(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.実施形態:
A−1.装置構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、
図1(および後述する
図6,7)のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図3は、
図1(および後述する
図6,7)のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。
図4以降についても同様である。また、本明細書では、Z軸方向に直交する方向を、面方向と呼ぶものとする。
【0019】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
【0020】
図1に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの外周の4つの角部周辺には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びるボルト孔109を構成している。各ボルト孔109にはボルト22が挿入されており、各ボルト22および図示しないナットによって燃料電池スタック100は締結されている。
【0021】
また、
図1から
図3に示すように、各発電単位102のZ軸方向回りの外周辺の付近には、各発電単位102を上下方向に貫通する孔が形成されており、各発電単位102に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、複数の発電単位102にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために各発電単位102に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
【0022】
図1および
図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給する共用ガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する共用ガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態の燃料電池スタック100には、酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162が、それぞれ1つのみ存在している。また、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。酸化剤ガス導入マニホールド161は、特許請求の範囲における空気極側供給ガス流路に相当し、酸化剤ガス排出マニホールド162は、特許請求の範囲における空気極側排出ガス流路に相当する。
【0023】
また、
図1および
図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給する共用ガス流路である燃料ガス導入マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス導入マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する共用ガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態の燃料電池スタック100には、燃料ガス導入マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172が、それぞれ1つのみ存在している。また、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。燃料ガス導入マニホールド171は、特許請求の範囲における燃料極側供給ガス流路に相当し、燃料ガス排出マニホールド172は、特許請求の範囲における燃料極側排出ガス流路に相当する。
【0024】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
図2および
図3に示すように、下側のエンドプレート106には、4つの流路用貫通孔107が形成されている。4つの流路用貫通孔107は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0025】
(ガス通路部材27等の構成)
図2および
図3に示すように、燃料電池スタック100は、さらに、下側のエンドプレート106に対して複数の発電単位102とは反対側(すなわち、下側)に配置された4つのガス通路部材27を備える。4つのガス通路部材27は、それぞれ、酸化剤ガス導入マニホールド161、酸化剤ガス排出マニホールド162、燃料ガス導入マニホールド171、燃料ガス排出マニホールド172と上下方向に重なる位置に配置されている。各ガス通路部材27は、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107に連通する孔が形成された本体部28と、本体部28の側面から分岐した筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。なお、各ガス通路部材27の本体部28とエンドプレート106との間には、絶縁シート26が配置されている。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0026】
(発電単位102の構成)
図4は、
図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、
図5は、
図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。また、
図6は、
図4および
図5のVI−VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、
図7は、
図4および
図5のVII−VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0027】
図4および
図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述した各マニホールド161,162,171,172として機能する連通孔108を構成する孔や、各ボルト孔109を構成する孔が形成されている。
【0028】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(
図2および
図3参照)。
【0029】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0030】
電解質層112は、Z方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、Z方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、Z方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Niと酸化物イオン伝導性セラミックス粒子(例えば、YSZ)とからなるサーメットにより形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0031】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。
【0032】
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。
【0033】
図4〜
図6に示すように、空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する孔である。
図6に示すように、Z軸方向視で、孔131の外形線は略矩形である。孔131は、X軸方向に互いに対向する第1の内周面IP1および第2の内周面IP2を有する。孔131の外形線の内、第1の内周面IP1により構成される部分および第2の内周面IP2により構成される部分は、Y軸方向に略平行な直線状部分を有している。また、
図4および
図6に示すように、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108に連通すると共に空気室166を構成する孔131の第1の内周面IP1に開口する酸化剤ガス供給連通流路132と、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108に連通すると共に空気室166を構成する孔131の第2の内周面IP2に開口する酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。本実施形態では、空気極側フレーム130に、3本の酸化剤ガス供給連通流路132と、3本の酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0034】
空気極側フレーム130は、特許請求の範囲における空気極側部材に相当し、孔131は、特許請求の範囲における空気室用孔に相当し、空気極側フレーム130に形成された酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108は、特許請求の範囲における空気極側供給ガス流路用孔に相当し、空気極側フレーム130に形成された酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108は、特許請求の範囲における空気極側排出ガス流路用孔に相当し、酸化剤ガス供給連通流路132は、特許請求の範囲における空気極側供給連通流路に相当し、酸化剤ガス排出連通流路133は、特許請求の範囲における空気極側排出連通流路に相当し、X軸方向は、特許請求の範囲における第2の方向に相当する。
【0035】
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。
【0036】
図4,
図5および
図7に示すように、燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する孔である。
図7に示すように、Z軸方向視で、孔141の外形線は略矩形である。孔141は、X軸方向に互いに対向する第3の内周面IP3および第4の内周面IP4を有する。孔141の外形線の内、第3の内周面IP3により構成される部分および第4の内周面IP4により構成される部分は、Y軸方向に略平行な直線状部分を有している。また、
図5および
図7に示すように、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108に連通すると共に燃料室176を構成する孔141の第3の内周面IP3に開口する燃料ガス供給連通流路142と、燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108に連通すると共に燃料室176を構成する孔141の第4の内周面IP4に開口する燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。本実施形態では、燃料極側フレーム140に、1本の燃料ガス供給連通流路142と、1本の燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0037】
燃料極側フレーム140は、特許請求の範囲における燃料極側部材に相当し、孔141は、特許請求の範囲における燃料室用孔に相当し、燃料極側フレーム140に形成された燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108は、特許請求の範囲における燃料極側供給ガス流路用孔に相当し、燃料極側フレーム140に形成された燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108は、特許請求の範囲における燃料極側排出ガス流路用孔に相当し、燃料ガス供給連通流路142は、特許請求の範囲における燃料極側供給連通流路に相当し、燃料ガス排出連通流路143は、特許請求の範囲における燃料極側排出連通流路に相当する。
【0038】
図4〜
図6に示すように、空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、上側のエンドプレート104に接触している。空気極側集電体134は、このような構成であるため、空気極114とインターコネクタ150(またはエンドプレート104)とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の凸部である集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。また、空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材は、導電性のコートによって覆われていてもよく、空気極114と空気極側集電体134との間には、両者を接合する導電性の接合層が介在していてもよい。
【0039】
図4,5,7に示すように、燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下側のエンドプレート106に接触している。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
【0040】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2,4,6に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、および、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、
図3,5,7に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29、本体部28、および、下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0041】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0042】
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、
図2,4,6に示すように、酸化剤ガス排出連通流路133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、
図3,5,7に示すように、燃料ガス排出連通流路143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに下側のエンドプレート106の流路用貫通孔107、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0043】
なお、上述したように、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102では、空気極側フレーム130の孔131における酸化剤ガス供給連通流路132が開口する第1の内周面IP1と酸化剤ガス排出連通流路133が開口する第2の内周面IP2との対向方向(X軸方向)と、燃料極側フレーム140の孔141における燃料ガス供給連通流路142が開口する第3の内周面IP3と燃料ガス排出連通流路143が開口する第4の内周面IP4との対向方向(X軸方向)とが、略同一方向である。また、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108とが、上記対向方向の同じ側(X軸正方向側)に配置され、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108と燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108とが、上記対向方向の同じ側(X軸負方向側)に配置されている。そのため、各発電単位102の空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(
図6に示すように、X軸負方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(
図7に示すように、X軸正方向)とが、略反対方向(互いに対向する方向)となる。すなわち、本実施形態の発電単位102(燃料電池スタック100)は、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0044】
A−3.発電単位102に形成された各流路の詳細構成:
次に、発電単位102に形成された各流路の詳細構成について説明する。
図8は、発電単位102に形成された各流路の詳細構成を示すXY断面図である。
図8には、説明の便宜上、空気極側フレーム130に形成された各連通流路(酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133)に加えて、燃料極側フレーム140に形成された各連通流路(燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143)も示している。実際の構成では、上述したように、空気極側フレーム130には燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143は形成されておらず、燃料極側フレーム140には酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133は形成されていない。
【0045】
図8に示すように、本実施形態の発電単位102では、空気極側フレーム130に形成された各連通流路(酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133)と、燃料極側フレーム140に形成された各連通流路(燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143)とは、Z軸方向視で互いに重なっていない。
【0046】
また、本実施形態の発電単位102では、Z軸方向視で、空気極側フレーム130に形成された各連通流路(酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133)の空気室166への開口が、燃料極側フレーム140に形成された各連通流路(燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143)の燃料室176への開口と比較して、酸化剤ガスOGまたは燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向)における単セル110の中央位置(以下に定義する仮想直線VLの位置)に近い位置に配置されている。
・仮想直線VL:
単セル110(具体的には、単セル110を構成する各層の内の面方向の大きさが最も小さい層であり、本実施形態では空気極114)のX軸方向の一方側(X軸負方向側)の辺(詳細には、該辺の内の略直線状部分(以下同様))の中点MPc1と、X軸方向の他方側(X軸正方向側)の辺の中点MPc2と、を結ぶ仮想的な直線
【0047】
より詳細には、本実施形態の発電単位102では、Z軸方向視で、以下にそれぞれ定義する第1の距離Laiと第2の距離Laoとの和La(以下、「空気極側距離和La」という)は、第3の距離Lfiと第4の距離Lfoとの和Lf(以下、「燃料極側距離和Lf」という)より小さくなっている。
・第1の距離Lai:
仮想直線VLと、各酸化剤ガス供給連通流路132の第1の内周面IP1における開口のすべてにより構成される空気極側供給開口群の両端点EP1,EP2の中点MPaiと、の間の距離
・第2の距離Lao:
仮想直線VLと、各酸化剤ガス排出連通流路133の第2の内周面IP2における開口のすべてにより構成される空気極側排出開口群の両端点EP3,EP4の中点MPaoと、の間の距離
・第3の距離Lfi:
仮想直線VLと、各燃料ガス供給連通流路142の第3の内周面IP3における開口のすべてにより構成される燃料極側供給開口群の両端点EP5,EP6の中点MPfiと、の間の距離
・第4の距離Lfo:
仮想直線VLと、各燃料ガス排出連通流路143の第4の内周面IP4における開口のすべてにより構成される燃料極側排出開口群の両端点EP7,EP8の中点MPfoと、の間の距離
【0048】
なお、本実施形態の発電単位102では、
図8に示すように、Z軸方向視で、各酸化剤ガス供給連通流路132の第1の内周面IP1における開口のすべてにより構成される空気極側供給開口群の開口幅の合計と、各酸化剤ガス排出連通流路133の第2の内周面IP2における開口のすべてにより構成される空気極側排出開口群の開口幅の合計と、の和は、各燃料ガス供給連通流路142の第3の内周面IP3における開口のすべてにより構成される燃料極側供給開口群の開口幅の合計と、各燃料ガス排出連通流路143の第4の内周面IP4における開口のすべてにより構成される燃料極側排出開口群の開口幅の合計と、の和より大きくなっている。
【0049】
また、本実施形態の発電単位102では、
図8に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積と酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積との和は、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積との和より大きくなっている。より詳細には、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積は、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積より大きく、かつ、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積は、燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積より大きくなっている。
【0050】
A−4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102は、単セル110と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140とを備える。空気極側フレーム130には、空気極114に面する空気室166を構成すると共にX軸方向に互いに対向する第1の内周面IP1および第2の内周面IP2を有する孔131と、空気室166に供給されるガスが通る酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108と、空気室166から排出されたガスが通る酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108と、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108に連通すると共に孔131の第1の内周面IP1に開口する少なくとも1つの酸化剤ガス供給連通流路132と、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108に連通すると共に孔131の第2の内周面IP2に開口する少なくとも1つの酸化剤ガス排出連通流路133とが形成されている。燃料極側フレーム140には、燃料極116に面する燃料室176を構成すると共にX軸方向に互いに対向する第3の内周面IP3および第4の内周面IP4を有する孔141と、燃料室176に供給されるガスが通る燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108と、燃料室176から排出されたガスが通る燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108と、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108に連通すると共に孔141の第3の内周面IP3に開口する少なくとも1つの燃料ガス供給連通流路142と、燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108に連通すると共に孔141の第4の内周面IP4に開口する少なくとも1つの燃料ガス排出連通流路143とが形成されている。また、本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102では、Z軸方向視で、上述した第1の距離Laiと第2の距離Laoとの和La(空気極側距離和La)は、第3の距離Lfiと第4の距離Lfoとの和Lf(燃料極側距離和Lf)より小さい。
【0051】
本実施形態の燃料電池スタック100を構成する各発電単位102は、上述した構成であるため、以下に説明するように、酸化剤ガスOGの広がりが不十分であることを原因とする単セル110の発電性能の低下を抑制することができる。
【0052】
空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140において上記各連通流路が形成された箇所では、複数の発電単位102を並べて燃料電池スタック100を構成したときにおけるZ軸方向の圧力(面圧)が低くなりやすい。上述したように、本実施形態の発電単位102では、空気極側フレーム130に形成された各連通流路(酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133)と、燃料極側フレーム140に形成された各連通流路(燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143)とは、Z軸方向視で互いに重なっていない。そのため、本実施形態の発電単位102では、面圧が低くなやすい箇所がZ軸方向視で互いに重なることを原因としてガスリークが発生することを抑制することができる。
【0053】
他方、そのような構成を採用する場合には、空気極側フレーム130に形成された各連通流路(酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133)の空気室166への開口と、燃料極側フレーム140に形成された各連通流路(燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143)の燃料室176への開口との両方を、空気室166または燃料室176におけるガス拡散性の点で理想的な位置(すなわち、酸化剤ガスOGまたは燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸方向)に直交する方向における単セル110の中央位置であり、上記仮想直線VLによって表される位置)に配置することはできない。そのため、従来のSOFCでは、空気極側フレーム130に形成された上記各連通流路の空気室166への開口と、燃料極側フレーム140に形成された上記各連通流路の燃料室176への開口とが、上記単セル110の中央位置(仮想直線VLの位置)に対して略対称の位置に配置されていた。このような従来の構成では、空気極側フレーム130に形成された上記各連通流路の空気室166への開口も、燃料極側フレーム140に形成された上記各連通流路の燃料室176への開口も、単セル110の上記中央位置からある程度離れた位置に配置されることとなる。
【0054】
ここで、酸化剤ガスOG(例えば空気)は、燃料ガスFG(例えば水素リッチなガス)と比べて、平均分子量が大きいために拡散性が低い。特に、SOFCは比較的高温(例えば700℃から1000℃)で運転されることから、酸化剤ガスOGは高温となる。酸化剤ガスOGは、高温になると、燃料ガスFGに比べて粘度が高くなる傾向にある。つまり、高温環境下では、酸化剤ガスOGは、燃料ガスFGよりも広がりづらい状態となる。そのため、上記従来の構成では、燃料ガスFGは面方向に良好に流れ広がるものの、酸化剤ガスOGは面方向への広がりが不十分となり、単セル110の一部の領域において酸化剤ガスOGが不足し、単セル110の発電性能が低下するおそれがある。
【0055】
これに対し、本実施形態の発電単位102では、上述したように、第1の距離Laiと第2の距離Laoとの和La(空気極側距離和La)が、第3の距離Lfiと第4の距離Lfoとの和Lf(燃料極側距離和Lf)より小さい。すなわち、空気極側フレーム130に形成された各連通流路(酸化剤ガス供給連通流路132および酸化剤ガス排出連通流路133)の空気室166への開口が、燃料極側フレーム140に形成された各連通流路(燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143)の燃料室176への開口と比較して、単セル110の上記中央位置(仮想直線VLの位置)に近い位置に配置されている。そのため、本実施形態の発電単位102では、酸化剤ガスOGを面方向に良好に広げることができ、酸化剤ガスOGの面方向への広がりが不十分であることを原因とする単セル110の性能低下を抑制することができる。
【0056】
なお、高温の酸化剤ガスOGは粘性が高く、マニホールド161,162等の流路での圧損が大きくなりやすい。本実施形態の発電単位102では、上述したように、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積と酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積との和が、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積との和より大きい。そのため、本実施形態の発電単位102では、燃料ガス導入マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積の増大を抑制しつつ、酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積を大きくすることができ、発電単位102(燃料電池スタック100)全体の大型化を抑制して装置の小型化および起動性の向上等を実現しつつ、空気極114の側の各マニホールド161,162における圧損を抑制することができ、発電単位102(燃料電池スタック100)の効率低下を抑制することができる。
【0057】
A−5.性能評価:
上述した各流路の構成と単セル110の発電性能との関係について、シミュレーションによる性能評価を行った。
図9は、性能評価結果を示す説明図である。性能評価では、上述した構成の単セル110(発電単位102)において、各連通流路132,133,142,143の位置を変更することによって空気極側距離和Laと燃料極側距離和Lfとの差(La−Lf)の値を種々変更しつつ、10個の単セル110(発電単位102)を備える燃料電池スタック100を構成し、温度700℃、電流密度0.55A/cm
2で発電運転を行ったときの1つの単セル110あたりの電圧を測定した。なお、空気極側距離和Laと燃料極側距離和Lfとの差(La−Lf)の値について、単セル110(発電単位102)の大きさの影響を排除するために、以下に定義する基準長さLc(
図8参照)で空気極側距離和Laと燃料極側距離和Lfとの差(La−Lf)の値を除算している。
・基準長さLc:
以下に定義する第2の仮想直線VL2上における(第2の仮想直線VL2に重なる)単セル110の長さ
・第2の仮想直線VL2:
Z軸方向視で(すなわち、面方向において)、上述の仮想直線VLと直交し、かつ、単セル110の中心を通る仮想的な直線
【0058】
図9には、上記(La−Lf)/Lcの値と単セル110の電圧との関係が示されている。
図9に示すように、本性能評価では、上記(La−Lf)/Lcが負の値であると(すなわち、空気極側距離和Laが燃料極側距離和Lfより小さいと)、単セル110の電圧が高くなるという結果となった。この結果から、上述したように、発電単位102において、空気極側距離和Laが燃料極側距離和Lfより小さくなるように、各連通流路132,133,142,143を構成すれば、酸化剤ガスOGの面方向への広がりが不十分であることを原因とする単セル110の性能低下を抑制できることが確認された。
【0059】
なお、
図9に示すように、本性能評価では、上記(La−Lf)/Lcの値が小さくなりすぎると、却って単セル110の電圧が低下するという結果となった。これは、上記(La−Lf)/Lcの値が小さくなりすぎると、燃料極側距離和Lfが大きくなりすぎる(燃料ガス供給連通流路142および燃料ガス排出連通流路143が中央位置から離れすぎる)ため、燃料ガスFGの利用効率が落ち込むためであると考えられる。そのため、単セル110の性能低下を一層効果的に抑制するためには、上記(La−Lf)/Lcの値は、−0.45以上、0以下であることが好ましく、−0.4以上、−0.1以下であることがより好ましく、−0.3以上、−0.2以下であることが一層好ましいと言える。
【0060】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0061】
図10は、第1の変形例における発電単位102aに形成された各流路の詳細構成を示すXY断面図である。
図10に示す第1の変形例における発電単位102aでは、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108および酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108が、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と比べて、単セル110の上記中央位置(仮想直線VLの位置)により近い位置に配置されている。より詳細には、
図10に示す第1の変形例における発電単位102aでは、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108がちょうど単セル110の上記中央位置(仮想直線VLの位置)に位置しているために上記第1の距離Laiはゼロであり、同様に、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108がちょうど単セル110の上記中央位置(仮想直線VLの位置)に位置しているために上記第2の距離Laoもゼロである。
【0062】
図10に示す第1の変形例における発電単位102aでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、第1の距離Laiと第2の距離Laoとの和La(空気極側距離和La)が、第3の距離Lfiと第4の距離Lfoとの和Lf(燃料極側距離和Lf)より小さい。そのため、
図10に示す第1の変形例における発電単位102aでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガスOGを面方向に良好に広げることができ、酸化剤ガスOGの広がりが不十分であることを原因とする単セル110の性能低下を抑制することができる。
【0063】
また、
図10に示す第1の変形例における発電単位102aでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積と酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積との和が、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積との和より大きい。そのため、
図10に示す第1の変形例における発電単位102aでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、発電単位102a(燃料電池スタック100)全体の大型化を抑制して装置の小型化および起動性の向上等を実現しつつ、空気極114の側の各マニホールド161,162における圧損を抑制することができ、発電単位102a(燃料電池スタック100)の効率低下を抑制することができる。
【0064】
図11は、第2の変形例における発電単位102bに形成された各流路の詳細構成を示すXY断面図である。
図11に示す第2の変形例における発電単位102bでは、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108が、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と比べて、単セル110の上記中央位置(仮想直線VLの位置)により近い位置に配置されている。より詳細には、
図11に示す第2の変形例における発電単位102bでは、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108がちょうど単セル110の上記中央位置(仮想直線VLの位置)に位置しているために上記第1の距離Laiはゼロである。
【0065】
また、
図11に示す第2の変形例における発電単位102bでは、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108が、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と比べて、小さくなっており、酸化剤ガス排出連通流路133の本数も2本に減っている。
【0066】
図11に示す第2の変形例における発電単位102bでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、第1の距離Laiと第2の距離Laoとの和La(空気極側距離和La)が、第3の距離Lfiと第4の距離Lfoとの和Lf(燃料極側距離和Lf)より小さい。そのため、
図11に示す第2の変形例における発電単位102bでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガスOGを面方向に良好に広げることができ、酸化剤ガスOGの広がりが不十分であることを原因とする単セル110の性能低下を抑制することができる。
【0067】
また、
図11に示す第2の変形例における発電単位102bでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積と酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積との和が、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積との和より大きい。そのため、
図11に示す第2の変形例における発電単位102bでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、発電単位102b(燃料電池スタック100)全体の大型化を抑制して装置の小型化および起動性の向上等を実現しつつ、空気極114の側の各マニホールド161,162における圧損を抑制することができ、発電単位102b(燃料電池スタック100)の効率低下を抑制することができる。
【0068】
図12は、第3の変形例における発電単位102cに形成された各流路の詳細構成を示すXY断面図である。
図12に示す第3の変形例における発電単位102cでは、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108および酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108が、共に、単セル110の上記中央位置(仮想直線VLの位置)の一方側(Y軸正方向側)に位置し、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108および燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108が、共に、単セル110の上記中央位置(仮想直線VLの位置)の他方側(Y軸負方向側)に位置している。
【0069】
図12に示す第3の変形例における発電単位102cでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、第1の距離Laiと第2の距離Laoとの和La(空気極側距離和La)が、第3の距離Lfiと第4の距離Lfoとの和Lf(燃料極側距離和Lf)より小さい。そのため、
図12に示す第3の変形例における発電単位102cでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガスOGを面方向に良好に広げることができ、酸化剤ガスOGの広がりが不十分であることを原因とする単セル110の性能低下を抑制することができる。
【0070】
また、
図12に示す第3の変形例における発電単位102cでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積と酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積との和が、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積との和より大きい。そのため、
図12に示す第3の変形例における発電単位102cでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、発電単位102c(燃料電池スタック100)全体の大型化を抑制して装置の小型化および起動性の向上等を実現しつつ、空気極114の側の各マニホールド161,162における圧損を抑制することができ、発電単位102c(燃料電池スタック100)の効率低下を抑制することができる。
【0071】
図13は、第4の変形例における発電単位102dに形成された各流路の詳細構成を示すXY断面図である。
図13に示す第4の変形例における発電単位102dでは、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積と酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積との和が、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積との和と略同一である。
【0072】
図13に示す第4の変形例における発電単位102dでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、第1の距離Laiと第2の距離Laoとの和La(空気極側距離和La)が、第3の距離Lfiと第4の距離Lfoとの和Lf(燃料極側距離和Lf)より小さい。そのため、
図13に示す第4の変形例における発電単位102dでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガスOGを面方向に良好に広げることができ、酸化剤ガスOGの広がりが不十分であることを原因とする単セル110の性能低下を抑制することができる。
【0073】
図14は、第5の変形例における発電単位102eに形成された各流路の詳細構成を示すXY断面図である。
図14に示す第5の変形例における発電単位102eでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、空気極側フレーム130の孔131における酸化剤ガス供給連通流路132が開口する第1の内周面IP1と酸化剤ガス排出連通流路133が開口する第2の内周面IP2との対向方向(X軸方向)と、燃料極側フレーム140の孔141における燃料ガス供給連通流路142が開口する第3の内周面IP3と燃料ガス排出連通流路143が開口する第4の内周面IP4との対向方向(X軸方向)とが、略同一方向である。ただし、
図14に示す第5の変形例における発電単位102eでは、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108と燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108とが、上記対向方向の同じ側(X軸正方向側)に配置され、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108とが、上記対向方向の同じ側(X軸負方向側)に配置されている。そのため、発電単位102eの空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(
図14に示すように、X軸負方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(同じく、X軸負方向)とが、略同一方向となる。すなわち、
図14に示す第5の変形例における発電単位102eは、コフロータイプのSOFCである。
【0074】
図14に示す第5の変形例における発電単位102eでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、第1の距離Laiと第2の距離Laoとの和La(空気極側距離和La)が、第3の距離Lfiと第4の距離Lfoとの和Lf(燃料極側距離和Lf)より小さい。そのため、
図14に示す第5の変形例における発電単位102eでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガスOGを面方向に良好に広げることができ、酸化剤ガスOGの広がりが不十分であることを原因とする単セル110の性能低下を抑制することができる。
【0075】
また、
図14に示す第5の変形例における発電単位102eでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積と酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積との和が、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積との和より大きい。そのため、
図14に示す第5の変形例における発電単位102eでは、
図8等に示す上記実施形態の発電単位102と同様に、発電単位102e(燃料電池スタック100)全体の大型化を抑制して装置の小型化および起動性の向上等を実現しつつ、空気極114の側の各マニホールド161,162における圧損を抑制することができ、発電単位102e(燃料電池スタック100)の効率低下を抑制することができる。
【0076】
上記実施形態(および変形例、以下同様)の発電単位102または燃料電池スタック100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、酸化剤ガス導入マニホールド161を構成する連通孔108の面積と酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108の面積との和が、燃料ガス導入マニホールド171を構成する連通孔108の面積と燃料ガス排出マニホールド172を構成する連通孔108の面積との和より大きいとしているが、必ずしもこのような関係である必要はない。
【0077】
また、上記実施形態において、必ずしも燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102について、空気極側距離和Laが燃料極側距離和Lfより小さいという関係が満たされている必要はなく、燃料電池スタック100に含まれる少なくとも1つの発電単位102について、上記関係が満たされていれば、該発電単位102について、酸化剤ガスOGの面方向への広がりが不十分であることを原因とする単セル110の性能低下を抑制することができる。
【0078】
また、上記実施形態では、ボルト孔109が、各マニホールド用の連通孔108とは独立して設けられているが、独立したボルト孔109を設けず、各マニホールド用の連通孔108がボルト孔としても用いられるとしてもよい。また、上記実施形態において、空気極114と電解質層112との間に中間層が配置されていてもよい。また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016−81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、空気極側距離和Laが燃料極側距離和Lfより小さいという関係を満たすように構成すれば、空気極に供給されるガスの面方向への広がりが不十分であることを原因とする電解単セルの性能低下を抑制することができる。
【解決手段】単セル110と空気極側部材と燃料極側部材とを備え、単セルの中央位置を表す仮想直線VLと空気極側供給連通流路132の開口により構成される空気極側供給開口群の両端点の中点MPaiとの間の距離Laiと、仮想直線VLと空気極側排出連通流路133の開口により構成される空気極側排出開口群の両端点の中点MPaoとの間の距離Laoとの和Laは、仮想直線VLと燃料極側供給連通流路142の開口により構成される燃料極側供給開口群の両端点の中点MPfiとの間の距離Lfiと、仮想直線VLと燃料極側排出連通流路143の開口により構成される燃料極側排出開口群の両端点の中点MPfoとの間の距離Lfoとの和Lfより小さい電気化学反応単位。