(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284629
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】高エネルギービームの焦点位置を決定する装置および方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20180215BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/03
【請求項の数】29
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-515671(P2016-515671)
(86)(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公表番号】特表2016-524539(P2016-524539A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2013069029
(87)【国際公開番号】WO2014191061
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2016年2月15日
(31)【優先権主張番号】102013210078.7
(32)【優先日】2013年5月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Trumpf Werkzeugmaschinen GmbH + Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ボリス レガート
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−146702(JP,A)
【文献】
特開平09−043507(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/104390(WO,A1)
【文献】
特開2012−151597(JP,A)
【文献】
特開平10−020182(JP,A)
【文献】
特開2010−052014(JP,A)
【文献】
特表2012−533434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/046
B23K 26/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(3)及び/又は装置(1)の基準輪郭(5b)に対する、高エネルギービーム(2)のビーム方向(13)における前記高エネルギービーム(2)の焦点位置(F,F′,F″)を決定する装置(1)であって、
前記ワークピース(3)上に前記高エネルギービーム(2)を集光させる集光素子(4)と、
前記集光素子(4)を貫通して延在する監視ビームパス(7)を用いて、前記ワークピース(3)表面(3a)及び/又は前記基準輪郭(5b)における監視すべき領域(15)をキャプチャする画像キャプチャデバイス(9)であって、前記高エネルギービーム(2)に対して非同軸方向に延在し且つ前記集光素子(4)の光軸に対して所定の角度をなして延在する前記監視ビームパス(7)の監視方向(R1)に対応付けられた少なくとも1つの監視ビーム(7a)を形成するように構成され、かつ、少なくとも1つの前記監視方向(R1)からの前記監視すべき領域(15)及び/又は前記基準輪郭(5b)の少なくとも1つの画像(B1)を生成する結像光学系(14)を含んだ、画像キャプチャデバイス(9)と、
前記高エネルギービーム(2)の前記ビーム方向(13)における前記焦点位置(F,F′,F″)を、少なくとも1つの記録された画像(B1)の評価により決定する評価デバイス(19)とを備えていることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記評価デバイス(19)は、前記高エネルギービーム(2)のビーム方向(13)における焦点位置(F,F′,F″)を、前記少なくとも1つの記録された画像(B1)における前記基準輪郭(5b)の位置(P,P′)に基づいて決定するように構成されている、請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
前記画像キャプチャデバイス(9)は、さらなる監視方向(R2;R)に対応付けられた少なくとも1つのさらなる監視ビーム(7b)を形成するように構成されており、
前記結像光学系(14)は、少なくとも2つの異なる監視方向(R1,R2)からの前記監視すべき領域(15)及び/又は前記基準輪郭(5b)の少なくとも2つの画像(B1,B2;B3,B4)を生成するように構成されており、
前記評価デバイス(19)は、記録された複数の画像(B1,B2;B3,B4)の比較評価によって前記高エネルギービーム(2)の前記焦点位置(F,F′,F″)を決定するように構成されている、請求項1記載の装置(1)。
【請求項4】
前記装置(1)は、前記ワークピース(3)表面(3a)、特に前記監視すべき領域(15)内を照明する、及び/又は、前記基準輪郭(5b)を照明する、照明源(10)を備えている、請求項1から3いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項5】
前記ワークピース(3)表面(3a)における前記監視すべき領域(15)をキャプチャする前記画像キャプチャデバイス(9)の前記監視ビームパス(7)は、前記基準輪郭(5b)によって画定された画像キャプチャ領域(5a)を有している、請求項1から4いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項6】
前記評価デバイス(19)は、前記ワークピース(3)に対する前記高エネルギービーム(2)の前記焦点位置(F,F′,F″)を、前記監視すべき領域(15)内の前記ワークピース(3)表面(3a)の複数の画像(B1,B2;B3,B4)の比較評価によって決定するように構成されている、請求項3から5いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項7】
前記結像光学系(14)は、各監視方向(R1,R2)に対応付けられた少なくとも2つの結像光学素子(16a,16b,22)を有している、請求項3から6いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項8】
前記結像光学素子(16a,16b,22)は、円柱レンズとして構成されている、請求項7記載の装置(1)。
【請求項9】
前記結像光学素子(22)は、レンズアレイ(24)を形成する、請求項7又は8記載の装置(1)。
【請求項10】
前記結像光学系(14)は、各監視方向(R1,R2,...)に対応付けられた少なくとも2つのビーム偏向領域(26a,26b;26c,26d)を有する偏向デバイス(26)を備えている、請求項3から9いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項11】
前記偏向デバイス(26)は、少なくとも1つの偏光プリズムを有している、請求項10記載の装置(1)。
【請求項12】
前記画像キャプチャデバイス(9)は、各監視方向(R1,R2;R1,R)に対応付けられた少なくとも2つの監視ビーム(7a,7b)を形成するビームオフセットデバイス(28a,28b)を有している、請求項3から11いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項13】
前記画像キャプチャデバイス(9)は、各監視方向(R1,R2;R1,R)に対応付けられた少なくとも2つの監視ビーム(7a,7b)を異なる時点で形成するように構成されている、請求項3から12いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項14】
前記画像キャプチャデバイス(9)は、各監視方向(R1,R2;R1,R)に対応付けられた少なくとも2つの監視ビーム(7a,7b)を形成する少なくとも1つの絞り(31)を有している、請求項3から13いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項15】
前記結像光学系(14)は、異なる監視方向(R1,R2,...)からの前記監視すべき領域(15)及び/又は前記基準輪郭(5b)の少なくとも3つの画像(B1,B2;B3,B4)を生成するように構成されている、請求項3から14いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項16】
前記結像光学系(14)は、監視方向(R)からの前記ワークピース(3)表面(3a)における監視すべき領域(15)の画像(B)を前記高エネルギービーム(2)に対して同軸方向で形成する結像光学素子(18)を有している、請求項1から15いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項17】
前記評価デバイス(19)は、前記高エネルギービーム(2)に対して同軸方向で記録された画像(B)と、前記高エネルギービーム(2)に対して非同軸方向で記録された少なくとも1つの画像(B1〜B4)とを比較評価するように構成されている、請求項16記載の装置(1)。
【請求項18】
前記画像キャプチャデバイス(9)は、前記ワークピース(3)上に前記高エネルギービーム(2)を通過させるためのレーザー加工用ノズル(5)のノズル開口部(5a)によって少なくとも1つの画像(B1〜B4,B)が記録されるように構成されている、請求項1から17いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項19】
前記レーザー加工用ノズル(5)のノズル内側輪郭(5b)は、前記基準輪郭を形成する、請求項18記載の装置(1)。
【請求項20】
前記画像キャプチャデバイス(9)は、少なくとも1つの画像(B1〜B4,B)が生成される検出器面(12a)を有する少なくとも1つの検出器を備えている、請求項1から19いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項21】
前記評価デバイス(19)は、記録された画像(B1〜B4,B)の比較評価によって、前記基準輪郭(5a)と前記ワークピース(3)表面(3a)との間の間隔(D)を決定するように構成されている、請求項3から20いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項22】
さらに前記装置(1)は、前記ビーム方向(13)において前記高エネルギービーム(2)の焦点位置(F,F′,F″)を変更させるデバイス(21)と、前記高エネルギービーム(2)の前記焦点位置(F′,F″)を、目標焦点位置(F)に開ループ及び/又は閉ループ制御する開ループ及び/又は閉ループ制御デバイス(20)とを含んでいる、請求項1から21いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項23】
さらに前記装置(1)は、前記高エネルギービーム(2)のビーム方向(13)における前記結像光学系(14)の焦点位置(F,F′,F″)を変更させるデバイス(32)と、前記結像光学系(14)の前記焦点位置(F′,F″)を、目標焦点位置(F)に開ループ及び/又は閉ループ制御する開ループ及び/又は閉ループ制御デバイス(20)とを含んでいる、請求項1から22いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項24】
前記高エネルギービーム(2)は、レーザービームである、請求項1から23いずれか1項記載の装置(1)。
【請求項25】
ワークピース(3)上に高エネルギービーム(2)を集光させる集光素子(4)を備えた装置(1)の基準輪郭(5b)及び/又はワークピース(3)に対する、前記高エネルギービーム(2)のビーム方向(13)において、前記高エネルギービーム(2)の焦点位置(F,F′,F″)を決定する方法であって、
前記ワークピース(3)表面(3a)及び/又は前記基準輪郭(5b)における監視すべき領域(15)を、前記集光素子(4)を貫通して延在する監視ビームパス(7)を用いてキャプチャするステップと、
前記監視すべき領域(15)及び/又は前記基準輪郭(5b)の少なくとも1つの画像(B1〜B4)を、前記高エネルギービーム(2)に対して非同軸方向に延在し且つ前記集光素子(4)の光軸に対して所定の角度をなして延在する前記監視ビームパス(7)の監視方向(R1)に対応付けられた少なくとも1つの監視ビーム(7a)の形成によって生成するステップと、
前記高エネルギービーム(2)の前記ビーム方向(13)における前記焦点位置(F,F′,F″)を、少なくとも1つの記録された画像(B1)の評価によって決定するステップとを含んでいることを特徴とする方法。
【請求項26】
前記高エネルギービーム(2)の前記ビーム方向(13)における前記焦点位置(F,F′,F″)を、前記少なくとも1つの記録された画像(B1)における基準輪郭(5b)の位置(P,P′)に基づいて決定する、請求項25記載の方法。
【請求項27】
少なくとも2つの異なる監視方向(R1,R2)から前記監視すべき領域(15)及び/又は前記基準輪郭(5b)の少なくとも2つの画像(B1〜B4)を生成するために、さらなる監視方向(R2;R)に対応付けられた少なくとも1つのさらなる監視ビーム(7b)を形成し、
記録された複数の画像(B1,B2;B3,B4)の比較評価によって、前記高エネルギービーム(2)の前記焦点位置(F,F′,F″)を決定する、請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記高エネルギービーム(2)は、レーザービームである、請求項25から27いずれか1項記載の方法。
【請求項29】
請求項25から28いずれか1項記載の方法の全てのステップをコンピュータプログラムとしてデータ処理システム上で実施するためのコード手段を有している、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースに対する、及び/又は、装置の基準輪郭に対する、高エネルギービームのビーム方向において高エネルギービーム、特にレーザービームの焦点位置を決定する装置に関している。また本発明は、ワークピースに対する、及び/又は、装置の基準輪郭に対する、高エネルギービームのビーム方向において、高エネルギービーム、特にレーザービームの焦点位置を決定する方法にも関している。この装置は、例えば加工ヘッド、特にレーザー加工ヘッドである。
【背景技術】
【0002】
ワークピース加工に使用する高エネルギービームの焦点位置ないし焦点面の位置は、ワークピース加工のための重要なパラメータである。高エネルギービームの伝播方向における焦点面の位置や焦点位置は、集光素子前の高エネルギービームの発散ないし収束に依存し、さらに使用する高エネルギービームに対する、より厳密には高エネルギービームの波長領域(当該動作波長のレーザービームを使用した場合)に対する集光素子の焦点距離に依存している。
【0003】
高エネルギービームの発散ないし収束は、通常は良好に制御可能であり、基本調整に従って極僅かな変更のみが施される。しかしながらビーム出力が大きくて特にCO
2レーザービームを使用している場合には、ワークピース加工中の集光素子焦点距離の変動は危機的である。集光素子としてレンズを使用する場合、レンズの不均一な加熱や冷却によって半径方向の温度勾配が形成され、この温度勾配は、半径方向の座標に依存して、レンズの屈折率nに変化をもたらす(すなわち、n=n(r))。ワークピース加工における屈折率の変化は、典型的には焦点距離の縮小をもたらす(いわゆる熱レンズ)。従って、集光レンズの実際の焦点距離f
FLは、とりわけビーム出力P
L及びビーム形状の関数である(例えばビーム直径D
R)、集光レンズの汚れ具合、時間:f
L=f(P
L,D
R,t,…)。それ故ワークピース加工中の焦点位置ないし焦点面の位置を決定するために、通常は、集光要素の実際の焦点距離を考慮する必要がある。
【0004】
ビーム方向における高エネルギービームの焦点位置を決定するために、とりわけ、適切な測定装置を用いてビームパスないしビーム火線の測定を行うことが周知であり、場合によってはビームウエスト近傍のみのビーム出力が検出される。また集光素子とワークピースとの間で選択された複数の様々な間隔のもとで、それぞれ1つの切り込みをワークピースに設け、この切り込みの幅に基づいてワークピースに対する焦点位置を推定することも可能である。但し前述した手段は、典型的には、焦点位置をオンラインで検出すること、すなわちワークピース加工中に検出することは不可能である。
【0005】
国際公開第2011/009594号明細書からは、レーザービームを用いてワークピースを加工するレーザー加工ヘッドが公知である。このレーザー加工ヘッドは、ワークピース加工領域を監視するための結像光学系を備えたカメラと、レーザービームをワークピース表面上に若しくはワークピース表面に対して相対的に定められた位置に集光するための集光レンズとを有している。さらに前記国際公開第2011/009594号には、集光レンズの焦点がずれた時にカメラ画像のピントを再調整したり、ワークピース表面若しくはワークピース表面の所定の位置に対する集光光学系の焦点ずれを修正する補正調節距離を計算したりするのに必要とされる、結像光学系の光軸方向の調節距離に基づいて構成された評価ユニットが開示されている。
【0006】
独国特許出願公開第102010017316号公報には、溶接ビードをワークピースに設けるように構成された溶接装置を備えたシステムが開示されている。このシステムは、溶接ビードに向けて、対応する数の画像を生成するように構成された複数のカメラを含んでいる。制御装置は、前記複数の画像に基づいて溶接ビードの立体画像を作成し、当該立体画像に基づいて、溶接ビート設置のパラメータを設定している。またここでは前記複数のカメラに代えて、唯一つのカメラを用いて、2つの異なる透過方向ないし視野方向からの画像を撮影すること、あるいは画像の差分解析の実施ないしは立体画像の生成が可能である。
【0007】
独国特許出願公開第102005032946号公報からは、レーザービームを用いて対象を加工する装置が公知である。この装置は、対象を結像する監視装置とレーザー走査装置とを有している。この監視装置は、準備モードにおいてオブジェクトを立体的に監視すべく、2つの結像ビームパスと2つの接眼レンズとを有するステレオ顕微鏡として構成されていてもよい。光学結像装置によれば、加工過程の経過も同じ接眼レンズで、レーザー走査装置の動作中に追従することが可能である。
【0008】
独国特許出願公開第102011016519号公報には、高エネルギー加工ビームを用いてワークピースの加工処理を制御する方法及び装置が開示されている。ここでは加工ビームが、ワークピースに対する加工ビーム入射箇所のずれに対しその光軸に垂直な方向への移動が可能なレンズを貫通する。一例によれば、電子的に評価可能な画像を生成する監視カメラが設けられ、該カメラの結像ビームパスがレンズを通って入射箇所に集光される。
【0009】
欧州特許第2456592号公報には、ワークピース表面若しくはワークピース表面の所定の位置に、加工レーザービームを集光させるための集光光学系と、ワークピース加工領域を監視するためのビームパス内に配置された結像光学系を備えたカメラとを有している、レーザー加工ヘッドが開示されている。ここでは、集光レンズの焦点がずれた時にカメラ画像の鮮明度を再調整したり、ワークピース表面若しくはワークピース表面の所定の位置に対する集光光学系の焦点ずれを修正する補正調節距離を計算したりするのに必要とされる、結像光学系の光軸方向の調節距離に基づいて構成された評価ユニットが設けられている。
【0010】
発明の課題
本発明の基礎をなす課題は、高エネルギービームを用いたワークピースの加工中に焦点位置を高い信頼性のもとで決定することのできる装置及び方法を提供することである。
【0011】
発明の態様
前記課題は、冒頭に述べたような形式の装置において、
前記ワークピース上に前記高エネルギービームを集光させる集光素子と、
前記集光素子を貫通して延在する監視ビームパスを用いて、前記ワークピースの表面及び/又は前記基準輪郭における監視すべき領域をキャプチャする画像キャプチャデバイスであって、前記高エネルギービームに対して非同軸方向に延在する監視方向に対応付けられた少なくとも1つの監視ビームを形成するように構成され、かつ、少なくとも1つの前記監視方向からの前記監視すべき領域及び/又は前記基準輪郭の少なくとも1つの画像を生成する結像光学系を含んでいる、画像キャプチャデバイスと、
前記高エネルギービームの前記ビーム方向における前記焦点位置を、記録された前記少なくとも1つの画像の評価により決定する評価デバイスとを備えた装置によって解決される。
【0012】
高エネルギービームのビーム方向における焦点位置を決定するために提案されている測定原理は、監視すべき領域の少なくとも1つの画像のキャプチャ、ないし高エネルギービームに対して非同軸的な少なくとも1つの監視方向ないし少なくとも1つの視野角からの基準輪郭の少なくとも1つの画像のキャプチャに基づいている。すなわち集光素子を貫通する監視ビームパスの一部は、当該集光素子の光軸に対して所定の角度を付けて延在している。そのような監視ビームに基づいて、記録された画像の適切な評価のもとで、集光素子の焦点距離の変化が、又は、場合により対象間隔の変化、すなわちワークピースと集光素子との間の間隔の変化が、キャプチャされ、レーザービームのビーム方向の焦点位置が決定され、必要に応じて修正される。
【0013】
一実施形態によれば、前記評価デバイスは、前記高エネルギービームのビーム方向における焦点位置を、前記少なくとも1つの記録された画像における前記基準輪郭の位置に基づいて決定するように構成されている。このケースでは、前記デバイスに対して静的に配置された基準輪郭ないし基準ジオメトリ(これらは例えばレーザー加工ヘッドの形態の装置では、レーザー加工用ノズルのノズル内側輪郭によって形成されてもよい)が、焦点位置の決定のために使用される。この基準輪郭は、ビーム方向で集光素子、例えば集光レンズに対して一定の間隔を有している。集光素子の例えば熱的負荷による焦点距離の変動は、記録された画像内の基準ジオメトリの横方向のずれにつながる。記録された画像内の基準ジオメトリの位置の横方向ずれの大きさに基づいて、焦点位置を決定することが可能である。また横方向ずれの方向性に基づいて、目標焦点位置からの焦点位置のずれの方向性を推定することも可能である。この目的のために、例えば熱的負荷のない集光素子のもとでの、基準輪郭の基準位置に対するオフセットまたは横方向のずれが決定される。例えば、画像の評価の前に、冷間状態での、すなわち高エネルギービームの照射なしでの集光素子の(既知の)焦点距離における基準位置を決定し、前記評価デバイスに対応付けられたメモリデバイス内に、例えば基準画像や位置の形態で、例えば領域中心、ジオメトリ中心または特定の幾何学的特徴、例えば幾何学的エッジ形態でファイルされてもよい。
【0014】
さらなる実施形態によれば、前記画像キャプチャデバイスは、さらなる監視方向に対応付けられた少なくとも1つのさらなる監視ビームを形成するように構成されており、前記結像光学系は、少なくとも2つの異なる監視方向からの前記監視すべき領域及び/又は前記基準輪郭の少なくとも2つの画像を生成するように構成されており、前記評価デバイスは、記録された複数の画像の比較評価によって前記高エネルギービームの前記焦点位置を決定するように構成されている。
【0015】
この実施形態において焦点位置を決定するために提案されている測定原理は、集光素子を貫通する立体的な間隔測定に基づいており、すなわち、ワークピース表面における監視すべき領域の2つ以上の画像の記録に基づいており、あるいは2つ以上の異なる監視方向ないし視野角からの当該装置内に設けられた基準輪郭における監視すべき領域の2以上の画像の記録に基づいている。結像光学系は、この目的のために典型的には集光素子の通常は偏心的に延在している(すなわち中心軸を通らないで延在している)と共にワークピースに対してそれぞれ異なる角度で延在している2つ以上の監視ビームないし1つ以上の検出器表面の離間した領域上の結像乃至監視ビームパスのビーム束を結像している。検出器表面(複数可)の相互に離間した領域における2つ以上の画像の生成に対して代替的に、検出器表面の同じ領域で2つ以上の画像を以下で詳細に説明するように短い時間間隔で順次連続してキャプチャすることも可能である。3つ以上の画像を比較分析することにより、比較の有意性と焦点位置決定の精度を高めることができる。
【0016】
焦点位置の可及的に正確な決定のために好適には、画像が記録される視野方向ないし視野角が相互に可及的に大きくずらされる。視野角間の大きな違いは、特に、ワークピースの監視すべき表面領域の2つの画像が集光素子の直径方向で相対向する2つの縁部領域を通過した場合に得られる。集光素子として典型的には1つ以上の集光レンズ時又は集光ミラー、特に軸外放物面反射鏡が用いられる。
【0017】
ワークピースが集光レンズの焦点面にあるときは、集光レンズの縁部領域からのワークピースの監視すべき領域の画像ないし結像は同一である。しかしながらワークピースが集光レンズの焦点面外に、すなわち上側又は下側にあるときは、ワークピース表面の監視すべき領域の2つの画像は横方向に相互にずれる。これらの2つの画像間の横方向のずれの大きさに基づいて、ワークピースと焦点位置ないし焦点面との間隔ないしずれを推定することが可能である。
【0018】
相応に当該装置内で形成される基準輪郭の2つの画像間の横方向間隔に基づいて、当該装置ないし基準輪郭ないし基準ジオメトリに対する焦点位置を推定することも可能である。このことを達成するために、基準輪郭の2つの画像間の間隔が、冷間状態での、すなわち高エネルギービームの照射なしでの集光素子の(既知の)焦点距離に対応付けられる。焦点距離の変動によって生じる2つの画像間の間隔の変化は、焦点位置の相応の変更によって対応させることが可能である。このようにして、装置に対する集光素子の焦点距離測定ないし焦点位置の決定がワークピースに左右されることなく可能になる。
【0019】
複数の画像間の横方向のずれを決定するために、2つの画像の空間相関を例えばブロックマッチングアルゴリズムによって、又は局所的周波数解析によって実施し、最も一致する位置を達成してもよい。国際公開第2011/009594号に記載された画像鮮明度調整とは対照的に、立体的測定は、焦点距離のずれの量と方向(すなわちワークピースに近付く方向又はワークピースから離れる方向)の決定を可能にする。これにより、反復的追従制御を頼ることなく、焦点距離ないし焦点位置の迅速な制御が可能となる(下記参照)。この立体的画像化のもとでは、結像ビームパス内に存在するさらなる光学素子の、焦点距離の変化や焦点位置の変化に基づく影響も考慮されることは明らかである。例えば、これは、ワークピースに向かって加工ヘッドの形態で装置の端部を形成している保護ガラスによって形成される熱レンズにも当て嵌まる。
【0020】
一実施形態によれば、当該装置は、特に監視すべき領域及び/又は基準輪郭におけるワークピースの表面を照明するための照明源を有している。この照明源は、例えば360nmと800nm(VIS)の間、又は約800nmと約1000nm(NIR)の間の波長のもとでの照明を提供することが可能である。この照明は、監視すべき領域若しくは当該装置内に形成される基準輪郭においてワークピース表面の輪郭の結像を得るのに用いられる。この照明は、高エネルギービームに対して同軸に行うこと、すなわち垂直照明の形態で行うことが可能である。しかしながらこの照明源は、当該装置内で基準輪郭ないし基準ジオメトリが形成される所定の測定位置を照明するのに使用することも可能である。この基準輪郭は、例えば指向性の照明源によって照明されてもよいし、画像キャプチャデバイスによってキャプチャされてもよい。さらにプロセスガスの案内のためにカッティングヘッドに取り付けられたカッティングノズルが基準輪郭として使用されてもよい。
【0021】
一実施形態によれば、ワークピース表面における監視すべき領域をキャプチャする画像キャプチャデバイスの監視ないし結像ビームパスは、基準輪郭を画定する画像キャプチャ領域を有している。このケースでは、照明源が例えばワークピースか又は基準輪郭下方の他の表面を照明し、基準輪郭ないし基準ジオメトリは、照明の境界ないし画像キャプチャデバイスによってキャプチャされた画像キャプチャ領域の限界を形成する。
【0022】
一実施形態によれば、評価デバイスは、ワークピースに対する高エネルギービームの焦点位置を、ワークピースの(粗い)表面の画像を比較評価することによって決定するように構成されている。ここでは2つの画像の比較評価ないし相関に対して、一般にプレート状のワークピース表面は完全には滑らかではなく、(少なくとも顕微鏡レベルのオーダーの)粗さと共に、場所に応じて変化する表面構造を有していることが利用される。つまり焦点位置は、異なる方向から記録された複数の画像の表面構造間の横方向の距離に基づいて、決定することができる。
【0023】
通常、ワークピースの監視すべき領域は、ワークピースと高エネルギービームの相互作用領域を含んでいる。粗いワークピース表面の輪郭の複数の画像の立体的相関に対して代替的に若しくは付加的に、場合によっては、プロセス固有の明るさ(熱放射、プラズマ放射)を、2つの画像の立体的評価のために使用してもよい。いずれの場合においても、ワークピースの照明に対して構造化された照明、例えば相互作用領域近傍に集光された照明ビームの形態で用いてもよい。
【0024】
一実施形態によれば、結像光学系は、各監視方向に対応付けられた少なくとも2つの結像光学素子を有している。これらの結像光学素子は、例えばレンズ素子であってもよい。これらのレンズ素子は、相互に所定の距離を置いて配置されてもよい。この所定の距離は、検出器表面上の2つの画像間の距離にほぼ相当する。2つの結像光学素子の各々は、ここでは、検出器表面の対応する領域にそれぞれ対応付けられた画像を生成するために、固有の結像ないし監視ビームを生成する。この2つのレンズ素子は、典型的には中心から外れており、すなわち、高エネルギービームのビームパスに対してないしはその延長線に対して非同軸方向で監視ビームパス内に配置されている。このようにして、集光レンズの各縁部領域を通過し、2以上の異なる監視角度ないし監視方向のもとでの監視を可能にする、2以上のビーム束が結像できる。結像光学素子として、例えば球面レンズや非球面レンズが使用可能である。ここでは、さらに以下でも詳細に示すように、必要に応じて、結像光学素子の1つが、高エネルギービームのビームパスに対して同軸方向で配置可能なことが理解できよう。
【0025】
好適な改善例によれば、結像光学素子は円柱レンズとして形成されている。第1の軸に沿って曲率ないし結像作用を生じる第1の円柱レンズに加えて、前記結像光学系は、一般に、前記第1の軸に対して垂直な第2の軸に沿って結像作用を有する少なくとも1つの第2の円柱レンズを有している。交差配置されたこれらの円柱レンズにより、本発明の結像光学系は、一方では、低コストで製造することができ、他方では、利用可能な結像断面が効果的に利用できる。
【0026】
好適な改善例によれば、前記結像光学素子は、レンズアレイにないし格子配列で配設されている。複数のレンズ素子、例えば複数のマイクロレンズからなる、あるいは2つの交差状の円柱レンズアレイの形態の格子配列(レンズレットないしレンズアレイ)は、熱負荷されたレンズ素子によって引き起こされる波面収差の局所分解能的検出を可能にするために使用することができる。波面収差の検出により、加工ビームのビーム集光が集光素子を用いて、集束素子前の適切なビーム形成によって最適化され、及び/又は、プロセス監視のためのワークピースの同軸方向の監視が、場合によっては他の波長のもとで、監視ビームパスの適切な修正によって改善され得る。加工ビームのビーム形状の修正も、ワークピースの監視の修正も、例えば、ブラインド径の適切な適合化によって、ビームパス内のレンズ間隔の変化によって、変形可能なミラーによって、実現することが可能である。波面収差の決定のための測定原理は、シャックハルトマンセンサの転成を表し、そこでは、局所的な波面傾斜が、二次元レンズアレイのレンズによって生成されるレンズアレイの焦点面における焦点のシフトによって測定される。
【0027】
別の実施形態によれば、前記結像光学系は、各監視方向に対応付けられた少なくとも2つのビーム偏向領域を有する偏向デバイスを備えている。この偏向デバイスは、幾何学形状のビームスプリッタとして使用され得る。これにより、例えば入射されたビームは、結像光学素子、例えばレンズ素子の、異なる領域に偏向される。この偏向デバイスによって偏向され、半径方向で相互に対向するレンズ素子の領域に入射するビーム束は、レンズ素子により、相互に離間した異なる領域の監視すべき領域ないし基準輪郭の画像が形成される焦点面において集光される。
【0028】
別の改善された構成によれば、前記偏向デバイスは、少なくとも1つの偏向プリズムを有する。この偏向プリズムでは、複数の、特に全てのビーム偏向領域が形成され、それらは例えばビーム軸に対して所定の角度で配向されたプリズムのカット面ないし表面領域として構成され得る。この偏向プリズムは、特に平行な平面板として構成され偏向が何も生じない中央領域を有するものであってもよい。このビーム偏向領域ないしビーム偏向面は、前記中央領域を取り囲むように配置されていてもよい。それにより、偏向プリズムのほぼ凹状ないし凸状のジオメトリが全体として生じる。また偏向プリズムを使用する代わりに、偏向デバイスを反射的に構成してもよいし、例えば監視ビームを各監視方向に対応付けられた様々な方向に偏向させるミラー面の形態の複数のビーム偏向領域を有するようにしてもよい。
【0029】
別の実施形態によれば、各監視方向に対応付けられた少なくとも2つの監視ビームを形成する画像キャプチャデバイスは、ビームオフセットデバイスを有する。このビームオフセットデバイスは、特に結像光学系の集光された照明ビームパス内で、例えば伸縮ビームを形成する2つの光学素子の間に配置してもよい。ビームオフセットデバイスは、例えば、照明ビームに対して透過的な材料からなる、例えば石英ガラスからなる2以上のブロックを有していてもよい。これらのブロックは、入射される監視ビームの平行ずれを形成するために、面平行なブロックまたはプレートとして形成されている。これらのブロックは、典型的には、2以上の横方向にずれた画像を生成すべく検出器面の異なる領域において2以上の監視ビームが入射することを達成するために、相互に傾斜して配置されている。
【0030】
各監視方向に対応付けられた少なくとも2つの監視ビームを形成する画像キャプチャデバイスは、ビームスプリッタを有している。このビームスプリッタは、監視ビームを、ビーム断面に亘って変化する少なくとも1つの特性に基づいて2以上の監視ビームに分割し得る。この特性は、例えば監視ビームパスの断面に亘って変化する監視ビームのパワー若しくは波長に係る偏光方向であってもよい。検出器表面上の各監視ビームの結像に対しては、それぞれ1つの固有の結像光学素子を設けてもよいが、その他にもこの監視ビームの結像を、例えば共通の集光レンズの形態の共通の結像光学系を用いて行うことも可能である。
【0031】
別の実施形態によれば、画像キャプチャデバイスは、監視方向に対応付けられた少なくとも2つの監視ビームを異なる時点で形成するように構成されている。この実施形態では、2つ以上の画像が、画像キャプチャデバイスの検出器ないしカメラの画像繰り返しレートに依存した(短い)時間的ずれ(典型的には数μs又は数msの範囲)を伴って記録される。このようにして、2以上の画像が、検出器表面の1つの同じ場所で生成され得る。すなわち、検出器表面上の監視ビームの空間的な分離は、この実施形態では必要ない。時間的に順次連続する画像記録のために、監視ビームパスは部分的に遮光され、その際典型的には画像の記録毎に、それぞれ異なる画像ビームパス部分が遮光される。
【0032】
別の実施形態によれば、各監視方向に対応付けられた少なくとも2つの監視ビームを形成する画像キャプチャデバイスは、少なくとも1つの絞りを有している。この絞りは、特に異なる時点で、2以上の監視ビームを形成するように構成ないし駆動制御される。この目的のために前記絞りは、例えばシフト可能、回転可能又は切り替え可能な絞りとして構成されていてもよい。前記絞りは、前記監視ビームパスの部分的な遮光のために使用することができる。その場合には当該絞りの適切な駆動制御により、前記監視ビームパスの異なる部分が時間的に順次連続して遮光され得る。監視ビームが貫通する絞り開口部は、典型的には監視方向に対応付けられた監視ビームを生成する。この絞りは、電子シャッター(例えば切り替え可能な画素を有する液晶ディスプレイ)、又はメカニカルシャッタ(例えば絞り平面において可動の(例えば回転可能若しくはシフト可能な)ピンホール)の形態で構成されていてもよいし、異なる監視方向からの2以上の画像を時間的に順次連続して生成すべく、監視ビームパスの異なる領域を時間的に順次連続して遮蔽ないし開放するように使用してもよい。ここでは、プロセス監視を目的としたワークピース監視領域の高分解能な監視のために、監視ビームパスの開口部(アパーチャ)のさらなる領域が開閉され得ることも明らかである。
【0033】
別の実施形態によれば、前記結像光学系は、異なる監視方向からの前記監視すべき領域及び/又は前記基準輪郭の少なくとも3つの画像を生成するように構成されている。上記したように、焦点位置の決定のためには、通常は、異なる監視方向から記録された画像間で、1つの方向に沿った横方向のずれを決定するだけで十分である。しかしながら場合によっては3以上の画像の使用が、比較の有用性や焦点位置の決定の精度を高め得る。また少なくとも1つのさらなる(第3,第4,…)画像の生成は、集光素子に関するさらなる情報を得ること、特に上記のようなそれらの波面収差の決定のために利用することが可能である。これにより、高いレーザー出力で照射された集光素子ないし集光レンズの焦点距離の変化が、位置に依存して、すなわち集光素子の光軸に対する半径方向の位置に依存して検出される。(例えばレンズアレイの形態の)2以上の結像光学素子ないしは2以上のビーム偏向領域を用いて、ワークピース表面及び/又は基準輪郭の3以上の画像を生成し、検出器上に、例えばカメラ上に結像することも可能である。
【0034】
さらなる実施形態によれば、前記装置は、監視方向からの前記ワークピース表面における監視すべき領域の画像を前記高エネルギービームに対して同軸方向で形成する結像光学素子を有している。上記したように、監視すべき領域は、通常は、高エネルギービームとワークピースとの間の相互作用領域を含む。例えば溶接プロセスや切断プロセスのような加工プロセスに関する情報を得るために、結合光学素子を用いて、加工プロセスのプロセス固有の照明をVIS領域で作成することができ、及び/又は、監視すべき領域の熱画像をNIR/IR領域で作成することができる。このプロセス監視とも称される、加工プロセスの監視は、監視すべき領域ないし基準輪郭の立体的キャプチャのために付加的に行われてもよい。
【0035】
前記結像光学素子は、典型的には、結像時の高い解像度を得るために、各監視方向に対応付けられたレンズ素子よりも大きな直径を有するレンズ素子であってもよい。この結像光学素子は、場合によっては、高エネルギービームの伝播方向に対して非同軸的若しくは非平行に延在している異なる監視方向から記録された2以上の画像の生成のために用いられてもよい。このことは、上述したように結像光学系が反射プリズムを含んでいる場合に一般的である。
【0036】
一実施形態によれば、前記評価デバイスは、前記高エネルギービームに対して同軸方向で記録された画像と、前記高エネルギービームに対して非同軸方向で記録された少なくとも1つの画像とを比較評価するように構成されている。また、前記高エネルギービームに対して同軸方向で記録された画像と前記高エネルギービームに対して非同軸方向で記録された少なくとも1つの画像との比較分析に基づいて、前記高エネルギービームの焦点位置をさらに前述したような方法で決定することも可能である。
【0037】
さらなる実施形態によれば、前記画像キャプチャデバイスは、ワークピース上にレーザービームを通過させるためのレーザー加工用ノズルのノズル開口部によって少なくとも1つの画像が記録されるように構成されている。このいわゆる同軸方向の監視では、ワークピースの監視すべき領域の画像が、加工用ノズル(例えばレーザー切断用ノズル)並びに集光素子を貫通して1つ以上のカメラによって記録される。この装置は、典型的には、レーザー加工ヘッドである。
【0038】
一実施形態によれば、レーザー加工用ノズル、特にレーザー切断用ノズルのノズル内側輪郭が、立体的な画像評価のために使用される基準輪郭ないし基準ジオメトリを形成する。例えば、焦点位置の粗調整を行うために、通常は円形のノズル内側輪郭の2つの画像間の横方向の距離が決定される。この場合は、ノズル開口部を通して記録されるワークピース画像の典型的には円形の2つの境界間の間隔だけが決定されればよいので、ノズル開口部の内側輪郭の複数の画像の比較評価を非常に迅速に行うことができる。ワークピースの輪郭ないし表面幾何学形状が評価されなければならない、ワークピース表面の複数の画像間の横方向のずれの決定は、通常より多くの計算時間を必要とし、焦点位置の微調整のために使用することができる。
【0039】
一実施形態によれば、前記画像キャプチャデバイスは、少なくとも1つの画像が生成される検出器面を有する少なくとも1つの検出器、特にカメラを備えている。複数の画像のキャプチャのために、1つの同じ検出器面が例えばカメラのCCDチップ若しくはCMOSチップの形態で使用されてもよい。この場合は検出器面の異なる部分領域に画像が生成される。特にこのケースにおいて好適には、結像光学系が、結像断面を利用可能な検出器面に適合化させるためのビームテレスコープを含んでいる。また各検出器面において1つ以上の画像をキャプチャするために、2台以上のカメラが画像キャプチャデバイス内に設けられてもよいことは明らかである。とりわけ、基準輪郭の位置の決定は、フラットカメラに変えて、単純な光学的センサないし検出器、例えば第4象限ダイオードやラインカメラを用いて行われる。
【0040】
さらに別の実施形態によれば、前記評価デバイスは、記録された画像の比較評価によって、前記基準輪郭と前記ワークピース表面との間の間隔を決定するように構成されている。前記基準輪郭とワークピースとの間の間隔は、2つの記録された画像における、ワークピース上側の表面構造部、すなわちワークピース表面の画像位置と、基準輪郭における(同じ)位置との間の差分を算出することによって決定することができる。
【0041】
別の一実施形態によれば、この装置は、さらに前記ビーム方向において前記高エネルギービームの焦点位置を変更させるデバイスと、前記高エネルギービームの前記焦点位置を、前記ワークピースに対する目標焦点位置に開ループ及び/又は閉ループ制御する開ループ及び/又は閉ループ制御デバイスとを含んでいる。ここでの焦点位置を変更するためのデバイスは、例えばいわゆる適応ミラーであってもよく、その表面曲率は、高エネルギービームのビーム方向における焦点位置を変更するために、所期のように制御することが可能である。上記したような方法で決定された実際値焦点位置に基づいて、当該デバイスは、焦点位置が、目標焦点位置へ開ループ制御されるように駆動制御される。それは典型的には、加工プロセス期間中一定に維持され、例えばワークピース表面側に、若しくは、ワークピースまで所定の間隔をおいて配置することが可能である。このようにして、前述したような集光素子の熱負荷によって引き起こされる集光素子の焦点距離の変化が補償される。焦点位置を変更するためのデバイス、すなわち調節素子が、測定位置の前ないし監視ビームパスの前にあるならば、目標焦点位置への焦点位置の制御が行われる。ワークピース上の焦点位置と加工ヘッド(例えばレーザー切断用ノズル)における基準輪郭の焦点間隔の計算とから、さらに、当該基準輪郭とワークピース表面との間の間隔が求められ(上記参照)、場合によっては、開ループ及び/又は閉ループ制御デバイスを用いて開ループ制御ないし閉ループ制御がなされる。
【0042】
さらなる実施形態によれば、当該装置は、前記高エネルギービームのビーム方向における前記結像光学系の焦点位置を変更させるデバイスと、前記結像光学系の前記焦点位置を、目標焦点位置に開ループ及び/又は閉ループ制御する開ループ及び/又は閉ループ制御デバイスとを含んでいる。前記焦点位置を変更させるデバイスないし調節素子は、このケースでは典型的には監視ビームパス内に配置されており、そのため結像光学系の焦点位置の目標焦点位置への閉ループ制御が行われる。この結像光学系の目標焦点位置は、典型的には監視すべきワークピース表面に存在する。目標焦点位置への開ループないし閉ループ制御は、さらに上記の高エネルギービームとの関連において記載した手順に応じて実施され得る。
【0043】
本発明はまた、冒頭に述べたような形式の方法にも関しており、この方法は、以下のステップを含んでいる。すなわち、前記ワークピース表面及び/又は前記基準輪郭における監視すべき領域を、前記集光素子を貫通して延在する監視ビームパスを用いてキャプチャするステップと、前記監視すべき領域及び/又は前記基準輪郭の少なくとも1つの画像を、前記高エネルギービームに対して非同軸方向に延在する監視方向に対応付けられた少なくとも1つの監視ビームの形成によって生成するステップと、前記高エネルギービームの前記ビーム方向における前記焦点位置を、少なくとも1つの記録された画像の評価によって決定するステップとを含んでいる。
【0044】
有利な変形実施例によれば、前記高エネルギービームの前記ビーム方向における前記焦点位置が、前記少なくとも1つの記録された画像における基準輪郭の位置に基づいて決定される。上記のように、このケースでは前記焦点位置が、記録された画像内の基準輪郭の例えば基準位置との比較による横方向のずれに基づいて決定される。
【0045】
さらに別の変形実施例によれば、少なくとも2つの異なる監視方向からの前記監視すべき領域及び/又は前記基準輪郭の少なくとも2つの画像を生成するために、さらなる監視方向に対応付けられた少なくとも1つのさらなる監視ビームが形成され、記録された複数の画像の比較評価によって、前記高エネルギービームの前記焦点位置が決定される。上記のように、前記比較評価では、2つの記録された画像間のないしこれらの識別すべき構造間の横方向のずれが決定され、このずれは、基準輪郭ないしワークピースと焦点位置との相対的な位置に関する尺度を表す。
【0046】
本発明はまた、上述した方法の全てのステップをコンピュータプログラムとしてデータ処理システム上で実施するのに適したコード手段を有している、コンピュータプログラム製品にも関している。このデータ処理システムは、例えば上記したように当該の装置内に収容されている開ループ及び閉ループ制御デバイス及び/又は評価デバイスであってもよいし、典型的な加工機の一部である外部デバイスであってよい。
【0047】
本発明のさらなる利点は、以下の明細書及び図面から明らかになるであろう。また、上述の特徴及び以下でさらに説明する特徴は、それぞれ個別に若しくは任意の組み合わせで使用が見出される。なお以下で図示し、説明する実施形態は、限定を意味する説明として理解されるべきではなく、むしろ本発明を説明するための例示的な性格を持ったものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1a】集光素子を貫通して記録された2つの画像に基づきレーザービームの焦点位置を決定する装置の一実施例の概略図
【
図2a】レーザービームの異なった焦点位置でのワークピースの監視すべき領域の、異なる監視方向から記録した2つの画像を示した図
【
図2b】レーザービームの異なった焦点位置でのワークピースの監視すべき領域の、異なる監視方向から記録した2つの画像を示した図
【
図2c】レーザービームの異なった焦点位置でのワークピースの監視すべき領域の、異なる監視方向から記録した2つの画像を示した図
【
図3】装置の集光レンズに入射するラジアルビームプロファイルとその結果として生じた集光レンズの半径方向屈折率分布を示した図
【
図4a】複数の円柱レンズを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図4b】複数の円柱レンズを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図4c】複数の円柱レンズを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図5a】円柱レンズアレイを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図5b】円柱レンズアレイを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図5c】円柱レンズアレイを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図6a】ほぼ凸状に湾曲した偏向プリズムを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図6b】ほぼ凸状に湾曲した偏向プリズムを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図7a】ほぼ凹状に湾曲した偏向プリズムを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図7b】ほぼ凹状に湾曲した偏向プリズムを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図8a】2つのミラー面を有する偏向デバイスを備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図8b】ビーム変位装置を備えた
図1a,bの装置の結像光学系を示した図
【
図9a】回転可能なアパーチャを備えた
図1a,bの装置の結像光学系の側面図と平面図
【
図9b】回転可能なアパーチャを備えた
図1a,bの装置の結像光学系の側面図と平面図
【
図10】集光素子を貫通して記録された1つの画像に基づきレーザービームの焦点位置を決定する装置の一実施例の概略図
【
図11a】レーザービームの様々な焦点位置において同じ監視方向から記録された基準輪郭の2つの画像を示した図
【
図11b】レーザービームの様々な焦点位置において同じ監視方向から記録された基準輪郭の2つの画像を示した図
【0049】
前記図面の以下の説明において、同一の構成部材ないし機能が同じ構成部材には、同じ参照符号が用いられている。
【0050】
図1aには、詳細には示されていないがレーザー加工機の一部であり、レーザー加工ヘッドの形態で構成された、ワークピース3上へレーザービーム2を集光させる装置1の例示的な構造が示されている。このレーザービーム2は、図示の例ではCO
2レーザーから生成されているが、代替的に、前記レーザービーム2は、例えば固体レーザーによって生成されてもよい。レーザービーム2は、ワークピース3におけるワークピース加工の実施のために、例えばレーザー溶接プロセスやレーザー切断プロセス方式で、集光レンズ4の形態の集光素子によってワークピース3上に集光される。前記集光レンズ4は、図示の例では、レーザービーム2をレーザー加工用ノズル5、より詳細に言えばノズル開口部5aを通ってワークピース3上に集光させるレンズ、すなわち図示の例では、ワークピース3表面3aの焦点位置Fへ集光させるセレン化亜鉛からなるレンズである。固体レーザーからなるレーザービーム2のケースでは、例えば石英ガラスからなる集光レンズ4が使用可能である。
【0051】
図1aでは、部分透過性に構成された偏向ミラー6が示されている。この偏向ミラー6は、入射した約10μmの波長を有するレーザービーム2を伝送し、さらにプロセス監視に係る監視ビーム(例えば可視波長領域のビーム)をさらなる部分透過性の偏向ミラー8へ反射している。固体レーザーからのレーザービーム2の場合には、偏向ミラーは典型的には約1μmの波長に対して部分透過性に構成されている。さらに部分透過性の偏向ミラー8は、画像キャプチャデバイス9に対して監視ビームを反射する。照明源10は、照明ビーム11を用いたワークピース3の同軸方向の照明のために用いられる。この照明ビーム11は、さらなる部分透過性の偏向ミラー8によって伝送され、レーザー加工用ノズル5のノズル開口部5aを貫通してワークピース3上に偏向される。これらの部分透過性の偏向ミラー6,8に対して代替的に、画像キャプチャデバイス9の監視ビーム7を誘導するために、ないしは照明ビーム11をワークピース3に誘導するために、スクレーパーミラー若しくは有孔ミラー(これらは縁部領域からの入射ビームだけを反射する)を用いてもよい。また監視を可能にするために、レーザービーム2のビームパス側方に設けられる2つのミラーを用いてもよい。
【0052】
照明源10として、ダイオードレーザーまたはLEDが設けられてもよい。これらの照明源は
図1aにも示すように、レーザービーム軸13と同軸に配置してもよいし、軸から外れるように配置してもよい。照明光源10は、例えば当該装置1の外方(特に隣)に配置して、ワークピース3の方へ配向させることも可能である。また代替的に、前記照明源10は当該装置1内に配置するが、レーザービーム2と非同軸にワークピース3に配向させることも可能である。場合によっては、前記装置1を、照明源10無しで動作させることも可能である。
【0053】
画像キャプチャデバイス9の一部は、監視ビームパス7内のさらなる部分透過性の偏向ミラー8後方に配置された幾何学的高分解能カメラ12であってもよい。このカメラ12は、レーザービーム軸13とないしはレーザービーム軸13の延長線と同軸にかつ方向性に依存せずに配置された高速カメラであってもよい。図示の例では、カメラ12による画像の記録は、VIS波長領域の垂直照明法によって行われているが、しかしながらカメラ12は、プロセス固有の照明ないし加工プロセスの熱画像を記録するために、NIR/IR波長領域で画像を記録することも可能である。また垂直照明若しくはプロセス(プラズマ)ビームを記録するために、UV領域の複数の画像を記録することも可能である。またさらなるビーム成分ないし波長成分が、カメラ12によるキャプチャから除外されるべき場合には、
図1aに示された例のようにカメラ12の前にフィルタが配置される。このフィルタは、例えば狭帯域バンドパスフィルタとして構成されていてもよい。
【0054】
図2a〜cに示されているワークピース3表面3aの監視すべき領域15の画像B1,B2を、カメラ12の検出器面12a上に形成するために、画像キャプチャデバイス9は、結像光学系14を有しており、この結像光学系14は、図示の例では、監視ビームパス7のビーム経路内に配置された2つのレンズ素子16a,16bを有している。これらのレンズ素子16a,16bは、共通の平面内に配置され、それぞれ1つの監視ビーム7a,7bを形成する監視ビームパス7のそれぞれ1つの部分ビームないし部分束のみを、カメラ12の検出器面12aの異なる領域上に結像させ、それによって、
図2a〜cに示すように相互に離間された2つの画像B1,B2が形成される。
図2a〜cからわかるように、レンズ素子16a,16bからそれぞれ結像された、ワークピース3の領域ないし画像B1,B2は、レーザー加工用ノズル5の円形の内側輪郭5bによって画定されている。結像断面を検出器面12aのサイズに適合化させるために、前記結像光学系14は、さらなる2つのレンズ17a,17bを有しているビームテレスコープを備えている。
【0055】
前記2つのレンズ16a,16bによってそれぞれ検出器面12a上に結像される監視ビームパス7の一部(監視ビーム7a,7b)は、XYZ座標系のX方向において集光レンズ4の直径方向で相互に対向する2つの縁部領域から派生し、ワークピース3の監視すべき領域15並びにレーザービーム軸13に対して異なる監視方向R1,R2及び異なる監視角度からのレーザー加工用ノズル5の内側輪郭5bを結像している。これらの2つのレンズ16a,16bは、これによってレーザー加工用ノズル5の監視すべき領域15ないし内側輪郭5bの立体視を可能にする。
【0056】
図1aでは、結像光学系14は、付加的レンズ18を有しており、この付加的レンズ18は、集光レンズ4のレーザービーム軸13と交差する中央領域からの監視ビームを、カメラ12の検出器面12a上に結像するために用いられる。
図1bに見られるように、この付加的レンズ18は、立体的監視のために使用される2つの外部レンズ16a,16bよりも明らかに大きな直径を有している。付加的レンズ18は、プロセスの監視に、より厳密に言えば、監視すべき領域15内に含まれるレーザービーム2とワークピース3の間の相互作用領域の監視のために使用される。この付加的レンズ18の比較的大きな直径によって、検出器面12a上で比較的大きくて画素数の多い画像が生成される。これにより、プロセス監視の際の分解能が向上する。なお、
図1aとは異なって、付加的レンズ18とそれに伴うプロセス監視の省略が可能であることも明らかである。この場合には、2つのレンズ16aと16bとの間のX方向の間隔距離は、典型的には、
図1a,bとは反対に短縮される。
【0057】
以下では、
図2a〜cに基づいて、当該装置1の評価デバイス19において、ワークピース3に対するレーザービーム2の焦点位置F,F′,F″が、2つの記録された画像B1,B2の比較評価によってどのように決定されるかを説明する。
【0058】
レンズ16a,16bによって生成される2つの画像B1,B2の
図2aによる描写では、レーザービーム2の焦点位置Fは、ワークピース3の表面3aに存在し、これは本実施例においてはワークピース加工の目標焦点位置に対応する。2つの画像B1,B2は、
図2aに例示的に示されている粗さと表面構造を有するプレート状のワークピース3の表面3aの監視すべき領域15に対応するそれぞれ1つのセグメントをキャプチャしている。
図2aからわかるように、1つの画像キャプチャ領域を形成するノズル開口部5aを通して記録されたワークピース3の表面3aないし表面構造部の2つの画像は、1つの基準輪郭を形成するレーザー加工用ノズル5の内側輪郭5bによって画定された監視すべき領域15内で同一であり、特にX方向における横方向のずれは何も有していない。これらの2つの画像B1,B2は、検出器面12a上で2つのレンズ16a,16bの間の距離と相関付けられる、ないしはこれに実質的に対応する距離AだけX方向にオフセットされている。
【0059】
図2bに示されている2つの画像B1,B2の描写では、レーザービームの焦点位置F′は、ワークピース3表面3aの上方にある。
図2bからわかるように、画像B1,B2内に結像されたワークピース3の監視すべき領域15は同一ではなく、それどころか当該画像B1,B2内で識別されるべき表面構造は、それぞれ1つの矢印によって表されているように相互に横方向にオフセットされ、具体的には第1の画像B1では右方向に、すなわち正のX方向にずらされ、それに対して、第2の画像B2内の結像された表面構造部は左方向に、すなわち負のX方向にシフトされている。これらの2つの画像B1,B2内のワークピース3の結像された表面構造部間の横方向のオフセット量は、ワークピース3からの焦点位置F′までの距離に依存し、この場合の横方向のずれは、ワークピース3と焦点位置F′との間の間隔の増大に伴って増加する。そのためこのずれは、ワークピース3の表面3aにおける目標焦点位置Fから焦点位置F′までの偏差に対する尺度を表す。
図2bにおいても明らかなように、ワークピース3上の図示の焦点位置F′の場合、レーザー加工用ノズル5の内側輪郭5bによって画定される2つの画像B1,B2間の間隔距離A′も検出器面12a上で減少する。焦点位置F′がレーザー加工ヘッド1への方向にシフトした際の2つの画像B1,B2間の間隔距離A乃至A′の増減は、当該画像B1,B2の生成に使用する結像原理に依存している。
【0060】
図2cに示す2つの画像B1,B2の描写では、レーザービーム2の焦点位置F″は、ワークピース3の下方にある。この
図2cからわかるように、これらの画像B1,B2内で識別されるワークピース3の表面構造は、互いに横方向にずれており、具体的には第1の画像B1では左方、すなわち負のX方向に、それに対して第2の画像B2内で結像された表面構造は右方に、すなわち正のX方向に、それぞれ矢印で示されているようにシフトしている。内側輪郭5bによって画定された2つの画像B1,B2内で結像されているワークピース3の表面構造間の横方向のずれの量、すなわちオフセット量は、ワークピース3表面3aの目標焦点位置Fからの前記焦点位置F″の偏差の尺度である。
図2cからも明らかなように、レーザー加工用ノズル5の内側輪郭5bによって画定される2つの画像B1,B2間の間隔距離A″も検出器面12a上で増加する。
【0061】
図2bと
図2cの比較に基づいてわかることは、2つの画像B1,B2の横方向のずれは、焦点位置がワークピース3の上方にあるのか又は下方にあるのかに依存していることである。それ故、この横方向のずれが例えばブロックマッチングアルゴリズムを用いて、あるいは周波数分析によって決定される、2つの画像B1,B2の比較評価に基づけば、ワークピース3に対する焦点位置の相対距離だけでなく、その方向性も決定することができる。同じようなことは、検出器面12a上での2つの画像B1,B2間の間隔距離Α乃至A′、A乃至A″に対しても当て嵌まり、それらは、焦点位置F乃至F′、F乃至F″の尺度を表す。但しここでは、ノズル内側輪郭5bによって形成される基準輪郭に対してである。
【0062】
ワークピース3の表面側3aにおける、目標焦点位置Fからの焦点位置のずれないし偏差は、典型的にはワークピース加工中に意図せず発生する。なぜなら、入射レーザービーム2の異なるビーム出力毎に集光レンズ4の屈折率nがプロットされている
図3に基づいてもわかるように、集光レンズ4の屈折率は温度に依存しているからである。
図3には、ビーム密度も(kW/cm
2単位で)示されており、これは集光レンズ4に衝突した場所ないし半径座標に依存し、ビーム出力(kW単位)の増加に伴って増加している。焦点位置を所望の焦点位置Fに適合化させるために、加工プロセス中の集光レンズ4の熱負荷ないし温度を予測すること、ないしは十分正確に予測することはできないので、上述した焦点位置の決定は、目標焦点位置Fを加工プロセス中に所望の典型的な一定値に制御するのに有利である。
【0063】
目標焦点位置への焦点位置F乃至F′、F乃至F″の制御のために、レーザー加工ヘッドは、評価デバイス19と信号方式で接続されている開ループないし閉ループ制御デバイス20を有している。この開ループ/閉ループ制御デバイス20は、全てのレーザー加工プロセスの開ループないし閉ループ制御に用いられ、本実施例のケースでは、レーザービーム2のビームパス内に設けられたさらに別の適応性偏向ミラー21の、より正確にはその曲率がそれ自体既知の方法で調整可能な光学的表面21aに作用している。適応性偏向ミラー21の曲率は、レーザービーム2のビーム伝搬方向13において焦点位置F乃至F′、F乃至F″に影響を与える。この曲率は、開ループ/閉ループ制御デバイス20を用いて次のように設定調整される。すなわち、目標焦点位置からの焦点位置F′、F″の熱に起因する偏差がちょうど補償されるように設定調整される。ここで説明する例では、このことは、次のようなことを意味している。すなわち、2つの画像B1,B2内で識別される構造が、
図2aに示した状況に入るまで、つまり互いに横方向のずれた間隔を何も有さなくなるまで、適応性偏向ミラー21に作用することを意味する。
【0064】
目標焦点位置Fは、必ずしもワークピース3表面3aである必要はなく、目標焦点位置Fは、ワークピース3表面3aから離して配置することも可能であることを理解されたい。このケースでは、開ループ/閉ループ制御デバイス20が、所望の目標焦点位置に対応する、2つの画像B1,B2内で識別すべき構造間の所定の横方向間隔への制御に用いられる。付加的又は代替的に、焦点位置F乃至F′、F乃至F″の制御は、2つの画像B1,B2間の間隔A乃至A′、A乃至A″に基づいて行うことも可能である。そこではこれらの間隔A乃至A′、A乃至A″が、所望の間隔Aに制御される。この所望の間隔Aは、レーザー加工ヘッド1に対する集光レンズ4の目標焦点位置ないし目標焦点距離に相応している。特に前記間隔距離A乃至A′、Α乃至A″を用いて、焦点位置F乃至F′、F乃至F″の粗調整が行われる。また前記間隔距離A乃至A′、Α乃至A″と、2つの画像B1,B2内で識別すべき表面構造間の横方向のずれとの間の比較に基づいて、レーザー加工用ノズル5と、ワークピース3ないしワークピース3表面3aとの間の間隔Dが決定される。具体的には、この間隔Dの決定のために、各画像B1,B2の基準輪郭5bによって形成される縁部に対する、2つの画像B1,B2内の同じ表面構造部の間隔との間の差分が決定される(X方向)。この差分には、既知の例えば試験測定によって求められるか算出される関数関係に基づいて、ワークピース3までの間隔Dが対応付けられる。また前記複数の画像B1,B2内で識別すべき表面構造の間の横方向のずれの上記したような決定の代わりに、ワークピース3の他の特徴も、横方向のずれを決定するために利用可能であることを理解されたい。例えば、場合によってはプロセス固有の照明などの(熱)画像も、評価デバイス19による画像評価のために考慮してもよい。
【0065】
開ループ/閉ループ制御デバイス20は、結像光学系14の焦点位置の制御のためにも使用可能である。この目的のために、当該開ループ/閉ループ制御デバイス20は、レンズ17a,17bをレーザービーム2のビーム方向13にシフトさせるための、より正確にはレンズ17a,17b間の相対距離を変化させるための、デバイス32に作用する。結像光学系14の焦点位置にも、簡素化のために、レーザービーム2の焦点位置と同じ参照符号F,F′,F″が付されている。結像光学系14の焦点位置F,F′,F″を制御することより、ワークピース3の表面3aがそれらの被写界深度内に配置されていることが保証され、それによってワークピース3表面3aが検出器面12aに鮮明に結像される。ワークピース3上の目標焦点位置へ前記焦点位置F,F′,F″を制御するために、2つの画像B1,B2間の間隔A乃至Α′、A乃至A″が、試験測定によって決定若しくは算出される目標間隔に制御される。
【0066】
図4a〜cにからもわかるように、結像光学系14においては、各監視方向R1,R2に対応付けられている球面レンズの代わりに、Y方向ではなくX方向のみに結像作用を有している円柱レンズ16a,16bを使用してもよい。このケースでは、付加的な中心レンズも円柱レンズ18aとして構成されている。このレンズもX方向でのみ光学的作用を生じる。Y方向に配向されたさらなる円柱レンズ18bは、Y方向の画像形成のためにも使用される。交差した円柱レンズ16a,b,18aないし18bによって、検出器面12a上で利用可能な断面の有効活用が達成される。
【0067】
図5a〜cに示された結像光学系14もまた、複数の交差した第1及び第2の円柱レンズ22,23を有しており、それらは、検出器面12a上で5×5=25の画素数を提供するために格子状のアレイ24として配置されている。複数のレンズ素子22,23からなる格子状アレイ24は、熱負荷された集光レンズ4によって引き起こされる波面収差を所定の局所分解能で検出できるようにするために用いることが可能である。この波面収差に基づいて、集光レンズ4を用いたビーム集光が、集光レンズ4の前方側に接続される適切なビーム成形器により、ここでは詳細に説明しないそれ自体公知のビーム整形用光学素子を用いて最適化される。代替的又は付加的に、プロセス監視のためのワークピース3の同軸方向の監視が適切な修正によって改善される。例えば、監視ビームパス7は、開口部の適合化及び/又は結像光学素子間の距離の適合化により、及び/又は、任意に調整可能なミラーにより、適合化することが可能である。
【0068】
結像レンズ25と、偏向プリズム26の形態のビーム偏向デバイスとを備えた結像光学系14の代替的な実施形態は、
図6a,bに示されている。この偏向プリズム26は、監視ビームないしはそのビーム軸に対して角度を付けられて中央の平坦領域27を取り囲むように配置されている平坦面26a〜dを有する4つの楔形区分を備えている。最初の2つの平坦面26a,bは、入射した監視ビームをX方向で偏向するためのビーム偏向領域として用いられており、それによって監視ビームは結像レンズ25の中心面に対して非垂直方向で当該結像レンズに入射し、X軸に沿って相互に離間された第1及び第2の画像B1,B2が検出器面12a上に形成される。
【0069】
第3の平坦面26cと第4の平坦面26dも相応に、Y軸方向に沿って相互に離間された第3及び第4の画像B3,B4を検出器面12a上に形成するためのビーム偏向領域として用いられている。監視ビームを偏向しない中央の平坦領域27は、監視ビームのビームパス内の中心に配置される画像Bを検出器面12a上に形成するために用いられる。この画像は、上述したようにプロセス監視のために利用することが可能である。4つの画像B1,B2,B3,B4の形成によって(これらの画像はそれぞれ対毎に相互に比較される)、集光レンズ4に関するさらなる情報を得ることが可能となり、とりわけ波面収差若しくは2方向(XないしY)の異なる熱負荷に対する示唆を得ることができる。また必要に応じて、相関関係の有意性や焦点位置F,F′,F″決定の際の精度を高めるために、3つないしは4つの全ての画像B1,B2,B3,B4の比較評価を、評価デバイス19において行うことも可能である。
【0070】
図6a,bに示された実施形態では、偏向プリズムの形状が全体としてほぼ凸状になっている。
図7a,bに示された偏向プリズム26は、
図6a,bに示された偏向プリズムと次の点でのみ、すなわち実質的に凹状の形状を有している点でのみ異なっているだけである。これにより、監視ビーム7の部分ビーム7a,7bに対する画像B1,B2の対応関係が逆となり、これは
図1に示されている対応関係に相応する。この監視ビーム7の部分ビームないしビーム束の画像B1,B2ないしB3,B4との対応関係は、焦点位置F,F′,F″の変化の方向性を識別する際に考慮することが可能である。
【0071】
ビーム偏向デバイス26を備えた結像光学系のさらに別の実施形態は、
図8aに示されている。ここでのビーム偏向デバイス26は、平坦なミラー面26a,26bの形態のビーム偏向領域を有する2つのミラーの形態で構成されている。前記2つのミラー面26a,26bは、互いに傾斜しているので、入射した監視ビーム7は異なる方向に反射され、各監視方向R1,R2に対応付けられた2つの監視ビーム7a,7bの形態で、検出器面12a上の異なる位置に入射し、そこで第1及び第2の画像B1,B2が形成される。
【0072】
2つ(若しくはそれ以上)の画像B1,B2を形成するためのさらに別の手段は、
図8bに示されている。そこでは、レンズ17の後方側で集光される監視ビームパスの領域に、石英ガラスからなる2つのブロック(平行平面板)28a,28bが配設されており、それらは、2つの平行な端面を有し、ビームオフセットデバイスとして用いられている。集光された監視ビームは、それぞれ角度を付けられて各ブロック28a,28bのビーム入射側にそれぞれ入射し、同一の角度で並行してずらされて、再び反対側の光出射側から出射される。前記ブロック28a,28bの光学密度の高い媒質中の大きな屈折率に基づいて、前記監視ビームは、石英ガラス材料中を法線方向に対して小さな角度で、入射面ないし出射面に対して垂直方向に伝播される。各ブロック28a,28bに入射する、監視ビームの一部はそれぞれ各監視方向R1,R2に対応付けられた監視ビーム7a,7bをそれぞれ形成しており、これらの2つの監視ビーム7a,7bは、ビームオフセットに基づいて横方向にずらされて検出器面12aに入射し、そこで互いに横方向にシフトされた2つの画像B1,B2を形成する。
【0073】
図8bに示された例では、
図6bに示された例のように監視ビーム7a,7bは交差する。なぜなら相互に傾斜したブロック28a,28bの法線方向(ビーム入射面ないしビーム出射面に対して垂直方向)が、当該ブロック28a,28b後方のビームパスにおいて交差しているからである。ここでは前記ブロック28a,28bが、互いに反対方向に傾斜している限り、すなわちそれらの法線方向が、レンズ17前方のビームパス内で交差する場合には、監視ビーム7a,7bが
図7bに示されているようにも伝播され得ることを理解されたい。
【0074】
2つの画像の比較評価により、上述したような方法で、評価デバイス19を用いて、レーザービーム2の焦点位置F,F′,F″が決定され得る。同じ様なことは、
図6a,b及び
図7a,bに関連して説明してきた結像光学系14ないしこの結像光学系を用いて記録された画像BないしB1〜B4にも当然当て嵌まる。さらに上記で説明してきた例においても、監視ビーム7のビームパス内で、検出器面12aまで到達させるべきでない、若しくは2つの監視ビーム7a,7bの形成のために不要である、監視ビーム7の一部を遮光するために、さらに1つ以上の(固定の)絞りを設けてもよいことを理解されたい。
【0075】
各監視方向R1,R2に対応付けられた2つの監視ビーム7a,7bの形成のために、ビーム断面に亘って変化する少なくとも1つの特性に基づいて、2つ(若しくはそれ以上)の監視ビーム7a,7bを形成する部分に分割する、ビームスプリッタが用いられてもよい。このビームスプリッタは、例えば、監視ビームの波長、偏光又は出力に基づいて、監視ビームパス7のビーム成分を透過ないし反射させるように構成されていてもよい。例えば、このビームスプリッタでは、監視ビームパス7の中央から来る高出力の監視ビーム7bは透過され、監視ビームパス7の縁部領域から来る低出力の監視ビーム7aは反射されるものであってもよい。
【0076】
図9a,bは、各監視方向R1,R2に対応付けられた2つの監視ビーム7a,7bを形成するさらなる手段が示されており、この手段は、監視ビーム7a,7bが、時間的に順次連続して形成される点で前記してきた手段と異なっている。
図9a,bに示されているように、この目的のために前記結像光学系14には、絞り31が設けられており、この絞り31は、回転軸Bを中心に回転可能に支承されており、そのため回転した場合には、偏心的に配置されている絞り開口部31の位置が、回転軸Bの周りをアーチ状に移動する。絞り開口部31aを貫通して出射する監視ビームパス7部分が各監視ビーム7a,7bを形成している。結像光学系14のレンズ17を用いて集光されるビームパス内に絞り31を配設することによって、監視ビーム7a,7bは、監視ビームパス7の、例えば相互に直径方向で相対向している異なった領域から時間的に順次連続して、検出器面12a上の同じ箇所に結像される。カメラ12によって相前後して記録された複数の画像は、上述のように、評価デバイス19を用いたレーザービーム2の焦点位置F,F′,F″の決定のために比較評価することが可能である。
【0077】
ここでは、機械的に調節可能な絞り31に代えて、電気的に調節可能な絞り、例えば個々の画素若しくは画素群が遮蔽効果を生じさせるために電子的にオンオフされるLCDアレイの形態の絞りを用いることも可能であることを理解されたい。また機械的絞り31を
図9a,bに示されている例とは異ならせて、監視ビームパス7に対して横方向に、例えばXY平面内を移動ないしシフトさせて、監視ビームパス7の異なった部分を時間的に順次連続して遮光したり、監視のために開放したりすることも可能である。また前記絞り31は、時間的に順次連続した画像の形成を実現するために、1つ若しくは複数の開け閉め可能な構成要素の形態で実現してもよいし、複数の絞りが相前後して設けられたものであってもよい。
【0078】
図10には、カメラ12によって監視すべき領域15の、ないしは基準輪郭を形成するレーザー加工用ノズル5の内側輪郭5bの、唯1つの画像B1だけが記録される点で、
図1に示された装置1とは実質的に異なっている、ワークピース3上にレーザービーム2を集光させるレーザー加工ヘッドの形態の装置1のさらなる実施例が示されている。この目的のために、画像キャプチャデバイス9により、(唯一の)監視ビーム7aが絞り31を用いて形成される。この監視ビーム7aは、
図1に関連して前述したように画像B1を検出器面12a上に形成するために、並びに必要に応じてさらに監視方向Rからのより高分解能の画像を高エネルギービーム2に対して同軸方向に形成するために、結像光学系14を用いて形成されており、この結像光学系14は、図示の例ではカメラ12の検出器面12a上で監視ビーム7aのビーム断面を適合化するための伸縮装置内に2つのレンズ17a,17bを有している。
【0079】
画像B1を、より厳密には検出器面12aの所定の区分を、レーザービーム2の異なる焦点位置F,F′のもとで示している、
図11a,bからもわかるように、焦点位置F,F′が変化した場合には、レーザー加工用ノズル5の基準輪郭を形成している内側輪郭5bの位置も当該画像B1内若しくは検出器面12a上で変化する。
【0080】
図11aに示されている描写では、レーザービーム2の焦点位置Fは、ワークピース3表面3a上にあり、この焦点位置は、本実施例では、目標焦点位置に相応している。
図11bに示されている描写では、レーザービーム2の焦点位置F′は、ワークピース3表面3aの上方にあり、内側輪郭5bの位置P′は、
図11にaに示されている位置Pに対して横方向に(負のY方向に)ずれている。記録された画像B1内のこれらの位置PとP′との間の横方向のずれの量は、ワークピース3から焦点位置F′までの間隔距離に依存している。この横方向のずれは、ワークピース3と焦点位置F′との間の間隔距離の増加と共に増大し、そのため当該のずれは、ワークピース3の表面3aにおける目標焦点位置Fからの焦点位置F′の偏差に対する尺度を表す。この横方向のずれは、例えば記録された画像B1と、所望の目標焦点位置Fのもとで記録された基準画像との間の相関付けを用いて決定することが可能である。代替的に、横方向のずれは、次のようにして決定することも可能である。すなわち、記録された画像と、基準画像とにおいて、特徴的な位置、例えば幾何学的な重心、又は、特定の幾何学的特徴、例えばオブジェクトエッジを求めることによって決定することも可能である。2つの画像内の特徴的な位置の間の位置偏差は、比較によって決定することができ、横方向のずれに対応している。
【0081】
レーザー加工ヘッド1方向へ焦点位置F′がシフトした場合には、記録された画像B1内のレーザー加工用ノズル5の内側輪郭5bのシフトが、正の方向で行われるのか若しくは負のY方向で行われるのかは、画像B1の形成のために用いる結像原理に依存する。内側輪郭5bの横方向のずれの方向と、焦点位置Fのシフトの方向との間の対応付けは、所与の結像原理毎に一義的であり、そのため横方向のずれの方向に基づいて、焦点位置Fのシフト方向を推定することが可能である。
【0082】
図10に示すようには、絞り31はシフト可能に構成されていてもよく、さらにこのシフトの制御のために、評価デバイス19及び/又は開ループ/閉ループ制御デバイス20と信号技術による接続が形成されてもよい。絞り31のシフトによれば、集光レンズ4の監視ビーム7aが透過する一部領域を設定調整することが可能である。それにより、監視方向R1ないし監視角度を偏向させることが可能になり、このことは特定の用途のために有利であることがわかっている。
【0083】
図10に示されている装置1の場合でも、レーザービーム2のビーム伝播方向13において、焦点位置FないしF′を目標焦点位置に制御するために、開ループ/閉ループ制御デバイス20を用いて、レーザービーム2のビームパス内に設けられる、ビーム整形や焦点調整を生じさせるさらなる光学素子、このケースでは順応性の偏向ミラー21に、より厳密に言えばその光学表面21aに作用することが可能である。またビーム整形や焦点調整が可能なその他の光学素子、例えば可変の焦点距離を有するレンズに(例えば液体レンズ)又はビームパス内の所定の位置へシフト可能なレンズに作用することも可能である。内側輪郭5bの横方向のずれに基づいて、あるいは、結像光学系14の集束補正ないし焦点位置の制御に必要となるレンズ17aないし17bのシフト量からは、レーザービーム2の焦点位置F,F′,F″のシフトを推定することができ、これはレーザービーム2内でコントロールされて修正可能である。
【0084】
前記開ループ/閉ループ制御デバイス20は、
図1との関連で説明したように、レーザービーム2のビーム方向13にレンズ17a,17bをシフトさせるシフトデバイス32に作用することで、結像光学系14の焦点位置の制御に用いることも可能である。このようにして、ワークピース3の表面3aが常に鮮明に検出器面12aに結像されることが保証される。
【0085】
要約すると、上述した方法のように、レーザービーム2の焦点位置F,F′,F″は、ワークピース加工中に決定され、必要な場合には修正される。目標焦点位置Fが、ワークピース3上面3aにあるならば、この焦点位置の相応の制御のもとで、ワークピース3が、集光レンズ4の焦点面に位置することが保証される。プロセス品質の向上の他にも、結像光学系14の焦点位置の相応の制御のもとでも、ワークピース3表面3aの中心を通って記録された画像Bも(これはプロセス監視に用いられる)、集光レンズ4によって「鮮明に」、すなわち焦点ぼけなしで結像され、これによって当該のプロセス監視が改善される。