(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下に
図1、
図2、
図3を参照して実施の形態1を説明する。
図1は非常用照明装置1000のうちの非常用ユニット300(電源装置)の回路図である。
図2、
図3の波形図は後述する。実施の形態1では、停電検出回路310が、停電または電源サグが発生したとき(設定電圧を下まわる電圧を検出したとき)に、フライバック回路320(制御IC(IC2))を停止させ、この停止後、商用電源ACの復帰(設定電圧以上の電圧)を検出すると、フライバック回路320をソフトスタート(後述)させる。これにより、フライバック回路320に発生するサージ電流を抑制する。フライバック回路320は
図1に示すように整流回路DB(整流部)が整流した電圧の供給を受ける。
【0010】
(ソフトスタート)
非常用ユニット300に商用電源ACが供給されると、フライバック回路320の制御IC(IC2)が起動し、制御IC(IC2)の内蔵するスイッチング素子(MOS−FET、
図1、
図4)がスイッチング動作を開始する。この起動の際には、制御IC(IC2)は、トランスT1の二次側に供給する電圧が一定の電圧となるようにスイッチング素子を制御する。この際、制御IC(IC2)は、トランスT1の二次側に供給する電圧が予め設定された所定の定電圧値となるまでは、ゼロに近い電圧値から徐々に電圧値を上昇させて、予め設定された所定の定電圧値となったとき、この所定の定電圧値を維持するように、スイッチング素子を制御する。この動作(制御IC(IC2)が起動して、ゼロに近い電圧値から徐々に電圧値を所定の定電圧値まで上昇させる動作)をこの以降の実施の形態では、「ソフトスタート」という。以上のように、フライバック回路320の制御IC(IC2)は、起動時にソフトスタートを実行する。なお、フライバック回路320の停止、起動は制御IC(IC2)の起動、停止を意味する。
【0011】
非常用ユニット300が動作しているときに、商用電源ACの電圧値が一時的(瞬時的)に低下し、その後、商用電源ACの電圧値が定格電圧まで復帰すると、制御IC(IC2)の応答速度が遅いため、トランスT1の二次側に供給している電圧値の急激な変化の検出が遅延し、一次側にサージ電流が流れてしまうことがある。そこで、停電検出回路310は、一定時間以上、商用電源ACの電圧値が予め設定した設定電圧よりも下がったことを検出したとき、制御IC(IC2)を停止させ、その停止後、商用電源ACの電圧値が設定電圧以上となったことを検出したときに、制御IC(IC2)を再起動させる。
図1では停電検出回路310は、整流回路DBの出力側で商用電源ACの電圧値を検出しているが、この場合は、「整流回路DBの入力する商用電源ACの電圧値」を整流回路DBの出力側で監視している。停電検出回路310によって再起動される制御IC(IC2)は、上記で述べたソフトスタートによって再起動する。このソフトスタートのため、電源サグから復帰時にサージ電流は流れず、各電子部品にストレスをかけることがないという効果を得ることができる。なお停電検出回路310の機能を実行するのは制御IC(IC1)である。
【0012】
図2、
図3は、ソフトスタートの効果を示す波形図である。
図2はソフトスタートさせない場合の波形図である。具体的には、
図2ではサグが発生しても停電検出回路310はフライバック回路320の制御IC(IC2)を停止させず、よって
図2は、サグが発生してもフライバック回路320が動作を続ける場合の波形図である。
図3は、本実施の形態1のソフトスタートを実行する場合の波形図である。
【0013】
まず
図2を説明する。
図2の横軸は時間である。縦軸については、
図2の上部は、商用電源ACの電圧V(AC)を示し、中央は、制御IC(IC2)に接続するコンデンサC8の電圧V(C8)を示し、下部は、トランスT1の一次側を流れる電流I(一次)を示す。電圧V(AC)は破線の丸で囲む範囲にサグが生じている。
【0014】
コンデンサC8の電圧V(C8)を示した理由は以下の通りである。コンデンサC8の電圧V(C8)は、制御IC(IC2)のフィードバック端子(
図1、
図4のFB端子)に印加される。コンデンサC8の電圧V(C8)はFB端子から出力される電流によって蓄えられる。制御IC(IC2)が内蔵するスイッチング素子(MOS−FET)は、FB端子電圧(つまりV(C8))によってオンデューティ(ゲートオン幅)が決定し、このオンデューティに応じたドレイン電流(I(一次)として観測、
図4のI(D)に相当)を出力する。よってコンデンサC8の電圧V(C8)がサージ電流に関係するためコンデンサC8の電圧V(C8)を示した。
【0015】
図2を詳しく説明する。時刻T(X)で商用電源ACにサグが発生している。このときコンデンサC8の電圧V(C8)が上昇を開始しているが、これはサグ発生(商用電源の電圧低下)に伴い、フィードバック回路360のフォトカプラPCからフライバック回路320の出力電圧が低下した信号が入力され、これに応答したフライバック回路320が出力を上げたことによる。時刻T(Y)で商用電源ACが復帰している。この時、コンデンサC8の電圧V(C8)はサグ発生前に対して上昇しており、時刻T(Y)でサージ電流が発生している。これは制御IC(IC2)のMOS−FETが、時刻T(Y)におけるコンデンサ電圧V(C8)から決まるオンデューティに応じたドレイン電流を発生したからである。
【0016】
次に
図3を説明する。
図3は
図2に対応する図であり、制御IC(IC2)をソフトスタートさせる場合の波形図である。ソフトスタートさせる
図3ではサージ電流の発生はない。
【0017】
図3では時刻T(X)で商用電源ACにサグが発生している。このときコンデンサC8の電圧V(C8)が上昇しているが、時刻T(Z)で急激に減少している。これは時刻T(Z)において停電検出回路310がサグ発生を検出してフライバック回路320の制御IC(IC2)を停止させたことによる。具体的には、停電検出回路310の制御IC(IC1)が制御IC(IC2)のFB端子から出力される電流を自身側に引き抜くことでコンデンサC8の電圧V(C8)がなくなり、制御IC(IC2)のMOS−FETのスイッチングが停止する。時刻T(W)で商用電源ACが復帰しているが、この時、停電検出回路310(制御IC(IC1))は商用電源ACが復帰したことを検出し、制御IC(IC2)をソフトスタートさせる。ソフトスタートによりFB端子から出力される電流でコンデンサC8の電圧V(C8)は徐々に上昇し、やがてサグ発生前の電圧に落ち着き、フライバック回路320はサグ発生前の動作を再び継続する。このソフトスタートによりI(一次)にサージ電流は発生していない。
【0018】
実施の形態1によれば、商用電源ACの復帰時にサージ電流が発生しないので、非常用ユニット300を構成する各電子部品にストレスをかけること(各電子部品の定格電圧、定格電流を瞬時的に超えること)がない。
【0019】
実施の形態2.
図4を参照して実施の形態2を説明する。
図4は、フライバック回路320の制御IC(IC2)(スイッチング素子を有する制部)が、OCP(オーバーカレントプロテクタ)機能を有す構成である。
図4は
図1の回路図から一部分を抜き出した図であるが、
図4は
図1に対して、フライバック回路320に、さらに抵抗R301、R302を追加している。なお、
図4では停電検出回路310を示しているが、実施の形態2では、制御IC(IC2)が、OCP(オーバーカレントプロテクタ)機能を有すればよく、停電検出回路310はなくてもよい。
図1、
図4のフライバック回路320では、制御IC(IC2)は、PFC(Power Factor Correction:力率改善)機能を実現する。
図4では、PFC機能を内蔵するフライバック回路320は、フライバック回路320を制御する制御IC(IC2)と、制御IC(IC2)に流れる電流を検出する検出抵抗R301及び「抵抗R302、コンデンサC4」(両者はフィルタを構成)から成り、抵抗R301による検出電圧を制御IC(IC2)に送るOCP回路とを備えている。
【0020】
(1)フライバック回路320では、制御IC(IC2)の有するMOS−FETは、ゲートのON/OFFを1周期として周期的にON/OFFを繰り返すスイッチング素子であり、1周期のうちのゲートONのときに
図4に示すドレイン電流I(D)が流れ、このドレイン電流I(D)によってトランスT1にエネルギが蓄えられる。また、ゲートON後のゲートOFFにおいて、トランスT1に蓄えたエネルギを二次側へ供給することで、二次側に電流を生じさせ、この電流を二次側のコンデンサが蓄えることで、MOS−FETのスイッチングに基づく二次側電圧が発生する。
(2)ドレイン電流I(D)は
図4に示すように制御IC(IC2)のD/ST端子(第1端子)から流入してMOS−FETのドレイン、ソースを介してS/GND端子(第2端子)から流出し、抵抗R301を通過する。ここで抵抗R301はドレイン電流I(D)を検出するドレイン電流検出抵抗であり、制御IC(IC2)は、OCP端子(第3端子)からドレイン電流検出抵抗R301を通過したドレイン電流I(D)を検出する。なお抵抗R302とコンデンサC4とは、誤動作防止のためのフィルタを形成する。
(3)制御IC(IC2)は、OCP端子から検出したドレイン電流の値が予め設定された閾値電流(設定電流値)を超えるときは、内蔵するMOS−FETのスイッチング動作を停止する。これによりフライバック回路320の動作が停止する。
【0021】
フライバック回路320は商用電源ACを整流したDC電圧を入力され、トランスT1の二次側に一定電圧を出力するように制御されるが、
図4のようにPFC機能を内蔵する場合は、商用電源ACの電圧波形を阻害しないように応答速度を商用周波数以下にする必要がある。このため、この応答速度よりも速い電源変動に対しては追従できず、例えば瞬時電圧低下などで商用電源が低下した後に電源が復帰すると、サージ電流が発生する。これは、電源電圧が低下して低い電源状態で電流を流そうとMOS−FETのON時間が長くなった状態で、急に電圧が復帰して高い電源電圧が印加されると、応答速度が追いつくまではON時聞が長いままで高い電圧が印加され続ける事による。この状態は商用電源ACがAC200V−254Vなどの高い場合に発生しやすい。
【0022】
これを原因とするサージ電流の発生を実施の形態2ではOCP機能で抑止する。OCP機能(OCP機能部)は、制御IC(IC2)とOCP回路(
図4)とで構成される。OCP機能は、制御IC(IC2)がドレイン電流検出抵抗である抵抗R301によってドレイン電流の値を検出し、検出したドレイン電流の値が設定値をこえる場合に、MOS−FETのスイッチングを停止することで実現される。実施の形態2は、制御IC(IC2)の有するMOS−FETのドレイン電流I(D)(トランスT1の一次側を流れる電流に相当)を検出抵抗などで検出して、フライバック回路320を停止させるOCP機能に関する。
【0023】
以上のように実施の形態2では、制御IC(IC2)が、MOS−FETのゲートがONのときに流れるドレイン電流I(D)であって、トランスT1から流出して制御IC(IC2)のD/ST端子(第1端子)から流入して、MOS−FETのドレイン、ゲートの順に経由してS/GND端子から流出するドレイン電流を、OCP端子で監視する。制御IC(IC2)はドレイン電流の値が予め設定された閾値電流を超える場合には、MOS−FETのスイッチングを停止する。よって、商用電源ACの急変によるオーバーシュート(過電圧、過電流)を抑制できる。
【0024】
実施の形態3.
実施の形態3は、実施の形態1と実施の形態2とを組み合わせた内容である。つまり、
図4に示すようにPFC機能搭載のフライバック回路320において、
(1)商用電源ACが低下したことを検出しフライバック回路を停止させる停電検出回路310と
(2)実施の形態2で述べた、電流を検出抵抗などで検出してフライバック回路320を停止させるOCP機能とを使用して、サージ電流の発生を防ぐ。よって、実施の形態2では
図4の停電検出回路310は無くても良かったが、実施の形態3では、停電検出回路310は必須である。
【0025】
PFC機能搭載のフライバック回路は応答速度が遅く、電源急変によるオーバーシュート(過電圧、過電流)が発生する。これに対し、実施の形態2で述べたOCP機能を使用する事でフライバック回路の破壊は防げる。しかし、過電流は「制御IC(IC2)の内蔵するMOS−FET」のスイッチングの1周期内で発生するため検出を早くする必要があり、ノイズ除去のコンデンサなどの遅延が大きくできない。このためOCPの検出レベルは正常状態よりもかなり大きくする必要があり、この検出レベルまでの過電流は防ぐことができない。OCPは応答速度が非常に速く電源急変に対応可能というメリットがあるが、検出レベル値が高く、この検出レベル値までの過電流は防ぐことができないというデメリットがある。
一方、OCPに対し、実施の形態1で述べた停電検出回路を使用して、商用電源が正常でない場合にはフライバック回路を停止させ、ソフトスタートで復帰させることでOCP検出レベルのサージ電流の発生を防ぐことが可能となる。停電検出回路によるソフトスタートによれば通常電流値を超え、OCPの検出レベル値程度までの過電流を防ぐことが可能というメリットがある。しかし停電検出回路によるソフトスタートの場合は、商用電源が低下したことを検出するには、最低でも商用電源周期程度の時間が必要である。よって、瞬時的なサージ電流は抑えることができないといデメリットがある。そこで、実施の形態3では、実施の形態2のOCP機能と、実施の形態2の停電検出回路によるソフトスタートとを併用することで、それぞれの機能を補完することができる。
図5は、停電検出回路によるソフトスタートと、OCP機能との特性を対比したものである。
【0026】
なお、実施の形態2ではOCP機能によってフライバック回路320の動作を停止し、実施の形態3では、停電検出回路310と、OCP機能とを併用してフライバック回路320の動作を停止する場合を説明した。