトン装置は、それぞれが独立して昇降移動可能に天井から垂設されて、鉛直方向と直交する第1方向に延設され、鉛直方向および第1方向と直交する第2方向に沿って複数台並べて設けられる。各照明バトン装置は、天井から昇降移動可能に垂設された本体と;この本体から鉛直下方に垂設されて第1方向に延設された第1バトンと;本体に対して第2方向にスライド可能に設けたスライド部材と;このスライド部材の本体から離間した第2方向の先端から鉛直下方に垂設されて第1方向に延設された第2バトンと;を有する。
【0009】
第2の実施形態に係る照明バトン装置は、スライド部材の先端に対して第1方向に延びた軸線を中心に回動可能に設けられ、回動の先端に第2バトンを備えた回動アームをさらに有する。
【0010】
第3の実施形態に係る照明バトン装置は、第2バトンをスライド部材の先端の鉛直下方に吊下げた吊下げ位置と第2バトンをスライド部材の先端の鉛直上方に跳ね上げた収納位置のそれぞれにおいてスライド部材の先端に対する回動アームの回動を選択的に禁止するロック機構をさらに有する。
【0011】
第4の実施形態に係る照明バトン装置によると、第2バトンは第1方向に分割された複数の分割バトンを含み、スライド部材がこれら複数の分割バトンに対応して複数設けられ、これら各分割バトンが回動アームを介して対応するスライド部材の先端に対して前記第1方向に延びた軸線を中心に回動可能に設けられ、各分割バトン毎にロック機構を備える。
【0012】
第5の実施形態に係る照明システムは、上記の照明バトン装置を第2の方向に沿って複数台並設したものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の実施形態の照明バトン装置によると、比較的安価な装置構成により、第1バトンに加えてスライド可能な第2バトンを設けることができ、バトンの本数に対する巻上機の台数を少なくすることができ、且つ所望する照明光を照射することができる。
【0014】
第2の実施形態の照明バトン装置によると、第2バトンを使用しない場合に回動アームを回動して第2バトンを収納することができ、第1バトンに対する照明器具の取り付けを容易にできる。
【0015】
第3の実施形態の照明バトン装置によると、第2バトンを吊下げ位置と収納位置にロックすることができ、第2バトンの使用時に不用意に回動してしまう不具合を防止することができ、収納した第2バトンが不用意に回動してしまう不具合を防止することができる。
【0016】
第4の実施形態の照明バトン装置によると、第2バトンが複数に分割された分割バトンを含み、各分割バトンを独立して動作させることができるため、使用しない分割バトンを収納して装置構成をコンパクトにすることができ、利便性を向上させることができる。
【0017】
第5の実施形態の照明システムによると、第2バトンのスライド方向に複数台の照明バトン装置を並設したため、照明バトン装置の第2方向に沿った配置間隔を広げることができ、照明バトン装置の台数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る照明バトン装置をその並び方向から見た正面図である。
図2図2は、図1の照明バトン装置を矢印II方向から見た側面図である。
図3図3は、図1の照明バトン装置を天井側から見た平面図である。
図4図4は、図1の照明バトン装置の要部を示す斜視図である。
図5図5は、図1の照明バトン装置の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る照明バトン装置100をその並び方向から見た正面図であり、図2は、この照明バトン装置100を図1の矢印II方向から見た側面図であり、図3は、この照明バトン装置100を図1の矢印III方向から見た平面図である。また、図4および図5は、それぞれ、照明バトン装置100の要部を示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、照明バトン装置100は、テレビスタジオや劇場などの建物の天井に固設した井桁状のグリッドGから鉛直下方に垂設されている。グリッドGには、照明バトン装置100を昇降移動させるための方向変車を備えた昇降機102が固設されている。昇降機102は、照明バトン装置100を吊り下げた4本(図1では2本のみ図示)の吊りワイヤー101を同じ速度で同時に巻き上げる。つまり、この昇降機102は、照明バトン装置100を水平な姿勢のまま昇降移動させることができるようになっている。
【0021】
各吊りワイヤー101の下端は、それぞれ、略鉛直方向に延びた吊りアーム112を介して照明バトン装置100の本体フレーム110(本体)に固設されている。吊りアーム112は、照明バトン装置100の長手方向(図1で左右方向;第1方向)の両端に2本ずつ設けられている。各吊りワイヤー101の下端は、各吊りアーム112の上端に取り付けられている。また、各吊りアーム112の下端は、L字金具113を介してネジ114により本体フレーム110に締結固定されている(図5)。
【0022】
図2に示すように、吊りワイヤー101は、照明バトン装置100の長手方向の両端において装置の並び方向(図示左右方向;第2方向)に離間して2本ずつ設けられている。吊りアーム112も、照明バトン装置100の両端に2本ずつ設けられている。照明バトン装置100の長手方向の各端部に設けたそれぞれ2本の吊りアーム112は、照明バトン装置100の並び方向に沿って上方に向けて互いに離間する方向に傾斜している。言い換えると、照明バトン装置100の両端に設けた2組の吊りアーム112は、それぞれ、天井に向けて並び方向に拡開している。
【0023】
これにより、照明バトン装置100の吊りワイヤー101による吊下げ位置が並び方向に拡がることになり、照明バトン装置100の吊下げ姿勢を安定させることができ、照明バトン装置100を並び方向に揺れ難くすることができる。このため、照明バトン装置100を昇降移動する際に、隣接する他の照明バトン装置100に取り付けた図示しない照明器具や図示しない美術バトン(幕やパネルなど)などに干渉する不具合を防止することができる。
【0024】
上記のように、天井から昇降移動可能に垂設した照明バトン装置100は、鉛直方向およびその長手方向(第1方向)と直交する短手方向(第2方向)に所定距離離間して複数台並べて設けられ、天井の照明設備を構成する。また、必要に応じて、美術バトンが照明バトン装置100の間に配置される。本実施形態の照明バトン装置100は、それぞれ独立して昇降移動可能に設けられているため、並び方向に隣接する2台の照明バトン装置100の間に美術バトンなどを配置するスペースを設けることができる。
【0025】
なお、本実施形態の照明バトン装置100は、後述する第1バトン20および第2バトン30、30に照明器具を引っ掛けて使用する装置であるが、照明器具以外にマイクロフォンなどの音響機器を取り付けることもできる。或いは、美術バトンを用いないで、膜やパネルを照明バトン装置100に取り付けることもできる。
【0026】
図3に示すように、照明バトン装置100の本体フレーム110は、短手方向に互いに離間して長手方向に互いに平行に延びた2本のメインフレーム110aを有する。上述した4本の吊りアーム112は、それぞれメインフレーム110aの長手方向の両端近くでメインフレーム110aの上面に締結固定されている。メインフレーム110aは、照明バトン装置100の略全長にわたって延びている。
【0027】
また、本体フレーム110は、2本のメインフレーム110aの間をつなぐ短手方向に延びた複数本のサブフレーム110bを有する。さらに、本体フレーム110の下面側には、配線のための中空のダクト110cが取り付けられている。ダクト110cは、本体フレーム110の全長をわずかに超える長さを有する。
【0028】
図1に示すように、本体フレーム110の上面側、すなわち天井側には、図示しないケーブルを収容するためのケーブル用カゴ10が設けられている。ケーブルは、折り畳んだ状態でケーブル用カゴ10内に収容され、照明バトン装置100の鉛直下方への移動に伴いケーブル用カゴ10から引き出される。図3では、照明バトン装置100の他の構成を見易くするため、ケーブル用カゴ10を破線で図示してある。
【0029】
照明バトン装置100は、複数台の照明器具(図示せず)を吊り下げ支持するためのものであるため、天井から導出したケーブルを接続する必要がある。ケーブルには、複数台の照明器具(図示せず)に給電するための給電線、および各照明器具を点灯制御するための制御信号を送信する制御線が含まれている。
【0030】
図1および図2に示すように、本体フレーム110の下面側の短手方向の中央には、第1バトン20が垂設されている。具体的には、第1バトン20は、3本の支持アーム22を介してダクト110cの長手方向に延びた下面110dから鉛直下方に垂設されている。第1バトン20は、メインフレーム110aをわずかに超える長さを有して本体フレーム110の長手方向と平行(第1方向)に延設されている。第1バトン20は、本体フレーム110に固定されている。
【0031】
本実施形態では、第1バトン20は、その長手方向の両端近くおよび中央にて3本の支持アーム22を介して本体フレーム110のダクト110cの下面110dから垂設されている。なお、第1バトン20の長手方向の両端は、図1に破線で示すように長手方向の外側にさらに伸長可能な構造を有する。また、ダクト110cの下面110dから上方に拡がる方向に傾斜した2つの傾斜面110eには、複数個のコンセント115が設けられている。
【0032】
図示しない照明器具を照明バトン装置100に取り付ける場合、照明器具側の図示しないフックを第1バトン20(或いは後述する第2バトン30、30)に引っ掛けて照明器具を吊り下げる。そして、照明器具の図示しない電源コードを近くのコンセント115に差し込む。本実施形態では、コンセント115は、傾斜面110eの長手方向に離間して8個設けられ、下面110dの両側で合計16個のコンセント115が設けられている。
【0033】
しかし、ダクト110cの2つの傾斜面110eに設けるコンセント115の個数は任意に設計可能であり、照明バトン装置100の長さによって変わるものである。また、図示しない分岐タップコードなどを用いてコンセント115の口数を増やすこともできる。
【0034】
本実施形態の照明バトン装置100は、上述した第1バトン20以外に、2組の第2バトン30、30を有する。第2バトン30、30は、第1バトン20を間に挟んで照明バトン装置100の短手方向の両側に設けたものであり、2組の第2バトン30、30は、略同じ構造を有する。第2バトン30、30は、本体フレーム110に対して展開および収納可能に設けられている。
【0035】
各第2バトン30は、長手方向に2分割した2本の分割バトン30’、30’をそれぞれ含む。つまり、本実施形態の照明バトン装置100は、第1バトン20を間に挟んで両側に2本ずつ計4本の分割バトン30’を有する。分割バトン30’の分割数は任意に設定可能である。図3では、他の構造を見易くするため、分割バトン30’(すなわち第2バトン30)の図示を省略してある。
【0036】
本体フレーム110には、4本の分割バトン30’をそれぞれ独立して照明バトン装置100の短手方向にスライドさせるとともに後述する吊下げ位置と収納位置との間で回動させるための4組のスライド回動機構40が設けられている。4組のスライド回動機構40は、略同じ構造を有するため、以下の説明では1つのスライド回動機構40について代表して説明する。
【0037】
スライド回動機構40は、本体フレーム110に対して短手方向にスライドする2本のスライドロッド41、2本のスライドロッド41の本体フレーム110から短手方向に離間した先端42同士をつないだ連結ロッド43、連結ロッド43の中央に設けた補助ロッド44、および分割バトン30’を2本のスライドロッド41の先端42に対して回動可能に連結した2本の回動アーム45を有する。2本のスライドロッド41、連結ロッド43、および補助ロッド44は、スライド部材として機能する。
【0038】
2本のスライドロッド41は、手前側のメインフレーム110aに設けた例えばスライドブッシュなどのリニアベアリング52を介してメインフレーム110aに挿通される。リニアベアリング52の短手方向の内側にはスライドロッド41をスライド可能に受け入れるスライドスリーブ53が設けられている。スライドスリーブ53は、2本のメインフレーム110aの間に架け渡されている。リニアベアリング52を用いることで、スライドロッド41を高精度に短手方向に直動させることができる。
【0039】
補助ロッド44は、手前側のメインフレーム110aを貫通してスライドスリーブ51内に挿通配置される。スライドスリーブ51は、一対のメインフレーム110aの間に設けられている。補助ロッド44は、連結ロッド43の中央のたわみを防止するよう機能する。連結ロッド43は、本体フレーム110と平行に延びている。
【0040】
しかして、図3に実線で示す位置から連結ロッド43を本体フレーム110から離間する方向に引っ張ると、2本のスライドロッド41がリニアベアリング52によって支持された状態でスライドスリーブ53内をスライドし、補助ロッド44がスライドスリーブ51内をスライドする。連結ロッド43を本体フレーム110から最も離間させた位置まで引き出した状態を図3に破線で示す。スライドロッド41の基端には、図示しない抜け止め構造が設けられている。
【0041】
逆に連結ロッド43を図3に破線で示す位置から本体フレーム110に近付く方向に押し込むと、2本のスライドロッド41がリニアベアリング52によって支持された状態でスライドスリーブ53内を逆方向にスライドし、補助ロッド44がスライドスリーブ51内を逆方向にスライドする。連結ロッド43を押し込んだ状態で2本のスライドロッド41の基端に対向する位置の奥側のメインフレーム110aには、スライドロッド41の衝突による衝撃を緩衝する緩衝部材55(図3)が設けられている。
【0042】
また、スライド回動機構40は、2本のスライドロッド41の先端42に分割バトン30’を回動可能に支持した2本の回動アーム45を有する。各回動アーム45の回動の基端は、それぞれ対応するスライドロッド41の先端42に回動可能に連結されている。分割バトン30’は、2本の回動アーム45の回動の先端に両端を固定し、2本の回動アーム45の間に架け渡されている。分割バトン30’は、照明バトン装置100の長手方向と平行(第1方向)に延びている。
【0043】
また、各スライド回動機構40の一方のスライドロッド41の先端42には、回動アーム45の回動を2位置でロックするロック機構60が設けられている。ロック機構60は、分割バトン30’をスライドロッド41の先端42に対して鉛直下方に吊下げた吊下げ位置(図2に二点鎖線で示す位置)と鉛直上方に跳ね上げた収納位置(図2に実線で示す位置)のそれぞれにおいて、先端42に対する回動アーム45の回動を禁止するよう回動アーム45をロックする。
【0044】
図5に示すように、ロック機構60は、スライドロッド41の先端42に設けたロックピン61、このロックピン61に対応して回動アーム45の回動の基端に設けた図示しない2つのロック孔、およびロックピン61をロック孔に向けて付勢する図示しないバネを有する。2つのロック孔は、回動アーム45を吊下げ位置に回動した状態でロックピン61に対向する位置、および回動アーム45を収納位置に回動した状態でロックピン61に対向する位置に設けられている。
【0045】
しかして、収納位置に固定されている回動アーム45を吊下げ位置に回動して固定する場合、作業者は、一方の手でロックピン61を引っ張って一方のロック孔からロックピン61を抜き、この状態で他方の手で分割バトン30’を180°回動させて鉛直下方まで引き下げて、ロックピン61を離す。これにより、ロックピン61が他方のロック孔に挿通され、回動アーム45が吊下げ位置にロックされる。
【0046】
一方、吊下げ位置に固定されている回動アーム45を収納位置に回動して固定する場合、作業者は、一方の手でロックピン61を引っ張って他方のロック孔からロックピン61を抜き、この状態で他方の手で分割バトン30’を180°回動させて鉛直上方まで引き上げて、ロックピン61を離す。これにより、ロックピン61が一方のロック孔に挿通され、回動アーム45が収納位置にロックされる。
【0047】
なお、本体フレーム110の短手方向に対向した2組のスライド回動機構40のスライドロッド41が互いに干渉することのないように、スライドロッド41を収容したスライドスリーブ53は長手方向にずらして並べて取り付けられている。このため、本体フレーム110の短手方向に対向した2本の分割バトン30’は、長手方向にずれている。本実施形態では、図3で上方の2本の分割バトン30’を中央に寄せて配置し、図3で下方の2本の分割バトン30’を互いに離間させて配置した。
【0048】
これ以外に、本体フレーム110の短手方向の両側で分割バトン30’の長さを異ならせることでスライドロッド41の干渉を防止する方法が考えられるが、長さの異なる分割バトン30’(および長さの異なる連結ロッド43)を作成し且つ保管管理する必要があり、製造コストが増大し管理コストが増大する。これに対し、本実施形態のように、分割バトン30’を本体フレーム110の短手方向の両側で長手方向に互いにずらすことで、分割バトン30’(および連結ロッド43)の長さを1種類にすることができ、製造コストおよび管理コストを抑えることができる。
【0049】
また、第2バトン30、すなわち分割バトン30’は、使用しない場合、図2に実線で示す状態に収納することができる。図1は、第2バトン30を収納した状態を示している。この状態で、2本の第2バトン30は使用不可能な状態となり、照明バトン装置100の外形が最も小さくなる。第1バトン20のみを使用する運用時には、2本の第2バトン30をこの状態に配置する。
【0050】
また、この状態(第2バトン30を収納した状態)で、第1バトン20に加えて、本体フレーム110に対して短手方向に離接可能な連結ロッド43にも照明器具を取り付けることができる。この場合、第1バトン20と連結ロッド43が上下方向に段違いとなり、第1バトン20に取り付けた照明器具と連結ロッド43に取り付けた照明器具の照射光が互いに干渉することがなく、より多くの照明器具を取り付けることができる。
【0051】
なお、図2に実線で示す収納位置に第2バトン30を配置すると、第1バトン20に対する照明器具の取り付けを容易にできる。仮に、第2バトンが図2に二点鎖線で示す吊下げ位置に回動されている場合、第1バトン20の短手方向の両側に第2バトン30があるため、第1バトン20への照明器具の取り付けの邪魔になる。これに対し、第2バトン30を図2に実線で示す位置へ跳ね上げておくと、第1バトン20へ照明器具を引っ掛けやすくなり、連結ロッド43への照明器具の取り付けも容易になり、作業性を向上させることができる。
【0052】
一方、第2バトン30を展開して使用する場合、まず、図2に実線で示す収納状態から、ロック機構60によるロックを解除して、第2バトン30を図2に二点鎖線で示す吊下げ位置へ回動する。そして、この状態から、連結ロッド43を短手方向の外側に引っ張って、第2バトン30を図2に破線で示す展開位置へ引き出す。このとき、連結ロッド43の引き出し量は所望する長さにすることができ、短手方向の最大幅まで引き出す必要はない。
【0053】
また、展開した状態の第2バトン30を収納する場合、まず、図2に破線で示す展開した状態から、連結ロッド43を短手方向の内側に押し込んで、図2に二点鎖線で示す状態に縮める。そして、この状態から、ロック機構60によるロックを解除して、第2バトン30を図2に実線で示す収納位置へ回動させる。
【0054】
仮に、連結ロッド43を破線で示す位置まで引き出した状態で第2バトン30を回動させようとした場合、第2バトン30の回動のための比較的大きなスペースが必要になり、隣接する照明バトン装置100の照明器具に接触し易くなってしまう。このため、連結ロッド43を本体フレーム110に近付けた状態で回動アーム45を回動させることが望ましい。
【0055】
以上のように、本実施形態の照明バトン装置100によると、第1バトン20に加えて2本の第2バトン30を展開して使用することができるため、1台の照明バトン装置100に取り付けできる照明器具の台数を増やすことができ、利便性を向上させることができる。また、本実施形態によると、例えば、照明器具を分散して配置することもでき、照明演出効果に多様性を持たせることができる。
【0056】
一方、両側の第2バトン30を収納して照明バトン装置100をスリム化することもでき、照明バトン装置100のレイアウトの自由度をより高めることができる。つまり、本実施形態によると、照明バトン装置100をコンパクトに収納して直線的に使用することもでき、且つ展開して平面的に使用することもでき、使用目的に応じた運用が可能となる。
【0057】
また、1台の照明バトン装置100に取り付けできる照明器具の台数を増やせることから、照明設備全体として、昇降機102の台数を少なくすることができ、照明設備全体の重量を軽くすることができ、スタジオ天井部にかかる荷重を軽減することができ、照明設備全体としての製造コストを抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態によると、第1バトン20のみを使用することもでき、複数本(本実施形態では4本)の分割バトン30’を選択的に使用することもでき、第1および第2バトン20、30を全て使用することもでき、さらには連結ロッド43をバトンとして使用することもでき、照明バトン装置100の用途を拡大することができる。さらに、第1バトン20を延長することもでき、さらに取り付け可能な照明器具の台数を増やすこともできる。
【0059】
また、本実施形態によると、両側の第2バトン30を展開することができるため、従来のように渡しバトンを使用する必要がなく、利便性を向上させることができる。つまり、渡しバトンを用いないことから、各照明バトン装置100を独立して昇降移動することができ、且つ照明バトン装置100の間に美術バトンなどを配置することも可能となり、照明器具のレイアウトの自由度をより高めることができる。
【0060】
また、本実施形態によると、照明バトン装置100を昇降移動させて照明器具の高さを任意に設定できることに加えて、各スライド回動機構40のスライドロッド41の突没状態を任意に設定できるため、照明器具のレイアウトの自由度をより高めることができる。また、照明バトン装置100を独立して昇降移動可能であることから、照明バトン装置100の間に美術バトンなどを配置するスペースを設けることができ、美術バトンのレイアウトの自由度を高めることができる。
【0061】
さらに、本実施形態によると、収納位置へ配置した分割バトン30’をロックすることができ、収納した分割バトン30’が不用意に回動する不具合を防止でき、照明器具等にぶつかって破損する不具合を防止することができる。また、吊下げ位置へ配置した分割バトン30’をロックすることができ、分割バトン30’の使用時に照明器具が不用意に移動する不具合を防止することができる。
【0062】
[実施例]
従来の照明バトン装置(1本のバトンのみを有する)が、一般的に、使い易いとされている1500mmピッチで並べて配置されているのに対し、上述した実施形態の照明バトン装置100は、その並び方向に沿って1900mmピッチで配置した。この場合、400mmのピッチの差があるが、本実施形態の照明バトン装置100は、2本の第2バトン30(4本の分割バトン30’)を有するため、このピッチ差を補完することができる。
【0063】
つまり、本実施形態の照明バトン装置100は、2本の第2バトン30を収納した最もコンパクトな状態にしたときの短手方向の幅を600mmとし、各第2バトン30を伸長可能な長さをそれぞれ300mmとしたため、第1バトン20を中心に短手方向の両側に300mm〜600mmの間で任意の位置に第2バトン30を配置することができる。このため、上述した400mmのピッチ差を補完することができる。
【0064】
上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上述した実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、スライド回動機構40の回動アーム45を収納位置と吊下げ位置の2位置に固定する場合について説明したが、これに限らず、回動の途中で仮留めできる構成を追加しても良い。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
それぞれが独立して昇降移動可能に天井から垂設されて、鉛直方向と直交する第1方向に延設され、前記鉛直方向および前記第1方向と直交する第2方向に沿って複数台並べて設けられた照明バトン装置であって、
前記天井から昇降移動可能に垂設された本体と;
この本体から鉛直下方に垂設されて前記第1方向に延設された第1バトンと;
前記本体に対して前記第2方向に伸縮可能に設けた伸縮部材と;
この伸縮部材の前記本体から離間した前記第2方向の先端から鉛直下方に垂設されて前記第1方向に延設された第2バトンと;
を有する照明バトン装置。
[2]
前記伸縮部材の前記先端に対して回動可能に設けられ、回動の先端に前記第2バトンを備えた回動アームをさらに有する、
[1]の照明バトン装置。
[3]
前記第2バトンを前記伸縮部材の前記先端の鉛直下方に吊下げた吊下げ位置と前記第2バトンを前記伸縮部材の前記先端の鉛直上方に跳ね上げた収納位置のそれぞれにおいて前記回動アームの前記先端に対する回動を選択的に禁止するロック機構をさらに有する、
[2]の照明バトン装置。
[4]
前記第2バトンは前記第1方向に分割された複数の分割バトンを含み、前記伸縮部材がこれら複数の分割バトンに対応して複数設けられ、これら各分割バトンが前記回動アームを介して前記対応する伸縮部材の前記先端に対して回動可能に設けられ、前記各分割バトン毎に前記ロック機構を備える、
[3]の照明バトン装置。
[5]
[1]乃至[4]のいずれかの照明バトン装置を前記第2方向に沿って複数台並設した照明システム。
【符号の説明】
【0066】
20…第1バトン、30…第2バトン、30’…分割バトン、40…伸縮回動機構、41…スライドロッド、42…先端、43…連結ロッド、44…補助ロッド、45…回動アーム、53…スライドスリーブ、55…緩衝部材、60…ロック機構、61…ロックピン、100…照明バトン装置、101…吊りワイヤー、102…巻上機、110…本体フレーム、112…吊りアーム。
【要約】
【課題】比較的安価な装置構成により所望する照明光を照射することができる照明バトン装置、および照明システムを提供することを課題とする。
【解決手段】実施形態に係る照明バトン装置100は、それぞれが独立して昇降移動可能に天井から垂設されて、鉛直方向と直交する第1方向に延設され、鉛直方向および第1方向と直交する第2方向に沿って複数台並べて設けられる。各照明バトン装置100は、天井から昇降移動可能に垂設された本体フレーム110と;この本体フレーム110から鉛直下方に垂設されて第1方向に延設された第1バトン20と;本体フレーム110に対して第2方向に伸縮可能に設けた伸縮部材と;この伸縮部材の本体フレーム110から離間した第2方向の先端から鉛直下方に垂設されて第1方向に延設された第2バトン30と;を有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5