(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284638
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】半導体層列および半導体層列の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/08 20100101AFI20180215BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
H01L33/08
H01L21/205
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-530876(P2016-530876)
(86)(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公表番号】特表2017-501565(P2017-501565A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】EP2014073717
(87)【国際公開番号】WO2015071134
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】102013112490.9
(32)【優先日】2013年11月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス エベッケ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア カウス
(72)【発明者】
【氏名】ペトルス スンドグレーン
【審査官】
佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−123398(JP,A)
【文献】
特開2008−166567(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0319081(US,A1)
【文献】
特表2008−544567(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/105397(WO,A1)
【文献】
特開2009−028797(JP,A)
【文献】
特開2012−222274(JP,A)
【文献】
特表2013−539907(JP,A)
【文献】
特開2009−049209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)用の半導体層列(10)であって、
当該半導体層列は、
・n導電型のn側部分(11)と、
・p導電型のp側部分(13)と
・前記n側部分(11)と前記p側部分(13)との間に位置する活性領域(2)とを有しており、
前記活性領域(2)は、第1の波長(L1)を有する第1のビームと第2の波長(L2)を有する第2のビームとを同時に生成するように構成されており、
・前記活性領域(2)は、前記第1のビーム(L1)を生成する第1の材料組成を有する、少なくとも1つのビーム活性層(21)を有しており、
・当該少なくとも1つのビーム活性層(21)は、前記半導体層列(10)の成長方向(z)に対して垂直に配向されており、
・前記活性領域(2)は、前記第2のビーム(L2)を生成する第2の材料組成および/または前記少なくとも1つのビーム活性層(21)とは異なる結晶構造を有する多数のビーム活性管(22)によって完全に貫通されており、
・当該ビーム活性管(22)は、前記成長方向(z)に対して平行に配向されており、
前記ビーム活性管(22)は、5nm以上100nm以下の平均直径を有しており、
前記ビーム活性管(22)の平均面密度は、108l/cm2以上1011l/cm2以下である、
ことを特徴とする、オプトエレクトロニクス半導体チップ(1)用の半導体層列(10)。
【請求項2】
前記半導体層列(10)は、材料系InAlGaPまたはAlGaAsをベースにしており、
前記ビーム活性管(22)の少なくとも一部は、前記n側部分(11)から前記p側部分(13)内まで達しており、または、前記p側部分(13)から前記n側部分(11)内まで達している、請求項1記載の半導体層列(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのビーム活性層(21)は、InxAlyGa1−x−yPから形成されており、ここで0.45≦x≦0.65並びに0.05≦y≦0.4であり、
前記ビーム活性管(22)は、InaAlbGa1−a−bPから形成されており、ここで0.2≦a≦0.7並びに0.025≦b≦0.8であり、かつ、a−x≧0.04が有効である、請求項1または2記載の半導体層列(10)。
【請求項4】
複数の前記ビーム活性層(21)を含んでおり、前記ビーム活性層(21)はそれぞれ、二次元の量子井戸として構成されており、
前記複数のビーム活性層(21)の平均厚さはそれぞれ3nm以上12nm以下であり、前記ビーム活性管(22)は、一次元の量子井戸として構成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の半導体層列(10)。
【請求項5】
前記第1の波長(L1)は570nm以上605nm以下であり、前記第2の波長(L2)は620nm以上680nm以下であり、前記第1の波長(L1)と前記第2の波長(L2)との間の差は、最低で25nm、最大で120nmである、請求項1から4までのいずれか1項記載の半導体層列(10)。
【請求項6】
成長基板(14)上には、緩衝層(15)が析出されており、前記緩衝層(15)にはn型外套層(16)が続き、前記緩衝層(15)と前記n型外套層(16)とが、前記n側部分(11)を形成し、
当該n側部分(11)上には、前記少なくとも1つのビーム活性層(21)を含んでいる前記活性領域(2)が形成されており、
前記活性領域(2)にはp型外套層(17)が続き、当該p型外套層(17)には再び、コンタクト層(18)が続き、前記p型外套層(17)と前記コンタクト層(18)は、前記p側部分(13)を形成する、請求項1から5までのいずれか1項記載の半導体層列(10)。
【請求項7】
前記ビーム活性管(22)は前記緩衝層(15)から出発して、前記コンタクト層(18)内まで、連続的に延在する、請求項6記載の半導体層列(10)。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の半導体層列(10)の製造方法であって、
当該方法は、
・前記半導体層列(10)に対して少なくとも1つの成長基板(14)を準備するステップと、
・妨害箇所源(3)を準備するステップ、および/または、妨害箇所を形成するステップと、
・前記半導体層列(10)を前記成長基板(14)上に、エピタキシャル成長させるステップとを有しており、
前記半導体層列(10)の前記エピタキシャル成長の前に、前記成長基板(14)の主要面(40)に、前記成長基板(14)での凹部および/または凸部によって妨害箇所(3)を形成し、
前記ビーム活性管(22)の1つに対してそれぞれ前記凹部および/または凸部が設けられている、
ことを特徴とする、半導体層列(10)の製造方法。
【請求項9】
薄い材料層を前記主要面(40)上に被着し、その後、加熱によって島状化することよって、前記妨害箇所(3)を自己組織化方式で形成する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記妨害箇所(3)を、フォトリソグラフィまたは電子線描画によって所期のように規則的に形成し、
前記妨害箇所(3)は、前記主要面(40)の平面図で見て、最低で1nm、最大で25nmの平均直径を有しており、前記主要面(40)に対して垂直な方向での、前記妨害箇所(3)の平均延在は、最低で1nm、最大で100nmである、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記ビーム活性管(22)の成長は直に前記成長基板(14)の表面で始まり、
前記ビーム活性管(22)は前記活性領域(2)においてのみビーム活性である、請求項8または10記載の方法。
【請求項12】
前記ビーム活性管(22)の成長は、前記成長基板(14)と間隔を空けて、緩衝層(15)内で始まり、
前記ビーム活性管(22)は、前記活性領域(2)においてのみビーム活性である、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
・前記成長基板(14)はGaAs基板であり、かつ、
・前記活性領域(2)は20個以上100個以下の前記ビーム活性層(21)を含んでおり、さらに、当該ビーム活性層(21)の間に配置されている、InAlGaPから成る複数のバリア層(23)を含んでいる、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記妨害箇所源(3)は、前記半導体層列(10)の成長の開始時にのみ活性である、および/または、存在しており、前記妨害箇所源(3)は、その上に前記活性領域(2)が直接的に形成されている層(16)が成長する前には、妨害箇所を生成しない、請求項8から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
複数のビーム活性層(21)が存在しており、当該ビーム活性層(21)は、それぞれ、つながっている連続した層である、請求項8から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
オプトエレクトロニクス半導体チップ用の半導体層列を提示する。さらに、この種の半導体層列の製造方法を提示する。
【0002】
解決されるべき課題は、相違する2つの波長領域でビームを生成する半導体層列を提供することである。
【0003】
上述の課題は、特に、独立請求項に記載されている特徴部分の構成を有する半導体層列および方法によって解決される。有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0004】
少なくとも1つの実施形態では、半導体層列は、オプトエレクトロニクス半導体チップ用に構成されている。例えば、この半導体層列は、特に発光ダイオード(略してLED)、または、レーザーダイオード(略してLD)用のビーム活性層列である。これは、ビーム活性構造体とも称される。
【0005】
この半導体層列は、有利には、III−V族化合物半導体材料をベースにしている。この半導体材料は、例えば、窒化物化合物半導体材料、例えばAl
nIn
1−n−mGa
mN、または、リン化物化合物半導体材料、例えばAl
nIn
1−n−mGa
mP、または、ヒ化物化合物半導体材料、例えばAl
nIn
1−n−mGa
mASであり、ここではそれぞれ0≦n≦1、0≦m≦1、かつ、n+m≦1である。ここで、この半導体層列は、ドーピング材料並びに付加的な構成成分を有し得る。しかし、分かり易くするために、半導体層列の結晶格子の本質的な構成成分のみ、すなわちAl、As、Ga、In、NまたはPのみを挙げる。ただし、これらは部分的に少量の別の材料によって置き換え可能である、かつ/または、これらに少量の別の材料を添加可能である。
【0006】
少なくとも1つの実施形態では、半導体層列は、n導電型のn側部分を有している。n側部分は、半導体層列のうちの1つ、または、有利には複数の層を有している。
【0007】
少なくとも1つの実施形態では、半導体層列は、p導電型のp側部分を有している。p側部分も、半導体層列のうちの1つまたは複数の層から構成されていてよい。
【0008】
少なくとも1つの実施形態では、半導体層列は、少なくとも1つの活性領域を有している。活性領域は、n側部分とp側部分との間に位置している。この活性領域は、第1の波長を有する第1のビームと、第2の波長を有する第2のビームとを同時に生成するように構成されている。各ビームの波長はこの箇所でも、以降でも、最も大きい測光出力が存在する、発光帯の波長のことである。英語でこの波長は「Peak Wavelength(ピーク波長)」とも称される。
【0009】
少なくとも1つの実施形態では、活性領域は、1つ、または、有利には複数のビーム活性層を含んでいる。少なくとも1つのビーム活性層は有利には、いわゆる量子井戸またはポテンシャル井戸として構成されており、特に、二次元の量子井戸またはポテンシャル井戸として構成されている。少なくとも1つのビーム活性層は第1の材料組成を有している。複数のビーム活性層が存在する場合、有利には全てのビーム活性層は、製造誤差の範囲内で、同じ材料組成を有している。これに対して択一的に、所期のように異なった材料組成を有する種々のビーム活性層を形成することもできる。
【0010】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのビーム活性層は、第1のビームを生成するように構成されている。材料組成の異なる複数のビーム活性層が存在する場合には、各層は、異なる波長を有するビームを放射することができ、比較的大きいスペクトル幅を有する第1のビームが実現される。換言すれば、この場合には、全てのビーム活性層のビームが、用語「第1のビーム」にまとめられる。
【0011】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのビーム活性層は、半導体層列の成長方向に対して垂直に、または、ほぼ垂直に配向されている。換言すれば、成長方向は、少なくとも1つのビーム活性層に対する垂線を形成する。
【0012】
少なくとも1つの実施形態では、半導体層列および/または活性領域は、多数のビーム活性管(これは、線とも称される)を含んでいる。これらのビーム活性管は、第2の材料組成および/または、ビーム活性層とは異なる格子構造を有し得る。ビーム活性管の第2の材料組成は、少なくとも1つのビーム活性層の第1の材料組成とは異なる。ビーム活性管は、第2のビームを生成するように構成されている。これらの管は、特に、1次元の量子井戸として形成されている。
【0013】
少なくとも1つの実施形態では、ビーム活性管は、成長方向に対して平行に、または、実質的に平行に配向されている。「実質的に平行」とは、例えば、成長方向に対する平均偏差が最大で5°、または、最大で2°であることを意味している。ビーム活性管は、製造誤差の範囲内で、それぞれ、成長方向に対して垂直な断面において、同じ材料組成を有していても、異なる材料組成を有していてもよい。ビーム活性管の材料組成が、成長方向に沿って変化してもよい。
【0014】
少なくとも1つの実施形態では、半導体層列は、オプトエレクトロニクス半導体チップ用に設けられており、n導電型のn側部分と、p導電型のp側部分と、n側部分とp側部分との間に位置する活性領域とを有している。活性領域は、第1の波長を有する第1のビームと、第2の波長を有する第2のビームとを同時に生成するように構成されている。ここで第1の波長は、第2の波長とは異なる。活性領域は、第1のビームを生成する第1の材料組成を有する少なくとも1つのビーム活性層を有している。少なくとも1つのビーム活性層は、半導体層列の成長方向に対して垂直に配向されている。さらに、活性領域は、第2のビームを生成する第2の材料組成を有する多数のビーム活性管
によって貫通されている。ここで、この第2の材料組成は、第1の材料組成とは異なっている。ビーム活性管は、成長方向に対して平行に配向されている。
【0015】
熱光源からのビーム、例えば太陽光とは異なり、通常、発光ダイオードのスペクトル放射帯域は狭い。これに伴い、発光ダイオードの光は通常、比較的低い演色性を有している。しかし多くの用途において、高い演色性と、ビームによって照明される対象物の色印象に関する、実物どおりの再現性とが望まれている。本願に記載されている半導体層列では、活性領域は2つの構造体を有している。すなわち、少なくとも1つのビーム活性層の形態である二次元の量子井戸構造体と、ビーム活性管の形態である1次元または0次元の量子井戸構造体とを有している。これらの構造体は、相違する放射波長を有している。これによって、この半導体層列によって生成されるビームの演色性が高められる。
【0016】
多色の発光半導体層列を実現するための他の手法は、異なるバンドギャップを有する複数の二次元の量子井戸または鉢状構造体を、半導体層列内で組み合わせることである。しかしこの場合には、電荷捕獲および再吸収は、長波長放射を行う量子井戸によって占有されてしまう。従って、放射は再びほぼ単色になり、長波長放射によって占有される。二次元の量子井戸を、より低い次元の量子井戸と組み合わせる場合には、このような欠点が解消される。空間的に分けられているので、次元の異なるこれらの構造体は同時に通電される。さらに、次元が低い方の構造体への再吸収は、この構造体の体積が小さいことによって著しく抑圧される。従って、効果的に、複数の色を同時に放射することができる半導体層列を構築することが可能である。
【0017】
少なくとも1つの実施形態では、半導体層列、特に、半導体層列全体は、材料系InAlGaP/AlGaASをベースにしている。換言すれば、半導体層列の主要成分は、In、Al、Ga、Pおよび/またはAsである。他の構成成分は有利には、ドーピングの範囲の濃度にしかない。
【0018】
少なくとも1つの実施形態では、複数のビーム活性管またはビーム活性管のうちの少なくとも一部は、n側部分からp側部分内まで延在する。換言すれば、ビーム活性管は、成長方向に対して平行な方向において、活性領域を完全に貫通する。
【0019】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのビーム活性層はIn
xAl
yGa
1−x−yPから形成されている。ここでは、0.40≦xまたは0.45≦xまたは0.50≦xが有効である。択一的にまたは付加的に、x≦0.58またはx≦0.65またはx≦0.72が有効である。さらに、有利には0≦yまたは0.05≦yまたは0.1≦yまたは0.2≦yおよび/またはy≦0.3またはy≦0.4またはy≦0.5が有効である。
【0020】
少なくとも1つの実施形態では、ビーム活性管は、In
aAl
bGa
1−a−bPから形成されている。ここで有利には、0.2≦aまたは0.5≦aまたは0.55≦aが有効である。択一的にまたは付加的に、a≦0.6またはa≦0.7またはa≦0.8が有効である。さらに、有利には0≦bまたは0.025≦bまたは0.05≦bまたは0.1≦bおよび/またはb≦0.25またはb≦0.35またはb≦0.45またはb≦0.8が有効である。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、a>xが有効である。特に、a−x≧0.02またはa−x≧0.04またはa−x≧0.08が有効である。
【0022】
少なくとも1つの実施形態では、ビーム活性管は、少なくとも1nmまたは5nmまたは10nmの平均直径を有している。択一的または付加的に、ビーム活性管の平均直径は、最大で150nmまたは100nmまたは70nmである。換言すれば、この平均直径は、半導体層列の水平方向の寸法と比べて極めて小さい。半導体層列の水平方向の寸法は、例えば、少なくとも100μmまたは250μmまたは500μmである。
【0023】
少なくとも1つの実施形態では、ビーム活性管は、少なくとも10
7l/cm
2、または、10
8l/cm
2または10
9l/cm
2の平均面密度を有している。択一的または付加的に、ビーム活性管の平均面密度は、平面図で見て、最大で10
12l/cm
2または10
11l/cm
2または10
10l/cm
2である。
【0024】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つのビーム活性層の平均厚さは、少なくとも2nmまたは3nmまたは4.5nmである。択一的または付加的に、この平均厚さは、最大で15nmまたは12nmまたは9nmである。換言すれば、ビーム活性管の平均直径は、ビーム活性層の平均厚さと同じオーダーにあってよい。用語「同じオーダーにある」とは、ここでは、平均厚さが平均直径の、最大で5倍または2倍である、ということを意味している。
【0025】
少なくとも1つの実施形態では、第1の波長は、少なくとも570nmまたは580nmであり、かつ/または、最大で605nmまたは595nmである。換言すれば、この場合には、第1の波長は、黄色および/またはオレンジ色のスペクトル領域にある。これに対して択一的に、第1の波長が例えば、青色のスペクトル領域にあり、少なくとも420mmまたは440nmまたは460nmであり、かつ/または、最大で490nmまたは480nmまたは470nmであってもよい。同様に、第1の波長が、緑色のスペクトル領域にあり、例えば、少なくとも515nmまたは525nmであり、かつ/または、最大で555nmまたは545nmであってもよい。
【0026】
少なくとも1つの実施形態では、第2の波長は赤色のスペクトル領域にあり、例えば、少なくとも610nmまたは620nmであり、かつ/または、最大で700nmまたは680nmまたは660nmである。第1の波長が青色スペクトル領域にある場合には、第2のスペクトル領域が緑色または黄色−オレンジのスペクトル領域にあってよい。
【0027】
少なくとも1つの実施形態では、第1の波長と第2の波長との間の差は、少なくとも25nmまたは40nmまたは55nmである。択一的または付加的に、この差は最大で150nmまたは120nmまたは80nmである。
【0028】
少なくとも1つの実施形態では、第2の波長は、第1の波長よりも長い波長である。換言すれば、この場合には、ビーム活性管は、少なくとも1つのビーム活性層よりも、小さいバンドギャップを有している。ビーム活性管の体積が小さいので、ビーム活性管内への第1の波長のビームの吸収は著しく低減されている。
【0029】
さらに、半導体層列の製造方法、特に上述した実施形態の少なくとも1つに従った半導体層列の製造方法が提示される。従って、この方法の特徴は半導体層列に対しても開示されており、半導体層列の特徴はこの方法に対しても開示されている。
【0030】
この方法は、有利には、記載されている順番で、以下のステップを有している:
・半導体層列に対して少なくとも1つの成長基板を準備するステップ
・妨害箇所源を準備するステップ、および/または、妨害箇所を形成するステップ
・成長基板上に半導体層列をエピタキシャル成長させるステップ
【0031】
この方法は、オプトエレクトロニクス半導体チップを完成させるために更なるステップを有し得る。これは例えば、電気的なコンタクト層、金属化部および/またはパッシベーション層を取り付けるステップ並びに個別化するステップである。成長基板が半導体層列から除去されず、完成されたオプトエレクトロニクス半導体チップ内に残っていてもよい。択一的に、成長基板を担体基板によって置き換えてもよい。
【0032】
この方法の少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つの成長基板が、半導体層列の成長の間、基板担体の主要面に取り付けられる。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、妨害箇所源は、成長基板の事前の構造化によって形成される。特に、半導体層列の成長前の、このような事前の構造化は、例えば、フォトリソグラフィ、電子線リソグラフィまたは干渉リソグラフィに基づいて行われ、有利には、その後にウェットケミカルエッチングプロセスまたはドライケミカルエッチングプロセスが続く。またはこれは、妨害箇所の析出によって、または、電子線またはイオンビームによる成長基板の損傷によって行われる。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、妨害箇所源は、エピタキシーに使用される材料の凝固の核のための源である。例えばエピタキシー反応装置に、所期のように、汚染物質を加えることができる。ここでは、前駆物質分子の凝縮または反応が、特に、有機金属気相成長法、略してMOVCDの場合に生じる。このような凝固の核によって、成長基板上での半導体層列の成長時に、半導体層列に欠陥または妨害箇所を生成することができる。半導体層列におけるこのような妨害箇所に基づいて、ビーム活性管を成長させることができる。
【0035】
この方法の少なくとも1つの実施形態では、妨害箇所源は、半導体層列の成長の開始時にのみアクティブである、および/または、存在する。例えば妨害箇所源は、活性領域または、その上に活性領域が直接的に形成されている層が成長する前には、妨害箇所を生成しない。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、特に半導体層列の成長開始時に妨害箇所源によって生成された、または、加えられた妨害箇所の数を介して、ビーム活性管の平均面密度が調節可能である。この場合に、ビーム活性管の平均面密度と妨害箇所の数との間に線形の関係が生じている必要は無い。
【0037】
少なくとも1つの実施形態では、この管は直に成長基板の表面で始まる、または、緩衝層の表面で始まる、かつ/または、緩衝層内で始まる。緩衝層は特に、直接的に成長基板に接している、半導体層列の層である。この緩衝層を介して、特に活性領域に対して、例えば成長基板の材料と半導体層列の材料との格子整合または実質的な格子整合が実現可能である。
【0038】
少なくとも1つの実施形態では、管は活性領域においてのみビーム活性である。換言すれば、この場合には、第2のビームの放射は活性領域においてのみ行われる。活性領域はここで例えば、成長方向に対して垂直に延在しており、特に、成長方向に沿って、最初のビーム活性層と最後のビーム活性層との間に位置する領域を包囲する。これに対して択一的に、ビーム活性管が第2のビームを、活性領域外の領域においても放射することが可能である。
【0039】
少なくとも1つの実施形態では、成長基板はGaAS基板である。有利には、直接的に、成長基板上に緩衝層が成長される。緩衝層は例えば、InGaAlPから形成されている。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、緩衝層には、n型外套層が続く。例えば、このn型外套層はInAlPから形成されている。特に、直接的にまたは間接的に、n型外套層上に活性領域が被着されている。
【0041】
少なくとも1つの実施形態では、活性領域は複数のビーム活性層を有しており、例えば少なくとも2個または10個または少なくとも20個、かつ/または、最大で250個または150個または100個または75個のビーム活性層を有している。このような場合には、隣接するビーム活性層の間には、それぞれバリア層が存在する。例えば、バリア層はInAlGaPから形成されている。有利には、全てのビーム活性層は、製造誤差の範囲で、同じ材料組成および層厚を有している。このことは、バリア層にも当てはまる。
【0042】
少なくとも1つの実施形態では、活性領域には、成長方向に沿って、p型外套層が続く。p型外套層は、例えば、p型ドーピングされたInGaAlPから形成されている。
【0043】
少なくとも1つの実施形態では、直接的にまたは間接的に、p型外套層上にコンタクト層が被着されている。コンタクト層は、InGaAlPから形成されていてよい。
【0044】
以降では、本願に記載した半導体層列および本願に記載した方法を、図面を参照して、実施例に基づいてより詳細に説明する。この際、同じ符号は、個々の図面における同じ要素を示している。しかしこれらは縮尺通りには示されておらず、むしろ、幾つかの要素は、分かり易くするために、過度に大きく示されていることがある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本願に記載されている半導体層列の実施例の概略図
【
図2】本願に記載されている半導体層列の実施例の概略図
【
図3】本願に記載されている半導体層列の発光スペクトルの図
【
図4】本願に記載されている半導体層列のための、本願に記載されている製造方法の概略図
【0046】
図1には、斜視図で、オプトエレクトロニクス半導体チップ1が示されている。成長基板14上には、半導体層列10が形成されている。半導体層列10は、n側部分11とp側部分13とを有している。n側部分11とp側部分13との間に活性領域2が位置する。活性領域は、少なくとも1つのビーム活性層21を含んでいる。成長基板14とは反対の側に、半導体チップ1のビーム主要面25が位置する。
【0047】
さらに、半導体層列10は、多数のビーム活性管22を含んでいる。これらの管22は、半導体層列10の成長方向zに対して平行に配向されている。ここでこれらの管22は、僅かにメアンダ状に延在しており、管22の主要延在方向は、僅かに、成長方向zとは異なる。管22は活性領域2を完全に貫通している。
【0048】
図2には、半導体チップ1の別の実施例が、概略的な断面図で示されている。例えば、半導体層列10は、材料系InAlGaP/InAlGaAsをベースにしている。
【0049】
半導体チップ1は、成長基板14として、GaAs基板を含んでいる。成長基板14の主要面40には、緩衝層15が析出されている。緩衝層15の厚さは、例えば、約500nmである。緩衝層15は例えば、GaAsから形成されている。
【0050】
緩衝層15にはn型外套層16が続く。n型外套層の厚さは、例えば約3μmである。n型外套層16は、InAlPをベースにしていてよい。層15、16は、n側部分11を形成する。
【0051】
n側部分11上には、活性領域2が形成されている。活性領域2は、多数の、交互に配置されているビーム活性層21とバリア層23とを含んでいる。量子井戸として形成されているビーム活性層21は、例えば、AlInGaPから形成されている。ビーム活性層21の厚さは、例えば約6nmである。バリア層23もAlInGaPから形成されており、同様に、6nmの厚さを有し得る。
【0052】
活性領域2にはp型外套層17が続く。p型外套層17は、約1.7μmの厚さを有している。p型外套層は、例えば、InGaAlPから形成されている。
【0053】
p型外套層17には、コンタクト層18が続く。コンタクト層18の厚さは、例えば約250nmである。層17、18は、p側部分13を形成する。p側部分13および/またはビーム主要面25には、択一的に、ビームの取り出しを改善するための粗面化部が形成されている。択一的または付加的に、このような粗面化部を、成長基板14の、半導体層列10とは反対の側に形成することができる。
【0054】
ビーム主要面25に、半導体層列10に通電するための金属化部5を設けることができる。その他の点では、電気的なコンタクト構造体、例えばボンディングパッド、電流拡張層または導体路は、図面を簡略化するために図示されていない。
【0055】
特に、管22は緩衝層15から出発して、p側部分13内まで、例えばコンタクト層18に接するまで、または、コンタクト層18内まで、連続的に延在する。管22の起源は、例えば、成長基板14での、または、緩衝層15内での妨害箇所にある。すなわち、管22は直に成長基板14の主要面40で始まる、または、主要面40に対して間隔を空けて、半導体層列10内でようやく始まり、特に緩衝層15内で始まる。従って、ビーム活性層21とは異なる材料組成を有する管22が成長する。材料組成が異なるので、管22は、異なるスペクトル領域で発光する。管22を、一次元の構造体として見なすことができる。管22の平均直径は、例えば、最大で100nmまたは50nmまたは25nmである。
【0056】
図2に関連して挙げた、各層に対する厚さは、例えば、最大で2倍または1.5倍になり得る。図示された複数の層が直接的に連続してもよい。択一的に、別の、図示されていない中間層が存在してもよい。
図2では、n側部分11が、p側部分13よりも、成長基板14の近くに位置している。全ての他の実施例においても、p側部分13が、n側部分11よりも、成長基板14の近くに位置していてもよい。半導体層列10の構造は、この場合には、相応に整合されるべきである。
【0057】
図3には、例えば
図2に関連して説明された半導体層列の放射スペクトルが示されている。任意単位(略してa.u.)での強度に対する、単位nmでの波長λが示されている。
【0058】
ビーム活性層21は、黄色−オレンジのスペクトル領域で、第1の波長L1で第1のビームを放射する。第1の波長L1は約590nmである。ビーム活性管22内では、第2の波長L2を有する第2のビームが放射される。第2の波長L2は約650nmである。半導体層列10の二色の放射によって、特に、半導体チップ1によって生成されるビームの演色性が高められる。
【0059】
図3に示された図とは異なって、半導体層列が例えばAlInGaNをベースにしており、第1の波長が例えば約470nmであり、第2の波長が例えば黄色のスペクトル領域にあり、約570nmであってもよい。
【0060】
管22およびビーム活性層21の材料組成を成長条件によって調節することができる。例えば、特に、放射波長にとって重要なインジウム含有量を成長温度によって、および、添加される、インジウムに対する前駆物質の量によって調節することができる。
【0061】
図4には、概略的に、半導体層列10の製造方法のための、構造化された成長基板14が示されている。半導体層列10のエピタキシャル成長の開始時には、成長基板14に妨害箇所3は無い。妨害箇所3は、成長基板14の主要面40を構造化することによって形成される。妨害箇所3は、例えば材料除去、特にエッチングによって形成される。妨害箇所3は、この場合には、成長基板14内の穴または凹部である。
【0062】
同様に、妨害箇所3を、主要面40上の材料析出によって形成することができる。妨害箇所はこの場合には、主要面40での凸部または島状化によって形成される。妨害箇所3は、この場合には、成長基板14とは異なる材料を有している。材料として特に、金属、例えば金、または、半導体材料、例えばInAsが考えられる。
【0063】
製造誤差の範囲内で、妨害箇所3毎に、有利には1つのビーム活性管22が形成される。従って、主要面40での妨害箇所3の密度は、ほぼ、成長が終わった半導体層列10におけるビーム活性管22の密度に相当する。
【0064】
妨害箇所3は、例えば、主要面40の平面図で見て、少なくとも0.25nmまたは1nmまたは5nmおよび/または最大で100nmまたは25nmまたは10nmの平均直径を有している。主要面40に対して垂直な方向での、妨害箇所3の平均延在は、例えば、少なくとも0.25nmまたは1nmまたは3nmまたは5nmおよび/または最大で500nmまたは100nmまたは25nmまたは10nmである。上述した値は、凸部にも、凹部にも当てはまる。妨害箇所3は、自己組織化方式に、例えば薄い材料層を被着し、次に加熱によって島状化することによって形成され得る、または、例えばフォトリソグラフィによってまたは電子線描画によって所期のように規則的にも形成され得る。
【0065】
本願に記載された発明は、実施例に基づく説明に制限されない。
【0066】
むしろ本発明は、新たな特徴、並びに、特に、特許請求の範囲における特徴の各組み合わせを含む、特徴の各組み合わせを含む。これは、これらの特徴またはこれらの組み合わせ自体が、明示的に、特許請求の範囲または実施例に記載されていない場合にも当てはまる。
【0067】
本特許出願は、ドイツ特許出願102013112490.9の優先権を主張し、その開示内容は本願に参照によって組み込まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 オプトエレクトロニクス半導体チップ、 10 半導体層列、 11 n側部分、 13 p側部分、 14 成長基板、 15 緩衝層、 16 n型外套層、 17 p型外套層、 18 コンタクト層、 19 中間層、 2 活性領域、 21 ビーム活性層、 22 ビーム活性管、 23 バリア層、 25 ビーム主要面、 3 妨害箇所源、 40 成長基板の主要面、 5 金属化部、 I 任意単位(a.u.)での強度、 L1 第1の波長を有する第1のビーム、 L2 第2の波長を有する第2のビーム、 λ 単位nmでの波長、 z 成長方向