(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284635
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】放射線治療装置と共に使用するステレオカメラシステムを較正するキャリブレーション方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
A61N5/10 T
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-526691(P2016-526691)
(86)(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公表番号】特表2016-524983(P2016-524983A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】GB2014052125
(87)【国際公開番号】WO2015008040
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年6月7日
(31)【優先権主張番号】1312808.7
(32)【優先日】2013年7月17日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511180259
【氏名又は名称】ビジョン アールティ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】メイアー,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】アレン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイル,ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ノーマン
(72)【発明者】
【氏名】ハウ,ロバート
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第7348974(US,B2)
【文献】
Dennis Tideman Arp et al,"EXACTRAC X-ray and beam isocenters - What's the difference ?",MEDICAL PHYSICS,2012年 3月,Vol.39, No.3,1418-1423
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療装置と共に使用する3Dカメラシステムを較正するキャリブレーション方法であって、当該方法は:
前記放射線治療装置のアイソセンタに対する推定位置にキャリブレーションファントムのファントムの中心を位置付けするステップと;
前記放射線治療装置を用いて前記キャリブレーションファントムを照射し、且つ前記キャリブレーションファントムの照射画像を解析することによって、前記キャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの相対位置を決定するステップと;
前記キャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットを前記キャリブレーションファントムに適用するステップと;
前記オフセットが適用された再配置されたキャリブレーションファントムの画像を取得するために、3Dカメラシステムを利用するステップと;
前記取得した画像を処理して、前記放射線治療装置のアイソセンタに対する前記3Dカメラシステムの座標系を設定するステップと;を含む
キャリブレーション方法。
【請求項2】
前記3Dカメラシステムを利用して、前記放射線治療装置のアイソセンタに対する推定位置に位置付けされた前記キャリブレーションファントムの画像を取得するステップと;
前記放射線治療装置のアイソセンタに対する推定位置に位置付けされた前記キャリブレーションファントムの前記取得した画像を処理して、前記放射線治療装置のアイソセンタに対する推定位置に位置付けされた前記キャリブレーションファントムの表面の3Dコンピュータモデルを生成するステップと;
前記キャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットを、前記放射線治療装置のアイソセンタに対する推定位置に位置付けされた前記キャリブレーションファントムの表面の生成された3Dモデルに適用するステップと;
再位置付けされた前記表面の生成された3Dコンピュータモデルを、前記放射線治療装置のアイソセンタに位置付けされた前記キャリブレーションファントムの表面の3Dコンピュータモデルと比較するステップと;
によって、前記放射線治療装置のアイソセンタに位置付けされた前記キャリブレーションファントムの表面の3Dコンピュータモデルを生成するステップをさらに含む、
請求項1に記載のキャリブレーション方法。
【請求項3】
放射線治療装置のアイソセンタに対する推定位置にキャリブレーションファントムのファントムの中心を位置付けするステップは、前記キャリブレーションファントムを機械式カウチの上に配置するステップを含み、
前記キャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットを前記キャリブレーションファントムに適用するステップは、前記機械式カウチに命令を送って、前記オフセットに対応する態様で再配置するステップを含む、
請求項1又は2に記載のキャリブレーション方法。
【請求項4】
前記キャリブレーションファントムを機械式カウチの上に配置するステップは:
前記機械式カウチの上に調節可能なテーブルを配置するステップと;
前記キャリブレーションファントムを前記調節可能なテーブルの上に固定するステップと;
前記調節可能なテーブルを平準化するステップと;を含む、
請求項3に記載のキャリブレーション方法。
【請求項5】
前記調節可能なテーブルは、水準器を含み、前記調節可能なテーブルを平準化するステップは、前記調節可能なテーブルが平準化されることを前記水準器が示すまで、前記調節可能なテーブルを調整するステップを含む、
請求項4に記載のキャリブレーション方法。
【請求項6】
前記キャリブレーションファントムは、1つ又は複数のキャリブレーションターゲットを含むキャリブレーションファントムを有しており、前記キャリブレーションファントムの照射画像を解析するステップは、複数の異なる位置にある放射線治療装置で照射された、前記照射されたキャリブレーションファントムの画像における1つ又は複数のターゲットの位置を比較することにより、前記キャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの相対位置を決定するステップを含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキャリブレーション方法。
【請求項7】
前記放射線治療装置を使用して、前記オフセットが適用された再配置されたキャリブレーションファントムを照射するステップ、及び前記再配置されたキャリブレーションファントムの照射画像を解析することによって、再配置されたキャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの相対位置を決定するステップと;
前記再配置されたキャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットを、前記再配置されたキャリブレーションファントムに適用するステップと;
前記取得した画像を処理して、前記放射線治療装置のアイソセンタに対する前記3Dカメラシステムの座標系を設定するステップは、前記オフセットが適用された前記再配置されたキャリブレーションファントムの画像を取得するために、3Dカメラシステムを利用するステップを含み;
前記取得した画像を処理して、前記3Dカメラシステムの座標系を設定するステップと;をさらに含む、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のキャリブレーション方法。
【請求項8】
前記キャリブレーションファントムは、複数のターゲットを含み、当該方法は:
前記調節可能なテーブルに固定された複数のターゲットを含む前記キャリブレーションファントムを単一のターゲットを含む第2のキャリブレーションファントムと交換するステップと;
前記放射線治療装置を使用して、前記調節可能なテーブルに固定された第2のキャリブレーションファントムを照射するステップ、及び第2のキャリブレーションファントムの照射画像を解析することによって、第2のキャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの相対位置を決定するステップと;
前記機械式カウチに命令を送って、第2のキャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットを、第2のキャリブレーションファントムに適用することを行わせるステップと;
前記取得した画像を処理して、前記放射線治療装置のアイソセンタに対する前記3Dカメラシステムの座標系を設定するステップは、前記オフセットが適用された第2の再配置されたキャリブレーションファントムの画像を取得するために、3Dカメラシステムを利用するステップを含み;
前記取得した画像を処理して、前記3Dカメラシステムの座標系を設定するステップと;をさらに含む、
請求項4又は5に記載のキャリブレーション方法。
【請求項9】
放射線治療装置と共に使用する3Dカメラシステムを較正するキャリブレーション方法であって、当該方法は:
前記放射線治療装置のアイソセンタに対する推定位置にキャリブレーションファントムのファントムの中心を位置付けするステップと;
3Dカメラシステムを利用して前記ファントムの画像を取得するステップ、及び該画像を処理して、前記ファントムの表面の3Dコンピュータモデルを生成するステップと;
前記放射線治療装置を用いて、前記キャリブレーションファントムを照射するステップ、及び前記キャリブレーションファントムの照射画像を解析することによって、前記キャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの相対位置を決定するステップと;
前記キャリブレーションファントムの中心と前記放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置及びモデル化されたファントムの中心の決定された位置に基づいて、前記3Dカメラシステムの座標系を設定するステップと;を含む、
キャリブレーション方法。
【請求項10】
前記3Dカメラシステムの座標系を設定するステップは、前記3Dコンピュータモデルの座標系の現在の原点に対するモデル化されたファントムの中心の位置を決定するステップ、及び前記3Dコンピュータモデルの座標系の現在の原点をモデル化されたファントムの中心の決定された位置と一致させるために必要な変換と、前記キャリブレーションファントムの中心の位置を前記放射線治療装置のアイソセンタと一致させるために必要な変換との和によって、前記3Dコンピュータモデルの座標系を調整するステップ、を含む、
請求項9に記載のキャリブレーション方法。
【請求項11】
前記キャリブレーションファントムの中心と一致するキャリブレーションモデルの中心と一緒にキャリブレーションファントムの表面の3Dコンピュータモデルを保存するステップと;
3Dカメラによって取得された画像に基づいて生成されたファントムのモデル化された表面を保存されたモデルと比較することに基づいて、前記3Dコンピュータモデルの座標系の現在の原点を、前記モデル化されたファントムの中心の決定された位置に一致させるために必要な変換を決定するステップと;をさらに含む、
請求項10に記載のキャリブレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオカメラシステムのキャリブレーション方法に関する。具体的には、本発明の実施形態は、放射線治療装置と共に使用するステレオカメラシステムのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、患者の体内に存在する腫瘍を破壊又は除去するように、放射線ビームを患者の身体の所定の領域に発射するステップから構成される。このような治療は、通常、定期的に繰り返し実施される。それぞれの医学的介入において、放射源は、放射線ビームによって損傷を受けるであろう隣接組織への照射を回避するべく可能な限り高い精度で選択した領域を照射するために、患者に対して位置付けしなければならない。
【0003】
放射線療法に関する基本的な問題は、診断画像を取得するときに及びその後の診断のそれぞれで放射線を患者の身体に適用するときに、患者を同じ位置に位置付けする必要があることである。そのために、患者を監視及び位置付けするための画像処理システムであるビジョンRTが開発され、これは、米国特許第7,348,974号、米国特許第7,889,906号、米国特許第8,135,201号、及び係属中の米国特許出願公開第2009/0379108号明細書、第2009/187112号明細書に記載されている。
【0004】
使用中に、ビジョンRTシステムでは、機械式カウチ(診察用椅子)上の患者の画像が、ステレオカメラのセットによって取得され、次にこの画像を処理して監視対象の患者の表面の3Dワイヤーメッシュモデルが生成される。この3Dワイヤーメッシュモデルは、治療計画の際に形成された基準面と比較される。このモデルと基準面との相対的な位置付けを比較し且つ使用して、機械式カウチに命令を与えて、これら表面同士が一致するように、カウチを垂直方向、横方向及び回転方向に位置付けし、こうして治療装置のアイソセンタに対する同じ位置に患者を確実に配置する。続いて、治療中に、患者の位置を継続的に監視し、何らかの理由で患者を移動させる又は再配置させる必要があれば、これを検出することができ、必要に応じて適切な動作を取ることができる。
【0005】
患者の位置付け、ターゲットの位置確認、照射量送達中のエラー等の不確かないくつかの原因が放射線治療システムに存在している。主にシステム内の複数の幾何学的な誤差の存在によって、最適な位置合わせを実現することは事実上不可能となる。放射線治療における重要な幾何学的な誤差の1つには、放射線フィールドの中心の局在化した不確実性があり、この不確実性は、線量測定の精度に直接的に影響を与え且つ腫瘍ターゲット決めに不正確性が生じ、病変部に対する不適当な照射量の送達につながり及び/又は隣接する健康な組織に重大な損傷を与え得る。従って、治療の高いレベルでの幾何学的な精度を保証するために、広範且つ効率的な品質保証プログラムによって、このようなエラーの確率を低減するための方法を開発する必要がある。
【0006】
もともと、放射線治療におけるアイソセンタを検証するための主な方法は、治療装置のガントリヘッドに取り付けられた機械的ポインターの先端と、治療台に取り付けられた固定点との間の距離を測定することであった。このような方法は、手動で行われ、労力を要し、時間がかかっていた。この方法の精度は、人間の観察者に依存し、また使用されるポインターの先端の大きさによって制限されていた。
【0007】
改善された技術が、1988年にハーバード大学医学部のLutz, Winston, Malekiによって導入され、この技術は、Lutz W, Winston KR, Maleki Nの”A system for stereotactic radiosurgery with a linear accelerator”という標題で、Int J Radiat Oncol Biol Phys. 1988; 14(2): 373-81に記載されている。Winston-Lutzのシステムでは、鋼、チタン又はタングステンから形成された小さな金属ボールを含むキャリブレーションファントムが、ロック機構によって治療台に固定される。ファントムの位置は、マイクロメータ用ツールによって3方向に調整可能である。放射線治療に使用されるコリメータが、ガントリヘッドに取り付けられ、そのボールは、ファントムのマークを治療室のレーザと整列させることにより、アイソセンタに可能な限り近接して配置される。コリメートされたビームを使用して、ボールの後ろのスタンドでビーム方向に対して垂直方向に取り付けられた放射線試験フィルムを露光する。球の影の中心と照射フィールドの中心との相違によって、真のアイソセンタと、治療室のレーザによって示されるようなアイソセンタとの相違が識別される。オフセットが、透過型テンプレートガイダンススケールを使用して又はフィルムをスキャンしソフトウェア分析を用いて、各フィルム上で読み取られる。
【0008】
Winston Lutz画像を解析するための数学的方法が開発され、この方法は、low DA、Li Z、Drzymala REの”Minimization of target positioning error in accelerator-based radiosurgery”という標題で、Med Phys. 1995; 22(4): 443-48に記載されている。この方法は、ファントムスタンドについて適切なオフセットを見つけるために、8つのガントリ角度及びカウチ設定のフィルムによって測定したアイソセンタ位置誤差を使用して、治療装置のアイソセンタとターゲットとの間の距離を最小化する。同様の目的は、Grimmらによって続いて開発され、Grimmらは、特定のカウチ及びガントリ角度で二次元のフィルム画像を撮影し、それら撮影した画像をデジタルカメラで撮影したレーザの画像と組み合わせることによって、Winston-Lutzファントムボールの位置(locus)を三次元で再構築するためのアルゴリズムを開発した。この手法は、Grimm J、Grimm SL、Das IJらの”A quality assurance method with sub-millimetre accuracy for stereotactic linear accelerator”という標題で、J Appl Clin Med Phys. 2011; 12(1): 182-98に記載されている。
【0009】
ファントム画像の自動処理の更なる例は、E Schriebmann, E Elder, T Foxの”Automated Quality Assurance for Image-Guided Radiation Therapy”という標題で、J Appl Clin Med Phys. 2009; 10(1): 71-79に記載されており、この文献は、超高圧(MV)治療ビームが、統合(integrated)キロボルト(kV)又は体積コーンビームCTと一致することを確実にするための品質保証方法の自動化について説明している。この文献では、キャリブレーション・キューブが、レーザマーキングを使用して治療室のアイソセンタの推定位置に配置されるものとして説明している。次に、キューブの照射画像が取得され且つ処理され、位置付けされるキューブが、MV、kV及び体積コーンビームによって特定されるアイソセンタからどの程度オフセットされるかを決定する。
【0010】
治療室で使用するステレオカメラシステムのキャリブレーションが、治療装置のアイソセンタを特定するための方法と一緒に開発された。ビジョンRT患者監視システムを較正するために使用されるキャリブレーション技術が、米国特許第7,348,974号及び米国特許第7,889,906号に記載されている。
米国特許第7,348,974号及び米国特許第7,889,906号に記載されるように、キャリブレーション・シートは、アルミニウム又は鋼等の平坦な剛性材料から構成された40*40センチメートル(cm)のシートを含み、このシートの表面上の既知の位置に、20*20の円のマトリックスを明らかにするパターンが設けられる。また、キャリブレーション・シートの中心に向けて、4つの小さなマーカーが、4つの円に隣接しており、その中心は、既知のサイズの正方形の4つのコーナー部を一緒に特定する。
【0011】
キャリブレーション・シートの画像を取得し且つ処理して、画像中の4つのマーカー及びそれらに関連する円の位置を画像内で特定する。画像中のマーカーで特定された円の相対位置から、キャリブレーション・シート及び画像を取得するカメラの相対的な向きに起因して生じる、画像内の平行四辺形のコーナー部を規定する特定された円の推定中心を考慮する射影変換が、決定される。次に、計算された変換が、特定された円のそれぞれに順番に適用され、円の楕円形状を変換する。次に、4つの円の中心位置のより正確な推定値は、変換された円の中心を特定し、逆変換を利用して推定された円中心の対応する位置を元の画像で測定することによって、決定される。
【0012】
キャリブレーション・シート上の円の表現それぞれの全ての中心の座標をある画像について計算した場合に、次に、異なるカメラの相対的な向きは、画像におけるこれらの点の相対位置及びキャリブレーション・シートの表面上のこれらの円の既知の相対位置から計算することができ、その計算方法は、Roger Tsaiの”A Versatile Camera Calibration Technique for High-Accuracy 3D Machine Vision Metrology Using Off the Shelf TV Cameras and Lenses”という標題で、IEEE Journal of Robotics and Automation, Vol. Ra-3, No.4, August 1987に詳しく説明されている。さらに、個々の画像内の点の相対位置から、カメラ画像内の焦点距離及び半径方向の歪み等のカメラの内部パラメータも決定することができる。
【0013】
ステレオカメラの位置、及びカメラの画像内に存在する任意の半径方向の歪みを決定することによって、次に、治療装置のアイソセンタに対するカメラの位置付けが決定される。これは、キューブの外観上のマークをアイソセンタで交差するレーザ十字線の投影と一致させるによって示されるように、治療装置上のある位置に位置付けされた既知のサイズのキャリブレーション・キューブをその治療装置のアイソセンタにおける中心で撮像することにより達成される。
【0014】
キャリブレーション・キューブの画像は、カメラの相対位置について以前に取得された測定値及び画像中に存在する任意の歪みの有無についてのデータを利用して処理され、キューブの表面の3Dコンピュータモデルを生成する。キューブは、既知の寸法を有しており、且つ既知の位置で、レーザ十字線で示されるように治療装置のアイソセンタに対して既知の向きにあるので、生成された3Dモデルと、キャリブレーション・キューブのサイズ及び位置についての既知のパラメータとの比較によって、モデリングソフトウェアの座標系で行われた測定値を、治療アイソセンタに対する治療室での実世界の測定値に変換することが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
放射線治療装置と共に使用するためのステレオカメラシステムを較正する従来の手法は、非常に正確であるが、精度の更なる向上が所望されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様によれば、放射線治療装置と共に使用するためのステレオカメラシステムを較正するキャリブレーション方法が提供される。
この方法では、最初に、キャリブレーションファントムは、放射線治療装置のアイソセンタに対する推定位置に、ファントムの中心を位置付けする。次に、キャリブレーションファントムが、放射線治療装置を用いて照射される。次に、キャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタとの相対位置が、キャリブレーションファントムの照射の画像を解析することによって、決定される。その後、キャリブレーションファントムは、キャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットをキャリブレーションファントムに適用することによって、再位置付けされる。次に、ステレオカメラシステムは、オフセットが適用された再配置されたキャリブレーションファントムの画像を取得するために進み、これらの画像を処理して、放射線治療装置のアイソセンタに対するステレオカメラシステムの相対的な座標系を設定する。
このようにして、ステレオカメラシステムの座標系が、キャリブレーションファントムの位置付けに基づいて直接的に確立され、ここでキャリブレーションファントムの位置は、治療装置のアイソセンタの決定に直接的にリンク付けされる。
【0017】
いくつかの実施形態では、ステレオカメラシステムをさらに利用して、キャリブレーションファントムの再位置付けを監視してもよい。これは、再配置されたキャリブレーションファントムの画像を処理するステップと、再位置付けされたキャリブレーションファントムの表面の生成された3Dコンピュータモデルを、治療装置のアイソセンタに位置付けされたキャリブレーションファントムの予想される表面の3Dコンピュータモデルと比較するステップを含み得る。
このような実施形態では、治療装置のアイソセンタに位置付けされたキャリブレーションファントムの予想される表面の3Dコンピュータモデルは、キャリブレーションファントムの表面の保存された3Dコンピュータモデルを含んでもよい。
【0018】
あるいはまた、ステレオカメラシステムを利用して、治療装置のアイソセンタに位置付けされたキャリブレーションファントムの予想される表面の3Dコンピュータモデルを生成してもよい。このようなシステムでは、最初に、ファントムの表面のモデルが、放射線治療装置のアイソセンタの推定位置に位置付けされたキャリブレーションファントムの画像を処理することによって生成される。次に、キャリブレーションファントムの予想される表面のモデルは、キャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットを、生成されたモデルに適用することによって、生成してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、キャリブレーションファントムは、機械式カウチの上に配置されることにより、治療装置のアイソセンタの推定位置に位置付けしてもよい。このような実施形態では、キャリブレーションファントムを再配置するステップは、機械式カウチに命令を与えることによって、キャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットだけ、キャリブレーションファントムの現在の位置をオフセットすることによって、達成することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、キャリブレーションファントムを平準化するために、調節可能なテーブルを使用してもよい。調節可能なテーブルを、機械式カウチの表面上に配置してもよい。このような実施形態では、調節可能なテーブルを平準化して、キャリブレーションファントムを調節可能なテーブルの上に固定し、それによってキャリブレーションファントムを平準化してもよい。このような実施形態では、調節可能なテーブルは、調節可能なテーブルを調整することによりキャリブレーションファントムを容易に平準化する水準器を含んでもよい。
【0021】
特許請求の範囲に記載される本発明の実施形態では、キャリブレーションファントムは、1つ又は複数のキャリブレーションターゲットを含むキャリブレーションファントムを有してもよい。キャリブレーションファントムに複数のキャリブレーションターゲットが含まれる実施形態では、好ましくは、キャリブレーションターゲットは、照射されたファントムの画像の解析を支援するように、キャリブレーションファントム内に非対称に配置される。
キャリブレーションファントムの照射画像を解析するステップは、複数の異なる位置にある治療装置で照射された、照射されたキャリブレーションファントムの画像中の1つ又は複数のターゲットの位置を比較することにより、キャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタとの相対位置を決定するステップを含んでもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、キャリブレーションファントムの再配置を反復的に行ってもよい。つまり、キャリブレーションファントムを再配置することによって、再配置されたキャリブレーションファントムが照射され、その新しい位置で画像形成することができるということである。次に、再配置されたキャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタの相対位置は、再配置されたキャリブレーションファントムの照射画像を解析することによって決定することができる。その後、キャリブレーションファントムは、再配置されたキャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置に対応するオフセットを、再配置されたキャリブレーションファントムに適用することによって、さらに再配置してもよい。次に、ステレオカメラシステムの座標系は、キャリブレーションファントムの取得した画像を再配置するように処理することによって、設定してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、複数のキャリブレーションファントムを使用してもよい。より具体的には、治療装置のアイソセンタの位置の初期推定値は、第1のキャリブレーションファントムを照射し、この照射されたキャリブレーションファントムの画像の解析に基づいて、キャリブレーションファントムを位置付けすることによって、取得することができる。次に、第1のキャリブレーションファントムを交換することができ、更なる位置調整が、第2のキャリブレーションファントムを利用して決定することができる。
【0024】
このようなシステムでは、最初に、複数のキャリブレーションターゲットを含む第1のファントムを使用することができる。このようなターゲットがキャリブレーションファントムのボディ内で非対称に配置される場合に、照射されたファントムの画像を処理することによって、ファントムの中心を治療装置のアイソセンタと一致するように位置付けするための並進及び回転を特定することができる。そのようにすることによって、微調整は、キャリブレーションファントムの中心に位置付けされた単一の小さなターゲットを含む第2のキャリブレーションファントムの使用に基づくことができ、それによって、精度が向上する。
【0025】
本発明の別の態様によれば、放射線治療装置と共に使用するためのステレオカメラシステムを較正するキャリブレーション方法が提供される。この方法は:放射線治療装置のアイソセンタの推定位置にキャリブレーションファントムのファントムの中心を位置付けするステップと;ステレオカメラシステムを利用してファントムの画像を取得するステップ、及びこれらの画像を処理して、ファントムの表面の3Dコンピュータモデルを生成するステップと;放射線治療装置を用いて、キャリブレーションファントムを照射するステップ、及びキャリブレーションファントムの照射画像を解析することによって、キャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタとの相対位置を決定するステップと;キャリブレーションファントムの中心と放射線治療装置のアイソセンタとの決定された相対位置及びモデル化されたファントムの中心の決定された位置に基づいて、ステレオカメラシステムの座標系を設定するステップと;を含む。
【0026】
このような実施形態では、ステレオカメラシステムの座標系を設定するステップは、3Dコンピュータモデルの座標系の現在の原点に対するモデル化されたファントムの中心の位置を決定するステップと;3Dコンピュータモデルの座標系の現在の原点をモデル化されたファントムの中心の決定された位置と一致させるために必要な変換、及びキャリブレーションファントムの中心の位置を放射線治療装置のアイソセンタと一致させるために必要な変換の和によって、3Dコンピュータモデルの座標系を調整するステップと;を含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、3Dコンピュータモデル座標系の現在の原点をモデル化されたファントムの中心の決定された位置と一致させるために必要な変換の決定は、キャリブレーションファントムの中心と一致するキャリブレーションモデルの中心と一緒にファントムキャリブレーションの表面の3Dコンピュータモデルを保存するステップと;ステレオカメラによって取得された画像に基づいて生成されたファントムのモデル化された表面を保存されたモデルと比較することに基づいて、3Dコンピュータモデルの座標系の現在の原点を、モデル化されたファントムの中心の決定された位置に一致させるために必要な変換を決定するステップと;によって、決定することができる。
上述したキャリブレーションのシステムは、放射線治療装置と共に使用するためのステレオカメラシステムを較正するための従来のシステムに対して多くの利点を有している。
【0028】
従来、治療装置のアイソセンタは、Winston Lutzによって示唆されるような手法を用いて確立されていた。次に、その位置は、通常、レーザ光の交差面が特定されたアイソセンタに一致するようにレーザシステムを用いてマークされ、その後、レーザ光システムを利用して、ステレオカメラシステムを較正するためのキャリブレーション・キューブを位置付けする。しかしながら、レーザ光システムの使用は、キャリブレーションに更なる誤差を導入し、従って患者位置付けシステムの精度に誤差を導入する可能性を含む。さらに、レーザ光システムの使用はまた、レーザ光によって特定される治療装置のアイソセンタの精度を繰り返しチェックし、この精度が時間経過とともに変化する場合に確認しなければならないことを要求する。この代わりに、特許請求の範囲に記載された発明によれば、ステレオカメラシステムのキャリブレーションは、レーザを用いたファントムの位置付けに依存することなく、キャリブレーションファントムを画像化する及び照射することによって直接的に達成される。この両方によって、キャリブレーションの精度が向上し、また、アイソセンタの位置を長期間に亘って正確に特定するように位置付け用レーザを較正する必要性が回避される。
本発明の更なる詳細が、以下の詳細な説明及び図面を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ステレオカメラシステム及び治療装置の概略斜視図である。
【
図2】本発明に係るステレオカメラシステムを較正するキャリブレーション方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、治療システムの概略斜視図である。この治療システムは、配線(図示せず)によってコンピュータ12に接続されるステレオカメラ10のセットを含む。コンピュータ12は、放射線療法を適用するための線形加速器等の治療装置14にも接続される。機械式カウチ(診察用椅子)16が、治療装置の一部として設けられる。治療装置14及び機械式カウチ16は、コンピュータ12の制御下で、カウチに隣接する矢印によって図面に示されるように、機械式カウチ16と治療装置14との相対位置を横方向、垂直方向、縦方向及び回転方向に変更できるように配置されている。さらに、治療装置14は、図中の装置の中央の矢印によって示されるように、軸線の周りを回転することもできる。
【0031】
コンピュータ12は、ステレオカメラ10によって取得した画像を処理して、機械式カウチ16に横たわっている対象物及び人の表面の3Dワイヤーメッシュ・コンピュータモデルを生成するように構成される。適切に較正されたときに、カウチ16に横たわっている患者の表面を治療の計画段階の間に生成された同じ患者の基準面と比較することによって、コンピュータ12が、これら2つの表面同士の間の差を最小化するように、これら表面を一致させるような変換を決定し、機械式カウチ16を再位置付けするための命令セットを生成することを可能にする。再位置付けしたときに、患者が治療計画を決定するために使用した位置と同じ位置にあるという認識で、治療装置14を用いて患者を治療することができる。
【0032】
放射線療法の適用及び患者の位置付けにおける誤差を最小化するために、ステレオカメラシステム10及びコンピュータ12を、最も高い精度で較正することが不可欠である。特に、患者の表面の3Dワイヤーメッシュモデルを生成するために使用した座標系を、治療装置14のアイソセンタと機械式カウチ16の動作の軸線との両方で一致させることが不可欠である。殆どの実施形態では、治療装置14のアイソセンタは、モデリングシステムのゼロ座標の位置になり、モデリングシステムの座標系の軸は、機械式カウチ16の運動の軸線(すなわち、運動の横方向、垂直方向、及び水平方向の軸線)に対応するように選択される。次に、これは、機械式カウチ16に命令を与えてこの機械式カウチを、治療装置14を用いて治療を受ける患者の位置と一致するように再配置することで、モデル空間におけるモデル表面同士を一致させるような変換の変更を簡素化する。
【0033】
図2は、
図1の治療システムを較正するキャリブレーション方法を示すフロー図である。
システムを較正するために、最初に、ステレオカメラシステム10内のステレオカメラの相対位置が、米国特許第7,348,974号及び米国特許第7,889,906号に記載されるように、キャリブレーション・シートを画像化することによって決定される(s1)。つまり、アルミニウム又は鋼等の材料から構成される70*70cmのシート等の平坦な剛性キャリブレーション・シートが、機械式カウチの上に配置され、ステレオカメラ10で画像化されるが、そのキャリブレーション・シートには、シートの表面上の既知の位置に円のマトリックスを表すパターンが存在する。円のパターンに加えて、このシート上には、4つの小さなマーカーが4つの円に隣接して存在し、これらの中心が、一緒に既知のサイズの四角形の4つのコーナー部を特定する。
【0034】
次に、カメラによって取得したシートの画像をコンピュータ12によって処理して、これらの画像中の4つのマーカーの位置を画像内で特定する。画像内のマーカーによって特定される円の相対位置から、画像毎に、特定された円の推定中心を考慮する第1の射影変換が決定され、その推定中心は、キャリブレーション・シート及び画像を取得するカメラの相対的な向き(姿勢)に起因して生じるような歪んで射影された正方形のコーナー部を画像内に規定する。
次に、計算した変換を利用して、マーカーによって特定された円それぞれについて推定された三次元座標の中心を決定する。その後、これらの計算された座標によって、画像が取得された位置に対するキャリブレーション・シートの表面に対応する平面について推定位置及び向きを特定する。
【0035】
次に、カメラ10で取得した画像中の各ピクセルを順番に処理して、円の中心の推定された位置を含む平面内で、各ピクセルがどの位置に対応しているかを決定する。その後、推定された円の中心を順番に処理して、計算された平面内の各円の中心から所定の距離内に位置する点に対応する画像内のピクセルを特定する。次に、各セット内の各画素についてのグレースケール値を利用して、円の中心の座標の改善された推定値を決定する。各画素がセット内で表す、キャリブレーション・シートの表面を含む推定平面内の点の位置についてのx及びy座標が決定される。次に、これらの計算されたx及びy座標を利用し、以下の式を用いて、円の中心のx,y座標の改善された推定値を推定する。
【数1】
ここで、Σgは、特定の円の中心について特定されたセット内の全ての画素値の和であり、Σgxは、それらの画素についてx座標を乗じた画素のグレースケール画素値の和であり、Σgyは、それらの画素についてy座標を乗じた画素のグレースケール画素値の和である。ここで、円の色は、高いグレースケール値に関連付けられており、キャリブレーション・シートに対応する背景の色は、低いグレースケール値に関連付けられている。
【0036】
次に、新たに推定された円の中心に対応する画像内の点の座標をこれらのx,y座標から決定し、その後、マークされた円の中心のこれらの更新された推定値を利用して、キャリブレーション・シートの位置及び向きを考慮するために、より正確に推定された変換を決定する。次に、上述した手順は、実際の円の中心位置の正確な推定が行われ、キャリブレーション・シートの相対的な向きを考慮するために必要な真の変換が決定されるまで、繰り返すことができる。
【0037】
最終的に決定された変換を使用して、次に、画像に現れるシート上の全ての円の予想される位置を計算して、その後、推定された円の中心それぞれの近傍での画像の部分を、上述したように、同じ方法で個別に処理する。円のそれぞれについて、円の中心に対して予め設定された距離内の点に対応する画素のセットを特定して、次に、改善された円の中心座標を、上述したように、グレースケール値及び座標値を用いて計算する。
【0038】
キャリブレーション・シート上の円それぞれの表現の全ての中心の座標を、ある画像について計算したときに、ステレオカメラシステム10内の異なるカメラの相対的な向きを、画像内のこれらの点の相対位置及びキャリブレーション・シートの表面上のこれらの円の既知の相対位置から計算することができ、この詳細は、Roger Tsaiの”A Versatile Camera Calibration Technique for High-Accuracy 3D Machine Vision Metrology Using Off the Shelf TV Cameras and Lenses”という標題で、IEEE Journal of Robotics and Automation, Vol. Ra-3, No.4, August 1987に記載されている。さらに個々の画像内の点の相対位置から、カメラ画像内の焦点距離及び半径方向の歪み等のカメラの内部パラメータも決定することができる。
【0039】
従ってこの初期のキャリブレーションステップを実行することによって、コンピュータ12には、このコンピュータが、ステレオカメラシステム10によって取得された立体画像を、撮像された対象物の表面の3Dコンピュータワイヤーメッシュモデルに変換するのを可能にするデータが供給される。また、初期キャリブレーションを既知の寸法のキャリブレーション・シートに対して実行するので、コンピュータには、コンピュータモデルにおける距離と実世界の測定値との間の関係を特定するデータも供給される。しかしながら、この段階では、コンピュータ12が、そのような測定値を治療室のアイソセンタの位置に又は機械式カウチの運動の軸線に関連付けるような手段が存在していない。
【0040】
ステレオカメラシステム10のカメラの相対位置及び関連する内部パラメータを決定することによって、次に、キャリブレーションファントム18が、治療室の推定されたアイソセンタに配置される(s2)。この実施形態では、ファントム18は、水に相当する放射線減衰を有する低密度材料及びヒト組織の放射線減衰に相当する密度の既知の大きさの機械加工されたキューブを含む。この実施形態では、これは、機械加工されたポリスチレンキューブのファントム18によって達成され、そのキューブは、ステレオカメラシステム10によって画像化するための最適なイメージを提供するようにペイントされたキューブの表面仕上げを含む。他の実施形態では、他の材料を使用してもよい。しかしながら、いずれの実施形態でも、使用される材料は、kV、ステレオX線、MV等の画像化技術又はポータルイメージング、コーンビームCT、従来の軸線方向CT及びヘリカルCTを使用して画像化を容易にするように選択すべきである。
【0041】
ターゲットの既知の非対称配置が、ファントム18のボディ内に固定した向きで設けられる。これらのターゲットは、小さな金属又はセラミックのボールを含んでもよい。ボールは、鋼、チタン又はタングステンから形成してもよく、又はセラミック材料から形成してもよく、或いはファントムを画像化したときに、ファントム18のボディを形成する材料に対して良好なコントラストを提供する任意の他の材料から形成してもよい。最も好適な材料は、良好な放射線安定性を有する材料であり、この材料は、実質的な変化を受ける前に相当な放射線量に耐えることができ、ここでファントム18のボディ内に設けられたターゲットの相対密度及び放射線減衰が、ファントム18の後続のイメージングを支援するように選択される。任意のファントム18は、ターゲットの非対称性によって、ファントム18の向きをファントム18の画像から決定するのを可能にする、また既に既知ならば、治療の座標系に対するファントム18の向きを決定又は確認するのを可能にするように、ターゲットの非対称な配置を含むことが好ましい。
【0042】
撮像ターゲットの非対称配置を含む適切なファントム18は、固有のパターンで向き合わせされた5つの内部エアポケットを含む16cmサイズのアクリル製キューブで構成されるペンタガイド(Penta-Guide)ファントム(Modus Medical Devices、ロンドンオンタリオ州、カナダ)を含むであろう。
ファントム18は、機械式カウチ16に取り付けられた調節可能なテーブル20の上に置かれることにより、アイソセンタの推定位置に配置される。調節可能なテーブル20は、ファントム18の位置を機械式カウチ16上に固定することに加えて、ファントムの向きについて微調整を行うことができるような調節可能な脚を有するように配置される。これは、典型的な機械式カウチ16の運動の軸線が、回転及び横方向、垂直方向及び水平方向の運動に制限され、従って、機械式カウチ16の運動が、例えばピッチ、ロールでのみ略変化するので、望ましい。いくつかの実施形態では、調節可能なテーブル20は、テーブル20、従ってファントム18が水平である場合にユーザに表示を示す水準器を含むことができる。
【0043】
潜在的なX線/光子ビーム散乱によって放射線画像の品質に影響を与えないように、調節可能なテーブル20は、低密度/X線減衰を有する材料から構成される。またこの実施形態では、テーブル20は、ファントム18を照射したときに取得された放射線画像の品質に悪影響を与えないように、垂直方向の治療ビームの経路内に開口を有する。
いくつかの実施形態では、調節可能なテーブル20は、機械式カウチ16の表面に対して複数の固定位置及び固定した向きで機械式カウチ16にのみ取り付けられるように配置することができる。同様に、調節可能なテーブル20は、ファントム18が1つ又は複数の固定した向きでテーブル20にのみ配置されるように構成することもできる。従って、例えば、調節可能なテーブル20は、ファントム18を特定の向きで受容するための凹部を含んでもよい。調節可能なテーブル20を機械式カウチ16に取り付けることと、ファントム18の位置及び向きを調節可能なテーブル20に対して固定することとによって、ファントムの位置付け及び向きを治療室のアイソセンタ及び座標系に対して固定するのが支援される。いずれにしても、調整テーブル20は、機械式カウチ16の表面上をスリップ又は移動しないように構成すべきである。
【0044】
いくつかの実施形態では、調節可能なテーブルには、ファントムを横方向に、縦方向に、及び垂直方向に正確に移動させるためのマイクロ位置付けツールを組み込むことができる。このような位置付けツールの利点は、再配置がカウチ16全体ではなくファントムの移動のみを伴うので、機械式カウチ16ではなく、このツールを使用して、ファントムの位置について微修正を容易に行えるということである。
いくつかの実施形態では、このようなツールが組み込まれたファントムを、別個のファントム18及び調節可能なテーブル20の代わりに利用してもよい。このようなファントムの例は、組織等価材料に埋め込まれた5つのマーカーで構成されたVarian Exact T Look-Bar (MedTec、オレンジシティ、アイオワ州、米国)であり、これは、マイクロメータツールが組み込まれたカムロック機構を介してカウチの上に装着可能である。
【0045】
治療室の推定されたアイソセンタのその中心点にファントム18を位置付けし、且つ必要に応じて、調節可能なテーブル20の脚を調整することによりファントム18を平準化することによって、ファントム18の画像が、ステレオカメラ10を使用して取得される(s3)。次に、コンピュータ12によって、これらの画像を、ステレオカメラシステム10のカメラの相対位置及び内部パラメータに関して以前に取得された情報を使用して処理し、ファントム18の表面の3Dコンピュータモデルを現在の3Dモデル空間内に形成する。
【0046】
次に、ファントム18が、治療装置14を用いて様々な角度から照射され(s4)、投影放射の画像は、ファントム18を照射する治療装置14のガントリヘッドの反対側の固定点に配置されたデジタルカメラ22を用いて、従来のWinston-Lutz試験と同様に、従来の方法で取得される。治療装置14のガントリヘッドを異なる位置に向き合わせしたときに、デジタルカメラ22によって取得された画像は、その後、コンピュータ12によって従来の方法で処理され、画像内のファントム18の外観と特にファントム18内に含まれるターゲットの影との間の差から決定され、ファントム18がアイソセンタに正確に配置されていると仮定して、ファントム内のターゲットの影の予想される位置と比較する。この処理から、コンピュータ12は、ファントムの中心が治療装置14の真のアイソセンタからオフセットされる度合を決定する。
【0047】
次に、コンピュータ12は、決定されたオフセットをファントム18のモデル化された表面に適用するように進み(s5)、ファントム18の正確な位置付けのための基準面を生成する。このようにすることによって、コンピュータによって、機械式カウチ16に命令を与えて、ファントム18を真のアイソセンタの位置に再配置させるように、そのカウチ自体を横方向に、垂直方向に、縦方向に及び回転方向に再位置付けする。イメージングする前にファントム18が正確に平準化されている場合には、ファントム18の正確な再整列は、純粋に、横方向、垂直方向、縦方向及び回転方向の変換によって達成すべきである。
【0048】
ファントム18を再位置付けする際に、ファントム18の位置が、コンピュータ12を含むステレオカメラシステム10を使用して監視され(s6)、このコンピュータは、ファントム18の画像を処理して、そのファントムの位置が再位置付けされるように、ファントム18の表面のワイヤーメッシュモデルを生成する。視覚的なフィードバックエラーをそのまま提供するために、モデル化された表面と、ファントム18を真のアイソセンタに再配置するためにオフセットが必要な元の表面との間の差異を、コンピュータ12の画面上に表示することができる。
【0049】
ファントム18の運動を監視することによって、機械式カウチ16の座標系の軸に対応するワイヤーメッシュモデルを生成するために使用される座標系の軸を確認するための機会が提供される。より具体的には、デジタルカメラ22によって取得した画像を解析することによって、ファントム18を治療室の真のアイソセンタに再位置付けするためのオフセットが提供される。機械式カウチ16に命令を与えてこのオフセットに対応する方法でファントム18を再位置付けすることによって、ファントム18を正確に位置付けするような対応する動きがもたらされる。また、カウチ16を再位置付けすることによるファントム18の運動は、ステレオカメラシステム10によって監視されるように、ファントム18の表面の等価の再配置に対応させる必要がある。さらに、ファントム18の表面のこの監視によって、ファントム18が機械式カウチ16によって再位置付けされた後に、調節可能なテーブル20を調整することによって実現されるような、ファントム18の位置及び向きについての更なる微調整の存在を強調することができる。
【0050】
ファントム18がアイソセンタの推定位置においてその中心点に配置された場合に、ステレオカメラシステム10は、次に、ステレオカメラシステム10のカメラの既知の相対位置と一緒に、既知の位置にある既知の寸法のファントム18の画像を使用して、アイソセンタの実際の位置に対してコンピュータ12によって生成された3D表面モデルの座標系を較正することができる。これは、典型的には、コンピュータモデルの座標系の原点がその新たな位置でファントム18のモデル化された表面から決定されるようなファントム18の中心と一致するように、コンピュータモデルの座標系を再規定することによって実現される。
【0051】
本発明の実施形態では、アイソセンタに対するファントム18の相対位置について更なる確認を取ることが所望される場合に、ステップs3−s6を繰り返すことができる。つまり、デジタルカメラ22により取得した画像に基づいて機械式カウチ16を再配置した後であって、ステレオカメラシステム10を使用してファントム18を正確に再配置したことを監視した後に、再位置付けしたファントム18を再照射することができ、再照射されたファントム18の更なる画像は、次に、ファントム18が実際にアイソセンタに位置していることを確認するために取得され、アイソセンタに位置していない場合に、ファントム18の位置の更なる調整が行われる。
【0052】
2回目の反復で更なる精度を得るには、単一のターゲットを含むファントム18を利用することができ、ここでファントム18は、既知の寸法のキューブを含み、このキューブには、単一の球状ターゲットが埋め込まれており、この球は、キューブの中心に位置する。次に、このようなファントム18を画像化することができ、ファントムを照射したときに、デジタルカメラ22によって取得した画像の解析に基づいて調整が行われる。このようなファントム18の利点は、ターゲットの球を非常に小さくすることができ、それによってアイソセンタをより正確に位置付けするのを支援できることである。このようなファントム18の欠点は、単一のターゲット球のみが存在する場合に、取得したファントム18の画像が、ファントム18が非対称配置のターゲットを含む場合に導出されるようなファントム18の向きに関する情報が不足していることである。
【0053】
組織等価材料内に埋め込まれた1つの2mmの中央放射線不透過マーカーを構成する適切な試験ファントムは、Varianキューブ(Varian Medical Systems、パロアルト、カリフォルニア州、米国)であろう。
複数のファントム18を利用する実施形態では、単一の向きにファントム18の取り付けを可能にする調節可能なテーブル20を使用することが有利である。このようなシステムでは、最初に、複数のターゲットを含むファントム18を使用して、治療装置のアイソセンタの位置を特定することができる。複数のターゲットファントムを使用することは、ターゲット球の非対称配置が明らかであるので、デジタルカメラ22により取得した画像に表示される際に、ファントム18の向きを決定することが可能であるという利点を有する。そのように実施し、画像の分析に基づいてファントム18を再位置付けすることによって、次に、複数のターゲットファントム18を、単一のターゲットファントム18に置き換えることができ、最終的な微調整を、単一のターゲットファントムを使用するキャリブレーションに対して行うことができる。ファントム18を変更する場合に、ステレオカメラシステム10を利用して、ファントム18を交換した時に位置に変化が生じないことを確実にすることができる。このような実施形態では、個々のファントム18を互いに容易に区別するような方法(例えば、色分け)で、複数のファントム18をマークすることができれば、それは有益であろう。
【0054】
上述した実施形態では、カメラシステムのキャリブレーションについて、治療室のアイソセンタに配置されたファントム18の画像化に基づいて説明してきた。いくつかの実施形態では、キャリブレーションは、ファントム18を物理的に再配置することなく達成できることを理解されたい。より具体的には、説明したように、ファントム18は、アイソセンタの推定位置に配置され、ステレオカメラシステム18を用いて画像化することができ、その後、デジタルカメラ22を用いて取得された画像で照射される。次に、デジタルカメラ22によって取得した画像を処理して、治療室の実際のアイソセンタに対するファントムのオフセットを決定することができる。同様に、ステレオカメラシステム10によって取得したファントム18の画像を処理して、その現在の位置にファントムの3Dコンピュータモデルを生成することができる。次に、ステレオカメラ10の座標系の調整は、3Dモデルを処理することによって計算された変換を加算することによって計算され、ファントム18のモデルの中心を、デジタルカメラ22によって取得した画像を処理することによって決定されるようなオフセット及びコンピュータモデルの座標軸の原点に再配置することができる。