特許第6284628号(P6284628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284628
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20180215BHJP
【FI】
   F16H57/04 P
   F16H57/04 JZHV
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-515176(P2016-515176)
(86)(22)【出願日】2015年4月22日
(86)【国際出願番号】JP2015062213
(87)【国際公開番号】WO2015163357
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-91342(P2014-91342)
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳二
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 直也
(72)【発明者】
【氏名】堀江 剛史
(72)【発明者】
【氏名】石井 邦明
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 一之
(72)【発明者】
【氏名】松原 亨
(72)【発明者】
【氏名】河本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】高木 清式
(72)【発明者】
【氏名】番匠谷 英彦
【審査官】 塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−095389(JP,A)
【文献】 特開平04−219561(JP,A)
【文献】 特開2009−067140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速装置を収容する第一収容空間及び回転電機を収容する第二収容空間を形成するケースと、
前記第一収容空間の下方に設けられて油を貯留する油貯留部と、
前記油貯留部の油を吸引する吸引部を備えた油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吐出した油を作動油として前記変速装置に供給する第一油路と、
前記油圧ポンプが吐出した油を冷却油として前記回転電機に供給する第二油路と、
前記第二収容空間から前記第一収容空間へ向かう方向に油を流通させて、前記回転電機に供給された後の油を前記第二収容空間から前記油貯留部に戻す第三油路と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記第一収容空間から前記第二収容空間へ向かう方向を対象方向として、前記対象方向は、前記ケースが車両に取り付けられた状態で当該車両の前方へ向かう方向であり、
前記第三油路は、当該第三油路を開閉する開閉機構と、前記油貯留部に向かって開口する開口部とを備え、
前記開閉機構は、前記対象方向に直交する水平方向に沿って延びる揺動軸心周りに揺動自在な部材であって、前記揺動軸心より下方に重心を有する開閉部材を備え、
前記開閉部材は、前記対象方向側に前記重心が移動するように揺動することで、前記開口部を閉じるように構成され
前記油貯留部を区画する内壁面部が、前記対象方向に向かうに従って下方に向かう傾斜面を備え、
前記開口部が前記傾斜面に形成され、
前記揺動軸心は、前記傾斜面の上方側に配置され、
前記開閉部材は、前記揺動軸心回りに揺動可能に前記ケースに支持されている車両用駆動装置。
【請求項2】
前記重心の初期位置は、鉛直方向に見て前記揺動軸心と重複する位置に配置されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記開閉部材は、当該開閉部材に作用する前記対象方向の加速度である対象方向加速度が予め定められた設定値以下である場合に前記開口部を開き、前記対象方向加速度が前記設定値より大きい場合に前記開口部を閉じるように構成されている請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記開閉部材における前記開口部を閉じる閉塞部分に、前記対象方向側に突出する突出部が形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記回転電機を第一回転電機として、前記第一収容空間における前記変速装置の収容部分よりも前記対象方向側の部分により、前記第一回転電機とは別の第二回転電機を収容する空間が形成され、
前記第一収容空間における前記第二回転電機の収容部分と前記第二収容空間における前記第一回転電機の収容部分との前記対象方向の間に、前記第二収容空間と前記油貯留部とを区画する区画壁部が設けられ、
前記開口部が前記区画壁部に形成されている請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記ケースにおける前記第二収容空間を形成する部分に、ブリーザの取付部が形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記第一収容空間及び前記第二収容空間のそれぞれが、前記対象方向と同軸の円筒状に形成された円筒状部を有し、
前記第二収容空間の前記円筒状部が、前記第一収容空間の前記円筒状部よりも大径に形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油貯留部の油を吸引する油圧ポンプが吐出した油を冷却油として回転電機に供給する油路と、回転電機に供給された後の油を油貯留部に戻す油路と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010−190425号公報(特許文献1)には、クラッチ室〔5〕がトランスミッション室〔4〕の車両前方側に配置されると共に、クラッチ室〔5〕とトランスミッション室〔4〕との間に配置される中間壁〔6〕に形成されたオイル通流開口〔8〕を介して、クラッチ室〔5〕からトランスミッション室〔4〕に油が戻される構成が記載されている。そして、特許文献1に記載の構成では、車両の急制動時に、トランスミッション室〔4〕からクラッチ室〔5〕に逆流する油を低減すべく、オイル通流開口〔8〕に、トランスミッション室〔4〕側への油の流動を可能にすると共にクラッチ室〔5〕側への油の流動を遮断又は妨害するフラップ弁〔9〕を配置する構成を採用している。特開平4−219561号公報(特許文献2)にも、油の流れを許容する方向が特許文献1とは車両前後方向の反対方向であるが、特許文献1のフラップ弁〔9〕と同様の弁体〔26a〕が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の構成では、フラップ弁〔9〕の旋回軸線〔10〕とストッパ〔12〕との位置関係から、車両の制動時以外の通常走行時(例えば一定速度で直進している場合)においても、クラッチ室〔5〕からトランスミッション室〔4〕へ向かう油によってフラップ弁〔9〕に作用する車両後方側への押圧力によって、フラップ弁〔9〕がオイル通流開口〔8〕を開くことで、油がトランスミッション室〔4〕へ戻される。すなわち、フラップ弁〔9〕を押圧する押圧力の分だけ、トランスミッション室〔4〕側への油の流通が阻害されてしまう。例えば車両が走行する路面が下り勾配である場合には、オイル通流開口〔8〕を閉じる方向の力が重力加速度によってフラップ弁〔9〕に対して作用するため、フラップ弁〔9〕が開きにくく、この問題が顕著になるおそれがある。しかしながら、特許文献1では、この点について特段の認識がなされていなかった。
【0004】
また、特開2013−95389号公報(特許文献3)には、油貯留部の油を吸引する油圧ポンプが吐出した油を作動油として変速装置に供給する第一油路、油圧ポンプが吐出した油を冷却油として回転電機に供給する第二油路、及び回転電機に供給された後の油を油貯留部に戻す第三油路を備えた車両用駆動装置が記載されている。特許文献3の構成では、第三油路として、回転電機〔MG〕に供給された後の油を第一貯留部〔U1〕に戻す排出油路〔AD〕が備えられていると共に、車両の急制動時に排出油路〔AD〕を逆流する油を低減するための流通規制機構〔100〕が備えられている。特許文献3の段落0076、図5等には、排出油路〔AD〕の上流側の第二開口部〔AEo〕を下流側の第一開口部〔ADo〕よりも上方に配置する構造により、排出油路〔AD〕を逆流する油を低減する流通規制機構〔100〕が構成されている。このような特許文献3に記載の構成において、逆流する油を低減する効果を高めるべく、特許文献3の図7には、流通規制機構〔100〕として、第一油貯留部〔U1〕とは反対側からの油圧に応じて閉状態から開状態に切り替わる弁〔6〕を排出油路〔AD〕に設ける構成が記載されている。しかしながら、このような構成とした場合、特許文献1の構成と同様に、車両の制動時以外の通常走行時における第三油路を介した第一貯留部〔U1〕への油の流通が阻害されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−190425号公報
【特許文献2】特開平4−219561号公報
【特許文献3】特開2013−95389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、車両の制動時以外の通常走行時には、油貯留部へ油を戻す油路における油の流通を適切に確保しつつ、車両の急制動時には、当該油路内を逆流する油を低減することが可能な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
変速装置を収容する第一収容空間及び回転電機を収容する第二収容空間を形成するケースと、
前記第一収容空間の下方に設けられて油を貯留する油貯留部と、
前記油貯留部の油を吸引する吸引部を備えた油圧ポンプと、
前記油圧ポンプが吐出した油を作動油として前記変速装置に供給する第一油路と、
前記油圧ポンプが吐出した油を冷却油として前記回転電機に供給する第二油路と、
前記第二収容空間から前記第一収容空間へ向かう方向に油を流通させて、前記回転電機に供給された後の油を前記第二収容空間から前記油貯留部に戻す第三油路と、を備えた車両用駆動装置は、1つの態様として、
前記第一収容空間から前記第二収容空間へ向かう方向を対象方向として、前記対象方向は、前記ケースが車両に取り付けられた状態で当該車両の前方へ向かう方向であり、
前記第三油路は、当該第三油路を開閉する開閉機構と、前記油貯留部に向かって開口する開口部とを備え、
前記開閉機構は、前記対象方向に直交する水平方向に沿って延びる揺動軸心周りに揺動自在な部材であって、前記揺動軸心より下方に重心を有する開閉部材を備え、
前記開閉部材は、前記対象方向側に前記重心が移動するように揺動することで、前記開口部を閉じるように構成され
前記油貯留部を区画する内壁面部が、前記対象方向に向かうに従って下方に向かう傾斜面を備え、
前記開口部が前記傾斜面に形成され、
前記揺動軸心は、前記傾斜面の上方側に配置され、
前記開閉部材は、前記揺動軸心回りに揺動可能に前記ケースに支持されている。
【0008】
この構成によれば、車両用駆動装置は、対象方向が車両の前方へ向かう方向となるように、車両に取り付けられる。そして、油貯留部に向かって開口する開口部を備える第三油路は、さらに、当該開口部を開閉する開閉機構を備えている。当該開閉機構は、開閉部材を備えており、当該開閉部材は、対象方向の側に開閉部材の重心が移動するように搖動することで、開口部を閉じる。また、油貯留部を区画する内壁面部は、対象方向に向かうに従って下方に向かう傾斜面を備え、開口部が傾斜面に形成され、揺動軸心は、傾斜面の上方側に配置され、開閉部材は、揺動軸心回りに揺動可能にケースに支持されている。これにより、開閉部材に対して揺動方向に付勢する付勢部材を設けなくとも、第三油路を開いておくことができる。一方、開閉部材が対象方向の側に揺動すれば第三油路が閉じられるので、開閉機構の構成の簡素化を図ることができる。
【0009】
例えば勾配がゼロの道路を車両が一定速度で直進している場合には、対象方向の加速度は、開閉部材の重心を、対象方向の側に搖動させるほど、大きくはならない。従って、回転電機に供給された後の油を、第三油路を介して、第二収容空間から油貯留部に適切に戻すことができる。これにより、第二収容空間に多量の油が溜まらないようにして、第二収容空間に収容される回転電機による油の攪拌によって発生するエネルギ損失を低減できると共に、油圧ポンプによるエアの吸い込みが発生しない程度に油貯留部の油面の高さを確保することが可能となる。また、例えば、車両が走行する路面が下り勾配である場合でも、同様のことが言える。即ち、対象方向の加速度が、開閉部材の重心を、対象方向の側に搖動させるほど大きくはならない程度の下り勾配であれば、同様である。
【0010】
一方、車両の急制動時や、下り勾配の程度が大きい下り坂を走行している場合には、対象方向の加速度も大きくなる。この加速度が、対象方向の側に開閉部材の重心が移動して、開口部を閉じる程度に大きければ、第三油路が閉じられるため、第三油路内を逆流する油を低減することができる。これにより、油貯留部から第三油路を介して第二収容空間の側へ排出される油の流れを妨げることができる。その結果、油貯留部の油面が大きく低下しないようにし、油圧ポンプによるエアの吸い込みが発生しない程度に油貯留部の油面の高さを確保することができる。以上、上記の構成によれば、車両の制動時以外の通常走行時には、油貯留部へ油を戻す油路(第三油路)における油の流通を適切に確保しつつ、車両の急制動時には、当該油路(第三油路)内を逆流する油を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】車両用駆動装置の全体断面図
図2】車両用駆動装置の部分断面図
図3図2のIII−III断面図
図4図2のIV−IV断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る車両用駆動装置1は、図1に示すように、車輪(図示せず、以下同様)の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの双方を備えたハイブリッド車両用の駆動装置である。具体的には、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、動力分配装置Dを備えたいわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド車両用の駆動装置である。そして、本実施形態では、車両用駆動装置1は、FR(Front Engine Rear Drive)車両用の駆動装置である。なお、図1では、見やすさを考慮してハッチングを適宜省略している。本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
【0013】
以下の説明では、「上」及び「下」は、車両用駆動装置1を車両(図示せず、以下同様)に搭載した状態(車両搭載状態)での鉛直方向Vを基準として定義しており、「上」は図1及び図2における上方を表し、「下」は図1及び図2における下方を表す。また、以下の説明では、各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置1に組み付けられた状態での方向を表す。なお、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語(例えば、平行、直交、同軸等)は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態も含む概念として用いている。
【0014】
また、以下の説明では、「駆動連結」は、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦係合装置や噛み合い式係合装置等が含まれていてもよい。
【0015】
1.車両用駆動装置の全体構成
図1に示すように、車両用駆動装置1は、第一収容空間21及び第二収容空間22を形成するケース2を備えている。ケース2は、車両に取り付けるための車載用取付部28を有している。車載用取付部28についての詳細は後述する。第一収容空間21は、変速装置TMを収容する空間であり、第二収容空間22は、第一回転電機MG1を収容する空間である。本実施形態では、ケース2は、分割形成された第一ケース部2Aと第二ケース部2Bとを備え、第一ケース部2Aにより第一収容空間21が形成されていると共に、第二ケース部2Bにより第二収容空間22が形成されている。第一ケース部2Aと第二ケース部2Bとは、対象方向Aに互いに接合されて一体化されている。ここで、対象方向Aとは、図1及び図2に示すように、第一収容空間21から第二収容空間22へ向かう方向である。図1に示すように、ケース2における第二収容空間22を形成する部分(本例では第二ケース部2B)には、ブリーザ90の取付部29が形成されている。ブリーザ90と取付部29とを有するブリーザ機構は、ケース2の内部と外部とを連通させることにより、ケース2の内部と外部との間での圧力差を低減する。本実施形態では、取付部29は、第二ケース部2Bの周壁部における最上部に形成されている。また、取付部29は、ブリーザ90を挿入するための孔部により構成されている。
【0016】
第一収容空間21は、円筒状に形成された円筒状部である第一円筒状部21Aを有する。第一円筒状部21Aに、当該円筒状部の軸心と同軸に変速装置TMが収容されている。第一円筒状部21Aは、ケース2(本例では第一ケース部2A)における変速装置TMの外周を覆う部分である周壁部により形成されている。本実施形態では、第一円筒状部21Aは、対象方向Aに平行な軸心X(図1参照)と同軸に形成され、変速装置TMは当該軸心Xと同軸に配置されている。本実施形態では、第一収容空間21には、第一回転電機MG1とは別の回転電機である第二回転電機MG2も収容されている。第二回転電機MG2を収容する空間は、第一収容空間21における変速装置TMの収容部分よりも対象方向A側の部分により形成されている。本実施形態では、第二回転電機MG2は、第一円筒状部21Aにおける変速装置TMよりも対象方向A側において、軸心Xと同軸に配置されている。なお、変速装置TMは、第一油路81(後述する)を介して供給される油圧によって、変速比を段階的に或いは無段階に変更可能な機構を有している。本実施形態では、変速装置TMは、油圧駆動式の変速用係合装置を複数備えた自動有段変速機構を有しており、当該複数の変速用係合装置のそれぞれの係合の状態を制御することにより、複数の変速段が切り替えられる。また、第二回転電機MG2は、図1及び図2に示すように、ケース2(本例では第一ケース部2A)に固定された第二ステータST2と、当該第二ステータST2の径方向内側に回転自在に支持された第二ロータRO2とを有する。
【0017】
第二収容空間22は、円筒状に形成された円筒状部である第二円筒状部22Aを有する。第二円筒状部22Aに、当該円筒状部の軸心と同軸に第一回転電機MG1が収容されている。第二円筒状部22Aは、ケース2(本例では第二ケース部2B)における第一回転電機MG1の外周を覆う部分である周壁部により形成されている。本実施形態では、第二円筒状部22Aは、軸心Xと同軸に形成され、第一回転電機MG1は軸心Xと同軸に配置されている。すなわち、本実施形態では、第一回転電機MG1と変速装置TMとが互いに同軸に配置されている。そして、本実施形態では、更に、第二回転電機MG2も、第一回転電機MG1及び変速装置TMと互いに同軸に配置されている。なお、第一回転電機MG1は、図1及び図2に示すように、ケース2(本例では第二ケース部2B)に固定された第一ステータST1と、当該第一ステータST1の径方向内側に回転自在に支持された第一ロータRO1とを有する。
【0018】
以上のように、本実施形態では、第一収容空間21及び第二収容空間22のそれぞれは、対象方向Aと同軸の円筒状に形成された円筒状部を有する。そして、本実施形態では、第二収容空間22の円筒状部である第二円筒状部22Aが、第一収容空間21の円筒状部である第一円筒状部21Aよりも大径に形成されている。本実施形態では、図1に示すように、第一回転電機MG1は、第二回転電機MG2や変速装置TMに比べて大径のものが用いられており、これに合わせて、第二円筒状部22Aが第一円筒状部21Aよりも大径に形成されている。
【0019】
第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2のそれぞれは、車輪の駆動力源として車両に備えられる。本実施形態では、更に、内燃機関Eも車輪の駆動力源として車両に備えられる。内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。内燃機関Eは、図1に示すように、入力軸Iに駆動連結されている。入力軸Iは、例えば、内燃機関Eの出力軸と一体回転するように駆動連結され、或いは、ダンパ等を介して内燃機関Eの出力軸に駆動連結される。本実施形態では、図1に示すように、内燃機関Eは、第一回転電機MG1よりも対象方向A側に配置される。
【0020】
本実施形態では、車両用駆動装置1は、内燃機関Eの出力トルクを、第一回転電機MG1側と、第二回転電機MG2及び変速装置TM側とに分配する動力分配装置Dを備えている。具体的には、動力分配装置Dは、回転速度の順に、言い換えれば、速度線図(共線図)における配置順に、第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素を有している。本実施形態では、動力分配装置Dはシングルピニオン型の遊星歯車機構を有しており、第一回転要素がサンギヤに対応し、第二回転要素がキャリヤに対応し、第三回転要素がリングギヤに対応する。そして、図1に示すように、第一回転要素が、他の回転要素を介することなく第一ロータRO1(図2参照)に駆動連結され、第二回転要素が他の回転要素を介することなく入力軸Iに駆動連結され、第三回転要素が他の回転要素を介することなく中間軸Mに駆動連結されている。本実施形態では、動力分配装置Dは、軸心Xと同軸に配置されている。また、本実施形態では、動力分配装置Dは、対象方向Aにおける第一回転電機MG1と第二回転電機MG2との間に配置されている。
【0021】
変速装置TMは、変速入力軸としての中間軸Mの回転速度を現時点での変速比で変速して、変速出力軸としての出力軸Oに伝達する。出力軸Oは車輪に駆動連結されており、変速装置TMの側から出力軸Oに伝達されたトルクは、差動歯車装置(図示せず)を介して左右2つの車輪に分配されて伝達される。なお、第二ロータRO2は、中間軸Mに駆動連結されており、本実施形態では、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。本実施形態では、入力軸I、中間軸M、及び出力軸Oは、軸心Xと同軸に配置されている。また、本実施形態では、軸心Xに沿って対象方向A側から順に、第一回転電機MG1、動力分配装置D、第二回転電機MG2、及び変速装置TMが配置されている。
【0022】
本実施形態では、ケース2は、第二収容空間22(具体的には、第二収容空間22における第一回転電機MG1が収容される部分)の対象方向Aとは反対側を区画する第一中間壁部2Cを備えている。第一中間壁部2Cは、第一回転電機MG1よりも対象方向Aとは反対側を、軸心Xを基準とする径方向及び周方向に延びるように形成されている。第一中間壁部2Cは、対象方向Aにおける変速装置TMと第一回転電機MG1との間、具体的には、対象方向Aにおける第二回転電機MG2と第一回転電機MG1との間、より具体的には、対象方向Aにおける動力分配装置Dと第一回転電機MG1との間に配置されている。第一中間壁部2Cにおける軸心Xを基準とする径方向の中心部には、入力軸Iを挿通するための貫通孔が形成されており、入力軸Iは、軸受を介して第一中間壁部2Cに対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第一中間壁部2Cは、第二ケース部2Bと一体的に形成されている。
【0023】
本実施形態では、ケース2は、第一収容空間21(具体的には、第一収容空間21における第二回転電機MG2が収容される部分)の対象方向A側を区画する第二中間壁部2Dを備えている。第二中間壁部2Dは、変速装置TMよりも対象方向A側(本例では第二回転電機MG2よりも対象方向A側)を、軸心Xを基準とする径方向及び周方向に延びるように形成されている。第二中間壁部2Dは、対象方向Aにおける第二回転電機MG2と第一中間壁部2Cとの間、具体的には、対象方向Aにおける第二回転電機MG2と動力分配装置Dとの間に配置されている。第二中間壁部2Dにおける軸心Xを基準とする径方向の中心部には、中間軸Mを挿通するための貫通孔が形成されており、中間軸Mは、軸受を介して第二中間壁部2Dに対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第二中間壁部2Dは、第一ケース部2Aに対して対象方向A側から接合されている。本実施形態では、更に、ケース2は、対象方向Aにおける変速装置TMと第二回転電機MG2との間を、軸心Xを基準とする径方向及び周方向に延びるように形成された第三中間壁部2Fを備えている。
【0024】
図1及び図2に示すように、車両用駆動装置1は、油貯留部4と、油圧ポンプ3と、第一油路81と、第二油路82と、第三油路83とを備えている。油貯留部4は、油を貯留する部分であり、第一収容空間21の下方に設けられている。すなわち、油貯留部4は、鉛直方向Vの下側から見て、第一収容空間21よりも手前側(下側)において当該第一収容空間21と重複する位置に設けられている。本実施形態では、第一ケース部2Aの下部にオイルパン91が固定され、少なくとも第一ケース部2Aの周壁部とオイルパン91とで囲まれる空間によって、油貯留部4が形成されている。
【0025】
油圧ポンプ3は、油貯留部4の油を吸引する吸引部31を備えている。吸引部31は、油を濾過するための図示しないストレーナを備えており、油貯留部4内に設けられる。吸引部31の吸引口は、油圧ポンプ3の回転中或いは駆動中における油貯留部4の油面より下方に位置するように設けられる。ここでの油面は、油貯留部4に慣性力が作用していない状態、例えば、車両が一定速度で直進している状態又は車両が停止している状態における油面である。油圧ポンプ3は、吸引部31を介して油貯留部4の油を吸引して油圧を発生させる。本実施形態では、油圧ポンプ3は車輪の駆動力源(本例では、内燃機関E及び回転電機MG)により駆動される。また、本実施形態では、油圧ポンプ3は、図1に示すように、動力分配装置Dの径方向外側に、径方向視で動力分配装置Dと重複する位置に配置されている。油圧ポンプ3は、例えば、内接歯車ポンプ、外接歯車ポンプ、ベーンポンプ等を用いることができる。油圧ポンプ3の作動時には、吸引部31によって吸引された油が、吸入油路89(図1図2参照)を介して油圧ポンプ3の吸入口に導かれると共に、油圧ポンプ3の吐出口から吐出された油が吐出油路を介して油圧制御装置95に導かれる。
【0026】
油圧制御装置95は、油圧ポンプ3から供給される油圧を制御する装置である。なお、図2においては、油圧制御装置95を省略している。油圧制御装置95は、油圧制御弁と油路とを備え、車両用駆動装置1の各部に供給される油圧を制御する。油圧制御装置95は、本実施形態では、油貯留部4内に設けられている。具体的には、油圧制御装置95は、第一ケース部2Aの周壁部の外周部における、下側を向く面を有する部分(本例では、当該外周部における最下部)に固定されている。油圧制御装置95による制御後の油圧は、第一油路81を介して変速装置TMに供給され、本実施形態では、更に、第四油路84(後述する)を介しても変速装置TMに供給される。また、油圧制御装置95による制御後の油圧は、第二油路82を介して第一回転電機MG1に供給され、本実施形態では、更に、第二油路82を介して第二回転電機MG2にも供給される。
【0027】
第一油路81は、油圧ポンプ3が吐出した油を作動油として変速装置TMに供給する油路である。変速装置TMは、第一油路81を介して供給される油圧に応じて作動して、目標となる変速段を形成する。上述したように、本実施形態では、変速装置TMは、油圧駆動式の変速用係合装置を備え、第一油路81は、当該変速用係合装置の作動油圧室に連通している。作動油圧室の油圧を制御して、係合部材を押圧するピストンを摺動させることで、変速用係合装置の係合の状態が制御される。本実施形態では、車両用駆動装置1は、油圧ポンプ3が吐出した油を潤滑油或いは冷却油として変速装置TMに供給する第四油路84も備えている。本実施形態では、これらの第一油路81や第四油路84のそれぞれは、第三中間壁部2Fを用いて形成された部分を有する。
【0028】
第二油路82は、油圧ポンプ3が吐出した油を冷却油として第一回転電機MG1に供給する油路である。本実施形態では、第二油路82は、油圧ポンプ3が吐出した油を冷却油として第二回転電機MG2にも供給するように構成されている。すなわち、図1に示すように、第二油路82には、第一回転電機MG1を冷却するための第一冷却油路82Aと、第二回転電機MG2を冷却するための第二冷却油路82Bとが含まれる。本実施形態では、図1に示すように、第二油路82は、下流側において、第一冷却油路82Aと第二冷却油路82Bとに分岐するように構成されている。そして、本実施形態では、第一冷却油路82Aは、第一回転電機MG1(第一ステータST1)が備えるコイルエンド部に対して上方から油を冷却油として供給するように構成され、第二冷却油路82Bは、第二回転電機MG2(第二ステータST2)が備えるコイルエンド部に対して上方から油を冷却油として供給するように構成されている。本実施形態では、第二油路82は、第二中間壁部2Dを用いて形成された部分を有する。詳細は省略するが、第二油路82に、第一回転電機MG1又は第二回転電機MG2に対して径方向内側から油を冷却油として供給する油路が含まれていても良い。
【0029】
第三油路83は、図2に示すように、第二収容空間22から第一収容空間21へ向かう方向(対象方向Aとは反対側へ向かう方向)に油を流通させて、第一回転電機MG1に供給された後の油を第二収容空間22から油貯留部4に戻す油路である。第三油路83は、油貯留部4に向かって開口する開口部92を備え、第三油路83を流通する油は、開口部92から油貯留部4に供給される。上記のように、第一回転電機MG1に対しては、第二油路82を介して冷却のための油が供給される。そして、第一回転電機MG1に供給された後の油は、重力の影響を受けて第二収容空間22の下側の部分に移動する。第三油路83は、このように第二収容空間22の下側の部分に移動した油を、油貯留部4に流通させるための油路である。詳細は省略するが、第二油路82を介して第二回転電機MG2に対して冷却のために供給された油や、第四油路84を介して変速装置TMに対して冷却或いは潤滑のために供給された油は、重力の影響を受けて第一収容空間21の下側の部分に移動した後、第一ケース部2Aの周壁部に形成された開口部等を介して、第一収容空間21の下方に設けられた油貯留部4に戻される。
【0030】
図2に示すように、本実施形態では、第三油路83は、油の流れ方向における上流側から順に、排出孔94と導入孔93とを備えている。上述したように、本実施形態では、第二収容空間22(具体的には、第二収容空間22における第一回転電機MG1が収容される部分)の対象方向Aとは反対側を区画する第一中間壁部2Cがケース2に備えられ、排出孔94は、第一中間壁部2Cを対象方向Aに貫通する貫通孔によって構成されている。本実施形態では、排出孔94は、第一中間壁部2Cにおける第二収容空間22の最下部に対応する部分又はその近傍に設けられる。よって、第一回転電機MG1に供給された後の油は、図2において油の流れを模式的に破線矢印で示すように、排出孔94を介して第二収容空間22から対象方向Aとは反対側に排出される。
【0031】
導入孔93は、油貯留部4を区画する区画壁部2Eを貫通する貫通孔によって構成され、導入孔93における油貯留部4に開口する部分によって開口部92が形成されている。そして、排出孔94、導入孔93、及びこれらの周辺部分は、図2に示すように、排出孔94から対象方向Aとは反対側に排出された油が、ケース2の下部領域における内壁面部に沿って対象方向Aとは反対側に向けて流通して導入孔93に供給されるように構成されている。例えば、本実施形態では、導入孔93が、排出孔94よりも下側に形成されている。よって、第一回転電機MG1に供給された後の油を、第三油路83を介して、油貯留部4に戻すことが可能となっている。
【0032】
上記のように、開口部92は区画壁部2Eに形成されている。本実施形態では、区画壁部2Eは、第一収容空間21における第二回転電機MG2の収容部分と、第二収容空間22における第一回転電機MG1の収容部分との対象方向Aの間に配置されている。そして、区画壁部2Eは、油貯留部4の少なくとも対象方向A側を区画するように構成され、本実施形態では、油貯留部4の対象方向A側及び上側を区画するように構成されている。また、本実施形態では、区画壁部2Eは、第一中間壁部2Cと協働して、第二収容空間22と油貯留部4とを区画するように構成されている。更に、本実施形態では、区画壁部2Eは第一ケース部2Aの周壁部の一部により構成されており、区画壁部2Eと第二中間壁部2Dとの間には、排出孔94から排出された油が流通可能な隙間が形成されている。
【0033】
更に、本実施形態では、区画壁部2Eにおける油貯留部4を区画する内壁面部6(油貯留部4に面する壁面部)が、対象方向Aに向かうに従って下方に向かう傾斜面6Aを備えている。そして、本実施形態では、導入孔93は、開口部92が傾斜面6Aに形成されるように、内壁面部6における傾斜面6Aが形成された部分に開口するように形成されている。本実施形態では、導入孔93は、区画壁部2Eを鉛直方向Vに貫通するように形成されている。また、本実施形態では、図3及び図4に示すように、複数(本例では2つ)の導入孔93が、対象方向Aに直交する水平方向(対象方向A及び鉛直方向Vの双方に直交する方向)における互いに異なる位置に設けられている。そして、複数の導入孔93のそれぞれに対応して、導入孔93と同数の開閉機構5が設けられている。
【0034】
2.開閉機構の構成
次に、開閉機構5の構成について説明する。開閉機構5は、第三油路83に設けられ、当該第三油路83を開閉する機構である。開閉機構5は、対象方向加速度が予め定められた設定値以下である場合に第三油路83を開き、対象方向加速度が当該設定値より大きい場合に第三油路83を閉じるように構成されている。ここで、対象方向加速度は、開閉機構5に作用する対象方向Aの加速度である。対象方向加速度は、重力加速度の対象方向Aの成分と、開閉機構5に作用する対象方向Aの慣性力を開閉機構5の質量(本例では、開閉部材51の質量)で除したものとの和で表される。なお、上記の設定値は、正の値に設定される。
【0035】
車両用駆動装置1を車両に搭載した車両搭載状態では、対象方向Aが当該車両の前方へ向かう方向となる。すなわち、ケース2に備えられる車載用取付部28は、ケース2が車両に取り付けられた状態で対象方向Aが当該車両の前方へ向かう方向となるように構成されている。ここで、「車両の前方へ向かう方向」とは、車両前後方向に平行に車両の前方へ向かう方向(車両が前進方向に直進している場合の車両の重心の移動方向)を基準方向として、当該基準方向との内積が正となるあらゆる方向を含む概念として用いている。すなわち、車載用取付部28は、車両搭載状態において対象方向Aが上記基準方向に平行な方向となるように構成され、或いは、車両搭載状態において対象方向Aが上記基準方向に対して鋭角で交差する方向(例えば、上記基準方向に対して上方に5度〜10度傾斜した方向)となるように構成される。なお、以下では、簡略化のため、車両搭載状態において対象方向Aが上記基準方向に平行な方向となる場合を想定する。
【0036】
本実施形態では、図1に示すように、車載用取付部28は、ケース2を内燃機関Eに取り付けるためのフランジ部である。なお、本実施形態では、内燃機関Eがケース2よりも対象方向A側に配置されるため、ケース2は、内燃機関Eに接続される側が車両の前方となる向きで、車両に搭載される。車載用取付部28は、内燃機関Eへの取付部に限られず、車両に固定される別の装置に対してケース2を取り付けるための取付部であっても良く、また、車体に対してケース2を直接取り付けるための取付部であっても良い。
【0037】
上記のように、車両搭載状態では、対象方向Aが当該車両の前方へ向かう方向となる。そのため、対象方向加速度には、開閉機構5に作用する対象方向Aの慣性力が含まれる。そして、この慣性力を開閉機構5の質量で除したものは、車両の加速度の正負を反転させたものとなる。また、対象方向加速度には、重力加速度の対象方向Aの成分が含まれる。この成分は、重力加速度の方向(鉛直方向Vの下側へ向かう方向)と対象方向Aとの内積が大きくなるに従って大きくなる。言い換えれば、当該成分は、車両が走行中の路面の下り勾配の程度が高くなるに従って、大きくなる。よって、車両が減速中であることと、車両が走行中の路面が下り勾配であることとの少なくともいずれか一方が成立している状態で、減速度の程度、下り勾配の程度、或いはこれらの双方の合わさった程度が、対象方向加速度が上記設定値を超える程度である場合に、第三油路83が開閉機構5によって閉じられる。
【0038】
本実施形態では、図2に示すように、開閉機構5は開閉部材51を備えている。開閉部材51は、対象方向Aに直交する水平方向に沿って延びる揺動軸心B周りに揺動自在な部材であって、揺動軸心Bより下方に重心Cを有する部材である。開閉部材51は、ケース2に固定された固定部53によって、揺動軸心B周りに揺動自在にケース2に支持されている。すなわち、開閉部材51と固定部53とは、連結部54において、揺動軸心B周りに揺動自在に互いに連結されている。本実施形態では、連結部54は、図4に示すように、蝶番を用いた連結部とされている。また、本実施形態では、固定部53は、ケース2(本例では、第一ケース部2Aの周壁部)に対して下側から締結固定されている。
【0039】
揺動軸心Bは、開口部92よりも対象方向Aとは反対側であって、開口部92よりも上側に配置されている。そして、開閉部材51は、揺動軸心Bよりも対象方向A側に設定された設定位置C1まで重心Cが移動するように揺動することで、開口部92を閉じるように構成されている。上述したように、本実施形態では、開口部92は、対象方向Aに向かうに従って下方に向かう傾斜面6Aに形成されている。そして、開閉部材51は、図2に二点鎖線で示すように、重心Cが設定位置C1まで移動するように揺動した状態で、すなわち、開口部92を閉じた状態で、開口部92の周囲の傾斜面6Aに当接するように構成されている。本実施形態では、開閉部材51は、開口部92を閉じた状態で、開口部92の全周に亘って傾斜面6Aに当接するように構成されている。
【0040】
また、本実施形態では、開閉部材51における開口部92を閉じる閉塞部分に、対象方向A側に突出する突出部52が形成されている。この突出部52は、開閉部材51が開口部92を閉じた状態で導入孔93の内部に収容されるように構成されている。なお、閉塞部分とは、開閉部材51が開口部92を閉じた状態で、開口部92の開口方向(傾斜面6Aに直交する方向)に見て開口部92と重複する開閉部材51の部分である。
【0041】
例えば、勾配がゼロの道路において車両が一定速度で直進している状態や、勾配がゼロの道路において車両が停止している状態では、開閉機構5に対して対象方向Aの加速度が作用しない状態となる。ここで、このように開閉機構5に対して対象方向Aの加速度が作用していない状態での開閉部材51の重心Cの位置を、初期位置とする。開閉機構5に対して対象方向Aの加速度(対象方向加速度)が作用すると、当該対象方向加速度が正である場合には、開閉部材51が図2において時計回り方向に揺動して重心Cが設定位置C1側に移動し、当該対象方向加速度が負である場合には、開閉部材51が図2において反時計回り方向に揺動して重心Cが設定位置C1とは反対側に移動する。そして、対象方向加速度が上記の設定値を超える場合に、開閉部材51の重心Cが初期位置から設定位置C1まで移動した状態となる。よって、上記の設定値は、重心Cを初期位置から設定位置C1まで移動させるための開閉部材51の揺動角度に応じた値となる。本実施形態では、この揺動角度が45度程度に設定されている。
【0042】
ところで、油貯留部4の油が第三油路83を介して第二収容空間22側に逆流することによって油貯留部4の油面が低下した場合には、油圧ポンプ3によるエアの吸い込みが発生するおそれがある。そのため、この点からは、上記の揺動角度を小さな角度として、当該逆流が生じ得る車両の制動時等に第三油路83が閉じられやすくすることが好ましい。しかし、上記の揺動角度を小さく設定し過ぎると、車両が走行中の路面の下り勾配の程度が小さい場合にも第三油路83が閉じられるようになり、第三油路83を介した油貯留部4への油の流通が阻害されてしまう。この場合、第二収容空間22に多量の油が存在する結果として、第二収容空間22内の油が第一ロータRO1によって攪拌されることによるエネルギ損失が発生し、また、ブリーザ90からの油の吹き出しが発生するおそれがある。以上の点に鑑みて、上記の揺動角度は、油圧ポンプ3によるエアの吸い込みの発生を適切に低減できる範囲内で大きい角度に設定することが好ましく、その一例として本実施形態では当該揺動角度を45度程度に設定している。
【0043】
本実施形態では、重心Cの初期位置が、揺動軸心Bより下方であって鉛直方向Vに見て揺動軸心Bと重複する位置に配置されている(図1において実線で示す開閉部材51を参照)。このような構成は、例えば、固定部53に対して開閉部材51を揺動方向に付勢する付勢部材を設けない構成とした場合に実現される。なお、固定部53に対して開閉部材51を揺動方向に付勢する付勢部材を設ける構成とすることもでき、この場合には、上記の設定値は、重心Cを初期位置から設定位置C1まで移動させるための開閉部材51の揺動角度に加えて、当該付勢部材の付勢力にも応じた値となる。
【0044】
3.その他の実施形態
最後に、車両用駆動装置1の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0045】
(1)上記の実施形態では、開口部92が対象方向Aに向かうに従って下方に向かう傾斜面6Aに形成された構成を例として説明した。しかし、車両用駆動装置1の実施形態はこれに限定されず、開口部92が対象方向Aに対して直交する面に形成された構成とすることもできる。この場合であっても、例えば、開閉部材51の形状(例えば突出部52の形状等)を適切に設定することや、固定部53に対して開閉部材51を揺動方向に付勢する付勢部材を設けること等によって、重心Cを初期位置から設定位置C1まで移動させるための開閉部材51の揺動角度を適切に設定することが可能となる。
【0046】
(2)上記の実施形態では、設定位置C1が揺動軸心Bよりも対象方向A側に設定された構成を例として説明した。しかし、車両用駆動装置1の実施形態はこれに限定されず、設定位置C1が揺動軸心Bと対象方向Aの同じ位置に設定される構成とすることもできる。この場合、例えば固定部53に対して開閉部材51を揺動方向に付勢する付勢部材を設けることにより、設定位置C1よりも対象方向Aとは反対側に重心Cの初期位置を設定することで、重心Cを初期位置から設定位置C1まで移動させるための開閉部材51の揺動角度を適切に設定することが可能となる。
【0047】
(3)上記の実施形態では、開閉部材51における開口部92を閉じる閉塞部分に、対象方向A側に突出する突出部52が形成された構成を例として説明した。しかし、車両用駆動装置1の実施形態はこれに限定されず、当該閉塞部分に突出部52が形成されない構成とすることもできる。例えば、対象方向Aに直交する水平方向に沿って見た場合の開閉部材51の形状が平板状となる構成とすることができる。
【0048】
(4)上記の実施形態では、ケース2における第二収容空間22を形成する部分にブリーザ90の取付部29が形成された構成を例として説明した。しかし、車両用駆動装置1の実施形態はこれに限定されず、ケース2における第一収容空間21を形成する部分にブリーザの取付部が形成された構成とすることもできる。
【0049】
(5)上記の実施形態では、第一収容空間21に第二回転電機MG2が収容される構成を例として説明した。しかし、車両用駆動装置1の実施形態はこれに限定されず、第一収容空間21に第二回転電機MG2が収容されない構成とすることもできる。例えば、第二回転電機MG2が第二収容空間22に収容される構成とすることができる。また、例えば、車両用駆動装置1は、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2の内の第一回転電機MG1のみが車両に備えられた、1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置であってもよい。なお、1モータパラレル方式では、内燃機関E及び第一回転電機MG1が、直接或いは係合装置を介して互いに直列に駆動連結される。
【0050】
(6)上記の実施形態では、車両用駆動装置1が、車輪の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの双方を備えたハイブリッド車両用の駆動装置である場合を例として説明した。しかし、車両用駆動装置1の実施形態はこれに限定されない。車両用駆動装置1は、車輪の駆動力源として回転電機MGのみ(第一回転電機MG1のみ、或いは第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2の双方)を備えた電動車両用の駆動装置であってもよい。
【0051】
(7)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、車両用駆動装置の技術範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、車両用駆動装置の技術範囲に含まれる。
【0052】
〔実施形態の概要〕
以下、上記において説明した車両用駆動装置(1)の概要について簡単に説明する。
【0053】
変速装置(TM)を収容する第一収容空間(21)及び回転電機(MG1)を収容する第二収容空間(22)を形成するケース(2)と、
前記第一収容空間(21)の下方に設けられて油を貯留する油貯留部(4)と、
前記油貯留部(4)の油を吸引する吸引部(31)を備えた油圧ポンプ(3)と、
前記油圧ポンプ(3)が吐出した油を作動油として前記変速装置(TM)に供給する第一油路(81)と、
前記油圧ポンプ(3)が吐出した油を冷却油として前記回転電機(MG1)に供給する第二油路(82)と、
前記第二収容空間(22)から前記第一収容空間(21)へ向かう方向に油を流通させて、前記回転電機(MG1)に供給された後の油を前記第二収容空間(22)から前記油貯留部(4)に戻す第三油路(83)と、を備えた車両用駆動装置(1)は、1つの態様として、
前記第一収容空間(21)から前記第二収容空間(22)へ向かう方向を対象方向(A)として、前記対象方向(A)は、前記ケース(2)が車両に取り付けられた状態で当該車両の前方へ向かう方向であり、
前記第三油路(83)は、当該第三油路(83)を開閉する開閉機構(5)と、前記油貯留部(4)に向かって開口する開口部(92)とを備え、
前記開閉機構(5)は、前記対象方向(A)に直交する水平方向に沿って延びる揺動軸心(B)周りに揺動自在な部材であって、前記揺動軸心(B)より下方に重心(C)を有する開閉部材(51)を備え、
前記開閉部材(51)は、前記対象方向(A)側に前記重心(C)が移動するように揺動することで、前記開口部(92)を閉じるように構成され
前記油貯留部(4)を区画する内壁面部(6)が、前記対象方向(A)に向かうに従って下方に向かう傾斜面(6A)を備え、
前記開口部(92)が前記傾斜面(6A)に形成され、
前記揺動軸心(B)は、前記傾斜面(6A)の上方側に配置され、
前記開閉部材(51)は、前記揺動軸心(B)回りに揺動可能に前記ケース(2)に支持されている。
【0054】
この構成によれば、車両用駆動装置(1)は、対象方向(A)が車両の前方へ向かう方向となるように、車両に取り付けられる。そして、油貯留部(4)に向かって開口する開口部(92)を備える第三油路(83)は、さらに、当該開口部(92)を開閉する開閉機構(5)を備えている。当該開閉機構(5)は、開閉部材(51)を備えており、当該開閉部材(51)は、対象方向(A)の側に開閉部材(51)の重心(C)が移動するように搖動することで、開口部(92)を閉じる。また、油貯留部(4)を区画する内壁面部(6)は、対象方向(A)に向かうに従って下方に向かう傾斜面(6A)を備え、開口部(92)が傾斜面(6A)に形成され、揺動軸心(B)は、傾斜面(6A)の上方側に配置され、開閉部材(51)は、揺動軸心(B)回りに揺動可能にケース(2)に支持されている。これにより、開閉部材(51)に対して揺動方向に付勢する付勢部材を設けなくとも、第三油路(83)を開いておくことができる。一方、開閉部材(51)が対象方向(A)の側に揺動すれば第三油路(83)が閉じられるので、開閉機構(5)の構成の簡素化を図ることができる。
【0055】
例えば勾配がゼロの道路を車両が一定速度で直進している場合には、対象方向(A)の加速度は、開閉部材(51)の重心(C)を、対象方向(A)の側に搖動させるほど、大きくはならない。従って、回転電機(MG1)に供給された後の油を、第三油路(83)を介して、第二収容空間(22)から油貯留部(4)に適切に戻すことができる。これにより、第二収容空間(22)に多量の油が溜まらないようにして、第二収容空間(22)に収容される回転電機(MG1)による油の攪拌によって発生するエネルギ損失を低減できると共に、油圧ポンプ(3)によるエアの吸い込みが発生しない程度に油貯留部(4)の油面の高さを確保することが可能となる。また、例えば、車両が走行する路面が下り勾配である場合でも、同様のことが言える。即ち、対象方向(A)の加速度が、開閉部材(51)の重心(C)を、対象方向(A)の側に搖動させるほど大きくはならない程度の下り勾配であれば、同様である。
【0056】
一方、車両の急制動時や、下り勾配の程度が大きい下り坂を走行している場合には、対象方向(A)の加速度も大きくなる。この加速度が、対象方向(A)の側に開閉部材(51)の重心(C)が移動して、開口部(92)を閉じる程度に大きければ、第三油路(83)が閉じられるため、第三油路(83)内を逆流する油を低減することができる。これにより、油貯留部(4)から第三油路(83)を介して第二収容空間(22)の側へ排出される油の流れを妨げることができる。その結果、油貯留部(4)の油面が大きく低下しないようにし、油圧ポンプ(3)によるエアの吸い込みが発生しない程度に油貯留部(4)の油面の高さを確保することができる。以上、上記の構成によれば、車両の制動時以外の通常走行時には、油貯留部(4)へ油を戻す油路(第三油路(83))における油の流通を適切に確保しつつ、車両の急制動時には、当該油路(第三油路(83))内を逆流する油を低減することが可能となる。
【0057】
ここで、前記重心(C)の初期位置は、鉛直方向に見て前記揺動軸心(B)と重複する位置に配置されていると好適である。
【0058】
この構成によれば、開閉機構(5)に対して対象方向(A)の加速度が作用しない状態での開閉部材(51)の重心(C)の位置が、揺動軸心(B)より下方であって鉛直方向(V)に見て当該揺動軸心(B)と重複する位置に設定される。従って、開閉部材(51)に対して揺動方向に付勢する付勢部材を設けなくとも、第三油路(83)を開いておくことができる。一方、開閉部材(51)が対象方向(A)の側に揺動すれば、適切に第三油路(83)が閉じられる。
【0059】
ここで、前記開閉部材(51)、当該開閉部材(51)に作用する前記対象方向(A)の加速度である対象方向加速度が設定値以下である場合に前記開口部(92)を開き、前記対象方向加速度が前記設定値より大きい場合に前記開口部(92)を閉じるように構成されていると好適である。
【0060】
この構成によれば、対象方向加速度が設定値以下である場合には、開口部(92)が開かれており、第三油路(83)を油が流通可能である。一方、対象方向加速度が当該設定値より大きい場合には、開閉機構(5)(開閉部材(51))によって開口部(92)が閉じられ、第三油路(83)の油の流通が妨げられる。この設定値は、例えば、勾配がゼロの道路を車両が一定速度で直進している場合や、勾配の程度が比較的小さい下り坂を車両が走行する場合の対象方向加速度よりも、大きい値であると好適である。一方、この設定値は、例えば、車両の急制動時や、勾配の程度が大きい下り坂を車両が走行している場合の対象方向加速度よりも、大きい値であると好適である。即ち、通常走行時においては、対象方向加速度が設定値を超えずに、第三油路(83)を介した油貯留部(4)への油の流通が適切に確保される。また、車両の急制動時には、対象方向加速度が設定値を超えて、第三油路(83)内を逆流する油を低減することが可能となる。尚、上述したように、開閉部材(51)の揺動軸心(B)は傾斜面(6A)の上方側に配置され、開閉部材(51)が揺動軸心(B)回りに揺動可能にケース(2)に支持されている。このため、開閉部材(51)に対して揺動方向に付勢する付勢部材を設けなくとも、対象方向加速度が設定値以下である場合には第三油路(83)を開いておくことができる。一方、対象方向加速度が当該設定値より大きい場合には、開閉部材(51)の揺動によって第三油路(83)が閉じられる。
【0061】
また、前記開閉部材(51)における前記開口部(92)を閉じる閉塞部分に、前記対象方向(A)の側に突出する突出部(52)が形成されていると好適である。
【0062】
この構成によれば、開閉部材(51)が開口部(92)を閉じていない状態において、油貯留部(4)の油が開口部(92)に流入する際の流通経路を突出部(52)によって狭くすることができる。よって、開閉部材(51)が開口部(92)を閉じていない状態においても、油貯留部(4)内から第二収容空間(22)の側へ排出される油を適度に低減することが可能となる。
【0063】
また、前記回転電機(MG1)を第一回転電機(MG1)として、前記第一収容空間(21)における前記変速装置(TM)の収容部分よりも前記対象方向(A)側の部分により、前記第一回転電機(MG1)とは別の第二回転電機(MG2)を収容する空間が形成され、前記第一収容空間(21)における前記第二回転電機(MG2)の収容部分と前記第二収容空間(22)における前記第一回転電機(MG1)の収容部分との前記対象方向(A)の間に、前記第二収容空間(22)と前記油貯留部(4)とを区画する区画壁部(2E)が設けられ、前記開口部(92)が前記区画壁部(2E)に形成されていると好適である。
【0064】
この構成によれば、開口部(92)が形成される壁部が、第三油路(83)を介した油の流通元の第二収容空間(22)と油の流通先の油貯留部(4)とを区画する壁部であるため、比較的簡素な構成で第三油路(83)を形成することが可能となる。
【0065】
ここで、前記ケース(2)における前記第二収容空間(22)を形成する部分に、ブリーザ(90)の取付部(29)が形成されていると好適である。
【0066】
ブリーザ(90)の取付部(29)がケース(2)における第二収容空間(22)を形成する部分に形成される場合、ブリーザ(90)から吹き出す油を低減するために、第二収容空間(22)に存在する油の量が低減できることが望ましい。上述したように、車両用駆動装置(1)は、車両の制動時以外の通常走行時における第三油路(83)を介した油貯留部(4)への油の流通を適切に確保しつつ、車両の急制動時に第三油路(83)内を逆流する油を低減することが可能である。従って、ブリーザ(90)の取付部(29)がケース(2)における第二収容空間(22)を形成する部分に形成される場合、上述したような構成の車両用駆動装置(1)は、特に適している。
【0067】
また、前記第一収容空間(21)及び前記第二収容空間(22)のそれぞれが、前記対象方向(A)と同軸の円筒状に形成された円筒状部(21A,22A)を有し、前記第二収容空間(22)の前記円筒状部(22A)が、前記第一収容空間(21)の前記円筒状部(21A)よりも大径に形成されていると好適である。
【0068】
以下、第一収容空間(21)の円筒状部(21A)を第一円筒状部(21A)、第二収容空間(22)の円筒状部(22A)を第二円筒状部(22A)と称して説明する。第二円筒状部(22A)が、第一円筒状部(21A)よりも大径に形成されている場合、第二円筒状部(22A)が第一円筒状部(21A)よりも小径に形成されている場合に比べて、第二収容空間(22)に油が溜まりやすくなる場合があり得る。上述したように、車両用駆動装置(1)は、車両用駆動装置(1)は、車両の制動時以外の通常走行時における第三油路(83)を介した油貯留部(4)への油の流通を適切に確保しつつ、車両の急制動時に第三油路(83)内を逆流する油を低減することが可能である。従って、上述したような構成の車両用駆動装置(1)は、第二収容空間(22)の円筒状部(22A)が第一収容空間(21)の円筒状部(21A)よりも大径に形成される場合にも適している。
【符号の説明】
【0069】
1:車両用駆動装置
2:ケース
2E:区画壁部
3:油圧ポンプ
4:油貯留部
5:開閉機構
6:内壁面部
6A:傾斜面
21:第一収容空間
21A:第一円筒状部(第一収容空間の円筒状部)
22:第二収容空間
22A:第二円筒状部(第二収容空間の円筒状部)
28:車載用取付部
29:ブリーザの取付部
31:吸引部
51:開閉部材
52:突出部
81:第一油路
82:第二油路
83:第三油路
90:ブリーザ
92:開口部
A:対象方向
B:揺動軸心
C:重心
C1:設定位置
MG1:第一回転電機(回転電機)
MG2:第二回転電機
TM:変速装置
図1
図2
図3
図4