(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の人体装着型冷却流体通路エレメントにおいて、前記冷却通路に区画線としての接合部を少なくとも一つ設け、前記接合部は前記人体から見て上側に位置する上側シート材と下側シート材を接合した人体装着型冷却流体通路エレメント。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では吸湿性冷却流体溶液としては塩化リチウム水溶液が例示されており、一般の使用者が簡便かつ安価に利用する点においては十分ではなかった。
また、ヒータタンク等の加熱脱水手段が必要であることから、単純に冷却流体としての水を循環させる構成に比べてコストが高くなるとともに構造が複雑になり、故障などの不都合が発生する可能性が高くなる課題がある。
また、上記特許文献2では、冷却管の横断面は円形であることから、人体に接する面積が少なくなってしまう課題がある。また、冷却管が折れ曲がると冷却流体が流れなくなるとともに、冷却管は生地に交互に織り込まれているので、さらに人体との接触面積が少なくなり、冷却効果を高めることができない課題がある。
また、管形の冷却通路を冷却服に取り付ける方法としては、冷却管をある程度動けるように余裕を持って服に縫い付ける方法も考えられるが、直径5mm〜10mm程度の凸形の冷却管をミシン機によって服に縫い付けることは技術的に難しい課題があった。また、ミシン機を用いず作業者の手作業で服に冷却管を縫い付けることは作業時間がかかり、製造コストが著しく高くなる課題があった。
【0005】
本発明の目的は上記従来技術の課題を解決した人体装着型冷却流体通路エレメント及びそのエレメントを備えた冷却服を提供することにある。
具体的な目的の一例を示すと、以下の通りである。
(A)冷却流体による冷却効果を向上させるために、人体に接触する面積を大きくすることができるとともに、人体の動きに従って折れ曲がっても冷却流体の流れを良好に保つことができる人体装着型冷却流体通路エレメント及び冷却服を提供する。
(B)従来の冷却服の冷却通路の構成に比べて、製造工数又は製造コストを低減できる人体装着型冷却流体通路エレメント及び冷却服を提供する。
なお、上記に記載した以外の発明の課題、その解決手段及びその効果は、後述する明細書内の記載において詳しく説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は多面的に表現できるが、例えば、代表的なものを挙げると、次のように構成したものである。なお、下記各発明において、各符号は後述する実施形態との対応関係を分かりやすくするために一例として示したものであり、本発明の各構成要素は、実施形態に記載した符号に係る構成に限定されないことは言うまでもない。
【0007】
本発明に係る人体装着型冷却流体通路エレメントは、水などの冷却流体を漏らさず流すことができる素材を用いて人体の温度を奪うように接することができる冷却通路4を構成するとともに、
前記冷却通路4内に装着時に人体面から見て少なくとも上下方向8に幅を有して柔軟性を有する立体構造体6を収容し、前記冷却通路4が屈曲したときであっても、前記立体構造体6の存在によって前記冷却流体の流れる空間を確保するように構成し、
前記冷却通路4を上側シート材2aと下側シート材2bの周縁をシールしたシール部5で囲むことによって製造し、前記人体面から見て少なくとも前記上下方向8よりも前記幅方向9に広い扁平な前記冷却通路4を構成し、
前記シール部5を構成する場合に、前記上側シート材2aと前記下側シート材2bを構成する素材として合成樹脂を使用し、
前記冷却通路4を、人間が装着する帽子や衣服等の装着面部62に着脱自在の構成で取り付けるように構成し、
前記装着面部62に取り付けられる前記冷却通路4は冷却流体の流す方向に沿うように細長の線形及び曲線形に延びる構成になっており、
前記面ファスナー63a・63bの内、前記装着面部62に設けられる一方側の前記面ファスナー63aは身体側に前記人体装着型冷却流体通路エレメント1が密接するように前記装着面部62の内側面に設けるとともに、他方側の前記面ファスナー63bは前記人体装着型冷却流体通路エレメント1の外側の面に設け、
前記面ファスナー63a・63bによって着脱自在に取り付けられる前記装着面部62に前記人体装着型冷却流体通路エレメント1をほぼ収容するポケット部を設け、
前記他方側の前記面ファスナー63bは、前記人体装着型冷却エレメント1の外縁形状に対応して必要個数設けられ、
前記他方側の面ファスナー63bは、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1の前記細長の線形及び曲線形に延びる構成において離隔させて配置し、
人間が装着する帽子や衣服等の前記装着面部62に固定される各冷却通路4の間には、各冷却通路4が固定されていない装着面部62が自然に形成され、各冷却通路4が固定されていない装着面部62には前記シート材2a・2bが存在せず、しかも前記必要個数によって前記装着面部62に固定される各冷却通路4に対する各冷却通路4が固定されていない装着面部62の自由な動きを確保できるように構成したことを特徴とする。
また、本発明に係る人体装着型冷却流体通路エレメントは、水などの冷却流体を漏らさず流すことができる素材を用いて人体の温度を奪うように接することができる冷却通路4を構成するとともに、前記冷却通路4内に装着時に人体面から見て少なくとも上下方向8に幅を有して柔軟性を有する立体構造体6を収容し、前記冷却通路4が屈曲したときであっても、前記立体構造体6の存在によって前記冷却流体の流れる空間を確保するように構成したことを特徴とする。
この構成であれば、冷却通路内に少なくとも上下方向に幅を有し、柔軟性を有する立体構造体を収容することで、冷却通路が人体の動き、例えば、背骨の曲がり、腕の曲がり、首の曲がりによって折り曲がった状態でも冷却通路が圧迫されて冷却流体の流れが遮断されることを防止することができる。
【0008】
本発明は、少なくとも前記上下方向8に繊維状物が交差することで前記立体構造体6を構成したことを特徴とする。
前記繊維状物を構成する素材としては、糸状物や繊維状に見える柔軟性を有する素材を含む。前記繊維状物は水分を吸収して膨潤して冷却流体の流れを阻害することのない素材で構成されていることが好ましい。前記繊維状物の一例として好適なのは合成樹脂繊維である。
この構成であれば、立体構造体が繊維状物で構成されていることで立体構造体を簡単かつ安価に構成できる。
【0009】
本発明は、前記立体構造体6を構成する開口10の表面積を0.5mm
2〜100mm
2に設定したことを特徴とする。
上記開口の表面積は四角形、三角形の定型に限定されず、部分的に形状の異なる不定形であっても良い。また、この開口には水を吸水しない繊維状物で構成されたスポンジのような多孔質材の開口も含む。開口の方向は、上下方向8又は幅方向9であっても良い。
この構成であれば、冷却しようとする人体の動きに対応して人体装着型冷却流体通路エレメントや冷却服を構成した場合に、上記範囲に開口の表面積を構成することで、折り曲げ時に冷却液の流れが遮断されることを抑制することができる。
また、人体の折れ曲がる箇所の動きの大きさに対応して冷却流体の流れを良好に確保できる表面積に設定することで、冷却流体を押し出すポンプの力が小さくでも良好な冷却を実現できる。
【0010】
本発明は、前記立体構造体6を構成する開口10の表面積を1mm
2〜25mm
2に設定したことを特徴とする。
この構成であれば、前記開口の表面積の構成に比べて、さらに、好ましい範囲で、人体の各種部位のあらゆる動きであっても冷却流体の遮断を確実に抑制することができ、確実な人体の冷却を実現できる。
【0011】
本発明は、前記冷却通路4を上側シート材2aと下側シート材2bの周縁をシールしたシール部5で囲むことによって製造し、前記人体面から見て少なくとも前記上下方向8よりも前記幅方向9に広い扁平な前記冷却通路4を構成したことを特徴とする。
この構成であれば、冷却通路を複数のシート材の周縁をシールすることで製造することで、人体に装着する場合に、人体の形状に合致した色々な形状の冷却通路を安価かつ簡単に製造することができる。
また、シート材を用いて人体面から見て少なくとも上下方向よりも幅方向に広い扁平な冷却通路を構成することで、少なくとも横断面が円管形の冷却管を用いる従来の構成に比べて、同じ流量の冷却流体を流した場合において、人体に接する面積を増やして冷却効果を高めることができる。
【0012】
本発明は、前記シール部5自体や前記シール部5の外縁に冷却服12に取り付ける外縁取付部13を形成したことを特徴とする。
前記外縁取付部を取り付ける方法としては、冷却服の生地に縫い付ける方法や、冷却服の生地に熱圧着する部分や、接着剤などによって貼付する方法が例示できる。これらの方法において、冷却服を洗濯した場合でも外縁取付部が冷却服の生地から離脱しないように強固に固定することが好ましい。
この構成であれば、冷却服に冷却通路を取り付けることが簡単に行えるので冷却通路を備えた冷却服の製造が簡単に行えて製造コストを低減できる。
【0013】
本発明は、前記立体構造体6を前記人体面から見て少なくとも前記上下方向8に交差させた柔軟性を有するメッシュ3で構成したことを特徴とする。
メッシュの開口の形状は四角形、ハニカム形、三角形や、繊維状物が交差する形状が所々において異なる不定形などのものが採用できる。
この構成であれば、すでに販売されている上下方向に交差させた柔軟性を有するメッシュを本発明に係る立体構造体に採用することができるので、安価に人体装着型冷却流体通路エレメントを製造できる。
【0014】
本発明は、前記冷却通路4に区画線としての接合部11を少なくとも一つ設け、前記接合部11は前記人体から見て上側に位置する上側シート材2aと下側シート材2bを接合することによって前記冷却通路4内に複数の分岐冷却通路4aを形成したことを特徴とする。
この構成であれば、接合部を設けることで、冷却通路内に複数の分岐冷却通路を形成することができる。冷却流体が流れる押出し圧力を受けた場合、冷却通路を複数の分岐冷却通路に分割することで冷却通路が膨らみすぎて冷却流体の循環が低下することや、過剰な膨らみによる人体装着型冷却流体通路エレメントを装着した場合の違和感を低減することができる。
【0015】
本発明は、前記シール部5又は前記接合部11を構成する場合に、前記上側シート材2aと前記下側シート材2bを構成する素材として合成樹脂を使用するとともに、前記上側・下側シート材2a・2bを構成する合成樹脂と熱溶着(ヒートシール)しやすい合成樹脂成分によって前記立体構造体6を構成したことを特徴とする。
前記「合成樹脂と熱溶着しやすい合成樹脂成分によって前記立体構造体を構成した」とは、立体構造体自体を熱溶着しやすい合成樹脂成分で構成する場合と、立体構造体の表面に熱溶着しやすい合成樹脂成分をコーティングする場合とを含む。
上記構成の一例を挙げれば、上側シート材と下側シート材として塩化ビニルを採用した場合には、メッシュ等の立体構造体自体又はその表面に塩化ビニルを用いることが好ましいことになる。前記立体構造体、及び上側・下側シート材の組合せは、塩化ビニル以外の他の合成樹脂素材においても同様に接合しやすい材料に選択できることは明らかである。
この構成であれば、立体構造体、上側・下側シート材の組合せにおいて、熱溶着によって立体構造体の位置ズレを確実に抑制することができ、簡単かつ安価に人体装着型冷却流体通路エレメント又は冷却服を提供できる利点がある。
【0016】
本発明に係る冷却服は、前記各本発明のいずれか一つに記載の前記人体装着型冷却流体通路エレメント1を使用したことを特徴とする。
なお、上記「使用する」には、冷却服を構成する素材が人体装着型冷却流体通路エレメントと一体化されている構成や、服の一部分に人体装着型冷却流体通路エレメントが含まれている構成を共に含む。
この構成であれば、人体装着型冷却流体通路エレメントを使用して冷却服を構成しているので、折れ曲がりの問題を解決できるとともに製造コストを低減した冷却服を提供できる。
上記本発明は、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1は前記人体の背骨に沿って略左右対称形に配設されていることを特徴とする。
この構成であれば、人体の背骨に沿って人体装着型冷却流体通路エレメントを略左右対称に配設されているので、冷却効果の点において冷却流体の流れを均一的に冷却服の全域に及ぼすことができる。
【0017】
本発明は、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1は前記分岐冷却通路4aの
前記区画線の個数を変えることで、前記複数の分岐冷却通路4aの膨らみ度合いを設定したことを特徴とする。
この構成であれば、例えば、曲率が大きい頭部と曲率が小さい背中の部分で、複数の分岐冷却通路の膨らみ度合いを人体の曲率に対応して設定することで、従来技術では難しかった人体の箇所に応じた冷却を良好に行うことができる。つまり、本発明であれば、冷却流体の流通や圧迫度合いを適宜、好ましい状態に保ちつつ、良好に冷却することができる。
【0018】
本発明は、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1を配設することで前記人体を冷却する場合に、前記人体表面を覆う前記人体装着型冷却流体通路エレメント1が枝形に延びる形状に構成され、前記枝形部14において、前記冷却流体が前記枝形部14の先端側に流す侵入流路15と前記枝形部14の先端側から基端側に戻るための戻り流路16とが各枝形部14に形成されていることを特徴とする。
この構成であれば、人体を覆う広い平面において冷却流体の循環を良好に行うことができる。
【0019】
本発明は、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1を配設することで前記人体を冷却する場合に、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1が胴部用エレメント1a及び腕部用エレメント1bを含んで構成され、前記胴部用・腕部用エレメント1a・1bの部材を接続する又は一体製造で構成するようにしたことを特徴とする。
なお、必要により、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1に頭部用エレメント1cを含めることができる。
この構成であれば、人体装着型冷却流体通路エレメントを用いて人体を覆う冷却服を構成する場合に、製造工程を低減して低コストで製造することができる。
【0020】
本発明に係る人体装着型冷却流体通路エレメントは、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1のそれぞれに着脱自在の冷却通路接続部31・31を設け、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1と着脱自在の前記冷却通路接続部31・31の間にそれらの距離を変化できるように余裕を持たせた接続用流水管61・61を設けたことを特徴とする。
この構成であれば、例えば、頭部冷却部や冷却服などを着た作業者が、人体装着型冷却流体通路エレメントの間の距離が大きく変化するような動作を行なっても、距離を変化できるように余裕を持たせた接続用流水管を設けているので、作業者の動きを妨げることが少なくなる。また、人体装着型冷却流体通路エレメントの間にその距離が長くなるような過度な力がかかって破損することを抑制することができる。
【0021】
本発明に係る人体装着型冷却流体通路エレメントは、人間が装着する帽子や衣服等の装着面部62に着脱自在の一方側の面ファスナー63aを設け、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1に他方側の面ファスナー63bを設けて、前記人体装着型冷却流体通路エレメント1を前記装着面部62と着脱自在に構成したことを特徴とする。
この構成であれば、例えば、帽子や衣服等の装着面部の洗濯時に人体装着型冷却流体通路エレメントを簡単に離脱させることができる。また、この構成は人体装着型冷却流体通路エレメント1の一部が破損した場合に簡単にその破損部分を交換することができる点において有利である。なお、人体装着型冷却流体通路エレメントには、腕部、頭部、及び胴部などの部分的な人体装着型冷却流体通路エレメントも含む。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明であれば、冷却流体による冷却効果を向上させるために、人体に接触する面積を大きくすることができるとともに、人体の動きに従って折れ曲がっても冷却流体の流れを良好に保つことができる。
また、従来の冷却服の冷却通路の構成に比べて、製造工数又は製造コストを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る人体装着型冷却流体通路エレメント1の第1実施形態について、図面に基づき説明する。
なお、適宜、簡便のために本明細書において、「人体装着型冷却流体通路エレメント」を「人体装着型冷却エレメント」と略称する。ここで、「人体装着型冷却流体通路エレメント」の「冷却流体」としては、一般的な水の他、必要により冷却機能を有する各種の流体を採用することができる。そのような流体としては、例えば、水と他の常温で液体状物の混合物が例示できる。
主に
図1〜
図3(a)(b)に示すように、塩化ビニル樹脂シートなどの各種のシート材2を採用し、その一対の上側・下側シート材2a・2bの間に塩化ビニルコーティングしたメッシュ3を人体面から見て上下方向8に挟み込むとともに、人体面から見て幅方向9に広がりを持って冷却通路4を形成した構成となっている。
前記メッシュ3は立体構造体6の一例として採用されており、この立体構造体6は柔軟性を有する素材で構成され、冷却通路4内で位置ズレしないように固定部7によって固定されている。
図1に示す構成では固定部7は立体構造体6を固定する点部17によって構成された例が示してあり、
図2に示す構成では固定部7は流体を流す方向に沿って線形に延びる接合部11で構成してある。立体構造体6は合成樹脂繊維など水分を多量に豊潤せずに必要十分な水路を確保できる繊維素材が使用される。
【0025】
立体構造体6は、
図1(b)に示すように、繊維素材を上下方向8にほぼ互い違いに編むことによって製造された構造体である。
立体構造体6の一例としては、縦と横の繊維素材を少なくとも上下方向8に交差するように編み込んだ網材が例示できる。この場合、
図1及び
図2のように、上下左右に捩れた繊維素材を用いることもできる。
同じメッシュであっても
図3(a)(b)を示すように当接する平面(人体面)に対して上下方向8において縦材20と横材21が交差する構成では、エレメント1が折れ曲がった部分でも、メッシュ3の上下方向の幅よりも冷却流体が流れる幅D1は大きくなり、冷却流体が流れる隙間領域を確保することができる。この冷却流体の流れを
図3(b)において矢印35で示している。
これに対して、
図3(c)(d)を示すように同じ平面上に縦材20と横材21が並ぶメッシュ47の構成では、冷却通路4が折れ曲がったときに、縦材20と横材21の上下方向の厚さD2は上記D1よりも小さくなって、折れ曲がった部分において、冷却流体を流す隙間領域を確保することが難しくなる。
これは冷却通路4が折れ曲がった時に、上側・下側シート材2a・2bがメッシュ47の上下方向の面と密着してしまうために、冷却通路4の上下方向の厚さがメッシュ47の上下方向の厚さと同じになってしまい、冷却流体を流す隙間領域を上下方向に確保することができなくなるためである。
【0026】
図3(a)(b)に示す構成では簡単にするために、縦材20と横材21が1層になった立体構造体6を示してあるが、2層、3層、…、N層というように縦材20と横材21が複数層に重なった立体構造体6を採用した場合でも、上記折れ曲がった部分でも冷却流体が流れる十分な断面積を確保することができることが容易に理解できす。
つまり、最も重要なことは、縦材20と横材21の繊維状物が1層又はN層という点ではなく、折れ曲がった時に十分な水量を確保できる隙間領域を有した構成に立体構造体6がなっているか否かという技術思想である。
また、上下方向8だけでなく、メッシュ3など立体構造体6を構成する幅方向9の開口10の表面積を前記した各範囲に設定することで、折れ曲がり部においても上下に位置する繊維状物が存在することになり、冷却流体の流れを確実に確保することができる効果を得ることができる。
【0027】
また、本実施形態では、合成樹脂シート等で構成される上側・下側シート材2a・2bに冷却通路4を確保する方法は、冷却通路4の回りを流体が漏れないようにシールするシール部5を設けることで構成してある。シール部5は冷却服の素材に縫い付ける、溶着などを行うことができるような横幅X(
図1(a)参照)を備えている。また、図面においては示していないが、前記したようにシール部5の外縁に冷却服12(
図5参照)に人体装着型冷却エレメント1を取り付ける外縁取付部13を別に設けてもよい。なお、
図1、
図2では外縁取付部13はシール部5を兼ねている構成が示してある。
人体装着型冷却エレメント1には、
図1及び
図2に示すように、冷却流体の流入する入口部18と、冷却流体が流出する出口部19とを備えている。入口部18と出口部19のそれぞれに雄型、雌型の接続部を設けることもできる。
また、入口部18と出口部19が配置される長さY(
図1参照)は、冷却服12の縦の長さ、例えば、上半身の長さや身長の長さのようにかなり大きな長さに設定することもできる。
図1には、入口部18、出口部19近くに冷却通路4を横幅方向に分割する複数の線形シール部36を設けた構成が示している。
【0028】
[第2実施形態]
図2は本発明に係る人体装着型冷却エレメント1の第2実施形態を説明するための図である。
この第2実施形態の構成は、冷却通路4を冷却流体の流す方向に沿うように線形(曲線形を含む)に延びる少なくとも一つの接合部11を形成することで、冷却通路4内に冷却流体の流れる複数の分岐冷却通路4aを形成するようにした点である。
一般に、分岐冷却通路4aは、人体から見て上側シート材2aと下側シート材2bを間に挟んだ立体構造体6ごと熱溶着する区画線を構成することで行なわれる。即ち、区画線で構成される接合部11は分岐冷却通路4aを区画する直線、曲線で構成される場合のみならず、好ましい形状の冷却通路4を構成するために、十字線、三叉路を構成する線などの各種の線の結合体で構成される場合もある。
製造工程で説明すれば、
図6(a)に示すように上側から、上側シート材2a、立体構造体6、下側シート材2bの順に配置した状態から、
図6(b)に示すように、人体に対して幅方向の長さZの間隔で、幅方向9の冷却流体の移動を遮断する少なくとも一つの接合部11を設けている。接合する方法としては熱による上側・下側シート材2a・2b及び立体構造体6間の合成樹脂成分の溶着という方法が最も簡単かつ安価に分岐冷却通路4aを構成できる。
【0029】
この構成を採用することによって、例えば、
図6(c)に示すように、冷却通路4の幅方向の長さLに対して4つの接合部11を設けることで、冷却流体圧力に対して、分岐冷却通路4aの膨らみ直径を上記直径Zの範囲に限定することができ、元の冷却通路4の広がり(元円22)に対して分岐冷却通路4aの膨らみ直径をZにでき、分割円23の大きさを小さくすることができる。逆に言えば、この工夫によって上記接合部の距離Zを適宜、長くしたり、短くしたり調整することで人体に接する面における分岐冷却通路4aの密着度合いを調整することができるとも言える。
また、この考え方を採用すると、冷却服12の全体を考えた場合の冷却流体の循環の均一性を向上させることができるとともに、局部的に冷却流体が人体の体温と熱交換して、冷却服12の一部領域のみ温度が低く、他の冷却服の領域が高いままであるという不都合の発生を抑制することができる。
【0030】
上記の工夫の具体例を言えば、例えば、人体において頭の曲率と、背骨近くの曲率とは大きな違いがある。したがって、それぞれの冷却通路4の形状に応じて分岐冷却通路4aの膨らみ程度を調整する(距離Zの値を設定する)ことで、装着者にとって好ましい圧着度合いと冷却状態を設定することができる。つまり、上記接合部11の上記区画線の構成を人体のそれぞれの部位において好ましいように変えることで、冷却服を装着した作業者のそれぞれの部位(例えば、頭、上、背中)において最適な冷却程度と圧接状態を予め設定することができるのである。
【0031】
[第3実施形態]
以下、本実施形態に係る人体装着型冷却エレメント1を冷却服12に適用する場合の工夫を第3実施形態として説明する。
図4及び
図5に示すように、この第3実施形態は、人体の胴、腕、頭部を冷却するために人体装着型冷却エレメント1の胴部用エレメント1a、腕部用エレメント1b・1b、頭部用エレメント1cを冷却服12において、どのように構成・配置すればよいかという観点における工夫である。
第1の特徴として、人体装着型冷却エレメント1の胴部用エレメント1a、腕部用エレメント1b、頭部用エレメント1cはそれぞれ人体の背骨において略左右対称に配置されている点が挙げられる。
【0032】
また、胴部用エレメント1a、腕部用エレメント1b・1b、頭部用エレメント1cの接続部は、それらのエレメント1a,1b,1cを別々に構成して接続する方法や全てを一体的に一工程で製造する方法がある。
図4に示す形態では、胴部用エレメント1a、腕部用エレメント1b・1b、頭部用エレメント1cは大型の圧着機があれば一圧着工程で製造できる。
図4に示す構成では、背中の背骨域を上下に流れる幹冷却通路4bと、幹冷却通路4bの略左右形に延びる枝形横冷却通路4cを設けている。
また、幹冷却通路4bと接続された首回り冷却通路30の後首付け根部分から頭部用エレメント1cを引出してある。
上記の各エレメントを1a,1b,1cを冷却服12の素材に縫合などの方法によって取り付けることによって
図5に示す冷却服12が簡単に製造できる。
【0033】
また、
図4に示すように、胴部用エレメント1aの所定箇所にジョイト部26を設ける。ジョイト部26には、図示しない電池及びポンプで構成される冷却流体循環装置を接続する。冷却流体の温度を低くする手段としては、人体の温度を冷却できるように冷却流体の温度を低くできる熱交換部を備える構成を採用することもできる。
熱交換部の簡単な構成としては、水容器内に氷などの凍結した冷却流体を予め入れておく構成がある。
他には、自動二輪等のように継続的に一定量の電源を確保できる形態においては、冷却流体を冷蔵庫の冷却原理と同様に冷却できる熱交換システムを採用することもできる。
つまり、本実施形態における人体装着型冷却エレメントの構成は、冷却流体の循環駆動装置の構成に依存せずに採用できるものである。
【0034】
他の特徴として、
図7に示すように、人体装着型冷却エレメント1を配設することで冷却服12を構成する場合に、人体を覆う人体装着型冷却エレメント1が枝形に延びる形状に構成され、前記枝形部14において、前記冷却流体が前記枝形部14の先端側に流す侵入流路15と前記枝形部14の先端側から基端側に戻るための戻り流路16とが各枝形部14に形成されている点がある。侵入流路15、戻り流路16はそれぞれ
図1及び
図2に示すような人体装着型冷却エレメント1で構成される。
図7には図示していないが、侵入流路15、戻り流路16にはそれぞれ複数の分岐冷却通路4aが設けられている。
【0035】
[第4実施形態]
本実施形態に係る人体装着型冷却エレメント1の立体構造体6として採用できる変形例を第4実施形態として説明する。
第1の構成は、
図8(a)に示す格子状に形成され、弾性を有する格子型柔軟体37を上下方向に圧着する圧着力27で挟み込んで、圧着することで、
図8(b)に示すように接合部11を設けて立体構造体6を構成する形態である。
また、第2の構成は、
図8(c)に示すように、ある程度の弾性と流体を流す隙間を備えた繊維状物が交錯したスポンジのような多孔質体28を上下方向に圧着する圧着力27で挟み込んで、圧着することで
図8(d)に示すように接合部11を設けて、立体構造体6を構成する形態である。
格子型柔軟体37や多孔質体28を作る繊維状物は水分を吸収しない繊維材を使用することが好ましい。
他の立体構造体6としては面ファスナーにおける鉤形などの雄型係合部、雌型係合部などを冷却通路内に固定する方法が例示できる。
【0036】
[第5実施形態]
図9及び
図10を参照して、人体装着型冷却エレメント1を用いて冷却服12を構成する場合の変形例を第5実施形態として説明する。
この実施形態に係る特徴は、
図9に示すように、冷却服12の胴部上部に首回り冷却通路30を形成し、その首回り冷却通路30から左右の腕部用エレメント1b・1bを接続するとともに、背骨に対して略左右対称形の前側胴部用エレメント1aFと、背骨に対して左右対称形でない蛇行型の後側胴部用エレメント1aBをそれぞれ接続した構成としてある。
また、必要に応じて、胴部用エレメント1aに設けられた首回り冷却通路30と、頭部用エレメント1cとを接続する冷却通路接続部31・31を双方に設けたことを特徴としている。冷却通路接続部31・31には頭部用エレメント1cが接続されない場合は、首回り冷却通路30又は頭部用エレメント1c内の冷却流体が漏れることを防止する弁体(図示せず)が設けてある。
上記各実施形態に係る構成であれば、冷却管を服に手作業で縫い付ける方法に比べて、外縁取付部13においてミシンを用いたり、熱接合したりすることができ、大幅に製造工数と製造コストを低減することができる。
【0037】
[第6実施形態]
図11を参照して、人体装着型冷却エレメント1間の距離を柔軟に保つという課題を解決するための構成を説明する。
一般に、上記構成のような本実施形態を冷却服に適用した場合、冷却通路4の存在によって作業者の動きが抑制されることが予想される。この課題に対して本実施形態では、人体装着型冷却エレメント1のそれぞれに着脱自在の冷却通路接続部31・31を設けている。
図11においては雌型接続部と雄型接続部を設けた例が示してある。また、複数の人体装着型冷却エレメント1と着脱自在の冷却通路接続部31・31の間にそれらの距離を変化できように長さに余裕を持たせた接続用流水管61・61を設けた構成にしてある。
この構成であれば、長さに余裕を持たせた接続用流水管61・61によって複数の
人体装着型冷却エレメント1の距離が大きく離れるような作業者の動きがあっても、長さに余裕を持たせた部分の存在によって人体装着型冷却エレメント1間に過度の力が加わって、動きにくくなったり、破損したりする恐れを低減することができる。なお、余裕を持たせた接続用流水管61・61の構成として、ゴム等の伸縮自在の材料によって接続用流水管61・61を構成することもできる。
【0038】
[第7実施形態]
図12(a)(b)を参照して、面ファスナーを設けた構成について説明する。
作業者が装着する帽子や衣服等の装着面部62は汗や作業に伴って汚れて、定期的に洗濯等が必要になる。また、右腕の人体装着型冷却エレメント1が破損して取り替えが必要な場合が想定できる。
この場合、装着面部62に人体装着型冷却エレメント1を熱融着する構成であると、洗濯における強度が必要とされる。また、破損時の取り替えは熱融着した全体部になってしまう課題が予想される。
本実施形態はそのような課題を解決するもので、帽子や衣服等の布面などで構成される装着面部62に着脱自在の一方側の面ファスナー63aを設け、人体装着型冷却エレメント1に他方側の面ファスナー63bを設けて、人体装着型冷却エレメント1を装着面部62と着脱自在に構成してある。この場合、装着面部62に設けられる面ファスナー63aは身体側に人体装着型冷却エレメント1に密接するように装着面部62の内側面に人体装着型冷却エレメント1の例えば外縁形状に対応して必要個数設けられる。必要個数とは人体装着型冷却エレメント1を作業時にも安定して保持できる個数と言う意味である。
【0039】
面ファスナー63a・63bの一例としては、マジックテープ(登録商標)などが例示できる。
また、人体装着型冷却エレメント1が面ファスナー63a・63bによって着脱自在に取り付けられる装着面部62に人体装着型冷却エレメント1をほぼ収容するポケット部(図示せず)を設けることも可能である。
このポケット部を設ける構成では、ポケット部の身体側の面は、開口のある網面(例えば、メッシュ面)で構成されて、人体装着型冷却エレメント1の冷却通路4が作業者の身体に接する面積を大きくすることが好ましい。
【0040】
本発明は上記実施形態以外にも本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形を行うことが可能である。
(1)前記実施形態では、「人体面から見て少なくとも上下方向に交差させた柔軟性を有する立体構造体」を冷却通路内に固定配置することで本実施形態に係る構成を例示したが、上記構成に加えて「上下方向に捩れた繊維状物を冷却通路内に固定配置する構成」を採用することもできる。
(2)上側シート材2aと下側シート材2bの間に立体構造体6を固定する場合の製造方法において、立体構造体6を上側シート材2aと下側シート材2bのいずれか一方に予め接合させおく構成も採用することができる。
(3)人体装着型冷却エレメント1は服とは別に、単独で人体を冷却する部材として使用することができる。例えば、服とは別に身体に装着するチョッキ形、頭部分を冷却するヘッド冷却具、首回り冷却具など各種の形態が採用できる。また、人体装着型冷却エレメント1自体で服形を構成する形態も採用できる。