(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3本のボルトどうしを容易に連結することができ、しかも、容易かつ安全に取付作業を行うことができるボルト連結具の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るボルト連結具は、
吊ボルトと第一振止ボルトと第二振止ボルトとを連結するボルト連結具であって、
前記吊ボルトに固定されるベース部材と、第一狭着部材と、第二狭着部材と、第一連結ボルトと、第二連結ボルトと、弾性部材と、を備え、
前記第一連結ボルトの締結によって前記ベース部材と前記第一狭着部材との間に前記第一振止ボルトが狭着固定され、
前記第二連結ボルトの締結によって前記ベース部材と前記第二狭着部材との間に前記第二振止ボルトが狭着固定され、
前記弾性部材が、前記ベース部材に対して前記第一狭着部材を圧接付勢し、及び/又は、前記ベース部材に対して前記第二狭着部材を圧接付勢するように、前記第一連結ボルト及び前記第二連結ボルトの少なくとも一方に装着されている。
【0009】
この構成によれば、2本の振止ボルトが、対応する連結ボルトの締結によってベース部材と対応する狭着部材との間に狭着固定されるので、3本のボルトどうしを容易に連結することができる。また、上記の構成では、第一連結ボルト及び二連結ボルトの少なくとも一方に装着される弾性部材により、ベース部材と第一狭着部材との間に第一振止ボルトが仮止めされ、及び/又は、ベース部材と第二狭着部材との間に第二振止ボルトが仮止めされる。このため、2本の振止ボルトの狭着固定に際して、作業者は、振止ボルトをしっかりと支える必要がなく他の操作に集中して作業を行うことができる。よって、取付作業を容易に行うことができ、そのような取付作業が高所で行われる場合でも安全である。
従って、3本のボルトどうしを容易に連結することができ、しかも、容易かつ安全に取付作業を行うことができるボルト連結具を提供することができる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0011】
一態様として、
前記ベース部材が、一体化状態で前記吊ボルトを狭着固定する第一ベース部材と第二ベース部材とを有し、
前記第一連結ボルト及び前記第二連結ボルトのうちの前記第一連結ボルトだけの締結によって前記第一ベース部材と前記第二ベース部材とが前記一体化状態となるように構成され、
前記弾性部材が、前記ベース部材に対して前記第一狭着部材を圧接付勢するとともに前記第一ベース部材と前記第二ベース部材とを互いに圧接付勢するように、少なくとも前記第一連結ボルトに装着されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第一連結ボルトだけの締結によって第一ベース部材と第二ベース部材とが一体化状態となり、吊ボルトの狭着固定において第二連結ボルトは寄与しない。このため、第二連結ボルト及び第二狭着部材をベース部材から完全に取り外さずとも、吊ボルトに対する取付作業を行うことができる。すなわち、緩んだ状態の第一連結ボルト及び第二連結ボルトを介してベース部材(第一ベース部材及び第二ベース部材)と第一狭着部材と第二狭着部材とが仮組された状態で、それらをまとめて取り扱いながら取付作業を行うことができる。しかも、第一連結ボルトに装着された弾性部材がベース部材に対して第一狭着部材を圧接付勢するとともに第一ベース部材と第二ベース部材とを互いに圧接付勢するので、吊ボルトに対するベース部材の仮止めとベース部材に対する第一振止ボルトの仮止めとを同時に行うことができる。よって、取付作業をさらに容易かつ安全に行うことができる。
【0013】
一態様として、
前記第一狭着部材及び前記第二狭着部材のうち対応する連結ボルトに前記弾性部材が装着されている狭着部材を被圧接狭着部材として、
前記被圧接狭着部材、又は、当該被圧接狭着部材とそれに対応する連結ボルトの頭部との間に、前記弾性部材を収容する弾性部材収容空間が設けられていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第一連結ボルトに弾性部材が装着される場合でも、第一狭着部材側の弾性部材収容空間に弾性部材を配置させることで、締結される第一連結ボルトによって第一狭着部材をベース部材に安定的に固定することができる。また、第二連結ボルトに弾性部材が装着される場合でも、第二狭着部材側の弾性部材収容空間に弾性部材を配置させることで、締結される第二連結ボルトによって第二狭着部材をベース部材に安定的に固定することができる。
【0015】
一態様として、
前記被圧接狭着部材が、前記ベース部材に対向するベース対向部と、前記ベース対向部から前記ベース部材とは反対側に離間して配置される離間配置部と、を有し、
前記弾性部材が、前記離間配置部に形成された孔部に挿通された状態で、前記ベース対向部と前記離間配置部に当接する前記連結ボルトの頭部との間に保持され、
前記ベース対向部と前記離間配置部との間の空間により前記弾性部材収容空間が構成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第一狭着部材をベース対向部と離間配置部とを有するように構成して、それらの間に弾性部材収容空間を形成することができる。よって、第一連結ボルトに弾性部材が装着される場合でも、第一狭着部材のベース対向部と離間配置部との間の空間に弾性部材を配置させることで、締結される第一連結ボルトによって第一狭着部材をベース部材に安定的に固定することができる。また、第二狭着部材をベース対向部と離間配置部とを有するように構成して、それらの間に弾性部材収容空間を形成することができる。よって、第二連結ボルトに弾性部材が装着される場合でも、第二狭着部材のベース対向部と離間配置部との間の空間に弾性部材を配置させることで、締結される第二連結ボルトによって第二狭着部材をベース部材に安定的に固定することができる。
【0017】
一態様として、
前記第一連結ボルト及び前記第二連結ボルトの少なくとも一方に、前記弾性部材と共に受け部材が前記弾性部材よりも前記頭部側に位置する状態で装着されており、
前記被圧接狭着部材及び前記受け部材の少なくとも一方が凹状空間を有するように形成されて、当接する前記被圧接狭着部材と前記受け部材との間の前記凹状空間により前記弾性部材収容空間が構成されていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、第一連結ボルトに弾性部材と共に受け部材を装着しつつ第一狭着部材及び受け部材の少なくとも一方に凹状空間を形成して、第一連結ボルトを締結したときに当接するそれらの間に弾性部材収容空間を形成することができる。よって、第一連結ボルトに弾性部材が装着される場合でも、第一狭着部材と受け部材との間の凹状空間に弾性部材を配置させることで、締結される第一連結ボルトによって第一狭着部材をベース部材に安定的に固定することができる。また、第二連結ボルトに弾性部材と共に受け部材を装着しつつ第二狭着部材及び受け部材の少なくとも一方に凹状空間を形成して、第二連結ボルトを締結したときに当接するそれらの間に弾性部材収容空間を形成することができる。よって、第二連結ボルトに弾性部材が装着される場合でも、第二狭着部材と受け部材との間の凹状空間に弾性部材を配置させることで、締結される第二連結ボルトによって第二狭着部材をベース部材に安定的に固定することができる。
【0019】
一態様として、
前記第一連結ボルト及び前記第二連結ボルトの少なくとも一方に、前記弾性部材と共に筒状の受け部材が前記弾性部材を外側から覆う状態で装着されており、
前記受け部材の内側空間により前記弾性部材収容空間が構成されていることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、第一連結ボルトに弾性部材と共に筒状の受け部材を装着して、受け部材の内側に弾性部材収容空間を形成することができる。よって、第一連結ボルトに弾性部材が装着される場合でも、受け部材の内側空間に弾性部材を配置させることで、締結される第一連結ボルトによって第一狭着部材をベース部材に安定的に固定することができる。また、第二連結ボルトに弾性部材と共に筒状の受け部材を装着して、受け部材の内側に弾性部材収容空間を形成することができる。よって、第二連結ボルトに弾性部材が装着される場合でも、受け部材の内側空間に弾性部材を配置させることで、締結される第二連結ボルトによって第二狭着部材をベース部材に安定的に固定することができる。
【0021】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
ボルト連結具の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のボルト連結具1は、吊ボルトPと2本の振止ボルトQ(第一振止ボルトQ1及び第二振止ボルトQ2)とを連結するための器具である。
【0024】
図1に、構造体に吊設機器Eを吊り下げ支持する支持構造を示す。本支持構造は、構造体から垂設された4本の吊ボルトPを吊設機器Eの四隅に固定してなる。なお、構造体は例えばコンクリート製の天井スラブや梁等であって良く、吊設機器Eは例えば空調機器の室内機や照明機器、ケーブルラック等であって良い。
【0025】
互いに隣り合う吊ボルトPどうしの間に、2本の振止ボルトQが互いに交差しかつ吊ボルトPに交差する姿勢で配置されている。ボルト連結具1は、吊ボルトPと、その両隣に位置する2本の吊ボルトPに対してそれぞれ交差姿勢で配設される計2本の振止ボルトQとを連結する。ボルト連結具1は、互いに交差する方向に沿って配置される吊ボルトPと2本の振止ボルトQとを連結する。
【0026】
図1〜
図3に示すように、ボルト連結具1は、ベース部材3と、第一狭着部材5と、第二狭着部材6と、第一連結ボルト7と、第二連結ボルト8と、弾性部材9とを備えている。ベース部材3が吊ボルトPに取り付けられ、そのベース部材3に、第一連結ボルト7によって第一狭着部材5が取り付けられるとともに第二連結ボルト8によって第二狭着部材6が取り付けられている。第一連結ボルト7及び第二連結ボルト8には、弾性部材9がそれぞれ装着されている。本実施形態では、第一狭着部材5及び第二狭着部材6の両方が「被圧接狭着部材」に相当する。弾性部材9としては、コイルばねが用いられている。
【0027】
ベース部材3は、吊ボルトPを保持する。本実施形態では、ベース部材3は、吊ボルトPの軸方向に沿って当該吊ボルトPを挟み込んで保持する。ベース部材3は、一体化状態で吊ボルトPを狭着固定する第一ベース部材30と第二ベース部材40とを有している。ベース部材3は、第一ベース部材30と第二ベース部材40とで吊ボルトPを狭着固定することで、当該吊ボルトPを挟み込んで保持する。
【0028】
図2及び
図3に示すように、第一ベース部材30は、帯板状部材を変形L字状に屈曲形成して構成されている。第一ベース部材30は、一対の平板状の取付部(第一取付部31及び第二取付部32)を有するとともに、それらの間に湾曲部33を有する。一対の取付部の一方である第一取付部31に第二ベース部材40を介して第一狭着部材5が取り付けられ、一対の取付部の他方である第二取付部32に第二狭着部材6が取り付けられる。
【0029】
第一取付部31は、内周面に雌ネジが切られたバーリングタップ部34を有する。また、第一取付部31は、上下それぞれの辺縁に沿って延びる辺縁切欠部37を有する。第二取付部32は、内周面に雌ネジが切られたバーリングタップ部35を有する。湾曲部33は、平面視形状がおよそ90°の中心角を有する円弧状となる湾曲板部として形成されている。湾曲部33は、吊ボルトPの外面に概ね沿うように湾曲している。湾曲部33の内面には、吊ボルトPのネジ部に係止される係止突起33Aが突出形成されている。
【0030】
第二ベース部材40は、第一ベース部材30のおよそ半分の大きさの帯板状部材で構成されている。本実施形態では、第二ベース部材40は、第一ベース部材30に対して第一狭着部材5と同じ側に配置されている。第二ベース部材40は、第一取付部31に重ね合わされる平板状の重合部41と、この重合部41から連続して延びる湾曲部42とを有する。重合部41は、第一ベース部材30の第一取付部31よりも若干大きく形成されている。重合部41は、第一連結ボルト7が挿通されるボルト挿通孔43を有する。また、第二ベース部材40は、重合部41の上下それぞれの辺縁に沿って延びる補強リブ45を有する。補強リブ45は、重合部41と第一ベース部材30の第一取付部31とが重ね合わされた状態で、辺縁切欠部37に配置される。
【0031】
湾曲部42は、重合部41が第一取付部31に重ね合わされた状態で、第一ベース部材30の湾曲部33に対面するように延出している(
図4を参照)。湾曲部42は、平面視形状がおよそ90°の中心角を有する円弧状となる湾曲板部として形成されている。湾曲部42は、吊ボルトPの外面に概ね沿うように湾曲している。湾曲部42の内面に、第一ベース部材30の湾曲部33の係止突起33Aと同様の係止突起が突出形成されても良い。
【0032】
図3及び
図4に示すように、第一ベース部材30と第二ベース部材40とは、ベース部材3に第一狭着部材5を取り付けるための第一連結ボルト7を利用して吊ボルトPを狭着固定する(一体化状態となる)ように構成されている。なお、ベース部材3に第二狭着部材6を取り付けるための第二連結ボルト8は、吊ボルトPを狭着固定する(一体化状態となる)ためには寄与しない。すなわち、本実施形態のボルト連結具1は、第一連結ボルト7及び第二連結ボルト8のうちの第一連結ボルト7だけの締結によって第一ベース部材30と第二ベース部材40とが一体化状態となるように構成されている。さらに本実施形態では、第一取付部31と重合部41とが重ね合わされた状態で第一連結ボルト7を締結することにより、第一ベース部材30と第二ベース部材40とが一体化状態となるように構成されている。
【0033】
第一狭着部材5及び第二狭着部材6は、ベース部材3の両端部に固定されてそれぞれ振止ボルトQを狭着固定する。第一狭着部材5は、ベース部材3(本例では第一取付部31と重なっている重合部41)に対向するベース対向部51と、ベース対向部51から連続して延びる湾曲部53とを有する。ベース対向部51は、平板状に形成され、ベース部材3に直接対向するように配置されている。ベース対向部51には、第一連結ボルト7が挿通されるボルト挿通孔52が形成されている。
【0034】
湾曲部53は、第一振止ボルトQ1の外面に概ね沿う半円筒状に形成されている。湾曲部53の内面には、第一振止ボルトQ1のネジ部に係止される係止突起(図示せず)が突出形成されていることが好ましい。また、第一狭着部材5は、湾曲部53の軸方向の両端部に補強リブ54を有する。
【0035】
第一狭着部材5は、ベース対向部51からベース部材3とは反対側に離間して配置される離間配置部55をさらに有している。離間配置部55は、ベース部材3及びベース対向部51と平行に配置されている。離間配置部55は、第一連結ボルト7が挿通されるボルト挿通孔56を有する。本実施形態では、ボルト挿通孔56が、第一狭着部材5の離間配置部55に形成された「孔部」に相当する。この離間配置部55のボルト挿通孔56は、ベース対向部51のボルト挿通孔52よりも大径に形成されている。ベース対向部51のボルト挿通孔52は第一連結ボルト7の軸部72よりも大径でかつ弾性部材9よりも小径であるのに対して、離間配置部55のボルト挿通孔56は弾性部材9よりも大径となっている。このため、
図4に示すように、第一連結ボルト7に装着される弾性部材9は、離間配置部55を貫通して、ベース対向部51と第一連結ボルト7の頭部71との間に配置されている。ベース対向部51と離間配置部55との間の空間は、弾性部材9が収容される弾性部材収容空間Aとなっている。
【0036】
第二狭着部材6は、第一狭着部材5と同様の構成を備えている。すなわち、第二狭着部材6は、ベース部材3に対向するベース対向部61と、第二振止ボルトQ2の外面に概ね沿う湾曲部63と、ベース対向部61からベース部材3とは反対側に離間して配置される離間配置部65とを有する。離間配置部65のボルト挿通孔66は、ベース対向部61のボルト挿通孔62よりも大径に形成されている。本実施形態では、ボルト挿通孔66が、第二狭着部材6の離間配置部65に形成された「孔部」に相当する。第二連結ボルト8の軸部82に装着される弾性部材9は、離間配置部65を貫通して、ベース対向部61と第二連結ボルト8の頭部81との間に配置されている。ベース対向部61と離間配置部65との間の空間は、第二連結ボルト8に装着される弾性部材9が収容される弾性部材収容空間Aとなっている。
【0037】
第一連結ボルト7は、第一狭着部材5を貫通して、ベース部材3(本例では第一取付部31と重なっている重合部41)に第一狭着部材5を取り付ける。その際、第一狭着部材5の湾曲部53に第一振止ボルトQ1が収容された状態で、第一連結ボルト7の締結によってベース部材3と第一狭着部材5との間に第一振止ボルトQ1が狭着固定される。こうして、第一狭着部材5は、第一連結ボルト7により、ベース部材3に対して相対変位可能に連結され、かつ、ベース部材3との間に第一振止ボルトQ1を挟み込んで保持する。このような構成では、第一連結ボルト7を中心に第一振止ボルトQ1の角度が調整自在であるとともに、第一連結ボルト7の締結によって第一振止ボルトQ1が第一狭着部材5でベース部材3に圧着固定される。
【0038】
また、第一連結ボルト7は、第二ベース部材40を貫通するとともに第一狭着部材5を介して、第一ベース部材30と第二ベース部材40とを一体化させる。第一連結ボルト7は、第一狭着部材5及び第二ベース部材40を貫通し、第一ベース部材30の第一取付部31に形成されたバーリングタップ部34の雌ネジに螺合する。こうして、第一連結ボルト7の締結によって第一ベース部材30と第二ベース部材40とが一体化状態となり、この一体化状態で、第一ベース部材30の湾曲部33と第二ベース部材40の湾曲部42との間に吊ボルトPが狭着固定される。
【0039】
第二連結ボルト8は、第二狭着部材6を貫通して、ベース部材3(本例では第一ベース部材30の第二取付部32)に第二狭着部材6を取り付ける。第二連結ボルト8は、第二狭着部材6を貫通し、第二取付部32に形成されたバーリングタップ部35の雌ネジに螺合する。そして、第二狭着部材6の湾曲部63に第二振止ボルトQ2が収容された状態で、第二連結ボルト8の締結によってベース部材3と第二狭着部材6との間に第二振止ボルトQ2が狭着固定される。こうして、第二狭着部材6は、第二連結ボルト8により、ベース部材3に対して相対変位可能に連結され、かつ、ベース部材3との間に第二振止ボルトQ2を挟み込んで保持する。このような構成では、第二連結ボルト8を中心に第二振止ボルトQ2の角度が調整自在であるとともに、第二連結ボルト8の締結によって第二振止ボルトQ2が第二狭着部材6でベース部材3に圧着固定される。
【0040】
なお、第二連結ボルト8は、第二狭着部材6をベース部材3に取り付けるだけであり、第一連結ボルト7とは異なり、上述したように第一ベース部材30と第二ベース部材40とを一体化させるためには寄与しない。
【0041】
本実施形態のボルト連結具1は、ベース部材3(第一ベース部材30及び第二ベース部材40)、第一狭着部材5、第二狭着部材6、第一連結ボルト7、第二連結ボルト8、及び弾性部材9の全てが仮組された状態(仮組状態)で施工することができる。
図5に示すように、弾性部材9が装着された第二連結ボルト8を第二狭着部材6を貫通させて第一ベース部材30に緩止めするとともに、弾性部材9が装着された第一連結ボルト7を第一狭着部材5及び第二ベース部材40を貫通させて第一ベース部材30に緩止めする。この仮組状態では、第一ベース部材30と第二ベース部材40とは、第一連結ボルト7により、吊ボルトPの配置予定位置である湾曲部33,42どうしの間の空間に対して、ベース部材3の延在方向の一方側でのみ係止された状態となっている。なお、ベース部材3の延在方向は、本実施形態では、第一ベース部材30における第一取付部31から湾曲部33を経て第二取付部32へと向かう方向である。
【0042】
この仮組状態で、第一連結ボルト7側の弾性部材9を圧縮変形するように押圧して、第一ベース部材30と第二ベース部材40とを拡開させる(
図5を参照)。そして、それにより生じる隙間Gを通って、第一ベース部材30と第二ベース部材40との間に吊ボルトPを径方向にスライド移動させて挿入させる(※実際にはボルト連結具1側を動かして上記のように相対移動させる)。
【0043】
その後、弾性部材9に対する外部からの押圧を解除すると、
図6に示すように、第一連結ボルト7に装着されている弾性部材9は、ベース部材3に対して第一狭着部材5を圧接付勢し、ベース部材3と第一狭着部材5との間に第一振止ボルトQ1を挟んで仮止めする。合わせて、弾性部材9は、第一ベース部材30と第二ベース部材40とを圧接付勢し、吊ボルトPを挟み込む状態で第一ベース部材30と第二ベース部材40とを仮止めする。また、第二連結ボルト8に装着されている弾性部材9は、ベース部材3に対して第二狭着部材6を圧接付勢し、ベース部材3と第二狭着部材6との間に第二振止ボルトQ2を挟んで仮止めする。このようにして、吊ボルトPに対するベース部材3の仮止めと、ベース部材3に対する2本の振止ボルトQの仮止めとを同時に行うことができる。
【0044】
その後、第一狭着部材5及び第一振止ボルトQ1の角度調整を行って第一連結ボルト7を締結し、第二狭着部材6及び第二振止ボルトQ2の角度調整を行って第二連結ボルト8を締結する。2本の振止ボルトQが、対応する連結ボルト7,8の締結によってベース部材3と対応する狭着部材5,6との間に狭着固定されるので、互いに交差する3本のボルトどうしを容易に連結することができる。
【0045】
また、ボルト連結具1を構成する全ての部品が仮組された状態で、それらをまとめて取り扱いながら取付作業を行うことができる。しかも、上述したように吊ボルトPにベース部材3が仮止めされ、かつ、ベース部材3に2本の振止ボルトQが仮止めされた状態で、取付作業を容易に行うことができ、高所作業であっても安全である。
【0046】
図2及び
図4に示すように、第二狭着部材6は、第一ベース部材30と第二ベース部材40との一体化状態で、第一ベース部材30と第二ベース部材40とに跨って配置される。このため、第一ベース部材30と第二ベース部材40とが拡開するのを第二狭着部材6によって抑制することができ、吊ボルトPに対するベース部材3の取付状態を安定化させることができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
ボルト連結具の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、ベース部材3の具体的構成、並びに第一狭着部材5及び第二狭着部材6の具体的構成が、第1実施形態とは異なっている。以下、本実施形態のボルト連結具1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0048】
図7〜
図9に示すように、本実施形態では、ベース部材3が、第一ベース部材30及び第二ベース部材40の2部材を有することなく、第1実施形態における第一ベース部材30に類似する構造の単一部材で構成されている。ベース部材3は、第一狭着部材5が取り付けられる第一取付部31と、第二狭着部材6が取り付けられる第二取付部32と、それらの間に設けられる湾曲部33とを有する。本実施形態では、ベース部材3は、第二取付部32における湾曲部33側の端部に、ヘミング曲げによってヘアピン状に折り返された折返部38を有する。そして、この折返部38から連続して、第一取付部31との間に湾曲部33が設けられている。湾曲部33は、吊ボルトPの外面に概ね沿う半円筒状に形成されている。湾曲部33には、吊ボルトPが収容される。また、ベース部材3は、第一取付部31及び第二取付部32の上下それぞれの辺縁に沿って延びる補強リブ39を有する。
【0049】
第一狭着部材5は、ベース部材3(本例では第一取付部31)に対向するベース対向部51(
図9を参照)と、ベース対向部51から離間して配置される離間配置部55と、ベース対向部51及び離間配置部55の外縁に沿って立設する側板部57とを有する。ベース対向部51は、平板状に形成され、ベース部材3に直接対向するように配置されている。離間配置部55は、平板状に形成され、ベース部材3から側板部57の高さ分だけ離間して対向するように配置されている。
【0050】
離間配置部55はD字状に形成されている。側板部57は、離間配置部55の形状に応じて、円弧状部とその両端から延びる一対の平坦部とを有する。一対の平坦部は互いに平行に配置されている。側板部57は、一対の平坦部のそれぞれに係止切欠部58を有する。係止切欠部58は、ベース部材3側に向かって開口するように形成されている。係止切欠部58には、第一振止ボルトQ1における軸方向の異なる2箇所がそれぞれ係止される。
【0051】
第二狭着部材6は、第一狭着部材5と同様の構成を備えている。すなわち、第二狭着部材6は、ベース部材3(本例では第二取付部32)に対向するベース対向部61と、ベース対向部61から離間して配置される離間配置部65と、ベース対向部61及び離間配置部65の外縁に沿って立設する側板部67とを有する。側板部67には、第二振止ボルトQ2における軸方向の異なる2箇所がそれぞれ係止される一対の係止切欠部68が形成されている。
【0052】
係止切欠部58や係止切欠部68の内縁は、先端側に向かって次第に厚みが薄くなるように、先鋭状に形成されていることが好ましい。このようにすれば、係止切欠部58が第一振止ボルトQ1のネジ部に係合して、第一狭着部材5に対して第一振止ボルトQ1が軸ズレするのを抑制することができる。また、係止切欠部68が第二振止ボルトQ2のネジ部に係合して、第二狭着部材6に対して第二振止ボルトQ2が軸ズレするのを抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、ベース部材3の湾曲部33に吊ボルトPが収容されている状態で、当該吊ボルトPが、第一振止ボルトQ1を狭着固定する第一狭着部材5により、ベース部材3との間に狭着固定されている。第一狭着部材5は、係止切欠部58に係止された第一振止ボルトQ1をベース部材3の第一取付部31と側板部57との間に狭着固定するとともに、湾曲部33に収容された吊ボルトPを湾曲部33とベース対向部51との間に狭着固定する。このように、本実施形態では、ベース部材3を単一部材で構成するとともに、そのベース部材3との間に、第一狭着部材5によって吊ボルトP及び第一振止ボルトQ1の両方を狭着固定している。よって、第1実施形態のようにベース部材3が第一ベース部材30及び第二ベース部材40の2部材で構成される場合に比べて、部品点数を少なく抑えてコストの低減を図ることができる。
【0054】
本実施形態のボルト連結具1も、ベース部材3、第一狭着部材5、第二狭着部材6、第一連結ボルト7、第二連結ボルト8、及び弾性部材9の全てが仮組された状態(仮組状態)で施工することができる。
図10に示すように、弾性部材9が装着された第一連結ボルト7を第一狭着部材5を貫通させてベース部材3の第一取付部31に緩止めするとともに、弾性部材9が装着された第二連結ボルト8を第二狭着部材6を貫通させてベース部材3の第二取付部32に緩止めする。
【0055】
この仮組状態で、第一連結ボルト7側の弾性部材9を圧縮変形するように押圧して、第一狭着部材5をベース部材3から離間移動させる(
図10を参照)。そして、それにより生じる隙間Gを通って、ベース部材3と第一狭着部材5との間に吊ボルトPを径方向にスライド移動させて挿入させる(※実際にはボルト連結具1側を動かして上記のように相対移動させる)。その後、弾性部材9に対する外部からの押圧を解除すると、
図11に示すように、弾性部材9がベース部材3に対して第一狭着部材5を圧接付勢する状態となり、吊ボルトPにベース部材3が仮止めされる。
【0056】
なお、上記の仮止状態で、第一連結ボルト7に装着されている弾性部材9は、ベース部材3に対して第一狭着部材5を圧接付勢し、ベース部材3と第一狭着部材5との間に第一振止ボルトQ1を挟んで仮止めする。また、第二連結ボルト8に装着されている弾性部材9は、ベース部材3に対して第二狭着部材6を圧接付勢し、ベース部材3と第二狭着部材6との間に第二振止ボルトQ2を挟んで仮止めする。このようにして、吊ボルトPに対するベース部材3の仮止めと、ベース部材3に対する2本の振止ボルトQの仮止めとを同時に行うことができる。
【0057】
その後、第一狭着部材5及び第一振止ボルトQ1の角度調整を行って第一連結ボルト7を締結し、第二狭着部材6及び第二振止ボルトQ2の角度調整を行って第二連結ボルト8を締結する。2本の振止ボルトQが、対応する連結ボルト7,8の締結によってベース部材3と対応する狭着部材5,6との間に狭着固定されるので、互いに交差する3本のボルトどうしを容易に連結することができる。
【0058】
また、ボルト連結具1を構成する全ての部品が仮組された状態で、それらをまとめて取り扱いながら取付作業を行うことができる。しかも、上述したように吊ボルトPにベース部材3が仮止めされ、かつ、ベース部材3に2本の振止ボルトQが仮止めされた状態で、取付作業を容易に行うことができ、高所作業であっても安全である。
【0059】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態では、連結ボルト7,8に装着される弾性部材9としてコイルばねを用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、弾性部材9として、例えばゴム、エラストマー、又はウレタン等で構成され、所定形状(例えば円筒状や、ボルト挿通孔を有する直方体状等)に形成されたものを用いても良い。
【0060】
(2)上記の各実施形態では、狭着部材5,6に弾性部材収容空間Aが形成され、弾性部材9がベース対向部51,61と連結ボルト7,8の頭部71,81との間に配置されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、弾性部材9が、例えば狭着部材5,6の外側において当該狭着部材5,6と連結ボルト7,8の頭部71,81との間に配置されても良い。或いは、例えば
図12に示すように、弾性部材9が、ベース部材3に対して狭着部材5,6とは反対側で連結ボルト7,8に装着されても良い。
【0061】
(3)上記の各実施形態では、狭着部材5,6に弾性部材収容空間Aが形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、弾性部材収容空間Aは、狭着部材5,6とそれに対応する連結ボルト7,8の頭部71,81との間に何らかの形態で設けられれば良い。例えば
図13に示すように、狭着部材5,6のベース対向部51,61に凹状空間Cを形成し、この凹状空間Cにより弾性部材収容空間Aが構成されても良い。この場合、連結ボルト7,8には、受け部材10が、弾性部材9と共に、当該弾性部材9よりも連結ボルト7,8の頭部71,81側に位置する状態で装着されると良い。受け部材10は、例えばワッシャー等であって良い。このような構成において、凹状空間Cの形成位置は狭着部材5,6に限られず、受け部材10に凹状空間Cが形成されても良いし、狭着部材5,6及び受け部材10の両方に凹状空間Cが形成されても良い。或いは、例えば
図14に示すように、受け部材10が弾性部材9を外側から覆う筒状(図示の例では円筒状)に形成されて、受け部材10の内側空間Iにより弾性部材収容空間Aが構成されても良い。
【0062】
(4)上記の各実施形態では、第一連結ボルト7及び第二連結ボルト8の両方に弾性部材9が装着されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第一連結ボルト7及び第二連結ボルト8のうちの一方だけに弾性部材9が装着されても良い。この場合において、第1実施形態のように第一連結ボルト7だけの締結によって第一ベース部材30と第二ベース部材40とが一体化状態となる場合には、当該一体化に寄与する第一連結ボルト7に弾性部材9が装着されることが好ましい。また、第2実施形態のように第一狭着部材5によって吊ボルトP及び第一振止ボルトQ1の両方を狭着固定する場合には、吊ボルトPの狭着固定に寄与する第一狭着部材5を締結する第一連結ボルト7に弾性部材9が装着されることが好ましい。これらの場合、第一狭着部材5だけが「被圧接狭着部材」に相当する。もちろん、各実施形態の構成において第二連結ボルト8だけに弾性部材9が装着されても良い。この場合、第二狭着部材6だけが「被圧接狭着部材」に相当する。
【0063】
(5)上記の第1実施形態では、ベース部材3を構成する第一ベース部材30と第二ベース部材40とが、第一連結ボルト7だけの締結によって一体化状態となって吊ボルトPに固定される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図15に示すように、第一ベース部材30と第二ベース部材40とが、第一連結ボルト7と第二連結ボルト8の両方の締結によって一体化状態となって吊ボルトPに固定されても良い。このような構成では、ボルト連結具1を吊ボルトPに取り付けるには、第一連結ボルト7及び第二連結ボルト8のうちの少なくとも1本及びそれに対応する狭着部材5,6を取り外した状態で作業を行う必要がある。しかし、第一振止ボルトQ1又は第二振止ボルトQ2の仮止めを行うことはできるので、少なくともこの点において、作業性の向上を図ることができる。
【0064】
(6)上記の第2実施形態では、狭着部材5,6の離間配置部55,65がD字状に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、離間配置部55,65は、例えば三角形状、半円形状、又は円形状等に形成されても良い。また、狭着部材5,6が、振止ボルトQに沿う保持片を有しても良い。
【0065】
(7)上記の各実施形態では、ベース部材3(第一ベース部材30)にバーリングタップ部34,35が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えばベース部材3(第一ベース部材30)にナットが固定されていても良い。
【0066】
(8)上記の各実施形態では、ボルト連結具1を、吊ボルトPと交差する2つの平面に沿ってそれぞれ配置される2本の振止ボルトQとを連結するために用いることを主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば吊設機器Eがケーブルラック等のような長尺物である場合等に、交差姿勢で同一平面状に配置される吊ボルトPと2本の振止ボルトQとを連結するためにボルト連結具1が用いられても良い。
【0067】
(9)上述した各実施形態(上記の各実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【解決手段】ボルト連結具(1)は、吊ボルト(P)に固定されるベース部材(3)と第一狭着部材(5)と第二狭着部材(6)と第一連結ボルト(7)と第二連結ボルト(8)と弾性部材(9)とを備える。第一連結ボルト(7)によってベース部材(3)と第一狭着部材(5)との間に第一振止ボルト(Q1)が狭着固定され、第二連結ボルト(8)によってベース部材(3)と第二狭着部材(6)との間に第二振止ボルト(Q2)が狭着固定される。弾性部材(9)が、ベース部材(3)に対して第一狭着部材(5)及び/又は第二狭着部材(6)を圧接付勢するように、第一連結ボルト(7)及び第二連結ボルト(8)の少なくとも一方に装着されている。