特許第6284625号(P6284625)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284625
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 33/18 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
   H02K33/18 B
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-512503(P2016-512503)
(86)(22)【出願日】2014年4月7日
(86)【国際出願番号】JP2014060128
(87)【国際公開番号】WO2015155825
(87)【国際公開日】20151015
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 望
(72)【発明者】
【氏名】小林 修平
【審査官】 田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−035645(JP,A)
【文献】 特開2004−015863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のコイルフレーム、および、当該コイルフレームに巻き付けられた駆動コイルを備えた筒状の可動子と、
励磁電流が流れる前記駆動コイルとの間に、前記可動子をその中心軸線に平行な直線経路に沿って移動させる推力を発生させる磁石を備えた固定子と、
前記コイルフレームの内側において、前記可動子を、前記直線経路に沿って移動可能に支持する直動軸受けと、
前記コイルフレームにおける前記直動軸受けを挟み相互に対峙する第1フレーム部分および第2フレーム部分と、
前記第1フレーム部分に取り付けた負荷取付け部と、
前記第2フレーム部分に取り付けた可動側検出部を備え、前記可動子の前記直線経路上の移動位置を検出する位置検出部と、
前記第1フレーム部分あるいは前記負荷取付け部から、前記第2フレーム部分あるいは前記可動側検出部までの間に架け渡した梁部と、
前記梁部を前記第1フレーム部分あるいは前記負荷取付け部に固定する第1固定具と、
前記梁部を前記第2フレーム部分あるいは前記可動側検出部に固定する第2固定具と、
前記梁部と、前記第1フレーム部分あるいは前記負荷取付け部との間に形成され、前記可動子の中心軸線の方向から当接可能な第1当接部と、
前記梁部と、前記第2フレーム部分あるいは前記可動側検出部との間に形成され、前記可動子の中心軸線の方向から当接可能な第2当接部と、
を有しているリニアアクチュエータ。
【請求項2】
筒状のコイルフレーム、および、当該コイルフレームに巻き付けられた駆動コイルを備えた筒状の可動子と、
励磁電流が流れる前記駆動コイルとの間に、前記可動子をその中心軸線に平行な直線経路に沿って移動させる推力を発生させる磁石を備えた固定子と、
前記コイルフレームの内側において、前記可動子を、前記直線経路に沿って移動可能に支持する直動軸受けと、
前記コイルフレームにおける前記直動軸受けを挟み相互に対峙する第1フレーム部分および第2フレーム部分と、
前記第1フレーム部分に取り付けた負荷取付け部と、
前記第2フレーム部分に取り付けた可動側検出部を備え、前記可動子の前記直線経路上の移動位置を検出する位置検出部と、
前記第1フレーム部分あるいは前記負荷取付け部から、前記第2フレーム部分あるいは前記可動側検出部までの間に架け渡した梁部と、
を有しており、
前記コイルフレームおよび前記梁部は、これらの部位が一体形成された単一部品であるリニアアクチュエータ。
【請求項3】
筒状のコイルフレーム、および、当該コイルフレームに巻き付けられた駆動コイルを備えた筒状の可動子と、
励磁電流が流れる前記駆動コイルとの間に、前記可動子をその中心軸線に平行な直線経路に沿って移動させる推力を発生させる磁石を備えた固定子と、
前記コイルフレームの内側において、前記可動子を、前記直線経路に沿って移動可能に支持する直動軸受けと、
前記コイルフレームにおける前記直動軸受けを挟み相互に対峙する第1フレーム部分および第2フレーム部分と、
前記第1フレーム部分に取り付けた負荷取付け部と、
前記第2フレーム部分に取り付けた可動側検出部を備え、前記可動子の前記直線経路上の移動位置を検出する位置検出部と、
前記第1フレーム部分あるいは前記負荷取付け部から、前記第2フレーム部分あるいは前記可動側検出部までの間に架け渡した梁部と、
を有しており、
前記コイルフレーム、前記負荷取付け部および前記梁部は、これらの部位が一体形成された単一部品であるリニアアクチュエータ。
【請求項4】
前記梁部は、前記可動子の中心軸線の方向に所定幅の板状部材である請求項1ないし3のうちのいずれか一つの項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
筒状のコイルフレーム、および、当該コイルフレームに巻き付けられた駆動コイルを備えた筒状の可動子と、
励磁電流が流れる前記駆動コイルとの間に、前記可動子をその中心軸線に平行な直線経路に沿って移動させる推力を発生させる磁石を備えた固定子と、
前記コイルフレームの内側において、前記可動子を、前記直線経路に沿って移動可能に支持する直動軸受けと、
前記コイルフレームにおける前記直動軸受けを挟み相互に対峙する第1フレーム部分および第2フレーム部分と、
前記第1フレーム部分に取り付けた負荷取付け部と、
前記第2フレーム部分に取り付けた可動側検出部を備え、前記可動子の前記直線経路上の移動位置を検出する位置検出部と、
前記第1フレーム部分あるいは前記負荷取付け部から、前記第2フレーム部分あるいは前記可動側検出部までの間に架け渡した梁部と、
を有しており、
前記第2フレーム部分の外周面に、前記可動側検出部が取り付けられ、
前記位置検出部における前記固定子の側に取り付けた固定側検出部は、前記可動側検出部に対して、前記第2フレーム部分とは反対側から対峙しており、
前記負荷取付け部と前記第2フレーム部分との間に前記直動軸受けが位置しているリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記位置検出部は、対向配置された発光部および受光部と、前記受光部への外乱光の侵入を阻止する遮光部とを備え、
前記発光部は前記可動側検出部であり、前記受光部は前記固定側検出部であり、
前記遮光部は、前記発光部の側に配置した発光側遮光部と、前記受光部の側に配置した受光側遮光部とを備え、
前記発光側遮光部は、前記発光部の発光素子の発光面を取り囲む状態で前記受光側遮光部の側に突出している発光側突出部を備え、
前記受光側遮光部は、前記受光部の受光素子の受光面を取り囲む状態で前記発光側遮光部の側に突出している受光側突出部を備え、
前記発光側突出部の少なくとも先端部分は、前記受光側突出部の内側に入り込んでいる、
請求項5に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記中心軸線の方向から見た場合に、
前記直動軸受けによる前記可動子の支持中心、および、前記可動子に作用する前記推力の発生中心は、前記可動子の重心に一致している請求項1ないし6のうちのいずれか一つの項に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記可動子、前記負荷取付け部、前記直動軸受けにおける前記可動子に取り付けられている可動側軸受け部、前記可動側検出部、および、前記梁部は、前記中心軸線を含み前記第1、第2フレーム部分の方向に延びる平面に対して、左右対称な構造となっている請求項7に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイスコイルモータを用いて直線経路を往復移動するリニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイスコイルモータを用いて応答性良くレンズなどを移動させて焦点合わせなどを行うリニアアクチュエータが広く用いられている。かかる磁気駆動式のリニアアクチュエータでは、その可動子がリニアガイドなどによって直線移動可能な状態で支持され、可動子には駆動対象のレンズなどを取り付けるための負荷取り付け部が固定される。
【0003】
一般に、磁気駆動式のリニアアクチュエータでは、レンズ等の負荷を、応答性良く、しかも高い位置決め精度で、微小範囲を直線移動させることが要求される。本発明者等は、特許文献1において、位置決め精度の向上および耐久性の向上を目的とした磁気駆動式のリニアアクチュエータを提案している。
【0004】
このリニアアクチュエータは、矩形筒状のコイルフレームの内側に、負荷取付け部、リニアガイド、可動子の位置検出用のセンサー部を配置し、可動子の重心とリニアガイドの支持中心とを一致させるようにしている。また、可動子に作用する磁力(推力)の発生中心を可動子の重心に一致させるようにしている。これにより、リニアガイドの部分に掛かるモーメントを軽減でき、応答性良く、しかも、高い位置決め精度で、可動子を位置決めできる。また、可動子を支持しているリニアガイドに作用するモーメントが軽減されるので、リニアアクチュエータの耐久性も改善できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−35645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成のリニアアクチュエータにおいて、可動子、したがって、そこに搭載されているレンズ等の部材の高加速度駆動が要求される場合がある。このような場合においては、コイルフレームの剛性不足に起因して、レンズ等が搭載される負荷取付け部を応答性良く高い精度で位置決めできないことがある。
【0007】
すなわち、矩形筒状のコイルフレームの内側において、リニアガイドを挟み、一方の側のフレーム部分に負荷取付け部が固定され、他方の側のフレーム部分にセンサー部が固定されている。負荷取付け部材とセンサー部とが可動子の移動方向に対して直交する方向において離れた位置にある。
【0008】
このため、高加速度駆動時に、コイルフレームの撓み等が原因となって、負荷取付け部とセンサー部に挙動のズレが生じることがある。駆動用の入力指令信号とセンサー部から出力される可動子(負荷取付け部)の位置を示すセンサー位置信号とが一致するようにリニアアクチュエータの制御を行っても、このような挙動のズレが原因となって、負荷を入力指令通りの位置に位置決めできないことがある。このような挙動のズレは、高加速度の動きをさせる程、大きくなる。
【0009】
また、リニアアクチュエータにおいては、ほぼ静止状態からの微小入力応答時にも、リニアガイドの摺動抵抗等の影響により、負荷取付け部が移動しないという現象が生じるおそれがある。
【0010】
このようなズレ量は、コイルフレームの剛性を上げることによって低減可能である。しかしながら、剛性を上げるためには、コイルフレームを厚くするなどの対策が必要であるが、これに伴って、可動子の重量が大幅に増加してしまう。可動子の重量の大幅な増加は、高加速度駆動の大きな障害となるので、望ましくない。
【0011】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、可動子の重量増加を抑制しつつ、可動子の剛性を高めて、高加速度駆動による位置決め動作を、応答性良く、かつ、高い精度で行うことのできるリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明のリニアアクチュエータは、
筒状のコイルフレーム、および、当該コイルフレームに巻き付けられた駆動コイルを備えた筒状の可動子と、
励磁電流が流れる前記駆動コイルとの間に、前記可動子をその中心軸線に平行な直線経路に沿って移動させる推力を発生させる磁石を備えた固定子と、
前記コイルフレームの内側において、前記可動子を、前記直線経路に沿って移動可能に支持する直動軸受けと、
前記コイルフレームにおける前記直動軸受けを挟み相互に対峙する部分を、第1フレーム部分および第2フレーム部分とすると、前記第1フレーム部分に取り付けた負荷取付け部と、
前記第2フレーム部分に取り付けた可動側検出部を備え、前記可動子の前記直線経路上の移動位置を検出する位置検出部と、
前記第1フレーム部分あるいは前記負荷取付け部から、前記第2フレーム部分あるいは前記可動側検出部までの間に架け渡した梁部と、
を有していることを特徴としている。
【0013】
本発明のリニアアクチュエータにおいては、直動軸受けを挟み、相互に離れた位置にある負荷取付け部と可動側検出部との間に梁部を架け渡してある。したがって、可動子の移動時に、負荷取付け部と可動側検出部が移動方向の前後に位置ズレが生じることを防止あるいは抑制できる。これにより、高加速度駆動時、静止状態からの微小駆動時等における位置決め制御の応答性の低下、位置決め精度の低下を防止あるいは抑制できる。
【0014】
ここで、梁部として、負荷取付け部および可動側検出部の構成部材とは別個の部材を使用し、この部材を負荷取付け部の構成部材および可動側検出部の構成部材の双方に、ネジ等の金具、接着剤、その他の固定具を用いて、固定することができる。ネジ等の金具を用いる場合には、軽量化のために大きな締結力を発揮する重量の大きなものを使用できないことがある。この場合には、可動子の移動方向から当接可能な当接部を、梁部と第1フレーム部分あるいは負荷取付け部材との間、および、梁部と、第2フレーム部分あるいは可動側検出部との間に設けておけばよい。
【0015】
また、梁部として、軽量で、前記可動子の移動方向の剛性が高くなるように、移動方向に所定幅の板状部材とすることが望ましい。
【0016】
ここで、リニアアクチュエータの位置決めの応答性、精度を高めるためには、前記中心軸線の方向から見た場合に、前記直動軸受けによる前記可動子の支持中心、および、前記可動子に作用する前記推力の発生中心は、前記可動子の重心に一致していることが望ましい。
【0017】
このためには、前記可動子、前記負荷取付け部、前記直動軸受けにおける前記可動子に取り付けられている可動側軸受け部、前記可動側検出部、および、前記梁部が、前記中心軸線を含み前記第1、第2フレーム部分に向かって延びる平面に対して、左右対称な構造となっていることが望ましい。
【0018】
ここで、本発明のリニアアクチュエータでは、梁部を追加して可動子の剛性を高めている。可動子に梁部を追加しているので、その分、可動子の重量が増加する。そこで、本発明のリニアアクチュエータにおいては、前記第2フレーム部分の外周面に、前記可動側検出部が取り付けられ、前記位置検出部における前記固定子の側に取り付けた固定側検出部は、前記可動側検出部に対して、前記第2フレーム部分とは反対側から対峙しており、前記負荷取付け部と前記第2フレーム部分との間に前記直動軸受けが位置していることが望ましい。
【0019】
筒状のコイルフレームの外側に位置検出部を配置することにより、コイルフレームにおける第1、第2フレーム部分の間隔を狭くでき、コイルフレームの軽量化および高剛性化を図ることができる。また、第1、第2フレーム部分の間に架け渡される梁部を短くできるので、その軽量化および高剛性化を図ることができる。これにより、梁部を配置したことに起因する可動子の重量増加を最小限に抑えることができ、可動子の全体の剛性も高めることができる。
【0020】
また、位置検出部を筒状のコイルフレームの外側に配置する場合には、その内側に配置する場合に比べて設置スペースの制約が緩和され、設計の自由度が高まる。よって、位置検出部の検出出力のノイズ低減、コスト削減に有利である。
【0021】
ここで、前記位置検出部は、対向配置された発光部および受光部と、前記受光部への外乱光の侵入を阻止する遮光部とを備え、前記発光部は前記可動側検出部であり、前記受光部は前記固定側検出部であり、前記遮光部は、前記発光部の側に配置した発光側遮光部と、前記受光部の側に配置した受光側遮光部とを備え、前記発光側遮光部は、前記発光部の発光素子の発光面を取り囲む状態で前記受光側遮光部の側に突出している発光側突出部を備え、前記受光側遮光部は、前記受光部の受光素子の受光面を取り囲む状態で前記発光側遮光部の側に突出している受光側突出部を備え、前記発光側突出部の少なくとも先端部分は、前記受光側突出部の内側に入り込んでいることが望ましい。
【0022】
負荷取付け部に、レーザー光等の照射光が透過するレンズ等が搭載される場合には、照射光が、梁部に沿って位置検出部に侵入するおそれがある。発光部および受光部の間に相互に入り込む状態に発光側遮光部および受光側遮光部を配置しておくことで、このような外乱光が受光部の受光面に侵入することを確実に防止できる。これにより、梁部を設けたことが原因となって、位置検出部のs/n比が低下することを回避あるいは抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明を適用したリニアアクチュエータを示す外観斜視図であり、前方の下側から見た場合のものである。
図2図1のリニアアクチュエータの縦断面図、横断面図および底面図である。
図3図1のリニアアクチュエータの可動子の二例を示す斜視図である。
図4図1のリニアアクチュエータの位置検出部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気駆動式のリニアアクチュエータの実施の形態を説明する。
【0025】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係るリニアアクチュエータを示す外観斜視図であり、前方の下側から見た場合のものである。図2(a)、(b)および(c)は、リニアアクチュエータの縦断面図、横断面図および底面図であり、図3(a)は可動子アセンブリを示す斜視図である。以下においては、説明の便宜上、矢印Xの方向を幅方向、これに直交する矢印Yの方向を前後方向、矢印X、Yに直交する矢印Zの方向を上下方向とする。
【0026】
リニアアクチュエータ1は、固定子2と可動子3を備えたボイスコイルモータから構成され、基本的に左右対称な構造となっている。固定子2は、一対のアウターヨーク4L、4Rと、一対の永久磁石5L、5Rと、一対のインナーヨーク6L、6Rとを備えている。アウターヨーク4L、4Rは前後方向Yに延びる一定厚さの矩形板であり、それらの前後の端部は内方に直角に突出した突出部41、42とされ、これらの間に上下方向Zに延びる一定深さの凹部43が形成されている。凹部43内に矩形板形状の永久磁石5L、5Rがそれぞれ取り付けられている。
【0027】
インナーヨーク6L、6Rは、アウターヨーク4L、4Rの前後の突出部41、42の内側の端面に、前後の外側端面が密接した状態で、アウターヨーク4L、4Rに固定されている。凹部43の深さは永久磁石5L、5Rの厚さよりも深く、したがって、永久磁石5Lと、これに対峙しているインナーヨーク6Lの間には一定幅で前後方向に延びる隙間7Lが形成されている。同様に、永久磁石5Rと、これに対峙しているインナーヨーク6Rの間にも一定幅で前後方向に延びる隙間7Rが形成されている。
【0028】
可動子3は固定子2の左右の永久磁石5L、5Rの間に配置されており、矩形筒状のコイルフレーム11と、この外周面に沿ってその周方向に巻き付けた駆動コイル12とを備えている。コイルフレーム11の内側の左右にインナーヨーク6L、6Rが位置し、コイルフレーム11の上下方向Zに延びる左辺部分11Lおよび右辺部分11Rは、永久磁石5L、5Rとインナーヨーク6L、6Rとの間の隙間7L、7Rに通されている。左辺部分11L、右辺部分11Rに巻き付けられている駆動コイル12の部分は、一定のギャップで左右の永久磁石5L、5Rに対峙している。コイルフレーム11の幅方向Xに延びる上辺部分11Uおよび下辺部分11Bは、インナーヨーク6L、6Rの上側および下側に沿って配置されている。
【0029】
コイルフレーム11の内部には、負荷取付け部14と直動軸受け部15が配置されている。負荷取付け部14は、コイルフレーム11の下辺部分11B(第1フレーム部分)の内周面(上方を向く面)に取り付けられている。負荷取り付け部14は例えばレンズホルダであり、レンズ取り付け部である円形開口部14aと、可動子3の中心軸線3aに平行な方向に貫通して延びる光路14bとが形成されている。直動軸受け部15は、負荷取り付け部14の上側に配置され、中心軸線3aに平行な可動子3の直線経路を規定し、当該直線経路に沿って可動子3をガイドする。
【0030】
直動軸受け部15は、可動子3の直線経路を規定するガイドレール15aと、このガイドレール15aに沿って摺動可能なスライダ15bとを備えている。ガイドレール15aは水平ブロック16の下面に固定され、前後方向に水平に延びている。水平ブロック16は、コイルフレーム11の内側に配置され、固定子2の側の左右のインナーヨーク6L、6Rの間に水平に取付けられている。スライダ15bは、可動子3の側の負荷取り付け部14に形成した水平な上面にボルト等によって固定されている。
【0031】
駆動コイル12の上側には、可動子3の移動位置を検出するための位置検出部20が配置されている。位置検出部20は、LED21を備えた発光部22と、半導体位置検出素子(PSD)23を備えた受光部24とを有している。発光部22はコイルフレーム11の上辺部分11Uの外周面(上方を向く面)に取り付けられた可動側検出部である。受光部24は固定側検出部であり、上側から発光部22に対峙しており、リニアアクチュエータ1の上端部を覆う遮光用センサーカバー25の内側下面に取り付けられている。遮光用センサーカバー25の上面には、外部接続用の配線基板26が取り付けられている。配線基板26は、発光部22および受光部24に配線接続されていると共に、外部接続用のコネクタ27が搭載されている。
【0032】
(梁部の構成)
ここで、コイルフレーム11の下辺部分11Bに取り付けた負荷取付け部14と、コイルフレーム11の上辺部分11Uとの間には、それらの両側において上下方向Zに延びる一対の板状の梁部28L、28Rが掛け渡されている。梁部28L、28Rは左右対称な形状をしており、図3から分かるように、それらの前後の端において上下方向に突出している固定用板部分28a、28bを備え、中央部分は円形に切り取られて軽量化が図られている。
【0033】
上側の前後一対の固定用板部分28aは、それぞれ、コイルフレーム11の上辺部分11Uの左右の部位にネジ29aによって固定されている。この上辺部分11Uには先に述べたように、発光部22が取り付けられている。下側の前後一対の固定用板部分28bは、それぞれ、負荷取付け部14の左右の側面の後端部分に、ネジ29bによって固定されている。このように、直動軸受け部15を挟み、上下方向Zに離れている負荷取付け部14(コイルフレーム11の下辺部分11B)と、発光部22(コイルフレーム11の上辺部分11U)との間が、左右の梁部28L、28Rによって連結されている。梁部28L、28Rは板状部材であり、可動子3の移動方向(前後方向Y)の剛性が、それに直交する幅方向Xに比べて高い。
【0034】
リニアアクチュエータ1の駆動コイル12に励磁電流を流すと、その通電方向に応じて、永久磁石5L、5Rと駆動コイル12との間には、可動子3をその中心軸線3aの方向に移動させる推力(電磁力)が発生する。可動子3に推力が作用すると、可動子3は、直動軸受け部15によってガイドされて、前後方向Yに移動する。可動子3のストロークは、アウターヨーク4L、4Rの前後の突出部41、42によって規定される。
【0035】
上記のように、可動子3の移動方向に対して直交する方向の上下方向Zに離れている発光部22と負荷取付け部14との間は、左右の梁部28L、28Rで連結されている。よって、矩形筒状の可動子3の移動方向の剛性を高くでき、可動子3の移動時に、負荷取付け部14と発光部22との間に、挙動のズレが発生することを防止あるいは抑制できる。この結果、位置検出部20の出力信号から得られる負荷取付け部14(したがって、そこに搭載されるレンズ等の負荷)の位置を精度良く検出できる。よって、高加速駆動時等における応答性および位置決め精度を高めることができる。
【0036】
本例では、梁部28L、28Rとして、負荷取付け部14および発光部22(可動側検出部)とは別個の部材を使用し、負荷取付け部14および発光部22の双方に、ネジ29a、29b等の金具、接着剤、その他の固定具を用いて、固定している。ネジ29a、29b等の金具を用いる場合には、軽量化のために大きな締結力を発揮する重量の大きなものを使用できないことがある。この場合には、可動子3の移動方向から当接可能な当接部を、梁部28L、28Rと、コイルフレーム11の下辺部分11Bあるいは負荷取付け部14との間に形成しておけばよい。同様に、梁部28L、28Rと、コイルフレーム11の上辺部分11Uあるいは発光部22との間に形成しておけばよい。例えば、図3(a)において、想像線で示すように、梁部28L、28Rにおける上下の固定用板部分28a、28bの端を幅方向Xの内側に直角に折り曲げて、当接部28c、28dを形成しておくことができる。
【0037】
ここで、図3(b)は可動子3を含む可動側アセンブリの別の構成例を示す斜視図である。この図に示す可動側アセンブリでは、コイルフレーム11と、梁部28L、28Rとが、単一部品30から形成されている。このようにすれば、梁部28L、28Rを発光部22の側に固定するためのネジ29a等の固定具が不要となる。さらには、コイルフレーム11、負荷取付け部14および梁部28L、28Rを、これらの部位が一体形成された単一部品とすることも可能である。
【0038】
本発明者等は、梁部28L、28Rを備えたリニアアクチュエータ1の位置決め精度について検証実験を行った。比較対象のリニアアクチュエータとして2つのタイプのものを用いた。一つは、梁部が備わっていないこと以外はリニアアクチュエータ1と同一構造のリニアアクチュエータであり、もう一つは、梁部が備わっていないことと、コイルフレーム11よりも肉厚の厚いコイルフレームを用いていること以外はリニアアクチュエータ1と同一構造のリニアアクチュエータである。2つのタイプのリニアアクチュエータではいずれも位置決め制御において位置ずれが生じる高加速駆動において、本実施の形態のリニアアクチュエータ1では位置ずれが発生せず、本発明の構成が有効であることが確認された。
【0039】
(可動子の重心位置)
本実施の形態では、リニアアクチュエータ1の位置決めの応答性、精度を高めるために、可動子3の中心軸線3aの方向から見た場合に、直動軸受け部15による可動子3の支持中心、および、可動子3に作用する推力の発生中心を、可動子3の重心に一致させるようにしている。このために、図2(a)、(c)に示すように、可動子3、負荷取付け部14、直動軸受け部15のスライダ15b、発光部22および梁部28L、28Rが、中心軸線3aを含む上下方向Zに延びる平面Pに対して、左右対称な構造となっている。
【0040】
可動子3の重心が直動軸受け部15の支持中心に一致しているので、直動軸受け部15に作用する可動子自重に起因して発生するモーメントを低減できる。また、可動子3に作用する推力の中心が直動軸受け部15の支持中心に一致しているので、可動子3に作用する推力に起因して直動軸受け部15に発生するモーメントを低減できる。したがって、本例のリニアアクチュエータ1では、直動軸受け部15に無理な応力が作用することを防止あるいは抑制でき、直動軸受け部15によってガイドされる可動子3の摺動抵抗を低減できる。この結果、可動子3を応答性良く移動させて精度良く位置決めできる。また、直動軸受け部15などの部位に無理な応力が作用しないので、リニアアクチュエータ1の耐久性も向上する。
【0041】
(位置検出部)
本実施の形態では、梁部28L、28Rを追加して可動子3の剛性を高めているので、可動子3の重量が増加している。しかしながら、位置検出部20を矩形筒状の可動子3の外側に配置してある。位置検出部20をコイルフレーム11の内側に配置する場合に比べて、コイルフレーム11における上辺部分11Uと下辺部分11Bとの間隔を狭くでき、可動子3の剛性を高めることができる。また、上辺部分11Uおよび下辺部分11Bの間に架け渡される梁部28L、28Rも短くでき、その軽量化および高剛性化を図ることができる。このように、可動子3の全体の剛性を高めることができ、かつ、梁部28L、28Rを配置したことに起因する可動子3の重量増加も抑制できる。よって、高加速度駆動時等における応答性、位置決め精度の向上に有利である。
【0042】
なお、位置検出部20を矩形筒状の可動子3の外側に配置する場合には、その内側に配置する場合に比べて設置スペースの制約が緩和され、設計の自由度が高まる。よって、位置検出部の検出出力のノイズ低減、コスト削減に有利である。
【0043】
(位置検出部の遮光構造)
次に、図4は、リニアアクチュエータ1の位置検出部20の部分を示す拡大部分断面図である。リニアアクチュエータ1の負荷取付け部14は、レーザー光等の照射光が透過するレンズが搭載されるレンズホルダである。この場合には、負荷取付け部14を前後に貫通する光路14bを通過する照射光の一部が、その両側において、上下方向に架け渡されている梁部28L、28Rに沿って上側の位置検出部20に侵入するおそれがある。このような外乱光の侵入を防止するために、位置検出部20には次のような遮光構造が備わっている。
【0044】
図4を参照して説明すると、位置検出部20は、上下方向Zから対向配置された発光部22と受光部24と、受光部24の受光素子である半導体位置検出素子23の受光面への外乱光の侵入を阻止する遮光部31とを備えている。
【0045】
遮光部31は、発光部22の側に配置した発光側遮光板32と、受光部24の側に配置した受光側遮光板33とを備えている。発光側遮光板32は、発光部22の発光素子であるLED21の発光面を取り囲む状態で受光側遮光板33の側に突出している発光側突出部32aを備えている。この発光側突出部32aの上端には幅方向に延びるスリットが形成され、ここを介してLED21からの射出光が受光部24に照射される。
【0046】
受光側遮光板33は、受光部24の受光素子である半導体位置検出素子23が位置する開口部33aと、当該開口部33aを取り囲む状態で発光側遮光板32の側に突出している受光側突出部33bとを備えている。ここで、図4から分かるように、発光側突出部32aの先端部分は、受光側突出部33bの内側に同軸状態に入り込んでいる。
【0047】
このように、発光部22と受光部24の間に、相互に入り込む状態に発光側遮光板32と受光側遮光板33とを狭い間隔で対向配置してある。よって、両側の梁部28L、28Rの表面に沿って、外乱光が受光部24の受光面に侵入することを確実に防止できる。これにより、梁部28L、28Rを設けたことが原因となって、位置検出部20のs/n比が低下することを回避あるいは抑制できる。
【0048】
(その他の実施の形態)
上記の例は、矩形筒状の可動子を用いているが、矩形以外の筒形状の可動子を用いることもできる。例えば、円筒状の可動子などを用いることもできる。
【0049】
また、上記の例は負荷取り付け部14がレンズホルダの例であるが、レンズ以外の部材を直線往復移動させるために、本発明のリニアアクチュエータを用いることができることは勿論である。
図1
図2
図3
図4