特許第6284647号(P6284647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6284647水銀分配装置用の材料の結合体、及び該材料の結合体を含む装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284647
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】水銀分配装置用の材料の結合体、及び該材料の結合体を含む装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 9/395 20060101AFI20180215BHJP
   C22C 30/02 20060101ALI20180215BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20180215BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20180215BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20180215BHJP
   C22C 16/00 20060101ALI20180215BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20180215BHJP
【FI】
   H01J9/395 D
   C22C30/02
   B22F1/00 L
   B22F1/00 J
   B22F1/00 R
   C22C1/04 A
   C22C1/04 E
   B22F7/04 G
   C22C16/00
   B22F3/02 P
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-547247(P2016-547247)
(86)(22)【出願日】2014年9月15日
(65)【公表番号】特表2017-500719(P2017-500719A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】IB2014064523
(87)【国際公開番号】WO2015052604
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年9月6日
(31)【優先権主張番号】MI2013A001658
(32)【優先日】2013年10月8日
(33)【優先権主張国】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511020829
【氏名又は名称】サエス・ゲッターズ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレッシオ・コラッツァ
(72)【発明者】
【氏名】ディエゴ・ディ・ジャンピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】ジアンニ・サンテラ
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−262926(JP,A)
【文献】 特表平10−504132(JP,A)
【文献】 特公昭49−005659(JP,B1)
【文献】 特表平10−507311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/395
H01J 29/94
H01J 61/24
H01J 61/28
B22F 1/00 − 8/00
C22C 1/04 − 1/05
C22C 5/00 −25/00
C22C 27/00 −28/00
C22C 30/00 −30/06
C22C 33/02
C22C 35/00 −45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−水銀と、チタン、ジルコニウム、及びそれらの混合物から選択された第2金属とを含む水銀分配粉末化合物A、並びに
−銅及びスズを含む、合金または金属間粉末化合物Bであって、銅は前記化合物Bの重量に対して35〜90%重量百分率の量で存在する、合金または金属間粉末化合物B
からなる材料の水銀分配結合体であって、
前記材料の水銀分配結合体は、更に、組成物の全重量に対して0.03%〜0.48%の酸素量を含むことを特徴とする、材料の水銀分配結合体。
【請求項2】
前記合金または金属間化合物Bが、少なくとも、遷移金属の鉄、ニッケル、マンガン、及び亜鉛から選択された第三金属を更に含み、前記遷移金属が化合物Bの全重量の1%以下の量で存在する、請求項1に記載の材料の水銀分配結合体。
【請求項3】
前記水銀分配化合物Aが、式TiZrHgに対応する一以上の金属間材料を含む化合物から選択される、請求項1又は2に記載の材料の水銀分配結合体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の水銀分配組成物を含む水銀分配装置。
【請求項5】
成分Bが金属支持の被覆の形態で存在し、成分Aが圧延によって成分Bに付着した粉末として存在する、請求項4に記載の水銀分配装置。
【請求項6】
少なくともゲッター材料Cが加えられた、請求項4又は5に記載の水銀分配装置。
【請求項7】
前記水銀分配組成物は、ストリップの形状を有する支持材料に付着する、請求項4から6のいずれか一項に記載の水銀分配装置。
【請求項8】
材料A、B、及びCが一緒に混合され、前記ストリップの一面または両面上に圧延されている、請求項7に記載の水銀分配装置。
【請求項9】
材料A及びBは前記ストリップの一表面上に配され、材料Cは材料A及びBに対して反対表面上に配される、請求項7に記載の水銀分配装置。
【請求項10】
前記材料の水銀分配結合体は、組成物の全重量に対して0.06%〜0.39%の酸素量を含む、請求項1に記載の材料の水銀分配結合体。
【請求項11】
前記水銀分配化合物Aが式ZrHg及びTiHgから選択される、請求項3に記載の材料の水銀分配結合体。
【請求項12】
前記支持材料はニッケルメッキされた鋼からなる、請求項7に記載の水銀分配装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水銀分配装置の生産用の材料の結合体、及びそのように生産された水銀分配装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
例えば高圧水銀放電ランプ、様々な英数字ディスプレイ、UVランプ、及び、特に蛍光ランプ等の、照明装置中で少量の水銀を使用することが周知技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの装置内の水銀の精確かつ制御された供与量(dosage)は装置の品質にとって、そして何よりも環境上の理由から、非常に重要である。実際、この元素は毒性が高いので、それを含む装置の耐用期間後の廃棄の際、または装置が偶然破壊された場合に、生態学的性質の深刻な問題を暗示する。これらの生態学的性質の問題によって、管の機能性と適合して、水銀の使用量を可能な限り少量にすることが課される。これらの考慮は最近、立法球(legislative sphere)においても含まれ、近年の国際規制の傾向は装置へと導入できる水銀量の上限を確立することである。例えば、標準的な蛍光ランプについては、欧州RoHS指令によってランプあたり合計量が数ミリグラム以下のHgを使用することが規定された:通常寿命のリニア3バンド蛍光体で管径9mm以上と長寿命(25000時間以上)の3バンド蛍光体では3mg未満;通常寿命のリニア3バンド蛍光体で管径17mm以上では3.5mg未満;長寿命(25000時間以上)のリニア3バンド蛍光体では5mg未満。
【0004】
液体水銀供与の古い方法は、まず、室温でも高い水銀の蒸気圧に起因する管生産用プラント内での水銀の保管及び取り扱いに関する問題だけでなく、マイクロリットルの少量のオーダーで水銀の体積を精確かつ再現性良く供与する困難性に関する問題も引き起こした。
【0005】
これらの欠点によって、自由形態の液体水銀の使用を代替する様々な技術が発達した。
【0006】
通常はガラスからなり、場合によっては金属でもあるカプセル内に収容された液体水銀の使用がいくつかの先行技術文献に開示され、例えばそれぞれ、US4823047とUS4278908である。ランプ管を閉じた後、その容器を破壊する熱処理によってランプ内に水銀が放出される。これらの方法は一般にいくつかの欠点がある。第一に、カプセルの生産と、特にカプセルが小さな管内に導入されなければならない場合、管内部へのカプセルの取り付けが複雑であり得る。第二に、特にカプセルがガラスからなる場合、カプセルの破壊は管の品質を脅かし得る材料の小片を生みだし得る。更に、これらのシステムは液体水銀を採用する欠点を未だに有し、従って、数ミリグラムの水銀を精確かつ再現性良く供与することの問題を完全には解決していない。
【0007】
これらの問題は本願出願人の米国特許第3657589号によって解決された。この文献は一般式TiZrHgを有し、x及びyは0〜13で変化してよく、その合計(x+y)は3〜13で変化してよく、zは1または2でよい、水銀の金属間化合物を使用することを開示している。
【0008】
これらの化合物は具体的な化合物に応じて変動可能な水銀放出開始温度を有し、しかしそれらは全て、大気下及び真空容積下の両方で約450℃まで安定であり、従って、水銀を失う危険性なく、稼働中に水銀分配装置が約400℃の温度に達し得る照明装置組み立て用の稼働と適合する結果となる。管を閉じた後、通常、材料を900℃で約30秒間加熱して実行される活性化工程で水銀が上述の化合物から放出される。この加熱は、Hg分配化合物に基づいて、レーザー照射、またはディスペンサ装置の誘導加熱によって達成されてよい。TiHg化合物の使用は、リング形状の容器内の圧縮粉末の形態で、カプセル(pill)内の圧縮粉末の形態で、または冷延(cold rolling)によって得られた粉末被覆された金属ストリップの形態で通常実現される。
【0009】
これらの材料は従来技術に対して様々な利点を提供する。上述の通り、それらは約350〜400℃の温度に達し得る管の生産サイクル中の水銀の蒸発の危険性を回避する。更に、引用したUS3657589で記述した通り、管の作動に干渉するであろうCO、CO、O、H及びHO等のガスの化学吸着の目的で水銀分配化合物にゲッター材料を簡単に加えることができ;このゲッターは水銀の放出用と同一の熱処理の間に活性化される。最終的に、放出された水銀量は簡単に制御及び再現することができる。
【0010】
それらは化学的−物理的特性が優れており、使用が非常に簡単であるにもかかわらず、これらの材料は、含まれた水銀が活性化処理中に完全には放出されないという欠点がある。管のライフサイクル中に消費される一定量のフリーな水銀を管が必要とするという事実と共に、この特性によって、理論的に必要とされる水銀量の約倍の水銀量を装置内に導入することが必要となる。
【0011】
これらの問題を解決するために、水銀の放出を援助するためにTiHgまたはZrHg化合物へのNiまたはCu粉末の添加が研究された。カプセルを採用する方法では、活性化プロセスが精確に制御されない場合、水銀が激しく爆発して管の一部に損傷を与え得り;さらに、容器の生産は、小さな金属部品の溶接を必要とするので、非常に複雑であるので、この解決法は完全に満足できるものではない。
【0012】
本願出願人名義のEP0669639は、水銀と、チタン、ジルコニウム、及びそれらの混合物から選択された第二金属とを含む水銀分配金属間化合物Aと、スズ、インジウム、銀、またはそれらの結合体、及び場合によっては遷移元素から選択された第三金属を含む合金または金属間銅系化合物Bであって、遷移金属が成分Bの全重量の10%以下の量で存在するBを開示している。
【0013】
上述の組成物A+Bの中で、重量で3%〜63%の範囲で銅を含有するSn−Cuを含む組成物が、準備が簡単であり、機械的特性が良好であるので特に好ましく、とりわけ、非化学量論の化合物CuSnに対応する組成物が好ましい。
【0014】
高収率Hg分配組成物と通称される、EP0669639で開示されたA+B組成物は、750〜900℃の比較的低温であっても効果的なHg分配を得る可能性によって特徴づけられる。特にそれらの組成物は、採用される水銀の合計量を低減可能にするために、部分的な酸化後であっても活性化ステップ中に60%を超える水銀量を放出することができる。これらの組成物の欠点は、金属容器若しくは支持への粉末混合物の付着の問題と、後続のランプ内に解放された粒子の存在を伴う材料の分離及び剥離(flake−off)の可能性、並びに放出された水銀供与の減少の問題とに関連する。別の欠点は、例えば高温垂直ラインに実行されるランプ生産でのように450℃以上の温度で特徴づけられるステップを有する製造プロセスでEP0669639組成物から部分的な早期の水銀損失が起こり得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る組成物の重要な利点は、従来知られていた化合物の付着よりも、金属ホルダまたは支持上でのこの新規な水銀放出粉末混合物の付着の方が優れているという事実に関連し、粉末の損失または支持からの分離の危険性を回避できる。この特徴によって、より信頼性の高い取り扱いが可能となり、かつ、ランプ内の欠陥または放出された水銀の減少を引き起こし得る、粒子損失または材料剥離の可能性の問題なく、配分装置の活性化が可能となる。第二の技術的利点は、活性化温度範囲は同等であるという事実にもかかわらず、高温ランプ生産プロセス中に達成される可能性のある450℃〜550℃での早期の水銀損失がEP0669639の組成物に対して著しく低下することである。
【0016】
従って、本発明の目的は、従来技術の1以上の欠点を解消することができる、照明装置中の改善した水銀配分用の材料の結合体、特に、750℃超の温度でのみの実際的なHg放出と、周知の冶金技術で簡単に生産できる機械的に安定なディスペンサ構造とを可能にする結合体を提供することである。
【0017】
本発明によると、これら及び他の目的は、
−水銀と、チタン、ジルコニウム、及びそれらの混合物から選択された第二金属とを含む水銀分配化合物A、並びに
−銅とスズを含む合金または金属間化合物Bであって、銅が化合物Bの重量に対して35%〜90%の重量百分率の量で存在するB
からなる材料の水銀分配結合体であって、
前記材料の水銀分配結合体は更に、組成物A+Bの全重量に対して0.03%〜0.48%の、好ましくは0.06%〜0.39% wt/wtの量の酸素を含むことを特徴とする、材料の水銀分配結合体を用いることで達成される。上記酸素量はA+B材料結合体中の平均O量に言及し、例えば、適量のA+B混合物(少なくとも50mg)についての自動ガス分析装置によって測定できる。
【0018】
合金または金属間化合物Bは、任意で、遷移元素、特に、鉄、ニッケル、マンガン、及び亜鉛から選択された第三金属を更に含むことができ、遷移金属は化合物Bの全重量の1%以下の量で存在する。好ましい実施形態では、遷移金属の量は化合物Bの0.5重量%に対応する量を超えない。別の実施形態では、合金または金属間化合物B中の亜鉛またはマンガンの量は化合物Bの0.3重量%を、または好ましい実施形態では化合物Bの0.15重量%を超えない。
【0019】
本発明の水銀分配装置は上記材料A及びBの結合体を含み、任意でゲッター材料Cを更に含むことができ、両者は材料A及びBと一緒に混合されるか、別の層に存在する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の更なる目的及び利点は、いくつかの非限定的な実施形態を参照しつつ、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【0021】
以降水銀ディスペンサとも規定される本発明に係る結合体の成分Aは、更なる詳細のために参照される引用された米国特許第3657589号に開示されたように、式TiZrHgに対応する一以上の金属間材料を含む化合物である。上記式に対応する材料の中で、ZrHgと、特にTiHgが好ましい。
【0022】
本発明に係る結合体の成分Bは成分Aからの水銀の放出を援助する機能を有し、以降、プロモータとも規定される。この成分は、銅及びスズを含む合金または金属間化合物であって、銅は該成分Bの重量に対して35重量%〜90重量%の量で存在する。成分Bとして、遷移金属から選択された1以上の元素を成分Bの全重量の1%以下の量で加えることによって前述のものから得られた3以上の金属の合金を使用することも可能である。好ましくは、遷移金属は、鉄、ニッケル、マンガン、及び亜鉛から選択される。好ましくは、合金または金属間化合物B中の遷移金属の量は、成分Bの0.5重量%に対応する量を超えず、より好ましい実施形態では亜鉛又はマンガンの量は成分Bの合計量の0.3重量%未満であり、または、より好ましくは、それらは0.15%を超えない。
【0023】
本発明に係る結合体の成分A及びBの重量比は広範囲内で変化し得る。しかし、重量比は一般的に10:1〜1:10に含まれ、好ましくは7:1〜1:5である。
【0024】
本発明の結合体の成分A及びBが250μm未満、好ましくは1〜125μmの粒径を有する微細粉末の形態である場合に最良の結果が得られ、より一般的な観点で、採用された粒子の少なくとも95%が上記制限に係る粒度の特徴を有することが意図される。
【0025】
本発明は、その第二の態様で、上述のA及びB材料の結合体を用いる水銀分配装置に関連する。
【0026】
そのために水銀ディスペンサが意図された照明装置のいくつかの種類は、正しい動作のために、CO、CO、H、O、または水蒸気などのガスの痕跡を除去するゲッター材料Cの存在を更に必要とする:例えば、生産プロセス後の蛍光ランプは充填ガス中に無視できない不純物レベルを有する。これらの用途のために、引用された米国特許第3657589号に記述された方法に従って、ゲッターが同一の水銀分配装置によって有利に導入され得る。
【0027】
ゲッター材料の例は、とりわけ、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブ、バナジウム、及びそれらの混合物等の金属、またはZr 86%−Al 14%の重量百分率組成を有する合金等の、ニッケル、鉄、アルミニウム等の他の金属との上記金属の合金、または金属間化合物ZrFe及びZrNiを含む。ゲッターは、それによって管内で水銀が放出されるのと同一の熱処理中に活性化される。
【0028】
ゲッター材料Cは様々な物理的形態で存在してよいが、250μm未満の、好ましくは1〜125μmの粒径を有する微細粉末の形態で採用されるのが好ましい。
【0029】
A及びB材料の全重量とゲッター材料Cの全重量との比は、一般に、およそ10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:2でよい。
【0030】
第一の可能な実施形態において、本発明の装置は、単に、生産の簡単のために一般にはカップ形状又はリング形状を有する金属支持または容器上に圧縮されたA及びB(そして任意でC)材料の粉末混合物の層からなってよい。平坦な金属表面に基づくもの等の、粉末ホルダとして働く支持は特に有利である;そのような金属支持は本技術分野で知られており、蛍光ランプ内に水銀源を組み込む有利な手段を表す。それらは例えば本願出願人名義でWO97/019461に、そしてUS5825127に記述されており、それらの教示は参照により本願に取り込まれる。
【0031】
支持された材料の場合、装置はストリップ形状で作られてよく、好ましくはニッケルメッキされた鋼からなり、その上に冷間圧縮(圧延)によってA及びB(そして任意でC)材料が付着される。この場合、ゲッター材料Cの存在が必要とされる場合には必ず、材料A、B、及びCは一緒に混合されてストリップの一面又は両面上に延ばされてよいが、好ましい実施形態において、材料A及びBはストリップの一表面上に配置され、材料Cは反対表面上に配置される。
【0032】
本発明に係る装置の第二の可能な実施形態において、分配装置は、A及びB(そして場合によってはC)材料を保持する金属ストリップを曲げ、ストリップの重なった先端を溶接することで得られたリング状の構成を有する。ストリップにわたってA及びB材料混合物は堆積され、トラック(track)に圧縮され、場合によっては、ゲッター材料の別のトラックが存在し得る。トラックの数及び配置、並びに支持を閉じるための手段は、本発明の範囲から逸脱せずに異なってよい。
【0033】
支持を生産するための好ましい方法の一つは冷延技術、つまり、基板上に粉末状態で材料のトラックを堆積し、その後に圧縮ロール上を通すこと、によってトラックを堆積することである。この支持は、その後、所望の長さに切断され、その最終形状が与えられる。基板は典型的には金属材料からなる:例えば適切な材料は、ニッケルメッキされた鉄、ニッケル−鉄合金、ステンレス鋼である。トラックの高さについては、0.5mm未満であることが有利であり、高さの下限は粒子の単一層の高さによって与えられる。
【0034】
本発明に係る方法を実行するための水銀分配組成物を備える装置についての別の有利な変形例は、金属ストリップをおよそ中心で折り曲げることでV形状に形成された金属ストリップからなる;金属ストリップ上には本発明に係る水銀放出粉末の少なくとも一つのトラックが存在する。別の変形例では、V形状の支持は水銀放出粉末のトラック及びゲッター合金のトラックをもてなす(host)ことができる。
【0035】
この方法は、好ましくは上述の装置のうちの一つによって、上述の材料の水銀分配結合体を管の内部に導入するステップと、その後、水銀を放出するための結合体加熱ステップとを含む。加熱ステップは、例えば、放射によって、高周波誘導加熱によって、または支持が高電気抵抗を有する材料からなる場合には支持に電流を流すことによって、等の任意の適切な手段で実行され得る。加熱は水銀分配結合体から水銀の放出を起こす温度で適用され、700℃〜900℃で約10秒〜1分の時間に含まれる。
【0036】
本発明は以下の実施例によって更に描写される。これらの非限定的な実施例は当業者に本発明の実施方法を教示し、本発明を実行する最良の形態を示すことが意図された、いくつかの実施形態を描写する。
【0037】
[実施例]
重量で54%の水銀を含むTiHg合金粉末の55グラムと、重量で85%の銅及び重量で15%のSnを含むCuSn合金粉末の45グラムとを混合することで本発明に係る水銀分配混合物M1の100gが準備される。この粉末混合物は0.333wt%の平均O量を有する。
【0038】
混合物M1と同じ組成を有するが、0.076%の平均酸素量を有する水銀分配混合物M2の100グラムが本発明に従って準備される。
【0039】
また、重量で54%の水銀を含むTiHg合金粉末の55グラムと、重量で41%の銅及び重量で59%のスズを含むCuSn合金粉末の45グラムとを混合することで本発明に係る水銀分配混合物M3の100gが準備される。この粉末混合物は0.37wt%の平均O量を有する。
【0040】
比較例として、M1及びM2の組成と同一であるが、平均酸素量が0.027wt%及び0.519wt%である水銀分配混合物C1及びC2の100gも準備される。
【0041】
5つの混合物を用いて、冷延によってニッケルメッキされた鉄ストリップ上に各粉末混合物を適用する、粉末被覆されたストリップの試料を準備する。
【0042】
5つの異なる被覆されたストリップは、その後、合計時間30秒間の850℃でのHg収率の観点と、金属基板上での被覆の付着の観点から評価される。Hg収率を測定するために、各組成について被覆されたストリップの3試料が試験される。試料は、10秒のランプアップ時間後に20秒間850℃で真空下(1×10−3mbar未満の圧力)のガラスバルブ内でRF加熱される:適用された加熱プロセス後の試料重量の差の測定は水銀の放出を示し、当初のHg量を知ることでHg収率が決定される。
【0043】
各組成についての他の4試料について金属ストリップ上での粉末混合物の付着が確認される:ストリップ試料は15mmの半径を有する金属ロッドの周りに曲げられる。曲げた後に被覆上に剥離(flake−off)、欠陥(defect)、またはクラックが観測されない場合、粉末の付着は優秀と判断され、剥離(peel−off)なく、試料の限定された領域内(合計被覆表面の7%未満)でほんの小さなクラックが生じる場合、付着は良好であり、粉末の剥離が生じるか、被覆のクラックが限定された領域内に局所化されていない場合、付着は不良である。
【0044】
850℃での活性化中に得られた平均水銀収率のデータと付着試験の結果を以下の表に報告する。
【0045】
【表1】
【0046】
低Hg収率を有するC2を例外として、試料は非常に良好な収率を示す。他方、C1は被覆の剥離問題を示し、それによって、本発明に従って作られた試料のみが高Hg収率及び良好/優秀な粉末付着の両方を示す。