(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6284715
(24)【登録日】2018年2月9日
(45)【発行日】2018年2月28日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/07 20060101AFI20180215BHJP
【FI】
B60N2/07
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-129170(P2013-129170)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-3581(P2015-3581A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年4月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 英雄
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−104833(JP,U)
【文献】
実開平02−049726(JP,U)
【文献】
実開平06−006076(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第00037726(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアレールとアッパレールとから成るスライド機構を備えている乗物用シートであって、
ロアレールの前側の縁と上側の縁とは、この両縁から成る角が形成されることがないように、切り欠かれており、
この切り欠かれた切欠における上側の縁は、上下に直線を成す第1の面取部から形成されており、
切欠は、ラウンドを成す凹状に形成されており、
切欠における下側の縁は、上下に直線を成す第2の面取部から形成されており、
ラウンド領域の高さ長は、第1の面取部の高さ長より長く設定されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートであって、
ロアレールは乗物のフロアに対して締結されており、
この締結部位は、少なくとも、切欠が形成されている部位に対応する位置に形成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の乗物用シートであって、
ロアレール底部は、フロア面と略平行な直線状に形成されており、
ロアレール底部は締結部品を介してフロア面に直に締結されていることを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関し、詳しくは、ロアレールとアッパレールとから成るスライド機構を備えている乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両等の乗物のシートには、各種のアレンジができるものがある。ここで、下記特許文献1には、例えば、
図5〜6に示すように、車両フロアfに対してシートクッション102を前後にスライドできるといったアレンジが可能な車両用シート101が開示されている。すなわち、下記特許文献1には、ロアレール132、132とアッパレール134、134とから構成されているスライド機構130を備えた車両用シート101が開示されている。これにより、着座者の体格にあわせてシートクッション102の前後位置を調整できるため、着座者の車内での快適性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−160554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の技術では、
図5〜6に示すように、ロアレール132、132は、レッグ等のブラケットを介することなく、直に、車両フロアf側の2個のボルト孔f1、f2に対してボルトbによって締結されている。そのため、ロアレール132、132が、レッグ等のブラケットを介して車両フロアfに対して締結されている場合と比較すると、ロアレール132、132の長さを長くしておく必要があった。なぜなら、車両フロアf側のボルト孔f1、f2の位置は不変であるため、ブラケットの長さだけ、ロアレール132、132の長さを長くしておく必要があるからである。しかしながら、このようにロアレール132、132の長さを長くしておくと、乗降時に、着座者の足がロアレール132、132の前端と干渉してしまうことがあり、乗降性が悪くなってしまうという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、スライド機構を備えていても、乗降性を向上させることができる乗物用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、ロアレールとアッパレールとから成るスライド機構を備えている乗物用シートであって、ロアレールの前側の縁と上側の縁とは、この両縁から成る角が形成されることがないように、切り欠かれており、この切り欠かれた切欠における上側の縁は、上下に直線を成す第1の面取部から形成されて
おり、切欠は、ラウンドを成す凹状に形成されており、切欠における下側の縁は、上下に直線を成す第2の面取部から形成されており、ラウンド領域の高さ長は、第1の面取部の高さ長より長く設定されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、スライド機構のロアレールの長さを長くしても、乗降時に、着座者の足がロアレールの前端と干渉してしまうことがない(干渉し難い)。したがって、着座者の乗降性を向上させることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗物用シートであって、
ロアレールは乗物のフロアに対して締結されており、この締結部位は、少なくとも、切欠が形成されている部位に対応する位置に形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、切欠が形成されている部位に対応する位置と異なる位置が締結部位となっている場合と比較すると、別途に、ロアレールに切欠等の作業スペース(工具でボルトを締め付けるための作業スペース)を形成する必要がない。したがって、ロアレールの形状を簡素化できる。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、
請求項1〜2のいずれかに記載の乗物用シートであって、
ロアレール底部は、フロア面と略平行な直線状に形成されており、ロアレール底部は締結部品を介してフロア面に直に締結されていることを特徴とする構成である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用シートのシートクッションのクッションフレームに備えられているスライド機構とリフター機構との一部の分解斜視図である。
【
図4】
図1のクッションフレームを車両フロアに組み付けた状態における左側面図である。
【
図5】従来技術に係る車両用シートのシートクッションのクッションフレームの斜視図である。
【
図6】
図5のクッションフレームを車両フロアに組み付けた状態における左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜4を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、『乗物用シート』の例として、『車両用シート1』を説明することとする。また、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、車両(図示しない)の内部に配置した状態の車両用シート1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0011】
まず、
図1〜2を参照して、車両用シート1の構成を説明する。この車両用シート1は、例えば、助手席であり、シートクッション2とシートバック(図示しない)とから構成されている。以下に、これらシートクッション2とシートバック(図示しない)とのうち、シートクッション2について詳述していく。なお、シートバック(図示しない)は、公知のものでよいため、その詳細な説明は省略することとする。
【0012】
シートクッション2は、その骨格を成すクッションフレーム10と、このクッションフレーム10に対して包着状に組み付けられる公知のシートクッションパッド(図示しない)と、このシートクッションパッド(図示しない)の表面をカバーリングする公知のシートクッションカバー(図示しない)とから構成されている。
【0013】
なお、
図1〜4では、シートクッション2の内部のフレームの構造を見易くするために、シートクッションパッドとシートクッションカバーとの図示を省略している。クッションフレーム10は、左のサイドフレーム12と、右のサイドフレーム14と、これら左右のサイドフレーム12、14の前側を橋渡すフロントパネル16と、これら左右のサイドフレーム12、14の後側を橋渡すリアロッド18とから略矩形の枠状に形成されている。シートクッション2は、このように構成されている。
【0014】
このように構成されているシートクッション2は、スライド機構30とリフター機構40とを備えている。以下に、これらスライド機構30とリフター機構40とを個別に説明していく。
【0015】
まず、スライド機構30から説明していく。スライド機構30は、対を成す左右のロアレール32、32と、この左右のロアレール32、32にスライド可能に対を成す左右のアッパレール34、34とから構成されている。左のロアレール32は、
図3に示すように、底部32aと、アウタの側部32bと、アウタの上部32cと、アウタの折込部32dと、インナの側部32eと、インナの上部32fと、インナの折込部32gとからプレスによる折り曲げによって形成されている。
【0016】
なお、この
図3から明らかなように、底部32aとアウタの側部32bとから成る下角および底部32aとインナの側部32eとから成る下角は、それぞれが丸みを帯びた形状(以下、「面取部R1」と記す)となっている。これと同様に、アウタの側部32bとアウタの上部32cとから成る上角およびインナの側部32eとインナの上部32fとから成る上角も、それぞれが丸みを帯びた形状(以下、「面取部R2」と記す)となっている。
【0017】
また、
図2の一部拡大図と
図4とから明らかなように、この左のロアレール32の前側の縁と上側の縁とは、この両縁から成る角が形成されることがないように、切り欠かれている(以下、「第1の切欠32j」と記す)。すなわち、この左のロアレール32の前側の縁と上側の縁との隅には、角が形成されることがないように、第1の切欠32jが形成されている。
【0018】
これらの記載が、特許請求の範囲に記載の「ロアレールの前側の縁と上側の縁とは、この両縁から成る角が形成されることがないように、切り欠かれている」に相当する。なお、この第1の切欠32jは、
図4に示すように、面取部R1と面取部R2とが上下に直線を成す格好で残されるように、ラウンドを成す凹状に切り欠かれている。また、この左のロアレール32の底部32aのうち、第1の切欠32jが形成されている部位に対応する位置には、ボルトBを貫通可能なボルト孔32lが形成されている。
【0019】
また、左のロアレール32の底部32aのうち、後方位置にも、ボルトBを貫通可能なボルト孔32mが形成されている。なお、このボルト孔32mに挿し込んだボルトBを工具(図示しない)で締め付けることができるように、左のロアレール32のインナの折込部32gには、第2の切欠32kが形成されている。すなわち、第2の切欠32kは、ボルト孔32mに挿し込んだボルトBを工具(図示しない)で締め付けるための作業スペースである。また、左のアッパレール34は、左のロアレール32に対してスライド可能に形成されている。
【0020】
一方、右のロアレール32、右のアッパレール34も、左のロアレール32、左のアッパレール34に対して左右対称を成すように形成されている。そして、左右のロアレール32、32は、2個のボルト孔32l、32mと車両フロアF側の2個のボルト孔F1、F2とを介した2本のボルトBによって、車両フロアFにそれぞれ締結されている。これら2本のボルトBによって締結されている部位が、特許請求の範囲に記載の「締結部位」に相当する。そのため、車両フロアFに対してシートクッション2を前後にスライドさせることができる。スライド機構30は、このように構成されている。
【0021】
次に、リフター機構40を説明する。リフター機構40は、対を成す左右のフロントリンク42、42と、対を成す左右のリアリンク44、44とから構成されている。左のフロントリンク42は、左のサイドフレーム12の前側と左のアッパレール34の前側とを橋渡すように枢着されている。また、左のリアリンク44も、左のサイドフレーム12の後側と左のアッパレール34の後側とを橋渡すように枢着されている。そして、これら左のフロントリンク42、左のリアリンク44は、平行リンクを成すように構成されている。
【0022】
一方、右のフロントリンク42も、左のフロントリンク42に対して左右対称を成すように構成されており、右のサイドフレーム14の前側と右のアッパレール34の前側とを橋渡すように枢着されている。また、右のリアリンク44も、左のリアリンク44に対して左右対称を成すように構成されており、右のサイドフレーム14の後側と右のアッパレール34の後側とを橋渡すように枢着されている。
【0023】
そして、これら右のフロントリンク42、右のリアリンク44は、平行リンクを成すように構成されている。そのため、例えば、左のリアリンク44を作動させると、左右のフロントリンク42、42と共に右のリアリンク44も作動するため、車両フロアFに対してシートクッション2を上下に昇降させることができる。リフター機構40は、このように構成されている。
【0024】
本発明の実施例に係る車両用シート1は、上述したように構成されている。この構成によれば、左のロアレール32の前側の縁と上側の縁とは、この両縁から成る角が形成されることがないように、切り欠かれている。すなわち、この左のロアレール32の前側の縁と上側の縁との隅には、角が形成されることがないように、第1の切欠32jが形成されている。このことは、右のロアレール32も同様である。そのため、スライド機構30のロアレール32、32の長さを長くしても、乗降時に、着座者の足がロアレール32、32の前端と干渉してしまうことがない(干渉し難い)。したがって、着座者の乗降性を向上させることができる。
【0025】
また、この構成によれば、第1の切欠32jは、
図4に示すように、面取部R1と面取部R2とが上下に直線を成す格好で残されるように、ラウンドを成す凹状に切り欠かれている。そのため、例えば、第1の切欠32jが、ラウンドを成す凸状に切り欠かれている場合と比較すると、乗降時に、着座者の足がロアレール32、32の前端と干渉し難い。したがって、着座者の乗降性をより向上させることができる。
【0026】
また、この構成によれば、左右のロアレール32、32は、2個のボルト孔32l、32mと車両フロアF側の2個のボルト孔F1、F2とを介した2本のボルトBによって、車両フロアFにそれぞれ締結されている。そして、この左右のロアレール32、32の各底部32aのうち、第1の切欠32jが形成されている部位に対応する位置には、ボルトBを貫通可能なボルト孔32lがそれぞれ形成されている。そのため、このように第1の切欠32jが形成されている部位に対応する位置と異なる位置にボルト孔32lが形成されている場合と比較すると、別途に、左右のロアレール32、32に切欠等の作業スペース(工具でボルトBを締め付けるための作業スペース)を形成する必要がない。したがって、左右のロアレール32、32の形状を簡素化できる。
【0027】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
実施例では、『乗物用シート』の例として、『車両用シート1』を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、『乗物用シート』は、各種の乗物のシート、例えば、『船舶のシート』、『飛行機のシート』、『鉄道車両のシート』等であっても構わない。
【符号の説明】
【0028】
1 車両用シート(乗物用シート)
30 スライド機構
32 ロアレール
32j 第1の切欠
34 アッパレール
B ボルト