(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一狭着部材及び前記第二狭着部材のうち前記吊ボルトの狭着固定に寄与する狭着部材を前記ベース部材側に圧接付勢するように、当該狭着部材に対応する連結ボルトに弾性部材が装着されている請求項1から4のいずれか一項に記載のボルト連結具。
前記ベース部材に、前記第一狭着部材及び前記第二狭着部材のうち前記吊ボルトの狭着固定に寄与する狭着部材に対応する連結ボルトが緩んでいる状態で、前記収容部に収容されている前記吊ボルトを仮保持するための仮保持部材が設けられている請求項1から5のいずれか一項に記載のボルト連結具。
【背景技術】
【0002】
例えば空調機器の室内機や、照明機器、ケーブルラック等の吊設機器は、吊ボルトを用いて天井スラブ等の構造体から吊設される場合がある。このような場合において、地震等に起因する吊設機器の揺れ動きを抑制するため、吊ボルトから、その両隣に位置する他の吊ボルトに対して交差姿勢で振止ボルトを配設し、これらを相互に連結して補強する場合がある。この場合、吊ボルトと2本の振止ボルトとを連結するボルト連結具が用いられる。
【0003】
このようなボルト連結具の一例が、例えば特許第6069453号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1のボルト連結具は、ベース部材〔狭着体1〕と、2つの狭着部材〔斜め支持体3〕と、ベース部材に対して狭着部材をそれぞれ固定する2本の連結ボルト〔連結ボルト2〕とを備えている。そして、狭着部材とベース部材とを重ねて連結ボルトで連結することで、その連結ボルトを中心に振止ボルト〔長ボルトQ〕の角度を調整自在にするとともに、当該振止ボルトを狭着部材でベース部材に圧着固定している。これにより、吊ボルトの振れ止めを容易に行うことができると特許文献1では謳われている。
【0004】
しかし、特許文献1のボルト連結具では、ベース部材が第一ベース部材〔外側狭着体1A〕及び第二ベース部材〔内側狭着体1B〕の2部材で構成され、これらは、吊ボルトの両側で2本の連結ボルトによって締結されて一体化されている。このような構成のボルト連結具を吊ボルトに取り付けるには、1本の連結ボルトで仮組された第一ベース部材と第二ベース部材とで吊ボルトを挟み込んだ後(特許文献1の
図8(イ))、2本目の連結ボルトを新たに取り付ける(同図(ロ))。その後、その連結ボルトに2つ目の狭着部材を新たに取り付けてから、当該連結ボルトを締結する(同図(ハ))。
【0005】
このように、特許文献1のボルト連結具では、ベース部材を構成する第一ベース部材と第二ベース部材とを一体化する2本の連結ボルトのうちの少なくとも1本を取り外した状態で、吊ボルトに対する取付作業を行う必要がある。当然、2つの狭着部材のうちの少なくとも1つも取り外した状態で作業を行う必要がある。このため、互いに独立した複数部材を同時に取り扱わなければならず、取付作業に手間取る可能性がある。また、そのような取付作業が高所で行われる場合には、危険を伴う虞もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
3本のボルトどうしを容易に連結することができ、しかも、容易かつ安全に取付作業を行うことができるボルト連結具の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るボルト連結具は、
吊ボルトと第一振止ボルトと第二振止ボルトとを連結するボルト連結具であって、
ベース部材と、第一狭着部材と、第二狭着部材と、第一連結ボルトと、第二連結ボルトと、を備え、
前記第一連結ボルトの締結によって前記ベース部材と前記第一狭着部材との間に前記第一振止ボルトが狭着固定され、
前記第二連結ボルトの締結によって前記ベース部材と前記第二狭着部材との間に前記第二振止ボルトが狭着固定され、
前記ベース部材が、前記第一狭着部材が取り付けられる第一取付部と、前記第二狭着部材が取り付けられる第二取付部と、前記吊ボルトを収容する収容部と、を有し、
前記収容部に収容されている前記吊ボルトが、前記第一狭着部材及び前記第二狭着部材の少なくとも一方を用いて、前記ベース部材との間に狭着固定されているボルト連結具。
【0009】
この構成によれば、2本の振止ボルトが、対応する連結ボルトの締結によってベース部材と対応する狭着部材との間に狭着固定されるので、3本のボルトどうしを容易に連結することができる。また、上記の構成では、最終的に第一狭着部材及び第二狭着部材の少なくとも一方とベース部材との間に吊ボルトが狭着固定されるので、第一連結ボルト又は第二連結ボルトとそれに対応する狭着部材とをベース部材から完全に取り外さずとも、吊ボルトに対する取付作業を行うことができる。すなわち、緩んだ状態の第一連結ボルト及び第二連結ボルトを介してベース部材と第一狭着部材と第二狭着部材とが仮組された状態で、それらをまとめて取り扱いながら取付作業を行うことができる。よって、取付作業を容易に行うことができ、そのような取付作業が高所で行われる場合でも安全である。ベース部材は単一の部材からなるので、2部材からなるような構成に比べて、部品点数を少なく抑えてコストの低減を図ることができる。
従って、3本のボルトどうしを容易に連結することができ、しかも、容易かつ安全に取付作業を行うことができるボルト連結具を安価に提供することができる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0011】
一態様として、
前記ベース部材に、前記収容部に収容されている前記吊ボルトのネジ部に係止される係止突起が設けられていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、吊ボルトのネジ部とベース部材の係止突起との係止作用により、吊ボルトに対してベース部材ひいてはボルト連結具の全体が軸ズレするのを抑制することができる。
【0013】
一態様として、
前記第一狭着部材及び前記第二狭着部材のうち前記吊ボルトの狭着固定に寄与する狭着部材を前記ベース部材側に圧接付勢するように、当該狭着部材に対応する連結ボルトに弾性部材が装着されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、弾性部材の付勢力により、ベース部材に対して第一狭着部材及び/又は第二狭着部材を圧接付勢して、吊ボルトに対してベース部材を仮止めすることができる。よって、取付作業をさらに容易かつ安全に行うことができる。
【0015】
一態様として、
前記ベース部材に、前記第一狭着部材及び前記第二狭着部材のうち前記吊ボルトの狭着固定に寄与する狭着部材に対応する連結ボルトが緩んでいる状態で、前記収容部に収容されている前記吊ボルトを仮保持するための仮保持部材が設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、ベース部材に後付けされる仮保持部材により吊ボルトを仮保持して、吊ボルトに対してベース部材を仮止めすることができる。よって、取付作業をさらに容易かつ安全に行うことができる。
【0017】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
ボルト連結具の第1実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のボルト連結具1は、吊ボルトPと2本の振止ボルトQ(第一振止ボルトQ1及び第二振止ボルトQ2)とを連結するための器具である。
【0020】
図1に、構造体に吊設機器Eを吊り下げ支持する支持構造を示す。本支持構造は、構造体から垂設された4本の吊ボルトPを吊設機器Eの四隅に固定してなる。なお、構造体は例えばコンクリート製の天井スラブや梁等であって良く、吊設機器Eは例えば空調機器の室内機や照明機器、ケーブルラック等であって良い。
【0021】
互いに隣り合う吊ボルトPどうしの間に、2本の振止ボルトQが互いに交差しかつ吊ボルトPに交差する姿勢で配置されている。ボルト連結具1は、吊ボルトPと、その両隣に位置する2本の吊ボルトPに対してそれぞれ交差姿勢で配設される計2本の振止ボルトQとを連結する。ボルト連結具1は、互いに交差する方向に沿って配置される吊ボルトPと2本の振止ボルトQとを連結する。
【0022】
図1〜
図3に示すように、ボルト連結具1は、ベース部材3と、第一狭着部材5と、第二狭着部材6と、第一連結ボルト7と、第二連結ボルト8と、弾性部材9とを備えている。ベース部材3が吊ボルトPに取り付けられ、そのベース部材3に、第一連結ボルト7によって第一狭着部材5が取り付けられるとともに第二連結ボルト8によって第二狭着部材6が取り付けられている。第一連結ボルト7及び第二連結ボルト8には、弾性部材9がそれぞれ装着されている。弾性部材9としては、コイルばねが用いられている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、ベース部材3は単一部材で構成されている。ベース部材3は、帯板状部材を変形L字状に屈曲形成して構成されている。ベース部材3は、一対の取付部(第一取付部31及び第二取付部32)を有するとともに、それらの間に折返部33と湾曲部34とを有する。一対の取付部の一方である第一取付部31に第一狭着部材5が取り付けられ、一対の取付部の他方である第二取付部32に第二狭着部材6が取り付けられる。
【0024】
第一取付部31は平板状に形成されている。第一取付部31は、内周面に雌ネジが切られたバーリングタップ部35を有する。第二取付部32は平板状に形成されている。第二取付部32は、内周面に雌ネジが切られたバーリングタップ部36を有する。折返部33は、第二取付部32における第一取付部31側の端部に、ヘミング曲げによってヘアピン状に折り返されて形成されている。この折返部33から連続して、第一取付部31との間に湾曲部34が設けられている。湾曲部34は、吊ボルトPの外面に概ね沿う半円筒状に形成されている。湾曲部34には、吊ボルトPが収容される。本実施形態では、湾曲部34が「収容部」に相当する。ベース部材3の湾曲部34の内面には、吊ボルトPのネジ部に係止される係止突起34Aが突出形成されている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、第一狭着部材5は、ベース部材3(本例では第一取付部31)に対向するベース対向部51と、ベース対向部51の外縁に沿って立設する側板部53と、ベース対向部51から離間して配置される離間配置部55とを有する。ベース対向部51は、平板状に形成され、ベース部材3に直接対向するように配置されている。離間配置部55は、平板状に形成され、ベース部材3から側板部53の高さ分だけ離間して対向するように配置されている。
【0026】
ベース対向部51は半円状に形成されている。ベース対向部51には、第一連結ボルト7が挿通されるボルト挿通孔52が形成されている。離間配置部55はD字状に形成されている。離間配置部55には、第一連結ボルト7が挿通されるボルト挿通孔56が形成されている。離間配置部55のボルト挿通孔56は、ベース対向部51のボルト挿通孔52よりも大径に形成されている。ベース対向部51のボルト挿通孔52は第一連結ボルト7の軸部72よりも大径でかつ弾性部材9よりも小径であるのに対して、離間配置部55のボルト挿通孔56は弾性部材9よりも大径となっている。このため、
図4に示すように、第一連結ボルト7に装着される弾性部材9は、離間配置部55を貫通して、ベース対向部51と第一連結ボルト7の頭部71との間に配置されている。ベース対向部51と離間配置部55との間の空間は、弾性部材9が収容される弾性部材収容空間Aとなっている。
【0027】
側板部53は、離間配置部55の形状に応じて、円弧状部とその両端から延びる一対の平坦部とを有する。一対の平坦部は互いに平行に配置されている。側板部53は、一対の平坦部のそれぞれに係止切欠部54を有する。係止切欠部54は、ベース部材3側に向かって開口するように形成されている。係止切欠部54には、第一振止ボルトQ1における軸方向の異なる2箇所がそれぞれ係止される。
【0028】
第二狭着部材6は、第一狭着部材5と同様の構成を備えている。すなわち、第二狭着部材6は、ベース部材3(本例では第二取付部32)に対向するベース対向部61と、ベース対向部61の外縁に沿って立設する側板部63と、ベース対向部61から離間して配置される離間配置部65とを有する。ベース対向部61及び離間配置部65に、それぞれ第二連結ボルト8が挿通されるボルト挿通孔62,66が形成されている。側板部63には、第二振止ボルトQ2における軸方向の異なる2箇所がそれぞれ係止される一対の係止切欠部64が形成されている。
【0029】
係止切欠部54や係止切欠部64の内縁は、先端側に向かって次第に厚みが薄くなるように、先鋭状に形成されていることが好ましい。このようにすれば、係止切欠部54が第一振止ボルトQ1のネジ部に係合して、第一狭着部材5に対して第一振止ボルトQ1が軸ズレするのを抑制することができる。また、係止切欠部64が第二振止ボルトQ2のネジ部に係合して、第二狭着部材6に対して第二振止ボルトQ2が軸ズレするのを抑制することができる。
【0030】
第一連結ボルト7は、第一狭着部材5を貫通して、ベース部材3(本例では第一取付部31)に第一狭着部材5を取り付ける。第一連結ボルト7は、第一狭着部材5を貫通し、ベース部材3の第一取付部31に形成されたバーリングタップ部35の雌ネジに螺合する。その際、第一狭着部材5の側板部53に形成された係止切欠部54に第一振止ボルトQ1が係止された状態で、第一連結ボルト7の締結によってベース部材3と第一狭着部材5との間に第一振止ボルトQ1が狭着固定される。こうして、第一狭着部材5は、第一連結ボルト7により、ベース部材3に対して相対変位可能に連結され、かつ、ベース部材3との間に第一振止ボルトQ1を挟み込んで保持する。このような構成では、第一連結ボルト7を中心に第一振止ボルトQ1の角度が調整自在であるとともに、第一連結ボルト7の締結によって第一振止ボルトQ1が第一狭着部材5でベース部材3に圧着固定される。
【0031】
第二連結ボルト8は、第二狭着部材6を貫通して、ベース部材3(本例では第二取付部32)に第二狭着部材6を取り付ける。第二連結ボルト8は、第二狭着部材6を貫通し、ベース部材3の第二取付部32に形成されたバーリングタップ部36の雌ネジに螺合する。その際、第二狭着部材6の側板部63に形成された係止切欠部64に第二振止ボルトQ2が係止された状態で、第二連結ボルト8の締結によってベース部材3と第二狭着部材6との間に第二振止ボルトQ2が狭着固定される。こうして、第二狭着部材6は、第二連結ボルト8により、ベース部材3に対して相対変位可能に連結され、かつ、ベース部材3との間に第二振止ボルトQ2を挟み込んで保持する。このような構成では、第二連結ボルト8を中心に第二振止ボルトQ2の角度が調整自在であるとともに、第二連結ボルト8の締結によって第二振止ボルトQ2が第二狭着部材6でベース部材3に圧着固定される。
【0032】
図2及び
図4に示すように、本実施形態の第一狭着部材5は、ベース対向部51の一部及び側板部53の一部が、ベース部材3の湾曲部34と対面するように配置されている。また、第一狭着部材5は、側板部53の一部がベース部材3の折返部33と僅かに隙間を隔てて対面するように配置されている。折返部33と側板部53との間の微小隙間gの大きさは、吊ボルトPの直径未満であり、好ましくは吊ボルトPの半径以下である。本実施形態では、微小隙間gの大きさは、吊ボルトPのネジ部(ここではネジ山)の高さ程度に設定されている。
【0033】
本実施形態では、ベース部材3の湾曲部34に吊ボルトPが収容されている状態で、当該吊ボルトPが、第一振止ボルトQ1を狭着固定する第一狭着部材5により、ベース部材3との間に狭着固定されている。第一狭着部材5は、係止切欠部54に係止された第一振止ボルトQ1をベース部材3の第一取付部31と側板部53との間に狭着固定するとともに、湾曲部34に収容された吊ボルトPを湾曲部34とベース対向部51との間に狭着固定する。このように、本実施形態では、ベース部材3を単一部材で構成するとともに、そのベース部材3との間に、第一狭着部材5によって吊ボルトP及び第一振止ボルトQ1の両方を狭着固定している。よって、ベース部材3が2部材(例えば一対の狭着体)で構成される場合に比べて、部品点数を少なく抑えてコストの低減を図ることができる。
【0034】
なお、本実施形態では、第二狭着部材6は、ベース部材3との間に第二振止ボルトQ2を狭着固定するだけであり、第一狭着部材5とは異なり、ベース部材3との間に吊ボルトPを狭着固定するためには寄与しない。すなわち、本実施形態では、第一狭着部材5及び第二狭着部材6のうち、第一狭着部材5だけが吊ボルトPの狭着固定に寄与している。
【0035】
本実施形態のボルト連結具1は、ベース部材3、第一狭着部材5、第二狭着部材6、第一連結ボルト7、第二連結ボルト8、及び弾性部材9の全てが仮組された状態(仮組状態)で施工することができる。
図5に示すように、弾性部材9が装着された第一連結ボルト7を第一狭着部材5を貫通させてベース部材3の第一取付部31に緩止めするとともに、弾性部材9が装着された第二連結ボルト8を第二狭着部材6を貫通させてベース部材3の第二取付部32に緩止めする。
【0036】
この仮組状態で、第一連結ボルト7側の弾性部材9を圧縮変形するように押圧して、第一狭着部材5をベース部材3から離間移動させる(
図5を参照)。そして、それにより生じる隙間Gを通って、ベース部材3と第一狭着部材5との間に吊ボルトPを径方向にスライド移動させて挿入させる(※実際にはボルト連結具1側を動かして上記のように相対移動させる)。その後、弾性部材9に対する外部からの押圧を解除すると、
図6に示すように、弾性部材9が第一狭着部材5をベース部材3側に圧接付勢する状態となり、吊ボルトPにベース部材3及び第一狭着部材5を含むボルト連結具1の全体が仮止めされる。
【0037】
なお、上記の仮止状態で、第一連結ボルト7に装着されている弾性部材9は、第一狭着部材5をベース部材3側に圧接付勢し、ベース部材3と第一狭着部材5との間に第一振止ボルトQ1を挟んで仮止めする。また、第二連結ボルト8に装着されている弾性部材9は、第二狭着部材6をベース部材3側に圧接付勢し、ベース部材3と第二狭着部材6との間に第二振止ボルトQ2を挟んで仮止めする。このようにして、吊ボルトPに対するベース部材3の仮止めと、ベース部材3に対する2本の振止ボルトQの仮止めとを同時に行うことができる。
【0038】
その後、第一狭着部材5及び第一振止ボルトQ1の角度調整を行って第一連結ボルト7を締結し、第二狭着部材6及び第二振止ボルトQ2の角度調整を行って第二連結ボルト8を締結する。2本の振止ボルトQが、対応する連結ボルト7,8の締結によってベース部材3と対応する狭着部材5,6との間に狭着固定されるので、互いに交差する3本のボルトどうしを容易に連結することができる。
【0039】
また、ボルト連結具1を構成する全ての部品が仮組された状態で、それらをまとめて取り扱いながら取付作業を行うことができる。しかも、上述したように吊ボルトPにベース部材3が仮止めされ、かつ、ベース部材3に2本の振止ボルトQが仮止めされた状態で、取付作業を容易に行うことができ、高所作業であっても安全である。さらには、少ない部品点数で低コストに、上述した各種の利点を有するボルト連結具1を実現することができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
ボルト連結具の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、連結ボルト7,8に弾性部材9が装着されていない点で第1実施形態とは異なっている。また、ベース部材3の具体的構成、第一狭着部材5及び第二狭着部材6の具体的構成が、第1実施形態とは一部異なっている。以下、本実施形態のボルト連結具1について、主に第1実施形態との相違点について説明する。なお、特に明記しない点に関しては、第1実施形態と同様であり、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0041】
図7〜
図9に示すように、本実施形態のベース部材3は、折返部33(
図3等を参照)を有することなく、第一取付部31と第二取付部32と湾曲部34とだけを有している。第一取付部31と第二取付部32との間に設けられる湾曲部34は、平面視形状がおよそ90°の中心角を有する円弧状となる湾曲板部として形成されている。第二取付部32には、バーリングタップ部36の周囲に、複数(本例では4つ)の係止孔32Aが形成されている。この係止孔32Aは、湾曲部38に収容されている吊ボルトPを仮保持するための仮保持部材4をベース部材3に取り付けるための孔部である。
【0042】
本実施形態では、仮保持部材4として、弾性変形可能な薄板状に形成されたバネ板部材40が用いられている。バネ板部材40は、ベース部材3(本例では第二取付部32)に重ね合わされる重合部41と、重合部41から延出し、ベース部材3と重合部41とが重ね合わされた状態で湾曲部34に対面する湾曲部42とを有する。湾曲部42の先端は鈍角状に折り返されており、先端屈曲部43となっている。重合部41には、第二連結ボルト8が挿通されるボルト挿通孔41Aが形成されている。また、重合部41には、ボルト挿通孔41Aの周囲に、複数(本例では係止孔32Aと同数の4つ)のフック部44が形成されている。このフック部44が第二取付部32の係止孔32Aにそれぞれ係止することで、バネ板部材40がベース部材3に取り付けられる。湾曲部42の内面には、吊ボルトPのネジ部に係止される係止突起(図示せず)が突出形成されていることが好ましい。
【0043】
第一狭着部材5は、ベース部材3(本例では第一取付部31)に対向するベース対向部51と、ベース対向部51の外縁に沿って立設する側板部53と、側板部53における円弧状部の下端から外側に向かって延出する鍔部57とを有する。本実施形態のベース対向部51は、平板状に形成され、ベース部材3から側板部53の高さ分だけ離間して対向するように配置されている。鍔部57は、一対の係止切欠部54どうしの間に亘る円弧型の平板状に形成され、ベース部材3に直接対向するように配置されている。
【0044】
第二狭着部材6は、第一狭着部材5と同様の構成を備えている。すなわち、第二狭着部材6は、ベース部材3に対向するベース対向部61と、ベース対向部61から立設する側板部63と、側板部63から延出する鍔部67とを有する。
【0045】
図9に示すように、本実施形態では、第一狭着部材5の鍔部57の一部がベース部材3の湾曲部34と対面するように配置されているとともに、それとは異なる位相で、第二狭着部材6の鍔部67の一部がベース部材3の湾曲部34と対面するように配置されている。そして、第一連結ボルト7の締結によって湾曲部34と鍔部57とで吊ボルトPが狭着され、第二連結ボルト8の締結によって湾曲部34と鍔部67とで間に仮保持部材4(バネ板部材40)の湾曲部42を挟んで吊ボルトPが狭着される。こうして、本実施形態では、ベース部材3の湾曲部34に収容されている吊ボルトPが、第一狭着部材5及び第二狭着部材6の両方により、ベース部材3との間に狭着固定されている。すなわち、本実施形態では、第一狭着部材5及び第二狭着部材6の両方が、吊ボルトPの狭着固定に寄与している。
【0046】
本実施形態のボルト連結具1は、ベース部材3、仮保持部材4、第一狭着部材5、第二狭着部材6、第一連結ボルト7、及び第二連結ボルト8の全てが仮組された状態(仮組状態)で施工することができる。弾性部材9が装着された第一連結ボルト7を第一狭着部材5を貫通させてベース部材3の第一取付部31に緩止めするとともに、弾性部材9が装着された第二連結ボルト8を第二狭着部材6を貫通させてベース部材3の第二取付部32に緩止めする。また、ベース部材3に仮保持部材4を取り付けておく。
【0047】
この仮組状態で、仮保持部材4としてのバネ板部材40を弾性変形させながら、吊ボルトPを径方向にスライド移動させて湾曲部34に収納させる(※実際にはボルト連結具1側を動かして上記のように相対移動させる)。その際、吊ボルトPの径方向に沿って配置されている先端屈曲部43が挿入ガイドとして機能し、湾曲部34への吊ボルトPの収納操作を容易に行うことができる。こうして、バネ板部材40の弾性復元力により、吊ボルトPにベース部材3及び仮保持部材4を含むボルト連結具1の全体が仮止めされる。
【0048】
その後、第一狭着部材5及び第一振止ボルトQ1の角度調整を行って第一連結ボルト7を締結し、第二狭着部材6及び第二振止ボルトQ2の角度調整を行って第二連結ボルト8を締結する。2本の振止ボルトQが、対応する連結ボルト7,8の締結によってベース部材3と対応する狭着部材5,6との間に狭着固定されるので、互いに交差する3本のボルトどうしを容易に連結することができる。
【0049】
また、ボルト連結具1を構成する全ての部品が仮組された状態で、それらをまとめて取り扱いながら取付作業を行うことができる。しかも、上述したように吊ボルトPにベース部材3が仮止めされた状態で、取付作業を容易に行うことができ、高所作業であっても安全である。さらには、少ない部品点数で低コストに、上述した各種の利点を有するボルト連結具1を実現することができる。
【0050】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の各実施形態では、連結ボルト7,8に装着される弾性部材9としてコイルばねを用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、弾性部材9として、例えばゴム、エラストマー、又はウレタン等で構成され、所定形状(例えば円筒状や、ボルト挿通孔を有する直方体状等)に形成されたものを用いても良い。
【0051】
(2)上記の第1実施形態では、第一連結ボルト7及び第二連結ボルト8の両方に弾性部材9が装着されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば第一連結ボルト7及び第二連結ボルト8のうち、吊ボルトPの狭着固定に寄与する第一狭着部材5を締結する第一連結ボルト7だけに、弾性部材9が装着されても良い。或いは、第二連結ボルト8だけに弾性部材9が装着されても良い。
【0052】
(3)上記の第2実施形態では、仮保持部材4として、重合部41と湾曲部42とを有するバネ板部材40を用いる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば
図10に示すように、弾性変形可能なU字状のクリップ部材45を仮保持部材4として用いても良い。この場合、例えばベース部材3の湾曲部34に一対の挿入孔34Bを形成しておき、これにクリップ部材45の両先端部を挿入した状態で固定して用いると良い。
【0053】
(4)上記の各実施形態では、ベース部材3の湾曲部34に係止突起34Aが形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば上記の第2実施形態において仮保持部材4(バネ板部材40)の湾曲部42に係止突起が形成される等、他の軸ズレ防止機構が存在する場合には、湾曲部34の係止突起34Aが省略されても良い。
【0054】
(5)上記の各実施形態において、狭着部材5,6の形状はいかなる形状であっても良い。例えば
図10に示すように、第一狭着部材5が、ベース部材3に対向するベース対向部51と、第一振止ボルトQ1の外面に概ね沿う半円筒状の湾曲部58とを有するように形成されても良い。第二狭着部材6に関しても同様である。また、狭着部材5,6のベース対向部51,61や離間配置部55,65は、例えば三角形状、半円形状、又は円形状等に形成されても良い。さらに、狭着部材5,6が、振止ボルトQに沿う保持片を有しても良い。
【0055】
(6)上記の各実施形態において、ベース部材3の形状はいかなる形状であっても良い。例えば
図11に示すように、ベース部材3が、第一取付部31の上下それぞれの辺縁から立設する一対の立設壁38を有し、当該一対の立設壁38のそれぞれに係止切欠部39が形成されても良い。一対の係止切欠部39には、吊ボルトPにおける軸方向の異なる2箇所がそれぞれ係止される。このような構成では、一対の係止切欠部39に亘る上下方向の空間が「収容部」に相当する。図示の例では、第一振止ボルトQ1を狭着固定する第一狭着部材5が、合わせて、係止切欠部39に係止された吊ボルトPを立設壁38と鍔部57との間に狭着固定している。かかる構成において、図示するように、吊ボルトPのネジ部に係止される係止突起31Aが第一取付部31に設けられても良い。或いは、係止切欠部39の内縁が先端側に向かって次第に厚みが薄くなるように先鋭状に形成されている等して軸ズレが防止される場合には、そのような係止突起31Aが省略されても良い。
【0056】
(7)上記の各実施形態では、ベース部材3にバーリングタップ部35,36が設けられている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えばベース部材3にナットが固定されていても良い。
【0057】
(8)上記の各実施形態では、ボルト連結具1を、吊ボルトPと交差する2つの平面に沿ってそれぞれ配置される2本の振止ボルトQとを連結するために用いることを主に想定して説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば吊設機器Eがケーブルラック等のような長尺物である場合等に、交差姿勢で同一平面状に配置される吊ボルトPと2本の振止ボルトQとを連結するためにボルト連結具1が用いられても良い。
【0058】
(9)上述した各実施形態(上記の各実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【解決手段】ボルト連結具(1)は、ベース部材(3)と第一狭着部材(5)と第二狭着部材(6)と第一連結ボルト(7)と第二連結ボルト(8)とを備える。第一連結ボルト(7)によってベース部材(3)と第一狭着部材(5)との間に第一振止ボルト(Q1)が狭着固定され、第二連結ボルト(8)によってベース部材(3)と第二狭着部材(6)との間に第二振止ボルト(Q2)が狭着固定される。ベース部材(3)が吊ボルト(P)を収容する収容部(34)を有し、吊ボルト(P)が第一狭着部材(5)及び第二狭着部材(6)の少なくとも一方を用いてベース部材(3)との間に狭着固定されている。