(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284644
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】自動二輪車のための情報提供装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20180215BHJP
B62J 99/00 20090101ALI20180215BHJP
G08B 5/00 20060101ALI20180215BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B62J99/00 K
B62J99/00 J
G08B5/00 Q
G08B21/00 U
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-538205(P2016-538205)
(86)(22)【出願日】2015年6月12日
(86)【国際出願番号】JP2015066993
(87)【国際公開番号】WO2016017297
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2016年11月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-153291(P2014-153291)
(32)【優先日】2014年7月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】油井 靖
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 武仁
【審査官】
吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−140800(JP,A)
【文献】
特開平08−205306(JP,A)
【文献】
特開2009−023655(JP,A)
【文献】
特開2009−154637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B62J 99/00
G08B 5/00
G08B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車のための情報提供装置であって、
自車が走行している道路の画像を取得するための画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された道路の画像から左車線及び右車線の少なくとも1つを検出し、検出された少なくとも1つの車線の曲率半径又はこれに換算可能な第1の値と、自車から前記少なくとも1つの車線までの横方向距離又はこれに換算可能な第2の値とを検出する、車線検出部と、
前記少なくとも1つの車線における、前記第1の値と前記第2の値とに基づいて、自車軌跡の曲率半径又はこれに換算可能な値を計算する、自車軌跡曲率計算部と、
自車の車速を取得する車速取得部と、
前記自車軌跡の曲率半径又はこれに換算可能な値と前記車速とに基づいて、自車の旋回に関連する物理量を計算する自車物理量計算部と、
前記自車の旋回に関連する物理量に基づいて警告を発生するべきか否かを判断する警告判断部と、
前記警告判断部が警告を発生するべきと判断した場合、警告信号を発生する警告信号発生部と、
を備える、情報提供装置。
【請求項2】
前記自車軌跡曲率計算部は、左車線及び右車線の両方を検出した場合には、左車線及び右車線の両方における前記第1の値及び前記第2の値に基づいて自車軌跡の曲率半径又はこれに換算可能な値を計算し、
左車線及び右車線のいずれか1つの車線を検出した場合には、前記いずれか1つの車線における前記第1の値及び前記第2の値に基づいて自車軌跡の曲率半径又はこれに換算可能な値を計算する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記旋回に関連する物理量は、旋回時における自車の遠心力と重さとの釣り合いの条件から導き出される、請求項1又は2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記旋回に関連する物理量は、自車の傾き角であり、
前記警告判断部は、前記自車の傾き角が車速毎に設定された傾き角閾値を超えた場合に、警告を発生するべきと判断する、請求項3に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記旋回に関連する物理量は、前記自車軌跡の曲率半径の自車軌跡に沿って自車が安全に走行可能である基準を示す安全速度であり、
前記警告判断部は、前記自車の車速が前記安全速度を超えた場合に、警告を発生するべきと判断する、請求項3に記載の情報提供装置。
【請求項6】
自動二輪車のための情報提供装置を制御するプログラムであって、
前記プログラムは、前記情報提供装置に対し、
自車が走行している道路の画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップによって取得された道路の画像から左車線及び右車線の少なくとも1つを検出し、検出された少なくとも1つの車線の曲率半径又はこれに換算可能な第1の値と、自車から前記少なくとも1つの車線までの横方向距離又はこれに換算可能な第2の値とを検出する、車線検出ステップと、
前記少なくとも1つの車線における、前記第1の値と前記第2の値とに基づいて、自車軌跡の曲率半径又はこれに換算可能な値を計算する、自車軌跡曲率計算ステップと、
自車の車速を取得する車速取得ステップと、
前記自車軌跡の曲率半径又はこれに換算可能な値と前記車速とに基づいて、自車の旋回に関連する物理量を計算する自車物理量計算ステップと、
前記自車の旋回に関連する物理量に基づいて警告を発生するべきか否かを判断する警告判断ステップと、
前記警告判断ステップが警告を発生するべきと判断した場合、警告信号を発生する警告信号発生ステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項7】
前記自車軌跡曲率計算ステップは、左車線及び右車線の両方を検出した場合には、左車線及び右車線の両方における前記第1の値及び前記第2の値に基づいて自車軌跡の曲率半径又はこれに換算可能な値を計算し、
左車線及び右車線のいずれか1つの車線を検出した場合には、前記いずれか1つの車線における前記第1の値及び前記第2の値に基づいて自車軌跡の曲率半径又はこれに換算可能な値を計算する、請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記旋回に関連する物理量は、旋回時における自車の遠心力と重さとの釣り合いの条件から導き出される、請求項6又は7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記旋回に関連する物理量は、自車の傾き角であり、
前記警告判断ステップは、前記自車の傾き角が車速毎に設定された傾き角閾値を超えた場合に、警告を発生するべきと判断する、請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記旋回に関連する物理量は、前記自車軌跡の曲率半径の自車軌跡に沿って自車が安全に走行可能である基準を示す安全速度であり、
前記警告判断ステップは、前記自車の車速が前記安全速度を超えた場合に、警告を発生するべきと判断する、請求項8に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のための情報提供装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車において、走行状態と道路状況とに応じて必要な警告をライダーに与える技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、道路側に設置されたDSRCアンテナから送信されてきた道路情報を受信し、当該情報から道路の曲率半径Rを認識し、認識された曲率半径Rと検出された車速Vと重力加速度gとに基づいて、自動二輪車のバンク角θ(傾き角度)を求める技術が開示されている。特許文献1の技術によれば、バンク角θが一定値(10°)以上になったとき、車速Vが大きくなる程、ランプの点滅間隔と警告音声を短くするとともに、警告音声の音量を大きくして、ライダーに注意を喚起する。
【0003】
また、特許文献2には、自車のバンク角を取得し、走行コースに沿って当該バンク角を表示する技術が開示されている。特許文献2の一実施例では、GPSを用いて自車の位置を検出し、ナビゲーションシステムの地図データから現在位置における道路の曲率半径Rを求め、車速Vと曲率半径Rとからバンク角θを取得している。
【0004】
しかし、上記従来技術では、バンク角θを取得する際に、道路側に設置された通信手段やGPSに頼っているため、通信が不能となった場合に対応することができなかった。また、道路側から送られてくる道路情報や、GPS及びナビゲーション情報は、道路の幅方向における自車の位置情報が含まれておらず、正確なバンク角の測定が困難であった。
【0005】
なお、特許文献2(段落[0103])には、画像認識装置により認識された、白線や周囲の建物などでコースまたはポイントを識別して、その識別により座標を特定する別の実施例が記載されている。しかし、特許文献2には、画像認識装置によって認識された自車の位置をどのように用いるかに関しては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−140800号公報
【特許文献2】特開2009−23655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑みなされたもので、外部の通信手段に依存することなく、自車の横方向位置を考慮することによって、通信状況によらず自車軌跡の曲率半径をより正確に求め、これによって旋回時に適切な警告を出すことを可能にした、自動二輪車のための情報提供装置及びプログラムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る情報提供装置は、自車が走行している道路の画像を取得するための画像取得部と、前記画像取得部によって取得された道路の画像から左車線及び右車線の少なくとも1つを検出し、検出された少なくとも1つの車線の曲率半径又はこれに関連する第1の値と、自車から前記少なくとも1つの車線までの横方向距離又はこれに関連する第2の値とを検出する、車線検出部と、前記少なくとも1つの車線における、前記第1の値と前記第2の値とに基づいて、自車軌跡の曲率半径又はこれに関連する値を計算する、自車軌跡曲率計算部と、自車の車速を取得する車速取得部と、前記自車軌跡の曲率半径又はこれに関連する値と前記車速とに基づいて、自車の旋回に関連する物理量を計算する自車物理量計算部と、前記自車の旋回に関連する物理量に基づいて警告を発生するべきか否かを判断する警告判断部と、前記警告判断部が警告を発生するべきと判断した場合、警告信号を発生する警告信号発生部と、を備えて構成したものである。
【0009】
好ましくは、前記自車軌跡曲率計算部は、左車線及び右車線の両方を検出した場合には、左車線及び右車線の両方における前記第1の値及び前記第2の値に基づいて自車軌跡の曲率半径又はこれに関連する値を計算し、左車線及び右車線のいずれか1つの車線を検出した場合には、前記いずれか1つの車線における前記第1の値及び前記第2の値に基づいて自車軌跡の曲率半径又はこれに関連する値を計算する。
【0010】
前記旋回に関連する物理量は、旋回時における自車の遠心力と重さとの釣り合いの条件から導き出される。一例として、前記旋回に関連する物理量は、自車の傾き角であり、この場合、前記警告判断部は、前記自車の傾き角が車速毎に設定された傾き角閾値を超えた場合に、警告を発生するべきと判断する。他の例では、前記旋回に関連する物理量は、前記自車軌跡の曲率半径の自車軌跡に沿って自車が安全に走行可能である基準を示す安全速度であり、この場合、前記警告判断部は、前記自車の車速が前記安全速度を超えた場合に、警告を発生するべきと判断する。
【0011】
本発明の別の態様に係る情報提供装置を制御するプログラムは、該情報提供装置に対し、自車が走行している道路の画像を取得する画像取得ステップと、前記画像取得ステップによって取得された道路の画像から左車線及び右車線の少なくとも1つを検出し、検出された少なくとも1つの車線の曲率半径又はこれに関連する第1の値と、自車から前記少なくとも1つの車線までの横方向距離又はこれに関連する第2の値とを検出する、車線検出ステップと、前記少なくとも1つの車線における、前記第1の値と前記第2の値とに基づいて、自車軌跡の曲率半径又はこれに関連する値を計算する、自車軌跡曲率計算ステップと、自車の車速を取得する車速取得ステップと、前記自車軌跡の曲率半径又はこれに関連する値と前記車速とに基づいて、自車の旋回に関連する物理量を計算する自車物理量計算ステップと、前記自車の旋回に関連する物理量に基づいて警告を発生するべきか否かを判断する警告判断ステップと、前記警告判断ステップが警告を発生するべきと判断した場合、警告信号を発生する警告信号発生ステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、取得された道路の画像から車線を検出し、検出された車線の曲率及び横方向距離に基づいて自車軌跡の曲率半径を求めるので、非常に正確に自車の旋回に関連する物理量を求めることができ、ライダーに対してより適切な警告を出すことができる。また、本発明では、道路側の情報提供設備やGPSに依存することがないため、設備の有無や電波状況に依らず、安定して自車軌跡の曲率半径を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る情報提供装置を装備した自動二輪車の側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る情報提供装置の回路ブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る情報提供装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る情報提供装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、自車軌跡の曲率半径Regoを計算する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る情報提供装置の機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す第2の実施形態に係る情報提供装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る情報提供装置によって撮像された、自動二輪車の前方画像の一例である。
【
図9】
図9は、自動二輪車の傾き角θを算出するための説明図である。
【
図10】
図10は、車軌跡の曲率半径Regoを計算する際の各種パラメータを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明の実施形態に係る情報提供装置1を装備した自動二輪車26が示されている。情報提供装置1は、後述するように撮像機能を備えており、自動二輪車26の前方画像を撮像する上で適した位置に取り付けられている。
【0015】
図2に示されるように、情報提供装置1は、CPUユニット2と、撮影レンズ4と、撮影レンズ4により結像された光を検出して画像を形成する撮像素子5と、情報提供装置1の外部と無線又は有線でデータのやりとりを行うデータインターフェース部7と、視覚的な警告メッセージを表示する表示部8と、音声で警告メッセージを出力する音声出力部9と、を備えている。これらの構成要素は、双方向に通信可能にシステムバス3に接続されている。
【0016】
CPUユニット2は、CPU2a、RAM2b及びROM2cを備えている。これらの構成要素は、内部バス2dを介して双方向に通信可能に接続されている。内部バス2dは、システムバス3に接続されている。CPU2aは、ROM2cに予め格納されている情報提供プログラムに基づいて、本発明の実施形態に係る情報提供処理を実行する。なお、ROM2cは、書き換え可能なROMであってもよく、インターネットやコンピュータからダウンロートされたプログラムやデータを格納するようにしてもよい。
【0017】
CPU2aは、内部バス2d及びシステムバス3を介して他の構成要素にコマンドを送信することによって、当該他の構成要素を制御する。また、当該他の構成要素からのデータ、例えば撮像素子5から送信された画像データは、システムバス3及び内部バス2dを介してRAM2bに転送される。CPU2aは、RAM2bに記憶された画像データに対して、各種の演算、認識処理を実行する。
(第1の実施形態)
図3には、第1の実施形態に係る情報提供装置1の機能ブロック図が示されている。本実施形態の情報提供装置1は、自動二輪車26が走行している道路の画像を取得するための画像取得部10と、画像取得部10によって取得された道路の画像から車線を検出して該車線に関する情報を抽出する車線検出部12と、車線検出部12によって検出された車線とその情報から、自動二輪車26(自車)の軌跡の曲率Regoを計算する自車軌跡曲率計算部14と、自動二輪車26の車速Vを取得する車速取得部16と、自車軌跡の曲率Regoとに基づいて、自動二輪車26の傾き角θを計算する傾き角計算部18と、車速V毎に傾き角の閾値θthを記憶する閾値メモリ20と、自動二輪車26の傾き角θと閾値θthとを比較して警告を発生するか否かを判断する警告判断部22と、警告判断部22が警告を発生するべきと判断した場合、警告信号を発生する警告信号発生部24と、を備えている。
【0018】
画像取得部10は、情報提供装置1に備えられた、
図2に示す撮影レンズ4及び撮像素子5を用いて実現することができる。勿論、この例に限らず、画像取得部10は、情報提供装置1から独立したカメラ(例えば、自動二輪車26に取り付けられた携帯型端末のカメラ)から無線或いは有線で
図2のデータインターフェース部7を介して情報提供装置1に伝達されてきた画像データを取得してもよい。
【0019】
車線検出部12は、ROM2cに格納されている画像解析プログラムをCPU2aが実行することによって実現することができる。画像解析プログラムは、当該技術分野で知られているプログラムを用いることができる。
【0020】
車速検出部16は、自動二輪車26に取り付けられた車速センサ(図示せず)から出力された車速パルス信号を、
図2のデータインターフェース部7を介して受信し、受信したパルス信号をCPU2aがカウントすることによって、実現することができる。
【0021】
閾値メモリ20は、ROM2cの所定の記憶領域として実現することができる。
自車軌跡曲率計算部14、傾き角計算部18及び警告判断部22は、ROM2cに格納されているプログラムをCPU2aが実行することによって実現することができる。
【0022】
警告信号発生部24は、
図2の表示部8及び音声出力部9に警告を発生させるための警告信号(コマンド)を発生するCPU2aとして実現することができる。
次に、本発明の実施形態に係る情報提供の処理の流れを
図4のフローチャートを用いて説明する。この処理の流れは、CPU2aがROM2cに格納されている本発明の実施形態に係る情報提供プログラムを実行することによって行われる。
【0023】
図4に示すように、画像取得部10が、自車の前方画像を取得する(ステップ100)。この前方画像の一例を
図8に示す。
図8の画像は、自車が右カーブを曲がっているときの画像であり、当該画像において、自車より右側の車線(右車線)と、左側の車線(左車線)とが、明確なラインとして周囲から識別可能であることが分かる。
【0024】
次に、車線検出部12が、取得された画像から車線を検出する処理を実行する(ステップ102)。車線が検出された場合(ステップ103の肯定判定)、自車軌跡曲率計算部14が、検出された車線から自車軌跡の曲率半径Regoを計算する処理を実行する(ステップ104)。ステップ104の詳細な処理に関しては、
図5を用いて後述する。
【0025】
ステップ102で車線が検出されなかった場合(ステップ103の否定判定)、自車の前方画像を取得するステップ100に戻り、新たな取得した画像に対して車線を検出する処理を実行する(ステップ102)。
【0026】
次に、車速取得部16が自車の車速を取得し(ステップ106)、傾き角計算部18が車速Vと曲率半径Regoとに基づいて自車の傾き角θを計算する(ステップ108)。傾き角θは、次式によって求められる。
【0027】
θ=tan
-1(V
2/(g・Rego)) (1)
ここで、gは重力加速度である。
なお、(1)式は、
図9に示すように、自車の質量をMとすると、その重さMgの正接(Mg・tanθ)が旋回時に発生する遠心力MV
2/Regoと釣り合う条件(Mg・tanθ=MV
2/Rego)から導出される。
【0028】
次に、警告判断部22が閾値メモリ20から車速Vに応じた閾値θth(V)を読み込み、ステップ108で計算された傾き角θが閾値θthを超えたか否かを判定する(ステップ112)。この閾値θthは、車速Vで安全な旋回を可能とする限界の傾き角として設定されたものであり、例えば、10度@20km/時、15度@50km/時、20度@80km/時である。
【0029】
傾き角θが閾値θthを超えた場合(ステップ112の肯定判定)、警告信号発生部24が警告信号を出力する(ステップ120)。出力された警告信号は、
図2の表示部8及び/又は音声出力部9に伝達され、視覚的表示及び/又は音声が出力される。これによってライダーに注意を喚起する。警告を受けたライダーは、減速することによって安全な旋回走行を行うことができる。ステップ100以降の処理は、随時継続される。
【0030】
一方、傾き角θが閾値θthを超えていない場合(ステップ112の否定判定)、警告信号を発生させることなく、ステップ100以降の処理を繰り返す。
ステップ104の自車軌跡の曲率半径Regoを計算するためのサブルーチン処理の流れを、
図10を参照しつつ
図5のフローチャートを用いて説明する。なお、
図10では、自車30が左車線32及び右車線33を有する道路28上を車速Vで矢印方向に走行している状態が示されている。
【0031】
図5に示されるように、自車軌跡曲率計算部14は、画像取得部10によって取得された画像から車線検出部12によって「左車線32」のみが検出されたかを判定する(ステップ200)。「左車線32」のみが検出された場合(ステップ200肯定判定)、検出された左車線32の画像から、左車線32の曲率半径Rlと、左車線32の自車30の中心からの横方向距離Llを検出する(ステップ202)。次に、左車線32の曲率半径Rlと横方向距離Llとから、次式に従って自車30の軌跡31における曲率半径Regoを計算する(ステップ204)。
【0032】
Rego=Rl+Ll(左旋回時) (2a)
Rego=Rl−Ll(右旋回時) (2b)
図10の例は、右旋回時なので、自車軌跡31の曲率半径Regoが、左車線32の曲率半径Rlから横方向距離Llを引いた値((2a)式)となることは、図から容易に読み取ることができる。一方、左旋回時には、自車軌跡31が左車線32よりも大きな半径の弧を描いて自車30が旋回するため、自車軌跡31の曲率半径Regoが、左車線32の曲率半径Rlと横方向距離Llとを足し合わせた値((2b)式)となることは、明らかである。自車軌跡31の曲率半径Regoが計算されると、本サブルーチンをリターンする。
【0033】
左車線32のみが検出されていない場合(ステップ200の否定判定)、自車軌跡曲率計算部14は、画像取得部10によって取得された画像から車線検出部12によって「右車線33」のみが検出されたかを判定する(ステップ206)。「右車線33」のみが検出された場合(ステップ206肯定判定)、検出された右車線33の画像から、右車線33の曲率半径Rrと、右車線33の自車30の中心からの横方向距離Lrを検出する(ステップ208)。次に、右車線33の曲率半径Rrと横方向距離Lrとから、次式に従って自車30の軌跡31における曲率半径Regoを計算する(ステップ210)。
【0034】
Rego=Rr−Lr(左旋回時) (3a)
Rego=Rr+Lr(右旋回時) (3b)
図10の例は、右旋回時であり、自車軌跡31が右車線33よりも大きな半径の弧を描いて自車30が旋回するため、自車軌跡31の曲率半径Regoが、右車線33の曲率半径Rrと横方向距離Lrとを足し合わせた値((3a)式)となることは、図から容易に読み取ることができる。一方、左旋回時には、自車軌跡31の曲率半径Regoが、右車線33の曲率半径Rrから横方向距離Lrを引いた値((3b)式)となることは、明らかである。自車軌跡31の曲率半径Regoが計算されると、本サブルーチンをリターンする。
【0035】
ステップ206で右車線33のみが検出されていないと判定された場合は、左車線32及び右車線33の両方が検出された場合に相当している。この場合、左右車線(32、33)の曲率半径(Rl,Rr)と、左右車線(32、33)の自車30の中心からの横方向距離(Ll、Lr)とを検出する(ステップ212)。次に、左右車線の曲率半径と横方向距離とから自車軌跡31の曲率半径Regoを次式に従って計算する(ステップ214)。
【0036】
Rego=(Ll・Rr+Lr・Lr)/(Ll+Lr) (4)
自車軌跡31の曲率半径Regoが計算されると、本サブルーチンをリターンし、
図4のメインルーチンに戻る。
【0037】
以上のように本実施形態によれば、取得された道路の画像から車線を検出し、検出された車線の曲率や横方向距離に基づいて自車軌跡の曲率半径を求めるので、非常に正確に傾き角θを求めることができ、ライダーに対してより適切な警告を出すことができる。また、本実施形態では、道路側の情報提供設備やGPSに依存することがないため、設備の有無や電波状況に依らず、安定して自車の正確な位置を検出することができる。
【0038】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、
図4のフローチャートにおいて傾き角θが閾値を超えた場合に、警告を発していたが、警告を受けたライダーが取るべき措置は、先ず車速を低減することである。従って、傾き角θではなく、車速Vを基準として警告を出すのがより好ましいと考えられる。
【0039】
第2の実施形態の機能ブロック図を
図6に示す。なお、
図6では、
図3と同様の構成要件については同じ符号を用いてその詳細な説明を省略する。
図6に示されるように、第2の実施形態では、傾き角計算部18の代わりに、安全速度計算部21が設けられている。安全速度計算部21は、自車軌跡曲率計算部14により計算された、自車軌跡31の曲率半径Regoと、閾値メモリ20から得られた現在の車速Vでの傾き角閾値θthとから、次式に従って安全速度Vsを計算する。
【0040】
Vs=(Rego・g・tanθth)
-1/2 (5)
(5)式は、傾き角θthのときの車速Vを安全速度Vsとして、(1)式をVについて解くことによって求めることができる。安全速度Vsは、自車軌跡の曲率半径の自車軌跡に沿って自車が安全に走行可能である基準を示す。
【0041】
次に、第2の実施形態の処理の流れを
図7のフローチャートを用いて説明する。なお、
図7のフローチャートでは、
図4のフローチャートと同様のステップについては同じ番号を付与し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図7に示されるように、
図4の同様のステップ100から106が実行される。
図4では、傾き角θを計算するステップ108が実行されたが、
図7では、ステップ106の次に、ステップ108は実行されず、傾き角閾値θthの読み込みステップ110が実行される。次に、
図7では、安全速度計算部21が、ステップ104で計算された自車軌跡31の曲率半径Regoと、現在の車速Vでの傾き角閾値θthとから、上記(5)式に従って安全速度Vsを計算する(ステップ114)。
【0043】
次に、
図6の警告判断部22が、車速Vが安全速度Vsを超えたか否かを判定する(ステップ116)。車速Vが安全速度Vsを超えた場合(ステップ116肯定判定)、警告信号発生部24が警告信号を出力する(ステップ120)。出力された警告信号は、
図2の表示部8及び/又は音声出力部9に伝達され、視覚的表示及び/又は音声が出力される。これによってライダーに注意を喚起する。警告を受けたライダーは、減速することによって安全な旋回走行を行うことができる。ステップ100以降の処理は、随時継続される。
【0044】
一方、車速Vが安全速度Vsを超えていない場合(ステップ116否定判定)、警告信号発生部24が警告信号を発生させることなく、ステップ100以降の処理を繰り返す。
以上が本願発明の各実施形態であるが、本発明は上記例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、任意好適に変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態では、左右車線の曲率半径Rl、Rrを導いていたが、車線の曲率を表す限り、他の値、例えば、曲率そのものを用いてもよい。自車軌跡の曲率半径についても同様である。また、上記実施形態では、自車から左右車線までの距離Ll、Lrを導いていたが、自車から車線までの距離を表す限り、他の値を用いることができる。勿論、用いる変数の種類に応じて上記各式の表現は適宜変更される。
【0046】
また、上記実施形態では、旋回時に安全に走行しているか否かを判定するため、自車の傾き角θや自車の安全速度Vsを用いていたが、旋回時における自車の遠心力と重さとの釣り合いの条件から導き出すことができる限り、他の物理量を用いることもできる。すなわち、(1)式や(5)式を変形して得られる物理量であれば、任意の量を用いることができる。
【0047】
さらに、各種フローチャートの流れに関しても任意好適に変更可能である。例えば
図5の流れでは、左車線のみ検出されたことを最初に判断しているが、最初に右車線のみ検出されることを判断してもよいし、最初に左右車線の両方が検出されたことを判断し、両方検出でない場合は、左右のいずれの車線が検出されたかを判断してもよい。