【実施例】
【0084】
実施例1:用量反応曲線の確立
用量反応曲線は、標準アゴニスト分子:LPS、PGN、PAM3(cys)(合成リポペプチドPであるPAM
3Cys−Ser−(Lys)4三塩酸塩)、LTA、ザイモサンおよびMDPを用いて作成する。Raw−Blue(商標)およびHEK−Blue(商標)hTLR2、hTLR4、hNOD2およびNull系はアゴニストの濃度を増加させながらインキュベートし、細胞反応はSEAP活性を定量することにより測定する。TNF−αは、細胞活性化の陽性対照として使用する。
− Raw−Blue(商標)系(
図1):細胞は、基質中およびグルコースポリマー誘導体(PGN、リポペプチド、LPS、ザイモサン、LTA)中に存在する可能性がある主要な炎症性分子に反応する;これらの細胞は、詳細にはPGNに対しては強度の反応性を有するが、その解重合生成物には反応しない、
− HEK−Blue(商標)hTLR2系(
図2):PGNおよびPAM3(cys)リポペプチドに対する強度の反応性;細胞は他のTLR2リガンド(LTA、ザイモサン)に対してはより弱度に反応し、LPSおよびMDPに対しては反応性を示さない、
− HEK−Blue(商標)hTLR4系(
図3):LPSに対する強度の反応性;
細胞はザイモサンに対しては極めて弱度にのみ反応し、PGN、リポペプチド、LTAおよびMDPに対しては反応性を示さない、
− HEK−Blue(商標)hNOD2系(
図4):MDPに対する強度の反応性、
− HEK−Blue(商標)Null2系(
図5):細胞毒性の非存在についての対照。
【0085】
実施例2:様々なグルコースポリマー基質の調製
上述のように、基質は下記の通りである:
− 本明細書ではE1565、E3063、E1242およびE5248を参照として記載する、イコデキストリンの原料である4種のグルコースポリマー(欧州特許第667356号明細書の教示によるクロマトグラフィー分画の前に)。
【0086】
これらのポリマーの調製は、特許出願の国際公開第2012/059685号パンフレットの教示によって実施する;
− イコデキストリンの汚染バッチ(本明細書ではE209Jを参照として記載する)およびイコデキストリンの「陰性対照」バッチ、すなわち細胞試験における非汚染の対照(本明細書ではP11−11を参照として記載する)。これらのバッチは、国際出願の国際公開第2010/125315号パンフレットの実施例1に詳述されている、特許出願である欧州特許第667356号明細書の教示によって調製する。
【0087】
実施例3:未処理サンプルにより誘導された細胞反応の分析
これらの試験の目的は、様々な基質中に存在する汚染物質の炎症促進反応性および性質を決定することである。
【0088】
実施例2によるサンプルを非発熱性(注射用)水中の32%(重量/容量)で調製する。
【0089】
LPSレベルおよびPGNレベルのアッセイは、細胞試験に先行してSLP−HSアッセイおよびLALアッセイを使用して実施した(データは下記に提示した)。
【0090】
【表1】
【0091】
所定の汚染物質に対する炎症反応の概観を得られるように、様々な基質中の生物汚染物質の存在を5種の細胞種によって分析した(
図6)。
【0092】
細胞試験のために、サンプルを細胞培養培地中で1/10に希釈する(最終濃度:3.2%(w/v))。
【0093】
分析は:
− Raw−Blue(商標)系:PGNに対する高反応性を有するあらゆる汚染物質、
− HEK−Blue(商標)hTLR2系:PGNおよびリポペプチドに対する高反応性、
− HEK−Blue(商標)hTLR4系:LPSに対する高反応性、
− HEK−Blue(商標)hNOD2系:MDPおよびPGN解重合生成物、
− HEK−Blue(商標)Null2系:細胞毒性の非存在についての対照
に対して実施する。
【0094】
サンプルによる評価:
− E1242:ごくわずかに分解したPGNによる強度の汚染の証拠である、HEK−TLR2細胞における高強度炎症反応およびHEK−NOD2細胞における低強度炎症反応。
− E1565:分解したPGNおよびLPSによる強度の汚染の証拠である、HEK−TLR2細胞における高強度炎症反応、HEK−TLR4細胞における中強度炎症反応およびHEK−NOD2細胞における高強度炎症反応。
− E3063:ごくわずかに分解したPGNおよび微量のLPSによる極めて強度の汚染の証拠である、HEK−TLR2細胞における飽和炎症反応、HEK−TLR4細胞における中強度炎症反応およびHEK−NOD2細胞における低強度炎症反応。
− E5248:PGNおよびLPSによる低汚染の証拠である、様々な系における低強度炎症反応。
− E209J:弱く分解したPGNによる強度の汚染の証拠である、HEK−TLR2細胞における高強度炎症反応およびHEK−NOD2細胞における低強度炎症反応。
【0095】
グルコースポリマー基質は、いずれもHEK−Null細胞が存在下で全く反応を与えないため、これは細胞毒性がないことを確証する。
【0096】
実施例4:サンプルにより誘導された細胞反応に除去の手順が及ぼす効果の分析
本出願人企業は、本出願人企業の特許出願である国際公開第2013/178931号パンフレットの中で、サンプル中に存在する各タイプの汚染物質に最適合な処理の同定を可能にし、グルコースポリマー基質へ適用するための実験条件を決定することを可能にした。
【0097】
本出願人企業の以前の研究に基づいて、提案された数多くの個々の処理は:
− 活性炭上の処理、
− 5kDaの濾過閾値を有する膜を通しての限外濾過、
− 吸着樹脂上の通過、
− 酵素製剤による処理
である。
【0098】
下記に記載した組み合わせを用いた実験において、工程の選択および配列は:
○実験処理条件、
○サンプル中の汚染のレベル、および
○炎症促進性分子の性質
の関数として決定した。
【0099】
Mannaway(登録商標)の使用
国際特許出願の国際公開第2013/178931号パンフレットの教示は、酵素製剤が微量のLPSによってわずかに汚染されることを証明した。さらに、微量の酵素は、処理後にグルコースポリマー溶液中に残留する可能性がある。このため、これらの外因性汚染を除去できるように、本出願人企業は、組み合わせの試験において酵素処理工程を手順開始時に配置することを推奨する。
【0100】
活性炭の使用
本試験で保持された活性炭は:
○C EXTRA USP、PGNおよびその分解生成物を除去する際に有効であるため;
○ENO−PC、分子量が100kDaより大きな汚染物質(例えば、LPSおよびPGNの分解生成物)に選択的作用を及ぼすため;
○A SUPRA EUR、高分子量の複合体を除去する際に有効性があるため
である。
【0101】
本出願人企業は、活性炭を単独または様々な組み合わせで一対で組み合わせて使用することを選択し、炭素による処理がバッチ式で実施され、加熱工程、中和工程および濾過工程が必要とされることを前提に、それらの工程は酵素処理の直後であるが他の処理の前に実施することを選択してきた。
【0102】
樹脂の使用
保持された樹脂は:
○Macronet MN−150、低分子量の分子(例えば、MDPおよびPGNの分解生成物)を保持する際に有効であるため;
○Dowex SD2、PGNS以外の汚染物質を除去する広域スペクトルのため
である。
【0103】
膜分離の使用
5kDaの限外濾過による処理の目的は、グルコースポリマー溶液中に依然として存在する小さな分子を排除することである。さらに、この手順は透析作用を有し、先行処理の経過にわたって蓄積している微量の塩の排除を可能にする。
【0104】
このため、この工程は手順の最後に体系的に配置する。
【0105】
各工程後、サンプルを無菌条件下で取り出し、全炎症負荷(Raw−Blue(商標)細胞反応)および生物汚染物質(HEK−Blue(商標)反応)の量をアッセイできるように細胞試験に使用する。各工程後に得られた細胞反応は、除去手順の有効性を推定できるように、出発基質により誘導された反応と比較する。結果は、最高細胞反応に対する活性として表示する。全ての試験において、非汚染対照は、P11−11イコデキストリンの溶液を用いて実施する。
【0106】
実施例5:個々の処理工程の様々な組み合わせについての比較分析
可能性な組み合わせの多くは、特許出願の国際公開第2013/178931号パンフレットの教示から推定することができる。
【0107】
考えられる手順の3について得られた結果は、下記の通りである。
【0108】
− 手順1:E1242基質;C EXTRA USP+ENO−PC活性炭による処理;Macronet MN−15樹脂上の通過;5kDaでの限外濾過
細胞試験の結果を
図7に示した。
【0109】
E1242基質は、主として高濃度のPGNに関連しているRaw−Blue細胞における中間炎症反応(TLR2の反応)を誘導する。
【0110】
E1242基質は、TLR4およびNOD2の反応がバックグラウンドノイズに近いことを前提に、微量のLPSおよびPGNの微量の分解生成物も含有する。
【0111】
除去手順は、炎症反応を効果的に減少させる。
【0112】
それにもかかわらず、Raw−Blue細胞の反応は非汚染対照(P11−11)よりごくわずかに高いままであり、これは微量の汚染物質が依然として存在することを示している。
【0113】
この結果は、除去後の残留PGNの存在に起因する。実際に、TLR2の反応は、炭素による処理後には大きく減少するが、陰性対照よりは高いままである。
【0114】
他の工程は、TLR2の反応に影響を及ぼさず、TLR2の反応は手順の最後までもはや進化しない。他方、TLR4の反応は、第1の処理工程と同様に早期にもはや検出することができず、これはLPSが除去されていることを証明する。NOD2の反応に関しては、この反応は限外濾過工程後には抑制される。
【0115】
結論:
炎症性化合物の負荷は効果的に低減されたが、PGNにより重度に負荷された基質の完全な除去を保証するためには手順1では不十分である。
【0116】
− 手順2:E209J基質;C EXTRA USP+ENO−PC活性炭による処理;Dowex SD2樹脂上の通過;5kDaでの限外濾過
細胞試験の結果を
図8に示した。
【0117】
この手順のために、樹脂を保持の広域スペクトルを有するDowex SD2と置換した。これらの試験は、E1242と同様の汚染プロファイルを有するE209J基質を用いて実施した。
【0118】
この場合、Raw−Blue細胞の反応は陰性対照と同一であり、これは汚染除去が有効であったことを証明する。
【0119】
それにもかかわらず、TLR2の反応は依然として非汚染対照よりごくわずかに高いため、これは微量のPGNが依然として存在することを示している。
【0120】
反応の差は、HEK−TLR2細胞がPGNに対してRaw−Blue細胞よりも低い検出閾値を有するという事実と確実に関連している。
【0121】
NOD2の反応はSD2上の通過後には減少して限外濾過後に抑制されるが、これはこの樹脂がPGNの分解生成物を除去するために少なくとも補完作用を有することを示唆している。
【0122】
結論
このデータは、樹脂の変更が全てのPGNを排除する際に手順の有効性を改良しなかったことを示している。
【0123】
− 手順3:E5248基質;Mannaway(登録商標)および次にC EXTRA USP+A SUPRA EUR炭素による処理;Dowex SD2樹脂上の通過;5kDaでの限外濾過
細胞試験の結果を
図9に示した。
【0124】
この最後の組み合わせでは、A SUPRA EUR炭素をENO−PCの代替物としてのC EXTRA USPと組み合わせた。
【0125】
A SUPRA EUR炭素は、後者とは反対に高分子量の分子を優先的に排除する。
【0126】
この組み合わせは、PGNまたはβ−グルカンタイプの凝集したマクロ複合体が負荷されたサンプルの汚染除去するために有効でなければならない。
【0127】
これらの試験は、様々な細胞系において低強度炎症反応を誘導するE5248基質上で実施したが、SLP−HSおよびLALのアッセイはPGNおよび/またはβ−グルカンの強度の汚染の存在を示唆している。
【0128】
この差は、それらの溶解度を低下させるそれらの高質量の炎症性分子、および結果として試験細胞における反応を誘導する接近可能性によって説明できる。
【0129】
手順の第1の工程後には、様々な細胞系において細胞反応の強度の増加が観察される。
【0130】
この結果は、Mannaway(登録商標)による酵素処理が細菌複合体もしくは細菌断片をバラバラにさせ、これによりTLR2、TLR4およびNOD2に対するアゴニスト分子を遊離させる際に有効であることを確認している。
【0131】
炭素による処理後、Raw細胞およびHEK−TLR2細胞の反応は有意に減少したが、依然として陰性対照より上回ったままである。
【0132】
同様に、TLR4およびNOD2の反応は大きいままであり、様々な細胞種における非汚染対照と同一のシグナルを入手するための樹脂上の通過および限外濾過の最終的な工程を待つことが不可欠である。
【0133】
結論
これらの結果は、A SUPRA EUR炭素が汚染除去手順に顕著な利益を全く提供しなかったことを示している。
【0134】
最終的な結論
完全に想定できたが、これらの汚染除去手順は、いずれも完全に満足できる結果を与えない。
【0135】
実施例6:最適化された手順の提示
E3063基質上で一連の下記の工程を実施することを選択する。
− Mannaway(登録商標)による処理、次に
− C EXTRA USP+ENO−PC活性炭による処理、次に
− Dowex SD2樹脂上の通過、および最後に
− 5kDaでの限外濾過。
【0136】
細胞試験の結果を
図10に示した。
【0137】
PGNを排除することを目的とする手順の有効性を高めるために、Mannaway(登録商標)による酵素処理の工程を他の工程の上流に導入する。
【0138】
これらの試験のためには、PGNが極めて大量に負荷されたE3603基質を使用した。
【0139】
手順の様々な工程後、Raw−Blue細胞の反応は、汚染除去が有効であったことを
証明する陰性対照と同一である。
【0140】
さらに、酵素+炭素処理の組み合わせは、TLR2の反応が処理前の飽和シグナルから非汚染対照と同一のシグナルになるため、PGNを排除するために特に適する。
【0141】
最後に、他の工程は、LPS(TLR4の反応)およびNOD2アゴニストの痕跡を排除することに有効である。
【0142】
この組み合わせが実際に有効であることを証明するために、ENO−PC炭素の使用が現実的に汚染除去手順に利益を提供するかどうかを確認するために、ENO−PC炭素を除去した。
【0143】
細胞試験の結果を
図11に示した。
【0144】
これらの試験は、また別の基質である、TLR2、TLR4およびNOD2の様々なアゴニストを用いて汚染されているE1565基質上で実施した。
【0145】
手順の最後に、Raw−Blue細胞の反応は有意に減少したが、非汚染対照よりはわずかに大きいままである。この極めて弱い反応は残留PGNの存在とは関連していないが、むしろ微量のLPSおよびNOD2アゴニストと、ならびに2つの群の分子間の可能性のある相乗効果と関連している。
【0146】
ENO−PC炭素は、分子量<100kDaの分子(LPSおよびPGNの分解生成物)に対して広域の保持スペクトルを有する。
【0147】
結論
その非存在は、特に基質がこれらの2つの群の炎症性分子で重度に汚染させられている場合は、汚染手順の有効性を低下させたことが観察されている。
【0148】
これらをまとめると、この試験で得られた結果は、厳選されて順番に配置された数種の汚染工程の組み合わせがグルコースポリマー溶液中に存在する可能性がある炎症性分子を排除することに有効であることを立証したことを示している。
【0149】
この組み合わせは、下記の工程:
− 洗浄性および清澄化性を有する酵素製剤、例えばMannaway(登録商標)による処理、
− C EXTRA USPと同等の多孔性を有する活性炭による処理、
− 任意選択的に、分解されたPGNおよび/またはLPSが負荷された基質に対してENO−PCと同等の多孔性を有する第2の活性炭による処理、
− Dowex−SD2タイプの吸着樹脂上の通過、
− 5kDaでの連続限外濾過
を含む。
【0150】
選択された工程は、様々な汚染物質の群を標的とすること、および炎症反応性を有していない生成物を提案することを可能にする。